(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
K色成分量と前記N個の色の成分量の散布度との組合せに対し、前記光沢品質の良否を前記光沢判定テーブルにおける判定基準値に基づく判定よりも緩やかに判定するための拡張判定基準値を与える拡張光沢判定テーブルと、
前記画像の各単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出部により算出される散布度との組合せに対し前記拡張光沢判定テーブルにより与えられる拡張判定基準値を取得する拡張判定基準値取得部と、
前記画像の各単位画像につき、当該単位画像における前記総色成分量を前記拡張判定基準値取得部により当該単位画像につき取得される拡張判定基準値と比較することにより、前記印刷物の光沢品質の良否を判定する拡張判定部と
を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の光沢判定装置。
予め用意された複数種類の光沢判定テーブルのうち前記印刷物を得るための印刷条件に応じた光沢判定テーブルを、前記判定基準値取得部で使用すべき光沢判定テーブルとして選択するテーブル選択部を更に備えることを特徴とする、請求項1に記載の光沢判定装置。
K色およびK色以外のN個の色(Nは3以上の整数)の光硬化型インクを用いた印刷により得られる印刷物の光沢品質の良否を判定するためのコンピュータにおいて、CPUがメモリを利用して、
印刷すべき画像を表す画像データに基づき、前記画像における所定の単位画像毎に、当該単位画像における前記N個の色の成分量の散布度を算出する散布度算出ステップと、
K色成分量と前記N個の色の成分量の散布度との組合せに対し前記光沢品質の判定基準値を与える光沢判定テーブルを使用し、前記画像の各単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出ステップで算出される散布度との組合せに対応する判定基準値を前記光沢判定テーブルから取得する判定基準値取得ステップと、
前記画像の各単位画像に含まれるK色および前記N個の色の成分量の総和を総色成分量として前記画像データから求める総色成分量算出ステップと、
前記画像の各単位画像につき、当該単位画像における前記総色成分量を前記判定基準値取得ステップで当該単位画像につき取得される判定基準値と比較することにより、前記印刷物の光沢品質の良否を判定する判定ステップと
を実行することを特徴とする、光沢判定プログラム。
K色成分量と前記N個の色の成分量の散布度との組合せに対し、前記光沢品質の良否を前記光沢判定テーブルにおける判定基準値に基づく判定よりも緩やかに判定するための拡張判定基準値を与える拡張光沢判定テーブルを使用し、前記画像の各単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出ステップで算出される散布度との組合せに対応する拡張判定基準値を前記拡張光沢判定テーブルから取得する拡張判定基準値取得ステップと、
前記画像の各単位画像につき、当該単位画像における前記総色成分量を前記拡張判定基準値取得ステップで当該単位画像につき取得される拡張判定基準値と比較することにより、前記印刷物の光沢品質の良否を判定する拡張判定ステップと
をCPUが更に実行することを特徴とする、請求項8に記載の光沢判定プログラム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のUV印刷のシステムでは、
図24に示すように、予め、印刷対象をページ記述言語で記述したページデータ(例えばPDF(Portable Document Format)形式のデータ)が入稿データ92として作成されるとともに、印刷色を管理するためのICCプロファイルに応じた色変換テーブル91が色変換テーブル作成装置90により作成される。この色変換テーブル91は、色の再現性だけでなくインクの硬化不良による光沢低下を防止するために当該ICCプロファイルに設定されたTAC値(例えば220%)の制限を満たすように作成される。
【0009】
次に、ページデータとしての入稿データ92に対し印刷用データ変換装置94により色変換処理およびラスタライズ処理(「RIP処理」とも呼ばれる)が施されることにより、ビットマップ形式のデータである印刷データが作成される。この印刷データを用いて印刷を行う前に、印刷物を示す画像すなわち印刷データが表す画像(以下「印刷画像」という)のプレビュー装置96によるプレビュー表示が行われる。作業者はこのプレビュー表示を見て発色が適切か否かすなわち色品質の良否を確認し、適切であることが確認された後に、印刷データが印刷装置98に送られて印刷が行われる。
【0010】
上記のようなUV印刷のシステムでは、印刷物における色品質は印刷画像のプレビュー装置における表示により予め確認できるが、印刷物の仕上がりがマット調になっていないか等の光沢品質については、作業者が実際の印刷物を見て判断している。その結果、光沢品質が不良と判断された場合には、インクの硬化不良を解消すべくTAC値を低減したICCプロファイルに応じた色変換テーブル91を作成し、その色変換テーブル91を用いて入稿データに対する色変換処理およびRIP処理からやり直すことになる。
【0011】
この場合、光沢品質を上げるためにインク総量を示すTAC値を削減することになるが、インク量を削減すると色品質が損なわれる傾向がある。すなわち、UV印刷では色品質と光沢品質とは相反関係にある。このため、色品質と光沢品質とのバランスがとれるまで、TAC値の設定されたICCプロファイルに応じた色変換テーブルの作成→色変換処理およびRIP処理→(プレビュー)→印刷という処理が繰り返されることが生じうる。このような処理の繰り返しが生じると、作業効率が低下しコスト上昇を招く。
【0012】
そこで本発明は、光硬化型インクを用いた印刷(UV印刷等)を行う前に印刷物の光沢品質の評価を可能とする光沢判定装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の局面は、K色およびK色以外のN個の色(Nは3以上の整数)の光硬化型インクを用いた印刷により得られる印刷物の光沢品質の良否を判定する光沢判定装置であって、
K色成分量と前記N個の色の成分量の散布度との組合せに対し前記光沢品質の判定基準値を与える光沢判定テーブルと、
印刷すべき画像を表す画像データに基づき、前記画像における所定の単位画像毎に、当該単位画像における前記N個の色の成分量の散布度を算出する散布度算出部と、
前記画像の各単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出部により算出される散布度との組合せに対し前記光沢判定テーブルにより与えられる判定基準値を取得する判定基準値取得部と、
前記画像の各単位画像に含まれるK色および前記N個の色の成分量の総和を総色成分量として前記画像データから求める総色成分量算出部と、
前記画像の各単位画像につき、当該単位画像における前記総色成分量を前記判定基準値取得部により当該単位画像につき取得される判定基準値と比較することにより、前記印刷物の光沢品質の良否を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面において、
前記光沢判定テーブルは、第1から第Nの判定テーブルを含み、
N以下で2以上のいずれかの整数jに対応する第jの判定テーブルは、K色成分量と前記N個の色のうち任意のj個の色からなるj次色における色成分量の標準偏差との組合せに対し前記光沢品質の判定基準値を対応付け、
前記第1の判定テーブルは、K色成分量と前記N個の色のうち任意の1つの色の成分量との組合せに対し前記光沢品質の判定基準値を対応付け、
前記散布度算出部は、前記散布度を求めるべき単位画像に含まれるK色成分以外の色成分の数mが2以上である場合に、当該単位画像に含まれるm次色における色成分量の標準偏差を前記散布度として算出し、
前記判定基準値取得部は、
前記判定基準値を取得すべき単位画像に含まれるK色成分以外の色成分の数mが2以上である場合に、当該単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出部により算出される標準偏差との組合せに
、前記
第1から第Nの判定テーブルのうち当該色成分の数mに対応する第mの判定テーブルによって対応付けられる判定基準値を
、当該単位画像についての前記判定基準値として取得し、
前記判定基準値を取得すべき単位画像に含まれるK色成分以外の色成分の数が1である場合に、当該単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像に含まれる1次色の色成分量との組合せに前記第1の判定テーブルによって対応付けられる判定基準値を当該単位画像についての前記判定基準値として取得し、
前記判定基準値を取得すべき単位画像にK色成分以外の色成分が含まれていない場合に、当該単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像に含まれる1次色の色成分量としての“0”との組合せに前記第1の判定テーブルによって対応付けられる判定基準値を当該単位画像についての前記判定基準値として取得することを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の局面は、本発明の第1の局面において、
K色成分量と前記N個の色の成分量の散布度との組合せに対し、前記光沢品質の良否を前記光沢判定テーブルにおける判定基準値に基づく判定よりも緩やかに判定するための拡張判定基準値を与える拡張光沢判定テーブルと、
