(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ブロック共重合体]
本発明に係るブロック共重合体(以下、単に、本発明のブロック共重合体ともいう。)は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体であって、以下の(1)〜(3)の要件を満たすことが必要である。
(1)ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックを少なくとも1個有し、該ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックの含有割合が、ブロック共重合体100質量%に対して15質量%以下である。
(2)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるランダム共重合体ブロックを少なくとも1個有し、該ランダム共重合体ブロックにおけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの質量比が82/18〜90/10であり、該ランダム共重合体ブロックの含有割合が、ブロック共重合体100質量%に対して50質量%〜80質量%である。
(3)ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとからなるテーパードブロックを少なくとも1個有し、該テーパードブロックに含有される共役ジエンの含有割合が、ブロック共重合体100質量%に対して5質量%〜20質量%である。
【0010】
ビニル芳香族炭化水素としては、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。なかでも、スチレンが好ましい。ビニル芳香族炭化水素は、1種のみならず2種以上用いてもよい。
【0011】
共役ジエンとしては、1,3−ブタジエン,2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエン又はイソプレンが好ましい。共役ジエンは、1種のみならず2種以上用いてもよい。
【0012】
(1)ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロック
ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックを、少なくとも1個有している。ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックは、ビニル芳香族炭化水素単量体からなるブロック構造である。
【0013】
ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックの総含有割合は、ブロック共重合体100質量%に対して15質量%以下である。ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックの含有割合を15質量%以下とすることで、熱収縮性フィルムとしたときの収縮応力が上昇することを抑制することができる。なかでも、ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックの含有割合は、好ましくは12質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。下限値については、特に限定されず、例えば、ビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックの総含有割合は、ブロック共重合体100質量%に対して0.1質量%以上、0.5質量%以上、又は1質量%以上とすることができる。
【0014】
(2)ランダム共重合体ブロック
ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロックを、少なくとも1個有している。このランダム共重合体ブロックは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位とが不規則に配列してなるブロック構造である。
【0015】
ランダム共重合体ブロックにおけるビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの質量比は、82/18〜90/10である。ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの質量比を82/18以上とすることで、樹脂ペレット同士が融着しハンドリング性が低下することを抑制することができる。90/10以下とすることで、熱収縮性フィルムの収縮応力が上昇したり、熱収縮率が低下したりすることを抑制することができる。なかでも、ランダムブロック中のビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとの質量比は、好ましくは83/17〜89/11であり、さらに好ましくは84/16〜88/12である。こうした組成を有するランダム共重合体ブロックは、添加するビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの組成(量)によって制御できる。
【0016】
ランダム共重合体ブロックの総含有割合は、ブロック共重合体100質量%に対して50質量%〜80質量%である。ランダム共重合体ブロックの総含有割合を50質量%以上とすることで、熱収縮性フィルムの熱収縮率が低下したり、収縮応力が上昇したり、耐衝撃性が低下したりすることを抑制することができる。80質量%以下とすることで、熱収縮性フィルムの耐衝撃性が低下することを抑制することができる。なかでも、ランダム共重合体ブロックの総含有割合は、好ましくは52質量%〜78質量%であり、さらに好ましくは55質量%〜75質量%である。ランダム共重合体ブロックの総含有割合は、全添加モノマー総量に対する、連続的に添加したビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマー総量の割合により制御できる。
