(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、
前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、
前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、
a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程
を有し、
前記工程a)では、前記補正対象領域の前記幅方向中央位置付近に位置するノズルを中心に、インクの吐出量を補正すべきノズルを選定する、補正方法。
記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、
前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、
前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、
a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程
を有し、
前記工程a)では、前記画像データに濃度ムラの出現態様に近い形状の関数を適用することにより、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する、補正方法。
記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、
前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、
前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、
a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程
を有し、
前記工程a)では、前記補正対象領域を印刷するインク色の数および濃度の少なくともいずれかに応じて、補正を行うノズルの数を前記幅方向において変更し、または、補正範囲の中央位置を前記幅方向において変更し、または、補正の強度を変更する、補正方法。
記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、
前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、
前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、
a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程
を有し、
前記工程a)では、前記補正対象領域ごとに、前記多次色を構成する各色の代表値を定め、前記代表値と前記補正情報とに基づいて、前記吐出量の補正値を決める補正方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
境界部付近の画像が、C,M,Y,Kのいずれか1色により構成される1次色である場合には、上述したシェーディング補正で、濃度ムラを低減させることができる。しかしながら、境界部付近の画像が、2色以上で構成される多次色である場合には、先に吐出されるインクが印刷用紙上で硬化する前に、次の色のインクが吐出されることとなる。特に、記録ヘッドの境界部付近では、先に吐出されたインクが、他の部分よりも大きく流動する。このため、後に吐出されるインクが、先のインクの流動の影響を受けて、適切な濃度を得ることができない場合がある。その結果、記録ヘッドの境界部と他の部分との間に、濃度ムラが生じる。このような多次色特有の濃度ムラは、上記のシェーディング補正のみで解消することが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、インクジェット印刷装置において、ヘッドの境界部付近のノズルから吐出されるインクにより生じる多次色特有の濃度ムラを低減できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置であって、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体の搬送方向に沿って配置され、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニットと、前記ヘッドユニットからのインクの吐出動作を制御する制御部と、を備え、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、前記制御部は、印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する吐出量補正部を有
し、前記吐出量補正部は、前記画像データに濃度ムラの出現態様に近い形状の関数を適用することにより、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する。
