(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態1について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1はパワースライドドア装置を備えた車両を示す概要図を、
図2は
図1のパワースライドドア装置を示す斜視図を、
図3はローラ装置を拡大して示す
図2のA矢視図を、
図4はピン,ケーブルエンドおよびブッシュを拡大して示す
図3のB矢視図を、
図5は
図4のケーブルエンドを示す斜視図を、
図6は
図4のブッシュを示す斜視図をそれぞれ示している。
【0020】
図1に示す車両10は、ワンボックスタイプの乗用車である。車両10は車体11を備え、当該車体11の側部には乗降用の開口部12が形成されている。開口部12は、開閉体としてのスライドドア13によって開閉される。スライドドア13は、車体11の側部に固定されたガイドレール(レール)14に沿って車両前方および車両後方に移動して、これにより開口部12が開閉される。
【0021】
ガイドレール14は、車体11の上下方向に沿う略中央部において、開口部12の後方にあるアウターパネル15に固定されている。ここで、アウターパネル15は、車体11の骨格をなす剛性部材を形成するものである。ガイドレール14は、車体11の側部に沿って車両前方および車両後方に延びる直線部14aと、当該直線部14aの車両前方側の端部から車室内側(図中下側)へ向けて湾曲する引き込み部14bとを備えている。
【0022】
一方、スライドドア13の車両後方側の端部には、ガイドレール14上を移動するローラ装置30が設けられている。これにより、スライドドア13はローラ装置30によって支持され、ローラ装置30はガイドレール14に沿って移動するようになっている。具体的には、ローラ装置30がガイドレール14の直線部14aにおける車両後方側の端部に移動されると、スライドドア13は全開位置(図中実線の状態)となる。これに対し、ローラ装置30がガイドレール14の引き込み部14bに案内されると、スライドドア13は開口部12を閉塞しつつ車室内側に引き込まれて全閉位置(図中二点鎖線の状態)となる。
【0023】
ただし、ガイドレール14の他にも、車体11の開口部12の上下部分(アッパー部およびロワー部)にガイドレール(図示せず)がそれぞれ設けられている。そして、これらの図示しないガイドレールに対応して、スライドドア13の車両前方側の端部の上下部分にも、それぞれローラ装置(図示せず)が設けられている。つまり、スライドドア13は、車体11に対して合計3つのローラ装置で支持され、これにより、がたつくこと無くスムーズに開閉可能となっている。
【0024】
図1および
図2に示すように、車両10には、スライドドア13を自動的に開閉するためのパワースライドドア装置20が搭載されている。
図2は、パワースライドドア装置20を、車室内側から見た斜視図である。
【0025】
パワースライドドア装置20は、スライドドア13の開閉方向(車両前方および車両後方)に沿って配索された開側ケーブル21と閉側ケーブル22とを備えている。すなわち、パワースライドドア装置20は、所謂ケーブル式の開閉装置となっている。
【0026】
また、パワースライドドア装置20は、開側ケーブル21および閉側ケーブル22を駆動するための駆動源23を備えており、当該駆動源23は、車体11の側部に搭載されている。ここで、駆動源23は、ガイドレール14の延在方向に沿う略中央部分に配置され、アウターパネル15の車室内側に固定されている。
【0027】
駆動源23から車両後方側へ引き出された開側ケーブル21は、ガイドレール14の車両後方の端部に配置されたリヤ側プーリユニット24により、その移動方向、つまり開側ケーブル21の配索方向が変換されている。そして、開側ケーブル21の先端部分は、ガイドレール14の車両後方側からスライドドア13を支持するローラ装置30に連結されている。このように、リヤ側プーリユニット24は、駆動源23とローラ装置30(スライドドア13)との間で、開側ケーブル21の移動方向を変換している。
【0028】
一方、駆動源23から車両前方側へ引き出された閉側ケーブル22は、ガイドレール14の車両前方の端部に配置されたフロント側プーリユニット25により、その移動方向、つまり閉側ケーブル22の配索方向が変換されている。そして、閉側ケーブル22の先端部分は、ガイドレール14の車両前方側からスライドドア13を支持するローラ装置30に接続されている。このように、フロント側プーリユニット25は、駆動源23とローラ装置30(スライドドア13)との間で、閉側ケーブル22の移動方向を変換している。
