特許第6563749号(P6563749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563749
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】データ解析装置及びデータ解析方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 99/00 20110101AFI20190808BHJP
   B61K 9/08 20060101ALI20190808BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20190808BHJP
   B60K 28/14 20060101ALN20190808BHJP
   A61B 5/18 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   G01M99/00 Z
   B61K9/08
   G08G1/00 J
   !B60K28/14
   !A61B5/18
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-175833(P2015-175833)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2016-218032(P2016-218032A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2018年3月23日
(31)【優先権主張番号】特願2014-210671(P2014-210671)
(32)【優先日】2014年10月15日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-115600(P2015-115600)
(32)【優先日】2015年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】313016554
【氏名又は名称】株式会社toor
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】高枝 佳男
(72)【発明者】
【氏名】金田 哲也
【審査官】 小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−058171(JP,A)
【文献】 特開2007−256153(JP,A)
【文献】 特開2012−230703(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 17/00−17/10
G01M 99/00
G08G 1/00
B61K 9/08
B60K 28/14
A61B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数かつ任意の周波数成分を有する数値データである複数のセグメントについて、前記セグメント相互間の類似度を表す指標を、前記セグメントの有する周波数成分を含む周波数スペクトルを用いて算出する指標化部と、
前記指標に基づき、前記セグメントを面上にプロットしてマップを作成するマップ作成部と、
を備えるデータ解析装置。
【請求項2】
前記指標化部は、周波数成分を次元とし当該周波数成分の大きさを当該次元の値とする多次元ベクトルを生成し、前記指標を、前記多次元ベクトル間の距離を用いて算出する
請求項1に記載のデータ解析装置。
【請求項3】
前記マップ上に前記セグメントが分布する一定の領域を選択する領域選択部と、
前記領域選択部の選択した領域に特徴的な周波数スペクトル又は特徴周波数を抽出する特徴スペクトル抽出部と、
をさらに備える請求項1又は2に記載のデータ解析装置。
【請求項4】
前記数値データは、車両の振動周波数成分を有し、
前記一定の領域は、前記車両又は前記車両の走行経路の劣化又は状態、又は前記車両の運転の状態に対応する、
請求項に記載のデータ解析装置。
【請求項5】
前記数値データは、生体の少なくとも一部の振動周波数成分を有し、
前記一定の領域は、前記生体の前記一部又は全体の状態に対応する、
請求項に記載のデータ解析装置。
【請求項6】
前記指標化部は、前記複数のセグメントとは異なる新たなセグメントについて、当該新たなセグメントと前記複数のセグメントとの類似度を表す新たな指標を、前記新たなセグメント及び前記複数のセグメントの有する周波数成分を含む周波数スペクトルを用いて算出し、
前記新たな指標に基づき、前記複数のセグメントのうちの前記新たなセグメントと類似するセグメントの近傍に、前記新たなセグメントをプロットするプロット部をさらに備える、
請求項1から5のいずれかに記載のデータ解析装置。
【請求項7】
前記数値データを空間的又は時間的な区間に分割して前記セグメントを作成する分割部をさらに備える請求項1から6のいずれかに記載のデータ解析装置。
【請求項8】
複数かつ任意の周波数成分を有する数値データである複数のセグメントについて、前記セグメント相互間の類似度を表す指標を、前記セグメントの有する周波数成分を含む周波数スペクトルを用いて算出する指標化手順と、
前記指標に基づき、前記セグメントを面上にプロットしてマップを作成するマップ作成手順と、
をデータ解析装置が実行するデータ解析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数成分を有する数値データを解析するデータ解析装置及びデータ解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道線路および道路等の交通輸送のための経路の異常を検知するための振動分析方法が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。特許文献1の方法は、予め正常時の伝達関数を取得しておき、この伝達関数に基づいて異常を検知する。特許文献2の方法は、予め正常時の基準周波数スペクトルを取得しておき、この基準周波数スペクトルに基づいて異常を検知する。