本願の第2発明は、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置であって、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体の搬送方向に沿って配置され、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニットと、前記ヘッドユニットからのインクの吐出動作を制御する制御部と、を備え、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、前記制御部は、印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する吐出量補正部
を有し、前記吐出量補正部は、前記画像データに濃度ムラの出現態様に近い形状の関数を適用することにより、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する。
本願の第3発明は、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置であって、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体の搬送方向に沿って配置され、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニットと、前記ヘッドユニットからのインクの吐出動作を制御する制御部と、を備え、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、前記制御部は、印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する吐出量補正部
を有し、前記吐出量補正部は、前記補正対象領域を印刷するインク色の数および濃度の少なくともいずれかに応じて、補正を行うノズルの数を前記幅方向において変更し、または、補正範囲の中央位置を前記幅方向において変更し、または、補正の強度を変更する。
本願の第4発明は、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置であって、記録媒体を搬送する搬送機構と、記録媒体の搬送方向に沿って配置され、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出する複数のヘッドユニットと、前記ヘッドユニットからのインクの吐出動作を制御する制御部と、を備え、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、前記制御部は、印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する吐出量補正部を有し、前記制御部は、前記補正対象領域ごとに、前記多次色を構成する各色の代表値を定め、前記代表値と前記補正情報とに基づいて、前記吐出量の補正値を決める。
【0008】
本願の第
5発明は、第1発明
から第4発明までのいずれか1発明のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記画像データの前記補正対象領域が前記多次色であるか否かを判定する判定部をさらに有し、前記吐出量補正部は、判定部により前記画像データの前記補正対象領域が前記多次色であると判定された場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する。
【0010】
本願の第
6発明は、
第1発明から第5発明までのいずれか1発明のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記補正対象領域を含みかつ前記補正対象領域よりも大きい判断領域ごとに、前記多次色を構成する各色の代表値を定め、前記代表値と前記補正情報とに基づいて、前記吐出量の補正値を決める。
【0012】
本願の第
7発明は、第
3発明のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、
前記中央位置の補正値である中央補正値を変化させた複数の画像を含むテストチャートの印刷を実行させる機能をさらに有する。
【0013】
本願の第
8発明は、
第5発明のインクジェット印刷装置であって、前記判定部は、多次色か否かの判定において、
前記多次色を構成する各色の代表値が予め設定された範囲から外れる場合は、その代表値をもつ色をカウントしない。
【0014】
本願の第
9発明は、第1発明から第
8発明までのいずれか1発明のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、印刷すべき画像の全体において、前記画像データを補正するシェーディング補正部をさらに有し、前記吐出量補正部は、前記シェーディング補正部による補正後の画像データに対して、補正処理を行う。
【0015】
本願の第
10発明は、記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程と、を有
し、前記工程a)では、前記補正対象領域の前記幅方向中央位置付近に位置するノズルを中心に、インクの吐出量を補正すべきノズルを選定する。
