(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563865
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ボンベラック
(51)【国際特許分類】
F17C 13/08 20060101AFI20190808BHJP
G21D 1/00 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
F17C13/08 301Z
!G21D1/00 Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-134848(P2016-134848)
(22)【出願日】2016年7月7日
(65)【公開番号】特開2018-4022(P2018-4022A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2018年7月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将
(72)【発明者】
【氏名】須賀 健男
(72)【発明者】
【氏名】小松▲崎▼ 泰寛
【審査官】
蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3100555(JP,U)
【文献】
特開2014−009016(JP,A)
【文献】
特開平07−082914(JP,A)
【文献】
特開2014−149049(JP,A)
【文献】
特開平01−088199(JP,A)
【文献】
米国特許第4899968(US,A)
【文献】
特開2006−57747(JP,A)
【文献】
米国特許第5100007(US,A)
【文献】
米国特許第5078415(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
G21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフレームで形成される枠体内にボンベが収納固定されるボンベラックであって、
前記枠体内に収納固定される前記ボンベの鉛直方向の動きを拘束するボンベ押え機構を備えていると共に、
前記ボンベ押え機構は、前記ボンベの高さに応じて該ボンベの鉛直方向の動きの拘束位置が調整できる高さ調節機構を備えていることを特徴とするボンベラック。
【請求項2】
請求項1に記載のボンベラックにおいて、
前記ボンベ押え機構は、一方に前記ボンベの頭部を支持するU字溝が形成されているL字状の第1のボンベ押え板、該第1のボンベ押え板の前記U字溝が形成されていないL字状の他方がボルトで固定されているプレート、一方に前記ボンベの胴部を支持する円弧溝が形成されていると共に、他方が前記フレームに固定されているL字状の第2のボンベ押え板とから構成され、
前記第1のボンベ押え板の前記U字溝に、前記ボンベの胴部径より細い径の前記頭部が挿入されて前記ボンベの鉛直方向の動きを拘束することを特徴とするボンベラック。
【請求項3】
請求項2に記載のボンベラックにおいて、
前記第1のボンベ押え板は、該第1のボンベ押え板を第1のボルトで固定しているプレートを介して前記第2のボンベ押え板に固定されていることを特徴とするボンベラック。
【請求項4】
請求項3に記載のボンベラックにおいて、
前記高さ調節機構は、前記第1のボンベ押え板の前記U字溝が形成されていないL字状の他方に形成された鉛直方向に長い長円孔と、該長円孔を介して前記第1のボンベ押え板を前記プレートに固定している前記第1のボルトから構成され、
前記ボンベの高さに応じて前記第1のボルトを緩め、前記長円孔を介して前記第1のボンベ押え板を上下に動かくすことにより、前記ボンベの鉛直方向の動きの拘束位置を調整することを特徴とするボンベラック。
【請求項5】
請求項4に記載のボンベラックにおいて、
前記ボンベの胴部は、その両端が前記第2のボンベ押え板に第2のボルトで固定され、かつ、前記ボンベの胴部の径に合わせた長さのボンベ押えバンドで固定されていることを特徴とするボンベラック。
【請求項6】
請求項5に記載のボンベラックにおいて、
前記ボンベ押えバンドは、前記ボンベの胴部の径に合わせ長さが調整可能な調節ベルトで構成されていることを特徴とするボンベラック。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のボンベラックにおいて、
前記ボンベ押えバンドは、隣接する前記ボンベの胴部を固定しているボンベ押えバンド同士が、上下互い違いに配置されていることを特徴とするボンベラック。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のボンベラックにおいて、
前記ボンベ押えバンドの内側に滑り防止材が装着されていることを特徴とするボンベラック。
【請求項9】
請求項8に記載のボンベラックにおいて、
前記滑り防止材は、ゴム製素材であることを特徴とするボンベラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンベラックに係り、例えば、原子力発電設備に設置されるガス供給設備を構成するものに好適なボンベラックに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、原子力発電設備には、様々な系統へ規定の圧力、流量に調節された圧縮ガスを供給するガス供給設備が設置されている。このガス供給設備は、圧力源であるボンベと、このボンベを収納固定するボンベラックとで構成されている。
【0003】