前記画像の各単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出部により算出される散布度との組合せに対し前記拡張光沢判定テーブルにより与えられる拡張判定基準値を取得する拡張判定基準値取得部と、
前記画像の各単位画像につき、当該単位画像における前記総色成分量を前記拡張判定基準値取得部により当該単位画像につき取得される拡張判定基準値と比較することにより、前記印刷物の光沢品質の良否を判定する拡張判定部とを更に備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の第4の局面は、本発明の第3の局面において、
前記拡張光沢判定テーブルは、第1から第Nの拡張判定テーブルを含み、
N以下で2以上のいずれかの整数jに対応する第jの拡張判定テーブルは、K色成分量と前記N個の色のうち任意のj個の色からなるj次色における色成分量の標準偏差との組合せに対し前記光沢品質の拡張判定基準値を対応付け、
前記第1の拡張判定テーブルは、K色成分量と前記N個の色のうち任意の1つの色の成分量との組合せに対し前記光沢品質の拡張判定基準値を対応付け、
前記拡張判定基準値取得部は、
前記拡張判定基準値を取得すべき単位画像に含まれるK色成分以外の色成分の数mが2以上である場合に、当該単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出部により算出される標準偏差との組合せに
、前記
第1から第Nの拡張判定テーブルのうち当該色成分の数mに対応する第mの拡張判定テーブルによって対応付けられる拡張判定基準値を
、当該単位画像についての前記拡張判定基準値として取得し、
前記拡張判定基準値を取得すべき単位画像に含まれるK色成分以外の色成分の数が1である場合に、当該単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像に含まれる1次色の色成分量との組合せに前記第1の拡張判定テーブルによって対応付けられる拡張判定基準値を当該単位画像についての前記拡張判定基準値として取得し、
前記拡張判定基準値を取得すべき単位画像にK色成分以外の色成分が含まれていない場合に、当該単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像に含まれる1次色の色成分量としての“0”との組合せに前記第1の拡張判定テーブルによって対応付けられる拡張判定基準値を当該単位画像についての前記拡張判定基準値として取得することを特徴とする。
【0017】
本発明の第5の局面は、本発明の第1の局面において、
予め用意された複数種類の光沢判定テーブルのうち前記印刷物を得るための印刷条件に応じた光沢判定テーブルを、前記判定基準値取得部で使用すべき光沢判定テーブルとして選択するテーブル選択部を更に備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の第6の局面は、本発明の第1から
第5の局面のいずれかにおいて、
前記N個の色は、C色、M色、および、Y色であることを特徴とする。
【0019】
本発明の第7の局面は、本発明の第1から
第5の局面のいずれかにおいて、
前記単位画像は前記画像における1つの画素であることを特徴とする。
【0020】
本発明の第8の局面は、K色およびK色以外のN個の色(Nは3以上の整数)の光硬化型インクを用いた印刷により得られる印刷物の光沢品質の良否を判定するためのコンピュータにおいて、CPUがメモリを利用して、
印刷すべき画像を表す画像データに基づき、前記画像における所定の単位画像毎に、当該単位画像における前記N個の色の成分量の散布度を算出する散布度算出ステップと、
K色成分量と前記N個の色の成分量の散布度との組合せに対し前記光沢品質の判定基準値を与える光沢判定テーブルを使用し、前記画像の各単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像につき前記散布度算出ステップで算出される散布度との組合せに対応する判定基準値を前記光沢判定テーブルから取得する判定基準値取得ステップと、
前記画像の各単位画像に含まれるK色および前記N個の色の成分量の総和を総色成分
量として前記画像データから求める総色成分量算出ステップと、
前記画像の各単位画像につき、当該単位画像における前記総色成分量を前記判定基準値取得ステップで当該単位画像につき取得される判定基準値と比較することにより、前記印刷物の光沢品質の良否を判定する判定ステップとを実行することを特徴とする。
【0021】
本発明の他の局面は、本発明の上記第1から第8の局面および後述の各実施形態に関する説明から明らかであるので、その説明を省略する。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1の局面によれば、K色成分量とN個の色の成分量の散布度との組合せに対し光沢品質の判定基準値を与える光沢判定テーブルを使用して、印刷すべき画像(印刷画像)を表す画像データに基づき、当該印刷画像における所定の単位画像毎に、当該単位画像に含まれるK色成分量と当該単位画像における前記N個の色の成分量の散布度との組合せに対応する判定基準値が取得され、当該単位画像に含まれるK色および前記N個の色の成分量の総和である総色成分量をその判定基準値と比較することにより、印刷物の光沢品質が判定される。これにより、作業者は印刷物の光沢品質の良否を事前に確認できるので、この判定結果に基づき光沢品質が不良と判断される場合には、印刷を行うことなく、良好な光沢品質が得られるような印刷用の画像データを作成し直すことができる。その結果、色品質と光沢品質のバランスのとれた印刷物を効率よく作製することができる。また、上記のような光沢判定テーブルから判定基準値が取得されるので、K色成分量に加えてK色以外のN個の色の成分量の散布度に基づきグレー成分の生成も考慮して、光沢品質の良否が判定される。このため、印刷画像を表す画像データに基づく光沢品質の判定を従来よりも高い精度で行うことができる。
【0023】
本発明の第2の局面によれば、光沢判定テーブルにN個の判定テーブルが含まれており、印刷画像における各単位画像につき、当該単位画像に含まれるK色成分以外の色成分の数mに応じた判定テーブルを使用して判定基準値が取得され、その判定基準値に基づき当該単位画像につき光沢品質の良否が判定される。これにより、印刷画像を表す画像データを用いた光沢品質の判定をより高い精度で行うことができる。
【0024】
本発明の第3の局面によれば、本発明の第1の局面で使用される光沢判定テーブルに加えて拡張光沢判定テーブルが使用される。この拡張光沢判定テーブルは、K色成分量とN個の色の成分量の散布度との組合せに対し、光沢品質の良否をその光沢判定テーブルにおける判定基準値に基づく判定よりも緩やかに判定するための拡張判定基準値を与える。印刷画像における各単位画像につき、当該単位画像に応じた拡張判定基準値が拡張光沢判定テーブルから取得され、その拡張判定基準値に基づき光沢品質の良否が判定される。このようにし
て、光沢判定テーブルおよび拡張光沢判定テーブルの使用により2つの基準によって光沢品質の良否が判定されるので、作製すべき印刷物に関する状況に応じてより適切に光沢品質の良否(光沢不良のために印刷データを作り直すべきか否か)を判断することができる。
【0025】
本発明の第4の局面によれば、拡張光沢判定テーブルにN個の拡張判定テーブルが含まれており、印刷画像における各単位画像につき、当該単位画像に含まれるK色成分以外の色成分の数mに応じた拡張判定テーブルを使用して拡張判定基準値が取得され、その拡張判定基準値に基づき当該単位画像につき光沢品質の良否が判定される。これにより、拡張判定基準に基づく光沢品質の判定をより高い精度で行うことができる
【0026】
本発明の第5の局面によれば、予め用意された複数種類の光沢判定テーブルのうち印刷条件(基材種類や印刷速度)に応じた光沢判定テーブルが選択され、印刷すべき画像における各単位画像につき、その光沢判定テーブルから取得される判定基準値に基づき光沢品質の良否が判定される。このため、印刷条件が変更されても変更後の印刷条件に応じた判定基準値に基づき各単位画像の光沢品質の良否を適切に判定することができる。
【0027】
本発明の第6の局面によれば、K色およびCMYの3色の光硬化型インクを用いた印刷により得られる印刷物の光沢品質の良否を、印刷すべき画像を表す画像データを用いて、光沢判定テーブルから取得される判定基準値に基づき事前に高い精度で判定することができる。
【0028】
本発明の第7局面によれば、印刷画像を表す画像データを用いて、当該印刷画像における画素毎に、光沢判定テーブルから取得される判定基準値に基づき光沢品質の良否が判定される。これにより、印刷画像に含まれる各種画像の領域の形状やサイズに拘わらず光沢品質を精度よく確認することができる。
【0029】
本発明の他の局面の効果については、本発明の上記第1から第7の局面の効果および下記実施形態についての説明から明らかであるので、説明を省略する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の各実施形態について説明する。
<1.第1の実施形態>
<1.1 印刷システムの全体構成>
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光沢判定装置として機能する画像処理装置200を備えた印刷システムの全体構成図である。この印刷システムは、印刷物を構成する文字,ロゴ,絵柄,イラスト等の複数種類の部品を編集しレイアウトするためのクライアントコンピュータ100と、印刷色を管理するためのICCプロファイルに応じた色変換テーブル等を生成する処理,入稿データをラスタデータ化するRIP処理,ICCプロファイルに応じた色変換テーブルを用いて色のデータを変換する色変換処理,印刷物における色品質および光沢品質を事前に確認するためにプレビュー処理等の各種処理を行う画像処理装置200と、画像処理装置200に接続された測色機220および光沢計230と、カラー印刷を実行するインクジェット印刷装置300とによって構成されている。インクジェット印刷装置300は、印刷機本体302とその制御装置である印刷制御装置304とによって構成されている。クライアントコンピュータ100と画像処理装置200とインクジェット印刷装置300とは、LAN400によって互いに通信可能に接続されている。なお、本実施形態におけるインクジェット印刷装置300は、光硬化型(紫外線硬化型)インクジェット印刷装置である。