【0017】
(3)テーパードブロック
ブロック共重合体は、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのテーパードブロックを、少なくとも1個有している。テーパードブロックは、ビニル芳香族炭化水素単量体単位と共役ジエン単量体単位の構成割合が連続的に変化する(テーパー状に漸減する)ブロック構造である。テーパードブロックの構成は、添加するビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの組成(量)によって制御できる。
【0018】
本発明において、テーパードブロックに含有される共役ジエンの総含有割合は、ブロック共重合体100質量%に対して5質量%〜20質量%である。テーパードブロックに含有される共役ジエンの総含有割合を5質量%以上とすることで、熱収縮性フィルムの耐衝撃性が低下したり、収縮応力が上昇したりすることを抑制することができる。20質量%以下とすることで、熱収縮性フィルムの剛性が低下したり、製膜においてブツと呼ばれる熱劣化ゲルが増加してフィルム外観が悪化したりすることを抑制することができる。なかでも、テーパードブロックに含有される共役ジエンの総含有割合は、好ましくは8質量%〜17質量%であり、さらに好ましくは10質量%〜15質量%である。テーパードブロックに含有される共役ジエンのブロック共重合体全体に対する含有割合は、全添加モノマー総量に対する、ビニル芳香族炭化水素モノマーと共に一括で添加した共役ジエンモノマーの含有割合により制御できる。
【0019】
(その他添加剤)
ブロック共重合体及びブロック共重合体組成物には、必要に応じて、さらに各種の添加剤を配合することができる。すなわち、ブロック共重合体が各種の加熱処理を受ける場合や、その成形品などが酸化性雰囲気や紫外線などの照射下にて使用され、物性が劣化することに対処するため、或いは、使用目的に適した物性をさらに付与するため、例えば、安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料、鉱油、フィラー、難燃剤などの添加剤を添加できる。
【0020】
安定剤としては、例えば2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレートや、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールなどのフェノール系酸化防止剤;2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリスノニルフェニルフォスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイトなどのリン系酸化防止剤;などが挙げられる。
【0021】
また、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤としては、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸などの飽和脂肪酸;パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチルなどの脂肪酸エステル;ペンタエリスリトール脂肪酸エステル;さらにエルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミドなどの脂肪酸アミド;エチレンビスステアリン酸アミド;グリセリン−モノ−脂肪酸エステル又はグリセリン−ジ−脂肪酸エステル;その他にソルビタン−モノ−パルミチン酸エステル、ソルビタン−モノ−ステアリン酸エステルなどのソルビタン脂肪酸エステル;ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどに代表される高級アルコール;などが挙げられる。
【0022】
さらに、耐候性向上剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系や2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエートなどのサリシレート系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系紫外線吸収剤;また、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレートなどのヒンダードアミン型耐候性向上剤;が例として挙げられる。さらにホワイトオイルや、シリコーンオイル、マイクロクリスタリンワックスなども加えることができる。
【0023】
これらの添加剤はブロック共重合体中、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは0質量%〜3質量%の範囲で使用することが望ましい。
【0024】
(ブロック構成)
ブロック共重合体は、上記(1)〜(3)を満たす各ブロック部を有していればよく、各ブロック部の順序は特に限定されない。ブロック共重合体は、例えば、(1)を満たすビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロック、(2)を満たすランダム共重合体ブロック、及び(3)を満たすテーパードブロックからなるセグメントを少なくとも1つ有する構造とすることができる。収縮応力低減の観点から、(1)を満たすビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックを、端部に有する構造であることが好ましい。ブロック共重合体は、その他のブロック部を有していてもよい。
