(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563855
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ホイールカバー
(51)【国際特許分類】
B60B 7/06 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
B60B7/06 T
B60B7/06 C
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-105518(P2016-105518)
(22)【出願日】2016年5月26日
(65)【公開番号】特開2017-210150(P2017-210150A)
(43)【公開日】2017年11月30日
【審査請求日】2018年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591187977
【氏名又は名称】プラマック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000969
【氏名又は名称】特許業務法人中部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 倫彦
(72)【発明者】
【氏名】水井 昌伸
(72)【発明者】
【氏名】松井 範嘉
(72)【発明者】
【氏名】新田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山崎 博通
(72)【発明者】
【氏名】野路 泰生
【審査官】
高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−256360(JP,A)
【文献】
特開昭63−141801(JP,A)
【文献】
英国特許出願公開第02291017(GB,A)
【文献】
特表2014−518363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 7/04
7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に係合孔を備え、車両のホイールの意匠面を被覆するカバー本体と、
前記カバー本体の前記係合孔を貫通して、前記カバー本体を前記ホイールへ取り付けるカバー取付部材と、
を含むホイールカバーであって、
前記カバー取付部材が、
前記係合孔の周縁を支持する支持部と、前記ホイールの中央のハブ孔へ挿入される円筒部と、前記支持部と前記円筒部とをつなぐ連結部と、前記円筒部から前記円筒部の外周側に延出し、前記円筒部の外周面から離間した位置で前記ハブ孔の内周部へ当接する爪部と、を備える主取付部材と、
前記円筒部の前記外周面と前記爪部との間に挿入される挿入部を備える副取付部材と、
を含むことを特徴とするホイールカバー。
【請求項2】
前記主取付部材の前記爪部が、前記ハブ孔の前記内周部に形成された内周係合部と係合する請求項1に記載のホイールカバー。
【請求項3】
前記爪部が複数の爪部であり、
前記挿入部が、前記円筒部の前記外周面と前記複数の爪部の間に挿入される複数の挿入部である請求項1または2のいずれかに記載のホイールカバー。
【請求項4】
前記主取付部材が、第1係合部をさらに備え、
前記副取付部材が、前記挿入部が前記円筒部と前記爪部との間に挿入されたときに、前記第1係合部と係合するロック係合部をさらに備える請求項1から3のいずれかに記載のホイールカバー。
【請求項5】
前記副取付部材が、前記ロック係合部が形成された係止片を備え、
前記係止片が、前記ロック係合部より先端側に形成され、前記第1係合部と係合する仮止め係合部を備える請求項4に記載のホイールカバー。
【請求項6】
前記係止片が、前記仮止め係合部から前記ロック係合部に近づくにつれて厚みが増加するように形成される請求項5に記載のホイールカバー。
【請求項7】
前記副取付部材が、前記複数の挿入部を連結する基部を備える請求項5又は6に記載のホイールカバー。
【請求項8】
前記副取付部材が、前記係止片としての複数の係止片を備え、
前記基部が、前記複数の係止片を連結するものであり、
前記基部の前記複数の係止片が連結された部位に、複数の突起部が形成される請求項7に記載のホイールカバー。
【請求項9】
前記主取付部材が第1対向面をさらに備え、
前記副取付部材が、前記副取付部材を前記主取付部材に取り付けたときに前記第1対向面と対向する第2対向面をさらに備え、
前記第1対向面が第1ガイド片を備え、
前記第2対向面が前記第1ガイド片を案内する第2ガイド片を備える請求項1から8のいずれかに記載のホイールカバー。
【請求項10】
前記第1ガイド片が、前記第1対向面から前記第2対向面に向かって立設され、
前記第2ガイド片が、前記第2対向面から前記第1対向面に向かって立設される請求項9に記載のホイールカバー。
【請求項11】
前記主取付部材が、第1ガイド片を備え、
前記副取付部材が、前記第1ガイド片が挿入される貫通孔を備える請求項1から8のいずれかに記載のホイールカバー。
【請求項12】
前記円筒部が、前記車両の内側に開口する開口部を備える請求項1から11のいずれかに記載のホイールカバー。
【請求項13】
車両のホイールの意匠面を被覆するカバー本体と、前記カバー本体を支持する支持部、円筒部、前記支持部と前記円筒部をつなぐ連結部、前記円筒部から延出する爪部とを備え、前記カバー本体を支持する主取付部材と、前記円筒部の外周面と前記爪部との間に挿入される挿入部を備える副取付部材と、を含むホイールカバーの取付方法であって、
前記挿入部が前記円筒部の前記外周面と前記爪部の間に挿入されていない状態で、前記副取付部材を前記主取付部材に取り付ける工程と、
前記円筒部および前記爪部が前記カバー本体の中央の係合孔に挿入された状態となるように、前記主取付部材および前記副取付部材を前記カバー本体に取り付ける工程と、
前記円筒部および前記爪部が前記ホイールのハブ孔に挿入された状態となるように、前記カバー本体、前記主取付部材および前記副取付部材を前記ホイールに取り付ける工程と、
前記挿入部が前記円筒部の前記外周面と前記爪部との間に挿入された状態となるように、前記副取付部材を前記主取付部材に対して押し込む工程と、