本願の第11発明は、記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程を有し、前記工程a)では、前記画像データに濃度ムラの出現態様に近い形状の関数を適用することにより、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する。
本願の第12発明は、記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程を有し、前記工程a)では、前記補正対象領域を印刷するインク色の数および濃度の少なくともいずれかに応じて、補正を行うノズルの数を前記幅方向において変更し、または、補正範囲の中央位置を前記幅方向において変更し、または、補正の強度を変更する。
本願の第13発明は、記録媒体を搬送しつつ、記録媒体の搬送方向に沿って配置された複数のヘッドユニットから、記録媒体に対して互いに異なる色のインクを吐出することにより、記録媒体に多色画像を印刷するインクジェット印刷装置において、インクの吐出量を補正する補正方法であって、前記複数のヘッドユニットは、それぞれ、前記搬送方向に直交する水平方向である幅方向に沿って配列された複数のヘッドを有し、前記複数のヘッドは、それぞれ、前記幅方向に沿って配列された複数のノズルを有し、a)印刷すべき画像データの、前記複数のヘッドの境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色である場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する工程を有し、前記工程a)では、前記補正対象領域ごとに、前記多次色を構成する各色の代表値を定め、前記代表値と前記補正情報とに基づいて、前記吐出量の補正値を決める。
【0016】
本願の第
14発明は、
第10発明から第13発明までのいずれか1発明の補正方法であって、b)前記画像データの前記補正対象領域が前記多次色であるか否かを判定する工程をさらに有し、前記工程a)では、前記工程b)により前記画像データの前記補正対象領域が前記多次色であると判定された場合に、予め記憶された補正情報に基づいて、前記境界部付近における前記ノズルからのインクの吐出量を補正する補正方法。
【0018】
本願の第
15発明は、第10発明
から第14発明までのいずれか1発明の補正方法であって、前記工程a)では、前記補正対象領域を含みかつ前記補正対象領域よりも大きい判断領域ごとに、前記多次色を構成する各色の代表値を定め、前記代表値と前記補正情報とに基づいて、前記吐出量の補正値を決める。
【0020】
本願の第16発明は、第12発明の補正方法であって、
前記工程a)では、前記補正対象領域ごとに、前記多次色を構成する各色の代表値を定め、前記補正情報は、前記代表値と前記中央位置の補正値である中央補正値との対応関係を示す補正テーブルを含み、c)前
記中央補正値を変化させた複数の画像を含むテストチャートを印刷する工程と、d)前記テストチャートの印刷結果に基づいて、前
記補正テーブルを編集する工程と、をさらに有する。
【0021】
本願の第
17発明は、
第14発明の補正方法であって、前記工程b)の多次色か否かの判定において、前記代表値が予め設定された範囲から外れる場合は、その代表値をもつ色をカウントしない。
【0022】
本願の第
18発明は、第
10発明から第
17発明までのいずれか1発明の補正方法であって、e)印刷すべき画像の全体において、前記画像データを補正する工程をさらに有し、前記工程b)では、前記工程e)による補正後の画像データに対して、補正処理を行う。
【発明の効果】
【0023】
本願の第1発明〜第
18発明によれば、ヘッドの境界部に対応する補正対象領域が多次色である場合に、境界部付近におけるノズルからのインクの吐出量を補正する。これにより、境界部付近のノズルから吐出されるインクにより生じる多次色特有の濃度ムラを低減できる。
【0024】
特に、本願の第
6発明および第
15発明によれば、隣り合う補正対象領域において、補正値を滑らかに変化させることができる。
【0025】
特に、本願の第
7発明および第
16発明によれば、インクジェット印刷装置の作業者は、印刷されたテストチャートを見て、最も色ムラが目立ちにくい中央補正値を選択し、第3補正テーブルに反映させることができる。
【0026】
また、本願の第
8発明および第
17発明によれば、その色に起因する濃度ムラが生じにくい場合に、その色を無視することによって、補正を省略することができる。これにより、インクジェット印刷装置の処理負担を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0029】
<1.インクジェット印刷装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェット印刷装置1の構成を示す図である。このインクジェット印刷装置1は、帯状の記録媒体である印刷用紙9を搬送しつつ、複数のヘッドユニット21から印刷用紙9にインクを吐出することにより、印刷用紙9に多色画像を印刷する装置である。
図1に示すように、インクジェット印刷装置1は、搬送機構10、画像記録部20、光照射部30、および制御部40を備えている。これらのうち、少なくとも搬送機構10、画像記録部20、および光照射部30は、装置ハウジング100の内部に収容されている。
