(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性変形体は、前記降伏ヒューズ部材が破壊された後、地震動による当該脚柱構造体が揺れると弾性変形する第1弾性部材と、前記振幅が所定値より大きい状態で弾性変形する第2弾性部材を有することを特徴とする請求項1に記載の脚柱構造体。
前記降伏ヒューズ部材は、上下に間隔を空けた複数箇所に取り付けられており、前記複数箇所毎に前記降伏ヒューズ部材が前記芯柱の外周面の周方向に所定間隔で複数配設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の脚柱構造体。
前記弾性変形体は、上下に間隔を空けた複数箇所に取り付けられており、前記複数箇所毎に前記弾性変形体が前記芯柱の外周面の周方向に所定間隔で複数配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の脚柱構造体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の脚柱構造体の一部が塑性変形して脚柱構造体全体が長周期化することによる減衰効果で地震のエネルギーを吸収する場合、その脚柱構造体が軟弱地盤に構築されていると、脚柱構造体が長周期化する際に共振し易く、その振幅が大きくなり過ぎてしまうことがあった。
振幅が大きくなり過ぎ、脚柱構造体が大きく変形してしまうと、脚柱構造体に疲労がたまるなどして損傷する虞があった。
【0005】
本発明の目的は、過度に共振するのを抑制できる脚柱構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、
上端部が上部工に接合されて、鉛直向きに立設された芯柱と、
前記芯柱が軸心に配置され、前記上部工とは接合されない筒状外柱と、
前記芯柱と前記筒状外柱の間に取り付けられた降伏ヒューズ部材と、
前記芯柱と前記筒状外柱の間に取り付けられた弾性変形体と、
を備えている脚柱構造体であって、
前記降伏ヒューズ部材が前記芯柱と前記筒状外柱とを一体的に繋いでいる状態では、前記芯柱が前記上部工を支持することによる軸力を負担し、前記筒状外柱が前記降伏ヒューズ部材及び前記弾性変形体を介して前記芯柱から伝達される水平力を負担するように構成されており、
前記降伏ヒューズ部材が所定の限度を超える大きさの地震動によって破壊された後は、前記芯柱と前記筒状外柱との間で弾性変形可能になる前記弾性変形体によって当該脚柱構造体の固有周期を長周期化させて入力地震動を低減するように構成されており、その弾性変形体は、地震動による当該脚柱構造体の振幅が所定値より小さい状態から所定値より大きい状態に変化した際、前記弾性変形体の弾性係数が大きな値に切り替わるように構成されているようにした。
【0007】
かかる構成の脚柱構造体は、通常時(地震が起きていない状態)あるいはL1地震発生時には、降伏ヒューズ部材によって芯柱と筒状外柱とが繋がれており、鉄道や車両が走行する上部工を適切に支持する剛性を有する構造を有している。そして、上部工から作用する鉛直方向の力と水平方向の力をそれぞれ芯柱と筒状外柱とで分担するようにして、その上部工を好適に支持することができる優れた荷重保持性能を備えている。
また、所定の限度を超える大きさの地震動であるL2地震発生時に降伏ヒューズ部材が破壊された脚柱構造体は、弾性変形体が弾性変形することによってその固有周期を長周期化する柔構造に変化することで、芯柱および筒状外柱の過大変位を防止して、脚柱構造体が損傷することを防ぐことができる優れた地震時耐荷性能を備えている。
【0008】
更に、この脚柱構造体における降伏ヒューズ部材が破壊された後、弾性変形体が弾性変形することによって当該脚柱構造体の固有周期を長周期化させる際に、その弾性変形体は地震動による脚柱構造体の振幅が所定値より小さい状態から所定値より大きい状態に変化した際、前記弾性変形体の弾性係数が大きな値に切り替わるので、脚柱構造体が過度に共振するのを抑制することができる。
具体的に、弾性変形体が弾性変形することによって脚柱構造体の固有周期を長周期化させる際に、地盤の固有周期と脚柱構造体の固有周期とが一致して共振現象が起こり、脚柱構造体の揺れが増幅されてしまった場合に、弾性変形体の弾性係数が切り替わることで、脚柱構造体はその固有周期を地盤の固有周期からずらし、脚柱構造体が過度に共振するのを抑制する共振自己回避機能を備えている。
そして、弾性変形体の弾性係数が第1の値から、該第1の値よりも大きな第2の値に切り替わり、弾性変形体の弾性力が相対的に剛に変化すれば、脚柱構造体が共振するのを好適に治めることができる。
つまり、この脚柱構造体は、荷重保持性能と地震時耐荷性能を兼ね備え、さらに共振自己回避機能を備えた優れた構造物であり、鉄道橋や道路橋、高架橋などの脚柱に適用することができる。
【0009】
ここで「L1地震」とは、中規模の地震であって、その構造物の耐用年数中に一度以上は受ける可能性が高い地震動(供用期間中に複数回起こる地震動)を指す。
また「L2地震」とは、その構造物が将来に亘って受けることが予想される最強と考えられる地震動、想定しうる範囲内で最大規模の地震動を指す。
【0010】
また、望ましくは、
前記弾性変形体は、前記降伏ヒューズ部材が破壊された後、地震動による当該脚柱構造体が揺れると弾性変形する第1弾性部材と、前記振幅が所定値より大きい状態で弾性変形する第2弾性部材を有するようした。