【0025】
こうしたブロック構造を有するブロック共重合体の分子量は、特に限定されず、例えば、質量平均分子量が70,000〜250,000とすることができる。なお、質量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値である。
【0026】
(ブロック共重合体の製造方法)
次に、ブロック共重合体の製造について説明する。ブロック共重合体は、有機溶媒中、有機リチウム化合物を重合開始剤として、必要に応じてランダム化剤を共存させてビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンのモノマーをアニオン重合することにより製造できる。各重合体ブロックの組成及び含有割合は、ビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの、添加量と添加方法とにより制御することができる。
【0027】
(1)を満たすビニル芳香族炭化水素からなるブロックは、ビニル芳香族炭化水素モノマーのみを単独で添加することにより形成することができる。ビニル芳香族炭化水素からなるブロックのブロック共重合体全体に対する質量割合は、全添加モノマー総量に対する、単独で添加したビニル芳香族炭化水素モノマー総量の割合により制御することができる。
【0028】
(2)を満たすビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのランダム共重合体ブロックは、ビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーを連続的に添加する方法により形成することができる。その組成(つまり、ビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの構成比率)は、添加するビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの組成(添加量)及び添加速度によって制御できる。添加速度は、重合缶の冷却能力と、反応熱とのバランスにより決定することができ、例えば、連続的に添加するモノマーの総量を30分間〜90分間かけて添加し終わるような速度で添加することができる。また、ランダムブロックのブロック共重合体全体に対する質量割合は、全添加モノマー総量に対する、連続的に添加したビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマー総量の割合により制御することができる。
【0029】
(3)を満たすビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのテーパードブロックは、ビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーを一括で添加する方法により形成することができる。その組成(つまり、ビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの構成比率)は、添加するビニル芳香族炭化水素モノマー及び共役ジエンモノマーの組成(添加量)によって制御できる。またテーパードブロックに含有される共役ジエンのブロック共重合体全体に対する質量割合は、全添加モノマー総量に対する、ビニル芳香族炭化水素モノマーと共に一括で添加した共役ジエンモノマーの割合により制御することができる。
【0030】
上記で用いる有機溶媒は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;又はエチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが使用できる。好ましくはシクロヘキサンである。
【0031】
有機リチウム化合物は、分子中に1個以上のリチウム原子が結合した化合物であり、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウムのような単官能有機リチウム化合物;ヘキサメチレンジリチウム、ブタジエニルジリチウム、イソプレニルジリチウムのような多官能有機リチウム化合物;等が使用できる。
【0032】
本発明に用いられるビニル芳香族炭化水素および共役ジエンは、上記したものを使用することができ、それぞれ1種又は2種以上を選んで重合に用いることができる。そして、上記の有機リチウム化合物を重合開始剤とするリビングアニオン重合において、重合反応に供したビニル芳香族炭化水素及び共役ジエンは、ほぼ全量が重合体に転化する。
本発明におけるブロック共重合体の分子量は、モノマーの全添加量に対する重合開始剤の添加量により制御できる。
【0033】
ランダム化剤は、反応中でルイス塩基として作用する化合物であり、アミン類;エーテル類;チオエーテル類;およびホスホルアミド;アルキルベンゼンスルホン酸塩;その他にカリウムまたはナトリウムのアルコキシド;などが使用可能である。アミン類としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;環状第三級アミン;などが挙げられる。エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)などが挙げられる。その他にトリフェニルフォスフィン、ヘキサメチルホスホルアミド、アルキルベンゼンスルホン酸カリウム、または、ナトリウム、カリウム、ナトリウム等のブトキシド、などを挙げることができる。好ましくはテトラヒドロフラン(THF)である。
【0034】