【0030】
搬送機構10は、印刷用紙9をその長手方向に沿う搬送方向に搬送するための機構である。本実施形態の搬送機構10は、巻き出し部11、複数の搬送ローラ12、および巻き取り部13を有する。複数の搬送ローラ12は、後述するニップローラ121を含んでいる。印刷用紙9は、巻き出し部11から繰り出され、複数の搬送ローラ12により構成される搬送経路に沿って搬送される。各搬送ローラ12は、水平軸を中心として回転することによって、印刷用紙9を搬送経路の下流側へ案内する。また、搬送後の印刷用紙9は、巻き取り部13へ回収される。
【0031】
図1に示すように、印刷用紙9は、画像記録部20の下方において、複数のヘッドユニット21の配列方向に沿って、略水平に移動する。このとき、印刷用紙9の記録面は、上方(ヘッドユニット21側)に向けられている。
【0032】
ニップローラ121は、後述する光照射部30よりも搬送経路の下流側に配置されている。ニップローラ121は、印刷用紙9の両面に接触して印刷用紙9を挟持しつつ、一定速度で能動回転する。印刷用紙9の搬送時には、制御部40が、ニップローラ121の回転速度に対して巻き出し部11の回転速度を調節する。これにより、印刷用紙9に張力が与えられる。その結果、搬送中における印刷用紙9の弛みやしわが抑制される。
【0033】
画像記録部20は、搬送機構10により搬送される印刷用紙9に対して、紫外線硬化型のインクを吐出する機構である。本実施形態の画像記録部20は、印刷用紙9の搬送方向に沿って配列された4つのヘッドユニット21を有する。これらのヘッドユニット21は、多色画像の色成分となるC(Cyan)、M(Magenta)、Y(Yellow)、K(Black)の各色のインクの液滴を、印刷用紙9の記録面に、それぞれ吐出する。各ヘッドユニット21は、装置ハウジング100に対して、固定的に配置されている。
【0034】
図2は、ヘッドユニット21の下面図である。
図2に示すように、本実施形態のヘッドユニット21は、筐体50と、筐体50に固定された2つの記録ヘッド51とを有する。2つの記録ヘッド51は、それぞれ、筐体50の下面に露出した吐出面を有する。また、
図2に示すように、2つの記録ヘッド51は、搬送方向の位置をずらして配置され、かつ、2つの記録ヘッド51で、印刷用紙9の幅方向(搬送方向に直交する水平方向)の全域をカバーするように、幅方向の位置もずらして配置されている。
【0035】
また、
図2中に拡大して示したように、各記録ヘッド51の下面には、複数のノズル52が規則的に配列されている。複数のノズル52は、互いに幅方向の位置をずらして配列され、印刷用紙9上の1ピクセル幅の領域に対して、1つのノズル52が割り当てられている。印刷時には、各記録ヘッド51の複数のノズル52から、印刷用紙9の記録面へ向けて、インクの液滴が吐出される。その結果、4つのヘッドユニット21が、それぞれ、印刷用紙9の記録面に単色画像を記録する。そして、4つの単色画像の重ね合わせによって、印刷用紙9の記録面に多色画像が形成される。
【0036】
光照射部30は、画像記録部20よりも搬送方向の下流側に位置する第1光照射部31と、第1光照射部31よりもさらに搬送方向の下流側に位置する第2光照射部32とを有する。第1光照射部31は、例えば、複数のLED光源から印刷用紙9の記録面へ向けて、紫外線を含む光を照射する。これにより、印刷用紙9上のインクが半硬化の状態となる。第2光照射部32は、例えば、メタルハライドランプから印刷用紙9の記録面へ向けて、紫外線を含む光を照射する。第2光照射部32の発光時の光量は、第1光照射部31の発光時の光量よりも大きい。このため、第2光照射部32からの光を受けると、印刷用紙9上のインクが完全に硬化して、印刷用紙9の記録面に定着する。
【0037】
制御部40は、インクジェット印刷装置1内の各部を動作制御するための手段である。本実施形態の制御部40は、CPU等の演算処理部41、RAM等のメモリ42、およびハードディスクドライブ等の記憶部43を有するコンピュータにより構成されている。
図1中に破線で示したように、制御部40は、上述した巻き出し部11、巻き取り部13、4つのヘッドユニット21、第1光照射部31、第2光照射部32、およびニップローラ121と、それぞれ電気的に接続されている。制御部40は、記憶部43に記憶されたコンピュータプログラムPをメモリ42に一時的に読み出し、当該コンピュータプログラムPに基づいて、演算処理部41が演算処理を行うことにより、上記の各部を動作制御する。これにより、インクジェット印刷装置1における印刷処理が進行する。
【0038】
また、制御部40は、インクジェット印刷装置1の外部に設置されたサーバ2と、通信可能に接続されている。サーバ2には、印刷対象となる画像データDが保存されている。印刷処理時には、搬送機構10により印刷用紙9が搬送されるとともに、制御部40が、指定された画像データDをサーバ2から読み出し、当該画像データDに基づいて、各ヘッドユニット21からのインクの吐出動作を制御する。その結果、画像データDに対応する画像が、印刷用紙9の記録面に記録される。
【0039】
<2.印刷前の補正処理について>