地震動によって揺れる脚柱構造体の振幅がどのような値でも弾性変形する第1弾性部材と、その振幅が所定値より大きい状態で弾性変形する第2弾性部材を有している弾性変形体であれば、脚柱構造体の振幅が所定値より大きい状態になった際に弾性変形体の弾性係数が切り替わり、直ちに脚柱構造体が共振するのを抑制できる。
【0011】
また、望ましくは、
前記降伏ヒューズ部材は、上下に間隔を空けた複数箇所に取り付けられており、前記複数箇所毎に前記降伏ヒューズ部材が前記芯柱の外周面の周方向に所定間隔で複数配設されているようにした。
芯柱と筒状外柱の間に複数の降伏ヒューズ部材が取り付けられていて、上下に間隔を空けた複数箇所毎に降伏ヒューズ部材が芯柱の外周面に所定間隔に配設されていれば、芯柱と筒状外柱とをバランスよく適切に繋ぐことができるので、降伏ヒューズ部材が芯柱と筒状外柱とを一体的に繋いでいる状態において、脚柱構造体は上部工を好適に支持することができる。
【0012】
また、望ましくは、
前記弾性変形体は、上下に間隔を空けた複数箇所に取り付けられており、前記複数箇所毎に前記弾性変形体が前記芯柱の外周面の周方向に所定間隔で複数配設されているようにした。
芯柱と筒状外柱の間に複数の弾性変形体が取り付けられていて、上下に間隔を空けた複数箇所毎に弾性変形体が芯柱の外周面に所定間隔に配設されていれば、柱と筒状外柱とをバランスよく適切に繋ぐことができるので、降伏ヒューズ部材が地震動によって破壊された後、その地震動の入力方向によらず、複数の弾性変形体がそれぞれ弾性変形することで、入力地震動を好適に低減することや、脚柱構造体が過度に共振するのを抑制することができる。
【0013】
また、望ましくは、
前記芯柱と前記筒状外柱の間に取り付けられた粘性部材を備え、
前記粘性部材は、上下に間隔を空けた複数箇所に取り付けられており、前記複数箇所毎に前記粘性部材が前記芯柱の外周面の周方向に所定間隔で複数配設されているようにした。
芯柱と筒状外柱の間に複数の粘性部材が取り付けられていて、上下に間隔を空けた複数箇所毎に粘性部材が芯柱の外周面に所定間隔に配設されていれば、地震時応答を低減する際の減衰性能を向上させることができる。
【0014】
また、望ましくは、
前記芯柱は円柱形状を有し、前記筒状外柱は円筒形状を有しているようにした。
芯柱が円柱形状を有し、筒状外柱が円筒形状を有していれば、脚柱構造体は地震動の入力方向によらず、優れた荷重保持性能および地震時耐荷性能や共振自己回避機能を発揮できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過度に共振するのを抑制できる脚柱構造体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る脚柱構造体の実施形態について詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0018】
図1(a)は脚柱構造体100を示す側面図、
図1(b)は脚柱構造体100を示す断面図である。この脚柱構造体100は、鉄道橋や道路橋、高架橋といった橋梁の上部工1を支持する構造物である。
【0019】
本実施形態の脚柱構造体100は、
図1(a)(b)、
図2、
図3に示すように、上端部10uが上部工1に接合されて鉛直向きに立設された芯柱10と、芯柱10が軸心に配置されて上部工1とは接合されない筒状外柱20と、芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けられた降伏ヒューズ部材30と、芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けられた弾性変形体40と、を備えている。
この脚柱構造体100は、基礎杭2aが設けられているフーチング2上に立設されて、上部工1を支持している。なお、芯柱10の下端部10dはフーチング2に接合されている。
【0020】
芯柱10は、円柱形状を有する柱体であり、例えば、鋼管10aの内部にコンクリートなどの固化材料10bを充填したコンクリート充填鋼管構造(CFT;Concrete Filled Steel Tube)の柱体である。
この芯柱10は、後述するように、複数の芯材11(
図11参照)を軸方向に積み重ねるようにして形成することができる。
例えば、
図4に示すように、芯材11の上部には第1接続部11iが設けられ、芯材11の下部には第2接続部11oが設けられており、第1接続部11iと第2接続部11oとが嵌合することで、芯材11を積み重ねることが可能になっている。
なお、芯柱10の上端部10uは、上部工1にピン接合されていることが好ましい。
【0021】
筒状外柱20は、円筒形状を有する筒体であり、芯柱10よりも径が大きい鋼管などからなる筒体である。
この筒状外柱20は、後述するように、複数の筒材21(
図11参照)の軸心を合わせるように積み重ねて形成することができる。
例えば、
図4に示すように、筒材21の上部には第1接続部21iが設けられ、筒材21の下部には第2接続部21oが設けられており、第1接続部21iと第2接続部21oとが嵌合することで、筒材21を好適に積み重ねることが可能になっている。
【0022】
降伏ヒューズ部材30は、上下に間隔を空けた複数箇所(
図1では4箇所)に取り付けられており、その複数箇所毎に複数(