【0003】
正常時の伝達関数及び基準周波数スペクトルは、経路の特性に応じて異なる。このため、特許文献1及び2の振動分析方法は、異常を検知したいすべての経路についての正常時の伝達関数又は基準周波数スペクトルを測定する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許2992954号公報
【特許文献2】特許5130181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄道線路および道路等の交通輸送のための経路は常にどこかで補修が行われているため、伝達関数及び基準周波数スペクトルなどの基準となる正常時の情報は常に変化する。そのため、異常を検知したいすべての経路についての正常時の情報を基準として保持するのは困難であった。さらに、標準のスペクトルからのずれは検出できても、劣化の内容を判定するには別の仕組みが必要であり、同時に劣化内容まで判定するのは困難であった。
【0006】
本発明は、正常時の情報を基準に用いることなく異常およびその内容を診断することの可能な、周波数成分を有する数値データのデータ解析装置及びデータ解析方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るデータ解析装置は、
複数かつ任意の周波数成分を有する数値データである複数のセグメントについて、前記セグメント相互間の類似度を表す指標を、前記セグメントの有する周波数成分を含む周波数スペクトルを用いて算出する指標化部と、
前記指標に基づき、前記セグメントを面上にプロットしてマップを作成するマップ作成部と、
を備える。
【0008】
本発明に係るデータ解析装置では、前記マップ上に前記セグメントが分布する一定の領域を選択する領域選択部をさらに備えていてもよい。
【0009】
本発明に係るデータ解析装置では、前記領域選択部の選択した領域に特徴的な周波数スペクトル又は特徴周波数を抽出する特徴スペクトル抽出部をさらに備えていてもよい。
【0010】
本発明に係るデータ解析装置では、前記数値データは、車両の振動周波数成分を有し、前記一定の領域は、前記車両又は前記車両の走行経路の劣化又は状態、又は前記車両の運転の状態に対応していてもよい。
【0011】
本発明に係るデータ解析装置では、前記数値データは、生体の少なくとも一部の振動周波数成分を有し、前記一定の領域は、前記生体の前記一部又は全体の状態に対応していてもよい。
【0012】
本発明に係るデータ解析装置では、
前記指標化部は、前記複数のセグメントとは異なる新たなセグメントについて、当該新たなセグメントと前記複数のセグメントとの類似度を表す新たな指標を、前記新たなセグメント及び前記複数のセグメントの有する周波数成分を含む周波数スペクトルを用いて算出し、
前記新たな指標に基づき、前記複数のセグメントのうちの前記新たなセグメントと類似するセグメントの近傍に、前記新たなセグメントをプロットするプロット部をさらに備えていてもよい。
【0013】
本発明に係るデータ解析装置では、前記数値データを空間的又は時間的な区間に分割して前記セグメントを作成する分割部をさらに備えていてもよい。
【0014】
本発明に係るデータ解析方法は、
複数かつ任意の周波数成分を有する数値データである複数のセグメントについて、前記セグメント相互間の類似度を表す指標を、前記セグメントの有する周波数成分を含む周波数スペクトルを用いて算出する指標化手順と、
前記指標に基づき、前記セグメントを面上にプロットしてマップを作成するマップ作成手順と、
をデータ解析装置が実行する。
【0015】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、各セグメント相互間の類似度を表す指標を用いるため、正常時の情報を用いることなく異常セグメントを検出し異常状態の内容を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態1に係る振動分析システムの一例を示す。
図2】マップの一例を示す。
図3】実施形態5に係る振動分析システムの一例を示す。
図4】実施形態6におけるマップの一例を示す。
図5】実施形態6におけるセグメントの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0019】
(実施形態1)
図1に、本実施形態に係るデータ解析装置の一例を示す。本実施形態に係るデータ解析装置30は、記憶部31及び情報処理部32を備える。
【0020】
記憶部31は、数値データを格納する。記憶部31に記憶されている数値データは、少なくとも1つの周波数成分とその振幅の数値を有する。数値データは、数値化できる「量」であり、周波数成分(例えば時間あるいは空間周波数)に変換できるものであればよい。
【0021】
また、記憶部31に記憶されている数値データは、複数のセグメントに分割された状態で格納されている。セグメントは、数値データが有する属性データのうちの周波数以外の任意の属性データに基づいて分割したものである。そのような属性データとしては、例えば、日時、位置、個体IDが例示できる。セグメント元データの集合を「セグメント母集団」と呼ぶ。セグメント元データを時間あるいは空間周波数に変換することで、セグメント毎に周波数スペクトルデータ(以下「セグメントデータ」と呼ぶ)が得られる。
【0022】
情報処理部32は、記憶部31から数値データを読み出し、本実施形態に係るデータ解析方法を実行する。本実施形態に係るデータ解析方法は、情報処理部32が、指標化手順と、マップ作成手順と、を順に実行する。
【0023】
指標化手順では、指標化部323が、記憶部31から数値データを読み出し、複数のセグメントについて、セグメント相互間の類似度を表す指標を、セグメントの有する周波数成分を含む周波数スペクトルを用いて算出する。