このインクジェット印刷装置1では、サーバ2から読み出された画像データDに種々の補正処理を行い、補正後の画像データに基づいて、各記録ヘッド51からインクを吐出する。以下では、画像データDに対する当該補正処理について、説明する。
【0040】
図3は、制御部40内の補正処理に関わる機能を、概念的に示したブロック図である。
図3に示すように、本実施形態の制御部40は、RIP部61、分版部62、位置調整部63、シェーディング補正部64、リニアライズ補正部65、境界補正部66、およびインク吐出指示部67を有する。また、境界補正部66は、判定部661と、吐出量補正部662とを有する。これらの各部の機能は、コンピュータプログラムPに基づいて制御部40が動作することにより、実現される。
【0041】
図4は、制御部40の上記の各部により実行される補正処理の流れを示したフローチャートである。
図4に示すように、サーバ2から画像データDが読み出されると、まず、制御部40内のRIP部61が、ページ記述言語(PDL)で作成された画像データDをラスターイメージに変換する、いわゆるRIP処理を行う(ステップS1)。次に、分版部62が、RIP処理後の画像データDを、C,M,Y,Kの4つの単色画像データDc,Dm,Dy,Dkに分解する(ステップS2)。
【0042】
続いて、位置調整部63が、4つの単色画像データDc,Dm,Dy,Dkのそれぞれについて、印刷用紙9上の印刷位置を決める(ステップS3)。これにより、各ヘッドユニット21内の複数のノズル52が、それぞれ、単色画像データDc,Dm,Dy,Dk内のどの部分に対応するインクを吐出するかが決まる。すなわち、単色画像データDc,Dm,Dy,Dk内の各部の記録を担当するノズル52が決まる。
【0043】
単色画像データDc,Dm,Dy,Dkの位置調整が完了すると、制御部40は、まず、シェーディング補正を行う(ステップS4)。
図3に示すように、制御部40内には、予め、各ノズル52の動作特性や
個体誤差に応じた補正値を含むシェーディングデータDsが保存されている。制御部40は、印刷用紙9の種類毎に、異なるシェーディングデータDsを有していてもよい。シェーディング補正部64は、当該シェーディングデータDsに基づいて、各単色画像データDc,Dm,Dy,Dk内の各ピクセルの階調値を、担当するノズル52毎に増加または減少させる。
【0044】
なお、本実施形態においては、各ピクセルの階調値(0〜100%)は、0%が「白」、100%が「ベタ」を示し、数値が大きい程、印刷される画像の濃度が高くなるものとする。
【0045】
次に、制御部40は、リニアライズ補正を行う(ステップS5)。
図3に示すように、制御部40内には、予め、C,M,Y,Kの各色について、入稿されたデータ上の階調値の変化と、印刷用紙9上における濃度値の変化とを近付けるための補正値を含むリニアライズデータDlが保存されている。制御部40は、印刷用紙9の種類毎に、異なるリニアライズデータDlを有していてもよい。リニアライズ補正部65は、当該リニアライズデータDlに基づいて、各単色画像データDc,Dm,Dy,Dk内の各ピクセルの階調値を、増加または減少させる。
【0046】
なお、シェーディング補正およびリニアライズ補正は、後述する補正対象領域A1だけではなく、画像の全体について行われる。
【0047】
続いて、制御部40は、境界補正を行う(ステップS6)。
図3に示すように、制御部40内には、予め、3種類の補正テーブルT1〜T3が保存されている。制御部40内の境界補正部66は、記録ヘッド51の境界部に対応する補正対象領域が、複数色で構成される多次色であるか否かを判定する。そして、多次色と判定された場合には、補正テーブルT1〜T3に基づいて、各単色画像データDc,Dm,Dy、Dk内の当該補正対象領域の階調値を、増加または減少させる。これにより、境界部付近におけるノズル52からのインクの吐出量を補正する。その結果、補正対象領域に生じ得る多次色特有の濃度ムラを低減させる。
【0048】
境界補正が終了すると、制御部40内のインク吐出指示部67は、補正後の単色画像データDc,Dm,Dy、Dkに基づいて、各ヘッドユニット21に、複数のノズル52からのインクの吐出動作を実行させる(ステップS7)。これにより、搬送される印刷用紙9の記録面に、C,M,Y,Kの各色のインクが順次に吐出される。その結果、印刷用紙9の記録面に、多色画像が形成される。
【0049】
<3.境界補正の詳細について>
続いて、ステップS6の境界補正の詳細について、さらに説明する。
【0050】
図5は、境界補正の手順を示したフローチャートである。
図6は、4つの単色画像データDc,Dm,Dy、Dkで構成される多色画像Dmultiと、各ヘッドユニット21の2つの記録ヘッド51との位置関係を、概念的に示した図である。
図6に示すように、多色画像Dmulti内には、複数の補正対象領域A1が設定される。複数の補正対象領域A1は、2つの記録ヘッド51の境界部510に対応する幅方向位置(境界部510付近の複数のノズル52から吐出されるインクにより記録される領域)において、搬送方向に一列に配列される。
【0051】
