(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物を含み、請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーンゾル塗料を製造するための原料であることを特徴とする塗料原料。
少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状物であり且つ熟成処理を施したゲル状ケイ素化合物を含み、請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーンゾル塗料を製造するための原料であることを特徴とする塗料原料。
少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物の粉砕物と分散媒とを混合する工程を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコーンゾル塗料の製造方法。
少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物を溶媒中でゲル化して、ゲル状ケイ素化合物を生成するゲル化工程を含むことを特徴とする、請求項7記載の塗料原料の製造方法。
少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物を溶媒中で熟成する熟成工程を含むことを特徴とする、請求項8記載の塗料原料の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の塗料は、例えば、前記粉砕物の体積平均粒子径が、0.05〜2.00μmである。なお、本発明において、「粒子」(例えば、前記粉砕物の粒子等)の形状は、特に限定されず、例えば、球状でも良いが、非球状系等でも良い。また、本発明において、前記粉砕物の粒子は、例えば、ゾルゲル数珠状粒子、ナノ粒子(中空ナノシリカ・ナノバルーン粒子)、ナノ繊維等であっても良い。
【0017】
本発明の塗料は、例えば、前記ケイ素化合物が、後述する式(2)で表される化合物である。
【0018】
本発明の塗料は、例えば、前記粉砕物同士を化学的に結合させるための触媒を含む。
【0019】
本発明の塗料の製造方法は、例えば、さらに、前記ゲル状ケイ素化合物を溶媒中で粉砕する粉砕工程を含み、前記混合工程において、前記粉砕工程により得られた粉砕物を使用する。
【0020】
本発明の塗料の製造方法は、例えば、さらに、前記ケイ素化合物を溶媒中でゲル化して、ゲル状ケイ素化合物を生成するゲル化工程を含み、前記粉砕工程において、前記生成工程により得られたゲル状ケイ素化合物を使用する。
【0021】
本発明の塗料の製造方法は、例えば、さらに、前記ゲル状ケイ素化合物を溶媒中で熟成する熟成工程を含み、前記ゲル化工程において、前記熟成工程後の前記ゲル状ケイ素化合物を使用する。
【0022】
本発明の塗料の製造方法は、例えば、前記熟成工程において、前記ゲル状ケイ素化合物を、前記溶媒中、30℃以上でインキュベートすることにより熟成する。
【0023】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定および制限されない。
【0024】
[1.塗料およびその製造方法]
本発明のシリコーンゾル塗料は、前述のように、少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物の粉砕物と溶媒とを含み、前記粉砕物が残留シラノール基を含有し、前記粉砕物同士を化学的に結合させるための塗料であることを特徴とする。「3官能基以下の飽和結合官能基を含む」とは、ケイ素化合物が、3つ以下の官能基を有し、且つ、これらの官能基が、ケイ素(Si)と飽和結合していることを意味する。
【0025】
本発明の塗料の製造方法は、前述のように、前記本発明のシリコーンゾル塗料の製造方法であり、少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物の粉砕物と分散媒とを混合する工程を含むことを特徴とする。
【0026】
本発明の塗料は、後述するように、空気層と同様の機能(例えば、低屈折性)を奏するシリコーン多孔体の製造に使用できる。具体的に、本発明の製造方法により得られる塗料は、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含んでおり、前記粉砕物は、未粉砕の前記ゲル状ケイ素化合物の三次元構造が破壊され、前記未粉砕のゲル状ケイ素化合物とは異なる新たな三次元構造を形成できる。このため、例えば、前記塗料を用いて形成した塗工膜(シリコーン多孔体の前駆体)は、前記未粉砕のゲル状ケイ素化合物を用いて形成される層では得られない新たな孔構造(新たな空隙構造)が形成された層となる。これによって、前記層は、空気層と同様の機能(例えば、同様の低屈折性)を奏することができる。また、本発明の塗料は、前記粉砕物が残留シラノール基を含むことから、前記塗工膜(シリコーン多孔体の前駆体)として新たな三次元構造が形成された後に、前記粉砕物同士を化学的に結合させることができる。これにより、形成されたシリコーン多孔体は、空隙を有する構造であるが、十分な強度と可撓性とを維持できる。このため、本発明によれば、容易且つ簡便に、シリコーン多孔体を様々な対象物に付与できる。本発明の製造方法により得られる塗料は、例えば、空気層の代替品となり得る前記多孔質構造の製造において、非常に有用である。また、前記空気層の場合、例えば、部材と部材とを、両者の間にスペーサー等を介することで間隙を設けて積層することにより、前記部材間に空気層を形成する必要があった。しかし、本発明の塗料を用いて形成される前記シリコーン多孔体は、これを目的の部位に配置するのみで、前記空気層と同様の機能を発揮させることができる。したがって、前述のように、前記空気層を形成するよりも、容易且つ簡便に、前記空気層と同様の機能を、様々な対象物に付与することができる。具体的には、前記多孔質構造は、例えば、空気層に代えて、断熱材、吸音材、再生医療用足場材、結露防止材等として使用できる。
【0027】
本発明の塗料は、例えば、シリコーン多孔体の形成用塗料、または、低屈折層の形成用塗料ということもできる。本発明の塗料において、前記ゲル状ケイ素化合物は、その粉砕物である。
【0028】
本発明の塗料において、前記粉砕物の体積平均粒子径は、特に制限されず、その下限が、例えば、0.05μm以上、0.10μm以上、0.20μm以上、0.40μm以上であり、その上限が、例えば、2.00μm以下、1.50μm以下、1.00μm以下であり、その範囲が、例えば、0.05μm〜2.00μm、0.20μm〜1.50μm、0.40μm〜1.00μmである。前記体積平均粒子径は、本発明の塗料における前記粉砕物の粒度バラツキを示す。前記粒度分布は、例えば、動的光散乱法、レーザー回折法等の粒度分布評価装置、および走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の電子顕微鏡等により測定することができる。
【0029】
また、本発明の塗料において、前記粉砕物の粒度分布は、特に制限されず、例えば、粒径0.4μm〜1μmの粒子が、50〜99.9重量%、80〜99.8重量%、90〜99.7重量%であり、または、粒径1μm〜2μmの粒子が、0.1〜50重量%、0.2〜20重量%、0.3〜10重量%である。前記粒度分布は、本発明の塗料における前記粉砕物の粒度バラツキを示す。前記粒度分布は、例えば、粒度分布評価装置または電子顕微鏡により測定することができる。
【0030】
本発明の塗料において、前記ケイ素化合物は、例えば、下記式(2)で表される化合物である。
【0032】
前記式(2)中、例えば、Xは、2、3または4であり、
R
1およびR
2は、それぞれ、直鎖もしくは分枝アルキル基であり、
R
1およびR
2は、同一でも異なっていても良く、
R
1は、Xが2の場合、互いに同一でも異なっていても良く、
R
2は、互いに同一でも異なっていても良い。
【0033】
前記XおよびR
1は、例えば、前記式(1)におけるXおよびR
1と同じである。また、前記R
2は、例えば、後述する式(1)におけるR
1の例示が援用できる。
【0034】
前記式(2)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(2’)に示す化合物が挙げられる。下記式(2’)において、R
1およびR
2は、それぞれ、前記式(2)と同様である。R
1およびR
2がメチル基の場合、前記ケイ素化合物は、トリメトキシ(メチル)シラン(以下、「MTMS」ともいう。)である。
【0036】
本発明の塗料において、前記分散媒における前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物の濃度は、特に制限されず、例えば、0.3〜50%(v/v)、0.5〜30%(v/v)、1.0〜10%(v/v)である。前記粉砕物の濃度が高すぎると、例えば、ゾル溶液の流動性が著しく低下し、塗工時の凝集物・塗工スジを発生させる可能性がある。一方で、前記粉砕物の濃度が低すぎると、例えば、溶媒の乾燥に相当の時間がかかるだけでなく、乾燥直後の残留溶媒も高くなるために、空隙率が低下してしまう可能性がある。また、本発明の塗料は、例えば、含まれるケイ素原子がシロキサン結合していることが好ましい。具体例として、前記塗料に含まれる全ケイ素原子のうち、未結合のケイ素原子(つまり、残留シラノール)の割合は、例えば、50%未満、30%以下、15%以下である。
【0037】
本発明の塗料の物性は、特に制限されない。前記塗料のせん断粘度は、例えば、10001/sのせん断速度において、例えば、粘度100cPa・s以下、粘度10cPa・s以下、粘度1cPa・s以下である。せん断粘度が高すぎると、例えば、塗工スジが発生し、グラビア塗工の転写率の低下等の不具合が見られる可能性がある。逆に、せん断粘度が低すぎる場合は、例えば、塗工時のウェット塗布厚みを厚くすることができず、乾燥後に所望の厚みが得られない可能性がある。
【0038】
本発明の塗料において、前記分散媒(以下、「塗工用溶媒」ともいう。)は、特に制限されず、例えば、後述するゲル化溶媒および粉砕用溶媒が挙げられ、好ましくは前記粉砕用溶媒である。前記塗工用溶媒としては、例えば、沸点130℃以下の有機溶媒が挙げられる。具体例としては、例えば、IPA、エタノール、メタノール、ブタノール等が挙げられる。
【0039】
本発明の塗料は、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物同士を化学的に結合させるための触媒を含んでいても良い。前記触媒の含有率は、特に限定されないが、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物の重量に対し、例えば、0.01〜20重量%、0.05〜10重量%、または0.1〜5重量%である。
【0040】
また、本発明の塗料は、例えば、さらに、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物同士を間接的に結合させるための架橋補助剤を含んでいても良い。前記架橋補助剤の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物の重量に対して0.01〜20重量%、0.05〜15重量%、または0.1〜10重量%である。
【0041】
本発明の塗料は、例えば、前記溶媒に分散させたゾル状の前記粉砕物であることから、例えば、「ゾル粒子液」ともいう。本発明の塗料は、例えば、基材上に塗工・乾燥した後に、結合工程により化学架橋を行うことで、一定レベル以上の膜強度を有する空隙層を、連続成膜することが可能である。なお、本発明における「ゾル」とは、ゲルの三次元構造を粉砕することで、前記粉砕物(つまり、空隙構造の一部を保持したナノ三次元構造のシリカゾル粒子)が、溶媒中に分散して流動性を示す状態をいう。
