特許第6563790号(P6563790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563790
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】押縁の取付構造および建具
(51)【国際特許分類】
   E06B 3/58 20060101AFI20190808BHJP
   E06B 3/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   E06B3/58 B
   E06B3/14
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-227640(P2015-227640)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-95929(P2017-95929A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】白浜 朋彦
(72)【発明者】
【氏名】鎌野 裕介
【審査官】 家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−526614(JP,A)
【文献】 特開2012−251424(JP,A)
【文献】 特開平10−184208(JP,A)
【文献】 実開平05−040579(JP,U)
【文献】 特開平03−087491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 3/54−3/88
E06B 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面材を保持する押縁を、枠体に対して室内外方向の一方側から取り付ける押縁の取付構造であって、
前記枠体は、見込み片部と、前記見込み片部から見付け方向に突設されて前記面材の前記室内外方向の他方側の面に対向する見付け片部と、前記見込み片部に形成されて前記一方側に開口する係合溝を形成する溝形成部と、前記溝形成部に対して前記一方側に離間して配置されて前記枠体の内周側に向かって突出された突出部と、前記見込み片部の前記一方側の端部から前記枠体の外周側に折曲されて延出された折曲部と、前記折曲部および前記突出部を連結する連結部とを備え、前記突出部と、前記折曲部と、前記連結部とで区画される凹部を有し、
前記突出部は、前記枠体の内周側に面する当接面と、前記他方側に面する係止面とを備え、
前記押縁は、前記面材の一方側に配置される壁部と、前記壁部から前記他方側に向かって延出されて前記係合溝に係合する係合片部と、前記壁部から突出されて前記突出部の当接面に当接する当接部と、前記係合片部および当接部間に形成されて前記突出部の係止面に当接する係止部とを備え、
前記壁部が前記面材に当接した際に、前記係合片部が前記溝形成部に係合し、前記当接部が前記突出部の当接面に当接し、前記係止部が前記突出部の係止面に当接する
ことを特徴とする押縁の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の押縁の取付構造において、
前記押縁における前記当接部と前記係止部の鉛直面との間には窪み部が形成され、
前記枠体における前記突出部の当接面および係止面が交差する角部は前記窪み部に面して配置されている
ことを特徴とする押縁の取付構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の押縁の取付構造において、
前記係止部の係合片部側の面は傾斜面とされ、
前記係合片部は、前記見込み片部に対向する外周面と、前記溝形成部に対向し、前記外周面よりも前記他方側に延出された内周面と、前記外周面および前記内周面に連続するガイド面とを備え、
前記ガイド面が形成された係合片部の先端部はテーパ状に形成されている
ことを特徴とする押縁の取付構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の押縁の取付構造において、
前記枠体の見込み片部と前記突出部の当接面とは同一平面上に形成され、
前記係合溝は、前記枠体に対する見付け方向の位置が前記突出部の当接面よりも前記枠体の内周側である
ことを特徴とする押縁の取付構造。
【請求項5】
枠体と、前記枠体内に配置される面材と、前記枠体に対して室内外方向の一方側から取り付けられて前記面材を押さえる押縁とを備える建具であって、