ステップS6の境界補正を行うときには、まず、制御部40内の判定部661が、多色画像Dmulti内の各補正対象領域A1について、補正の要否を判定する。具体的には、各補正対象領域A1が、複数色で構成される多次色であるか否かを、判定する(ステップS61)。そして、補正対象領域A1が多次色でない場合(ステップS61においてNoの場合)には、当該補正対象領域A1について、補正が不要であると判定する(ステップS62)。一方、補正対象領域A1が多次色である場合(ステップS61においてYesの場合)には、当該補正対象領域A1について、補正が必要であると判定する(ステップS63)。
【0052】
判定部661は、多色画像Dmulti内の全ての補正対象領域A1について、ステップS61の判定処理を行う。これにより、複数の補正対象領域A1のうち、補正を必要とする補正対象領域A1が特定される。
【0053】
ステップS61の判定処理では、例えば、補正対象領域A1ごとに、各色の階調値の代表値を算出する。代表値は、補正対象領域A1に含まれる複数のピクセルの階調値の平均値としてもよく、他の算出方法で代表値を定めてもよい。そして、例えば、代表値が0%よりも大きい色が2つ以上ある場合は、多次色と判定し、そうでない場合は多次色でないと判定すればよい。
【0054】
ただし、境界部510付近に生じる濃度ムラは、比較的階調値の高い領域で生じやすく、階調値の低い領域では生じにくい傾向がある。このため、多次色か否かの判定において、代表値が予め設定された閾値よりも小さい場合には、その代表値をもつ色を無視してもよい。本実施形態では、一例として、多次色か否かの判定において、代表値が50%未満の色をカウントしないこととする。このようにすれば、補正を必要とする補正対象領域A1の数を減らして、吐出量補正部662の処理負担を軽減できる。
【0055】
なお、既述の通り、本実施形態では、階調値が大きい程、印刷される画像の濃度が高くなるものとしているため、上記のように、代表値が閾値よりも小さい色をカウントしないこととしている。しかしながら、階調値が大きい程、印刷される画像の濃度が低くなる場合には、代表値が閾値よりも大きい色をカウントしないようにすればよい。このように、多次色か否かの判定において、代表値が予め設定された範囲から外れる場合に、その代表値をもつ色を無視することで、制御部40の処理負担を軽減できる。
【0056】
その後、吐出量補正部662は、補正が必要と判定された補正対象領域A1について、各ピクセルの補正値を決定する(ステップS64)。
【0057】
図7は、補正値を決定するためのモデル関数Fの例を示した図である。
図7の横軸は、ピクセルの幅方向の位置(ノズル52の幅方向の位置)を示している。
図7の縦軸は、各ピクセルに適用される補正値を示している。モデル関数Fは、濃度ムラの出現態様に近い形状の関数を用いればよい。
図7の例では、モデル関数Fとして、ガウス関数が用いられている。このため、
図7中の補正中央位置k1、補正範囲k2、および補正中央位置における補正値である中央補正値k3、の3つの係数k1〜k3が決まれば、モデル関数Fは一意に決まる。本実施形態では、3種類の補正テーブルT1〜T3を用いて、これらの係数k1〜k3を決める。
【0058】
図8〜
図10は、3種類の補正テーブルT1〜T3の例を示した図である。
【0059】
第1補正テーブルT1は、補正対象領域A1ごとに、上述した補正中央位置k1を決めるための補正情報である。
図8の例では、補正対象領域A1を構成する色がC色とM色の2色である場合の各色の代表値と、上述した補正中央位置k1との対応関係が規定されている。吐出量補正部662は、第1補正テーブルT1を参照して、補正対象領域A1を構成するC色およびM色の代表値に対応する補正中央位置k1の値を決める。例えば、着目する補正対象領域A1におけるC色の代表値が75%であり、当該補正対象領域A1におけるM色の代表値が65%である場合には、
図8において破線で囲まれた値が採用される。すなわち、補正中央位置k1の値は+95となる。この場合、補正対象領域A1の中央位置から幅方向に95ピクセルずれた位置を、モデル関数Fの補正中央位置k1とする。
【0060】
第2補正テーブルT2は、補正対象領域A1ごとに、上述した補正範囲k2を決めるための補正情報である。
図9の例では、補正対象領域A1を構成する色がC色とM色の2色である場合の各色の代表値と、上述した補正範囲k2との対応関係が規定されている。吐出量補正部662は、第2補正テーブルT2を参照して、補正対象領域A1を構成するC色およびM色の代表値に対応する補正範囲k2の値を決める。例えば、着目する補正対象領域A1におけるC色の代表値が75%であり、当該補正対象領域A1におけるM色の代表値が65%である場合には、
図9において破線で囲まれた値が採用される。すなわち、補正範囲k2の値は80となる。この場合、補正中央位置を中央とする幅方向の80ピクセルの範囲を、モデル関数Fの補正範囲k2とする。なお、ここで決定される補正範囲k2と、補正対象領域A1の幅方向の範囲とは、必ずしも一致しない。
【0061】
第3補正テーブルT3は、補正対象領域A1ごとに、上述した中央補正値k3を決めるための補正情報である。
図10の例では、補正対象領域A1を構成する色がC色とM色の2色である場合の各色の代表値と、上述した中央補正値k3との対応関係が規定されている。この場合、中央補正値k3には、C色の中央補正値と、M色の中央補正値とが含まれる。吐出量補正部662は、第3補正テーブルT3を参照して、補正対象領域A1を構成するC色およびM色の代表値に対応する中央補正値k3の値を決める。例えば、着目する補正対象領域A1におけるC色の代表値が75%であり、当該補正対象領域A1におけるM色の代表値が65%である場合には、
