【実施例】
【0017】
図1から
図4に示す図面は、特許文献1に記載された圧延材張力制御装置の構成を示す図である。本発明の実施例は、特許文献1に記載された圧延材張力制御装置の構成を基本として構成されるので、本実施例を説明する前に、
図1から
図4に記載された事項を記載する。
【0018】
図1は、本発明の実施例である圧延機システムの概略構成を示す。
【0019】
図1において、圧延機システムは、圧延機1、圧延前の圧延材の巻出機2、圧延後の圧延材の巻取機3、圧延機1の入口側、例えば圧延機1と巻出機2との間に配設され、圧延材の長さが長くなって発生したたるみの大きさに対応して首振り揺動する首振りダンサー4と、圧延機1の出口側、例えば圧延機1と巻取機3との間に配設される圧延材の首振りダンサー4Aと、を備えた圧延機張力制御装置100から構成され、巻出機2から巻出された圧延材5は圧延機1を通過し、所望の形状に圧延され、最終的に巻取機3によって巻取られる。巻出機2と巻取機3との間には適宜、案内ロール6が設けられる。なお、巻戻しするリバース圧延の時には、巻出機が巻取機に、巻取機が巻出機になる。巻取機、巻出機は巻戻機と呼ばれる場合もある。巻出機2および巻取機3にはそれぞれ速度制御用の駆動機(例えば、電動、空気又は油圧で駆動される駆動機。本例の場合、電動機。以下、電動機を例にとって説明する。)が接続される。
【0020】
巻出機2と圧延機1との間を搬送される圧延材5の板長さ変動は首振りダンサー4が備える後に詳述するたるみ計測手段7によって計測され、たるみの大きさに対応して電動機である電動機8が速度制御される。従って、たるみの大きさ計測と圧延材の長さ変動計測とは同義である。電動機8の速度制御に伴って圧延材の速度が制御されて、圧延材の速度制御がなされて、これによって入口側および出口側の双方で圧延材の張力一定制御がなされることになる。電動機8によるたるみ制御すなわち、圧延機の長さ制御に加えて、得られたたるみ信号に対応させて圧延機に連結した電動機12、13による速度制御を行うようにしてもよい。
【0021】
“たるみ”は張力の大きさとなって現われる。従って、ここではたるみは張力と読み替えることができ、たるみの大きさ測定は、張力測定と同義となる。また、ここで計測することは、計測値として数値に現わす場合と、数値化しない場合であって、物理的、機械的位置に対応することの双方が含まれる。
【0022】
圧延システムを構成する圧延機1の出口側に配設される首振りダンサー4Aは、首振りダンサー4と同一の構成で、同一の作用をなすので、以下首振りダンサー4について説明し、首振りダンサー4Aについてはその説明を援用するものとし、必要に応じ首振りダンサー4Aに言及する。なお、首振りダンサー4Aの各構成については首振りダンサー4の構成に対応して“A”を付ける。
【0023】
圧延システムを構成する圧延機1は、通常よく知られているように、一対の圧延ロール9とこれを収納する圧延スタンド10および駆動装置(図示せず)から構成される。圧延ロール9には、中間ロール、更には補強ロール等のバックアップロールが設けられる場合があるが、圧延機1の構成についてはよく知られており、これ以上言及しない。
【0024】
図2および
図3は、首振りダンサー4の詳細を示し、
図2はその正面図、
図3は側面図を示す。
【0025】
これらの図において、首振りダンサー4は、上述したように、ポテンショメータで構成されるたるみに対応して揺動し、首振りするたるみ揺動装置7(以下、ポテンショメータ7として説明する場合がある。)に連結される。また、首振りダンサー4は、電動機11に直結される。
【0026】