前記枠体は、見込み片部と、前記見込み片部から見付け方向に突設されて前記面材の前記室内外方向の他方側の面に対向する見付け片部と、前記見込み片部に形成されて前記一方側に開口する係合溝を形成する溝形成部と、前記溝形成部に対して前記一方側に離間して配置されて前記枠体の内周側に向かって突出された突出部と、前記見込み片部の前記一方側の端部から前記枠体の外周側に折曲されて延出された折曲部と、前記折曲部および前記突出部を連結する連結部とを備え、前記突出部と、前記折曲部と、前記連結部とで区画される凹部を有し、
前記突出部は、前記枠体の内周側に面する当接面と、前記他方側に面する係止面とを備え、
前記押縁は、前記面材の一方側に配置される壁部と、前記壁部から前記他方側に向かって延出されて前記係合溝に係合する係合片部と、前記壁部から突出されて前記突出部の当接面に当接する当接部と、前記係合片部および当接部間に形成されて前記突出部の係止面に当接する係止部とを備え、
前記壁部が前記面材に当接した際に、前記係合片部が前記溝形成部に係合し、前記当接部が前記突出部の当接面に当接し、前記係止部が前記突出部の係止面に当接する
ことを特徴とする建具。
【請求項6】
請求項5に記載の建具において、
前記押縁は、硬質樹脂製の本体部と、軟質樹脂製のシール部とを備えて構成され、
前記本体部は、前記壁部と、前記係合片部と、前記当接部と、前記係止部とを備え、
前記シール部は、前記壁部の先端部の前記面材に対向する面に設けられている
ことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面材を押さえる押縁を枠体に取り付ける押縁の取付構造および押縁を備える建具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の躯体開口部に設けられる建具として、障子の樹脂製の框材に、ガラスなどの面材を樹脂製押縁を用いて固定するものが知られている(特許文献1参照)。
押縁は、面材に加わる耐風圧によって生じる面外方向(障子の見込み方向)の力を受ける必要がある。このため、特許文献1のように、框本体部の内周面に押縁嵌合部を形成し、押縁を前記押縁嵌合部に面内方向から嵌合することで取り付けていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5079737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、押縁を面材に沿った面内方向から框に取り付ける場合には、取付作業の効率が低下するという課題があった。特に、樹脂製の框材および押縁を用いて断熱性を向上させた障子を構成する場合、複層ガラスやトリプルガラスの面材を用いて断熱性能を向上させることが求められる。このため、面材の見込み寸法が大きくなるため、障子全体の見込み寸法を抑制するために、押縁の見込み方向の寸法をできるだけ小さくすることが求められる。
このため、押縁のガラス押さえ部分は薄板状に形成され、押縁を框に対して面内方向から押し込む際に、作業者が指を掛ける部分の寸法も小さくなり、挿入方向に力を加え難く、押縁の取付作業時の効率が低下していた。
また、押縁を手で押し込むことが難しいために、押縁を木ハンマーなどで叩いて押し込むことも行われるが、この場合には、押縁や框が傷つく虞があるため、注意深く作業する必要があり、やはり作業効率が低下していた。
【0005】
本発明の目的は、押縁の取付作業性を向上できる押縁の取付構造および建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の押縁の取付構造は、面材を保持する押縁を、枠体に対して室内外方向の一方側から取り付ける押縁の取付構造であって、前記枠体は、見込み片部と、前記見込み片部から見付け方向に突設されて前記面材の前記室内外方向の他方側の面に対向する見付け片部と、前記見込み片部に形成されて前記一方側に開口する係合溝を形成する溝形成部と、前記溝形成部に対して前記一方側に離間して配置されて前記枠体の内周側に向かって突出された突出部と、前記見込み片部の前記一方側の端部から前記枠体の外周側に折曲されて延出された折曲部と、前記折曲部および前記突出部を連結する連結部とを備え、前記突出部と、前記折曲部と、前記連結部とで区画される凹部を有し、前記突出部は、前記枠体の内周側に面する当接面と、前記他方側に面する係止面とを備え、前記押縁は、前記面材の一方側に配置される壁部と、前記壁部から前記他方側に向かって延出されて前記係合溝に係合する係合片部と、前記壁部から突出されて前記突出部の当接面に当接する当接部と、前記係合片部および当接部間に形成されて前記突出部の係止面に当接する係止部とを備え、前記壁部が前記面材に当接した際に、前記係合片部が前記溝形成部に係合し、前記当接部が前記突出部の当接面に当接し、前記係止部が前記突出部の係止面に当接することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、押縁を枠体に対して見込み方向から取り付けることができるため、押縁の壁部を押して取り付けることができる。このため、作業者は、押縁を押し込む際に力を加えやすく、押縁取付時の作業効率を向上できる。また、押縁の取り付けに木ハンマーなどを用いる必要が無いため、押縁や枠体を傷つけるおそれもなく、この点でも作業効率を向上できる。