を備える前記ホイールカバーの前記ホイールへの取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のホイールカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のホイールは、ブレーキディスクに雨風が当たって錆びることを防止するために、ホイールカバーで覆うことが必要である。その一例として、特許文献1、2には、それぞれ別部材である(i)カバー本体と、(ii)カバー本体をホイールに取り付ける取付部材とを含むホイールカバーが記載されている。
特許文献1に記載のカバー取付部材は、(a)センターオーナメント被取付穴に挿入される嵌合部と、(b)嵌合部の外周に複数設けられた係合突部とを含んでいる。係合突部が、センターオーナメント被取付孔の被係合部に係合することにより、カバー本体がホイールに取り付けられる。また、複数の係合突部にホイールの軸線と交差する方向の力が加えられ、ホイールカバーが外される。
特許文献2に記載のカバー取付部材は、(a)ハブ孔の内周溝と係合する係止爪と、(b) 係脱回動部に設けられ、係止溝と係合する当接部位とを含んでいる。係止爪が内周溝に係合した後、当接部位が係止溝に係合することにより、カバー本体がホイールに取り付けられる。また、係脱回動部が回動操作され、当接部位が係止溝より係脱することにより、ホイールカバーが外される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−28325号公報
【特許文献2】特開2006−256360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ホイールカバーは、上記のように構成されるものであるが、ホイールカバーの取付部材とホイールの内周係合部との間に水が入り込むことなどにより、ホイールカバーがホイールから外れやすくなる可能性があったため、改善の余地がある。
【0005】
本発明の課題は、ホイールから外れにくいホイールカバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るホイールカバーは、中央に係合孔を備え、車両のホイールの意匠面を被覆するカバー本体と、係合孔を貫通して、カバー本体をホイールへ取り付けるカバー取付部材とを含むものである。カバー取付部材は、主取付部材と副取付部材とを含む。
主取付部材は、係合孔の周縁を支持する支持部と、ホイールの中央のハブ孔へ挿入される円筒部と、支持部と円筒部とをつなぐ連結部と、円筒部から外周側に延出し、円筒部の外周面から離間する位置でハブ孔の内周部と当接する爪部とを備える。
副取付部材は、円筒部と爪部との間に挿入される挿入部を備える。
【発明の効果】
【0007】
ホイールカバーがホイールから外れるときに爪部に及ぼされる力を、挿入部と円筒部で受けることができる。これにより、ホイールカバーがホイールから外れにくくなる。
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施態様の記載、従来技術等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となりうるのである。
【0009】
(1)中央に係合孔を備え、車両のホイールの意匠面を被覆するカバー本体と、
前記カバー本体の前記係合孔を貫通して、前記カバー本体を前記ホイールへ取り付けるカバー取付部材と、
を含むホイールカバーであって、
前記カバー取付部材が、
前記係合孔の周縁を支持する支持部と、前記ホイールの中央のハブ孔へ挿入される円筒部と、前記支持部と前記円筒部とをつなぐ連結部と、前記円筒部から前記円筒部の外周側に延出し、前記円筒部の外周面から離間した位置で前記ハブ孔の内周部へ当接する爪部と、を備える主取付部材と、
前記円筒部の前記外周面と前記爪部との間に挿入される挿入部を備える副取付部材と、
を含むことを特徴とするホイールカバー。
【0010】
上記のように構成された前記ホイールカバーは、前記カバー取付部材によって前記カバー本体が前記ホイールに取り付けられることにより、前記ホイールに支持される。
前記副取付部材は、前記円筒部と前記爪部の間に挿入される前記挿入部を備えている。前記挿入部は、前記ハブ孔の内周部と当接する前記爪部と前記円筒部の間に配置される。この状態で、前記ホイールカバーを前記ホイールから外す力が前記ホイールカバーに及ぼされたときに、前記爪部を前記円筒部の前記外周面に近づけようとする力が発生する。前記挿入部は前記爪部と前記円筒部の間に配置されるため、前記爪部が内側に変形しようとする力を前記挿入部と前記円筒部が受ける。その結果、前記爪部の変形が抑制され、前記爪部と前記ハブ孔の内周部との当接が維持される。よって、前記ホイールカバーが前記ホイールから外れにくくなる。
上記のように、前記ハブ孔の内周部は、前記ハブ孔の内周面が前記爪部と当接するように構成されるものであるが、前記ハブ孔の内周面に前記爪部と係合する係合部が形成されるものでもよいし、前記爪部と係合する係合部が形成されないものでもよい。
また、前記支持部は、前記係合孔の周縁に当接する部位を備え、前記カバー本体を支持するものであればよく、その形状は限定されない。
前記爪部は、前記ハブ孔の内周部と当接することにより前記ホイールカバーが前記ホイールから外れる力に対して対抗する力を発生させるものであればよく、その対抗する力は、前記爪部と前記ハブ孔の内周部の係合によって発生するものに限定されず、前記爪部と前記ハブ孔の内周部との間の当接によって発生するものであってもよい。
前記挿入部は、前記爪部と前記円筒部の間に挿入されるものであるが、離間して配置された前記爪部と前記円筒部の間の空間の大きさに対応した大きさで構成される。例えば、前記挿入部の大きさは前記空間の大きさと略同一またはわずかに大きい大きさとされてもよいし、前記空間の大きさよりもわずかに小さい大きさとされてもよい。
【0011】
(2)前記主取付部材の前記爪部が、前記ハブ孔の前記内周部に形成された内周係合部と係合する(1)項に記載のホイールカバー。
【0012】
上記の構成においては、前記爪部が前記内周係合部と係合する。その結果、前記爪部が前記内周係合部のない前記ハブ孔の内周部に当接した場合に比べて、前記ホイールカバーが前記ホイールからより外れにくくなる。
【0013】
(3)前記爪部が複数の爪部であり、
前記挿入部が、前記円筒部の前記外周面と前記複数の爪部の間に挿入される複数の挿入部である(1)項または(2)項に記載のホイールカバー。
【0014】
上記のように構成したことにより、前記複数の挿入部は、前記複数の挿入部の各々の先端が前記複数の爪部と前記円筒部の前記外周面との間に挿入されたときに、前記ハブ孔の内周部から前記複数の挿入部の先端に及ぼされる力を複数個所で受けることができる。これにより、前記ホイールカバーが前記ホイールから外れにくくなる。
【0015】