【0042】
以下に、本発明の製造方法を説明するが、本発明の塗料は、以下の説明を援用できる。
【0043】
本発明の製造方法において、前記混合工程は、前述のように、少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物の粉砕物と分散媒とを混合する工程である。本発明において、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物は、例えば、後述する粉砕工程により、前記ゲル状ケイ素化合物から得ることができる。このため、前記ゲル状ケイ素化合物は、例えば、本発明の塗料の第1の塗料原料ということもできる。また、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物は、例えば、後述する粉砕工程により、後述する熟成工程を施した熟成処理後の前記ゲル状ケイ素化合物から得ることができる。このため、前記熟成処理後の前記ゲル状ケイ素化合物は、例えば、本発明の塗料の第2の塗料原料ということもできる。
【0044】
本発明の製造方法において、ゲル化工程は、前記少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物を溶媒中でゲル化して、ゲル状ケイ素化合物(第1の塗料原料)を生成する工程である。前記ゲル化工程は、例えば、モノマーの前記ケイ素化合物を、脱水縮合触媒の存在下、脱水縮合反応によりゲル化する工程であり、これによって、ゲル状ケイ素化合物が得られる。前記ゲル状ケイ素化合物は、前述のように、残留シラノール基を有し、前記残留シラノール基は、後述する前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物同士の化学的な結合に応じて、適宜、調整することが好ましい。
【0045】
前記ゲル化工程において、前記ケイ素化合物は、特に制限されず、脱水縮合反応によりゲル化するものであればよい。前記脱水縮合により、例えば、前記ケイ素化合物間が結合される。前記ケイ素化合物間の結合は、例えば、水素結合または分子間力結合である。
【0046】
前記ケイ素化合物は、例えば、下記式(1)で表されるケイ素化合物が挙げられる。前記式(1)のケイ素化合物は、水酸基を有するため、前記式(1)のケイ素化合物間は、例えば、それぞれの水酸基を介して、水素結合または分子間力結合が可能である。
【0048】
前記式(1)中、例えば、Xは、2、3または4であり、R
1は、直鎖もしくは分枝アルキル基、である。前記R
1の炭素数は、例えば、1〜6、1〜4、1〜2である。前記直鎖アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられ、前記分枝アルキル基は、例えば、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。前記Xは、例えば、3または4である。
【0049】
前記式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、Xが3である下記式(1’)に示す化合物が挙げられる。下記式(1’)において、R
1は、前記式(1)と同様であり、例えば、メチル基である。R
1がメチル基の場合、前記ケイ素化合物は、トリス(ヒドロキシ)メチルシランである。前記Xが3の場合、前記ケイ素化合物は、例えば、3つの官能基を有する3官能シランである。
【0051】
また、前記式(1)で表されるケイ素化合物の具体例としては、例えば、Xが4である化合物が挙げられる。この場合、前記ケイ素化合物は、例えば、4つの官能基を有する4官能シランである。
【0052】
前記ケイ素化合物は、例えば、加水分解により前記式(1)のケイ素化合物を形成する前駆体でもよい。前記前駆体としては、例えば、加水分解により前記ケイ素化合物を生成できるものであればよく、具体例として、前記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0053】
前記ケイ素化合物が前記式(2)で表される前駆体の場合、本発明の製造方法は、例えば、前記ゲル化工程に先立って、前記前駆体を加水分解する工程を含んでもよい。
【0054】
前記加水分解の方法は、特に制限されず、例えば、触媒存在下での化学反応により行うことができる。前記触媒としては、例えば、シュウ酸、酢酸等の酸等が挙げられる。前記加水分解反応は、例えば、シュウ酸の水溶液を、前記ケイ素化合物前駆体のジメチルスルホキシド溶液に、室温環境下でゆっくり滴下混合させた後に、そのまま30分程度撹拌することで行うことができる。前記ケイ素化合物前駆体を加水分解する際は、例えば、前記ケイ素化合物前駆体のアルコキシ基を完全に加水分解することで、その後のゲル化・熟成・空隙構造形成後の加熱・固定化を、さらに効率良く発現することができる。
【0055】
本発明において、前記ケイ素化合物は、例えば、トリメトキシ(メチル)シランの加水分解物が例示できる。
【0056】
前記モノマーのケイ素化合物は、特に制限されず、例えば、製造するシリコーン多孔体の用途に応じて、適宜選択できる。前記シリコーン多孔体の製造において、前記ケイ素化合物は、例えば、低屈折率性を重視する場合、低屈折率性に優れる点から、前記3官能シランが好ましく、また、強度(例えば、耐擦傷性)を重視する場合は、耐擦傷性に優れる点から、前記4官能シランが好ましい。また、前記ゲル状ケイ素化合物の原料となる前記ケイ素化合物は、例えば、一種類のみを使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。具体例として、前記ケイ素化合物として、例えば、前記3官能シランのみを含んでもよいし、前記4官能シランのみを含んでもよいし、前記3官能シランと前記4官能シランの両方を含んでもよいし、さらに、その他のケイ素化合物を含んでもよい。前記ケイ素化合物として、二種類以上のケイ素化合物を使用する場合、その比率は、特に制限されず、適宜設定できる。
【0057】
前記ケイ素化合物のゲル化は、例えば、前記ケイ素化合物間の脱水縮合反応により行うことができる。前記脱水縮合反応は、例えば、触媒存在下で行うことが好ましく、前記触媒としては、例えば、塩酸、シュウ酸、硫酸等の酸触媒、およびアンモニア、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒等の、脱水縮合触媒が挙げられる。前記脱水縮合触媒は、酸触媒でも塩基触媒でも良いが、塩基触媒が好ましい。前記脱水縮合反応において、前記ケイ素化合物に対する前記触媒の添加量は、特に制限されず、前記ケイ素化合物1モルに対して、触媒は、例えば、0.1〜10モル、0.05〜7モル、0.1〜5モルである。
【0058】
前記ケイ素化合物のゲル化は、例えば、溶媒中で行うことが好ましい。前記溶媒における前記ケイ素化合物の割合は、特に制限されない。前記溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、γ−ブチルラクトン(GBL)、アセトニトリル(MeCN)、エチレングリコールエチルエーテル(EGEE)等が挙げられる。前記溶媒は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記ゲル化に使用する溶媒を、以下、「ゲル化用溶媒」ともいう。
【0059】
前記ゲル化の条件は、特に制限されない。前記ケイ素化合物を含む前記溶媒に対する処理温度は、例えば、20〜30℃、22〜28℃、24〜26℃であり、処理時間は、例えば、1〜60分、5〜40分、10〜30分である。前記脱水縮合反応を行う場合、その処理条件は、特に制限されず、これらの例示を援用できる。前記ゲル化を行うことで、例えば、シロキサン結合が成長し、前記ケイ素化合物の一次粒子が形成され、さらに反応が進行することで、前記一次粒子同士が、数珠状に連なり三次元構造のゲルが生成される。
【0060】
前記ゲル化工程において得られる前記ゲル状ケイ素化合物のゲル形態は、特に制限されない。「ゲル」とは、一般に、溶質が、相互作用のために独立した運動性を失って集合した構造をもち、固化した状態をいう。また、ゲルの中でも、一般に、ウェットゲルは、分散媒を含み、分散媒中で溶質が一様な構造をとるものをいい、キセロゲルは、溶媒が除去されて、溶質が、空隙を持つ網目構造をとるものをいう。本発明において、前記ゲル状ケイ素化合物は、例えば、ウェットゲルを用いることが好ましい。前記ゲル状ケイ素化合物の残量シラノール基は、特に制限されず、例えば、後述する範囲が同様に例示できる。
【0061】
前記ゲル化により得られた前記ゲル状ケイ素化合物は、例えば、このまま前記粉砕工程に供してもよいが、前記粉砕工程の前、前記熟成工程において熟成処理を施してもよい。前記熟成工程において、前記熟成処理の条件は、特に制限されず、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物を、溶媒中、所定温度でインキュベートすればよい。前記熟成処理によれば、例えば、ゲル化で得られた三次元構造を有するゲル状ケイ素化合物について、前記一次粒子をさらに成長させることができ、これによって前記粒子自体のサイズを大きくすることが可能である。そして、結果的に、前記粒子同士が接触しているネック部分の接触状態を、例えば、点接触から面接触に増やすことができる。上記のような熟成処理を行ったゲル状ケイ素化合物は、例えば、ゲル自体の強度が増加し、結果的には、粉砕を行った後の前記粉砕物の三次元基本構造の強度をより向上できる。これにより、前記本発明の塗料を用いて塗工膜を形成した場合、例えば、塗工後の乾燥工程においても、前記三次元基本構造が堆積した空隙構造の細孔サイズが、前記乾燥工程において生じる前記塗工膜中の溶媒の揮発に伴って、収縮することを抑制できる。
【0062】
前記熟成処理の温度は、その下限が、例えば、30℃以上、35℃以上、40℃以上であり、その上限が、例えば、80℃以下、75℃以下、70℃以下であり、その範囲が、例えば、30〜80℃、35〜75℃、40〜70℃である。前記所定の時間は、特に制限されず、その下限が、例えば、5時間以上、10時間以上、15時間以上であり、その上限が、例えば、50時間以下、40時間以下、30時間以下であり、その範囲が、例えば、5〜50時間、10〜40時間、15〜30時間である。なお、熟成の最適な条件については、例えば、前述したように、前記ゲル状ケイ素化合物における、前記一次粒子のサイズの増大、および前記ネック部分の接触面積の増大が得られる条件に設定することが好ましい。また、前記熟成工程において、前記熟成処理の温度は、例えば、使用する溶媒の沸点を考慮することが好ましい。前記熟成処理は、例えば、熟成温度が高すぎると、前記溶媒が過剰に揮発してしまい、前記塗工液の濃縮により、三次元空隙構造の細孔が閉口する等の不具合が生じる可能性がある。一方で、前記熟成処理は、例えば、熟成温度が低すぎると、前記熟成による効果が十分に得られず、量産プロセスの経時での温度バラツキが増大することとなり、品質に劣る製品ができる可能性がある。
【0063】
前記熟成処理は、例えば、前記ゲル化工程と同じ溶媒を使用でき、具体的には、前記ゲル処理後の反応物(つまり、前記ゲル状ケイ素化合物を含む前記溶媒)に対して、そのまま施すことが好ましい。ゲル化後の熟成処理を終えた前記ゲル状ケイ素化合物に含まれる残留シラノール基のモル数は、例えば、ゲル化に使用した原材料(例えば、前記ケイ素化合物またはその前駆体)のアルコキシ基のモル数を100とした場合の残留シラノール基の割合であり、その下限が、例えば、
1%以上、
3%以上、
5%以上であり、その上限が、例えば、
50%以下、
40%以下、