【0024】
一つのセグメントデータに関して、周波数とその周波数成分の大きさを一つの次元とその成分数値と見做すと、セグメントデータは膨大な次元を持つ多次元空間のベクトルで表記できる。2つのセグメントデータ間の類似度は、対応するベクトル間の距離とする。一般には、ベクトル空間モデルにおけるベクトル相互間の距離としては、直接的な距離のほか、内積や外積などが用いられる。
【0025】
マップ作成手順では、マップ作成部324が、指標に基づき、セグメントを面上にプロットする。具体的には、「距離の近いセグメント同士は近くに、距離の遠いセグメント同士は遠くに配置する」一定のマップ化アルゴリズムに基づいて2次元にプロットできる。このマップを以下「セグメントマップ」と呼ぶ。プロットする面は、平面であってもよいし、球面などの曲面であってもよい。図2に、マップの一例を示す。
【0026】
類似のスペクトルを持つセグメントデータ同士は距離が近くなり、密度の高いセグメントの分布領域を形成するので、視覚的にあるいは一定のアルゴリズムを使って類似度の高いセグメント集団を選別することが可能である。類似度の高いセグメントの抽出だけが目的で視覚化が必要ない場合は、クラスタリング手法を用いる方法もある。
【0027】
マップ上には、一般に、密度の高い領域や密度の低い領域が出現する。それぞれの領域を構成する要因は、領域ごとに異なる。本実施形態に係る発明は、各領域に特徴的な周波数スペクトルや特徴周波数を解析することで、各領域を構成する要因を分析することが可能となる。これにより、本実施形態に係る発明は、一般には非常な困難なビッグデータの分析を可能にすることができる。
【0028】
(実施形態2)
図1に、本実施形態に係るデータ解析装置の一例を示す。本実施形態に係るデータ解析装置は、情報処理部32が分割部321を備える。また本実施形態に係るデータ解析方法は、指標化手順の前に、情報処理部32が、分割手順を実行する。
【0029】
分割手順では、分割部321が、数値データを空間的又は時間的な区間に分割してセグメントを作成し、記憶部31に記憶する。
【0030】
本実施形態に係るデータ解析装置30は、分析目的に応じて、セグメントの大きさや属性データを変更できるため、多様な解析を行うことができる。
【0031】
(実施形態3)
セグメント密度の高い領域は、複数存在する場合が一般的であるが、それぞれに「特徴的なスペクトル」(以下特徴スペクトルと呼ぶ)を有する。また、それぞれの領域で各セグメントデータの「近さ」に寄与する周波数成分をそれぞれの領域の「特徴周波数」と呼ぶ。
【0032】
図1に、本実施形態に係るデータ解析装置の一例を示す。本実施形態に係るデータ解析装置30は、情報処理部32が、領域選択部326及び特徴スペクトル抽出部327を備える。また本実施形態に係るデータ解析方法は、マップ作成手順の後に、情報処理部32が、領域選択手順及び特徴スペクトル抽出手順を実行する。
【0033】
領域選択手順では、領域選択部326が、マップ上にセグメントが分布する一定の領域を選択する。一定の領域は、例えば、密度が一定値以上の領域C1〜C5である。一定の領域は、密度が一定値以下の領域であってもよい。
【0034】
特徴スペクトル抽出手順では、特徴スペクトル抽出部327が、領域選択部326の選択した領域に特徴的な周波数や周波数スペクトル又は特徴周波数を抽出する。例えば、領域選択部326が領域C1を選択した場合、特徴スペクトル抽出部327は、領域C1に含まれる各セグメントの特徴周波数、特徴スペクトル又は平均周波数スペクトルを出力する。
【0035】
数値データは、例えば、車両の振動周波数成分を有する振動データである。この場合、実施形態5〜実施形態8において詳述するように、一定の領域は、車両の走行路面の劣化状態、車体の異常状態又は運転の異常状態に対応する。
【0036】
数値データは、例えば、生体の少なくとも一部の振動周波数成分を有する振動データである。この場合、実施形態9において詳述するように、一定の領域は、生体の一部又は全体の状態に対応する。振動データは、例えば、呼吸、音声、心電図、エコー、靴や膝などの動き波形である。
【0037】
本実施形態に係るデータ解析装置30は、特徴スペクトルや特徴周波数から、各領域に所属するセグメントデータの特徴を分析でき、さらにはその要因を分析することも可能となる。また、セグメントの持つ属性データをパラメータに、マップ上の該当するプロットを色表示するなどにより、膨大なデータに内在する傾向を視覚化し、また様々な発見を行うことがより容易となる。
【0038】
さらに、本実施形態の理論と手法はシンプルであり、ビッグデータのフレームワーク上で高速で処理できるため、誰でも物理量のビッグデータの分析ができるようになり、結果にも個人差が表れないと期待できる。
【0039】
(実施形態4)
図1に、本実施形態に係るデータ解析装置の一例を示す。本実施形態に係るデータ解析装置30は、情報処理部32がプロット部328を備える。また本実施形態に係るデータ解析方法は、情報処理部32が、マップ作成手順の後に、指標化手順及びプロット手順を実行する。
【0040】
数値データによっては新たなデータが追加される場合がある。記憶部31に新たな数値データが格納され、新たな数値データを解析する場合、指標化部323は、指標化手順を再度実行する。このとき、指標化部323は、新たなセグメントについて、当該新たなセグメントと既にマップ化してある既存の各セグメントとの類似度を表す新たな指標を算出する。指標の算出方法は、実施形態1と同様に、周波数スペクトルを用いて行う。
【0041】
プロット手順では、プロット部328が、新たな指標に基づき、既存データを対象にマップ作成部324の作成したマップ上の複数の既存のセグメントのうちの新たなセグメントと類似するセグメントの近傍に、新たなセグメントをプロットする。
【0042】
