【実施例】
【0022】
図1から
図4を用いて本発明の一実施例に係るデブリの堆積量推定装置及び推定方法の詳細を説明する。
【0023】
図1に高速増殖炉であるJSFRに本実施例に係るデブリの堆積推定装置及び推定方法を適用した例を示す。
図1に示すように、炉心11を収納する原子炉容器10の内部空間には、下部プレナム12と中間プレナム13とを隔てるスカート部15が設けられており、炉心11は当該スカート部15等の据付部によって支持されている。
炉心11の上方には、中間プレナム13と上部プレナム14とを隔てる円環状に形成された積層板16が原子炉容器10の内周面に沿って設けられている。また、下部プレナム12には過酷事故発生時に溶融した燃料の受け皿となるコアキャッチャ17が設けられている。
この原子炉容器10内には冷却材として液体金属である液体ナトリウム18が充填されている。また、原子炉容器10は、その外周を生体遮蔽壁20によって取り囲まれている。
【0024】
なお、
図1は過酷事故発生時を想定したものであり、コアキャッチャ17にデブリDが堆積した状態を示している。
【0025】
そして、デブリの堆積量推定装置30は、一つの中性子検出器31と、デブリ堆積量推定手段としてのデブリ堆積量推定部32とから構成されている。
本実施例では、生体遮蔽壁20に上下方向(本実施例では鉛直方向)に沿って計測用の穴20aが形成されており、中性子検出器31は当該検出器31の水平方向外側の空間に存在する中性子束を計測するようにこの計測用の穴20aに挿通され、原子炉容器10の外側から原子炉容器10内部の中性子束の計測を行う。計測用の穴20aの深さは、少なくともコアキャッチャ17と同じ高さにおいて中性子検出器31による計測を行うことができる深さとする。
中性子検出器31によって計測した結果はデブリ堆積量推定部32に送られる。
【0026】
デブリ堆積量推定部32は、
図2に示すように遮蔽解析部321と、遮蔽解析結果記憶部322と、中性子計測結果記憶部323と、デブリ堆積量推定演算部324とを備えている。
【0027】
遮蔽解析部321は、予め過酷事故が発生した場合の状況(原子炉構造、デブリ堆積位置、デブリ堆積量、計測開始時期など)を想定して模擬解析(以下、遮蔽解析という)を実施する。この遮蔽解析によりデブリDの堆積位置及び堆積量と特定の位置(例えば、計測用の穴20aのコアキャッチャと同じ深さにある位置)に配置した中性子検出器31により検出した中性子束の量との関係を把握し、デブリDの堆積量と計測位置での中性子束の鉛直方向の分布との関連付けを行う。
【0028】
遮蔽解析結果記憶部322は、遮蔽解析部321によって実施した遮蔽解析の結果を保管する。
中性子計測結果記憶部323は、中性子検出器31によって検出した中性子束の計測結果を保管する。
【0029】
デブリ堆積量推定演算部324は、遮蔽解析結果記憶部322に保管された遮蔽解析の結果と、中性子計測結果記憶部323に保管された中性子束の計測結果とに基づいて原子炉容器10内部の特定の位置に堆積したデブリDの堆積量の推定を行う。すなわち、原子炉容器10の外部から中性子束を計測した結果と遮蔽解析で得られたデブリDの堆積量に対する計測位置における中性子束の値とを比較してデブリDの堆積量を推定する。推定結果は、図示しない表示部等に出力される。
【0030】
以下、
図3から
図5を用いて本実施例におけるデブリの堆積量推定方法についてより詳しく説明する。
本実施例に係るデブリの堆積量推定装置では、まず、遮蔽解析部321において、過酷事故発生における計測時の状況(原子炉構造、デブリ堆積位置、デブリ堆積量、計測開始時期など)を想定して遮蔽解析を実施し(ステップS1)、原子炉容器10内部の中性子束の鉛直方向の分布を求める(ステップS2)。なお、デブリDに含まれる中性子束の量については、これまでの知見を踏まえて求めたデブリDの組成(燃料と構造材との割合)に基づいて定めるものとする。ステップS2で求めた中性子束の分布は、解析結果として遮蔽解析結果記憶部323に保管される。
図4に示す例は、デブリDが全てコアキャッチャ17に堆積したと想定した場合の中性子束の分布の一例である。
【0031】
続いて、同じく遮蔽解析部321において、ステップS2で求めた中性子束の分布を、中性子検出器31が計測する計数率の分布に変換する(ステップS3)。
図5に示す例は、
図4に示す中性子束の仮想分布を、計数率分布に変換した例である。ステップS3で求めた計数率分布は、解析結果として遮蔽解析結果記憶部323に保管される。