【0008】
本発明の押縁の取付構造において、前記押縁における前記当接部と前記係止部の鉛直面との間には窪み部が形成され、前記枠体における前記突出部の当接面および係止面が交差する角部は前記窪み部に面して配置されていることが好ましい。
このような構成によれば、押縁の当接部を枠体の突出部の当接面に当接させ、押縁の係止部の鉛直面を枠体の突出部の係止面に当接させた際に、前記突出部の当接面および係止面が交差する角部が窪み部に配置される。このため、角部の公差が大きくなった場合でも、角部は窪み部に配置されており、前記押縁の当接部や鉛直面は角部から離れた位置で突出部に当接するため、角部の公差が影響することがない。したがって、係止部の鉛直面が係止面に当接する掛かり代が小さくなることを防止でき、押縁が枠体から外れることを防止できる。
【0009】
本発明の押縁の取付構造において、前記係止部の係合片部側の面は傾斜面とされ、前記係合片部は、前記見込み片部に対向する外周面と、前記溝形成部に対向し、前記外周面よりも前記他方側に延出された内周面と、前記外周面および前記内周面に連続するガイド面とを備え、前記ガイド面が形成された係合片部の先端部はテーパ状に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、押縁を枠体側に押し込む際に、係止部が突出部に当たった際に前記傾斜面が突出部に当たって案内されるため、係止部が突出部を超える位置まで容易に押し込むことができる。また、係合片部の先端部がテーパ状に形成されているので、先端部が枠体の見付け面に当接した際に、係合片部を係合溝に向かう方向に案内でき、係合片部が係合溝内に係合される状態まで容易に押し込むことができる。したがって、押縁の取付作業性を向上できる。
【0010】
本発明の押縁の取付構造において、前記枠体の見込み片部と突出部の当接面とは同一平面上に形成され、前記係合溝は、枠体に対する見付け方向の位置が前記突出部の当接面よりも前記枠体の内周側であることが好ましい。
このような構成によれば、係合溝に対して押縁の係合片部を容易に挿入して係合することができる。
【0011】
本発明は、枠体と、前記枠体内に配置される面材と、前記枠体に対して室内外方向の一方側から取り付けられて前記面材を押さえる押縁とを備える建具であって、前記枠体は、見込み片部と、前記見込み片部から見付け方向に突設されて前記面材の前記室内外方向の他方側の面に対向する見付け片部と、前記見込み片部に形成されて前記一方側に開口する係合溝を形成する溝形成部と、前記溝形成部に対して前記一方側に離間して配置されて前記枠体の内周側に向かって突出された突出部と、前記見込み片部の前記一方側の端部から前記枠体の外周側に折曲されて延出された折曲部と、前記折曲部および前記突出部を連結する連結部とを備え、前記突出部と、前記折曲部と、前記連結部とで区画される凹部を有し、前記突出部は、前記枠体の内周側に面する当接面と、前記他方側に面する係止面とを備え、前記押縁は、前記面材の一方側に配置される壁部と、前記壁部から前記他方側に向かって延出されて前記係合溝に係合する係合片部と、前記壁部から突出されて前記突出部の当接面に当接する当接部と、前記係合片部および当接部間に形成されて前記突出部の係止面に当接する係止部とを備え、前記壁部が前記面材に当接した際に、前記係合片部が前記溝形成部に係合し、前記当接部が前記突出部の当接面に当接し、前記係止部が前記突出部の係止面に当接することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、押縁を枠体に対して見込み方向から取り付けることができるため、押縁の壁部を押して取り付けることができる。このため、作業者は、押縁を押し込む際に力を加えやすく、押縁取付時の作業効率を向上できる。また、押縁の取り付けに木ハンマーなどを用いる必要が無いため、押縁や枠体を傷つけるおそれもなく、この点でも作業効率を向上できる。
【0013】