30%以下であり、その範囲が、例えば、1〜50%、3〜40%、5〜30%である。前記ゲル状ケイ素化合物の硬度を上げる目的では、例えば、残留シラノール基のモル数が低いほど好ましい。残留シラノール基のモル数が高すぎると、例えば、前記シリコーン多孔体の形成において、前記シリコーン多孔体の前駆体が架橋されるまでに、空隙構造を保持できなくなる可能性がある。一方で、残留シラノール基のモル数が低すぎると、例えば、前記結合工程において、前記シリコーン多孔体の前駆体を架橋できなくなり、十分な膜強度を付与できなくなる可能性がある。なお、上記は、残留シラノール基の例であるが、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物の原材料として、前記ケイ素化合物を各種反応性官能基で修飾したものを使用する場合は、各々の官能基に対しても、同様の現象を適用できる。
【0064】
本発明において、前記粉砕工程は、前述のように、前記ゲル状シリカ化合物を粉砕する工程である。前記粉砕は、例えば、前記ゲル化工程後の前記ゲル状ケイ素化合物(第1の塗料原料)に施してもよいし、さらに、前記熟成処理を施した前記熟成後のゲル状ケイ素化合物(第2の塗料原料)に施してもよい。
【0065】
前記粉砕は、例えば、前記ゲル化用溶媒中のゲル状ケイ素化合物に対して、そのまま粉砕処理を施してもよいし、前記ゲル化用溶媒を他の溶媒に置換してから、前記他の溶媒中のゲル状ケイ素化合物に対して、粉砕処理を施してもよい。また、前記ゲル状ケイ素化合物に前記熟成工程を施した場合、例えば、ゲル化工程で使用した触媒および溶媒が、前記熟成工程後も残存することで、さらに経時にゲル化が生じて最終的に得られる塗料のポットライフに影響する場合、前記塗料を用いて形成した塗工膜を乾燥した際の乾燥効率を低下する場合等は、他の溶媒に置換することが好ましい。前記他の溶媒を、以下、「粉砕用溶媒」ともいう。
【0066】
前記粉砕は、例えば、前記ゲル化工程および前記熟成工程と同じ溶媒を使用してもよいし、前記ゲル化工程および前記熟成工程と異なる溶媒を使用してもよい。前者の場合、例えば、前記ゲル化工程後の反応物(例えば、前記ゲル状ケイ素化合物を含む前記ゲル化用溶媒)に対して、そのまま前記熟成工程および前記粉砕処理を施すことができる。また、後者の場合、前記ゲル化工程後の反応物(例えば、前記ゲル状ケイ素化合物を含む前記ゲル化用溶媒)に対して、そのまま前記熟成工程を施した後、前記ゲル化用溶媒を他の溶媒に置換してから、前記他の溶媒中のゲル状ケイ素化合物に対して、粉砕処理を施してもよい。
【0067】
前記粉砕用溶媒は、特に制限されず、例えば、有機溶媒が使用できる。前記有機溶媒は、例えば、沸点130℃以下、沸点100℃以下、沸点85℃以下の溶媒が挙げられる。具体例としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、エタノール、メタノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、メチルセロソルブ、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。前記粉砕用溶媒は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上の併用でもよい。
【0068】
前記ゲル化用溶媒と前記粉砕用溶媒との組合せは、特に制限されず、例えば、DMSOとIPAとの組合せ、DMSOとエタノールとの組合せ、DMSOとメタノールとの組合せ、DMSOとブタノールとの組合せ等が挙げられる。このように、前記ゲル化用溶媒を前記粉砕用溶媒に置換することで、例えば、後述する塗膜形成において、より均一な塗工膜を形成することができる。
【0069】
前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕方法は、特に制限されず、例えば、超音波ホモジナイザー、高速回転ホモジナイザー、その他のキャビテーション現象を用いる粉砕装置もしくは高圧で液同士を斜向衝突させる粉砕装置等により行うことができる。ボールミル等のメディア粉砕を行う装置は、例えば、粉砕時にゲルの空隙構造を物理的に破壊するのに対し、ホモジナイザー等の本発明に好ましいキャビテーション方式粉砕装置は、例えば、メディアレス方式のため、ゲル三次元構造にすでに内包されている比較的弱い結合のシリカ粒子接合面を、高速のせん断力で剥離する。このように、前記ゲル状ケイ素化合物を粉砕することで、新たなゾル三次元構造が得られ、前記三次元構造は、例えば、塗工膜の形成において、一定範囲の粒度分布をもつ空隙構造を保持することができ、塗工・乾燥時の堆積による空隙構造を再形成できる。前記粉砕の条件は、特に制限されず、例えば、瞬間的に高速の流れを与えることで、溶媒を揮発させることなくゲルを粉砕することができることが好ましい。例えば、前述のような粒度バラツキ(例えば、体積平均粒子径または粒度分布)の粉砕物となるように粉砕することが好ましい。仮に、粉砕時間・強度等の仕事量が不足した場合は、例えば、粗粒が残ることとなり、緻密な細孔を形成できず、外観欠点も増加し、高い品質を得ることができない可能性がある。一方で、前記仕事量が過多な場合は、例えば、所望の粒度分布よりも微細なゾル粒子となり、塗工・乾燥後に堆積した空隙サイズが微細となり、所望の空隙率に満たない可能性がある。
【0070】
前記粉砕工程後、前記粉砕物に含まれる残留シラノール基の割合は、特に制限されず、例えば、前記熟成処理後のゲル状ケイ素化合物について例示した範囲と同様である。
【0071】
前記粉砕工程後、前記粉砕物を含む前記溶媒における前記粉砕物の割合は、特に制限されず、例えば、前述した前記本発明の塗料における条件が例示できる。前記割合は、例えば、前記粉砕工程後における前記粉砕物を含む溶媒そのものの条件でもよいし、前記粉砕工程後であって、前記塗料として使用する前に、調整された条件であってもよい。
【0072】
本発明の塗料は、例えば、前述したように、前記第1の塗料原料または前記第2の塗料原料を用いて製造することができる。前記第1の塗料原料は、前述のように、少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物を含む。前記第1の塗料原料の製造方法は、例えば、前記ケイ素化合物を溶媒中でゲル化して、ゲル状ケイ素化合物を生成するゲル化工程を含み、例えば、前述した前記ゲル化工程後の前記ゲル状ケイ素化合物の記載を援用できる。前記第2の塗料原料は、前述のように、少なくとも3官能以下の飽和結合官能基を含むケイ素化合物から得られたゲル状物であり且つ熟成処理を施したゲル状ケイ素化合物を含む。前記第2の塗料原料の製造方法は、例えば、前記ケイ素化合物から得られたゲル状ケイ素化合物を溶媒中で熟成する熟成工程を含み、例えば、前述した前記熟成工程後の前記ゲル状ケイ素化合物の記載を援用できる。
【0073】
以上のようにして、ゲル状ケイ素化合物の粉砕物と分散媒とを含む本発明の塗料を作製することができる。さらに、本発明の塗料には、前記各作製工程中に、またはその後に、前記粉砕物同士を化学的に結合させる触媒を加えても良い。前記触媒の添加量は、特に限定されないが、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物の重量に対し、例えば、0.01〜20重量%、0.05〜10重量%、または0.1〜5重量%である。この触媒により、例えば、後述の結合工程において、前記粉砕物同士を化学的に結合させることができる。前記触媒は、例えば、前記粉砕物同士の架橋結合を促進する触媒であっても良い。前記粉砕物同士を化学的に結合させる化学反応としては、シリカゾル分子に含まれる残留シラノール基の脱水縮合反応を利用することが好ましい。シラノール基の水酸基同士の反応を前記触媒で促進することで、短時間で空隙構造を硬化させる連続成膜が可能である。前記触媒としては、例えば、光活性触媒および熱活性触媒が挙げられる。前記光活性触媒によれば、例えば、加熱によらずに前記粉砕物同士を化学的に結合(例えば架橋結合)させることができる。これによれば、例えば、加熱による収縮が起こりにくいため、より高い空隙率を維持できる。また、前記触媒に加え、またはこれに代えて、触媒を発生する物質(触媒発生剤)を用いても良い。例えば、前記触媒が架橋反応促進剤であり、前記触媒発生剤が、前記架橋反応促進剤を発生する物質でも良い。例えば、前記光活性触媒に加え、またはこれに代えて、光により触媒を発生する物質(光触媒発生剤)を用いても良いし、前記熱活性触媒に加え、またはこれに代えて、熱により触媒を発生する物質(熱触媒発生剤)を用いても良い。前記光触媒発生剤としては、特に限定されないが、例えば、光塩基発生剤(光照射により塩基性触媒を発生する触媒)、光酸発生剤(光照射により酸性触媒を発生する物質)等が挙げられ、光塩基剤が好ましい。前記光塩基発生剤としては、例えば、9−アントリルメチル N,N−ジエチルカルバメート(9-anthrylmethyl N,N-diethylcarbamate、商品名WPBG−018)、(E)−1−[3−(2−ヒドロキシフェニル)−2−プロペノイル]ピペリジン((E)-1-[3-(2-hydroxyphenyl)-2-propenoyl]piperidine、商品名WPBG−027)、1−(アントラキノン−2−イル)エチル イミダゾールカルボキシレート(1-(anthraquinon-2-yl)ethyl imidazolecarboxylate、商品名WPBG−140)、2−ニトロフェニルメチル 4−メタクリロイルオキシピペリジン−1−カルボキシラート(商品名WPBG−165)、1,2−ジイソプロピル−3−〔ビス(ジメチルアミノ)メチレン〕グアニジウム 2−(3−ベンゾイルフェニル)プロピオナート(商品名WPBG−266)、1,2−ジシクロヘキシル−4,4,5,5−テトラメチルビグアニジウム n−ブチルトリフェニルボラート(商品名WPBG−300)、および2-(9-オキソキサンテン-2-イル)プロピオン酸1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(東京化成工業株式会社)、4-ピペリジンメタノールを含む化合物(商品名HDPD-PB100:ヘレウス社製)等が挙げられる。なお、前記「WPBG」を含む商品名は、いずれも和光純薬工業株式会社の商品名である。前記光酸発生剤としては、例えば、芳香族スルホニウム塩(商品名SP-170:ADEKA社)、トリアリールスルホニウム塩(商品名CPI101A:サンアプロ社)、芳香族ヨードニウム塩(商品名Irgacure250:チバ・ジャパン社)等が挙げられる。また、前記粉砕物同士を化学的に結合させる触媒は、前記光活性触媒および前記光触媒発生剤に限定されず、例えば、熱活性触媒または尿素のような熱触媒発生剤でも良い。前記粉砕物同士を化学的に結合させる触媒は、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒、塩酸、酢酸、シュウ酸等の酸触媒等が挙げられる。これらの中で、塩基触媒が好ましい。前記粉砕物同士を化学的に結合させる触媒は、例えば、前記粉砕物を含むゾル粒子液(例えば懸濁液)に、塗工直前に添加して使用する、または前記触媒を溶媒に混合した混合液として使用することができる。前記混合液は、例えば、前記ゾル粒子液に直接添加して溶解した塗工液、前記触媒を溶媒に溶解した溶液、前記触媒を溶媒に分散した分散液でもよい。前記溶媒は、特に制限されず、例えば、各種有機溶剤、水、緩衝液等が挙げられる。
【0074】