【0032】
この印刷システムによる印刷は、概略的には次のようにして行われる。まず、クライアントコンピュータ100において、上述したような各種部品の編集およびレイアウトが行われることにより、例えば印刷対象をページ記述言語で記述したページデータが生成される。クライアントコンピュータ100で生成されたページデータは、画像処理装置200に入稿データとして与えられる。画像処理装置200は、入稿データに対してRIP処理(ラスタライズ処理)および色変換処理を施すことによってビットマップ形式の印刷データを生成する。なお、RIP処理は、色変換処理前または色変換処理後のいずれかに行われる。画像処理装置200で生成された印刷データはインクジェット印刷装置300に送られる。インクジェット印刷装置300は、その印刷データに基づいて印刷を実行する。
【0033】
なお、画像処理装置200では、入稿データに基づく印刷データの生成が可能となるよう、予めICCプロファイルに応じた色変換テーブルの作成が行われる。ICCプロファイルは該当の印刷装置で印刷されたカラーチャートの測色結果に基づいて作成されるところ、そのカラーチャートの測色が測色機220によって行われる。ICCプロファイルの作成については公知の手法を採用することができる。そのICCプロファイルに応じた色変換テーブルの作成については後述する。
【0034】
<1.2 インクジェット印刷装置の構成>
図2は、本実施形態に係る光沢判定装置を使用する印刷システムにおけるインクジェット印刷装置300の一構成例を示す模式図である。上述したように、このインクジェット印刷装置300は、印刷機本体302とその制御装置である印刷制御装置304とによって構成されている。印刷機本体302は、基材である印刷用紙32を供給する用紙送出部31と、印刷用紙32を印刷機構内部へと搬送するための第1の駆動ローラ33と、印刷機構内部で印刷用紙32を搬送するための複数個の支持ローラ34と、印刷用紙32にインクを吐出して印刷を行う印字部35と、印刷後の印刷用紙32上のインクを硬化させるUV照射部36と、印刷用紙32への印刷の状態を検査する検査部37と、印刷用紙32を印刷機構内部から出力するための第2の駆動ローラ38と、印刷後の印刷用紙32を巻き取る用紙巻取部39とを備えている。印字部35には、C(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー),およびK(ブラック)のインクをそれぞれ吐出するC用インクジェットヘッド35c,M用インクジェットヘッド35m,Y用インクジェットヘッド35y,およびK用インクジェットヘッド35kが含まれている。なお、印刷機構内部には、各インクジェットヘッド35c,35m,35y,および35kに供給するためのインクを溜めておくインクタンク(不図示)も設けられている。
【0035】
印刷制御装置304は、以上のような構成の印刷機本体302の動作を制御する。印刷制御装置304に印刷出力の指示コマンドが与えられると、印刷制御装置304は、印刷用紙32が用紙送出部31から用紙巻取部39へと搬送されるよう、印刷機本体302の動作を制御する。そして、印刷用紙32の搬送過程において、まず印字部35内の各インクジェットヘッド35c,35m,35y,および35kからのインクの吐出による印字が行われ、次にUV照射部36によってインクの硬化が行われ、最後に検査部37によって印刷状態の検査が行われる。
【0036】
<1.3 画像処理装置の構成>
図3は、本実施形態における画像処理装置200のハードウェア構成図である。この画像処理装置200は、パソコンによって実現されており、CPU21と、ROM22と、RAM23と、補助記憶装置24と、キーボード等の入力操作部25と、表示部26と、光学ディスクドライブ27と、ネットワークインタフェース部28と、周辺機器インタフェース部29とを有している。周辺機器インタフェース部29には測色機220と光沢計230が接続されている。クライアントコンピュータ100からLAN400経由で送られてくる入稿データは、ネットワークインタフェース部28を介して画像処理装置200の内部へと入力される。画像処理装置200で生成された印刷データは、ネットワークインタフェース部28を介してLAN400経由でインクジェット印刷装置300へと送られる。
【0037】
この画像処理装置200は、補助記憶装置24にインストールされた所定のプログラムをCPU21がRAM23にロードして実行することにより、ICCプロファイルに応じた色変換処理およびラスタライズ処理を入稿データに施して印刷データを作成する印刷用データ変換装置として機能する。また、この画像処理装置200は、補助記憶装置24にインストールされた色変換テーブル作成プログラムをCPU21がRAM23にロードして実行することにより、この印刷システムにおいて印刷色を管理するために使用されるICCプロファイルに応じた色変換テーブルを作成する色変換テーブル作成装置としても機能する。さらにまた、この画像処理装置200は、補助記憶装置24にインストールされたプレビュー処理プログラムをCPU21がRAM23にロードして実行することにより、印刷物の色品質および光沢品質の良否を事前に(印刷を行う前に)確認するためのプレビュー表示を行うプレビュー装置としても機能する。このプレビュー装置は、従来の色品質判定装置としての機能に加えて光沢判定装置としての機能を有している。なお、上記各種プログラムは、CD−ROMやDVD−ROM等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納されて提供される。すなわちユーザは、プログラムが格納された光学ディスク(CD−ROM、DVD−ROM等)210を購入して光学ディスクドライブ27に装着し、光学ディスク210から当該プログラムを読み出して補助記憶装置24にインストールする。また、これに代えて、LAN400等を介して送られるプログラムをネットワークインタフェース部28で受信して、それを補助記憶装置24にインストールするようにしてもよい。
【0038】
なお、クライアントコンピュータ100についても、画像処理装置200と同様、パソコンによって実現されている。従って、クライアントコンピュータ100の構成についての説明は省略する。
【0039】
<1.4 印刷システムにおける作業手順>
図4は、
図1に示した既述の印刷システムにおける作業手順を説明するための図である。本印刷システムでは、印刷対象をページ記述言語で記述したページデータがクライアントコンピュータ100で作成され、入稿データ12として画像処理装置200に与えられる。画像処理装置200は、既述のように、その内部のCPU21が上記各種のプログラムを実行することにより、色変換テーブル作成装置10、印刷用データ変換装置(以下、単に「データ変換装置」ともいう)14、および、プレビュー装置16として機能する。すなわち、
図4に示した色変換テーブル作成装置10、データ変換装置14、および、プレビュー装置16は、上記各種プログラムによりソフトウェア的に実現される。なお、上記各種プログラムが実行されるコンピュータは、画像処理装置200に限定されず、上記各種プログラムの一部または全部のプログラムが他のコンピュータ、例えば印刷制御装置304としてのコンピュータにおいて実行されるように構成されていてもよい。
【0040】
印刷物における光沢低下を防止すべく所定のTAC値の設定されたICCプロファイルに応じた色変換テーブルが、入稿データ12の色変換処理のために色変換テーブル作成装置10により作成される。ここでは、TAC値220%のICCプロファイルに応じた色変換テーブル(以下「TAC値220%制限の色変換テーブル」ともいう)11aが作成されるものとする。この色変換テーブル11aは入稿データ12と共にデータ変換装置14に与えられる。
【0041】
データ変換装置14では、入稿データ12がTAC値220%制限の色変換テーブル11aに基づく色変換処理によりCMYKデータに変換される。このCMYKデータにより印刷が行われる場合には、TAC値220%以下となるようにインク量が制限される(C,M,Y,Kの4色のインク量の合計値が220%以下となる)。次にデータ変換装置14において、このCMYKデータにラスタライズ処理が施されることにより、ビットマップ形式の印刷データDprが作成される。なお、入稿データ12にラスタライズ処理を施した後に色変換テーブル11aに基づく色変換処理を施すことにより印刷データDprが作成されるように構成されていてもよい。
【0042】
データ変換装置14で作成された印刷データDprは、印刷装置18へ送る前にプレビュー装置16に与えられる。
図5は、この印刷データDprによる印刷の前に印刷物の光沢品質を確認するための光沢品質プレビュー処理を示すフローチャートである。以下、
図5を参照して光沢品質プレビュー処理について説明する。
【0043】
印刷物の光沢品質を判定するために、ビットマップ形式のCMYKデータである上記印刷データDprが使用される。この印刷データDprは、
図5のフローチャートにおけるステップS110のデータ変換処理(色変換処理およびRIP処理)がデータ変換装置14で実行されることにより作成される。