本発明の建具において、前記押縁は、硬質樹脂製の本体部と、軟質樹脂製のシール部とを備えて構成され、前記本体部は、前記壁部と、前記係合片部と、前記当接部と、前記係止部とを備え、前記シール部は、前記壁部の先端部の前記面材に対向する面に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、押縁を樹脂製とすることができ、断熱性能を向上できる。また、シール部と本体部とを一体に製造できるため、押縁と面材との間に別体のシール材を取り付ける必要が無く、部品点数を少なくでき、建具の組立作業性も向上できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の押縁の取付構造および建具によれば、押縁の取付作業性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る建具である片引き窓を示す斜視図。
図2】前記実施形態に係る片引き窓を示す縦断面図。
図3】前記実施形態に係る片引き窓を示す横断面図。
図4】前記実施形態に係る押縁の取付構造を示す縦框および押縁の断面図。
図5】前記実施形態に係る押縁の断面図。
図6】前記実施形態に係る押縁の取付手順を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[本実施形態の構成]
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
本実施形態に係る片引き窓1は、図1〜3に示すように、建物躯体の開口部に設置されるものであり、窓枠2(枠体)と、窓枠2内に固定された固定面材3と、窓枠2内に左右方向にスライド移動可能に配置された内障子4(可動障子)とを備えた内動片引き窓である。
【0017】
窓枠2は、図1の室外側から見た斜視図に示すように、上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24を四周枠組みし、縦枠23,24間に中骨25を設けて構成されている。上枠21、下枠22、左右の縦枠23,24および中骨25は、樹脂製の押出形材によって形成された樹脂枠材である。図1において左側に示す縦枠23は、内障子4に対して戸先側に位置しており、後述する戸先側の縦框43が当接する戸先側の縦枠を構成している。図1において右側に示す縦枠24は、内障子4に対して戸尻側に位置する戸尻側の縦枠を構成している。
【0018】
上枠21、下枠22および左右の縦枠23,24は、図2,3に示すように、室外見付け片部210と、見込み片部220と、室内見付け片部230とをそれぞれ有している。上枠21、下枠22、縦枠23の各室外見付け片部210と中骨25とには、閉鎖位置にある内障子4に対向して位置する気密材26が四周連続して取り付けられている。上枠21および下枠22の気密材26が取り付けられる溝において、中骨25および縦枠24間には溝を塞ぐ目地ガスケット28が取り付けられている。この目地ガスケット28は、縦枠24にも取り付けられている。
上枠21には、内障子4を左右方向に案内する上レール241が形成されており、下枠22には、内障子4を左右方向に案内する下レール242が形成されている。
縦枠23、24には、内障子4の戸当り部243、244が形成されている。
【0019】
固定面材3は、図2,3に示すように、トリプルガラス等からなる面材31を備えている。面材31の室内面側周縁は、上枠21、下枠22、縦枠24の各室外見付け片部210と中骨25の室内見付け片部251とに当接している。面材31の室外側周縁は、上枠21、下枠22、縦枠24および中骨25に装着された押縁27に当接している。
このように面材31は、上枠21、下枠22、縦枠24および中骨25によって図1に示す片引き窓1の右半分の位置に固定されている。
【0020】
内障子4は、上框41、下框42、左右の縦框43,44およびトリプルガラス等からなる面材45を四周框組みして構成されている。上框41、下框42および左右の縦框43,44は、硬質PVC(ポリ塩化ビニル)などの樹脂製の押出形材によって形成された樹脂框材である。図1において左側に示す縦框43は戸先側の縦框であり、図3に示す縦框44は戸尻側の縦框(召合せ框)である。
面材45は、上框41、下框42、縦框43,44と、これらの框に装着された押縁47とで挟持されている。
【0021】
次に、押縁47の取付構造に関して説明する。なお、上框41、下框42、縦框43,44は同一断面形状とされ、押縁47の取付構造も共通化されているので、縦框44への取付構造を例に説明する。