また、例えば、本発明の塗料には、さらに、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物同士を間接的に結合させるための架橋補助剤を添加してもよい。この架橋補助剤が、粒子(前記粉砕物)同士の間に入り込み、粒子と架橋補助剤が各々相互作用もしくは結合することで、距離的に多少離れた粒子同士も結合させることが可能であり、効率よく強度を上げることが可能となる。前記架橋補助剤としては、多架橋シランモノマーが好ましい。前記多架橋シランモノマーは、具体的には、例えば、2以上3以下のアルコキシシリル基を有し、アルコキシシリル基間の鎖長が炭素数1以上10以下であっても良く、炭素以外の元素も含んでもよい。前記架橋補助剤としては、例えば、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)プロパン、ビス(トリメトキシシリル)プロパン、ビス(トリエトキシシリル)ブタン、ビス(トリメトキシシリル)ブタン、ビス(トリエトキシシリル)ペンタン、ビス(トリメトキシシリル)ペンタン、ビス(トリエトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリメトキシシリル)-N-ブチル-N-プロピル-エタン-1,2-ジアミン、トリス-(3-トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(3-トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。この架橋補助剤の添加量としては、特に限定されないが、例えば、前記ケイ素化合物の粉砕物の重量に対して0.01〜20重量%、0.05〜15重量%、または0.1〜10重量%である。
【0075】
[2.塗料の使用方法]
本発明の塗料の使用方法として、以下に、シリコーン多孔体の製造方法を例示するが、本発明は、これには限定されない。
【0076】
前記シリコーン多孔体の製造方法は、例えば、前記本発明の塗料を用いて、前記シリコーン多孔体の前駆体を形成する前駆体形成工程、および、前記前駆体に含まれる前記塗料の前記粉砕物同士を化学的に結合させる結合工程を含むことを特徴とする。前記前駆体は、例えば、塗工膜ということもできる。
【0077】
前記シリコーン多孔体の製造方法によれば、例えば、空気層と同様の機能を奏する多孔質構造が形成される。その理由は、例えば、以下のように推測されるが、本発明は、この推測には制限されない。
【0078】
前記シリコーン多孔体の製造方法で使用する前記本発明の塗料は、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含むことから、前記ゲル状シリカ化合物の三次元構造が、三次元基本構造に分散された状態となっている。このため、前記シリコーン多孔体の製造方法では、例えば、前記塗料を用いて前記前駆体(例えば、塗工膜)を形成すると、前記三次元基本構造が堆積され、前記三次元基本構造に基づく空隙構造が形成される。つまり、前記シリコーン多孔体の製造方法によれば、前記ゲル状ケイ素化合物の三次元構造とは異なる、前記三次元基本構造の前記粉砕物から形成された新たな三次元構造が形成される。また、前記シリコーン多孔体の製造方法においては、さらに、前記粉砕物同士の化学的に結合させるため、前記新たな三次元構造が固定化される。このため、前記シリコーン多孔体の製造方法により得られる前記シリコーン多孔体は、空隙を有する構造であるが、十分な強度と可撓性とを維持できる。本発明により得られるシリコーン多孔体は、例えば、空隙を利用する部材として、断熱材、吸音材、光学部材、インク受像層等の幅広い分野の製品に使うことが可能で、さらに、各種機能を付与した積層フィルムを作製することができる。
【0079】
前記シリコーン多孔体の製造方法は、特に記載しない限り、前記本発明の塗料の説明を援用できる。
【0080】
前記多孔体の前駆体の形成工程においては、例えば、前記本発明の塗料を、前記基材上に塗工する。本発明の塗料は、例えば、基材上に塗工し、前記塗工膜を乾燥した後に、前記結合工程により前記粉砕物同士を化学的に結合(例えば、架橋)することで、一定レベル以上の膜強度を有する空隙層を、連続成膜することが可能である。
【0081】
前記基材に対する前記塗料の塗工量は、特に制限されず、例えば、所望の前記シリコーン多孔体の厚み等に応じて、適宜設定できる。具体例として、厚み0.1〜1000μmの前記シリコーン多孔体を形成する場合、前記基材に対する前記塗料の塗工量は、前記基材の面積1m
2あたり、例えば、前記粉砕物0.01〜60000μg、0.1〜5000μg、1〜50μgである。前記塗料の好ましい塗工量は、例えば、液の濃度や塗工方式等と関係するため、一義的に定義することは難しいが、生産性を考慮すると、できるだけ薄層で塗工することが好ましい。塗布量が多すぎると、例えば、溶媒が揮発する前に乾燥炉で乾燥される可能性が高くなる。これにより、溶媒中でナノ粉砕ゾル粒子が沈降・堆積し、空隙構造を形成する前に、溶媒が乾燥することで、空隙の形成が阻害されて空隙率が大きく低下する可能性がある。一方で、塗布量が薄過ぎると、基材の凹凸・親疎水性のバラツキ等により塗工ハジキが発生するリスクが高くなる可能性がある。
【0082】
前記基材に前記塗料を塗工した後、前記多孔体の前駆体(塗工膜)に乾燥処理を施してもよい。前記乾燥処理によって、例えば、前記多孔体の前駆体中の前記溶媒(前記塗料に含まれる溶媒)を除去するだけでなく、乾燥処理中に、ゾル粒子を沈降・堆積させ、空隙構造を形成させることを目的としている。前記乾燥処理の温度は、例えば、50〜250℃、60〜150℃、70〜130℃であり、前記乾燥処理の時間は、例えば、0.1〜30分、0.2〜10分、0.3〜3分である。乾燥処理温度、および時間については、例えば、連続生産性や高い空隙率の発現の関連では、より低く短いほうが好ましい。条件が厳しすぎると、例えば、基材が樹脂フィルムの場合、前記基材のガラス転移温度に近づくことで、前記基材が乾燥炉の中で伸展してしまい、塗工直後に、形成された空隙構造にクラック等の欠点が発生する可能性がある。一方で、条件が緩すぎる場合、例えば、乾燥炉を出たタイミングで残留溶媒を含むため、次工程でロールと擦れた際に、スクラッチ傷が入る等の外観上の不具合が発生する可能性がある。
【0083】
前記乾燥処理は、例えば、自然乾燥でもよいし、加熱乾燥でもよいし、減圧乾燥でもよい。前記乾燥方法は、特に制限されず、例えば、一般的な加熱手段が使用できる。前記加熱手段は例えば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等が挙げられる。中でも、工業的に連続生産することを前提とした場合は、加熱乾燥を用いることが好ましい。また、使用される溶媒については、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層(前記シリコーン多孔体)のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。前記溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、例えば、上記IPA等にペルフルオロ系界面活性剤もしくはシリコン系界面活性剤を少量添加し表面張力を低下させてもよい。
【0084】
前記基材は、特に制限されず、例えば、熱可塑性樹脂製の基材、ガラス製の基材、シリコンに代表される無機基板、熱硬化性樹脂等で成形されたプラスチック、半導体等の素子、カーボンナノチュープに代表される炭素繊維系材料等が好ましく使用できるが、これらに限定されない。前記基材の形態は、例えば、フィルム、プレート等が挙げられる。前記熱可塑性樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、トリアセテート(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。
【0085】
前記シリコーン多孔体の製造方法において、前記結合工程は、前記多孔体の前駆体(塗工膜)に含まれる前記粉砕物同士を化学的に結合させる工程である。前記結合工程によって、例えば、前記多孔体の前駆体における前記粉砕物の三次元構造が、固定化される。従来の焼結による固定化を行う場合は、例えば、200℃以上の高温処理を行うことで、シラノール基の脱水縮合、シロキサン結合の形成を誘発する。本発明における前記結合工程においては、上記の脱水縮合反応を触媒する各種添加剤を反応させることで、例えば、基材が樹脂フィルムの場合に、前記基材にダメージを起こすことなく、100℃前後の比較的低い乾燥温度、および数分未満の短い処理時間で、連続的に空隙構造を形成、固定化することができる。
【0086】
前記化学的に結合させる方法は、特に制限されず、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物の種類に応じて、適宜決定できる。具体例として、前記化学的な結合は、例えば、前記粉砕物同士の化学的な架橋結合により行うことができ、その他にも、例えば、酸化チタン等の無機粒子等を、前記粉砕物に添加した場合、前記無機粒子と前記粉砕物とを化学的に架橋結合させることも考えられる。また、酵素等の生体触媒を担持させる場合も、触媒活性点とは別の部位と前記粉砕物とを化学架橋結合させる場合もある。したがって、本発明は、例えば、前記ゾル粒子同士で形成する空隙層(シリコーン多孔体)だけでなく、有機無機ハイブリッド空隙層、ホストゲスト空隙層等の応用展開が考えられるが、これらに限定されない。
【0087】
前記結合工程は、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物の種類に応じて、触媒存在下での化学反応により行うことができる。本発明における化学反応としては、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物に含まれる残留シラノール基の脱水縮合反応を利用することが好ましい。シラノール基の水酸基同士の反応を前記触媒で促進することで、短時間で空隙構造を硬化させる連続成膜が可能である。前記触媒としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム等の塩基触媒、塩酸、酢酸、シュウ酸等の酸触媒等が挙げられるが、これらに限定されない。前記脱水縮合反応の触媒は、塩基触媒が特に好ましい。また、光(例えば紫外線)を照射することで触媒活性が発現する、光酸発生触媒、光塩基発生触媒、光酸発生剤、光塩基発生剤等も好ましく用いることができる。光酸発生触媒、光塩基発生触媒、光酸発生剤、および光塩基発生剤としては、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。前記触媒は、例えば、前述のとおり、前記粉砕物を含むゾル粒子液に、塗工直前に添加して使用する、または、前記触媒を溶媒に混合した混合液として使用することが好ましい。前記混合液は、例えば、前記ゾル粒子液に直接添加して溶解した塗工液、前記触媒を溶媒に溶解した溶液、前記触媒を溶媒に分散した分散液でもよい。前記溶媒は、特に制限されず、前述のとおり、例えば、水、緩衝液等が挙げられる。
【0088】
前記触媒存在下での化学反応は、例えば、事前に前記塗料に添加された前記触媒を含む前記塗工膜に対し光照射もしくは加熱、または、前記塗工膜に、前記触媒を吹き付けてから光照射もしくは加熱、または、前記触媒を吹き付けながら光照射もしくは加熱することによって、行うことができる。例えば、前記触媒が光活性触媒である場合は、光照射により、前記粉砕物同士を化学的に結合させて前記シリコーン多孔体を形成することができる。また、前記触媒が、熱活性触媒である場合は、加熱により、前記粉砕物同士を化学的に結合させて前記シリコーン多孔体を形成することができる。前記光照射における光照射量(エネルギー)は、特に限定されないが、@360nm換算で、例えば、200〜800mJ/cm
2、250〜600mJ/cm
2、または300〜400mJ/cm