図2では4つ)の降伏ヒューズ部材30が芯柱10の外周面の周方向に等間隔に配設されている。
降伏ヒューズ部材30は、所定の限度を超える大きさの地震動によって破壊されるように設計された脆性部材であり、一端が芯柱10の外周面に固定され、他端が筒状外柱20の内周面に固定されている。例えば、降伏ヒューズ部材30は、L1地震によっては破壊されず、L2地震によって破壊される強度を有している。所定の強度を有している降伏ヒューズ部材30が、芯柱10と筒状外柱20とを繋いでいる状態では、芯柱10と筒状外柱20が一体的に挙動するようになっている。
【0023】
この降伏ヒューズ部材30は、例えば後述するように、芯柱10と筒状外柱20の間で膨張可能な袋体30a内にモルタルなどの固化材料30bを充填して形成することができる。袋体30a内に固化材料30bを充填して形成した降伏ヒューズ部材30であれば、降伏ヒューズ部材30が破壊された際に袋体30aから固化材料30bが飛散することを防止できるので、降伏ヒューズ部材30の破片などによって弾性変形体40が伸縮する動作が妨げられることがない。
【0024】
また、
図2に示すように、当初4つの降伏ヒューズ部材30が芯柱10の外周面に等間隔に配設されている場合、各降伏ヒューズ部材30間に予め袋体30aを取り付けておくことが好ましい。
降伏ヒューズ部材30間に所定数(ここでは4つ)の袋体30aを予め取り付けておけば、例えば、L2地震が発生して降伏ヒューズ部材30が破壊された後、袋体30a内に固化材料30bを充填して新たな降伏ヒューズ部材30を速やかに形成することができるので、脚柱構造体100の仮復旧を迅速に行うことができる。
【0025】
また、降伏ヒューズ部材30は、袋体30a内に固化材料30bを充填してなるものに限らない。
例えば、モルタルなどの固化材料を型枠に流し込む製法で、
図2に示したような扇形の降伏ヒューズ部材30を予め形成しておき、その降伏ヒューズ部材30を芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けるようにしてもよい。
モルタルなどの固化材料で作製された降伏ヒューズ部材30であれば、袋体30aの有無によらず、地震動によって破壊される際、複数の降伏ヒューズ部材30の破壊が段階的に進んでいき、脚柱構造体100の固有周期が段階的に変化していくので、その固有周期が急激に長周期化することはない。
つまり、モルタル材料からなる降伏ヒューズ部材30を用いていれば、脚柱構造体100の固有周期が急激に長周期化することを防ぐことができる。例えば、脚柱構造体100の固有周期が急激に長周期化してしまうと、後述する橋梁構造200が不安定になってしまうので、脚柱構造体100の固有周期を急激に変化させないようにすることが好ましい。
【0026】
また、モルタル材料からなる降伏ヒューズ部材30は、扇形であることに限らない。
例えば、
図5に示すように、切欠31が形成されている降伏ヒューズ部材30でもよい。
降伏ヒューズ部材30に形成する切欠31の位置や大きさを調整したり、あるいは降伏ヒューズ部材30の形状を調整したりすることによって、その降伏ヒューズ部材30の強度を調整することができる。
所定の強度で破壊されるように調整された降伏ヒューズ部材30であれば、その降伏ヒューズ部材30が地震動によって破壊されるタイミングを調節することができるので、地震動による複数の降伏ヒューズ部材30の破壊の進行を調節するようにして、脚柱構造体100の固有周期が段階的に変化するのをコントロールすることが可能になる。
【0027】
また、降伏ヒューズ部材30は、モルタルなどの固化材料からなることに限らず、例えば、鋼棒や鋼板など鋼材からなる降伏ヒューズ部材30であってもよい。鋼材からなる降伏ヒューズ部材30であれば、地震動に対し要求される強度を高い精度で調整することができる。また、鋼材からなる降伏ヒューズ部材30であれば、破壊された際に生じる破片がモルタル材料のものに比べて細かくなり難く、飛散対策を講じる必要がない。
例えば、
図6に示すように、円柱状の鋼棒を用いた降伏ヒューズ部材30を芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けてもよい。この降伏ヒューズ部材30の一端が芯柱10の外周面に突き当てられ、他端が筒状外柱20の内周面に突き当てられており、その一端と他端の少なくとも一方が突き当てられた箇所に溶接によって固定されている。
この降伏ヒューズ部材30は、所定の限度を超える大きさの地震動によって折れ曲がり、破壊されるようになっている。例えば、降伏ヒューズ部材30(鋼棒)の太さを調整することによって、その降伏ヒューズ部材30の強度を調整することができ、その降伏ヒューズ部材30が地震動によって破壊されるタイミングを調節することができる。
また、鋼棒の所定箇所に切欠や括れなどを設けておくことで、所望する箇所で降伏ヒューズ部材30が折れ曲がるようにすることができる。
【0028】
また、
図7に示すように、鋼板を用いた降伏ヒューズ部材30を芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けてもよい。この降伏ヒューズ部材30は、芯柱10に一端側が溶接などによって固定された第1鋼板32と、筒状外柱20に一端側が溶接などによって固定された2枚の第2鋼板33と、第1鋼板32と第2鋼板33を接合しているボルト34を有している。具体的に、第1鋼板32の一部が2枚の第2鋼板33に挟まれており、その3枚の鋼板を貫くように接合部材であるボルト34が取り付けられている。