ランダム化剤は、1種または複数の種類を使用することができる。その添加濃度としては、原料とするモノマー100質量%あたり0.001質量%〜10質量%とすることが好ましい。添加時期は重合反応の開始前でもよいし、共重合鎖の重合前でもよい。また必要に応じて追加添加することもできる。
【0035】
全モノマーを添加し、反応が完結した後、リビング活性末端を失活させる前に、カップリング剤を添加しカップリングを実施してもよい。ここでカップリングとは、ポリマー鎖の片末端に位置するリビング活性部位とカップリング剤分子中の反応部位との間に共有結合が生じ、それにより2本以上のポリマー鎖同士が1つのカップリング剤分子を介して結合することをいう。またカップリング剤は、リビング活性部位が攻撃しうる反応部位を1分子当たり2個以上有する化合物であり、特に限定されないが、四塩化ケイ素、エポキシ化大豆油等が挙げられる。
【0036】
このようにして得られたブロック共重合体は、水、アルコール、二酸化炭素などの重合停止剤をリビング活性末端が不活性化するのに充分な量添加することで不活性化できる。得られたブロック共重合体の有機溶媒溶液より共重合体を回収する方法としては、メタノール等の貧溶媒により析出させる方法、加熱ロール等により溶媒を蒸発させて析出させる方法(ドラムドライヤー法)、濃縮器により溶液を濃縮した後にベント式押出機で溶媒を除去する方法、溶液を水に分散させ、水蒸気を吹き込んで溶媒を加熱除去して共重合体を回収する方法(スチームストリッピング法)等、任意の方法が採用できる。
【0037】
[ブロック共重合体組成物]
本発明に係るブロック共重合体組成物(以下、単に、本発明のブロック共重合体組成物ともいう。)は、上記した本発明のブロック共重合体を含む樹脂組成物である。ブロック共重合体組成物は、本発明のブロック共重合体を2種以上配合した樹脂組成物であってもよく、本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも1種の本発明のブロック共重合体と、他のブロック共重合体とを配合した樹脂組成物であってもよい。他のブロック共重合体としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエンとのブロック共重合体を挙げることができ、その組成は特に限定されない。
【0038】
ブロック共重合体組成物中の本発明のブロック共重合体の総含有割合は、ブロック共重合体組成物100質量に対して50質量%〜100質量%であり、好ましくは60質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは70質量%〜100質量%である。50質量%以上とすることで、収縮応力の低下を十分に防ぐことができる。
【0039】
ブロック共重合体組成物には、上記したブロック共重合体と同様に、必要に応じて、さらに各種の添加剤を配合できる。すなわち、ブロック共重合体組成物が各種の加熱処理を受ける場合や、その成形品などが酸化性雰囲気や紫外線などの照射下にて使用され、物性が劣化することに対処するため、或いは、使用目的に適した物性をさらに付与するため、例えば、上記した安定剤、滑剤、加工助剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、耐候性向上剤、軟化剤、可塑剤、顔料、鉱油、フィラー、難燃剤などの添加剤を添加できる。各種添加剤の種類及び添加量については、上記ブロック共重合体と同様である。
【0040】
(ブロック共重合体組成物の製造方法)
ブロック共重合体組成物は、上記した本発明のブロック共重合体を2種以上混合して、又は少なくとも1種の本発明のブロック共重合体と、他のブロック共重合体とを混合して製造することができる。各成分の混合方法は、特に制限はないが、例えば、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、Vブレンダー等でドライブレンドしてもよく、更に押出機で溶融してペレット化してもよい。あるいは、各重合体の製造時、重合開始前、重合反応途中、重合体の後処理等の段階で、添加してもよい。
【0041】
以上のブロック共重合体及びブロック共重合体組成物は、従来既知の任意の成形加工方法、例えば、押出成形、射出成形、中空成形などによってシート、フィルムを含む各種形状の押出し成形品、射出成形品、中空成形品、圧空成形品、真空成形品、2軸延伸成形品等極めて多種多様にわたる実用上有用な製品に容易に成形加工できる。本発明のブロック共重合体及びその組成物は、収縮応力が低いので、収縮させて容器包装ラベル用として用いる場合でも、層ずれを防いでシール部の見栄えをよく保つことができる。また、熱収縮性、強度及び剛性等のフィルムとしての諸性能も優れている。
【0042】
[熱収縮フィルム]
本発明に係る熱収縮フィルム(以下、単に、本発明の熱収縮フィルムともいう。)は、上記した本発明のブロック共重合体又はブロック共重合体組成物を含む層を少なくとも1層有する。ブロック共重合体又はブロック共重合体組成物を含む層の厚さは、特に限定されず、例えば、15μm〜60μmとすることができる。
【0043】
熱収縮フィルムは、上記したブロック共重合体又はブロック共重合体組成物を含む層に、他の層を積層させた積層フィルムとすることもできる。他の層としては、例えば、ポリエステル系樹脂を含む層、アクリル系樹脂を含む層等を挙げることができる。本発明のブロック共重合体及びブロック共重合体組成物は、収縮応力が低いので、ポリエステル系樹脂等を含む層との積層フィルムとした場合であっても、層ずれを防いで見栄えよく保つことができる。
【0044】
(熱収縮フィルムの製造方法)