2である。照射量が十分でなく触媒発生剤の光吸収による分解が進まず効果が不十分となることを防止する観点からは、200mJ/cm
2以上の積算光量が良い。また、空隙層下の基材にダメージがかかり熱ジワが発生することを防止する観点からは、800mJ/cm
2以下の積算光量が良い。前記加熱処理の条件は、特に制限されず、前記加熱温度は、例えば、50〜250℃、60〜150℃、70〜130℃であり、前記加熱時間は、例えば、0.1〜30分、0.2〜10分、0.3〜3分である。また、使用される溶媒については、例えば、乾燥時の溶媒揮発に伴う収縮応力の発生、それによる空隙層のクラック現象を抑える目的で、表面張力が低い溶媒が好ましい。例えば、イソプロピルアルコール(IPA)に代表される低級アルコール、ヘキサン、ペルフルオロヘキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
以上のようにして、本発明のシリコーン多孔体を製造することができるが、本発明の製造方法は、これに限定されない。
【0090】
また、得られた本発明のシリコーン多孔体に対し、例えば、加熱エージング等の処理をして強度を向上させる強度向上工程(以下「エージング工程」ともいう場合がある。)を行っても良い。例えば、本発明のシリコーン多孔体が樹脂フィルム上に積層されている場合、前記強度向上工程(エージング工程)により、前記樹脂フィルムに対する粘着ピール強度を向上させることができる。前記強度向上工程(エージング工程)においては、例えば、本発明のシリコーン多孔体を加熱しても良い。前記エージング工程における温度は、例えば40〜80℃、50〜70℃、55〜65℃である。前記反応の時間は、例えば5〜30hr、7〜25hr、または10〜20hrである。前記エージング工程においては、例えば、加熱温度を低温にすることで、前記シリコーン多孔体の収縮を抑制しながら粘着ピール強度を向上させ、高空隙率と強度の両立を達成できる。
【0091】
前記強度向上工程(エージング工程)において起こる現象およびメカニズムは不明であるが、例えば、本発明のシリコーン多孔体中に含まれる触媒により、前記粉砕物同士の化学的な結合(例えば架橋反応)がさらに進むことにより、強度が向上すると考えられる。具体例として、前記シリコーン多孔体中に残留シラノール基(OH基)が存在する場合、前記残留シラノール基同士が架橋反応により化学的に結合すると考えられる。なお、本発明のシリコーン多孔体中に含まれる触媒は、特に限定されないが、例えば、前記結合工程で用いた触媒でも良いし、前記結合工程で用いた光塩基発生触媒が光照射により発生した塩基性物質、前記結合工程で用いた光酸発生触媒が光照射により発生した酸性物質等でも良い。ただし、この説明は例示であり、本発明を限定しない。
【0092】
また、本発明のシリコーン多孔体上に、さらに粘接着層を形成しても良い(粘接着層形成工程)。具体的には、例えば、本発明のシリコーン多孔体上に、粘着剤または接着剤を塗布(塗工)することにより、前記粘接着層を形成しても良い。また、基材上に前記粘接着層が積層された粘着テープ等の、前記粘接着層側を、本発明のシリコーン多孔体上に貼り合せることにより、本発明のシリコーン多孔体上に前記粘接着層を形成しても良い。この場合、前記粘着テープ等の基材は、そのまま貼り合せたままにしても良いし、前記粘接着層から剥離しても良い。本発明において、「粘着剤」および「粘着層」は、例えば、被着体の再剥離を前提とした剤または層をいう。本発明において、「接着剤」および「接着層」は、例えば、被着体の再剥離を前提としない剤または層をいう。ただし、本発明において、「粘着剤」と「接着剤」は、必ずしも明確に区別できるものではなく、「粘着層」と「接着層」は、必ずしも明確に区別できるものではない。本発明において、前記粘接着層を形成する粘着剤または接着剤は特に限定されず、例えば、一般的な粘着剤または接着剤等が使用できる。前記粘着剤または接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられる。また、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も挙げられる。これら粘着剤および接着剤は、1種類のみ用いても、複数種類を併用(例えば、混合、積層等)しても良い。前記粘接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.1〜100μm、5〜50μm、10〜30μm、または12〜25μmである。
【0093】
さらに、本発明のシリコーン多孔体を、前記粘接着層と反応させて、本発明のシリコーン多孔体と前記粘接着層との中間に配置された中間層を形成しても良い(中間層形成工程)。前記中間層により、例えば、本発明のシリコーン多孔体と前記粘接着層とが剥離しにくくなる。この理由(メカニズム)は不明であるが、例えば、前記中間層の投錨性(投錨効果)によると推測される。前記投錨性(投錨効果)とは、前記空隙層と前記中間層との界面付近において、前記中間層が前記空隙層内部に入り組んだ構造をしていることにより、前記界面が強固に固定される現象(効果)をいう。ただし、この理由(メカニズム)は、推測される理由(メカニズム)の一例であり、本発明を限定しない。本発明のシリコーン多孔体と前記粘接着層との反応も、特に限定されないが、例えば、触媒作用による反応でも良い。前記触媒は、例えば、本発明のシリコーン多孔体中に含まれる触媒でも良い。具体的には、例えば、前記結合工程で用いた触媒でも良いし、前記結合工程で用いた光塩基発生触媒が光照射により発生した塩基性物質、前記結合工程で用いた光酸発生触媒が光照射により発生した酸性物質等でも良い。また、本発明のシリコーン多孔体と前記粘接着層との反応は、例えば、新たな化学結合が生成される反応(例えば架橋反応)でも良い。前記反応の温度は、例えば40〜80℃、50〜70℃、55〜65℃である。前記反応の時間は、例えば5〜30hr、7〜25hr、または10〜20hrである。また、この中間層形成工程が、本発明のシリコーン多孔体の強度を向上させる前記強度向上工程(エージング工程)を兼ねていても良い。
【0094】
このようにして得られる本発明のシリコーン多孔体は、例えば、さらに、他のフィルム(層)と積層して、前記多孔質構造を含む積層構造体としてもよい。この場合、前記積層構造体において、各構成要素は、例えば、粘着剤または接着剤を介して積層させてもよい。
【0095】
前記各構成要素の積層は、例えば、効率的であることから、長尺フィルムを用いた連続処理(いわゆるRoll to Roll等)により積層を行ってもよく、基材が成形物・素子等の場合はバッチ処理を行ったものを積層してもよい。
【0096】
以下に、前記本発明の塗料を用いて、基材上に前記シリコーン多孔体を形成する方法について、
図1〜3を用いて例をあげて説明する。
図2については、前記シリコーン多孔体を製膜した後に、保護フィルムを貼合して巻き取る工程を示しているが、別の機能性フィルムに積層を行う場合は、上記の手法を用いてもよいし、別の機能性フィルムを塗工、乾燥した後に、上記成膜を行った前記シリコーン多孔体を、巻き取り直前に貼り合せることも可能である。なお、図示した製膜方式は、あくまで一例であり、これらに限定されない。
【0097】
図1の断面図に、前記基材上に前記シリコーン多孔体を形成する方法における工程の一例を、模式的に示す。
図1において、前記シリコーン多孔体の形成方法は、基材10上に、前記本発明の塗料20’’を塗工する塗工工程(1)、塗料20’’を乾燥させて、前記シリコーン多孔体の前駆層である塗工膜20’を形成する塗工膜形成工程(乾燥工程)(2)、および、塗工膜20’に化学処理(例えば、架橋処理)をして、シリコーン多孔体20を形成する化学処理工程(例えば、架橋処理工程)(3)を含む。このようにして、図示のとおり、基材10上にシリコーン多孔体20を形成できる。なお、前記シリコーン多孔体の形成方法は、前記工程(1)〜(3)以外の工程を、適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
【0098】
前記塗工工程(1)において、塗料20’’の塗工方法は特に限定されず、一般的な塗工方法を採用できる。前記塗工方法としては、例えば、スロットダイ法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法(マイクログラビアコート法)、ディップ法(ディップコート法)、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法、ワイヤーバーコート法、スプレーコート法、エクストルージョンコート法、カーテンコート法、リバースコート法等が挙げられる。これらの中で、生産性、塗膜の平滑性等の観点から、エクストルージョンコート法、カーテンコート法、ロールコート法、マイクログラビアコート法等が好ましい。塗料20’’の塗工量は、特に限定されず、例えば、多孔質構造(シリコーン多孔体)20の厚みが適切になるように、適宜設定可能である。多孔質構造(シリコーン多孔体)20の厚みは、特に限定されず、例えば、前述の通りである。
【0099】
前記乾燥工程(2)において、塗料20’’を乾燥し(すなわち、塗料20’’に含まれる分散媒を除去し)、塗工膜(前駆層)20’を形成する。乾燥処理の条件は、特に限定されず、前述の通りである。
【0100】
さらに、前記化学処理工程(3)において、塗工前に添加した前記触媒(例えば、光活性触媒またはKOH等の熱活性触媒)を含む塗工膜20’に対し、光照射または加熱し、塗工膜(前駆体)20’中の前記粉砕物同士を化学的に結合させて(例えば、架橋させて)、シリコーン多孔体20を形成する。前記化学処理工程(3)における光照射または加熱条件は、特に限定されず、前述の通りである。
【0101】
つぎに、
図2に、スロットダイ法の塗工装置およびそれを用いた前記シリコーン多孔体の形成方法の一例を模式的に示す。なお、
図2は、断面図であるが、見易さのため、ハッチを省略している。
【0102】
図示のとおり、この装置を用いた方法における各工程は、基材10を、ローラによって一方向に搬送しながら行う。搬送速度は、特に限定されず、例えば、1〜100m/分、3〜50m/分、5〜30m/分である。
【0103】
まず、送り出しローラ101から基材10を繰り出して搬送しながら、塗工ロール102において、基材に本発明の塗料20’’を塗工する塗工工程(1)を行い、続いて、オーブンゾーン110内で乾燥工程(2)に移行する。
図2の塗工装置では、塗工工程(1)の後、乾燥工程(2)に先立ち、予備乾燥工程を行う。予備乾燥工程は、加熱をせずに、室温で行うことができる。乾燥工程(2)においては、加熱手段111を用いる。加熱手段111としては、前述のとおり、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等を適宜用いることができる。また、例えば、乾燥工程(2)を複数の工程に分け、後の乾燥工程になるほど乾燥温度を高くしても良い。
【0104】
乾燥工程(2)の後に、化学処理ゾーン120内で化学処理工程(3)を行う。化学処理工程(3)においては、例えば、乾燥後の塗工膜20’が光活性触媒を含む場合、基材10の上下に配置したランプ(光照射手段)121で光照射する。または、例えば、乾燥後の塗工膜20’が熱活性触媒を含む場合、ランプ(光照射装置)121に代えて熱風器(加熱手段)を用い、基材10の上下に配置した熱風器121で基材10を加熱する。この架橋処理により、塗工膜20’中の前記粉砕物同士の化学的結合が起こり、シリコーン多孔体20が硬化・強化される。そして、化学処理工程(3)の後、基材10上にシリコーン多孔体20が形成された積層体を、巻き取りロール105により巻き取る。なお、
図2では、前記積層体の多孔質構造20を、ロール106から繰り出される保護シートで被覆して保護している。ここで、前記保護シートに代えて、長尺フィルムから形成された他の層を多孔質構造20上に積層させても良い。