図10において破線で囲まれた値が採用される。すなわち、C色の中央補正値k3の値は−10、M色の中央補正値k3の値は+3となる。この場合、C色の単色画像データDcに適用される中央補正値k3は−10%となり、M色の単色画像データDmに適用される中央補正値k3は+3%となる。
【0062】
吐出量補正部662は、以上の補正テーブルT1〜T3を参照することによって決定した補正中央位置k1、補正範囲k2、および中央補正値k3を、モデル関数Fに代入する。これにより、補正対象領域A1ごとに、モデル関数Fが一意に決まる。吐出量補正部662は、補正対象領域A1ごとに、モデル関数Fに従って、各単色画像データDc,Dm,Dy,Dkにおける各ピクセルの補正値を決定する。補正値が決まると、吐出量補正部662は、各単色画像データDc,Dm,Dy,Dkにおける各ピクセルの階調値を、補正値に従って増減させる。これにより、境界部510付近の当該ピクセルに対応するノズル52からのインクの吐出量が補正される(ステップS65)。
【0063】
なお、
図8〜
図10の例では、補正対象領域A1を構成する色がC色とM色である場合の補正テーブルT1〜T3の例を示したが、制御部40は、C,M,Y,Kの4色のうち、2色以上の組み合わせに対して、それぞれ補正テーブルをもつ。3色の組み合わせに対しては、3次元の補正テーブル(例えば、C,M,Yの各代表値に対する補正中央位置k1を規定した3軸のテーブル)が用意される。吐出量補正部662は、補正対象領域A1の多次色を構成する色の組み合わせに応じた補正テーブルを参照して、補正値を決定する。
【0064】
このように、本実施形態のインクジェット印刷装置1では、記録ヘッド51の境界部510に対応する補正対象領域A1が多次色か否かを判定し、多次色である場合に、境界部510付近におけるノズル52からのインクの吐出量を補正する。これにより、記録ヘッド51の境界部510付近のノズル52から吐出されるインクにより生じる多次色特有の濃度ムラを低減できる。
【0065】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0066】
図11は、多色画像Dmultiに、補正対象領域A1と判断領域A2とを別々に設定した例を示した図である。
図11の例では、多色画像Dmulti中の複数の補正対象領域A1に対して、それぞれ、判断領域A2が設定される。判断領域A2は、補正対象領域A1を含み、かつ、補正対象領域A1よりも大きい領域とされる。ステップS61の判定処理では、補正対象領域A1だけではなく、判断領域A2全体における各色の階調値の代表値を算出する。そして、算出された判断領域A2の代表値に基づいて、補正対象領域A1が多次色であるか否かを判定する。また、ステップS64では、判断領域A2の代表値と、補正情報とに基づいて、補正値を決定する。
【0067】
このようにすれば、搬送方向に隣り合う補正対象領域A1において、補正値を滑らかに変化させることができる。したがって、印刷用紙9に記録された画像において、補正対象領域A1の濃度値が不自然に切り替わることを防止できる。
【0068】
図12は、補正値を決定するためのモデル関数Fの変形例を示した図である。
図12の例では、モデル関数Fとして、台形状(トップハット型)の関数が用いられている。
図12中の補正中央位置k1、補正範囲k2、中央補正値k3、および傾斜範囲k4の4つの係数k1〜k4が決まれば、モデル関数Fは一意に決まる。吐出量補正部662は、
図8〜
図10と同様の補正テーブルT1〜T3を用いて、補正中央位置k1、補正範囲k2、および中央補正値k3の3つの係数k1〜k3を決める。また、吐出量補正部662は、
図13のような第4補正テーブルT4を用いて、4つ目の係数である傾斜範囲k4を決める。
【0069】
第4補正テーブルT4は、補正対象領域A1ごとに、上述した傾斜範囲k4を決めるための補正情報である。
図13の例では、補正対象領域A1を構成する色がC色とM色の2色である場合の各色の代表値と、上述した傾斜範囲k4との対応関係が規定されている。この場合、傾斜範囲k4には、C色の傾斜範囲と、M色の傾斜範囲とが含まれる。吐出量補正部662は、第4補正テーブルT4を参照して、補正対象領域A1を構成するC色およびM色の代表値に対応する傾斜範囲k4の値を決める。例えば、着目する補正対象領域A1におけるC色の代表値が75%であり、当該補正対象領域A1におけるM色の代表値が65%である場合には、
図13において破線で囲まれた値が採用される。すなわち、C色の傾斜範囲k4の値は−25、M色の傾斜範囲k4の値は−30となる。この場合、C色の単色画像データDcに適用されるモデル関数Fの傾斜範囲k4は25ピクセルとなり、M色の単色画像データDmに適用されるモデル関数Fの傾斜範囲k4は30ピクセルとなる。
【0070】
なお、上記の実施形態では、補正値を決定するためのモデル関数Fとして、補正中央位置k1に対して線対称であるガウス関数を示した。また、上記の変形例では、補正値を決定するためのモデル関数Fとして補正中央位置k1に対して線対称である台形状の関数を示した。しかしながら、モデル関数Fは、濃度ムラの出現態様に近い形状の関数を用いればよいのであり、必ずしも線対称でなくてもよい。