(4)前記複数の挿入部と前記複数の爪部が、前記ハブ孔の内周方向において互いに等間隔で配置される(3)項に記載のホイールカバー。
【0016】
上記のように構成したことにより、前記複数の挿入部の各々の先端が前記複数の爪部と前記円筒部の前記外周面の間に挿入されたときに、前記複数の挿入部の各々の先端が前記ハブ孔の内周面に及ぼす力が均等になる。これにより、前記ホイールカバーが前記ホイールから外れにくくなる。
【0017】
(5)前記支持部が、フランジ状に形成される(1)項から(4)項のいずれかに記載のホイールカバー。
【0018】
上記のように構成したことにより、前記カバー本体が前記ホイールから外れるときにかかる力に対抗する力を前記係合孔の周縁に均等に及ぼすことができるため、前記ホイールカバーが前記ホイールから外れにくくなる。
【0019】
(6)前記主取付部材が、第1係合部をさらに備え、
前記副取付部材が、前記挿入部が前記円筒部と前記爪部との間に挿入されたときに、前記第1係合部と係合するロック係合部をさらに備える(1)項から(5)項のいずれかに記載のホイールカバー。
【0020】
上記のように構成したことにより、前記挿入部が前記円筒部の前記外周面と前記爪部の間に挿入されたときに、前記第1係合部と前記ロック係合部が係合することにより、前記副取付部材はその状態で保持されるため、前記副取付部材が前記主取付部材から外れにくくなる。よって前記ホイールカバーが前記ホイールから外れにくくなる。
【0021】
(7)前記副取付部材が、前記ロック係合部が形成された係止片を備え、
前記係止片が、前記ロック係合部より先端側に形成され、前記第1係合部と係合する仮止め係合部を備える(6)項に記載のホイールカバー。
【0022】
上記のように構成したことにより、前記副取付部材は、前記係止片の前記仮止め係合部が前記主取付部材の前記第1係合部と係合した状態(この状態を、前記副取付部材の仮止め状態と称する場合がある。)で前記主取付部材に保持される。これにより、前記主取付部材と前記副取付部材は、一つの部材として取り扱いやすくなる。
【0023】
(8)前記係止片が、前記仮止め係合部から前記ロック係合部に近づくにつれて厚みが増加するように形成される(7)項に記載のホイールカバー。
【0024】
上記のように構成したことにより、前記副取付部材の仮止め状態においては、前記副取付部材が前記主取付部材に近づく方向に移動することが許容される。一方、前記係止片が前記仮止め係合部から前記ロック係合部に近づくにつれて厚みが増加するように形成されているため、前記副取付部材が前記主取付部材から遠ざかる方向へ移動することが抑制される。すなわち、この状態においては、前記副取付部材が前記主取付部材から外れることが抑制されていればよく、前記副取付部材が前記主取付部材に近づく方向に移動することは許容されている。これにより、作業者が仮止め状態の前記副取付部材を前記主取付部材に近づく方向に押し込むことで、前記第1係合部が前記仮止め係合部から離間し前記ロック係合部と係合した状態へ切り替えることができる。
なお、前記仮止め係合部は、前記ロック係合部に近い側の突縁が前記係止片の先端側の突縁よりも小さく突出した形状としてもよいし、前記ロック係合部に近い側の突縁がなく先端側の突縁のみ突出している形状としてもよい。
【0025】
(9)前記副取付部材が、前記複数の挿入部を連結する基部を備える(3)項から(8)項のいずれかに記載のホイールカバー。
【0026】
上記のように構成したことにより、作業者が前記基部を引き抜くことで、前記複数の挿入部を前記主取付部材から一度に引き抜くことができる。
【0027】
(10)前記副取付部材が、前記係止片としての複数の係止片を備え、
前記基部が、前記複数の係止片を連結するものであり、
前記基部の前記複数の係止片が連結された部位に、複数の突起部が形成される(9)項に記載のホイールカバー。
【0028】
上記のように構成したことにより、作業者が前記複数の突起部を掴むと同時に前記複数の係止片を撓ませ、前記副取付部材を前記主取付部材から引き抜くことができる。これにより、前記副取付部材の前記主取付部材からの取外作業の効率を向上することができる。
【0029】
(11)前記主取付部材が第1対向面をさらに備え、
前記副取付部材が、前記副取付部材を前記主取付部材に取り付けたときに前記第1対向面と対向する第2対向面をさらに備え、
前記第1対向面が第1ガイド片を備え、
前記第2対向面が前記第1ガイド片を案内する第2ガイド片を備える(1)項から(10)項のいずれかに記載のホイールカバー。
【0030】
上記のように構成したことにより、前記副取付部材を前記主取付部材に取り付けるとき、前記第1ガイド片が前記第2ガイド片を案内する。これにより、前記挿入部が前記爪部に挿入される位置において、前記副取付部材が前記主取付部材に取り付けられる。
【0031】
(12)前記第1ガイド片が、前記第1対向面から前記第2対向面に向かって立設され、
前記第2ガイド片が、前記第2対向面から前記第1対向面に向かって立設される(11)項に記載のホイールカバー。
【0032】
上記のように構成したことにより、前記副取付部材を前記主取付部材に取り付けるとき、前記第2ガイド片は前記第1ガイド片と接触しながら前記第2対向面が前記第1対向面に近づく方向に案内される。そのため、前記挿入部が良好に前記円筒部の前記外周面と前記爪部の間に挿入される。
【0033】
(13)前記主取付部材が、第1ガイド片を備え、
前記副取付部材が、前記第1ガイド片が挿入される貫通孔を備える(1)項から(10)項のいずれかに記載のホイールカバー。
【0034】
上記のように構成したことにより、前記副取付部材の前記挿入部が前記主取付部材の前記円筒部の前記外周面と前記爪部の間に挿入された状態(この状態を前記副取付部材の取付状態と称する場合がある。)では、前記第1ガイド片が前記貫通孔を貫通した状態になる。この状態においては、前記第1ガイド片が前記基部の外部に露出した状態になる。これにより、作業者が、前記副取付部材の取付状態を目視で確認できる。
【0035】
(14)前記円筒部が、前記車両の内側に開口する開口部を備える(1)項から(13)項のいずれかに記載のホイールカバー。
【0036】
上記のように構成したことにより、ドライブシャフトが前記ハブ孔の内周部まで延設されている前記ホイールでは、前記ハブ孔に前記主取付部材を挿入したとき、前記ドライブシャフトの先端が前記円筒部の前記開口部に挿入される。一方、前記ドライブシャフトによって駆動されない、あるいは前記ドライブシャフトが前記ハブ孔の内周部まで延出していない前記ホイールでは、前記ハブ孔に前記主取付部材を挿入したとき、前記ドライブシャフトの先端が前記円筒部の開口部に挿入されない。