【0105】
図3に、マイクログラビア法(マイクログラビアコート法)の塗工装置およびそれを用いた前記多孔質構造の形成方法の一例を模式的に示す。なお、同図は、断面図であるが、見易さのため、ハッチを省略している。
【0106】
図示のとおり、この装置を用いた方法における各工程は、
図2と同様、基材10を、ローラによって一方向に搬送しながら行う。搬送速度は、特に限定されず、例えば、1〜100m/分、3〜50m/分、5〜30m/分である。
【0107】
まず、送り出しローラ201から基材10を繰り出して搬送しながら、基材10に本発明の塗料20’’を塗工する塗工工程(1)を行う。塗料20’’の塗工は、図示のとおり、液溜め202、ドクター(ドクターナイフ)203およびマイクログラビア204を用いて行う。具体的には、液溜め202に貯留されている塗料20’’を、マイクログラビア204表面に付着させ、さらに、ドクター203で所定の厚さに制御しながら、マイクログラビア204で基材10表面に塗工する。なお、マイクログラビア204は、例示であり、これに限定されるものではなく、他の任意の塗工手段を用いても良い。
【0108】
つぎに、乾燥工程(2)を行う。具体的には、図示のとおり、オーブンゾーン210中に、塗料20’’が塗工された基材10を搬送し、オーブンゾーン210内の加熱手段211により加熱して乾燥する。加熱手段211は、例えば、
図2と同様でも良い。また、例えば、オーブンゾーン210を複数の区分に分けることにより、乾燥工程(2)を複数の工程に分け、後の乾燥工程になるほど乾燥温度を高くしても良い。乾燥工程(2)の後に、化学処理ゾーン220内で、化学処理工程(3)を行う。化学処理工程(3)においては、例えば、乾燥後の塗工膜20’が光活性触媒を含む場合、基材10の上下に配置したランプ(光照射手段)221で光照射する。または、例えば、乾燥後の塗工膜20’が熱活性触媒を含む場合、ランプ(光照射装置)221に代えて熱風器(加熱手段)を用い、基材10の下方に配置した熱風器(加熱手段)221で、基材10を加熱する。この架橋処理により、塗工膜20’中の前記粉砕物同士の化学的結合が起こり、シリコーン多孔体20が形成される。
【0109】
そして、化学処理工程(3)の後、基材10上にシリコーン多孔体20が形成された積層体を、巻き取りロール251により巻き取る。その後に、前記積層体上に、例えば、他の層を積層させてもよい。また、前記積層体を巻き取りロール251により巻き取る前に、前記積層体に、例えば、他の層を積層させてもよい。
【0110】
なお、
図4〜6に、本発明のシリコーン多孔体を形成する方法における連続処理工程の別の一例を示す。
図4の断面図に示すとおり、この方法は、シリコーン多孔体20を形成する化学処理工程(例えば、架橋処理工程)(3)の後に、強度向上工程(エージング工程)(4)を行うこと以外は、
図1〜3に示す方法と同じである。
図4に示すとおり、強度向上工程(エージング工程)(4)においては、シリコーン多孔体20の強度を向上させ、強度が向上したシリコーン多孔体21とする。強度向上工程(エージング工程)(4)は、特に限定されないが、例えば前述のとおりである。
【0111】
図5は、スロットダイ法の塗工装置およびそれを用いた前記シリコーン多孔体の形成方法の、
図2と別の一例を示す模式図である。図示のとおり、この塗工装置は、化学処理工程(3)を行う化学処理ゾーン120の直後に、強度向上工程(エージング工程)(4)を行う強度向上ゾーン(エージングゾーン)130を有すること以外は、
図2の装置と同じである。すなわち、化学処理工程(3)の後に、強度向上ゾーン(エージングゾーン)130内で強度向上工程(エージング工程)(4)を行い、シリコーン多孔体20の樹脂フィルム10に対する粘着ピール強度を向上させて、粘着ピール強度が向上したシリコーン多孔体21を形成する。強度向上工程(エージング工程)(4)は、例えば、基材10の上下に配置した熱風器(加熱手段)131を用いて、前述のようにシリコーン多孔体20を加熱することにより行っても良い。加熱温度、時間等は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。その後、
図3と同様に、基材10上にシリコーン多孔体21が形成された積層フィルムを、巻き取りロール105により巻き取る。
【0112】
図6は、マイクログラビア法(マイクログラビアコート法)の塗工装置およびそれを用いた前記多孔質構造の形成方法の、
図3と別の一例を示す模式図である。図示のとおり、この塗工装置は、化学処理工程(3)を行う化学処理ゾーン220の直後に、強度向上工程(エージング工程)(4)を行う強度向上ゾーン(エージングゾーン)230を有すること以外は、
図3の装置と同じである。すなわち、化学処理工程(3)の後に、強度向上ゾーン(エージングゾーン)230内で強度向上工程(エージング工程)(4)を行い、シリコーン多孔体20の樹脂フィルム10に対する粘着ピール強度を向上させて、粘着ピール強度が向上したシリコーン多孔体21を形成する。強度向上工程(エージング工程)(4)は、例えば、基材10の上下に配置した熱風器(加熱手段)231を用いて、前述のようにシリコーン多孔体20を加熱することにより行っても良い。加熱温度、時間等は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。その後、
図3と同様に、基材10上にシリコーン多孔体21が形成された積層フィルムを、巻き取りロール251により巻き取る。
【0113】
また、
図7〜9に、本発明のシリコーン多孔体を形成する方法における連続処理工程の別の一例を示す。
図7の断面図に示すとおり、この方法は、シリコーン多孔体20を形成する化学処理工程(例えば、架橋処理工程)(3)の後に、シリコーン多孔体20上に粘接着層30を塗工する粘接着層塗工工程(粘接着層形成工程)(4)、および、シリコーン多孔体20を粘接着層30と反応させて中間層22を形成する中間層形成工程(5)を含む。これら以外は、
図7〜9の方法は、
図4〜6に示す方法と同じである。また、
図7では、中間層形成工程(5)が、シリコーン多孔体20の強度を向上させる工程(強度向上工程)を兼ねており、中間層形成工程(5)の後に、シリコーン多孔体20が、強度の向上したシリコーン多孔体21に変化している。ただし、本発明はこれに限定されず、例えば、中間層形成工程(5)の後にシリコーン多孔体20が変化していなくても良い。粘接着層塗工工程(粘接着層形成工程)(4)および中間層形成工程(5)は、特に限定されないが、例えば前述のとおりである。
【0114】
図8は、スロットダイ法の塗工装置およびそれを用いた前記シリコーン多孔体の形成方法の、さらに別の一例を示す模式図である。図示のとおり、この塗工装置は、化学処理工程(3)を行う化学処理ゾーン120の直後に、粘接着層塗工工程(4)を行う粘接着層塗工ゾーン130aを有すること以外は、
図5の装置と同じである。同図において、粘接着層塗工ゾーン130aの直後に配置された中間層形成ゾーン(エージングゾーン)130は、基材10の上下に配置した熱風器(加熱手段)131により、
図5の強度向上ゾーン(エージングゾーン)130と同様の加熱処理を行うことができる。すなわち、
図8の装置では、化学処理工程(3)の後に、粘接着層塗工ゾーン130a内で、粘接着層塗工手段131aにより、シリコーン多孔体20上に粘着剤または接着剤を塗布(塗工)し、粘接着層30を形成する粘接着層塗工工程(粘接着層形成工程)(4)を行う。また、前述のとおり、粘着剤または接着剤の塗布(塗工)に代えて、粘接着層30を有する粘着テープ等の貼合(貼付)でも良い。さらに、中間層形成ゾーン(エージングゾーン)130内で中間層形成工程(エージング工程)(5)を行い、シリコーン多孔体20と粘接着層30を反応させて中間層22を形成する。また、前述のとおり、この工程で、シリコーン多孔体20は、強度が向上したシリコーン多孔体21となる。熱風器(加熱手段)131による加熱温度、時間等は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。
【0115】
図9は、マイクログラビア法(マイクログラビアコート法)の塗工装置およびそれを用いた前記多孔質構造の形成方法の、さらに別の一例を示す模式図である。図示のとおり、この塗工装置は、化学処理工程(3)を行う化学処理ゾーン220の直後に、粘接着層塗工工程(4)を行う粘接着層塗工ゾーン230aを有すること以外は、
図6の装置と同じである。同図において、粘接着層塗工ゾーン230aの直後に配置された中間層形成ゾーン(エージングゾーン)230は、基材10の上下に配置した熱風器(加熱手段)231により、
図6の強度向上ゾーン(エージングゾーン)230と同様の加熱処理を行うことができる。すなわち、
図9の装置では、化学処理工程(3)の後に、粘接着層塗工ゾーン230a内で、粘接着層塗工手段231aにより、シリコーン多孔体20上に粘着剤または接着剤を塗布(塗工)し、粘接着層30を形成する粘接着層塗工工程(粘接着層形成工程)(4)を行う。また、前述のとおり、粘着剤または接着剤の塗布(塗工)に代えて、粘接着層30を有する粘着テープ等の貼合(貼付)でも良い。さらに、中間層形成ゾーン(エージングゾーン)230内で中間層形成工程(エージング工程)(5)を行い、シリコーン多孔体20と粘接着層30を反応させて中間層22を形成する。また、前述のとおり、この工程で、シリコーン多孔体20は、強度が向上したシリコーン多孔体21となる。熱風器(加熱手段)231による加熱温度、時間等は、特に限定されないが、例えば、前述のとおりである。
【0116】
[3.シリコーン多孔体]
本発明のシリコーン多孔体は、前述のように、膜強度を示すベンコット(登録商標)による耐擦傷性が、60〜100%であり、可撓性を示すMIT試験による耐折回数が、100回以上であることを特徴とする。
【0117】
本発明のシリコーン多孔体は、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を使用していることから、前記ゲル状ケイ素化合物の三次元構造が破壊され、前記ゲル状ケイ素化合物とは異なる新たな三次元構造が形成されている。このように、本発明のシリコーン多孔体は、前記ゲル状ケイ素化合物から形成される層では得られない新たな孔構造(新たな空隙構造)が形成された層となったことで、空隙率が高いナノスケールのシリコーン多孔体を形成することができる。また、本発明のシリコーン多孔体は、例えば、ゲル状ケイ素化合物のシロキサン結合官能基数を調整しつつ、前記粉砕物同士を化学的に結合する。また、前記シリコーン多孔体の前駆体として新たな三次元構造が形成された後に、結合工程で化学結合(例えば、架橋)されるため、本発明のシリコーン多孔体は、空隙を有する構造であるが、十分な強度と可撓性とを維持できる。したがって、本発明によれば、容易且つ簡便に、シリコーン多孔体を、様々な対象物に付与することができる。具体的には、本発明のシリコーン多孔体は、例えば、空気層に代えて、断熱材、吸音材、再生医療用足場材、結露防止材、光学部材等として使用できる。
【0118】
本発明のシリコーン多孔体は、例えば、前述のようにゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含み、前記粉砕物同士が化学的に結合している。本発明のシリコーン多孔体において、前記粉砕物同士の化学的な結合(化学結合)の形態は、特に制限されず、前記化学結合の具体例は、例えば、架橋結合等が挙げられる。なお、前記粉砕物同士を化学的に結合させる方法は、後述する前記シリコーン多孔体の製造方法において、詳細を述べる。
【0119】