【0029】
駆動源23と各プーリユニット24,25との間には、各ケーブル21,22のスムーズな移動を案内するための一対のアウターケーシング26,27がそれぞれ設けられている。各アウターケーシング26,27は可撓性を有する樹脂材料によりチューブ状に形成されている。そして、各ケーブル21,22は、それぞれ対応するアウターケーシング26,27に挿通され、各アウターケーシング26,27の内部において移動自在となっている。
【0030】
駆動源23は、モータ本体28と、当該モータ本体28の出力により各ケーブル21,22を駆動する駆動部29とを有している。モータ本体28には、例えば、ブラシレスモータ等の正逆方向に制御可能な電動モータ(詳細図示せず)が用いられる。駆動部29は、減速機構およびクラッチ機構(何れも図示せず)を介してモータ本体28の出力が伝達されるドラム(図示せず)を備えている。そして、ドラムには、各ケーブル21,22の基端部分がそれぞれ固定されるとともに、各ケーブル21,22が互いに逆向きとなるよう巻き掛けられている。
【0031】
これにより、ドラムが回転されると各ケーブル21,22が互いに反対方向に駆動される。具体的には、ドラムを正転駆動させると、開側ケーブル21が巻き取られるとともに閉側ケーブル22が送り出される。これによりスライドドア13が車両後方側へ牽引されて開口部12(
図1参照)が開口される。これとは逆に、ドラムを逆転駆動させると、閉側ケーブル22が巻き取られるとともに開側ケーブル21が送り出される。これによりスライドドア13が車両前方側へ牽引されて開口部12が閉塞される。なお、スライドドア13を手動で開閉する場合には、駆動部29に設けたクラッチ機構が解放されて、モータ本体28とドラムとの間の動力伝達経路が遮断されるようになっている。
【0032】
図3に示すように、ローラ装置30は、鋼板をプレス加工等することで階段状に屈曲されたブラケット31を備えている。ブラケット31は、本体部32とローラ支持部33とを有している。なお、詳細には図示しないが、本体部32のローラ支持部33側とは反対側は、支持アーム13a(
図1参照)の先端部に揺動自在に支持されている。そして、支持アーム13aの基端側はスライドドア13に固定されている。これにより、ブラケット31は支持アーム13aを介してスライドドア13に取り付けられ、ひいてはローラ装置30は支持アーム13aを介してスライドドア13を支持するようになっている。
【0033】
ローラ支持部33は、本体部32の車両10の前後方向に沿って並べられた第1支持片33a,第2支持片33b,第3支持片33cを備えている。第1支持片33aは、本体部32の車両10の前後方向に沿う中央部に配置され、本体部32から車両10の上方(車高方向)に向けて延ばされている。第1支持片33aには、鋼材よりなる円柱状の第1ローラピン34の基端部が固定され、この第1ローラピン34は、車両10の車幅方向に延ばされている。そして、第1ローラピン34には、ガイドレール14(
図2参照)の内部で転動する大ローラ34aが回動自在に設けられている。
【0034】
第2支持片33bおよび第3支持片33cは、本体部32の車両10の前後方向に沿う第1支持片33aの両側に近接して配置されている。具体的には、第2支持片33bは車両10の後方側に配置され、第3支持片33cは車両10の前方側に配置されている。そして、第2支持片33bおよび第3支持片33cは、何れも本体部32から車両10の右方(車幅方向)に向けて延ばされている。つまり、第2支持片33bおよび第3支持片33cと、第1支持片33aとのなす角度は直角(90°)となっている。
【0035】
第2支持片33bおよび第3支持片33cには、鋼材よりなる円柱状の第2ローラピン(ピン)35および第3ローラピン(ピン)36の軸方向に沿う略中間部分が固定されている。これらのローラピン35,36は、何れも車両10の上下方向に延ばされており、すなわち、スライドドア13(
図1参照)の移動方向と交差する方向に突出されている。そして、各ローラピン35,36の基端側、つまり車両10の上方側には、ガイドレール14(
図2参照)の内部で転動する第1小ローラ35aおよび第2小ローラ36aがそれぞれ回動自在に設けられている。