なお、前記円筒部が前記ハブ孔の内周部に挿入された状態において、前記円筒内周部に前記ドライブシャフトの先端が挿入されることは必須ではない。そのため、前記ホイールカバーは駆動輪および従動輪のいずれの前記ホイールにも取り付けることができる。
【0037】
(15)車両のホイールの意匠面を被覆するカバー本体と、支持部、円筒部、前記支持部と前記円筒部をつなぐ連結部、前記円筒部から延出する爪部とを備え、前記カバー本体を支持する主取付部材と、前記円筒部の外周面と前記爪部との間に挿入される挿入部を備える副取付部材と、を含むホイールカバーの取付方法であって、
前記挿入部が前記円筒部の前記外周面と前記爪部の間に挿入されていない状態で、前記副取付部材を前記主取付部材に取り付ける工程と、
前記円筒部および前記爪部が前記カバー本体の中央の係合孔に挿入された状態となるように、前記主取付部材および前記副取付部材を前記カバー本体に取り付ける工程と、
前記円筒部および前記爪部が前記ホイールのハブ孔に挿入された状態となるように、前記カバー本体、前記主取付部材および前記副取付部材を前記ホイールに取り付ける工程と、
前記挿入部が前記円筒部の前記外周面と前記爪部との間に挿入された状態となるように、前記副取付部材を前記主取付部材に対して押し込む工程と、
を備える前記ホイールカバーの前記ホイールへの取付方法。
【0038】
上記のように構成したことにより、前記副取付部材が前記主取付部材に予め取り付けられることで、前記副取付部材が前記主取付部材への仮止め状態となり、一つの部材として取り扱うことができる。
前記副取付部材が仮止めされた前記主取付部材を前記カバー本体に取り付けることにより、前記副取付部材、前記主取付部材および前記カバー本体が一体となった状態で、前記ホイールに取り付けることができる。
前記副取付部材、前記主取付部材および前記カバー本体が前記ホイールに取り付けられた状態では、前記爪部が前記ハブ孔の内周部に当接している。この状態で、前記副取付部材が前記主取付部材に近づく方向に押し込まれるとき、前記挿入部が前記爪部と前記円筒部の前記外周面の間に挿入される。これにより、前記ハブ孔の内周部から前記爪部に及ぼされる力が、前記挿入部と前記円筒部によって支えられる。その結果、前記ホイールから外れにくい前記ホイールカバーを前記ホイールに取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】第1の実施形態のホイールカバーが車輪に組み付けられた状態を示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態のホイールカバーを分解した状態を示す概略図である。
【
図3】
図1に示す車輪のIII−III断面図である。
【
図4】第1の実施形態のセンターピースを車両の外側から見た斜視図である。
【
図5】(a)第1の実施形態のストッパーを車両の内側から見た斜視図である。(b)上記ストッパーを車両の外側から見た斜視図である。
【
図6】(a)第1の実施形態のストッパーが、センターピースに取り付けられたときの車両外側から見た斜視図である。(b)ストッパーとセンターピースのVI−VI断面図である。(c)上記ストッパーとセンターピースの係合部の拡大図である。
【
図7】(a)第1の実施形態のストッパーが、センターピースに取り付けられたときの車両外側から見た斜視図である。(b)ストッパーとセンターピースのVII−VII断面図である。(c)上記ストッパーとセンターピースの係合部の拡大図である。
【
図8】(a)第1の実施形態のホイールカバーが取り付けられたホイールを車両の外側から見た斜視図である。(b)センターピース、ストッパーおよびオーナメント取付孔の断面図である。
【
図9】変形例のストッパーがセンターピースに取り付けられたときの係合部の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
本発明を実施するための実施形態について以下に詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のホイールカバー10が取り付けられた車輪16の正面図である。
図2は上記ホイールカバー10を分解して示した図である。ホイールカバー10は、カバー本体18とカバー取付部材20とを含む。カバー本体18は円盤状を成し、中央に係合孔22を備え、ホイール14の少なくとも一部を外側から覆う。車輪16は、タイヤ12とホイール14とを備える。
【0041】
カバー取付部材20は、センターピース24とストッパー26とを含み、カバー本体18をホイール14に取り付けるためのものである。カバー本体18とカバー取付部材20は、ホイール14に取り付けられた状態において、それぞれの中心軸がホイール軸Lと一致する。センターピース24は主取付部材の一例であり、ストッパー26は副取付部材の一例である。なお、本明細書において、「外側」、「内側」とは、車輪16が車両に組み付けられたときに、車輪16に対して車体が位置する側を「内側」、その反対側を「外側」とする。
図1においては、つまり、ホイール14の意匠面が外側であり、意匠面の反対側が内側であり、
図2においては、図中左方が内側であり、図中右方が外側である。また、本実施形態においては、車輪16は駆動輪である。
【0042】
図3は、上記車輪16を
図1中に示す一点鎖線III−IIIに沿って切断したときの断面図である。ホイール14はタイヤ保持部28を含む。タイヤ保持部28は、円盤状を成したディスク部30と、ディスク部30の外周に設けられた円環状のリム32とを含み、リム32にタイヤ12が保持される。ディスク部30の中央には、ホイール14の軸線に沿って延びた、オーナメントを取り付けるための孔である、オーナメント取付孔34が形成される。オーナメント取付孔34の内周には、オーナメントを取り付けるための内周係合部36が設けられている。内周係合部36は、オーナメント取付孔34の内周に一周にわたって形成された突条であり、後述の一対の係止爪部68の各々の2つの外周突部90と係合するものである。オーナメント取付孔34はハブ孔の一例である。
【0043】
ディスク部30は、内側にハブ38を取り付けるためのハブ取付部40と、ハブ取付部40とリム32を連結する5本のスポーク42とを含む。スポーク42は、互いに周方向に沿って等間隔に設けられる。
【0044】