前記架橋結合は、例えば、シロキサン結合である。シロキサン結合は、例えば、以下に示す、T2の結合、T3の結合、T4の結合が例示できる。本発明のシリコーン多孔体がシロキサン結合を有する場合、例えば、いずれか一種の結合を有してもよいし、いずれか二種の結合を有してもよいし、三種全ての結合を有してもよい。前記シロキサン結合のうち、T2およびT3の比率が多いほど、可撓性に富み、ゲル本来の特性を期待できるが、膜強度が脆弱になる。一方で、前記シロキサン結合のうちT4比率が多いと、膜強度と発現しやすいが、空隙サイズが小さくなり、可撓性が脆くなる。このため、例えば、用途に応じて、T2、T3、T4比率を変えることが好ましい。
【0121】
本発明のシリコーン多孔体が前記シロキサン結合を有する場合、T2、T3およびT4の割合は、例えば、T2を「1」として相対的に表した場合、T2:T3:T4=1:[1〜100]:[0〜50]、1:[1〜80]:[1〜40]、1:[5〜60]:[1〜30]である。
【0122】
また、本発明のシリコーン多孔体は、例えば、含まれるケイ素原子がシロキサン結合していることが好ましい。具体例として、前記シリコーン多孔体に含まれる全ケイ素原子のうち、未結合のケイ素原子(つまり、残留シラノール)の割合は、例えば、50%未満、30%以下、15%以下、である。
【0123】
本発明のシリコーン多孔体は、孔構造を有しており、孔の空隙サイズは、空隙(孔)の長軸の直径および短軸の直径のうち、前記長軸の直径を指すものとする。好ましい空孔サイズは、例えば、5nm〜200nmである。前記空隙サイズは、その下限が、例えば、5nm以上、10nm以上、20nm以上であり、その上限が、例えば、1000μm以下、500μm以下、100μm以下であり、その範囲が、例えば、5nm〜1000μm、10nm〜500μm、20nm〜100μmである。空隙サイズは、空隙構造を用いる用途に応じて好ましい空隙サイズが決まるため、例えば、目的に応じて、所望の空隙サイズに調整する必要がある。空隙サイズは、例えば、以下の方法により評価できる。
【0124】
(空隙サイズの評価)
本発明において、前記空隙サイズは、BET試験法により定量化できる。具体的には、比表面積測定装置(マイクロメリティック社製:ASAP2020)のキャピラリに、サンプル(本発明のシリコーン多孔体)を0.1g投入した後、室温で24時間、減圧乾燥を行って、空隙構造内の気体を脱気する。そして、前記サンプルに窒素ガスを吸着させることで吸着等温線を描き、細孔分布を求める。これによって、空隙サイズが評価できる。
【0125】
本発明のシリコーン多孔体は、例えば、膜強度を示すベンコット(登録商標)による耐擦傷性が、60〜100%である。本発明は、例えば、このような膜強度を有することから、各種プロセスでの耐擦傷性に優れる。本発明は、例えば、前記シリコーン多孔体を製膜した後の巻き取りおよび製品フィルムを取り扱う際の生産プロセス内での、耐キズ付き性を有する。また一方で、本発明のシリコーン多孔体は、例えば、空隙率を減らす代わりに、後述する加熱工程での触媒反応を利用して、前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物の粒子サイズ、および前記粉砕物同士が結合したネック部の結合力を上げることができる。これにより、本発明のシリコーン多孔体は、例えば、本来脆弱である空隙構造に、一定レベルの強度を付与することができる。
【0126】
前記耐擦傷性は、その下限が、例えば、60%以上、80%以上、90%以上であり、その上限が、例えば、100%以下、99%以下、98%以下であり、その範囲が、例えば、60〜100%、80〜99%、90〜98%である。
【0127】
前記耐擦傷性は、例えば、以下のような方法により測定できる。
【0128】
(耐擦傷性の評価)
(1) アクリルフィルムに塗工・成膜をした空隙層(本発明のシリコーン多孔体)を、直径15mm程度の円状にサンプリングする。
(2) 次に、前記サンプルについて、蛍光X線(島津製作所社製:ZSX PrimusII)でケイ素を同定して、Si塗布量(Si
0)を測定する。つぎに、前記アクリルフィルム上の前記空隙層について、前述のサンプリングした近傍から、50mm×100mmに前記空隙層をカットし、これをガラス板(厚み3mm)に固定した後、ベンコット(登録商標)摺動試験を行う。摺動条件は、重り100g、10往復とする。
(3) 摺動を終えた前記空隙層から、前記(1)と同様にサンプリングおよび蛍光X測定を行うことで、擦傷試験後のSi残存量(Si
1)を測定する。耐擦傷性は、ベンコット(登録商標)試験前後のSi残存率(%)で定義し、以下の式で表される。
耐擦傷性(%)=[残存したSi量(Si
1)/Si塗布量(Si
0)]×100(%)
【0129】
本発明のシリコーン多孔体は、例えば、可撓性を示すMIT試験による耐折回数が、100回以上である。本発明は、例えば、このような可撓性を有することから、例えば、製造時における巻き取りや使用時等における取扱い性に優れる。
【0130】
前記耐折回数は、その下限が、例えば、100回以上、500回以上、1000回以上であり、その上限が、特に制限されず、例えば、10000回以下であり、その範囲が、例えば、100〜10000回、500〜10000回、1000〜10000回である。
【0131】
前記可撓性は、例えば、物質の変形のし易さを意味する。前記MIT試験による耐折回数は、例えば、以下のような方法により測定できる。
【0132】
(耐折試験の評価)
前記空隙層(本発明のシリコーン多孔体)を、20mm×80mmの短冊状にカットした後、MIT耐折試験機(テスター産業社製:BE−202)に取り付け、1.0Nの荷重をかける。前記空隙層を抱き込むチャック部は、R2.0mmを使用し、耐折回数を最大10000回行い、前記空隙層が破断した時点の回数を耐折回数とする。
【0133】
本発明のシリコーン多孔体において、空隙率を示す膜密度は、特に制限されず、その下限が、例えば、1g/cm
3以上、10g/cm
3以上、15g/cm
3以上であり、その上限が、例えば、50g/cm
3以下、40g/cm
3以下、30g/cm
3以下、2.1g/cm
3以下であり、その範囲が、例えば、5〜50g/cm
3、10〜40g/cm
3、15〜30g/cm
3、1〜2.1g/cm
3である。
【0134】
前記膜密度は、例えば、以下のような方法により測定できる。
【0135】
(膜密度の評価)
アクリルフィルムに空隙層(本発明のシリコーン多孔体)を形成した後、X線回折装置(RIGAKU社製:RINT−2000)を用いて全反射領域のX線反射率を測定した。Intensityと2θのフィッティグを行った後に、空隙層・基材の全反射臨界角から空孔率(P%)を算出した。膜密度は以下の式で表すことができる。
膜密度(%)=100(%)−空孔率(P%)
【0136】
本発明のシリコーン多孔体は、前述のように孔構造(多孔質構造)を有していればよく、例えば、前記孔構造が連続した連泡構造体であってもよい。前記連泡構造体とは、例えば、前記シリコーン多孔体において、三次元的に、孔構造が連なっていることを意味し、前記孔構造の内部空隙が連続している状態ともいえる。多孔質体が連泡構造を有する場合、これにより、バルク中に占める空隙率を高めることが可能であるが、中空シリカのような独泡粒子を使用する場合は、連泡構造を形成できない。これに対して、本発明のシリコーン多孔体は、シリカゾル粒子(ゾルを形成するゲル状ケイ素化合物の粉砕物)が三次元の樹状構造を有するために、塗工膜(前記ゲル状ケイ素化合物の粉砕物を含むゾルの塗工膜)中で、前記樹状粒子が沈降・堆積することで、容易に連泡構造を形成することが可能である。また、本発明のシリコーン多孔体は、より好ましくは、連泡構造が複数の細孔分布を有するモノリス構造を形成することが好ましい。前記モノリス構造は、例えば、ナノサイズの微細な空隙が存在する構造と、同ナノ空隙が集合した連泡構造として存在する階層構造を指すものとする。前記モノリス構造を形成する場合、例えば、微細な空隙で膜強度を付与しつつ、粗大な連泡空隙で高空隙率を付与し、膜強度と高空隙率とを両立することができる。それらのモノリス構造を形成するには、例えば、まず、前記粉砕物に粉砕する前段階の前記ゲル状ケイ素化合物において、生成する空隙構造の細孔分布を制御することが重要である。また、例えば、前記ゲル状ケイ素化合物を粉砕する際、前記粉砕物の粒度分布を、所望のサイズに制御することで、前記モノリス構造を形成させることができる。
【0137】
本発明のシリコーン多孔体において、柔軟性を示す引き裂きクラック発生伸び率は、特に制限されず、その下限が、例えば、0.1%以上、0.5%以上、1%以上であり、その上限が、例えば、3%以下である。前記引き裂きクラック発生伸び率の範囲は、例えば、0.1〜3%、0.5〜3%、1〜3%である。
【0138】
前記引き裂きクラック発生伸び率は、例えば、以下のような方法により測定できる。
【0139】
(引き裂きクラック発生伸び率の評価)
アクリルフィルムに空隙層(本発明のシリコーン多孔体)を形成した後に、5mm×140mmの短冊状にサンプリングを行う。次に、前記サンプルを引っ張り試験機(島津製作所社製:AG−Xplus)に、チャック間距離が100mmになるようにチャッキングした後に、0.1mm/sの引張速度で引っ張り試験を行う。試験中の前記サンプルを、注意深く観察し、前記サンプルの一部にクラックが入った時点で試験を終了し、クラックが入った時点の伸び率(%)を、引き裂きクラック発生伸び率とする。
【0140】
本発明のシリコーン多孔体において、透明性を示すヘイズは、特に制限されず、その下限が、例えば、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上であり、その上限が、例えば、10%以下、5%以下、3%以下であり、その範囲が、例えば、0.1〜10%、0.2〜5%、0.3〜3%である。
【0141】
前記ヘイズは、例えば、以下のような方法により測定できる。
【0142】
(ヘイズの評価)
空隙層(本発明のシリコーン多孔体)を50mm×50mmのサイズにカットし、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製:HM−150)にセットしてヘイズを測定する。ヘイズ値については、以下の式より算出を行う。
ヘイズ(%)=[拡散透過率(%)/全光線透過率(%)]×100(%)
【0143】
前記屈折率は、一般に、真空中の光の波面の伝達速度と、媒質内の伝播速度との比を、その媒質の屈折率という。本発明のシリコーン多孔体の屈折率は、特に制限されず、その上限が、例えば、1.3以下、1.3未満、1.25以下、1.2以下、1.15以下であり、その下限が、例えば、1.05以上、1.06以上、1.07以上であり、その範囲が、例えば、1.05以上1.3以下、1.05以上1.3未満、1.05以上1.25以下、1.06以上〜1.2未満、1.07以上〜1.15以下である。
【0144】
本発明において、前記屈折率は、特に断らない限り、波長550nmにおいて測定した屈折率をいう。また、屈折率の測定方法は、特に限定されず、例えば、下記の方法により測定できる。
【0145】
(屈折率の評価)
アクリルフィルムに空隙層(本発明のシリコーン多孔体)を形成した後に、50mm×50mmのサイズにカットし、これを粘接着層でガラス板(厚み:3mm)の表面に貼合する。前記ガラス板の裏面中央部(直径20mm程度)を黒マジックで塗りつぶして、前記ガラス板の裏面で反射しないサンプルを調製する。エリプソメーター(J.A.Woollam Japan社製:VASE)に前記サンプルをセットし、500nmの波長、入射角50〜80度の条件で、屈折率を測定し、その平均値を屈折率とする。
【0146】
本発明のシリコーン多孔体の厚みは、特に制限されず、その下限が、例えば、0.05μm以上、0.1μm以上であり、その上限が、例えば、1000μm以下、100μm以下であり、その範囲が、例えば、0.05〜1000μm、0.1〜100μmである。