【0036】
一方、第2ローラピン35および第3ローラピン36の先端側、つまり車両10の下方側には、各ローラピン35,36の径方向外側に部分的に突出された一対の第1抜け止め突起(抜け止め突起)35bおよび一対の第2抜け止め突起(抜け止め突起)36bが、それぞれ一体に設けられている。一対の第1抜け止め突起35bおよび一対の第2抜け止め突起36bは、第2ローラピン35および第3ローラピン36の軸心を挟んでそれぞれ対向配置され、その断面形状は半円形状に形成されている。このように、各ローラピン35,36は、何れも同様に形成されている。また、各抜け止め突起35b,36bの突出方向は、車両10の前後方向、つまりローラ装置30の移動方向となっている。
【0037】
スライドドア13を牽引する開側ケーブル21および閉側ケーブル22の先端部分(端部)には、
図4に示すようなケーブルエンド40およびブッシュ50が設けられ、これらケーブルエンド40およびブッシュ50は、第2ローラピン35および第3ローラピン36にそれぞれ回動自在に装着されている。なお、各ケーブル21,22に対応して設けられるケーブルエンドおよびブッシュは、何れも同様の形状であるため、開側ケーブル21に対応するケーブルエンド40およびブッシュ50を代表して、その詳細について説明する。なお、
図3においては、第3ローラピン36の形状を分かり易くすべく、閉側ケーブル22(
図2参照)に対応するケーブルエンドおよびブッシュの図示を省略している。また、ブッシュ50の形状を分かり易くすべく、全ての図面のブッシュ50に網掛けを施している。
【0038】
図4および
図5に示すように、ケーブルエンド40は、溶融したアルミ材料を射出成形等することで所定形状に形成され、環状のケーブルエンド本体部41と、平面視で略台形形状に形成されたケーブル固定部42とを備えている。ここで、ケーブル固定部42の内部には、開側ケーブル21の先端部分がインサート成形により固定されている。より具体的には、開側ケーブル21の先端部分には、開側ケーブル21の線径よりも大きい径の大径部(図示せず)が一体に設けられ、これにより、開側ケーブル21のケーブル固定部42からの抜け止めがなされている。
【0039】
ケーブルエンド本体部41の径方向内側には、第2ローラピン35が挿通される挿通孔43が設けられている。この挿通孔43の中心部分は、開側ケーブル21の延長上に配置されている。すなわち、挿通孔43の中心部分は、
図4の一点鎖線C上に配置されている。そして、挿通孔43は、当該挿通孔43の中心部分を挟んで対向される一対の第1内壁部(内壁)43aおよび一対の第2内壁部(内壁)43bによって形成されている。
【0040】
一対の第1内壁部43aは、それぞれ円弧形状に形成され、ケーブルエンド40を第2ローラピン35に取り付けた状態(
図4に示す状態)で、開側ケーブル21の延長上、つまり一点鎖線C上に配置されている。そして、挿通孔43の中心部分を通り、一対の第1内壁部43aを結ぶ線分の長さ寸法L1は、第2ローラピン35の軸心を通り、一対の第1抜け止め突起35bの先端部分を結ぶ線分の長さ寸法L2よりも短く設定されている(L1<L2)。
【0041】
これにより、
図4に示すように、第2ローラピン35の軸方向からの平面視で、第1抜け止め突起35bおよびケーブルエンド本体部41は、重ね代W1をもって互いに重ねられている。これにより、仮に、ブッシュ50が無くても、ケーブルエンド40を第2ローラピン35に取り付けた状態(
図4に示す状態)から、ケーブルエンド40が第2ローラピン35から抜け落ちることは無い。
【0042】
一対の第2内壁部43bは、一対の第1内壁部43aと同様に、それぞれ円弧形状に形成されている。ただし、第2内壁部43bの半径寸法は、第1内壁部43aの半径寸法よりも小径とされている。また、一対の第2内壁部43bは、一対の第1内壁部43aよりも径方向外側に膨出されるとともに、挿通孔43の中心部分を通り、一対の第2内壁部43bを結ぶ線分の長さ寸法L3は、第2ローラピン35の軸心を通り、一対の第1抜け止め突起35bの先端部分を結ぶ線分の長さ寸法L2よりも長く設定されている(L3>L2)。
【0043】
これにより、開側ケーブル21の延在方向を一点鎖線Cの延在方向と交差させるように、ケーブルエンド40を第2ローラピン35を中心に略90°相対回転させ、