熱収縮フィルムの製造方法としては、従来既知の任意の方法を用いることができる。例えば、本発明のブロック共重合体又はブロック共重合体組成物を、Tダイ式の単軸押出機でシート状に押し出した後、延伸して所定の厚さのフィルムを得ることができる。或いは、本発明のブロック共重合体又はブロック共重合体組成物と、他の層を構成する樹脂とを共押出しした後、延伸して所定の厚さに製膜することで製造することもできる。
【0045】
この熱収縮フィルムは、収縮させて容器包装ラベル用として用いる場合でも、層ずれを防いでシール部の見栄えをよく保つことができるので、ペットボトル、食品容器、又は日用雑貨等の、ラベル又はキャップシール、集積包装用フィルム、乾電池等の電気絶縁被膜等として広く利用できる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0047】
<重合例1>
以下の(1)〜(8)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン250.0kg、テトラヒドロフラン(THF)35.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液750mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン4.0kgを加え、内温を80℃に上げてスチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総質量55.9kgのスチレン、および総質量9.1kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ55.9kg/h、9.1kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレン及びブタジエンガスが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に保ちながら、1,3−ブタジエン12.5kg、及びスチレン14.5kgを一括添加し、引き続きこれを反応させた。
(6)スチレン及びブタジエンガスが完全に消費された後、スチレン4.0kgを一括添加し、重合を完結させた。
(7)全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック部、スチレンとブタジエンのランダムブロック部、スチレンとブタジエンのテーパードブロック部をもつ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例1のブロック共重合体を得た。上記重合例1について、その要点を表1にまとめて示す。
【0048】
<重合例2〜9>
上記重合例1において、上記(3)〜(6)で使用するモノマーの量を調整することでブロック共重合体の組成を決定することができる。従って、下記の表1に示した条件以外は、重合例1と同様に実施することにより、重合例2〜9のブロック共重合体樹脂組成物を得た。上記重合例2〜9について、その要点を表1にまとめて示す。
【0049】
<重合例10>
以下の(1)〜(8)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン250.0kg、テトラヒドロフラン(THF)35.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液750mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン4.0kgを加え、内温を50℃に上げてスチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に保ちながら、1,3−ブタジエン12.5kg、及びスチレン14.5kgを一括添加し、引き続きこれを反応させた。
(5)スチレン及びブタジエンガスが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量55.9kgのスチレン、および総量9.1kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ55.9kg/h、9.1kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(6)スチレン及びブタジエンガスが完全に消費された後、スチレン4.0kgを一括添加し、重合を完結させた。
(7)全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック部、スチレンとブタジエンのテーパードブロック部、スチレンとブタジエンのランダムブロック部をもつ重合体を含む重合液を得た。
(8)この重合液を脱揮して、重合例10のブロック共重合体を得た。上記重合例10について、その要点を表1にまとめて示す。
【0050】
<重合例11>
以下の(1)〜(9)の操作により、スチレンと1,3−ブタジエンのブロック共重合体を製造した。
(1)反応容器中にシクロヘキサン250.0kg、テトラヒドロフラン(THF)35.0gを入れた。
(2)この中に重合開始剤溶液としてn−ブチルリチウムの10質量%シクロヘキサン溶液750mLを加え、30℃に保った。
(3)スチレン4.0kgを加え、内温を80℃に上げてスチレンをアニオン重合させた。
(4)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を80℃に保ちながら、総量55.9kgのスチレン、および総量9.1kgの1,3−ブタジエンを、それぞれ55.9kg/h、9.1kg/hの一定添加速度で両者を同時に添加した。
(5)スチレン及びブタジエンガスが完全に消費された後、反応系の内温を50℃に保ちながら、1,3−ブタジエン12.5kg、及びスチレン14.5kgを一括添加し、引き続きこれを反応させた。
(6)スチレン及びブタジエンガスが完全に消費された後、スチレン4.0kgを一括添加し、引き続きこれを反応させた。