既に存在するマップ上に新たなセグメントをプロットするため、新たなセグメントが過去に存在したどのセグメントと類似しているかを把握することができる。このため、新たなセグメントの分析を容易に行うことができる。
【0043】
以下に、数値データが車両の振動周波数成分を有する振動データである場合の実施形態を説明する。
【0044】
(実施形態5)
図3に、本実施形態に係る振動分析システムの一般的な例を示す。本実施形態に係る振動分析システムは、振動分析装置10と、振動検出装置20と、通信ネットワーク100と、を備える。振動検出装置20は、車両に搭載され、振動を検出する。通信ネットワーク100は、振動検出装置20の検出した振動データを振動分析装置10に転送する。
【0045】
車両は、例えば、道路を走行可能な自動車や、線路を走行可能な列車である。振動検出装置20は、鉛直方向(以下においてz軸方向と表記する。)、進行方向(以下においてx軸方向と表記する。)又は鉛直方向及び進行方向に垂直な方向(以下においてy軸方向と表記する。)の少なくとも一方向への車両の振動を検出可能な任意のデバイスである。振動は、ゆったりしたものから速いものまで含み、周波数レンジで限定されない。
【0046】
振動の検出は、y軸方向及びz軸方向のうちの少なくともいずれかへ印加された加速度を測定可能な加速度センサを用いることができる。y軸方向の移動の検出は、ハンドルの回転を検出するセンサを用いてもよい。また、y軸方向及びz軸方向の移動の検出は、車外を撮影した画像又は映像を用いてもよい。
【0047】
振動分析装置10は、記憶部11、情報処理部12及び通信部13を備える。通信部13は、振動検出装置20の検出した振動データを通信ネットワーク100から受信し、記憶部11に記憶する。情報処理部12は、記憶部11から振動データを読み出し、本実施形態に係る振動分析方法を実行する。
【0048】
本実施形態に係る振動分析方法は、分割手順と、周波数変換手順と、指標化手順と、マップ作成手順と、状態判定手順と、を順に有する。情報処理部12は、分割部121と、周波数変換部122と、指標化部123と、マップ作成部124と、状態判定部125と、を備える。振動分析装置10は、本実施形態に係る振動分析プログラムをコンピュータに実行させることで実現してもよい。この場合、情報処理部12が記憶部11に記憶された振動分析プログラムを実行することで、各構成を実現する。
【0049】
分割手順では、分割部121が、車両の振動データを予め定められたセグメントごとに分割する。例えば、セグメントiの振動データをAi(t)とすると、振動データの変化A(t)は、
A(t)=ΣAi(t)、 (i=1、2、3、・・・・、N−1、N)
となる。ここでNはセグメントの総数である。
【0050】
ここで、セグメントは、地理的又は時間的な区間であり、分析する内容に応じて異なる。例えば、道路や線路の状態を分析するのであれば地理的な区間であり、運転者の状態を分析するのであれば時間的な区間である。地理的な区間は例えば100m単位であり、時間的な区間は例えば10秒単位である。
【0051】
周波数変換手順では、周波数変換部122が、各セグメントiの振動データAi(t)を周波数スペクトルFi(ω)に変換する。
【0052】
指標化手順では、指標化部123が、各セグメントの周波数スペクトルFi(ω)(iは任意)相互間の類似度を表す指標を算出する。例えばセグメントiとk間の類似度を表す指標はDikと表記する。
【0053】
例えば、周波数スペクトルFi(ω)を、予め決めたn個の離散周波数値でサンプリングする。そして、離散的な周波数ωjの周波数振幅Fi(ωj)を使って、Fi(ω)を、n次元ベクトルPi=(Fi(ω1),Fi(ω2),Fi(ω3),・・・,Fi(ωn−1),Fi(ωn))に変換する。これにより、各セグメントの周波数スペクトルをベクトル化することができる。ここで、サンプリングするnの数は、任意であるが、例えば100とする。
【0054】
指標化部123は、周波数スペクトルFi(ω)を用いて、セグメント相互間の類似度を表す指標を算出する。指標Dikは、セグメント相互間の周波数スペクトルの類似度を表すことの可能な任意の指標であり、例えば、PiとPjのベクトルの距離である。指標Dikは、PiとPjの内積を用いて算出してもよいし、PiとPjの外積を用いてもよい。
【0055】
マップ作成手順では、マップ作成部124が、指標Dikに基づき、Pi(i=1,2,3,・・・・,N−1,N)をマップ上にプロットする。周波数スペクトルが類似していれば、PiとPjはマップ上で、互いに近くにプロットされる。基本的なアルゴリズムについては、特開2005−92442と類似したアルゴリズムを用いることができる。
【0056】
図2に、マップの一例を示す。n次元ベクトルPiに相当する平面上のプロット位置をQi(xi,yi)とする。平面上では、周波数スペクトルの類似するセグメント同士が互いに近くにプロットされる。例えば、周波数スペクトルが類似するF1とF2はマップ上の近くに配置されるが、周波数スペクトルが類似しないF1とF3はマップ上の遠くに配置される。
【0057】
状態判定手順では、状態判定部125が、マップ上のセグメントiが形成するクラスタのうち、異常に対応したクラスタを判別し、さらに異常の内容や程度を判定する。整備された道路や線路の場合、主要なクラスタは異常のないことを示すと考えられる。これに対し、異常がある場合、主要なクラスタとは別に小さなクラスタがいくつか現れる。状態判定部125は、車両又は車両の経路の異常に対応したクラスタを判別し、当該クラスタに含まれるか否かに基づいて各セグメントにおける異常の有無を判定する。
【0058】
この際、既に過去に判明している異常セグメントをマーカーとしてマップ上に一緒にプロットすることで、マーカーがプロットされたクラスタがマーカーと同様の異常状態にあると判定できる。例えば、周波数変換部122は、マーカーセグメントを周波数スペクトルに変換する。そして、状態判定部125は、マーカーセグメントの属するクラスタを判別する。そして、状態判定部125は、マーカーセグメントの属するクラスタに含まれる各セグメントに、マーカーセグメントと類似した異常が発生したことを判定する。