首振りダンサー4は、回転軸15と、この回転軸15の両側に固定され、この回転軸15を中心にして対称形状をなして回転軸15を中心として、一定範囲における回転、すなわち揺動運動するダンサーアーム(支持部材)18、19と、同一形状をなして、固定軸である回転軸15を中心としてダンサーアーム18、19の対称位置にあるそれぞれの自由端部20、21に配設された一対のダンサーロール16、17を備える。首振りダンサー4は、この中心部を中心としての回転運動によって振動し、首振りをして、いかにもダンスをしているような挙動を呈することになる。ダンサーアーム18、19は図に示すように自由端部狭小とされた菱形形状をなす。ダンサーアーム18,18Aの形状は菱形に限定されず、矩形状その他の形状であってもよく、一対のダンサーロールを固着する形状であり、中央部で回転可能な形状であれば足りる。ここでは、中心軸を中心として上下で対称に揺動する。そして、この揺動が、回転軸15を中心として上下で対称に揺動するという特徴がある。なお、ダンサーアームおよびダンサーロールをそれぞれ揺動アームおよび揺動ロールと読み替えることができる。
【0027】
圧延材5は、一対のダンサーロール16、17に、たすけ掛けにS字状もしくは逆S字状に巻き掛けられる。
【0028】
圧延建屋(図示せず)には、架台21が設けられ、この架台21の左側には、先端ブラケット22が、そして右側には駆動部架台23が載置される。先端ブラケット22には支持部材24が取付けられ、駆動部架台23の上には他の支持部材25が取り付けられる。
【0029】
回転軸15は、軸受(図示せず)を介在して支持部材24、25に取付けられ、保持される。従って、ダンサーアーム18、19は回転軸15の双方両側のそれぞれにおいて、回転軸15の主要構成部と支持部材24、25との間に介在することになる。
【0030】
ダンサーアーム18、19はその中央部を回転軸15に固定され、自由端部20、21にダンサーロール16、17を、軸受(図示せず)を介して支持する構成であるので、回転軸15を中心としてダンサーロール16、17の長手方向に対して直角方向に上下対称に揺動することができる。すなわち、首振りダンサー4は回転軸を中心として揺動する。
【0031】
駆動部架台23の上側には上述の支持部材25に加えて、一対のクラッチブラケット27および電動機架台28が載置、取り付けてある。電動機架台28の上に電動機8が取り付けられる。電動機8の回転軸は一方向に一定速度で回転する。回転軸15の右側で支持部材25の右側において、回転軸15の延長部31にはポテンショメータ7を取り付けるポテンショメータ取り付け29が取り付けてある。このように、ポテンショメータ7は、たるみ揺動装置としての首振りダンサー4に回転軸15を介して取り付けられ、ダンサーロール16、17の揺動角度に対応した回転動作することができ、一種の揺動角度測定手段(揺動角度検出器)として機能する。ポテンショメータ7によって揺動角度が揺動角度信号として取り出される。
【0032】
圧延材5は、上述したように一対のダンサーロール16、17にたすけ掛けにS字状もしくは逆S字状に巻き掛けられているために、圧延材5に作用する圧延材の質量に伴う重量作用は中央の中心軸を中心にして回転する上下の配置の一対のダンサーロール16、17によって相殺され、重量作用を排除した揺動角度がポテンショメータ7によって測定される。そして、このS字状もしくは逆S字状の巻き掛けによって圧延材のロール巻付け角はほぼ一定となり、巻付け角の変動に伴う補正を行なうことを特に要しないことになる。
【0033】
一対のクラッチブラケット27の間で回転軸15の延長部31にクラッチ30が取付けられる。このクラッチ30は、首振りダンサー4の回転トルクを制御する張力を発生させる。この制御によって巻取り張力が設定される。クラッチとしてパウダークラッチを使用することによって100%スリップさせることが可能になる。回転軸15の延長部31と電動機11の回転軸32とはカップリング33によって結合される。電動機11の回転力によって圧延材5には引っぱり力が付与され、回転軸15の揺動に伴う揺動がダンサーアーム18、18Aの揺動角度として現われることになる。
【0034】
以上に説明した構成において、圧延機1に圧延に基因してあるいは巻出機2、巻取機3その他の原因に基因して圧延材5の板長さに変動が生じると、変動板長さに対応するために、
図4に示すように一対のダンサーロール16、17は一定回転の電動機11の作用によって回転軸15を中心として時計回り方向、反時計回り方向に回転、揺動する。