図4の二点鎖線(想像線)で示すように、一対の第1抜け止め突起35bを一対の第2内壁部43bにそれぞれ対向させることで、第2ローラピン35の軸方向からの平面視で、第1抜け止め突起35bとケーブルエンド本体部41とが重ならなくなる。したがって、
図4の二点鎖線に示すようにすることで、第1抜け止め突起35bの第2内壁部43bに対する通過が許容され、ケーブルエンド40を第2ローラピン35に対して着脱できるようになる。
【0044】
一対の第2内壁部43bは、ケーブルエンド40を第2ローラピン35に取り付けた状態(
図4の状態)で、開側ケーブル21の移動方向と交差する方向、つまり一点鎖線Cの延在方向と交差する方向から互いに対向されている。したがって、第2内壁部43bには、スライドドア13(
図1参照)の牽引時において、当該第2内壁部43bを拡げる方向に応力が作用する。これに対し、第2内壁部43bは円弧形状に形成されているため、ケーブルエンド40の全体に応力を分散させることができる。また、一対の第1内壁部43aおよび一対の第2内壁部43bは、挿通孔43の周方向に交互に並んで配置されるとともに、互いに滑らかに接続するようにしている。これにより、挿通孔43の径方向内側において応力が集中する部分を、さらに無くすようにしている。
【0045】
図5に示すように、ケーブルエンド40の開側ケーブル21と挿通孔43との間には、ケーブルエンド本体部41からケーブル固定部42に向けて延びる回り止め凹部(ケーブルエンド側凹部)44が設けられている。回り止め凹部44は、ケーブルエンド40の表面TFおよび裏面BFの双方に、第2ローラピン35の軸方向に窪むように形成されている(図示では一方のみを示す)。ここで、回り止め凹部44は、ブッシュ50の回り止め凸部52b(
図6参照)とともに、本発明における、ケーブルエンドとブッシュとの間に設けられる回り止め機構を構成している。
【0046】
図4および
図6に示すように、第2ローラピン35とケーブルエンド40との間には、プラスチック等の樹脂材料により略円筒形状に形成されたブッシュ50が設けられている。ブッシュ50は、アウトサート成形等によりケーブルエンド40の外表面に一体に設けられ、互いに分離不能な「非分解式」となっている。また、ブッシュ50は、鋼材よりなる第2ローラピン35とアルミ製のケーブルエンド40とが直接接触しないようにしており、これにより、異種金属が接触して互いに腐食する「電食」の発生を防止している。さらに、ブッシュ50は、金属よりも柔らかいプラスチック製であり、クッション材(緩衝材)としての機能も備えている。よって、第2ローラピン35に対するケーブルエンド40のがたつきが抑えられて、異音の発生等を効果的に抑えている。
【0047】
ブッシュ50は、ケーブルエンド40の挿通孔43の径方向内側に装着される筒状本体(当接部)51を備えている。この筒状本体51には、当該筒状本体51の中心部分を挟んで対向された一対の切欠部51aが設けられている。一対の切欠部51aは、ブッシュ50をケーブルエンド40に装着した状態(
図4に示す状態)で、挿通孔43の一対の第2内壁部43b、つまり挿通孔43の内壁の一部分を外部に露出させている。すなわち、切欠部51aは、
図4の二点鎖線で示すように、第2ローラピン35の先端側に設けた一対の第1抜け止め突起35bの通過を許容するようになっている。
【0048】
これに対し、筒状本体51は、ブッシュ50をケーブルエンド40に装着した状態(
図4に示す状態)で、挿通孔43の一対の第1内壁部43a、つまり挿通孔43の内壁の他の部分を被覆している。そして、筒状本体51の径方向に沿う厚み寸法は、第2ローラピン35とケーブルエンド40との間を略埋める寸法とされている。これにより、ブッシュ50の第2ローラピン35に対するがたつきが抑えられている。
【0049】
図6に示すように、筒状本体51の軸方向両側には、筒状本体51の径方向外側に突出された一対のフランジ部52が一体に設けられている。筒状本体51の軸方向に沿うフランジ部52の厚み寸法は、筒状本体51の径方向に沿う厚み寸法よりも薄い厚み寸法とされ、ケーブルエンド40の厚み寸法を増大させること無く、ケーブルエンド40の表面TFおよび裏面BFの一部を被覆している。これにより、鋼板よりなるブラケット31(
図3参照)とアルミ製のケーブルエンド40とが直接接触するのを防止して、「電食」が発生するのを防止している。
【0050】