【0044】
その後、この印刷データDprを用いて光沢判定処理S120がプレビュー装置16により実行される。このとき、プレビュー装置16として機能している画像処理装置200は、光沢判定装置として機能する(
図1、
図3)。この画像処理装置200は、印刷に使用可能な基材の種類および速度モードに応じた複数の光沢判定テーブルTb1,Tb2,…を予め備えている。光沢判定処理S120では、作業者の入力操作により指定される印刷条件または予め設定された印刷条件を構成する基材の種類および速度モードに応じた光沢判定テーブルTbsが上記複数の光沢判定テーブルTb1,Tb2,…の中から選択される。この選択された光沢判定テーブルTbsを用いて、上記印刷データDprに基づく印刷物の光沢品質の良否(グロス調かマット調か)が、上記印刷データDprが表す印刷画像の画素毎に判定され、この判定結果を示す光沢判定結果データが生成される。このような光沢判定処理S120の詳細については後述する。
【0045】
上記光沢判定処理S120が終了すると、上記光沢判定結果データに基づきプレビュー処理S130がプレビュー装置16により実行される。すなわち、上記印刷データDprと光沢判定結果データに基づき、印刷物の色品質および光沢品質を作業者が確認できるような形態で印刷画像が、プレビュー装置16として機能する画像処理装置200において表示される(以下、このようにして表示される画像を「プレビュー画像」という)。例えば、印刷物を示す印刷画像が
図6(A)に示すような画像である場合において、この印刷画像における中央部のリング状領域内およびこのリング状領域に接する上下の矩形状領域内の各画素の光沢品質が不良(マット調)と判定されたときには、例えば
図6(B)に示すように、マット調と判定された画素により構成される画像領域(以下「光沢不良領域」という)にハッチングが付され、このハッチングの付された印刷画像がプレビュー画像として表示される。ただし、光沢判定結果を示す方法はこのようなハッチングを使用した方法に限定されるものではなく、作業者がプレビュー画像において光沢不良領域を容易に判別できるような方法で印刷画像を表示できればよい。例えば、ハッチングを使用する方法に代えてまたはこれと共に、マット調と判定された画素により構成される画像領域を特定の色(例えば赤色)で表示するようにしてもよく、また、例えば当該領域を点滅表示するようにしてもよい。なお、
図6(A)および(B)には、モノクロ中間調の画像が示されているが、実際のプレビュー装置16(画像処理装置200)ではカラー中間調で画像が表示される。
【0046】
作業者は、プレビュー装置16としての画像処理装置200に表示される上記プレビュー画像(
図6(B))を見ることにより、印刷データDprに基づく印刷を行うことなく、印刷物の色品質に加えて光沢品質を確認することができる。一般に、光硬化型インクを用いた印刷では、印刷物の光沢品質を上げるにはインク量を削減する必要があるが、インク量を削減すると色品質が低下する。すなわち、インク量に関し光沢品質と色品質とは相反する関係にある。そこで、プレビュー画像を見た作業者により光沢品質が不良と判断された場合には、例えば、現時点の色変換テーブル11aにおけるTAC値制限(220%)よりも若干低いTAC値制限の色変換テーブルが新たに作成され、この新たな色変換テーブルを用いて印刷データ(ビットマップ形式のCMYKデータ)Dprが作成し直される。この新たな印刷データDprを用いて
図5のデータ変換処理S100が実行され、その後、光沢判定処理S120およびプレビュー処理S130が順に実行される。作業者は、このプレビュー処理S130で得られるプレビュー画像を見て、印刷物の色品質および光沢品質を事前に確認する。
【0047】
その結果、色品質および光沢品質が共に良好(色品質と光沢品質とでバランスがとれている)と作業者により判断されると、その新たな印刷データDprが印刷装置18に送られる。この印刷装置18としてのインクジェット印刷装置300は、画像処理装置200から送られてきた印刷データDprを用いて印刷を行う。一方、上記新たな印刷データDprに基づくプレビュー画像を見た作業者により色品質または光沢品質のいずれかが不良と判断された場合には、その判断結果に応じて色変換テーブルを作成し直し、色品質および光沢品質が共に良好な状態となるまでデータ変換処理S110→光沢判定処理S120→プレビュー処理S130が繰り返される。
【0048】
また、上記のような作業手順に代えて、1回目のプレビュー画像の表示で作業者が光沢品質が不良と判断した場合に、色変換テーブル11aのような従来の色変換テーブルではなく後述の光沢優先色変換テーブル11bを使用するようにしてもよい。この色変換テーブル11bは、TAC値によって一律にインク量を制限するのではなく、K色成分量やグレー成分を生ずる色成分量を比較的低い値に制限するように構成されている。このような光沢優先色変換テーブル11bを用意しておけば、上記のデータ変換処理S110→光沢判定処理S120→プレビュー処理S130による作業の繰り返しを抑制することができる。この光沢優先色変換テーブル11bの詳細については後述する。なお、「色成分量」とは、CMYKのいずれかの色成分の階調値であり、例えばK色成分量はK色成分の階調値である。
【0049】
<1.5 光沢判定テーブル>
次に、本実施形態における光沢判定処理S120において使用する光沢判定テーブルについて説明する。
【0050】
既述のように、UV印刷等の光硬化型インクを用いた印刷では、インクの硬化不良が生じると、印刷物の表面が不均一となり、その仕上がりがマット調となる。UV印刷等においてインクの硬化不良が発生するか否かは、基材の種類や速度モード等の印刷条件に依存する。また、インクの硬化不良は、色の組合せによっても異なり、TAC値が同一であっても、K色成分が増えるか、または、CMYの混色によってグレー成分が増えると、硬化不良が生じやすくなる。したがって、インクの硬化不良を生じることなく印刷物の仕上がりをグロス調(良好な光沢品質)とするためのインク量の制限値は、基材種類と速度モードとインク色の組合せによって決まると考えることができる。ここでインク量の制限値は、インク総量を示すTAC値をそれ以下とすれば印刷物の仕上がりがグロス調となる量であるが、色品質はインク量が多いほど向上するので、以下ではこのインク量の制限値を「インク適正量」ともいう。
【0051】
例えば、インクジェット印刷装置300で作成された印刷物の光沢度を光沢計230により測定し(例えば60度測定)、50%の光沢度が測定値として得られるときのインク総量をインク適正量とすることができる。
図7は、このような方法で求められたインク適正量をTAC値で示している。
図7によれば、例えば、基材が白フィルムで速度モードが標準(高速)の場合に、2次色(CMYのうちの2色それぞれの色成分量が100%)で印刷するときのインク適正量は200%である。また例えば、基材が白フィルムで速度モードが標準(高速)の場合に、3次色(CMYの3色それぞれの色成分量が100%)で印刷するときのインク適正量(TAC値)は160%である。また例えば、基材が白フィルムで速度モードが標準(高速)の場合に、K色成分を含む色(K色成分量100%)で印刷するときのインク適正量(TAC値)は120%である。
【0052】
本実施形態では、印刷条件(基材の種類および速度モード)が決定されている場合には、K色のインク量に相当するK色成分量とCMYの色成分間での量のバランス(グレー成分の量に相当する値)とによって上記のようなインク適正量が一意に決まるものと考える。ただし、演算処理の便宜から、CMYの色成分間での量のバランスの代わりにバラツキ度合いを示す散布度に相当する標準偏差を使用する。このため本実施形態では、K色成分量とCMYにおける色成分量の散布度との組合せに対しその組合せに対応するインク適正量を判定基準値として与えるように光沢判定テーブルが作成され、基材種類と速度モードとの組合せ(印刷条件)に応じて複数の光沢判定テーブルが用意されている。すなわち、このような複数の光沢判定テーブルが予め作成されて画像処理装置200内の補助記憶装置24に格納されている。なお以下では、基材種類や速度モードに特に言及しない場合には、基材は白フィルムで速度モードは標準(高速)であるものとして説明を進める。
【0053】
以下の説明において、印刷物または印刷画像の色についての「3次色」、「2次色」、「1次色」という用語は、次のような意味で使用するものとする(他の実施形態の説明においても同様である)。「3次色」とは、K色成分を含まない3次色、すなわちC色成分とM色成分とY色成分とからなる色をいう。「2次色」とは、K色成分を含まない2次色、すなわちC色成分とM色成分とからなる色,M色成分とY色成分とからなる色,およびY色成分とC色成分とからなる色をいう。「1次色」とは、K色成分を含まない1次色、すなわちC色成分のみからなる色,M色成分のみからなる色,およびY色成分のみからなる色をいう。
【0054】
図7に示した既述のインク適正量は、K色成分量とCMYの3色における色成分量の標準偏差(C色成分量とM色成分量とY色成分量から算出される標準偏差)との組合せが同じであっても、CMYの全ての色成分の量が非ゼロである3次色の場合と、CMYのうちいずれか2つの色成分の量が
非ゼロである2次色の場合と、CMYのうち
いずれか1つの色成分の量のみが非ゼロである1次色の場合とで、通常、同一にはならない。そこで本実施形態では、上記光沢判定テーブルは、K色成分量(0〜100%)と3次色における色成分量の標準偏差との組合せに判定基準値を対応づける第3の判定テーブルとしての判定テーブルAと、K色成分量(0〜100%)と2次色における色成分量の標準偏差との組合せに判定基準値を対応づける第2の判定テーブルとしての判定テーブルBと、K色成分量(0〜100%)と1次色を構成する色成分の量との組合せに判定基準値を対応づける第1の判定テーブルとしての判定テーブルCとから構成されている。