ディスクブレーキ46は、ハブ38の内側に設けられ、ホイール14と一体的に回動するブレーキ回転体48と、摩擦部材50をブレーキ回転体48に押し付けるキャリパ52を備えている。車軸54は、内部にドライブシャフト56を含み、ハブ38とブレーキ回転体48の中央部分を貫通するように設けられている。ドライブシャフト56の先端は、オーナメント取付孔34に挿入される。
【0045】
[カバー本体]
ホイールカバー10は、車両のホイール14の外側の意匠面を被覆する。ホイールカバー10は、カバー取付部材20がカバー本体18の係合孔22を貫通して内周係合部36に係合することにより、ホイール14に取り付けられた状態(以下、単にホイールカバー10の取付状態と略称することがある)となる。カバー本体18は、円盤状の部材であり、ホイールカバー10の取付状態において、中央部が外側に向かって凸となるように湾曲している。そのため、ディスク部30とカバー本体18との間に空間ができ、ホイールカバー10はこの空間を利用して複数種類のホイールに取り付けることができる。また、
図2に示すように、カバー本体18の外側には、内周と外周の間に円環状のビード58が形成され、カバー本体18の外周の縁には、リム32に係合する外周爪60が形成される。カバー本体18は、ビード58を備えることにより剛性を確保し、カバー本体18は、外周爪60を備えることによりホイール14に保持される力を得る。
【0046】
[センターピース]
図4は、ホイールカバー10の取付状態において、センターピース24を車両の外側から見た斜視図である。センターピース24は、樹脂成形によって形成される部材である。センターピース24は、
図1に示すようにカバー本体18およびストッパー26とともにホイール14に取り付けられるものであるが、
図4ではセンターピース24の構造の明確化のためにセンターピース24のみを示すものとする。センターピース24は、フランジ部62、連結部64、円筒部66と係止爪部68とを含む。
【0047】
(フランジ部)
フランジ部62は、ホイールカバー10の取付状態において、ホイール軸上の一点を中心とする円環状に形成され、円環部63の最外縁から車両の内側に向かって延出する延出部65を備える。フランジ部62は、ホイールカバー10の取付状態において、カバー本体18の係合孔22の周縁部である係合孔周縁部70(
図2参照)と当接し、カバー本体18を支持するものである。また、ホイールカバー10の取付状態におけるフランジ部62の内側の面には、図示しない複数のフランジ補強骨部が設けられる。フランジ補強骨部は、円環部63の周方向に等間隔に設けられ、フランジ部62の剛性を強化する。フランジ部62は支持部の一例である。なお、支持部は係合孔周縁部70に重なる部分を備えていればよく、その形状はフランジ形状に限られない。
【0048】
(連結部)
連結部64は、板状部材であり、筒状側面部72と連結底面部74とを備える。連結部64は、フランジ部62と円筒部66との間に位置し、フランジ部62と円筒部66を連結するものである。
筒状側面部72は、フランジ部62の円環部63の内周縁から車両の内側に向かって連結底面部74まで延設され、筒状側面部72の内径が円環部63から連結底面部74に向かうにつれて段階的に小さくされている。センターピース24は、筒状側面部72の奥行き方向(車両の外側から内側に向かう方向)の長さを変えることにより、オーナメント取付孔34の深さの異なる複数種類のホイールに対応可能である。筒状側面部72には、互いに対向する一対の貫通孔76が形成され、円環部63の内周縁に近い端部に、4つの係合突部80が設けられる。4つの係合突部80は、それぞれが筒状側面部72の周方向に間隔を隔てて設けられる。
【0049】
連結底面部74は略矩形状の板状部材であり、ホイールカバー10の取付状態で、連結底面部74の車両外側の連結底面74aがホイール軸に垂直になるように設けられている。連結底面部74は、一対の被挿入孔82と十字突部84とを備える。矩形状の連結底面部74の一対の長辺は、それぞれ筒状側面部72に形成された一対の貫通孔76の内側の端部を画定する。連結底面部74の一対の短辺の近傍には、一対の被挿入孔82が形成される。また、一対の被挿入孔82は、連結底面部74を貫通する貫通孔であり、後述するストッパー26に設けられた一対の係止片98が通過するものである。十字突部84は、連結底面部74から車両の外側に向かって延設される。十字突部84の十字の形状は、連結底面74aに垂直な二つの板が互いに垂直に交差するものであるが、2つの板がそれ以外の角度で交わる形状のものであってもよい。連結底面74aは第1対向面の一例であり、十字突部84は第1ガイド片の一例である。
【0050】
(円筒部)
円筒部66は、ホイールカバー10の取付状態において、オーナメント取付孔34に挿入される位置に形成される。円筒部66は、連結底面部74の車両内側の面から車両の内側に向かって延び、ホイール軸を軸線とする円筒側面部88を備える。円筒側面部88の内部は中空であり、円筒側面部88の車両内側の端部は開口している。これにより、ホイールカバー10の取付状態において、ドライブシャフト56が円筒側面部88の内部に挿入される。
【0051】
(係止爪部)
一対の係止爪部68は、円筒側面部88の車両内側の端部から、径方向外側に延出した後、円筒側面部88の外周面との間に空間が形成されるように車両の外側に向かって延出する。ホイールカバー10の取付状態において、一対の係止爪部68は、オーナメント取付孔34の内周面に当接する。一対の係止爪部68は、オーナメント取付孔34の内周面の周方向に互いに180度間隔を隔てて設けられ、オーナメント取付孔34の内周面に沿った形状である。一対の係止爪部68は、それぞれ2つの外周突部90と摘子部92とを備える。
【0052】
2つの外周突部90は、後述の
図8(b)に示すように、一対の係止爪部68の車両内側の端部に、オーナメント取付孔34の内周面に沿って互いに間隔を隔てて設けられ、一対の係止爪部68からオーナメント取付孔34の内周面に向かって突出する。2つの外周突部90は、ホイールカバー10がホイール14に取り付けられたときに、オーナメント取付孔34の内周係合部36と係合するものである。摘子部92は、一対の係止爪部68の車両外側の端部に形成された、他の部分よりも幅が狭い部分である。摘子部92は、ホイールカバー10をホイール14から取り外すときに、オーナメント取付孔34からカバー取付部材20を引き抜くための持ち手となる。一対の係止爪部68は、爪部の一例である。
【0053】
[ストッパー]
図5(a)は、ホイールカバー10の取付状態において、ストッパー26を車両の内側から見た斜視図であり、(b)はストッパー26を車両の外側から見た斜視図である。なお、ストッパー26は、