この降伏ヒューズ部材30は、所定の限度を超える大きさの地震動によってボルト34が剪断されて、破壊されるようになっている。例えば、ボルト34の太さや本数を調整することによって、その降伏ヒューズ部材30の強度を調整することができ、その降伏ヒューズ部材30が地震動によって破壊されるタイミングを調節することができる。
【0029】
なお、後述するように降伏ヒューズ部材30が破壊された後、芯柱10と筒状外柱20とを繋ぐ弾性変形体40が弾性変形することによって当該脚柱構造体100の固有周期を長周期化させて入力地震動を低減するようになっている。
ここで
図7に示した降伏ヒューズ部材30の場合、ボルト34が剪断された後、弾性変形体40が弾性変形することに加え、第1鋼板32と第2鋼板33とが摺接することで鋼板間に摩擦が生じるので、その摩擦による減衰効果で脚柱構造体100の揺れが収まり易くなっている。
【0030】
また、ボルト34の素材として粘りのある鋼材を用いることで、地震動によってボルト34が剪断されるまで、そのボルト34を展延させることができる。つまり、所定の限度を超える大きさの地震動によってボルト34が剪断されるまで、そのボルト34が粘性ダンパーのように機能し、入力地震動を低減させることができる。
また、ボルト34が剪断される際、第1鋼板32や第2鋼板33の一部が塑性変形することもある。この第1鋼板32や第2鋼板33の一部が塑性変形する際の展延によっても入力地震動を低減させることができる。
【0031】
弾性変形体40は、上下に間隔を空けた複数箇所(
図1では4箇所)に取り付けられており、その複数箇所毎に複数(
図3では4つ)の弾性変形体40が芯柱10の外周面の周方向に等間隔に配設されている。
この弾性変形体40は、
図3に示すように、芯柱10に当接している板ばね43と、一端が筒状外柱20の内周面に固定され、他端が板ばね43に固定されている第1弾性部材41と、一端が筒状外柱20の内周面に固定され、他端が自由端部とされている第2弾性部材42とを備えており、芯柱10と筒状外柱20の間で弾性変形可能に取り付けられている。但し、降伏ヒューズ部材30が芯柱10と筒状外柱20とを繋いでいる状態では、芯柱10と筒状外柱20は一体的に挙動するので、芯柱10が筒状外柱20の軸心から殆どずれることはなく、弾性変形体40は殆ど弾性変形しない。
つまり、降伏ヒューズ部材30が芯柱10と筒状外柱20を繋いでいる状態で、各弾性変形体40は、第1弾性部材41が伸長する付勢力によって板ばね43を芯柱10に突き当てるようにして、芯柱10と筒状外柱20を繋いでいる。
なお、第1弾性部材41と第2弾性部材42のばね定数は異なり、それぞれ異なる弾性力を有している。具体的に、第2弾性部材42は第1弾性部材41よりもばね定数が大きい硬いばねである。
【0032】
そして、芯柱10と筒状外柱20とを繋ぐ降伏ヒューズ部材30が破壊された後、芯柱10と筒状外柱20とが別体となってそれぞれが個別に挙動する際に、芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けられている弾性変形体40が弾性変形するようになり、剛性を有する構造であった脚柱構造体100が柔構造に変化する。ここでいう柔構造とは、一般的な免震で考えられるような剛性の低い構造変形を期待するものではなく、脚柱構造体100の過大変形や残留変位を抑えるための構造変形を許容するものであり、弾性変形体40の強度(ばね定数)は小さ過ぎないよう設定する必要がある。
【0033】
ここで、降伏ヒューズ部材30が破壊された後、芯柱10と筒状外柱20とが別体となってそれぞれが個別に挙動する際に弾性変形する弾性変形体40の機能について説明する。
【0034】
脚柱構造体100における降伏ヒューズ部材30が所定の限度を超える大きさの地震動によって破壊され、柔構造になった脚柱構造体100が揺れ、芯柱10と筒状外柱20とが個別に挙動し、芯柱10が筒状外柱20の軸心からずれるのに対応し、例えば
図8に示すように、弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによって当該脚柱構造体100の固有周期を長周期化させて入力地震動を低減するようになっている。
例えば、降伏ヒューズ部材30が破壊された脚柱構造体100は、弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによってその固有周期を長周期化する柔構造に変化することで、芯柱10および筒状外柱20の過大変位を防止して、芯柱10や筒状外柱20が損傷することを防ぐようになっている。
【0035】
一方、弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによって、脚柱構造体100の固有周期を長周期化する際に、地盤の固有周期と脚柱構造体100の固有周期とが一致するなどした場合に共振現象が起こり、脚柱構造体100の揺れが増幅されてしまい、その振幅が大きくなり過ぎてしまうことがある。
そこで、脚柱構造体100の振幅が大きくなり過ぎた場合には、第1弾性部材41に加えて第2弾性部材42が弾性変形することで弾性変形体40の弾性係数を切り替え、脚柱構造体100が過度に共振するのを抑制するようになっている。