図8、
図9、および
図10は、このような判定テーブルA,B,Cの一例をそれぞれ示している。
【0055】
なお、後述の光沢優先色変換テーブル11bを用いたデータ変換処理(色変換処理およびRIP処理)によれば、印刷画像における各画素についてのTAC値が上記判定テーブルA,B,Cにより与えられる判定基準値以下となる。この光沢優先色変換テーブル11bは、後述のインク吐出量制限方法に基づいている。そこで、
図11に示すように、K色成分量を0〜100%の範囲で変化させると共に3次色におけるいずれか2つの色成分量をいずれも100%として他の1つの色成分量を0〜100%の範囲で変化させて、後述のインク吐出量制限方法に基づきインク吐出量の制限値を求め、その制限値に相当するTAC値を判定テーブルAの対応箇所に判定基準値として設定することにより、判定テーブルAを作成することができる。同様にして、判定テーブルB,Cも、後述のインク吐出量制限方法に基づきインク吐出量の制限値を求めることにより作成することができる。なお、
図11では、判定テーブルAの作成に際し、K色成分量および上記他の1つの色成分量を10%の間隔で変化させているが、実際にはより狭い間隔(例えば1%間隔)で変化させる。この点は、
判定テーブルB,Cにおいても同様である。
【0056】
<1.6 色変換テーブル>
まず、
図12を参照して、印刷色を管理するためのICCプロファイルに応じて入稿データから印刷データを作成する従来の色変換処理を説明する。なお、ここでは入稿データがRGBデータである場合を例に挙げて説明する。また、プロファイル接続空間(PCS)としてCIELab色空間が用いられるものと仮定する。さらに、入稿データから印刷データを作成するには、色変換処理に加えてRIP処理(ラスタライズ処理)が必要であるが、以下では説明の便宜上、RIP処理に関する説明は省略する。これらの点は、
図13に示す後述の色変換処理においても同様である。
【0057】
色変換テーブル作成装置10としての画像処理装置200には、入力デバイスに対応する入力ICCプロファイル61と、出力デバイス(ここでは印刷装置18としてのインクジェット印刷装置300)に対応する出力ICCプロファイル62aとが設けられる。例えば画像処理装置200は、これらの入力ICCプロファイル61および出力ICCプロファイル62aを色変換処理のためのテーブルとして補助記憶装置24に格納しており、色変換処理の実行時にRAM23内にロードする(
図3参照)。ここでは、インク量の制限を示すTAC値として220%が出力
ICCプロファイル62aに設定されているものとする。
【0058】
図12(A)に示すように、入稿データ12としてRGBデータ51が与えられると、まず、入力ICCプロファイル61を用いてRGBデータ51がLabデータ52に変換される。すなわち、各色のデータに関し、RGB値からLab値への変換が行われる。次に、出力ICCプロファイル62aを用いてLabデータ52が印刷データDprとしてのCMYKデータ54aに変換される。すなわち、各色のデータに関し、Lab値からCMYK値への変換が行われる。
図12(A)に示す色変換処理では、TAC値が220%に設定された出力ICCプロファイル62aが用いられる。したがって、CMYKデータ54aにおけるCMYK値は、インク量がTAC値で220%以下となるように一律に(色の組合せに関係なく)制限された値である。
【0059】
図12(A)に示した色変換処理では、入力ICCプロファイル61および出力ICCプロファイル62aが使用されるが、
図12(B)に示すように、これらを1つにまとめた色変換テーブル11aを使用してもよい。この色変換テーブル11aは、
図4に示した作業手順で使用される色変換テーブル11aであり、インク量制限のためのTAC値として220%が設定されている。
図4の作業手順では、この色変換テーブル11aによって入稿データ12としてのRGBデータ51が印刷データDprとしてのCMYKデータ54aに変換される。
【0060】
次に、
図13を参照して、印刷物における光沢不良の発生が抑えられるように即ち光沢優先でICCプロファイルに応じて入稿データから印刷データを作成する色変換処理を説明する。
【0061】
色変換テーブル作成装置10としての画像処理装置200には、入力デバイスに対応する入力ICCプロファイル61と、出力デバイス(ここでは印刷装置18としてのインクジェット印刷装置300)に対応する出力ICCプロファイル62と、インクの硬化不良が抑止されるよう色のデータを変換するために使用されるテーブルであって後述するインク吐出量制限方法を用いて作成されるインク量制限用色変換テーブル63とが設けられる。例えば画像処理装置200は、これらの入力ICCプロファイル61、出力ICCプロファイル62、およびインク量制限用色変換テーブル63を色変換処理のためのテーブルとして補助記憶装置24に格納しており、色変換処理の実行時にRAM23内にロードする(
図3参照)。なお、出力ICCプロファイル62には、TAC値として400%が設定されている。
【0062】
図13(A)に示すように、入稿データ12としてRGBデータ51が与えられると、まず、入力ICCプロファイル61を用いてRGBデータ51がLabデータ52に変換される。すなわち、各色のデータに関し、RGB値からLab値への変換が行われる。次に、出力ICCプロファイル62を用いてLabデータ52がCMYKデータ53に変換される。すなわち、各色のデータに関し、Lab値からCMYK値への変換が行われる。既述のように、出力
ICCプロファイル62にはTAC値として400%が設定されている。したがって、CMYKデータ53におけるCMYK値は、インク量の制限が全く考慮されていない値である。
【0063】
その後、インク量制限用色変換テーブル63を用いてCMYKデータ53が印刷データDprとしてのCMYKデータ54bに変換される。このCMYKデータ54bにおけるCMYK値は、インク量の制限が考慮された値となる。すなわち、各色のデータに関し、インクの硬化不良を引き起こすことのないよう、インクジェット印刷装置300に与えるCMYK値が定められる。以上のようにして生成されたCMYKデータ54bが印刷データDprとして印刷装置18(インクジェット印刷装置300)に送られ、当該印刷装置18において印刷物19が作製される。
【0064】
図13(A)に示した色変換処理では、入力ICCプロファイル61、出力ICCプロファイル62、および、インク量制限用色変換テーブル63が使用されるが、
図13(B)に示すように、これらを1つにまとめた色変換テーブル11bを使用してもよい。この色変換テーブル11bは、
図4に示した作業手順で使用される光沢優先色変換テーブル11bである。インク量制限用色変換テーブル63は、インクの硬化不良が抑制されるように後述のインク吐出量制限方法を用いて作成されるので、光沢優先色変換テーブル11bによる色変換処理で得られるCMYKデータ54bにおけるCMYK値は、インクの硬化不良を抑制するためのインク量制限に対応した値となる。
図4の作業手順において、TAC値として220%が設定された従来の色変換テーブル11aを用いて印刷データDprが作成され、その印刷データDprに基づくプレビュー画像を見た作業者により光沢不良と判断された場合には、光沢優先色変換テーブル11bを用いて印刷データDprを作成し直し、その印刷データDprを用いることにより光沢品質の良好な(グロス調の)印刷物を作製することができる。
【0065】
<1.7 インク吐出量制限方法>
図13に示すように、上記の光沢優先色変換テーブル11bは、入力ICCプロファイル61および出力ICCプロファイル62に加えてインク量制限用色変換テーブル63に基づき作成されるものであり、インク量制限用色変換テーブル63は下記に述べるインク吐出量制限方法を用いて作成される。以下、このインク吐出量制限方法について説明する。このインク吐出量制限方法は、インクジェット印刷装置300で印刷が行われる際にインクの硬化不良が生ずることのないよう4色のインクの吐出量を制限する方法である。上記の光沢優先色変換テーブル11bは、インク量制限用色変換テーブル63に基づき、色変換テーブル作成装置10としての画像処理装置200で作成されるが、その際、インクジェット印刷装置300側での各種設定情報が画像処理装置200に与えられる。
【0066】
図14は、本インク吐出量制限方法の手順を示すフローチャートである。まず、CMYK値で表される各色について、インク色ごとに入力階調値(
図13(A)のCMYKデータ53におけるCMYK値に相当する値)をインク量に換算する処理が行われる(ステップS50)。より詳しくは、(C値,M値,Y値,K値)=(Zc,Zm,Zy,Zk)で表現される任意の色について、ZcがC色のインクのインク量に換算され、ZmがM色のインクのインク量に換算され、ZyがY色のインクのインク量に換算され、ZkがK色のインクのインク量に換算される。なお、Zc,Zm,Zy,およびZkは、通常、0以上100以下の値である。換算後のインク量は、使用される最大のインク量を100として正規化した値によって表される。すなわち、換算後のインク量も0以上100以下の値である。
【0067】
ところで、
図15に示すように、入力階調値とインクの実際の消費量(インク消費量)との関係は線形の比例関係にあるわけではない。通常、入力階調値とインク消費量との関係は、
図15に示すように下に凸のカーブで表される。従って、ステップS50における換算は、予めインクジェット印刷装置300で印刷が行われた際の各インク色についてのインクの実際の消費量に基づいて行われることが好ましい。そこで、インクの実際の消費量の求め方の一例を以下に説明する。