【0059】
前記判定手順において、クラスタを形成しているセグメントのうち、一部は既に異常の内容が判明して場合には、同じクラスタ内の他のセグメントも同様の異常状態にあると判定できる。例えば、状態判定部125は、クラスタに含まれるセグメントの一部について異常が判明している場合、当該セグメントの属するクラスタに含まれる各セグメントが異常状態にあると判定する。
【0060】
前記判定手順において、クラスタ内のセグメントの状態がいずれも判明していない場合は、一部のセグメントの実地調査をしてその状態が判定できれば残りも同様の状態であると判定できる。例えば、状態判定部125は、クラスタに含まれるセグメントの一部について異常内容を取得すると、当該セグメントの属するクラスタに含まれる各セグメントが当該異常内容の異常状態にあると判定する。
【0061】
前記判定手順において、状態判定部125は、異常のないセグメントで構成される主要クラスタC3の周波数スペクトルと当該主要クラスタに含まれないそれぞれの他のクラスタC1、C2、C4〜C6の特徴スペクトルとの差を用いて、他のクラスタC1、C2、C4〜C6に含まれるセグメントの異常内容を判定することもできる。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る振動分析システム、振動分析装置及び振動分析方法は、正常時の情報を用いることなく異常を検知することができる。
【0063】
指標化部123は、n次元ベクトルPiを算出する際に、振動データに含まれる周波数ごとに、重みづけを行ってもよい。例えば、車両の固有振動周波数の重みづけを小さくしてもよい。これにより、明確なクラスタが形成されるため、異常の検出が容易になる。
【0064】
車両の速度によって周波数スペクトルが変化することが予想される。そのような状況に対応するため、車両の速度による周波数変化を補正する周波数補正部(不図示)をさらに備えていてもよい。周波数補正部(不図示)は、車両の速度変化によって生じる周波数スペクトルのシフトを補正する。また周波数補正部(不図示)は、車両が停止しているときのデータを振動データから除外してもよい。また周波数補正部(不図示)は、車両の予め定めた範囲の速度の時の振動データのみを抽出してもよい。分割部121は、周波数補正部(不図示)の補正した振動データをセグメントごとに分割する。
【0065】
(実施形態6)
ここでは、本データ解析装置の具体的な実施例を示す。
本実施形態に係る振動分析装置10は、自動車の走行する道路の状態を分析する。本実施形態では、振動検出装置20が鉛直方向における自動車の振動を検出し、セグメントが自動車の走行した道路の地理的な区間である。
【0066】
各セグメントの周波数スペクトルを比較すると、道路の状態が類似しているセグメント同士は、周波数スペクトルも類似するはずである。周波数スペクトルが類似していれば、PiとPjはn次元ベクトル空間で、互いに近くにプロットされる。
【0067】
マップ上では、周波数スペクトルの類似したセグメント同士が互いに近くにプロットされ、クラスタを形成する。状態判定手順では、状態判定部125が、マップ上のセグメントが形成するクラスタのうち、自動車が走行した地理的な各区間における道路の異常に対応した異常クラスタを判別し、さらに異常の内容や程度を判定する。この結果、自動車が走行した地理的な各区間における道路の状態を判定できる。
【0068】
主要なクラスタは、良好な路面状態を持つセグメントから構成されると考えられる。橋梁部や高架に相当するセグメントは、低周波成分が大きくなると考えられ、主要クラスタとは別のクラスタを形成すると考えられる。これにより、道路の構造を分析することができる。また、地下の空洞や、窪みのある道路は、また別のクラスタを形成すると考えられる。これにより、道路の劣化状況を分析することができる。アンジュレーションの大きなセグメントもまた、別クラスタを形成するであろう。このように、平面マップ上のいずれのクラスタに含まれるかで、道路の路面状況や構造、劣化、欠陥などの種々の状況を把握することが可能である。
【0069】
記憶部11には、数値データとして、道路上で観測された振動データが記憶される。本実施形態では、振動データ取得開始時期以降の全ての振動データが記憶されている。この間に、道路には劣化が生じたり、あるいは舗装工事がなされたりする。
【0070】
実際の高速道路データのマップの例を図4に示す。濃度1〜5の色分けは、振動の大きさを示している。濃度1及び濃度2は振動の小さいすなわち路面状態の良好なセグメントを表している。一方濃度4や濃度5は振動の大きいすなわち路面状態の悪いセグメントを表している。
【0071】
高速道路や一級国道のように管理の行き届いた道路では、多くのセグメントが良好な路面状態であり、濃度1や濃度2のプロットが多く、かつそれらは一つの大きな領域(図では正常領域と表示)を形成する。一部のセグメントでは劣化が進行しており、通常はその進行具合に応じて正常領域からだんだんと離れた位置にプロットされる。図4の濃度3の領域がそれに対応する。さらに劣化が進むとセグメントのプロット位置は図4の濃度4や濃度5のプロットになる。その場合、劣化の形態(以下劣化モードと呼ぶ)は一様ではなく、路面が単に荒くなり短周期振動が多くなる場合や、轍などによる中周期振動が主体となる場合、さらに進行方向のうねりによる長周期変動が発生する場合などがあり、それぞれの周波数スペクトルの形の相違から、劣化モードに応じた分布が生じる。
【0072】
したがって、マップ上のプロット位置から逆に各セグメントの劣化の進行状況や劣化モードを判定することができる。
【0073】