また、一対のフランジ部52には、当該フランジ部52の径方向外側に突出するようにして、舌片部52aがそれぞれ設けられている。一対の舌片部52aは、何れも同じ方向に向けられている。より具体的には、一対の舌片部52aは、
図4の一点鎖線Cに沿って延在され、かつケーブルエンド40の表面TFおよび裏面BFの双方に設けた回り止め凹部44をそれぞれ被覆している。そして、一対の舌片部52aには、一対の回り止め凹部44に入り込んで凹凸係合される回り止め凸部(ブッシュ側凸部)52bが、第2ローラピン35の軸方向に突出するようそれぞれ一体に設けられている。これにより、ブッシュ50のケーブルエンド40に対する相対回転が防止されて、ケーブルエンド40の第2内壁部43bとブッシュ50の切欠部51aとの位置関係が保持される。
【0051】
図4および
図6に示すように、筒状本体51の軸方向に沿うケーブルエンド40の表面TF側には、当接面53が形成されている。この当接面53には、第2ローラピン35の軸方向から、一対の第1抜け止め突起35bが引っ掛けられて当接するようになっている。これにより、ケーブルエンド40およびブッシュ50を第2ローラピン35に装着した状態(
図4に示す状態)で、ケーブルエンド40の第2ローラピン35に対する抜け止めがなされる。ここで、筒状本体51の径方向に沿う厚み寸法は、第2ローラピン35とケーブルエンド40との間を略埋める寸法であるため、第2ローラピン35の軸方向からの平面視で、第1抜け止め突起35bと、当接面53およびフランジ部52とは、十分な重ね代W2(W2>W1)をもって互いに重ねられている。
【0052】
以上詳述したように、本実施の形態1に係るローラ装置30によれば、第2ローラピン35の先端側に、当該第2ローラピン35の径方向外側に部分的に突出された第1抜け止め突起35bを設け、ケーブルエンド40に、第1抜け止め突起35bの通過を許容する円弧形状の第2内壁部43bを備えた挿通孔43を設け、ブッシュ50に、第2内壁部43bを外部に露出させて第1抜け止め突起35bの通過を許容する切欠部51aと、第1内壁部43aを被覆するとともに、第1抜け止め突起35bが第2ローラピン35の軸方向から当接される筒状本体51とを設けた。
【0053】
これにより、開側ケーブル21を牽引してスライドドア13を移動させたとしても、ケーブルエンド40の挿通孔43における第2内壁部43bの部分が円弧形状であるため、ケーブルエンド40に部分的に応力が集中しないようにして、ケーブルエンド40の全体に応力を分散させることができる。したがって、ケーブルエンド40の体格を大きくすること無く、ケーブルエンド40の剛性を高めることができ、ひいてはローラ装置30のメンテナンス周期を延ばすことが可能となる。ケーブルエンド40の第2ローラピン35からの抜け止めはブッシュ50を介して行われるが、ケーブルエンド40は小型軽量であり、かつ第2ローラピン35の軸方向には大きな負荷が掛からないため、十分な抜け強度を確保することができる。
【0054】
また、本実施の形態1に係るローラ装置30によれば、第1抜け止め突起35bおよびケーブルエンド40を、第2ローラピン35の軸方向からの平面視で、互いに重ね代W1をもって重ねたので、ケーブルエンド40を第2ローラピン35に取り付けた状態(
図4に示す状態)から、ケーブルエンド40が第2ローラピン35から抜け落ちるのを、より確実に防止することができる。
【0055】
さらに、本実施の形態1に係るローラ装置30によれば、ケーブルエンド40とブッシュ50との間に、互いの相対回転を防止する回り止め機構(回り止め凹部44および回り止め凸部52b)を設けたので、ケーブルエンド40の第2内壁部43bとブッシュ50の切欠部51aとの位置関係を保持することができ、ケーブルエンド40およびブッシュ50の第2ローラピン35への装着作業を容易に行うことができる。
【0056】
次に、本発明の実施の形態2について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図7は実施の形態2に係るケーブルエンドおよびブッシュの表側を示す斜視図を、
図8は
図7のケーブルエンドおよびブッシュの裏側を示す斜視図をそれぞれ示している。
【0058】
図7および
図8に示すように、実施の形態2のケーブルエンド60では、実施の形態1の略台形形状のケーブル固定部42(
図5参照)に換えて、ケーブルエンド本体部41の径方向外側に、略直方体形状のケーブル固定部61を設けている。このケーブル固定部61は、第2ローラピン35(