【0068】
まず、各インク色用のインクタンク(不図示)の重量を予め測定しておく。そして、所定の画像(網点%の構成を適宜な構成にした画像)をインクジェット印刷装置300で印刷する。その後、再度、各インク色用のインクタンクの重量を測定する。そして、印刷開始前の重量と印刷終了後の重量との差(重量差)を求める。これにより、インク色毎の全体でのインクの消費量が求められる。ところで、任意の網点%に対する、1画素当たりのドットサイズ(例えば、S,M,Lなど)構成と平均液滴量は、インクジェット印刷装置300毎に既知である。従って、印刷した画像についての網点%の構成が既知であれば、各網点%に対するドットサイズ構成や平均液適量に関する情報と重量差の情報とに基づいて、各色についてのインク色毎のインクの実際の消費量を求めることができる。
【0069】
入力階調値をインク量に換算する処理(
図14のステップS50)が行われた後、CMYKの4色のインクについてのインク量の制限値の設定が行われる(ステップS52)。ところで、インクの硬化不良は、例えば波長を300〜400nmとするUV光の吸収が行われて充分な量の光がインクに照射されない場合に生じる。このような現象は、K色のインクが使用されるときやCMYの3色のインクが混ざることによってグレー成分が生じるときに起こりやすい。そこで、これらのことを考慮して、以下のようにインク量の制限値が設定される。
【0070】
本インク吐出量制限方法においては、K色成分を含まない2次色,K色成分を含まない3次色,およびK色成分を含む色のそれぞれについて制限値が設定される。すなわち、3種類の制限値が設定される。
【0071】
K色成分を含まない2次色についての制限値をZ1で表し、K色成分を含まない3次色についての制限値をZ2で表し、K色成分を含む色についての制限値をZ3で表すと、本実施形態においては「Z1>Z2」かつ「Z1>Z3」が成立するように設定が行われる。さらに、好ましくは、「Z2>Z3」が成立するように設定が行われる。
【0072】
図16は、本実施形態における制限値の設定の一例を示す図である。
図16に示す例では、K色成分を含まない2次色についての制限値Z1は200%に設定され、K色成分を含まない3次色についての制限値Z2は160%に設定され、K色成分を含む色についての制限値Z3は120%に設定されている。このように、
図16に示す例では、「Z1>Z2」,「Z1>Z3」,および「Z2>Z3」が成立するように、インク量の制限値の設定が行われている。
【0073】
なお、K色成分のみからなる色については仮に100%のインク量で印刷が行われてもインクの硬化不良が生じないように、通常、インクジェット印刷装置300側で調整(例えば、光量の調整)が行われている。
【0074】
ところで、上述のようにして設定された制限値を超える色についてのみ色値(CMYK値)の補正が行われると、階調の連続性が失われることがある。より詳しくは、制限値を超える色についてのみ色値の補正が行われると、模式的には
図17に示すように、制限値を超えないように出力階調値(インクジェット印刷装置300に与える色値)が決定される。その結果、
図17から把握されるように、高階調部分での階調表現が損なわれてしまう。そこで、模式的には
図18に示すような階調の連続性が得られるよう、色(インク色ではなく、CMYKの色値の組合せという意味での色)毎の制限値を設けるようにしても良い。以下、(C値,M値,Y値,K値)=(Ci,Mi,Yi,Ki)で表現される色についての制限値の求め方の一例を説明する。
【0075】
まず、K色成分量(K値)に応じた追加制限値LimitExKを次式(1)によって求める。
LimitExK = (Ki/100) * (MaxInk - MaxWithK) …(1)
ここで、MaxInkは4つのインク色全体での制限値であり、MaxWithKはK色成分を含む色についての制限値Z3である。なお、K色成分を含まない2次色についての制限値Z1を、4つのインク色全体での制限値MaxInkとして用いることができる。
【0076】
次に、C色成分量(C値),M色成分量(M値),およびY色成分量(Y値)に応じた追加制限値LimitExCMYを次式(2)によって求める。
LimitExCMY = ((Ci/100) * (Mi/100) * (Yi/100))^(1.0/3.0) * (MaxInk - MaxCMY)
…(2)
ここで、MaxCMYはK色成分を含まない3次色についての制限値Z2である。
【0077】
さらに、次式(3)によって合計追加制限値LimitExを求め、最後に、次式(4)によって該当色についての最終の制限値MaxInkOutを求める。
LimitEx = LimitExK + LimitExCMY …(3)
MaxInkOut = MaxInk - LimitEx …(4)
【0078】
これにより、制限値MaxInkOutを超える色については、出力階調値(
図13(A)のCMYKデータ54bにおけるCMYK値に相当する値)としての4色の色値の合計が制限値MaxInkOutを超えないように、色値の変換が行われる。その結果、印刷が行われた際にトーンジャンプ(上述したように階調の連続性が失われる現象)の発生が抑制される。
【0079】
以上のようにしてインクジェット印刷装置300で印刷が行われる際のインク量の制限値が設定されるが、その設定された制限値に従ってインクの吐出が行われるよう、印刷データDprを生成する際に使用するインク量制限用色変換テーブル63、または、このテーブル63による色変換を含む色変換を行うための光沢優先色変換テーブル11bが作成される。このインク量制限用色変換テーブル63または光沢優先色変換テーブル11bの作成の際には、インクの吐出量が上記ステップS52で設定された制限値を超えることがないように、入力階調値としての4色の色値(CMYK値)または3色の色値(RGB値)に対応する出力階調値としての4色の色値(CMYK値)が決定される。
【0080】
インク量制限用色変換テーブル63の作成の際、K色成分を含み上記ステップS52で設定された制限値を超える色についてはK色成分以外の成分(すなわち、C値,M値,Y値)を優先的に小さくすることが好ましい。これにより、インク量の制限に伴って色の見た目が大きく変化すること(例えばコントラストの低下)が抑制される。すなわち、印刷品質の維持が可能となる。
【0081】
<1.8 光沢判定処理>
図19は、
図5に示した光沢品質プレビュー処理における光沢判定処理S120の手順を示すフローチャートである。この光沢判定処理S120において、光沢判定装置として機能する画像処理装置200は、下記のように動作する。
【0082】
まず、作業者の入力操作により指定される印刷条件または予め設定された印刷条件を構成する基材種類および速度モードを取得し、取得された基材の種類および速度モードに対応する光沢判定テーブルを、予め補助記憶装置24に格納されている複数の光沢判定テーブルTb1,Tb2,…の中から選択し、選択された光沢判定テーブルTbsを構成する3つの判定テーブルを判定テーブルA,B,CとしてRAM23にロードする(ステップS10)。既述のように、判定テーブルAは、K色成分量(0〜100%)と3次色における色成分量の標準偏差との組合せに判定基準値を対応づけるテーブルであり(例えば
図8)、判定テーブルBは、K色成分量(0〜100%)と2次色における色成分量の標準偏差との組合せに判定基準値を対応づけるテーブルであり(例えば
図9)、判定テーブルCは、K色成分量(0〜100%)と1次色を構成する色成分の量との組合せに判定基準値を対応づけるテーブルである(例えば
図10)。
【0083】
ステップS10以降では、印刷データDprの表す印刷画像における画素に順次着目し、着目画素がグロス調かマット調かを判定する。
【0084】
まず、印刷画像における未着目の画素のいずれか1つの画素に着目する(ステップS12)。なお、光沢判定処理S120において最初にステップS12が実行される時点では印刷画像における全ての画素は未着目となっている。
【0085】
次に、CMYの3つの色成分のうち着目画素に含まれる色成分の数Nを色次数Nとして求め(ステップS14)、色次数Nが1,2,3のいずれであるか判定する(ステップS16)。なお、着目画素がK色成分以外の色を含まない場合は、N=0であるが、以下ではこの場合もN=1として扱う。この場合の1次色を構成する色成分の量は“0”となる。
【0086】
ステップS16での判定の結果、N=3の場合すなわち着目画素に含まれるK色成分以外の色が3次色である場合には、当該3次色における色成分量の標準偏差σを算出する(ステップS18)。すなわち、着目画素に含まれるC色成分量CpとY色成分量YpとM色成分量Mpとから次式により標準偏差σを算出する。
σ=√[{(Cp−Avr)
2+(Mp−Avr)
2+(Yp−Avr)
2}/3] …(5a)
Avr=(Cp+Mp+
Yp)/3 …(5b)
【0087】
その後、判定テーブルAから、着目画素に含まれるK色成分量と当該3次色における色成分量の標準偏差σとの組合せに対応する判定基準値Rを取得し(ステップS20)、ステップS28へ進む。
【0088】
ステップS16での判定の結果、N=2の場合すなわち着目画素に含まれるK色成分以外の色が2次色である場合には、当該2次色における色成分量の標準偏差σを算出する(ステップS22)。すなわち、着目画素に含まれる2次色を構成する第1の色成分の量X1pと第2の色成分の量X2pとから次式により標準偏差σを算出する。ここで、第1の色成分とは、CYMのうち着目画素に含まれるいずれかの色成分であり、第2の色成分とは、CYMのうち着目画素に含まれる第1の色成分以外の色成分である。
σ=√[{(X1p−Avr)
2+(X2p−Avr)