なお、以下の説明において、内障子4の見込み方向(室内外方向)において室内側を一方側、室外側を他方側と定義する。また、内障子4の各框41〜44の見付け方向において、障子内周側(面材45側)を見付け方向内側、障子外周側を見付け方向外側と定義する。
【0022】
縦框44は、図4に示すように、内障子4の見込み方向(室内外方向)に沿って形成されて面材45の端面に対向する見込み片部441と、前記見込み片部441の見込み方向の一方側(室内側)から縦框44の見付け方向内側(図4では右側)に突出された室内見付け片部442と、縦框44の室外側表面となる表面板部443と、見込み片部441と表面板部443とを連結する連結板部444と、表面板部443と連結板部444との連結部から縦框44の見付け方向内側に突出された突出部445とを備える。表面板部443および突出部445は、室外側の露出面に積層されたアクリルなどの表面保護膜44Aを備えている。
【0023】
連結板部444は、見込み片部441の室外側端部から内障子4の見付け方向外側(図4では左側)に折曲されて延出された折曲部444Aと、折曲部444Aおよび表面板部443間を連結する見込み方向に沿った連結部444Bとを備える。
突出部445の先端には見込み方向に沿った当接面445Aが形成されている。当接面445Aは、見込み片部441の見込み面441Aとほぼ同一平面上に形成されている。突出部445には、当接面445Aから連続して室内側(他方側)に面する係止面445Bも形成されている。
【0024】
見込み片部441には、溝形成部446が形成されている。溝形成部446は、見込み片部441の見込み方向の中間よりも室外側に設けられ、見込み片部441から面材45側に突出し、さらに室外方向に延長されて断面略L字状に形成されている。このため、溝形成部446と見込み片部441との間には、前記一方側(室外側)に開口する係合溝447が形成されている。溝形成部446の室外側端部には、係合溝447側に向かって傾斜する傾斜面446Aが形成されている。
ここで、当接面445Aと見込み面441Aとがほぼ同一平面に形成されているので、係合溝447は、当接面445Aよりも見付け方向内側に形成され、縦框44の室外側から容易に確認できる。
また、突出部445と折曲部444Aとの間には、見付け方向内側に開口し、縦框44に対して内部側に窪む凹部448が区画されている。
【0025】
縦框44に取り付けられる押縁47は、図5にも示すように、硬質PVCで形成された本体部470と、軟質PVCで形成されたシール部480とを備えている。なお、本体部470は、室外側の露出面に積層されたアクリルなどの表面保護膜490を備えている。
本体部470は、図4、5、6に示すように、押縁47が縦框44に取り付けられた状態で、面材45の室外側に配置される壁部471と、壁部471から係合溝447内に延出された係合片部477と、壁部471から凹部448側に突出された係止部478と、係止部478の室外側に離間した位置で壁部471から突出する当接部479とを備えている。
【0026】
壁部471は、なだらかに湾曲して室外側に面する表面部472と、表面部472の先端側から面材45側に折曲された先端部473と、先端部473の内障子4の外周側に離間した位置で表面部472に連続し、縦框44の見付け方向に沿って延長された延長部474と、表面部472の基端部および延長部474の基端部間を連結する連結部475とを備えている。
表面部472および延長部474間には見付け方向に沿って細長い断面形状とされた中空部471Aが形成されている。これにより、硬質PVCなどの樹脂製の押縁47において、壁部471の剛性を向上させている。
また、延長部474および先端部473間には、面材45側に開口する凹溝部471Bが形成されている。
【0027】
係合片部477は、縦框44側に対向する外周面477Aと、面材45側に対向する内周面477Bと、係合片部477の先端部で外周面477Aおよび内周面477Bに連続するガイド面477Cとを備える。
ガイド面477Cは、外周面477Aから内周面477Bに連続する湾曲面とされ、外周面477Aに連続する側の面は、外周面477Aに対して約45度に傾斜されている。このため、ガイド面477Cが形成された係合片部477の先端部は、テーパ状に形成されている。
【0028】
係止部478は、外周面477Aから連続する傾斜面478Aと、係止部478の室外側に面する鉛直面478Bとを備えている。傾斜面478Aは、外周面477Aに対して約45度の角度で傾斜している。
当接部479は、表面部472の延長線上に形成され、その室外面は表面部472の室外面に連続している。