図5に、実際の道路の劣化状況の一例を示す。A1〜A8は、それぞれ道路の区間を示している。区間内に示してある枠で囲まれている各区間がセグメントを示す。区間A1,A4,A6,A8は、舗装後ほとんど劣化していない区間である。区間A5では劣化が進行している。区間A2及びA7はさらに劣化が進んだ区間であり、区間A3がもっとも劣化が進んでおり補修を必要としている。区間A2、A3およびA7は補修後には区間A1と同様に良好な路面状態に戻ると推測される。
【0074】
道路の場合、振動データは日々追加され蓄積される。新規データのマップ化方法には2通りある。
【0075】
ひとつは、例えば旧データに毎日の新規データを加えて、全てのデータを使って再度マップ化を行う方法である。この場合、旧データ間の指標は変化しないが、新規データと旧データ間および新データ間の新たな指標を計算する必要がある。作成したマップ上では、全セグメントのプロット位置は日々わずかずつ変化する。つまり図4に相当するマップは日々わずかずつ変化する。
【0076】
もうひとつの方法は既存データで作成したマップを標準マップとして、新規のデータを標準マップ上に追加でプロットする方法である。この場合、新規データに含まれる各セグメントと旧データの各セグメントとの指標を計算し、新データの各セグメントはそれぞれもっとも類似した旧データのセグメントの近傍にプロットされる。この方法では、標準マップの形状は変化せず、その上に日々の新たなデータが追加でプロットされる。つまり、図4に相当するマップでは、既存のプロット位置は普遍で日々新たにプロットが追加されるイメージである。日々の変化を視覚化するのに適した方法と言える。
【0077】
以上から、本実施形態に係る振動分析システム、振動分析装置及び振動分析方法は、正常時の情報を用いることなく道路の異常を検出することができる。これにより、本発明は、補修を優先すべきセグメントを選別することができる。また、橋梁部や高架部の劣化の進み具合を分析することも可能になる。
【0078】
(実施形態7)
本実施形態に係る振動分析装置10は、自動車を運転する運転者の運転状態を分析する。本実施形態では、振動検出装置20がY軸方向における自動車の振動を検出し、セグメントが自動車の走行した時間的な区間である。
【0079】
各セグメントの周波数スペクトルを比較すると、運転のふらつきのあったセグメントは、周波数スペクトルが異なるはずである。周波数スペクトルが異なっていれば、PiとPjはn次元ベクトル空間で、互いに遠くにプロットされる。
【0080】
マップ上では、周波数スペクトルの異なるセグメント同士が互いに遠くにプロットされ、クラスタを形成する。状態判定手順では、状態判定部125が、マップ上のセグメントが形成するクラスタのうち、自動車が走行した時間的な各区間における運転者の異常に対応した異常クラスタを判別し、さらに異常の内容や程度を判定する。この結果、自動車が走行した時間的な各区間における運転者の状態を判定することができる。
【0081】
正常な運転状態が最も大きなクラスタを形成する。ハンドリングの「ふらつき」はY軸の周波数スペクトルの差となって現れる。運転のふらつきの具合は、眠気運転、酒酔い運転、疲労、体調不良、急な車線変更、などで異なると思われ、マップ上で該当するセグメントは要因別にクラスタを形成する。このように、いろいろな運転状態が別クラスタを形成する。
【0082】
さらに本実施形態では、車両の運転者の生体情報を検出する生体情報検出装置(不図示)を備えることが好ましい。生体情報は、運転者の心身の状態を推定可能な任意の情報であり、例えば、脈拍、発汗量、体温、眼球の動き及び姿勢並びにこれらから導出可能な情報が例示できる。脈拍、発汗量及び体温の検出は、例えば、ハンドルに設けられたセンサを用いて行う。眼球の動き及び姿勢の検出は、例えば、運転者を撮影した映像を画像処理することで行う。
【0083】
脈拍の変化や発汗量を検出することで、運転者が緊張しているか否かを推定することができる。また体温の低下を検出することで、運転者が眠気を感じているか否かを推定することができる。また眼球の動きの低下を検出することで、運転者の注意力が低下しているか否かを推定することができる。また頭部の前傾を検出することで、運転者が眠気を感じているか否かを推定することができる。
【0084】
生体情報検出装置(不図示)の検出した生体情報は、振動データと同様に、時間的な区間であるセグメントごとに分割され、類似度を判断する周波数スペクトルFi(ω)に追加される。例えば、振動データの周波数スペクトルFi(ω)がn次元である場合、n+1次元目以降に生体情報が追加される。このように、周波数スペクトルFi(ω)に生体情報の次元を追加することで、セグメント相互間の類似度を表す指標を算出することができる。
【0085】
なお、生体情報が複数の場合は、周波数スペクトルFi(ω)の次元数を増やせばよい。生体情報に用いる次元数は、生体情報1種類につき1次元であってもよいし、2以上の次元を用いてもよい。生体情報の寄与の度合いに応じて、生体情報に用いる次元に重みづけを行ってもよい。
【0086】
以上から、本実施形態に係る振動分析システム、振動分析装置及び振動分析方法は、正常時の情報を用いることなく、運転者の異常を検出することができる。
【0087】
(実施形態8)
本実施形態に係る振動分析装置10は、列車の走行する線路の状態を分析する。本実施形態では、振動データがZ軸方向及びY軸方向における列車の振動を検出したデータであり、セグメントが列車の走行した線路の地理的な区間である。
【0088】
本実施形態では、Z軸方向及びY軸方向の振動データの時間変化がAz(t)、Ay(t)となる。周波数変換手順では、周波数変換部122が、Z軸方向及びY軸方向の振動データをそれぞれ周波数スペクトルに変換する。
【0089】
以下の処理はY軸データとZ軸データを組み合わせて行うのが基本であるが、分析の目的によっては独立に扱うこともできる。指標化手順及びマップ作成手順の処理は実施形態1及び2と同じである。
【0090】