ボンベラックは、構造用圧延鋼材の溝形鋼を溶接した壁掛形又は床置形のフレームに、必要本数のボンベを収納できる構造が一般的であり、また、ボンベラックに収納されているボンベは、転倒防止用にチェーンで固定され、かつ、上下2本又は1本の形鋼をフレームの支持金具に取付け、ピンで両端を固定しボンベを固定する構造となっている。
【0004】
このような構造の従来のボンベラックを、
図1乃至4に示す。
【0005】
該図に示すように、従来のボンベラック14は、複数のフレーム1で直方体状に形成される枠体内に複数のボンベ3を収納固定するものである。ボンベラック14に収納固定されている各々のボンベ3は、ボンベ3の頭部と、ボンベ3内のガスが供給される配管(図示せず)との継手部12を連結管2で連結している。
【0006】
そして、ボンベラック14に収納されている複数のボンベ3は、転倒防止用のチェーン5a、5bでフレーム1に上下で固定されると共に、上下2本(又は1本)の形鋼であるボンベ押えバー6a、6bをフレーム1の支持金具13a、13bに取付け、
図4に示すように、ボンベ押えバーピン4a、4bでボンベ押えバー6a、6bの両端をフレーム1の支持金具13a、13bに固定し、ボンベ3が上下で固定される構造となっている。
【0007】
なお、ボンベを収納固定するボンベ保持装置の先行技術文献としては、特許文献1を挙げることができる。
【0008】
この特許文献1には、地震時の振動によるボンベとボンベ保持装置の壁や柱等の基体との衝突や固定用鎖の引っ張りによるボンベへの衝撃力を低減させるための技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−337411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のボンベラック14に装備されている転倒防止用のチェーン5a、5bは、地震時におけるボンベ3の転倒防止策としては有効であるが、鉛直方向を拘束していないため、地震でボンベ3が浮き上り、フレーム1や弁類等の機器に衝突する可能性がある。また、ボンベ3の浮き上りと振動によってボンベ3が回転し、連結管2が変形し破損する可能性がある。
【0011】
上述した特許文献1には、地震時等におけるボンベの鉛直方向への浮き上がりに対する対策については、何ら言及されていない。
【0012】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、ボンベの地震等における鉛直方向への浮き上がり(動き)を防止して他の機器への悪影響がないようにしたボンベラックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のボンベラックは、上記目的を達成するために、複数のフレームで形成される枠体内にボンベが収納固定されるボンベラックであって、前記枠体内に収納固定される前記ボンベの鉛直方向の動きを拘束するボンベ押え機構を備えている
と共に、前記ボンベ押え機構は、前記ボンベの高さに応じて該ボンベの鉛直方向の動きの拘束位置が調整できる高さ調節機構を備えていることを特徴とする。
【0014】
具体的には、前記ボンベ押え機構は、一方に前記ボンベの頭部を支持するU字溝が形成されているL字状の第1のボンベ押え板、該第1のボンベ押え板の前記U字溝が形成されていないL字状の他方がボルトで固定されているプレート、一方に前記ボンベの胴部を支持する円弧溝が形成されていると共に、他方が前記フレームに固定されているL字状の第2のボンベ押え板とから構成され、前記第1のボンベ押え板の前記U字溝に、前記ボンベの胴部径より細い径の前記頭部が挿入されて前記ボンベの鉛直方向の動きを拘束することを特徴と
し、
前記高さ調節機構は、前記第1のボンベ押え板の前記U字溝が形成されていないL字状の他方に形成された鉛直方向に長い長円孔と、該長円孔を介して前記第1のボンベ押え板を前記プレートに固定している前記第1のボルトから構成され、前記ボンベの高さに応じて前記第1のボルトを緩め、前記長円孔を介して前記第1のボンベ押え板を上下に動かくすことにより、前記ボンベの鉛直方向の動きの拘束位置を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ボンベの地震等における鉛直方向への浮き上がり(動き)を防止して他の機器への悪影響がないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】従来のボンベラックを
図1のA−A線に沿って断面して示す断面図である。
【
図4】従来のボンベラックの一部を拡大して示す
図1のB部の拡大図である。
【
図5】本発明のボンベラックの実施例1を示す正面図である。
【
図6】本発明のボンベラックの実施例1を示す側面図である。
【
図7】本発明のボンベラックの実施例1を
図5のC−C線に沿って断面して示す断面図である。
【
図8】本発明のボンベラックの実施例1に採用されるボンベ押え機構の詳細構造を示す斜視図である。
【
図9】本発明のボンベラックの実施例1においてボンベがボンベ押えバンドで固定されている状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明のボンベラックの実施例2であり、ボンベがボンベ押えバンドで固定されている状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図示した実施例に基づいて本発明のボンベラックを説明する。なお、符号は、従来と同一のものは同符号を使用する。
【実施例1】
【0018】
図5乃至
図9に、本発明のボンベラックの実施例1を示す。