図3参照)の径方向外側に突出されており、本発明における回り止め突起を構成している。つまり、ケーブル固定部61は、開側ケーブル21の先端部分を固定する機能に加えて、ケーブルエンド60に対するブッシュ70の相対回転を防止する機能を備えている。
【0059】
実施の形態2のブッシュ70では、実施の形態1に対して、筒状本体51の軸方向一側(ケーブルエンド本体部41の裏面BF側)のフランジ部を省略するとともに、筒状本体51の軸方向一側に一対の係合爪72を設けている。これらの係合爪72は、ケーブルエンド本体部41の裏面BFに対して、第2ローラピン35の軸方向から引っ掛けられている。そして、一対の係合爪72を互いに近接させて筒状本体51を弾性変形させることで、一対の係合爪72が挿通孔43を通過できるようになり、ひいてはブッシュ70をケーブルエンド60から外せるようになる。このように、実施の形態2においては、ブッシュ70がケーブルエンド60に対して着脱自在となっている。
【0060】
また、筒状本体51の軸方向他側(ケーブルエンド本体部41の表面TF側)には、ケーブルエンド60の表面TFの略全面を被覆するフランジ部73が設けられている。より具体的には、フランジ部73は、ケーブルエンド本体部41の表面TFを被覆する、略環状に形成された第1被覆部73aと、ケーブル固定部61の表面TFを被覆する、略長方形形状に形成された第2被覆部73bとを備えている。
【0061】
また、第2被覆部73bには、ケーブルエンド60の厚み方向に突出された一対の当接壁部73cが設けられている。これらの当接壁部73cは、開側ケーブル21を挟んで互いに対向されており、ケーブル固定部61を、開側ケーブル21の延在方向と交差する方向から挟むようにして配置されている。つまり、一対の当接壁部73cは、ケーブル固定部61に第2ローラピン35の周方向から当接されるものであり、本発明における当接突起を構成している。すなわち、実施の形態2においては、ケーブル固定部61と一対の当接壁部73cとによって、本発明における回り止め機構を構成している。
【0062】
さらに、一対の当接壁部73cの先端側には、開側ケーブル21側に向けて延在された長尺突起73dがそれぞれ設けられている。これらの長尺突起73dの先端側は、その厚み寸法が先端側に行くに連れて徐々に薄くなるように形成され、かつ開側ケーブル21を跨ぐ長さに設定されている。これにより、一対の長尺突起73dの先端側は、開側ケーブル21を跨ぐ部分において互いに重ねられている。これにより、開側ケーブル21のケーブル固定部61寄りの部分が、第2被覆部73b,一対の当接壁部73c,一対の長尺突起73dによって包囲されている。
【0063】
なお、一対の長尺突起73dは、一対の係合爪72と同様に、ブッシュ70のケーブルエンド60からの脱落を防止する機能を備えている。また、一対の長尺突起73dにおいても、それぞれ弾性変形可能となっている。そして、ブッシュ70をケーブルエンド60に対して着脱するには、一対の長尺突起73dを弾性変形させれば良く、これにより一対の長尺突起73dの間を開側ケーブル21が通過できるようになる。
【0064】
以上詳述したように、実施の形態2においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態2においては、ブッシュ70をケーブルエンド60に対して着脱自在としたので、例えば、ブッシュ70が摩耗した場合等において、ブッシュ70のみを交換することができ、ひいてはメンテナンスコストの低減を図ることができる。
【0065】
次に、本発明の実施の形態3について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
図9は実施の形態3に係るケーブルエンドおよびブッシュの表側を示す斜視図を示している。
【0067】
図9に示すように、実施の形態3のケーブルエンド80では、実施の形態1の一対の回り止め凹部44(
図5参照)に換えて、ケーブルエンド本体部41の径方向外側で、かつ開側ケーブル21側とは反対側に、ケーブルエンド側平面部81を設けている。このケーブルエンド側平面部81は、第2ローラピン35(
図3参照)の軸方向と交差する方向に延ばされている。
【0068】
これに対し、実施の形態3のブッシュ90では、実施の形態1の一対の舌片部52aおよび一対の回り止め凸部52b(