【0036】
例えば、
図8に示した状態よりも脚柱構造体100の振幅が大きくなると、弾性変形体40の第2弾性部材42も弾性変形するようになる。
具体的に、脚柱構造体100の振幅がより一層大きくなると、芯柱10が筒状外柱20の軸心から更にずれるように揺れて、芯柱10と筒状外柱20の間隙がより一層狭くなる箇所が生じる。そして、
図9に示すように、芯柱10と筒状外柱20の間隙が一層狭くなる箇所では、弾性変形体40の第2弾性部材42の自由端部が板ばね43に当接し、更にその板ばね43に押し込まれるように第2弾性部材42が収縮するようになっている。
【0037】
このように弾性変形体40は、地震動によって揺れる脚柱構造体100の振幅がどのような値でも弾性変形する第1弾性部材41と、脚柱構造体100の振幅が所定値より大きい状態で弾性変形する第2弾性部材42を有している。
そして、第2弾性部材42の自由端部が板ばね43に当接することがない脚柱構造体100の振幅が所定値より小さい状態では、弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形し、少なくとも1つの第2弾性部材42の自由端部が板ばね43に当接することになる脚柱構造体100の振幅が所定値より大きい状態では、弾性変形体40の第1弾性部材41と第2弾性部材42とが弾性変形するようになっている。
つまり、脚柱構造体100の振幅が所定値より小さい状態では、弾性変形体40は第1弾性部材41の弾性力に起因する弾性係数(第1の値)を有する弾性体として機能し、脚柱構造体100の振幅が所定値より大きい状態では、弾性変形体40は第1弾性部材41と第2弾性部材42の弾性力に起因する弾性係数(第2の値)を有する弾性体として機能するようになっている。
【0038】
このように第1弾性部材41と第2弾性部材42を有する弾性変形体40は、脚柱構造体100の振幅が所定値より小さい状態と大きい状態とで異なる弾性係数に切り替わるようになっている。特に、第2弾性部材42の方が第1弾性部材41よりも硬いばねであるので、脚柱構造体100の振幅が所定値より大きい状態に変化した際、弾性変形体40の弾性係数が第1の値から、該第1の値よりも大きな第2の値に切り替わるようになっている。
このような弾性変形体40であれば、地盤の固有周期と脚柱構造体100の固有周期とが一致して共振現象が起こり、脚柱構造体100の揺れが増幅されてしまった場合でも、脚柱構造体100の振幅が所定値より大きい状態に変化した際に弾性変形体40の弾性係数が切り替わることで、脚柱構造体100の固有周期を地盤の固有周期からずらすことができるので、脚柱構造体100が過度に共振するのを抑制することができる。
【0039】
なお、
図9に示すように、板ばね43が筒状外柱20の内周面に押し付けられた場合、板ばね43が弾性変形するようになっている。
脚柱構造体100の振幅が所定値より大きい状態で、弾性変形体40の第1弾性部材41と第2弾性部材42と板ばね43とが弾性変形する場合でも、同様に弾性変形体40の弾性係数が切り替わるので、脚柱構造体100の固有周期を地盤の固有周期からずらすことができ、脚柱構造体100が過度に共振するのを抑制することができる。
【0040】
また、
図10に示すように、粘性部材45を弾性変形体40と併用してもよい。ここで粘性部材45とは、振動を減衰させる機能を有する部材である。例えば、粘性体からなる粘性部材45を用いることができ、またダンパーも粘性部材45として用いることができる。
この粘性部材45を配設することで、地震時応答を低減する際の減衰性能を向上させることができる。粘性部材45は弾性変形体40と同様に、芯柱10の外周面の周方向に等間隔に複数(
図4では4つ)配設されている。
【0041】
以上のように、降伏ヒューズ部材30が芯柱10と筒状外柱20とを一体的に繋いでいる状態の脚柱構造体100では、上部工1に接合されている芯柱10が上部工1を支持することによる軸力(鉛直荷重)を負担し、上部工1に接合されていない筒状外柱20が降伏ヒューズ部材30及び弾性変形体40を介して芯柱10から伝達される水平力(水平荷重)を負担するように構成されている。
具体的には、通常時(地震が起きていない状態)あるいはL1地震発生時において、降伏ヒューズ部材30によって芯柱10と筒状外柱20とが繋がれている脚柱構造体100は、鉄道や車両が走行する上部工1を適切に支持する剛性を有する構造を有しており、上部工1から作用する鉛直方向の力と水平方向の力をそれぞれ芯柱10と筒状外柱20とで分担するようにして、上部工1を良好に支持することができる。
こうして、上部工1の荷重を芯柱10と筒状外柱20とで負担して、上部工1を好適に支持することができる脚柱構造体100は、優れた荷重保持性能を備えた構造物であるといえる。
【0042】
また、この脚柱構造体100における降伏ヒューズ部材30が所定の限度を超える大きさの地震動によって破壊された後は、芯柱10と筒状外柱20との間に取り付けられている弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによって当該脚柱構造体100の固有周期を長周期化させて入力地震動を低減するように構成されている。
具体的には、L2地震発生時に降伏ヒューズ部材30が破壊された脚柱構造体100は、弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによってその固有周期を長周期化することによって、芯柱10および筒状外柱20の過大変位を防止して、芯柱10や筒状外柱20が損傷することを防ぐことができる。