当接部479と、鉛直面478Bとの間には、連結部475側に窪む窪み部476が形成されている。
【0029】
シール部480は、延長部474の凹溝部471B側の端部から面材45側に向かって延出されたヒレ部481と、先端部473の室内面に設けられた受け部482とを備えている。ヒレ部481は、面材45に当接して受け部482側に折り曲げられ、受け部482に当接することで面材45に密着する。これにより、面材45は、縦框44の室内見付け片部442と、押縁47とで挟まれて保持される。
【0030】
次に、内障子4に面材45および押縁47を取り付ける手順について説明する。
内障子4の製造工場において、上框41、下框42、縦框43、縦框44を框組みして接合した枠体内に、面材45を配置する。例えば、枠体を、縦框44における室内見付け片部442が下側となり、表面板部443が上側となるように、作業台上に寝かした状態で配置し、枠体の上方から開口内に面材45を配置する。これにより、面材45は、各室内見付け片部442上に載置される。
【0031】
そして、各框41〜44に対し、図6に示すように、押縁47を取り付ける。まず、押縁47の係合片部477を係合溝447内に挿入する。例えば、図6(A)に示すように、係合片部477の外周面477Aを当接面445Aに接触させながら押縁47を移動した場合には、係合溝447が当接面445Aよりも見付け方向内側に形成されており、ガイド面477Cが傾斜面446Aに当接して係合溝447内に案内されるため、係合片部477を係合溝447内に容易に挿入できる。
また、係合溝447を縦框44の上方から容易に視認でき、係合溝447の位置を把握しやすいため、押縁47を傾けて差し込むこともできる。この際、ガイド面477Cを折曲部444Aや見込み面441Aに当接させた場合には、ガイド面477Cによって係合片部477は係合溝447側に案内される。したがって、係合片部477が凹部448内に差し込まれることを防止できる。
【0032】
押縁47をさらに押し込んで、図6(B)に示すように、係止部478の傾斜面478Aが当接面445Aの室外側の角部に当接すると、押縁47は壁部471の先端部473が面材45に近づく方向に傾き、ガイド面477Cは係合溝447内の見込み面441Aに当接する。この状態から押縁47を更に押し込むと、図6(C)に示すように、係止部478が突出部445の当接面445Aを超えて、凹部448内に配置される。
このように、押縁47を見込み方向に押し込んで縦框44に取り付けるため、作業者は押縁47の壁部471の表面部472を押し込めばよい。この場合、表面部472の面積が大きいため、押縁47を手のひら全体で押し込むことができ、作業者の力を加えやすく、押縁47の取付作業性も向上する。特に、枠体を作業台上に寝かした状態で取付作業を行う場合には、押縁47を下向きに押し込むことができるので、表面部472に手のひらを当てて、体重を掛けながら押縁47を押し込むことができ、木ハンマーなど治具を用いる必要もなく、作業性を著しく向上できる。
【0033】
押縁47が縦框44に取り付けられると、壁部471の先端部に設けられたシール部480が面材45の室外面に当接し、面材45を室内見付け片部442に押し付ける。このため、面材45は、室内見付け片部442および押縁47で挟まれて保持される。
押縁47の先端部473には面材45からシール部480を介して室外側に向かう力が加わる。押縁47の先端部473に室外側に向かう力が加わり、押縁47が回転しようとしても、図4に示すように、当接部479が当接面445Aに圧接し、係合片部477が溝形成部446に圧接するため、押縁47は回転することなく縦框44に取り付けられた状態に維持される。また、押縁47全体が室外側に押された場合には、係止部478の鉛直面478Bが突出部445の係止面445Bに当接して係止されるため、押縁47は縦框44から外れない取付構造とされている。
【0034】
なお、図1に示すように、上框41、下框42、縦框43、44の端部は、長手方向に対して45度に切断され、この切断面同士を突き合わせることで矩形状に枠組みされている。
同様に、各框41〜44に取り付けられる押縁47も、その長手方向の両端部は長手方向に対して45度に切断され、切断面同士を突き合わせることで矩形状に配置される。この際、3本目の押縁47までは、押縁47を取り付ける際に、長手方向の両端部のうち、少なくとも一方の端部には押縁47が配置されていない状態で取り付けることができるため、隣接する押縁47が干渉することもなく、スムーズに取り付けることができる。