図6参照)に換えて、ブッシュ側平面部91aを有する板状の橋渡し部91を設けている。橋渡し部91は、ケーブルエンド80の厚み方向に延び、ブッシュ90のフランジ部52同士を接続している。そして、橋渡し部91の内側、つまり筒状本体51側に、ケーブルエンド側平面部81に対して面接触されるブッシュ側平面部91aが配置されている。つまり、ブッシュ側平面部91aは、第2ローラピン35の軸方向と交差する方向に延ばされている。
【0069】
これにより、ケーブルエンド80に対するブッシュ90の相対回転が防止される。ここで、実施の形態3においては、ケーブルエンド側平面部81とブッシュ側平面部91aとによって、本発明における回り止め機構を構成している。
【0070】
以上詳述したように、実施の形態3においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。
【0071】
次に、本発明の実施の形態4について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態3と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0072】
図10は実施の形態4に係るケーブルエンドおよびブッシュの裏側を示す平面図を示している。
【0073】
図10に示すように、実施の形態4では、上述した実施の形態3に比して、ブッシュ100の構造のみが異なっている。具体的には、実施の形態4のブッシュ100では、実施の形態3のブッシュ90(
図9参照)に対して、ケーブルエンド80の裏面BF側にあるフランジ部を省略し、その代わりに、実施の形態2(
図8参照)と同様に、筒状本体51の軸方向一側に一対の係合爪101を設けている。そして、一対の係合爪101を互いに近接させて筒状本体51を弾性変形させることで、一対の係合爪101が挿通孔43を通過できるようになり、ひいてはブッシュ100をケーブルエンド80から外せるようになる。このように、実施の形態4においては、ブッシュ100がケーブルエンド80に対して着脱自在となっている。
【0074】
以上詳述したように、実施の形態4においても、上述した実施の形態3と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態4においては、ブッシュ100をケーブルエンド80に対して着脱自在としたので、例えば、ブッシュ100が摩耗した場合等において、ブッシュ100のみを交換することができ、ひいてはメンテナンスコストの低減を図ることができる。
【0075】
次に、本発明の実施の形態5について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0076】
図11は実施の形態5に係るピン,ケーブルエンドおよびブッシュを拡大して示す
図4に対応した図を示している。
【0077】
図11に示すように、実施の形態5の第2ローラピン(ピン)110では、実施の形態1の第2ローラピン35(
図4参照)に対して、第1抜け止め突起35bが1つのみ設けられている。また、第1抜け止め突起35bの突出方向が、開側ケーブル21の延在方向に沿う一点鎖線Cと交差する方向に向けられている。
【0078】
さらに、実施の形態5のケーブルエンド120では、実施の形態1のケーブルエンド40(
図4参照)に対して、一方の第2内壁部43bを省略するとともに、残ったもう1つの第2内壁部43bを、開側ケーブル21の延在方向に沿う一点鎖線C上に配置している。具体的には、第2内壁部43bを、挿通孔43の開側ケーブル21側に配置している。
【0079】
また、実施の形態5のケーブルエンド120では、実施の形態1のケーブルエンド40に設けた一対の回り止め凹部44(
図4参照)を省略し、円柱形状の一対の回り止め凸部(ケーブルエンド側凸部)121を設けている。ここで、回り止め凸部121は、第2ローラピン110の軸方向に突出するよう形成され、ケーブルエンド120の表面TFと裏面BF(図示せず)とにそれぞれ配置されている。これらの回り止め凸部121は、一点鎖線C上で、かつ挿通孔43と開側ケーブル21との間に配置されている。
【0080】
さらに、実施の形態5のブッシュ130では、実施の形態1のブッシュ50(
図4参照)に対して、一方の切欠部51aを省略するとともに、残ったもう1つの切欠部51aを、開側ケーブル21の延在方向に沿う一点鎖線C上に配置している。具体的には、切欠部51aを第2内壁部43bに対応させて、挿通孔43の開側ケーブル21側に配置している。