こうして、降伏ヒューズ部材30が破壊された後、芯柱10と筒状外柱20との間で弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによる免震機能を有する脚柱構造体100は、優れた地震時耐荷性能を備えた構造物であるといえる。
【0043】
更に、この脚柱構造体100における降伏ヒューズ部材30が破壊された後、弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによって当該脚柱構造体100の固有周期を長周期化させる際に、地盤の固有周期と脚柱構造体100の固有周期とが一致して共振現象が起こって脚柱構造体100の揺れが増幅されてしまった場合に、弾性変形体40の弾性係数が切り替わり、脚柱構造体100の固有周期を地盤の固有周期からずらすように構成されている。
具体的には、脚柱構造体100の振幅が所定値より小さい状態では弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形し、脚柱構造体100の振幅が所定値より大きい状態になると弾性変形体40の第1弾性部材41と第2弾性部材42とが弾性変形するように切り替わり、弾性変形体40の弾性係数が切り替わることで、脚柱構造体100の固有周期を地盤の固有周期からずらすようにして、脚柱構造体100が過度に共振するのを抑制することができる。
こうして、弾性変形体40の弾性係数が切り替わることで、その固有周期を切り替え、過度に共振するのを抑制する機能を有する脚柱構造体100は、共振自己回避機能を備えた構造物であるといえる。
つまり、この脚柱構造体100は、荷重保持性能と地震時耐荷性能を兼ね備え、さらに共振自己回避機能を備えている。
【0044】
次に、本実施形態の脚柱構造体100の施工方法について説明する。
【0045】
(第1の施工方法)
第1の施工方法では、所定数の脚柱ユニット100aを準備する。
第1の施工方法で用いる脚柱ユニット100aは、
図11(a)に示すように、芯材11を軸心に配置させた筒材21と、芯材11の外面と筒材21の内面とを繋いだ状態に取り付けられた降伏ヒューズ部材30と、芯材11の外面と筒材21の内面とを繋いだ状態に取り付けられた弾性変形体40と、を備えている。
芯材11は比較的細い鋼管材からなり、筒材21は芯材11よりも径が大きい鋼管材からなる。
【0046】
まず、
図11(a)に示すように、脚柱ユニット100aをクレーンなどによってフーチング2上に積み重ね、複数の芯材11からなる鋼管10aと、複数の筒体21からなる筒状外柱20を形成する。
脚柱ユニット100aを積み重ねる際、複数の芯材11はその軸方向に積み重ね、複数の筒材21はその軸心を合わせるように積み重ねるようにする。
【0047】
次いで、
図11(b)に示すように、鋼管10a内にコンクリートなどの固化材料10bを充填し、その固化材料10bを硬化させて芯柱10を形成する。
こうして脚柱構造体100が構築される。
【0048】
(第2の施工方法)
第2の施工方法では、所定数の脚柱ユニット100bを準備する。
第2の施工方法で用いる脚柱ユニット100bは、
図12(a)に示すように、芯材11を軸心に配置させた筒材21と、芯材11の外面と筒材21の内面とを繋いだ状態に取り付けられた弾性変形体40と、芯材11と筒材21の間で膨張可能な袋体30aと、を備えている。
芯材11は比較的細い鋼管材からなり、筒材21は芯材11よりも径が大きい鋼管材からなる。
【0049】
まず、
図12(a)に示すように、脚柱ユニット100bをクレーンなどによってフーチング2上に積み重ね、複数の芯材11からなる鋼管10aと、複数の筒体21からなる筒状外柱20を形成する。
脚柱ユニット100bを積み重ねる際、複数の芯材11はその軸方向に積み重ね、複数の筒材21はその軸心を合わせるように積み重ねるようにする。
【0050】
次いで、
図12(b)に示すように、鋼管10a内にコンクリートなどの固化材料10bを充填し、その固化材料10bを硬化させて芯柱10を形成する。
【0051】
次いで、
図12(c)に示すように、袋体30a内にモルタルなどの固化材料30bを充填して硬化させてなる降伏ヒューズ部材30を、芯柱としての鋼管10aの外面と筒状外柱20の内面とを繋いだ状態に形成する。なお、固化材料30bは、筒状外柱20(筒材21)に形成されている図示しない注入口を通じて袋体30a内に充填される。
こうして脚柱構造体100が構築される。
【0052】
(第3の施工方法)
第3の施工方法では、所定数の芯材11と、所定数の脚柱ユニット100cを準備する。
第3の施工方法で用いる芯材11は、工場などで予め製造された鉄筋コンクリート製の芯材(PC材)である。
また、第3の施工方法で用いる脚柱ユニット100cは、
図13(b)に示すように、筒材21と、筒材21の内面に収縮した状態で取り付けられた弾性変形体40と、筒材21の内面側で膨張可能な袋体30aと、を備えている。筒材21は芯材11よりも径が大きい鋼管材からなる。
【0053】
まず、
図13(a)に示すように、PC製の芯材11をクレーンなどによってフーチング2上に積み重ね、特に複数の芯材11を軸方向に積み重ねるようにして、複数の芯材11からなる芯柱10を形成する。なお、芯材11には、積み重なったもの同士が互いに嵌合する接続部が設けられている。