2}/2] …(6a)
Avr=(X1p+X2p)/2 …(6b)
【0089】
その後、判定テーブルBから、着目画素に含まれるK色成分量と当該2次色における色成分量の標準偏差σとの組合せに対応する判定基準値Rを取得し(ステップS24)、ステップS28へ進む。
【0090】
ステップS16での判定の結果、N=1の場合、すなわち着目画素に含まれるK色成分以外の色が1次色である場合には、判定テーブルCから、着目画素に含まれるK色成分量と当該1次色を構成する色成分の量との組合せに対応する判定基準値Rを取得し(ステップS26)、ステップS28へ進む。
【0091】
ステップS28では、着目画素のC色成分量Cp,M色成分量Mp,Y色成分量Yp,および、K色成分量Kpの総和を示すTAC値(以下「着目画素TAC値」という)Vp=Cp+Mp+Yp+Kpを印刷データDprから求め、着目画素TAC値Vpが上記のようにして取得された判定基準値R以下か否かを判定する(ステップS30)。この判定の結果、着目画素TAC値Vpが判定基準値R以下であれば、着目画素はグロス調(光沢品質が良)と判定し(ステップS32)、着目画素TAC値Vpが判定基準値Rより大きければ、着目画素はマット調(光沢品質が不良)と判定する(ステップS34)。
【0092】
このようにして着目画素の光沢品質の良否(グロス調かマット調か)が判定された後は、印刷画像に未着目の画素があるか否かを判定する(ステップS36)。この判定の結果、未着目画素がない場合には、印刷画像における全ての画素につき光沢品質が判定されたので、本光沢判定処理S120を終了する。一方、未着目画素がある場合には、ステップS12へ戻り、未着目画素がなくなるまでステップS12〜S36の処理が繰り返し実行される。
【0093】
<1.9 効果>
上記のように本実施形態によれば、印刷物の色品質および光沢品質を作業者が確認できるような形態の印刷画像がプレビュー画像として印刷前に表示される(
図4、
図6)。このプレビュー画像により、印刷物の色品質に加えて光沢品質を事前に確認することができる。この確認の結果、光沢品質が不良と判断される場合には、例えば光沢優先色変換テーブルを使用して印刷データを生成することにより、色品質と光沢品質のバランスのとれた印刷物を効率よく作製することができる。
【0094】
また本実施形態によれば、上記の光沢判定テーブル(判定テーブルA,B,C)から、各画素におけるK色成分量とYMCの色成分量の標準偏差とに応じた判定基準値が取得され、その判定基準値に基づき光沢品質が判定されるので(
図19)、印刷画像を表す印刷データに基づき従来よりも高い精度で光沢品質を判定することができる。
【0095】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る光沢判定装置について説明する。この光沢判定装置も、上記第1の実施形態と同様、
図1に示す印刷システムにおいて使用される。すなわち、この印刷システムに含まれる画像処理装置200(
図3)は、補助記憶装置24にインストールされたプレビュー処理プログラムをCPU21がRAM23にロードして実行することにより、印刷物の色品質および光沢品質の良否を事前に確認するためのプレビュー表示を行うプレビュー装置16bとしても機能し(
図4、
図20参照)、このプレビュー装置16bは、
図5に示す光沢判定処理S120により、従来の色品質判定装置としての機能に加えて光沢判定装置としての機能を有している。しかし、本実施形態に係る光沢判定装置をソフトウェア的に実現するための光沢判定処理S120は、
図20に示すように、上記第1の実施形態における光沢判定処理S120において使用される光沢判定テーブル(判定テーブルA,B,C)と同じ光沢判定テーブル(判定テーブルA1,B1,C1)に加えて、後述の拡張光沢判定テーブル(拡張判定テーブルA2,B2,C2)を使用する。そこで、まず本実施形態における拡張光沢判定テーブルについて説明する。なお、この拡張光沢判定テーブルを使用する光沢判定処理S120以外についての本実施形態の構成およびこれに関連する印刷システムの構成は、上記第1の実施形態の構成およびこれに関連する印刷システムの構成と同様であるので、同一または対応する部分には同一の参照符号を付して詳しい説明を省略する(
図1〜
図3参照)。
【0096】
<2.1 拡張光沢判定テーブル>
上記第1の実施形態では、印刷装置18としてのインクジェット印刷装置300で作成された印刷物の光沢度の光沢計230による測定値(例えば60度測定による測定値)が所定の基準光沢度(例えば50%)となるときのインク総量(TAC値)をインク適正量(インク量制限値)としていた(
図7参照)。これに対し本実施形態では、インク適正量を決定するための光沢度として、上記第1の実施形態と同一の基準光沢度である第1基準光沢度(例えば50%)に加えて、第1基準光沢度よりも低いが当業者には許容可能と判断される第2基準光沢度(例えば40%)を設定する。
図21は、上記第1の実施形態と同様の方法で求めたインク適正量(1)および(2)を示しており、インク適正量(1)は、第1基準光沢度(50%)に対応するインク適正量をTAC値で示したものであり、インク適正量(2)は、第2基準光沢度(40%)に対応するインク適正量をTAC値で示したものである。
図21によれば、例えば、基材が白フィルムで印刷の速度モードが標準(高速)の場合において、3次色(CMYそれぞれの色成分量が100%)で印刷するときには、第1基準光沢度に対応するインク適正量(1)は160%であるが、第2基準光沢度に対応するインク適正量(2)は170%となる。
【0097】
本実施形態では、上記第1の実施形態と同様にして第1基準光沢度(50%)に対応するインク適正量(1)に応じた判定テーブルA1,B1,C1(
図8〜
図10)が印刷条件毎(基材種類と速度モードとの組合せ毎)に用意されているだけでなく、第2基準光沢度(40%)に対応するインク適正量(2)に応じた拡張判定テーブルA2,B2,C2が印刷条件毎に用意されている。すなわち、上記第1の実施形態と同じ光沢判定テーブルを構成する判定テーブルA1,B1,C1と、本実施形態に特有の拡張光沢判定テーブルを構成する拡張判定テーブルA2,B2,C2とが、予め作成されて画像処理装置200の補助記憶装置24に格納されている。ここで、判定テーブルA1および拡張判定テーブルA2は、K色成分量(0〜100%)と3次色における色成分量の標準偏差との組合せに判定基準値および拡張判定基準値をそれぞれ対応づけるテーブルであり、判定テーブルB1および拡張判定テーブルB2は、K色成分量(0〜100%)と2次色における色成分量の標準偏差との組合せに判定基準値および拡張判定基準値をそれぞれを対応づけるテーブルであり、判定テーブルC1および拡張判定テーブルC2は、K色成分量(0〜100%)と1次色を構成する色成分の量との組合せに判定基準値および拡張判定基準値をそれぞれを対応づけるテーブルである。
【0098】
なお、
図7を参照して説明した方法と同様にして、判定テーブルA1,B1,C1のみならず拡張判定テーブルA2,B2,C2についても、既述のインク吐出量制限方法に基づきインク吐出量の制限値を求めることにより作成することができる。例えば
図22に示すように、K色成分量を0〜100%の範囲で変化させると共に3次色におけるいずれか2つの色成分量をいずれも100%として他の1つの色成分量を0〜100%の範囲で変化させて、既述のインク吐出量制限方法に基づきインク吐出量の制限値を求め(
図14等参照)、その制限値に相当するTAC値を拡張判定テーブルA2の対応箇所に
拡張判定基準値として設定することにより、
拡張判定テーブルA2を作成することができる。
【0099】
<2.2 光沢判定処理>
図23は、本実施形態における光沢判定処理S120(
図5参照)の手順を示すフローチャートである。この光沢判定処理S120において、光沢判定装置として機能するプレビュー装置16b(画像処理装置200)は、下記のように動作する。なお以下では、上記第1の実施形態における光沢判定処理S120の手順を示すフローチャート(
図19)と同一部分には同一のステップ番号を付して詳しい説明を省略する。
【0100】
まず、作業者の入力操作により指定される印刷条件または予め設定された印刷条件を構成する基材種類および速度モードを取得し、取得された基材の種類および速度モードに対応する光沢判定テーブルおよび拡張光沢判定テーブルを、予め補助記憶装置24に格納されている複数の光沢判定テーブルおよび複数の拡張光沢判定テーブルの中から選択し、選択された光沢判定テーブルTbsを構成する3つの判定テーブルを判定テーブルA1,B1,C1としてRAM23にロードすると共に、選択された拡張光沢判定テーブルETbsを構成する3つの拡張判定テーブルを拡張判定テーブルA2,B2,C2としてRAM23にロードする(ステップS11)。
【0101】
その後、上記第1の実施形態と同様(
図19)、印刷データDprの表す印刷画像における未着目の画素のいずれか1つの画素に着目し(ステップS12)、CMYの3つの色成分のうち着目画素に含まれる色成分の数Nを色次数Nとして求め(ステップS14)、色次数Nが1,2,3のいずれであるか判定する(ステップS16)。なお、着目画素がK色成分以外の色を含まない場合は、N=0であるが、以下ではこの場合もN=1として扱う。この場合の1次色を構成する色成分の量は“0”となる。
【0102】
ステップS16での判定の結果、N=3の場合すなわち着目画素に含まれるK色成分以外の色が3次色である場合には、当該3次色における色成分量の標準偏差σを算出する(ステップS18)。その後、判定テーブルA1から、着目画素に含まれるK色成分量と当該3次色における色成分量の標準偏差σとの組合せに対応する判定基準値を第1判定基準値R1として取得し(ステップS20)、拡張判定テーブルA2から、着目画素に含まれるK色成分量と当該3次色における色成分量の標準偏差σとの組合せに対応する拡張判定基準値を第2判定基準値R2として取得する(ステップS21)。その後、ステップS28へ進む。