【0081】
また、実施の形態5のブッシュ130では、実施の形態1のブッシュ50に対して、一対の舌片部52aにそれぞれ設けた回り止め凸部52b(
図4参照)を省略し、一対の回り止め孔(ブッシュ側凹部)131を設けている。ここで、回り止め孔131は、第2ローラピン110の軸方向に窪むよう一対のフランジ部52にそれぞれ設けられ、一点鎖線C上で、かつ挿通孔43と開側ケーブル21との間に配置されている。そして、これらの回り止め孔131には、一対の回り止め凸部121がそれぞれ入り込んで凹凸係合されている。
【0082】
ここで、実施の形態5においては、ケーブルエンド120の回り止め凸部121と、ブッシュ130の回り止め孔131とによって、本発明における回り止め機構を構成している。
【0083】
以上詳述したように、実施の形態5においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態5においては、第2ローラピン110,ケーブルエンド120,ブッシュ130の形状をより簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、開側ケーブル21の移動方向である一点鎖線C上に第2内壁部43bが配置されるので、スライドドア13(
図1参照)の牽引時に、第2内壁部43bに掛かる負荷をより軽減することができる。
【0084】
次に、本発明の実施の形態6について、図面を用いて詳細に説明する。なお、上述した実施の形態1と同様の機能を有する部分については同一の記号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0085】
図12は実施の形態6に係るピン,ケーブルエンドおよびブッシュを拡大して示す
図4に対応した図を示している。
【0086】
図12に示すように、実施の形態6のケーブルエンド140では、実施の形態1のケーブルエンド40に設けた半径寸法の異なる2種類の第1内壁部43aおよび第2内壁部43b(
図4参照)を省略し、第1内壁部43aよりも大径の1つの内壁部(内壁)141を設けている。つまり、挿通孔43の断面形状は、その周方向に沿って凹凸の無い、単純な円弧形状(円形)となっている。ここで、内壁部141を第1内壁部43aよりも大径とすることで、内壁部141の内側を一対の第1抜け止め突起35bが通過できるようにしている。
【0087】
また、実施の形態6のブッシュ150では、実施の形態1のブッシュ50の筒状本体51(
図4参照)に換えて、当該筒状本体51の厚み寸法よりも厚い厚み寸法の筒状本体(当接部)151を設けている。これにより、第1抜け止め突起35bと筒状本体151との十分な重ね代W2を確保している。ここで、第2ローラピン35の軸方向からの平面視で、第1抜け止め突起35bおよびケーブルエンド本体部41は互いに重ねられていないが、第1抜け止め突起35bと筒状本体151とが十分な重ね代W2で重ねられているため、十分な抜け強度が確保されている。
【0088】
以上詳述したように、実施の形態6においても、上述した実施の形態1と同様の作用効果を奏することができる。これに加えて、実施の形態6においては、ケーブルエンド140の形状をより簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。また、挿通孔43の断面形状を、1つの内壁部141のみを有する単純な円形としたので、ケーブルエンド140の剛性をより高めることができるとともに、回り止め機構(回り止め凹部44および回り止め凸部52b)を省略することもできる。
【0089】
本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜、変形や改良等が可能であることは言うまでもない。例えば、上記各実施の形態では、ワンボックスタイプの車両10に設けられるスライドドア13を支持するローラ装置30を示したが、本発明はこれに限らず、例えば、鉄道車両等の開閉体を支持するローラ装置にも適用することができる。
【0090】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,配置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であって、上述のものに限定されるものではない。