【0019】
図5乃至
図7に示すように、本実施例のボンベラック15は、複数のフレーム1で直方体状に形成される枠体内に複数のボンベ3を収納固定するものである。ボンベラック15に収納固定されている各々のボンベ3は、ボンベ3の頭部と、ボンベ3内のガスが供給される配管(図示せず)との継手部12を連結管2で連結している。
【0020】
そして、本実施例では、複数のフレーム1で直方体状に形成される枠体内に収納固定されるボンベ3の鉛直方向の動き(浮き上がり)を拘束するボンベ押え機構7を設けると共に、このボンベ押え機構7は、ボンベ3の高さに応じてボンベ3の鉛直方向の動きの拘束位置が調整できる高さ調節機構10を備えている。
【0021】
上述したボンベ押え機構7は、
図8に示すように、一方にボンベ3の頭部を支持するU字溝7dが形成されているL字状の第1のボンベ押え板7a、該第1のボンベ押え板7aのU字溝7dが形成されていないL字状の他方が第1のボルト9aで固定されているプレート7c、一方にボンベ3の胴部を支持する円弧溝7eが形成されていると共に、他方がフレーム1に固定されているL字状の第2のボンベ押え板7bから構成され、第1のボンベ押え板7aのU字溝7dに、ボンベ3の胴部径より細い径の頭部が挿入されてボンベ3の鉛直方向の動き(浮き上がり)を拘束するものである。
【0022】
第1のボンベ押え板7aは、この第1のボンベ押え板7aを第1のボルト9aで固定しているプレート7cを介して第2のボンベ押え板7bに固定されており、プレート7cは、第1のボンベ押え板7aのU字溝7dが形成されている面に溶接で固定されている。また、第2のボンベ押え板7bはフレーム1と一体に構成されている。
【0023】
また、上述した高さ調節機構10は、
図8に示すように、第1のボンベ押え板7aのU字溝7dが形成されていないL字状の他方に形成された鉛直方向が長い長円孔10aと、この長円孔10aを介して第1のボンベ押え板7aをプレート7cに固定している第1のボルト9aから構成され、ボンベ3の高さに応じて第1のボルト9aを緩め、長円孔10aを介して第1のボンベ押え板7aを上下に動かすことにより、ボンベ3の鉛直方向の動きの拘束位置を調整するものである。
【0024】
また、本実施例では、ボンベ3の胴部は、
図9に示すように、両端が第2のボンベ押え板7bの突出部7b1に第2のボルト9bで固定され、かつ、ボンベ3の胴部の径に合わせた長さのボンベ押えバンド8で固定されている。このボンベ押えバンド8は、
図5に示すように、隣接するボンベ3の胴部を固定しているボンベ押えバンド8同士が、上下互い違いに配置されているものである。更に、ボンベ押えバンド8の内側には、ゴム製素材などの滑り防止材(図示せず)が装着されている。
【0025】
このような本実施例の構成とすることにより、地震時の鉛直加速度によるボンベ3の浮き上りを防止することができる。
【0026】
また、ボンベ押え機構7は、ボンベラック15に配置するボンベ3の高さに合わせ適切な位置に調節することができる高さ調節機構10を備えているため、ボンベ3のサイズが不揃いであっても、高さ調節機構10でボンベ押え機構7の高さ位置を調節することにより、ボンベ3のサイズに合わせた高さ位置でボンベ3の浮き上がりを防止することができる。
【0027】
また、
図9に示すボンベ押えバンド8は、ボンベ3の直径に合わせたバンドと、それを固定するバンド両端の第2のボルト9bとで構成されているため、ボンベ押えバンド8は、従来の固定具(チェーン)よりボンベ3と接地する面積が大きくなり、しかも、ボンベ押えバンド8の内側にゴム製素材などの滑り防止材を貼り付けているため、ボンベ3との隙間を無くし地震時のボンベ3の回転を防止することができる。
【0028】
更に、ボンベ3の回転による連結管の変形及び破損の防止機能を果たすことができ、また、隣接するボンベ3の胴部を固定しているボンベ押えバンド8同士が上下互い違いに配置されているため、互い違いでない同一レベルに配置するよりもボンベラック15を、よりコンパクトな構成とすることができる。
【0029】
従って、本実施例によれば、ボンベの地震等における鉛直方向への浮き上がり(動き)を防止して他の機器への悪影響がないようにすることができる。
【実施例2】
【0030】
図10は、本発明のボンベラックの実施例2であり、ボンベ3が実施例1とは異なるボンベ押えバンドで固定されている状態を示す。
【0031】
本実施例のボンベ押えバンドは、実施例1に示すバンド両端の第2のボルト9bで固定するボンベ押えバンド8とは異なり、ボンベ3の胴部の径に合わせ長さが調整可能な調節ベルト11を用いたものである。
【0032】
このような本実施例であっても、その効果は実施例1と同様であることは勿論、調節ベルト11を用いているため、ボンベ3の直径に合わせてバンド長さを適切な長さに調節することができる。
【0033】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成を置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…フレーム、2…連結管、3…ボンベ、4a、4b…ボンベ押えバー固定ピン、5a、5b…チェーン、6a、6b…ボンベ押えバー、7…ボンベ押え機構、7a…第1のボンベ押え板、7b…第2のボンベ押え板、7b1…第2のボンベ押え板の突出部、7c…プレート、7d…U字溝、7e…円弧溝、8…ボンベ押えバンド、9a…第1のボルト、9b…第2のボルト、10…高さ調節機構、10a…長円孔、11…調節ベルト、12…継手部、13a、13b…支持金具、14、15…ボンベラック。