【0054】
次いで、
図13(b)に示すように、芯柱10を軸心に配置させるように、複数の筒材21を積み重ねて筒状外柱20を形成する。ここでは、筒材21を含む脚柱ユニット100cをクレーンなどによってフーチング2上に積み重ね、芯柱10が軸心に配置された筒状外柱20を形成する。
また、収縮した状態に拘束されている弾性変形体40を解放し、芯材11の外面と筒材21の内面とを繋いだ状態に弾性変形体40を取り付けるようにする。なお、予め筒材21の内面に弾性変形体40を取り付けておかずに、脚柱ユニット100c(筒材21)を積み重ねる度に、芯柱10の外面と筒状外柱20(筒材21)の内面とを繋ぐ弾性変形体40を取り付けるようにしてもよい。
【0055】
次いで、
図13(c)に示すように、袋体30a内にモルタルなどの固化材料30bを充填して硬化させてなる降伏ヒューズ部材30を、芯柱10の外面と筒状外柱20の内面とを繋いだ状態に取り付ける。なお、固化材料30bは、筒状外柱20(筒材21)に形成されている図示しない注入口を通じて袋体30a内に充填される。
こうして脚柱構造体100が構築される。
【0056】
このように、本実施形態の脚柱構造体100は、複数の脚柱ユニット100a,100bを積み重ねることや、複数のPC製の芯材11と複数の脚柱ユニット100cを積み重ねることで構築することができ、鉄筋コンクリート構造の脚柱を施工するときのような配筋が不要であるので、施工性に優れており、比較的短期間での施工が可能になる。
【0057】
なお、脚柱構造体100の施工方法は、上述した第1〜第3の施工方法に限られるものではない。
例えば、第1,第2の施工方法の用いた脚柱ユニット100a,100bにおける鋼管材の芯材11が、PC製の芯材11であってもよい。
また、第3の施工方法の変形例として、鋼管材の芯材11を積み重ねて形成した鋼管10a内に固化材料10bを充填して芯柱10を形成した後に、脚柱ユニット100cを積み重ねるようにしてもよい。
【0058】
次に、この脚柱構造体100が上部工1を支持してなる橋梁構造200について説明する。
図14は、橋梁構造200を示す側面図である。
【0059】
本実施形態の橋梁構造200は、
図14に示すように、上部工1の延在方向に沿って並設された複数の脚柱構造体100と、脚柱構造体100の筒状外柱20の上部同士を繋いでいる梁部材50と、を備えている。
具体的に、橋梁構造200は、上端部が上部工1に接合されて、その上部工1の延在方向に沿って並設されている複数の鉛直向きの芯柱10と、芯柱10がそれぞれの軸心に配置されて上部工1とは接合されない複数の筒状外柱20と、隣接する筒状外柱20間に取り付けられて筒状外柱20の上部同士を繋いでいる梁部材50と、芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けられた降伏ヒューズ部材30と、芯柱10と筒状外柱20の間に取り付けられた弾性変形体40と、を備えている。
【0060】
また、この橋梁構造200は、複数の芯柱10と上部工1とで構成される第1の構造体200aと、複数の筒状外柱20と梁部材50とで構成される第2の構造体200bと、を有している。
【0061】
梁部材50は、例えばH形鋼などの鋼材であり、梁部材50の両端が筒状外柱20の上部にボルトなどによって接続されている。
この梁部材50が筒状外柱20の上部を繋ぐ構造をとることで、橋梁構造200における水平方向の剛性が増すので、橋梁構造200の荷重保持性能が向上する。また、梁部材50によって橋梁構造200の水平方向の剛性が増す分、上部工1をスリム化することが可能になる。
【0062】
そして、この橋梁構造200における降伏ヒューズ部材30が芯柱10と筒状外柱20とを一体的に繋いでいる状態では、上部工1に接合されている芯柱10が上部工1を支持することによる軸力(鉛直荷重)を負担し、上部工1に接合されていない筒状外柱20が降伏ヒューズ部材30及び弾性変形体40を介して芯柱10から伝達される水平力(水平荷重)を負担するように構成されている。
具体的には、通常時(地震が起きていない状態)あるいはL1地震発生時において、降伏ヒューズ部材30によって芯柱10と筒状外柱20とが繋がれている脚柱構造体100を備えた橋梁構造200は、鉄道や車両が走行する上部工1を適切に支持する剛性を有する構造を有しており、上部工1から作用する鉛直方向の力と水平方向の力をそれぞれ芯柱10と筒状外柱20とで分担するようにして、上部工1を良好に支持することができる。
【0063】
また、この橋梁構造200における降伏ヒューズ部材30が所定の限度を超える大きさの地震動によって破壊された後は、芯柱10と筒状外柱20とを繋ぐ弾性変形体40が弾性変形することによって当該橋梁構造200の固有周期を長周期化させて入力地震動を低減するように構成されている。
具体的には、L2地震発生時に降伏ヒューズ部材30が破壊された脚柱構造体100を備えた橋梁構造200は、弾性変形体40が弾性変形することによってその固有周期を長周期化する柔構造に変化することで、芯柱10および筒状外柱20の過大変位を防止して、芯柱10や筒状外柱20が損傷することを防ぐことができる。
【0064】