【0035】
本実施例の場合、最大揺動角度は±40°に設定される。この揺動角度に対応してポテンショメータ7は回転軸15と共に回転、揺動し、揺動角度に対応した精度のよい角度信号を生成する。この角度信号はたるみ張力値と対応づけてあり、角度信号はたるみ値、たるみ信号として出力される。最大揺動角度は、40°近辺で適宜、定めることができる。首振りダンサー4Aについても同様である。
【0036】
検出されたたるみ大きさ信号は、電動機8の回転制御装置(図示せず)に制御信号とし、この制御信号に対応して電動機8の駆動力が巻出機2あるいは/および巻取機3にそれぞれ与えられ、巻出し速度、巻取り速度が制御される。これによって、たるみおよび首振りダンサー4、4Aの揺動運動が制御される。
【0037】
例えば、張力が所定の張力より小さくなって、たるみが大きく発生して、
図3において、時計方向すなわち巻取機3の方向に揺動したとすると、たるみを減少させ、張力を強める方向、すなわち反時計方向に電動機8の回転制御によって、一対のダンサーロール16、17を揺動させると圧延材5のたるみは減少し、一対のダンサーロール16、17は回転軸15を中心として反時計方向に回転し、初期の正立した位置すなわち中立点に戻り、張力一定制御がなされる。たるみが所定のたるみよりも大きくなった場合には、上述と逆の作用とされ、首振りダンサー4、4Aは正立した位置に戻される。
【0038】
図3において、X−Y間の圧延材が緩んだとき、ダンサーローラー16、17はBの方に回転する。
【0039】
この時、電動機11は一定で回転している。パウダークラッチ30は張力を発生させ、必要以上のトルクはスリップさせる。このとき張力は変化しない。
【0040】
ポテンショメータ7により、角度変化信号は巻取機3に送られ巻取機3の回転速度をあげ、ダンサーローラー16、17が中立に来るようにさせる。
【0041】
X−Y間の圧延機が張ったとき、ダンサーローラー16、17はAの方に倒れる。
【0042】
電動機11の回転は変化しない。パウダークラッチ30のスリップ量が増え、張力は変化しない。ポテンショメータ7の角度変化指令により、巻取機3のモーター回転数を減じ、ダンサーローラー16、17を中立点に戻すことがなされる。
【0043】
このようにして、圧延材5の板長さが変化すると、測定精度のよい揺動角度の測定によって圧延材のたるみの大きさが測定され、このたるみ値を制御信号として導入した速度制御用の電動機8によって回転軸15を介して一対のダンサーロール16、17の回転軸15を中心として精確に揺動運動が制御させて、以って圧延材の張力一定制御が行われることになる。
【0044】
そして、圧延材5のたるみが計測されてたるみの大きさが変化すると張力値が測定され、張力信号が速度制御用の電動機8に与えられて、この電動機8が速度制御を行うことによって、一対のロール16、17の回転軸15を中心としての揺動運動が制御され、圧延材の張力一定制御が行われることになる。
【0045】
以上の構成を前提に、本実施例について説明する。
【0046】
図5は、本実施例について説明する図であり、圧延材張力変化を示す図である。
【0047】
圧延材張力を圧延材特性に対応して予め設定し、この設定値に対応した
揺動角度及び回転駆動力の調整を適正におこなうことができ、圧延材張力調整を適切に行い、圧延作業および圧延板の巻き取りを確実に行うことが求められる。
【0048】
図5において、圧延材には、例えば電極材に用いられる硬質材料を含んだ材料が用いられる。このような圧延材は、硬度が高く、また板幅が大きく変えられるような場合(板厚20μm)、巻き取りに細心の注意が求められる。本実施例では、圧延材張力の大きさを予め設定しておいて、
揺動角度及び回転駆動源の出力値を調整するので、以下、圧延材張力調整装置、方法として説明する。
【0049】
本例にあっては、例えば圧延材の板幅に対応して、前記首振りダンサーの前記回転軸を中心としての揺動角度の大きさが変えられた。これらの状態が、A、B、Cの形態で図示してある。Aに示す状態は、例えば板幅が650mm、Bに示す状態は、例えば板幅が450mm、Aに示す状態は、例えば板幅が300mmの場合である。図に示すように、