【0032】
続いて、ステップS3で求めた計数率分布から、デブリDが堆積していることを特徴づける次の二つの観点に基づいて、過酷事故が発生した場合に中性子検出器31により中性子束の計測を行う位置(本実施例では、計測用の穴20a内の中性子検出器31を配置する深さ。以下、計測位置という)を決定する(ステップS4)。
・計数率が多い。
・鉛直方向の計数率の変化が小さい。
【0033】
図5に示す例では、炉心11の中心高さよりも850cm下方の位置(コアキャッチャが設置されている位置)が、計数率が高く且つ鉛直方向の計数率の変化が小さいことから、この位置が計測位置として決定される。
【0034】
そして、事故が発生した場合には、ステップS4で決定した計測位置に中性子検出器31を手動又は遠隔操作等により配置し、当該計測位置において中性子束の計測を行う(ステップS5)。計測結果は、中性子計測結果記憶部323に保管される。
【0035】
続いて、デブリ堆積量推定演算部324において、遮蔽解析の結果と中性子検出器31によって計測した結果とに基づき、デブリDの堆積量を推定する(ステップS6)。より具体的には、デブリ堆積量推定演算部324では、解析で求めたデブリDの堆積量(本実施例では、全てのデブリDがコアキャッチャ17に堆積したと仮定したときのデブリDの堆積量)を1としたときの比率rを下式(1)により求める。
【0036】
【数1】
【0037】
ただし、C:計測した中性子束のカウント数[c]
T:計測時間[s]
a:解析結果から求まる計数率[cps]
【0038】
そして、式(1)により求めた比率rから、実際に原子炉容器10の内部に堆積しているデブリDの堆積量を推定する。このように構成される本実施例に係るデブリの堆積量推定方法での推定誤差は約2%であった(誤差要素として検出器の据付誤差(±10cm)に起因するものとカウント数のゆらぎ(1σ)に起因するものとを考慮)。
なお、本実施例では、デブリDの組成(燃料と構造材の割合)をこれまでの知見を踏まえて定めているため、そこから発生する中性子束を計測することで堆積量の推定を可能としている。
【0039】
このように、本実施例に係るデブリの堆積量推定方法は、デブリDの中に中性子を放射する同位体元素が含まれていることに着目し、原子炉容器10の外部から原子炉容器10内部の中性子束を計測することによってデブリDの堆積位置における量を推定するものである。
【0040】
JSFRに代表される高速増殖炉ではナトリウムなどの液体金属を冷却材に使用していることから、軽水に比べ中性子が冷却材等に吸収されにくく、デブリDから放射される中性子束を原子炉容器10の外部から計測できるため、原子炉容器10の内部に中性子検出器31を挿入する必要がなく、安全にデブリDの堆積位置における量を推定することが可能である。
【0041】
また、JSFRでは、再臨界を回避するため種々の対策が施されており、デブリが堆積する位置はある程度特定することが可能であるため、デブリの量を推定することで、炉内の状況を把握することも可能となる。
【0042】
このように、本実施例に係るデブリの堆積量推定装置及び推定方法によれば、確実かつ安全に、特定された位置に堆積したデブリの堆積量を推定することができ、これにより、炉内の状況を把握することができる。
【0043】
なお、JSFRでは、上述した再臨界を回避するため種々の対策として、炉心を構成する燃料集合体内に損傷炉心物質が通るダクトを設け、事故時には損傷炉心物質がこのダクトを通って上部に吹き上げ積層板に堆積し、残りの損傷炉心物質も受け皿であるコアキャッチャに落ちて堆積するように構成されている(
図6参照)。本実施例ではデブリが全てコアキャッチャ17に堆積したと想定して遮蔽解析を行う例を示したが、例えば
図6に示すように、過酷事故時に損傷炉心物質が積層板16及びコアキャッチャ17に堆積するように構成されている場合は、計測位置として各堆積位置に対応する計測位置を設定し、それぞれの計測位置ごとに解析結果と実際の計測結果とに基づき各堆積位置におけるデブリDの堆積量を推定すればよい。
【0044】
また、本実施例では一つの中性子検出器31により中性子束の計測を行う例を示したが、生体遮蔽壁に計測用の穴を複数形成し、それぞれの穴に中性子検出器を挿通して原子炉容器10内の中性子束を計測し、それぞれの計測結果を総合的に判断してデブリDの堆積量を推定するようにしてもよい。