図1に示すようにカバー本体18およびセンターピース24とともにホイール14に取り付けられるものであるが、
図5(a)および
図5(b)ではストッパー26の構造の明確化のためにストッパー26のみを示すものとする。
【0054】
図6(a)は、後述するストッパー26の仮止め爪部116が、センターピース24の一対の被挿入孔82に挿入されて連結底面部74と係合した状態(この状態を、ストッパー26の仮止め状態と称する場合がある。)での車両外側から見た斜視図である。
図6(b)は、上記の状態での断面図であり、このときのセンターピース24とストッパー26の相対的な位置関係を示す模式図である。
図6(c)は、
図6(b)において一点鎖線で囲ったセンターピース24とストッパー26の係合部の拡大図である。
【0055】
また、
図7(a)は、ホイールカバー10の取付状態でのセンターピース24とストッパー26を車両外側から見た斜視図である。
図7(b)は、上記の状態での断面図であり、センターピース24とストッパー26の相対的な位置関係を示す模式図である。
図7(c)は、
図7(b)において一点鎖線で囲ったセンターピース24とストッパー26の係合部の拡大図である。
図7(a)、
図7(b)および
図7(c)においては、カバー本体18とホイール14は省略している。
【0056】
ストッパー26は、センターピース24と異なる色の樹脂部材であり、矩形底面部94と挿入部96、係止片98、操作突部100、スリット部102およびガイド突部104とを備える。
【0057】
(矩形底面部)
図5(b)に示すように、矩形底面部94は、矩形の板状部材であり、矩形底面部94には、一対の挿入部96と一対の係止片98とが形成される。
図5(a)に示すように、矩形底面部94の内側の面は、矩形底面94aである。ストッパー26をセンターピース24に取り付けるとき、矩形底面94aは、センターピース24の連結底面74aと互いに対向する。矩形底面94aには、後述するガイド突部104が形成される。矩形底面部94は基部の一例であり、矩形底面94aは第2対向面の一例であり、ガイド突部104は第2ガイド片の一例である。
【0058】
(挿入部)
一対の挿入部96は、矩形底面部94の一対の短辺から内側に向かって、矩形底面部94に略垂直に延出する。ストッパー26の一対の挿入部96各々の先端には、センターピース24の2つの外周突部90に対応した位置に、2つの先端突部106が互いに間隔を隔てて形成される。2つの先端突部106の各々は、オーナメント取付孔34の内周面に向かって突出する。2つの先端突部106は、ホイールカバー10の取付状態において、円筒側面部88の外周面と一対の係止爪部68の間の空間に挿入されるものである。
【0059】
一対の挿入部96の各々には、2つの先端突部106の間に切欠108が形成される。切欠108は、ストッパー26の仮止め状態において、摘子部92と対向する。ストッパー26の仮止め状態において、作業者により、オーナメント取付孔34の内周面から円筒側面部88に向かって撓まされた摘子部92は、切欠108に入り込む。これにより、一対の挿入部96を円筒側面部88に向かって撓ませることが可能となり、センターピース24をホイール14から取り外すことができる。
【0060】
(係止片)
一対の係止片98の各々は、外端部110、内端部112および外端部110と内端部112を連結する弾性変形部114を備える。
図5(a)に示すように、外端部110は、矩形底面部94の長辺から弾性変形部114までの部分である。外端部110は、矩形底面部94の長辺から内側に向かって、矩形底面部94に略垂直に延出する。弾性変形部114は、外端部110の内側端部より延出するものであり、外端部110の内側端部から内側に近づくにつれてオーナメント取付孔34の内周面に近づくように延出する。外端部110と弾性変形部114は、内側に近づくにつれて各々の幅、すなわち、矩形底面部94の長辺に平行な方向における外端部110と弾性変形部114の大きさが減少する。
【0061】
内端部112は、弾性変形部114の内側端部から、ホイール軸に平行に、内側に向かって延出する。内端部112には、その先端部に仮止め爪部116が形成され、内端部112の弾性変形部114との連結部分には、ロック溝部118が形成される。ロック溝部118から仮止め爪部116に近づくにつれて、内端部112の厚みが減少する。
【0062】
図6(b)に示すように、仮止め爪部116は、鉤状に形成され、一対の係止片98がセンターピース24の一対の被挿入孔82に挿入されたときに、連結底面部74と係合するものである。このとき、
図6(a)に示すように、一対の挿入部96の2つの先端突部106は円筒側面部88の外周面と一対の係止爪部68の間に挿入されていない。カバー本体18をホイール14に取り付ける前に、このようにストッパー26をセンターピース24に取り付けた状態が、ストッパー26の仮止め状態である。
【0063】
図7(b)に示すように、ロック溝部118は、矩形底面部94に近い側の突縁と係止片98の先端側の突縁を有する溝である。一対の挿入部96の2つの先端突部106が円筒側面部88の外周面と一対の係止爪部68の間に挿入されるときに、ロック溝部118の先端側の突縁がセンターピース24に設けられた一対の被挿入孔82を通過し、一対の被挿入孔82を画定する連結底面部74と係合する。ロック溝部118の2つの突縁の形状は本実施形態の形状に限定されないが、ホイールカバー10の取付状態において、ストッパー26は内側には動かないが外側に外れる可能性があるため、矩形底面部94に近い側の突縁の角度が先端側の突縁の角度よりも大きく形成されることが望ましい。一対の被挿入孔82を画定する連結底面部74は第1係合部の一例であり、仮止め爪部116は仮止め係合部の一例であり、ロック溝部118はロック係合部の一例である。
【0064】
(操作突部)
図5(b)に示すように、操作突部100は、一対の係止片98の各々の外端部110と対応して設けられるものである。操作突部100は、矩形底面部94の長辺から、ホイール軸に垂直な方向に、オーナメント取付孔34の内周面に向かって突出する。これにより、ストッパー26を引き抜くときに、作業者が一対の係止片98を撓ませた状態でストッパー26を引き抜きやすくなる。操作突部100は、突起部の一例である。
【0065】
(スリット部)
スリット部102は、十字突部84と略同形の十字形状の貫通孔であり、矩形底面部94に形成される。ストッパー26の一対の挿入部96の2つの先端突部106が円筒側面部88の外周面と一対の係止爪部68の間に挿入されるときに、十字突部84がスリット部102を貫通する。スリット部102は貫通孔の一例である。