各セグメントの周波数スペクトルを比較すると、線路の状態が類似しているセグメント同士は、周波数スペクトルも類似するはずである。周波数スペクトルが類似していれば、PiとPjはn次元ベクトル空間で、互いに近くにプロットされる。
【0091】
マップ上では、周波数スペクトルの類似したセグメント同士が互いに近くにプロットされ、クラスタを形成する。状態判定手順では、状態判定部125が、マップ上のセグメントが形成するクラスタのうち、列車が走行した地理的な各区間における線路の異常に対応した異常クラスタを判別し、異常の内容や程度を判定する。この結果、列車が走行した地理的な各区間における線路の状態を判定することができる。
【0092】
正常な状態のセグメントが最も大きなクラスタを形成する。線路の上下のうねりはZ軸方向の周波数スペクトルに反映される。線路幅のゆらぎは、Z軸方向及びY軸方向の周波数スペクトルに影響する。このように、いろいろな状態が別クラスタを形成するため、線路の劣化や欠陥などの種々の状態を分析することができる。また、車両自体の劣化、欠陥、積載量などの車両自体の状態の分析を行うことができる。
【0093】
以上から、本実施形態に係る振動分析システム、振動分析装置及び振動分析方法は、正常時の情報を用いることなく、線路の異常を検出することができる。
【0094】
(実施形態9)
以下に、数値データが生体の少なくとも一部の振動周波数成分を有する振動データである場合の実施形態を説明する。
【0095】
(ア)呼吸分析
呼吸に伴う身体の一定の変動(例えば呼吸音や体の一部の物理的な変動)を、一定時間単位(例えば20秒単位。以降セグメントと呼ぶ)に分割し、セグメント内の変動を周波数スペクトルに変換する。多くの正常者と患者の膨大な睡眠時呼吸データをセグメント化し、周波数スペクトルの類似度に基づきマップを作成することが可能である。正常異常を含むいろいろな呼吸状態とマップの各領域の対応付けを行うことで、逆にマップ上のどの位置にプロットされているかで、呼吸の状態を判定することができる。このマップを「標準マップ」として、判定したい個人の呼吸データをセグメントに分割して、それぞれのセグメントを標準マップ上の類似したセグメントの近傍にプロットすると、個人の呼吸のセグメントを標準マップ上にプロットすることができる。その分布から、個人の睡眠時呼吸の健全性を判定でき、あるいは問題がある場合はその原因を推定できる。
【0096】
(イ)心電図分析
心電図を、一定時間単位(例えば1分単位。以降セグメントと呼ぶ)に分割し、セグメント内の変動を周波数スペクトルに変換する。これにより、個人の「心臓の異常」の判定ができる可能性があるばかりでなく、患者のセグメントを標準マップ上にプロットすることで、どの異常パターンに属するのか判定できる可能性がある。
【0097】
(ウ)その他の内臓分析
食道、胃、腸、肺の動き測定結果から、「異常」を判別し、異常の原因を推測できる可能性がある。具体的な測定方法としては、圧電素子を使った圧力の変化測定や、エコーを使った映像による動き測定が例示できる。
【0098】
(エ)歩行分析
一定の歩行条件で、歩行時の靴や膝などの動き波形を測定する。測定波形を、一定時間単位(例えば1分単位。以降セグメントと呼ぶ)に分割し、セグメント内の変動を周波数スペクトルに変換する。多くの対象者の歩行測定結果から得られる多数のセグメント間の類似性を、周波数スペクトルから指標化できる。
歩行傾向は様々な身体的精神的要因から生じ、要因毎に歩行の特徴が異なってくると考えられる。多くの患者のセグメントデータから標準マップを作成する。標準マップでは、歩行のパターンにより、領域が分かれてくる。この標準マップ上に、新たな患者のセグメントをプロットすると、標準マップ上のどの領域にプロットされるかで、その患者の歩行傾向に影響をもたらしている身体的精神的要因を判別できる可能性がある。
以上から、個人の「歩行異常」の判定ができる可能性があるばかりでなく、患者のセグメントデータを標準マップ上にプロットすることで、歩行異常の原因を判定できる可能性がある。
【0099】
(オ)声の分析
コールセンターなどでは、往々にしてオペレータの対応などに対して顧客が感情的になりトラブルになる場合も多い。そこで、顧客の感情を常に把握できれば、必要な場合には対応しているオペレータを経験豊富なオペレータや上司に早めに交代させ、トラブルが大きくならないようにすることが可能となる。顧客の感情はその言葉遣いからだけでは正確に把握できないことも多いため、声から感情を把握する方法が有効である。
【0100】
具体的には、蓄積した多くの顧客の声を一定時間のセグメントに分割し、それぞれの周波数スペクトルの類似性に基づきマップを作成する。属性データとして顧客が感情的になった場合が記録されており、マップ上で感情が高ぶった場合のセグメント密度に応じて、低い方から例えば青色から赤色までヒートマップ状に色分けすることができ、それを「標準マップ」とする。人によって声の性質が異なるため、赤色の領域は必ずしも一つとは限らない。新規の顧客からの電話の際は、そのセグメントを逐次標準マップにプロットすると、感情的に安定している場合は青色領域にプロットされる場合が一般的であるが、感情が高ぶるとだんだんと赤色領域にプロット位置がシフトするので、そのプロット位置から危険を察知して適切な応対ができるオペレータに交代でき、事前にトラブルを回避できるようになる。
【0101】
(付記)
付記に係る振動分析装置及び振動分析方法は、各区間の周波数スペクトル相互間の類似度を表す指標に基づき地理的又は時間的な区間毎に平面上にプロットすると、区間の状態によって類似した区間プロットが平面上でクラスタを形成する。各区間がその状態によりクラスタに自動的に分類される結果、異常区間を含め、特定の状態にある区間を判定することができる。
【0102】
具体的には、付記に係る振動分析装置は、
車両の振動データを予め定められた地理的又は時間的な区間であるセグメントごとに分割する分割部と、
前記セグメントごとに、振動データを周波数スペクトルに変換する周波数変換部と、