【0071】
図14は、ステップS6の境界補正の手順の変形例を示したフローチャートである。
図5と
図14とを比較すると、
図14の例では、多色画像Dmulti内の各補正対象領域A1が複数色で構成される多次色であるか否かを判定し、各補正対象領域A1について、補正の要否を判定する処理(ステップS61〜S63)が省略されている。したがって、
図14の例では、吐出量補正部662が、多色画像Dmulti内の全ての補正対象領域A1について、各ピクセルの補正値を決定する(ステップS64)。
【0072】
図15〜
図17は、
図14のステップS64において用いられる3種類の補正テーブルT1〜T3の例を示した図である。
図15〜
図17の補正テーブルT1〜T3では、C色が50%未満の行およびM色が50%未満の列の全てのセルの値を「0」としている。このため、
図15〜
図17の補正テーブルT1〜T3を用いると、着目する補正対象領域A1におけるC色およびM色の少なくとも一方の代表値が50%未満の場合に、補正中央位置k1、補正範囲k2、および中央補正値k3は、全て0となる。
【0073】
したがって、
図15〜
図17の補正テーブルT1〜T3を用いれば、多色画像Dmulti内の各補正対象領域A1について、C色の代表値およびM色の代表値の少なくとも一方が50%未満のときには、補正値が0となり、境界補正が実質的に実行されない。したがって、代表値が50%未満の色が少なくとも1つ含まれている補正対象領域A1を、補正不要と判断した場合と、同じ結果を得ることができる。このようにすれば、多色画像Dmulti内の各補正対象領域A1が多次色であるか否かを判定する独立した工程を省略して(すなわち、境界補正部66内の判定部661を省略して)、制御部40の処理負担を軽減しつつ、多次色特有の濃度ムラを低減できる。
【0074】
なお、補正テーブルT1〜T3において値を「0」とする領域は、必ずしも1行1列のみでなくてもよい。例えば、
図15の第1補正テーブルT1、
図16の第2補正テーブルT2、および
図7の第3補正テーブルT3において、C色の代表値が50〜60%かつM色の代表値が50〜60%の場合にも、補正が必要ないケースがある。そのような場合は、該当するセル(
図15、
図16、および
図17中の破線で囲んだセル)の値を「0」としてもよい。あるいは、第3補正テーブルR3の補正値が「0」であれば補正が行われないので、該当するセル(
図17中の破線で囲んだセル)の値を「0」としてもよい。
【0075】
また、インクジェット印刷装置1の制御部40は、補正テーブルT1〜T4の各値を決めるためのテストチャートDtの印刷を実行する機能を有していてもよい。
図18は、当該テストチャートDtの例を示した図である。
図18のテストチャートDtは、C色が90%、M色が90%の二次色画像で、記録ヘッド51の境界部510に対応する領域の中央補正値k3を変化させた複数の画像を含む。インクジェット印刷装置1の作業者は、テストチャートDtの印刷結果を見て、最も色ムラが目立ちにくい中央補正値k3を選択し、第3補正テーブルT3に反映させることができる。
【0076】
このようにすれば、テストチャートDtの印刷結果に基づいて、第3補正テーブルT3内の各値を適切に設定することができる。したがって、印刷実績の無い印刷用紙9の種類に対応する第3補正テーブルT3も、容易に作成することができる。また、第1補正テーブルT1、第2補正テーブルT2、および第4補正テーブルT4についても、同様に、テストチャートDtの印刷結果に基づいて、テーブル内の各値を編集してもよい。
【0077】
また、上記の実施形態では、画像記録部20が4つのヘッドユニット21を有していた。しかしながら、画像記録部20が有するヘッドユニット21の数は、2〜3つであってもよく、5つ以上であってもよい。例えば、C,M,Y,Kの各色に加えて、特色のインクを吐出するヘッドユニット21が設けられていてもよい。また、上記の実施形態では、各ヘッドユニット21が、2つの記録ヘッド51を有していた。しかしながら、各ヘッドユニット21が有する記録ヘッド51の数は、3つ以上であってもよい。
【0078】
また、上記の実施形態では、紫外線硬化型のインクを用いていた。しかしながら、紫外線硬化型のインクに代えて、空気との接触や加熱により乾燥する水性のインクを用いてもよい。ただし、紫外線硬化型のインクを用いる場合には、インクの吐出後、紫外線を照射するまでは、印刷用紙9の表面においてインクの流動性が低下しにくいため、より濃度ムラが生じやすい。したがって、本発明が特に有用である。
【0079】
また、上記のインクジェット印刷装置1は、被記録媒体としての印刷用紙9に画像を記録するものであった。しかしながら、本発明のインクジェット印刷装置は、一般的な紙以外の帯状の記録媒体(例えば、樹脂製のフィルム等)に、画像を記録するものであってもよい。
【0080】
また、インクジェット印刷装置の細部の形状については、本願の各図と相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。