【0103】
ステップS16での判定の結果、N=2の場合すなわち着目画素に含まれるK色成分以外の色が2次色である場合には、当該2次色における色成分量の標準偏差σを算出する(ステップS22)。その後、判定テーブルB1から、着目画素に含まれるK色成分量と当該2次色における色成分量の標準偏差σとの組合せに対応する判定基準値を第1判定基準値R1として取得し(ステップS24)、拡張判定テーブルB2から、着目画素に含まれるK色成分量と当該2次色における色成分量の標準偏差σとの組合せに対応する拡張判定基準値を第2判定基準値R2として取得する(ステップS25)。その後、ステップS28へ進む。
【0104】
ステップS16での判定の結果、N=1の場合、すなわち着目画素に含まれるK色成分以外の色が1次色である場合には、判定テーブルC1から、着目画素に含まれるK色成分量と当該1次色を構成する色成分の量との組合せに対応する判定基準値を第1判定基準値R1として取得し(ステップS26)、拡張判定テーブルC2から、着目画素に含まれる
K色成分量と当該1次色を構成する色成分の量との組合せに対応する拡張判定基準値を第2判定基準値R2として取得する(ステップS27)。その後、ステップS28へ進む。
【0105】
ステップS28では、着目画素のC色成分量Cp,M色成分量Mp,Y色成分量Yp,および、K色成分量Kpの総和を示すTAC値(以下「着目画素TAC値」という)Vp=Cp+Mp+Yp+Kpを印刷データDprから求め(ステップS28)、着目画素TAC値Vpが第1判定基準値R1以下か否かを判定する(ステップS30)。この判定の結果、着目画素TAC値Vpが第1判定基準値R1以下であれば、着目画素は“第1基準のグロス調”(光沢品質が第1基準で良)と判定し(ステップS32)、着目画素TAC値Vpが
第1判定基準値R1より大きければ、着目画素は“第1基準のマット調”(光沢品質が第1基準で不良)と判定する(ステップS34)。
【0106】
続いて、着目画素TAC値Vpが第2判定基準値R2以下か否かを判定する(ステップS31)。この判定の結果、着目画素TAC値Vpが第2判定基準値R2以下であれば、着目画素は“第2基準のグロス調”(光沢品質が第2基準で良)と判定し(ステップS33)、着目画素TAC値Vpが第2判定基準値R2より大きければ、着目画素は“第2基準のマット調”(光沢品質が第2基準で不良)と判定する(ステップS35)。
【0107】
このようにして着目画素の光沢品質の良否(グロス調かマット調か)が第1および第2判定基準値R1,R2に基づく2つの基準(第1および第2基準)で判定された後は、印刷画像に未着目の画素があるか否かを判定する(ステップS36)。この判定の結果、未着目画素がない場合には、印刷画像における全ての画素につき光沢品質が判定されたので、本光沢判定処理S120を終了する。一方、未着目画素がある場合には、ステップS12へ戻り、未着目画素がなくなるまでステップS12〜S36の処理が繰り返し実行される。
【0108】
<2.3 印刷システムにおける作業手順>
図20は、本実施形態に係る光沢判定装置を使用する印刷システムにおける作業手順を説明するための図である。
図20に示すように、本印刷システムにおける作業手順は、光沢判定装置としての機能を有するプレビュー装置16bでの作業を除き、上記第1の実施形態に係る光沢判定装置を使用する印刷システムにおける作業手順(
図4)と同様である。なお、
図4および
図20はいずれも入稿データ
12作成後の作業手順を示している。
【0109】
既述のように本実施形態では、光沢判定処理S120による判定結果として、光沢品質につき第1基準での良否(第1基準のグロス調かマット調か)と第2基準での良否(第2基準のグロス調かマット調か)が示される(
図23のステップS32〜S35参照)。このため、本実施形態におけるプレビュー処理S130では、第1基準での光沢品質の良否と第2基準での光沢品質の良否の双方を作業者が確認できるような形態で印刷画像がプレビュー装置16b(画像処理装置200)においてプレビュー画像として表示される。例えば、第1基準での光沢不良領域(第1基準のマット調の画素からなる領域)と第2基準での光沢不良領域(第2基準のマット調の画素からなる領域)とが互いに異なる特定の色でまたは互いに異なる種類のハッチングを付して表示される。また、第1基準での光沢不良領域が表示される状態と第2基準での光沢不良領域が表示される状態との間でプレビュー画像の表示状態を切り替えるように構成されていてもよい。
【0110】
作業者は、このようなプレビュー画像を見て、事前に(印刷前に)、印刷物の色品質に加えて、第1基準による光沢品質の良否、および、それよりも緩い基準である第2基準による光沢品質の良否を示す画像表示に基づき、光沢品質を確認することができる。したがって、作業者は、作製すべき印刷物に関する状況に応じてより適切に光沢品質の良否を判断することができる。
【0111】
このようなプレビュー画像による確認の結果、色品質および光沢品質が共に良好(色品質と光沢品質とでバランスがとれている)と作業者により判断されると、印刷データDprが印刷装置18に送られ、印刷装置18としてのインクジェット印刷装置300において印刷データDprによる印刷が行われる。一方、プレビュー画像を見た作業者により色品質または光沢品質のいずれかが不良と判断された場合には、その判断結果に応じて色変換テーブルを作成し直し、色品質および光沢品質が共に良好な状態(色品質と光沢品質とでバランスがとれた状態)となるまでデータ変換処理S110→光沢判定処理S120→プレビュー処理S130が繰り返される。なお、プレビュー画像を見た作業者により光沢品質のみが不良と判断された場合には、上記第1の実施形態と同様、光沢優先色変換テーブル11bを使用して印刷データDprを作成し直すことにより(
図13参照)、上記のデータ変換処理S110→光沢判定処理S120→プレビュー処理S130による作業の繰り返しを抑制することができる。
【0112】
<2.4 効果>
上記のように本実施形態によれば、上記第1の実施形態と同様、印刷前に印刷物の色品質および光沢品質を作業者が確認できるような形態で印刷画像がプレビュー画像として表示される(
図20)。このプレビュー画像を得るための光沢判定処理S120において、上記第1の実施形態では、1種類の判定テーブルA,B,Cに基づく1つの基準でのみ光沢品質の良否が判定されるので(
図19のステップS30〜S34参照)、着目画素TAC値Vpが判定基準値Rを僅かに超えているか(例えば数%超えているか)、大きく超えているか(例えば数十%超えているか)に関わらず、マット調として同様に扱われる。これに対し本実施形態では、判定テーブルA1,B1,C1に基づく第1基準と拡張判定テーブルA2,B2,C2に基づく第2基準との2つの基準で光沢品質の良否が判定される(
図23のステップS30〜S35参照)。これにより、或る画素が第1基準でマット調と判定されても、第1基準よりも緩やかな第2基準ではグロス調と判定されることがあるので、マット調の度合いが小さい画像を許容することが可能となる。このため、作業者は、このような2つの基準による光沢品質の良否を示すプレビュー画像に基づき、光沢品質を確認することができるので、作製すべき印刷物に関する状況に応じてより適切に光沢品質の良否(光沢不良のために印刷データを作り直すべきか否か)を判断することができる。その結果、印刷システムにおける作業効率も向上する(
図20参照)。
【0113】
<3. 変形例>
上記各実施形態では、各判定テーブルに設定される判定基準値として、TAC値を採用しているが、本発明はこれに限定されるものではない。判定基準値としては、インク付着量、インク実量、インク消費量を採用することができ、この場合には、TAC値を採用する場合に比べて、光沢判定の精度を向上することができる。
【0114】
上記各実施形態では、インク色としてCMYKの4色が使用される印刷システムを前提としているが、本発明はこれに限定されるものではない。5色以上(K色とK色以外の4つ以上の色)の光硬化型インクを使用する印刷システムにおいても、本発明により、K色とグレー成分を生じる色の組合せとを考慮して光沢品質を判定できる光沢判定装置を提供することができる。また、CMYの色の組み合わせによるグレー成分の発生を示す指標として標準偏差が使用されている(K色成分以外の色成分の量の標準偏差が小さい程グレー成分量が多いものとしている)が、標準偏差に代えて散布度を表す他の指標を使用してもよい。
【0115】
上記各実施形態では、ビットマップ形式の印刷データDprを用いて印刷画像における各画素につき光沢品質の良否(グロス調かマット調か)が判定されるが(
図19、
図23)、本発明は、このように画素毎に光沢品質の良否を判定する構成に限定されものではなく、予め決められた単位画像毎に光沢品質の良否が判定できればよい。例えば、印刷対象をページ記述言語で記述したページデータ、例えばPDF形式のデータを用いて、当該ページデータを構成する画像オブジェクト(文字、線画、絵柄など)毎に光沢品質の良否を判定する構成であってもよい。
【0116】
上記第2の実施形態では、上記第1の実施形態における光沢判定テーブルと同じ光沢判定テーブル(判定テーブルA1,B1,C1)に加えて
拡張光沢判定テーブル(拡張判定テーブルA2,B2,C2)を使用しているが、更に異なる基準光沢度に基づき作成される
拡張光沢判定テーブルを追加し、3種類以上の基準に基づいて光沢品質の良否を判定するようにしてもよい。このような構成によれば、光沢品質の判定基準に更に幅を持たせることができる。