(7)スチレンが完全に消費された後、反応系の内温を70℃に保ちながら、エポキシ化大豆油アデカサイザーO−130P(ADEKA社)の25質量%シクロヘキサン溶液を600g添加し、30分間カップリング反応を行った。
(8)全ての重合活性末端を水により失活させて、ポリスチレンブロック、スチレンとブタジエンのランダムブロック部、スチレンとブタジエンのテーパードブロック部をもつ重合体を含む重合液を得た。
(9)この重合液を脱揮して、重合例11のブロック共重合体を得た。上記重合例11について、その要点を表1にまとめて示す。
【0051】
<重合例12〜18>
上記重合例1において、上記(3)〜(6)で使用するモノマーの量を調整することでブロック共重合体の組成を決定することができる。したがって、下記の表1に示した条件以外は、重合例1と同様に実施することにより、重合例12〜18のブロック共重合体を得た。上記重合例12〜18について、その要点を表2にまとめて示す。
ブロック共重合体のビニル芳香族炭化水素からなる重合体ブロックのブロック共重合体中の含有割合、ランダム共重合体ブロックのブロック共重合体中の含有割合、及び、テーパードブロックに含有される共役ジエンのブロック共重合体中の含有割合を、表1及び表2にまとめて示した。
【0052】
<実施例1〜14、比較例1〜7>
実施例1〜14、比較例1〜7として、上記の重合例1〜18で得られた各重合体を単味、または他の重合例との組成物として用い、表3の配合で一旦溶融混練して再度ペレット状の樹脂組成物とした後、後述する試験に供した。かかるブロック共重合体樹脂組成物は、2種類のブロック共重合体を十分にペレットブレンド(ドライブレンド)した後、田端機械工業株式会社製単軸スクリュー(スクリュー径:40mm、ダルメージタイプ)型押出機を用い、溶融温度200℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ストランド状に押し出し、冷却後、ペレタイザーにてペレット化した。
【0053】
次に、表1、表2、及び表3の共重合体及び樹脂組成物を、Tダイ式の単軸押出機(スクリュー径:65mm、ダルメージタイプ)を使用し、200℃で溶融させながら平均厚みが0.27mmのシート状に押し出した後、延伸温度に加熱しながらシートの流れ方向(以後、MDと略す。)に1.2倍で延伸し、さらにテンター延伸機でシートの流れ方向と直交する方向(以後、TDと略す。)に、延伸温度に加熱しながら4.5倍に延伸し、厚み平均50μmの熱収縮フィルムを得た。作製したフィルムは、以下の方法にしたがって、物性を測定し、収縮応力及びフィルムとしての諸性能について評価した。結果を表4及び表5に示した。
【0054】
<熱収縮率の測定>
熱収縮率は、下記の方法で測定した。
(1)延伸フィルムから、MD幅が100mm、TD幅が100mmの試験片を切り出した。
(2)温度を70℃、80℃、又は100℃に保った温水中に、それぞれ、この試験片を10秒間、完全に浸漬させた後、取り出し、直ちに水冷した。水冷後の試料片は、水分を十分に拭き取り、TDの長さL(mm)を測定した。
(3)次式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率(%)={(100.0−L)/100.0}×100
【0055】
<収縮応力の測定>
延伸フィルムを80℃のシリコーンオイル中に浸漬し、株式会社東洋精機製作所製熱収縮応力試験機を使用して得られた収縮力のピーク値を、試料断面積で割って求めた。
【0056】
<フィルムインパクト(衝撃強度)>
テスター産業株式会社製フィルムインパクトテスター(打ち抜きヘッド:25R)を使用して、フィルムの打ち抜きに要したエネルギー値を測り、さらに値毎に破壊箇所のフィルム厚みで割って求めた。
【0057】
<引張弾性率の測定>
引張弾性率は、下記の方法で測定した。
(1)延伸フィルムから、MD幅が100mm、TD幅が10mmの短冊状の試料片を切り出した。
(2)株式会社オリエンテック製テンシロン万能材料試験機を使用し、切り出した試料片を、測定温度23℃、引張速度200mm/minでMDに引張りを与え、引張弾性率を測定した。
【0058】
<ブツの抑制性の評価>
延伸フィルム外観を目視確認し、ブツの数を以下の基準に従って評価した。なお、「ブツ」とは、製膜時に発生する熱劣化ゲルのことであり、ブツが多いと熱収縮性フィルムの外観が悪化するため好ましくない。
A:ブツが少ない(フィルムの表面にブツが点在した)
B:ブツがやや多い
C:ブツが多い(フィルムの表面全体にブツが見られた。)
【0059】
<ハンドリング性の評価>
ハンドリング性は、以下に従いブロッキングの発生状態によって評価した。上記単軸押出機を用いて押出を行い、ペレタイザーでペレット化させた樹脂を、25kgずつ紙袋へ袋詰めを行い、室温まで十分に冷却させた後のペレットのブロッキング状態を以下の基準で評価し、表4及び表5に合わせて示した。
A:ブロッキングしていない
B:わずかにブロッキングしているが、軽い力でほぐれる
C:ブロッキングしており、強い力を掛けないと崩すのが困難である
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
【表5】
【0065】
表4から明らかなように、実施例1〜14のフィルムは、熱収縮応力が低く、かつフィルムとしての優れた諸性能を兼ね備えている。つまり、これらのフィルムは、熱収縮応力を低く保つとともに、包装材料として必要な熱収縮特性、強度及び剛性を有し、かつブツを抑制して見栄えをよく保つことができる。また、ブロッキングを抑制することができるのでハンドリング性に優れている。これに対して、表5から明らかなように、比較例1〜7のフィルムは、フィルムとしての諸性能と低い熱収縮応力とを両立することが困難であった。