揺動角度の大きさを、
揺動角度大から小へと変えることで、回転軸を中心としたベクトルの大きさを変えることができ、これに伴って圧延材に発生する張力の大きさを変えることができる。Aの状態で圧延材に発生する張力は、T1となり、Bの状態で圧延材に発生する張力は、T2となり、そしてCの状態で圧延材に発生する張力は、T3となる。圧延材にかかる張力は、T1<T2<T3となる。
【0050】
このようにすることで、板幅あるいは板厚が大きい場合ほど張力は小さくすこと、逆にいえば板幅が小さいほど張力を大きくすることができる。これによって、圧延材の板幅あるいは板幅が変わったような場合にあっても、圧延材の板幅あるいは板幅変化の影響を少なくして、圧延材の巻き取りを円滑に行うことができる。
【0051】
この例では、板幅あるいは板幅が変わった場合について説明したが、特に板厚が一定で板幅が変化するようなケースにも本実施例を適用することができる。すなわち、圧延材の板幅に対応して、首振りダンサーの前記回転軸を中心としての揺動角度の大きさを、
揺動角度大から小へと変える。
【0052】
これによって、圧延材の巻取りに細心の注意を要するような場合、圧延材張力を圧延材特性に対応して予め設定し、この設定値に対応した
揺動角度及び回転駆動力の調整を適正におこなうことができ、圧延材張力調整を適切に行うことができ、圧延作業および圧延板の巻き取りを確実に行える。
【0053】
図6〜
図8は、圧延材張力測定結果を示す試験図である。
【0054】
揺動角度測定手段(測定機器)として張力計測器FGC−50(SHINNPO製)が使用された。
【0055】
一対のダンサーロールの圧延材の搬送方向に対する角度が、同じ方向にあるときに、一方方向で0度であり、反対方向で180度であるとして
揺動角を測定する揺動角度測定手段が用いられた。
【0056】
図6に示される測定データは、ダンサーロールが45度に設定された場合を示す。この場合は、圧延材張力を弱くしたい時に使用される。
【0057】
図7に示される測定データは、ダンサーロールが垂直(90°)に設定された場合を示す。この場合は、中間域の圧延材張力使用したい場合である。
【0058】
図8に示される測定データは、ダンサーロールが水平(0°)に設定された場合を示す。この場合は、圧延材張力を強くしたい時に使用される。
【0059】
これらの測定データにおいて、張力設定値(kgf)は、他の電動機11に設定された回転駆動力に対応して設定された張力設定値を示し、実測値(kgf)は、張力測定器50によって計測された実測値を示す。実測は、3回なされ、平均値が計算された。
【0060】
ダンサーロール16、17の角度が0度、45度、90度で差が生じていることを読み取ることができ、ダンサーロールが水平(0°)の時の実測値は、90度の場合の実測値の約5倍になっている。
【0061】
これらの測定データは、パソコンPSのデータベースに取り込まれ、コンピュータによる、圧延材張力を圧延材特性に対応して予め設定し、この設定値に対応した
揺動角度及び回転駆動力の調整を適正におこなうために使用される。
【0062】
一対のダンサーロールが、圧延材張力設定値に対応して0度から180度の範囲に任意の角度に設定され、前記他の駆動機の回転駆動力が設定されて、この設定角度で
揺動するようにしたことを特徴とする圧延材張力制御調整が構成される。
【0063】
また、一対のダンサーロールが、0度から180度の範囲に任意の角度に設定され、前記他の駆動機の回転駆動力が設定されて、圧延材に付与される張力が変えられること
を特徴とする圧延材張力調整装置による圧延材張力調整方法が提供される。
【0064】
すなわち、圧延材に付与される張力の大きさが設定され、張力設定値に対応して、前記一対のダンサーロールの設定角度が0度から180度の範囲に任意の角度に設定され、前記他の駆動機の回転駆動力が設定されることを特徴とする圧延材張力調整御装置による圧延材張力調整方法が提供される。