4本目の押縁47は、その両端側に他の押縁47が配置された状態で取り付けることになる。このため、4本目の押縁47を取り付ける場合には、押縁47を長手方向に湾曲させて、両端面を隣接する他の押縁47の端面に当接させ、縦框44から浮いている押縁47の中央部分を縦框44側に押し込むことで取り付ければよい。
【0035】
また、メンテナンスなどのために、押縁47を外す必要がある場合には、突出部445および当接部479間にスクレーパーなどの薄板状の治具を差し込んで、当接部479が突出部445から離れる方向に押縁47を持ち上げることで、押縁47を外すことができる。
【0036】
[本実施形態の効果]
(1)本実施形態では、押縁47を各框41〜44に対して見込み方向(室外側)から取り付けることができるため、押縁47の壁部471を押して取り付けることができる。このため、作業者は、押縁47を押し込む際に力を加えやすく、作業効率を向上できる。
また、押縁47を押し込む際に、木ハンマーなどを用いる必要が無いため、押縁47や各框41〜44を傷つけるおそれもないので、この点でも作業効率を向上できる。
【0037】
(2)押縁47を各框41〜44に取り付けて面材45を保持した際に、押縁47の先端部473を室外側に押す力が面材45から加わっても、当接部479が突出部445の当接面445Aに圧接し、係止部478が係止面445Bに圧接し、係合片部477が溝形成部446に圧接するため、押縁47が各框41〜44から外れることがない。
また、当接部479、係止部478、係合片部477は、それぞれ突出部445、係合片部477に当接しているだけであるため、スクレーパー等の治具を用いることで、各框41〜44から押縁47を容易に外すことができる。
すなわち、押縁47は、面材45を保持するように各框41〜44に取り付けた状態では外れ難くでき、かつ、作業者が外す作業を行えば容易に取り外すことができる。
【0038】
(3)押縁47に窪み部476を形成したので、突出部445の角部の公差が大きくなった場合でも、押縁47の当接部479および係止部478と、突出部445との当接面積を維持でき、特に係止部478が突出部445に当接している部分の掛かり代を確保できる。このため、突出部445の角部の公差が大きくなった場合でも、押縁47が各框41〜44から外れることを防止できる。
【0039】
(4)押縁47の係止部478に傾斜面478Aを形成し、係合片部477の先端部をテーパ状に形成しているので、押縁47を各框41〜44に押し込む際に、係合片部477の先端部を容易に係合溝447内に係合させることができる。この点でも、押縁47の取付作業性を向上できる。
【0040】
(5)押縁47を樹脂製としたので、断熱性能を向上できる。また、シール部480と本体部470とを一体に製造しているので、押縁47と面材45との間に別体のシール材を取り付ける必要が無く、部品点数を少なくでき、内障子4の組立作業性も向上できる。
【0041】
(6)押縁47を樹脂製とし、さらに壁部471の見込み寸法を小さくしているので、押縁47を長手方向に撓ませて各框41〜44に取り付けることができる。したがって、端部を45度に切断して突き合わせる形式の押縁47において、4本目の押縁47も容易に取り付けることができる。このため、押縁47を各框41〜44の見付け方向外側に移動してから、見付け方向内側に移動させて突き合わせるような工夫を行う必要も無く、押縁47を見付け方向に移動できるように、各框41〜44の係合溝447の溝幅(見付け方向に沿った方向の幅寸法)を大きくする必要もない。従って、各框41〜44において、押縁47を取り付ける取付構造をコンパクトに形成できる。
【0042】
[変形例]
本発明は、以上の実施形態で説明した構成のものに限定されず、本発明の目的を達成できる範囲での変形例は、本発明に含まれる。
【0043】
例えば、本発明の押縁は、前記実施形態のような障子4の各框41〜44に取り付けるものに限らず、固定面材3の面材31を保持するために、上枠21、下枠22、縦枠24、中骨25に取り付ける押縁に適用してもよい。
【0044】
また、本発明の建具は、前記実施形態の片引き窓1に限定されず、引違い窓や上げ下げ窓などのスライディング形式の窓の障子や、開き窓のようにスイング形式の窓の障子、さらにはFIX窓など、面材が組み込まれる各種の建具に適用可能である。
【符号の説明】
【0045】
1…片引き窓、2…窓枠(枠体)、3…固定面材、4…内障子(可動障子)、21…上枠、22…下枠、23…縦枠、24…縦枠、25…中骨、26…気密材、27…押縁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6