前記セグメントの周波数スペクトルの類似度を用いて、前記セグメント相互間の類似度を表す指標を算出する指標化部と、
前記指標に基づき、前記セグメントをマップ上にプロットするマップ作成部と、
前記マップ上の前記セグメントが形成するクラスタのうち、前記車両又は前記車両の経路の異常に対応したクラスタを判別し、当該クラスタに含まれるか否かに基づいて各セグメントにおける前記異常の有無を判定する状態判定部と、
を備える。
【0103】
付記に係る振動分析装置では、前記周波数変換部は、既に異常内容が判明しているセグメントをマーカーセグメントとして周波数スペクトルに変換し、前記状態判定部は、前記マーカーセグメントの属するクラスタを判別し、当該クラスタに含まれる各セグメントに前記マーカーセグメントと同じ異常が発生したことを判定してもよい。
【0104】
付記に係る振動分析装置では、前記状態判定部は、前記クラスタに含まれるセグメントの一部について異常が判明している場合、当該セグメントの属するクラスタに含まれる各セグメントが異常状態にあると判定してもよい。
【0105】
付記に係る振動分析装置では、前記状態判定部は、前記クラスタに含まれるセグメントの一部について異常内容を取得すると、当該セグメントの属するクラスタに含まれる各セグメントが当該異常内容の異常状態にあると判定してもよい。
【0106】
付記に係る振動分析装置では、前記状態判定部は、異常のないセグメントで構成される主要クラスタの周波数スペクトルと当該主要クラスタに含まれないそれぞれの他のクラスタの周波数スペクトルとの差を用いて、前記他のクラスタに含まれるセグメントの異常内容を判定してもよい。
【0107】
付記に係る振動分析装置では、
前記振動データは、鉛直方向における自動車の振動を検出したデータであり、
前記セグメントは、前記自動車が走行した道路の地理的な区間であり、
前記状態判定部は、前記マップ上の前記セグメントが形成するクラスタのうち、前記自動車が走行した地理的な各区間における道路の異常に対応したクラスタを判別してもよい。
【0108】
付記に係る振動分析装置では、
前記振動データは、鉛直方向及び前記車両の進行方向に垂直な方向における自動車の振動を検出したデータであり、
前記セグメントは、前記自動車が走行した時間的な区間であり、
前記状態判定部は、前記マップ上の前記セグメントが形成するクラスタのうち、前記自動車が走行した時間的な各区間における運転者の異常に対応したクラスタを判別してもよい。
【0109】
付記に係る振動分析装置では、
前記振動データは、前記車両の進行方向及び鉛直方向に垂直な方向並びに鉛直方向における列車の振動を検出したデータであり、
前記セグメントは、前記列車が走行した線路の地理的な区間であり、
前記状態判定部は、前記マップ上の前記セグメントが形成するクラスタのうち、前記列車が走行した地理的な各区間における線路の異常に対応したクラスタを判別してもよい。
【0110】
具体的には、付記に係る振動分析システムは、
車両に搭載され、振動を検出する振動検出装置と、
前記振動検出装置の検出する振動データを転送する通信ネットワークと、
前記通信ネットワークの転送した振動データを用いて前記車両又は前記車両の経路の異常の有無を判定する振動分析装置と、
を備える。
【0111】
具体的には、付記に係る振動分析方法は、
車両の振動データを予め定められた地理的又は時間的な区間であるセグメントごとに分割する分割手順と、
前記セグメントごとに、振動データを周波数スペクトルに変換する周波数変換手順と、
前記セグメントの周波数スペクトルの類似度を用いて、前記セグメント相互間の類似度を表す指標を算出する指標化手順と、
前記指標に基づき、前記セグメントをマップ上にプロットするマップ作成手順と、
前記マップ上の前記セグメントが形成するクラスタのうち、前記車両又は前記車両の経路の異常に対応したクラスタを判別し、当該クラスタに含まれるか否かに基づいて各セグメントに前記異常の有無を判定する状態判定手順と、
を順に有する。
【0112】
具体的には、付記に係る振動分析プログラムは、
分割部が、車両の振動データを予め定められた地理的又は時間的な区間であるセグメントごとに分割する分割手順と、
周波数変換部が、前記セグメントごとに、振動データを周波数スペクトルに変換する周波数変換手順と、
指標化部が、前記セグメントの周波数スペクトルの類似度を用いて、前記セグメント相互間の類似度を表す指標を算出する指標化手順と、
マップ作成部が、前記指標に基づき、前記セグメントをマップ上にプロットするマップ作成手順と、
状態判定部が、前記マップ上の前記セグメントが形成するクラスタのうち、前記車両又は前記車両の経路の異常に対応したクラスタを判別し、当該クラスタに含まれるか否かに基づいて各セグメントに前記異常の有無を判定する状態判定手順と、
を順にコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0113】
付記に係る発明によれば、各セグメントの振動データの周波数スペクトル相互間の類似度を表す指標を用いるため、正常時の情報を用いることなく異常セグメントを検出し異常状態の内容を判定することができる。したがって、付記に係る発明は、正常時の情報を用いることなく異常セグメントを検出し異常状態の内容を判定することの可能な振動分析方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は交通インフラ事業、交通サービス事業、車両管理事業及び建設業に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
10:振動分析装置
11、31:記憶部
12、32:情報処理部
13:通信部
20:振動検出装置
121、321:分割部
122:周波数変換部
123、323:指標化部
124、324:マップ作成部
125:状態判定部
30:データ解析装置
326:領域選択部
327:特徴スペクトル抽出部
328:プロット部
図1
図2
図3
図4
図5