【0147】
本発明のシリコーン多孔体の形態は、特に制限されず、例えば、フィルム形状でもよいし、ブロック形状等でもよい。
【0148】
本発明のシリコーン多孔体の製造方法は、特に制限されないが、例えば、前述したシリコーン多孔体の製造方法により製造することができる。
【0149】
[4.シリコーン多孔体の用途]
前記本発明の塗料を用いて製造される前記シリコーン多孔体は、前述のように、空気層と同様の機能を奏することから、前記空気層を有する対象物に対して、前記空気層に代えて利用することができる。
【0150】
前記シリコーン多孔体を含む部材としては、例えば、断熱材、吸音材、結露防止材、光学部材等が挙げられる。これらの部材は、例えば、空気層が必要な個所に配置することで使用できる。これらの部材の形態は、特に制限されず、例えば、フィルムでもよい。
【0151】
また、前記シリコーン多孔体を含む部材としては、例えば、再生医療用足場材が挙げられる。前述のように前記シリコーン多孔体は、空気層と同様の機能を発揮する多孔構造を有している。前記シリコーン多孔体の空隙は、例えば、細胞、栄養源、空気等の保持に適していることから、前記多孔質構造は、例えば、再生医療用の足場として有用である。
【0152】
前記シリコーン多孔体を含む部材としては、これらの他に、例えば、全反射部材、インク受像材、単層AR(減反射)、単層モスアイ(moth eye)、誘電率材等が挙げられる。
【実施例】
【0153】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0154】
(実施例1)
本実施例では、以下のようにして本発明の塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を製造した。
【0155】
(1)ケイ素化合物のゲル化
DMSO 2.2gに、ケイ素化合物の前駆体であるMTMSを0.95g溶解させた。前記混合液に、0.01mol/Lのシュウ酸水溶液を0.5g添加し、室温で30分、撹拌を行うことでMTMSを加水分解して、トリス(ヒドロキシ)メチルシランを生成した。
【0156】
DMSO 5.5gに、28%濃度のアンモニア水0.38g、および純水0.2gを添加した後、さらに、前記加水分解処理した前記混合液を追添し、室温で15分撹拌することで、トリストリス(ヒドロキシ)メチルシランのゲル化を行い、ゲル状ケイ素化合物を得た。
【0157】
(2)熟成処理
前記ゲル化処理を行った混合液を、そのまま、40℃で20時間インキュベートして、熟成処理を行った。
【0158】
(3)粉砕処理
つぎに、前記熟成処理したゲル状ケイ素化合物を、スパチュラを用いて、数mm〜数cmサイズの顆粒状に砕いた。そこに、IPA 40gを添加し、軽く撹拌した後、室温で6時間静置して、ゲル中の溶媒および触媒をデカンテーションした。同様のデカンテーション処理を3回繰り返し、溶媒置換を完了した。そして、前記混合液中の前記ゲル状ケイ素化合物に対して、高圧メディアレス粉砕を行った。この粉砕処理は、ホモジナイザー(商品名 UH−50、エスエムテー社製)を使用し、5ccのスクリュー瓶に、ゲル1.18g、IPA 1.14gを秤量した後、50W、20kHzの条件で2分間の粉砕で行った。
【0159】
前記粉砕処理によって、前記混合液中の前記ゲル状ケイ素化合物が粉砕したことにより、前記混合液は、前記粉砕物のゾル液となった。前記混合液(塗料)に含まれる前記粉砕物の粒度バラツキを示す体積平均粒子径を、動的光散乱式ナノトラック粒度分析計(日機装社製、UPA−EX150型)にて確認したところ、0.50〜0.70であった。さらに、0.3重量%のKOH水溶液を用意し、前記ゾル液0.5gに対して0.02gの触媒KOHを添加して、塗工液(触媒を含む塗料)を調製した。
【0160】
(4)塗工膜の形成およびシリコーン多孔体の形成
そして、バーコート法により、前記塗工液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)製基材の表面に塗布して、塗工膜を形成した。前記塗布は、前記基材の表面1mm
2あたり前記ゾル液6μLとした。前記塗工膜を、温度100℃で1分処理し、シリコーン多孔体の前駆体の成膜、および前駆体における前記粉砕物同士の架橋反応を完了させた。これにより、前記基材上に、前記粉砕物同士が化学的に結合した厚み1μmのシリコーン多孔体が形成された。
【0161】
(実施例2)
実施例1のKOHを1.5重量%の光塩基発生触媒(和光純薬工業株式会社:商品名WPBG266)のIPA(イソプロピルアルコール)溶液を用意し、前記ゾル粒子液0.75gに対して0.031g添加し塗工液を調製し、さらに塗工膜形成後にUV照射を350mJ/cm
2(@360nm)行なった以外は、実施例1と同様の操作を行ない、基材上にシリコーン多孔体を得た。さらに前記多孔体を60℃での加熱エージングを20hr行なって膜強度をさらに上げた。
【0162】
(実施例3)
実施例2に記載の塗工液にさらに、5重量%のビス(トリメトキシシリル)エタンを前記ゾル液0.75gに対して0.018g加えた以外は、実施例2と同様の操作を行ない、シリコーン多孔体を得た。
【0163】
(比較例1)
熟成工程のインキュベートを、40℃72時間の長時間熟成に変更した以外は、実施例1と同様の方法により、多孔体を形成した。
【0164】
(比較例2)
ケイ素化合物の前駆体としてTEOS(テトラメトキシシラン)を用い、熟成工程におけるインキュベートを、熟成工程のインキュベートを、40℃72時間の長時間熟成に変更した点以外は、実施例1と同様の方法により、多孔体を形成した。なお、本比較例では、多孔体(膜)を1μm厚で作製した場合、膜に部分的な割れが発生したため、厚みは200nmで膜を作製した。
【0165】
実施例1、比較例1および比較例2について、屈折率、残留シラノール基の割合および耐擦傷性を測定した。これらの結果を、下記表1に示す。
【0166】
【表1】
【0167】
前記表1に示すように、実施例1で得られたゾル溶液を用いて形成したシリコーン多孔体(空隙層)は、厚み1μmで、屈折率が1.2未満であり、かつ膜強度も簡便に得られることが確認できた。また、表1には示していないが、実施例2および3でも、同様に、低屈折率で膜強度が高いことが確認された。一方で、比較例1のゾル溶液を用いた場合、長時間熟成を行ったために、シラノール基がゲル中にほとんど残存しなかった。そのため、結合工程における架橋構造が形成されずに、十分な膜強度が得られなかった。また、比較例2のゾル溶液は、ケイ素化合物の前駆体としてTEOSを用いたために、高い膜強度が得られる一方で可撓性が著しく低下した。したがって、膜強度と可撓性を両立させるためには、ケイ素化合物の前駆体および残留シラノール基を調整することが極めて有用であることがわかった。
【0168】
(実施例4)
本実施例では、以下のようにして本発明の塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を製造した。
【0169】
まず、実施例1と同様にして、前記「(1)ケイ素化合物のゲル化」および「(2)熟成処理」を行った。つぎに、0.3重量%のKOH水溶液に代えて、1.5重量%の光塩基発生触媒(和光純薬工業株式会社:商品名WPBG266)のIPA(イソプロピルアルコール)溶液を前記ゾル粒子液に添加したこと以外は、実施例1と同様にして前記「(3)粉砕処理」を行い、塗工液(触媒を含む塗料)を調製した。前記光塩基発生触媒のIPA溶液の添加量は、前記ゾル粒子液0.75gに対して0.031gとした。その後、実施例1と同様にして前記「(4)塗工膜の形成およびシリコーン多孔体の形成」を行った。このようにして得た乾燥後の多孔体にUV照射した。前記UV照射は、波長360nmの光で光照射量(エネルギー)は500mJとした。さらに、UV照射後、60℃での加熱エージングを22hr行なって本実施例の多孔質構造を形成した。
【0170】
(実施例5)
UV照射後に加熱エージングを行わなかったこと以外は、実施例4と同様の操作を行ない、塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を形成した。
【0171】
(実施例6)
光塩基発生触媒のIPA溶液添加後、さらに、5重量%のビス(トリメトキシ)シランを前記ゾル液0.75gに対して0.018g加えて塗工液を調整した以外は、実施例4と同様の操作を行ない、塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を形成した。
【0172】
(実施例7)
光塩基発生触媒のIPA溶液の添加量を、前記ゾル液0.75gに対して、0.054gとした以外は、実施例4と同様の操作を行ない、塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を形成した。
【0173】
(実施例8)
実施例4と同様にして乾燥後の多孔体にUV照射した後、加熱エージングする前に、粘着剤(粘接着層)が片面に塗布されたPETフィルムの、前記粘着剤側を、前記多孔体に室温で貼付してから60℃で22hr加熱エージングした。これ以外は実施例4と同様の操作を行ない、塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を形成した。
【0174】
(実施例9)
PETフィルム貼付後に加熱エージングを行わなかったこと以外は、実施例8と同様の操作を行ない、塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を形成した。
【0175】
(実施例10)
光塩基発生触媒のIPA溶液添加後、さらに、5重量%のビス(トリメトキシ)シランを前記ゾル液0.75gに対して0.018g加えて塗工液(触媒を含む塗料)を調整した以外は、実施例8と同様の操作を行ない、塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を形成した。
【0176】
(実施例11)
光塩基発生触媒のIPA溶液の添加量を、前記ゾル液0.75gに対して、0.054gとした以外は、実施例8と同様の操作を行ない、塗料および多孔質構造(シリコーン多孔体)を形成した。
【0177】
実施例4〜11の多孔質構造について、前述の方法により屈折率、粘着ピール強度およびヘイズを測定した結果を、下記表2および3に示す。ただし、実施例6〜9の粘着ピール強度測定においては、これらの積層フィルムロールは、すでにPETフィルムおよび粘着層が貼合された状態であることから、PETフィルムおよびアクリル粘着剤の貼付を省略した。また、実施例4〜11の塗工液(触媒を含む塗料)の保存安定性についても、併せて表2および3に示す。この保存安定性は、室温で前記塗工液を1週間放置し、前記塗工液の変化の有無を目視で確認した結果である。
【0178】
【表2】
【0179】
【表3】
【0180】
前記表2および3に示すとおり、得られた厚み1μmの実施例4〜11のシリコーン多孔体は、いずれも、屈折率が1.14〜1.16と極めて低かった。また、これらの超低屈折率層は、ヘイズ値も0.4という極めて低い数値を示すことから、透明性も極めて高いことが確認された。さらに、実施例4〜11の超低屈折率層は、粘着ピール強度が高いことから、巻き取ってロール体にしても積層フィルムロールの他の層から剥がれにくい高強度を有していることが確認された。さらに、実施例4〜11のシリコーン多孔体は、耐擦傷性もきわめて高いことが確認された。さらに、実施例4〜11の塗工液(触媒を含む塗料)は、1週間保存した後に目視観察しても変化が確認されなかったことから、保存安定性に優れ、安定した品質のシリコーン多孔体を効率よく製造できることも確認された。