【0066】
(ガイド突部)
図5(a)に示すように、ガイド突部104は、矩形底面部94の車両内側の面から内側(ストッパー26の仮止め状態における連結底面74aが位置する側)に向かって矩形底面部94に垂直に延びる6つの板状部材である。6つのガイド突部104のうちの4つのガイド突部104aは、矩形底面部94の長辺に平行である。4つのガイド突部104aうちの2つずつが、一対の挿入部96の各々と一体的に形成される。
【0067】
6つのガイド突部104のうちの2つのガイド突部104bは、矩形底面部94の短辺に平行である。2つのガイド突部104bは、矩形底面部94のそれぞれの長辺とスリット部102の十字の交点との間に1つずつ設けられる。4つのガイド突部104aおよび2つのガイド突部104bの各々は、一端がスリット部102に接するように配置される。ガイド突部104は第2ガイド片の一例である。
【0068】
[ホイールカバーの取付手順]
ホイールカバー10のホイール14への取付手順を説明する。本実施形態におけるホイールカバー10の取付作業は、(1)センターピース24にストッパー26を仮止めし、その後、(2)当該センターピース24をカバー本体18に取り付けて3つの部材が一体となったホイールカバー10を構成し、(3)当該ホイールカバー10をホイール14に取り付け、(4)ストッパー26を内側に押し込み、ホイールカバー10がホイール14から脱落しないように固定する、4つの手順で行われる。
【0069】
図8(a)は、ホイールカバー10の取付状態において、車両の外側からみた斜視図であり、
図8(b)は、ホイールカバー10の取付状態における、センターピース24とストッパー26とオーナメント取付孔34の内部の断面図であり、それぞれの位置関係を示す模式図である。
図8(b)においては、センターピース24の連結部64およびフランジ部62、カバー本体18、オーナメント取付孔34以外のホイール14の各部位は省略されている。
【0070】
(1)ストッパー26のセンターピース24への仮止
作業者は、センターピース24の一対の被挿入孔82とストッパー26の一対の係止片98の位置を合わせ、一対の係止片98を外側から持って、一対の係止片98を一対の被挿入孔82に挿入する。このとき、一対の係止片98の各々の弾性変形部114を撓ませて一対の係止片98を一対の被挿入孔82に挿入する。一対の仮止め爪部116が一対の被挿入孔82を通過するとき、6つのガイド突部104と十字突部84が接触可能な状態となり、十字突部84が6つのガイド突部104をガイドする状態となる。作業者は、
図5(b)に示すように、一対の仮止め爪部116が一対の被挿入孔82を通過し、一対の仮止め爪部116が連結底面部74と係合するまで一対の係止片98を一対の被挿入孔82に挿入する。
【0071】
ストッパー26の仮止め状態において、一対の仮止め爪部116がそれぞれ連結底面部74と係合するため、ストッパー26がセンターピース24から外側に抜けることはない。また、一対の係止片98は、仮止め爪部116からロック溝部118の先端側の突縁に近づくにつれて、その厚みが増す形状であるため、作業者が内側に向かう方向に力を加えない限り、ロック溝部118は一対の被挿入孔82を通過しない。一対の係止片98は、仮止め爪部116とロック溝部118の先端側突縁との間で、ストッパー26がセンターピース24から外れない限りは内側と外側どちらの方向にも動くが、ストッパー26がいずれの位置にある場合にも、ストッパー26は仮止め状態となる。
【0072】
(2)ストッパー26を仮止めしたセンターピース24のカバー本体18への取付
作業者は、ストッパー26が仮止めされたセンターピース24の円筒部66および連結部64を、カバー本体18の係合孔22に挿入する。この状態で、センターピース24の係合突部80が、カバー本体18の係合孔周縁部70と係合することにより、センターピース24がカバー本体18に取り付けられる。このように、センターピース24とストッパー26およびカバー本体18が一体化される。
【0073】
(3)ホイールカバー10のホイール14への取付
作業者は、一体化されたホイールカバー10のセンターピース24を、ホイール14のオーナメント取付孔34に挿入する。このとき、作業者は、センターピース24を、円筒部66の一対の外周突部90が内周係合部36を乗り越える位置まで内側に向かって押し込む。内周係合部36は、オーナメント取付孔34の内周面を一周するように設けられているため、センターピース24と内周係合部36の位置を合わせる必要はない。内周係合部36の突縁を乗り越えた外周突部90は、内周係合部36と係合する。この状態で、センターピース24はこれ以上内側に挿入されない。また、このときのストッパー26は、仮止め状態である。
【0074】
(4)ストッパー26の押込
ホイールカバー10がホイール14に取り付けられた状態で、作業者は、仮止め状態のストッパー26を内側に向かって止まるまで押し込む。
図6(b)の位置にあるストッパー26が内側に押し込まれるとき、ストッパー26の6つのガイド突部104がセンターピース24の十字突部84に案内されて、ストッパー26は
図7(b)の状態で止まる。このとき、
図8(b)に示すように、一対の挿入部96の各々の先端の2つの先端突部106は、円筒側面部88の外周面と一対の係止爪部68の間の空間に挿入され、その空間の底面(空間の内側端部を画定するセンターピース24の部分)に2つの先端突部106の先端が到達する。また、同時に、
図7(b)に示すように、一対の係止片98の各々のロック溝部118が、一対の被挿入孔82を通過し連結底面部74と係合する。これにより、ストッパー26はそれ以上内側に動かせなくなる。
【0075】
作業者は、
図8(a)に示すように、センターピース24の十字突部84が、ストッパー26のスリット部102を貫通し、その先端が矩形底面部94から外側に露出したことを目視で確認する。
【0076】
[ホイールカバーの取外手順]
前述した手順によって取り付けられたホイールカバー10を、ホイール14から取り外す手順を説明する。ホイールカバー10の取外作業は、(1)ストッパー26を外側に引き抜いて仮止め状態に戻し、(2)オーナメント取付孔34からセンターピース24を引き抜く、2つの手順で行われる。
【0077】
(1)ストッパー26の引抜