更に、この橋梁構造200における降伏ヒューズ部材30が破壊された後、弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形することによって当該橋梁構造200の固有周期を長周期化させる際に、地盤の固有周期と橋梁構造200の固有周期とが一致して共振現象が起こって橋梁構造200の揺れが増幅されてしまった場合に、弾性変形体40の弾性係数が切り替わり、脚柱構造体100および橋梁構造200の固有周期を地盤の固有周期からずらすように構成されている。
具体的には、脚柱構造体100および橋梁構造200の振幅が所定値より小さい状態では弾性変形体40の第1弾性部材41が弾性変形し、脚柱構造体100および橋梁構造200の振幅が所定値より大きい状態になると弾性変形体40の第1弾性部材41と第2弾性部材42とが弾性変形するように切り替わり、弾性変形体40の弾性係数が切り替わることで、脚柱構造体100および橋梁構造200の固有周期を地盤の固有周期からずらすようにして、脚柱構造体100および橋梁構造200が過度に共振するのを抑制することができる。こうして、弾性変形体40の弾性係数が切り替わることで、その固有周期を切り替え、過度に共振するのを抑制する機能を有する橋梁構造200は、共振自己回避機能を備えた構造物であるといえる。
つまり、この橋梁構造200は、荷重保持性能と地震時耐荷性能を兼ね備え、さらに共振自己回避機能を備えている。
【0065】
特に、橋梁構造200は、第1の構造体200aと第2の構造体200bとを有しており、降伏ヒューズ部材30が地震動によって破壊された後、第1の構造体200aと第2の構造体200bとは互いの挙動を相殺するように、それぞれ異なる振動特性で挙動するようになっている。
具体的には、芯柱10と筒状外柱20とを繋ぐ降伏ヒューズ部材30が破壊された後、芯柱10と筒状外柱20とが別体となってそれぞれが個別に挙動することで、
図14に示すように、芯柱10を含む第1の構造体200aと、筒状外柱20を含む第2の構造体200bとはそれぞれ異なる固有周期で挙動して、互いの挙動を相殺するようになる。
【0066】
このように、橋梁構造200の第1の構造体200aと第2の構造体200bとが互いの挙動を相殺することによって、第1の構造体200aと第2の構造体200bの揺れが収まり易くなっているので、第1の構造体200aと第2の構造体200bの大変形を抑制することができ、橋梁構造200が損傷することを防ぐことができる。
つまり、降伏ヒューズ部材30が破壊された後、芯柱10と筒状外柱20とを繋ぐ弾性変形体40が弾性変形することによる免震機能を有する脚柱構造体100を備え、それぞれ異なる振動特性で挙動する第1の構造体200aと第2の構造体200bを有する橋梁構造200は、優れた地震時耐荷性能を備えた構造物であるといえる。
【0067】
また、少なくとも一対の脚柱構造体100を備えた橋梁構造200であれば、脚柱構造体100の曲げモーメントの発生を抑えることができる。
例えば、降伏ヒューズ部材30が破壊された後、第1の構造体200aと第2の構造体200bがそれぞれの振動特性で挙動する際、隣接する芯柱10は上部工1によって曲げモーメントの発生が抑えられ、隣接する筒状外柱20は梁部材50によって曲げモーメントの発生が抑えられるので、芯柱10および筒状外柱20の過大変位を好適に防いで、芯柱10や筒状外柱20の損傷を防ぐことができる。
つまり、橋梁構造200が単柱式であって1つの脚柱構造体100で上部工1を支える場合よりも、少なくとも一対(2つ)の脚柱構造体100、好ましくは3つ以上の脚柱構造体100を備えた橋梁構造200の方が、より安定した構造となって優れた地震時耐荷性能を発揮することができる。
【0068】
なお、本発明の橋梁構造200は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、
図15に示すように、上部工1の下面に摺接する位置に梁部材50が設けられている橋梁構造200であってもよい。
このような橋梁構造200であれば、降伏ヒューズ部材30が地震動によって破壊された後、第1の構造体200aと第2の構造体200bとがそれぞれ異なる振動特性で挙動した際、梁部材50と上部工1の境界面に摩擦抵抗が生じる。
つまり、芯柱10と筒状外柱20とを繋ぐ降伏ヒューズ部材30が破壊された後、芯柱10を含む第1の構造体200aと、筒状外柱20を含む第2の構造体200bとがそれぞれ異なる固有周期で挙動する際、梁部材50と上部工1とが摺接してその境界面に摩擦抵抗が生じるので、第1の構造体200aと第2の構造体200bの揺れがより一層収まり易くなっている。
【0069】
このように、梁部材50と上部工1の境界面に作用する摩擦抵抗によって、第1の構造体200aと第2の構造体200bの揺れが収まり易くなっているので、第1の構造体200aと第2の構造体200bの大変形を抑制することができ、橋梁構造200が損傷することを防ぐことができる。
このような橋梁構造200も、優れた地震時耐荷性能を有している。
【0070】
なお、以上の実施の形態においては、脚柱構造体100を橋梁構造200の支持柱として用いた場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、脚柱構造体100を壁式脚柱や杭などにも適用してもよい。
【0071】
また、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。