作業者は、一対の係止片98の各々を撓ませて、一対の係止片98の各々のロック溝部118を連結底面部74から係脱させる。この状態で、作業者が外側に向かってストッパー26を引くと、一対の係止片98が外側に動き、一対の係止片98の各々のロック溝部118が一対の被挿入孔82を通過する。作業者は、一対の係止片98の各々の先端の仮止め爪部116が、連結底面部74に係止するまでストッパー26を外側に引く。このとき、一対の挿入部96の各々の2つの先端突部106は、円筒側面部88の外周面と一対の係止爪部68の間の空間から抜脱する。一対の挿入部96は、切欠108が一対の摘子部92に対向する位置まで外側に移動する。このとき、一対の仮止め爪部116が連結底面部74と係合し、ストッパー26は
図6(b)に示す仮止め状態となる。
【0078】
(2)センターピース24の引抜
作業者は、筒状側面部72に形成された一対の貫通孔76に指を挿入し、一対の係止爪部68の先端にある一対の摘子部92を円筒側面部88に向かって撓ませたまま、センターピース24を外側に引き抜く。このとき、一対の摘子部92を撓ませることにより、一対の係止爪部68の各々が円筒側面部88に向かって移動し、一対の係止爪部68の各々の外周突部90が内周係合部36を乗り越えられる状態となる。この状態でセンターピース24を外側に引き抜くことにより、センターピース24を外側に向かって動かすことができる。撓んだ一対の摘子部92の各々は、一対の挿入部96の各々の2つの先端突部106の間に形成された切欠108に入り込むため、一対の摘子部92は一対の挿入部96と接触することはない。センターピース24が外側に引き抜かれるときに、ストッパー26およびカバー本体18も同時にホイール14から取外される。
【0079】
以上のように、本実施形態においては、ホイールカバー10のホイールへの取付作業の最終段階で、センターピース24の一対の係止爪部68と円筒側面部88の外周面との間にストッパー26の一対の挿入部96の2つの先端突部106を挿入する。これにより、ホイールカバー10がホイール14から外れるときに一対の係止爪部68に及ぼされる力を、2つの先端突部106を介して剛性の強い円筒部66で支えることができる。その結果、ホイールカバー10がホイール14から外れにくくなる。
【0080】
ストッパー26は、一対の挿入部96の各々に2つの先端突部106を備え、一対の挿入部96は互いにオーナメント取付孔34の内周方向に間隔を隔てて配置されている。そのため、2つの先端突部106は、一対の係止爪部68にかかる荷重を複数の位置で支えることができる。
【0081】
一対の係止片98の各々のロック溝部118は、ホイールカバー10の取付状態におけるストッパー26を、その位置で保持することにより、ストッパー26がセンターピース24から外れることを防止する。これによりホイールカバー10がホイール14から外れにくくなる。
【0082】
また、一対の係止片98の各々の仮止め爪部116により、ストッパー26をセンターピース24に仮止めすることにより、センターピース24とストッパー26を一つの部材として扱うことができる。これにより、取付作業の効率を向上することができる。
【0083】
一対の係止片98の各々の仮止め爪部116の先端側が鉤状であり、仮止め爪部116がロック溝部118よりも先端側に設けられることで、ストッパー26を内側に押し込むだけで仮止め状態の位置からホイールカバー10の取付状態の位置に移行できる。
【0084】
一対の係止片98は撓みやすい形状であり、矩形底面部94との連結部分に操作突部100を備えるため、取外作業の効率を向上できる。
【0085】
ストッパー26がセンターピース24に取り付けられるときに、6つのガイド突部104が十字突部84にガイドされることにより、一対の挿入部96と一対の係止爪部68が対向する位置、かつ、一対の係止片98と一対の被挿入孔82が対向する位置で、矩形底面部94が連結底面部74と平行な状態で、ストッパー26がセンターピース24に案内される。
【0086】
また、ホイールカバー10の取付状態において、ストッパー26のスリット部102から十字突部84の先端が露出することにより、作業者が、ストッパー26がセンターピース24に確実に取り付けられたことを目視で確認できる。
【0087】
円筒側面部88の内側端部が開口しているため、ドライブシャフト56を円筒側面部88の内部に挿入することができる。これにより、ホイールカバー10を駆動輪である車輪16に取り付けることができる。なお、本実施形態のように、円筒側面部88の内部にドライブシャフト56が挿入されていなくてもよい。そのため、ホイールカバー10は、従動輪にも取り付けることができる。
【0088】
ホイール14に取り付けられたホイールカバー10は、前述した手順以外でもホイール14から取外すことができる。例えば、前述の手順(1)では、ストッパー26は仮止め状態となるまで外側に引き抜かれたが、ストッパー26をセンターピース24から完全に脱離させてもよい。すなわち、作業者は、一対の係止片98を撓ませて、各々の仮止め爪部116を連結底面部74に係止させることなく、一対の被挿入孔82を通過するまでストッパー26を引き抜く。これにより、ストッパー26がセンターピース24から完全に脱離する。その後の手順は、前述した手順(2)と同様である。
【0089】
また、本実施形態の変形例として、
図9に示すストッパー26を採用してもよい。
図9は、変形例のストッパー26がセンターピース24に取り付けられたときの断面図の係合部の拡大図である。
図9に示すように、仮止め爪部116は、ロック溝部118に近い側に突縁が形成されるものでもよい。その場合、ロック溝部118に近い側の突縁は先端側の突縁よりも小さく形成されることが望ましい。
【符号の説明】
【0090】
10:ホイールカバー 12:タイヤ 14:ホイール 16:車輪 18:カバー本体 20:カバー取付部材 22:係合孔 24:センターピース 26:ストッパー 28:タイヤ保持部 30:ディスク部 32:リム 34:オーナメント取付孔 36:内周係合部 38:ハブ 40:ハブ取付部 42:スポーク 46:ディスクブレーキ 48:ブレーキ回転体 50:摩擦部材 52:キャリパ 54:車軸 56:ドライブシャフト 58:ビード 60:外周爪 62:フランジ部 63:円環部 64:連結部 65:延出部 66:円筒部 68:係止爪部 70:係合孔周縁部 72:筒状側面部 74:連結底面部 74a:連結底面 76:貫通孔 80:係合突部 82:被挿入孔 84:十字突部 88:円筒側面部 90:外周突部 92:摘子部 94:矩形底面部 94a:矩形底面 96:挿入部 98:係止片 100:操作突部 102:スリット部 104:ガイド突部 106:先端突部 108:切欠 110:外端部 112:内端部 114:弾性変形部 116:仮止め爪部 118:ロック溝部