特許第6563881号(P6563881)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563881通信切替装置、アクセスポイント、端末、通信切替方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563881
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】通信切替装置、アクセスポイント、端末、通信切替方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 36/14 20090101AFI20190808BHJP
   H04W 36/38 20090101ALI20190808BHJP
   H04W 48/20 20090101ALI20190808BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20190808BHJP
【FI】
   H04W36/14
   H04W36/38
   H04W48/20
   H04W88/06
【請求項の数】9
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-175725(P2016-175725)
(22)【出願日】2016年9月8日
(65)【公開番号】特開2018-42138(P2018-42138A)
(43)【公開日】2018年3月15日
【審査請求日】2018年1月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】菊川 義人
【審査官】 野村 潔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−012900(JP,A)
【文献】 特開2005−086766(JP,A)
【文献】 特開2016−163283(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/006792(WO,A1)
【文献】 特開2010−093430(JP,A)
【文献】 特開2011−244325(JP,A)
【文献】 特開2011−015024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24− 7/26
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の通信方式で接続する相手装置に、前記第1の通信方式で接続しているときに、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する検出部と、
前記検出部が前記検出をすると、前記第1の通信方式で前記相手装置と所定の優先度より優先度の高いパケットを通信中であるか否かを確認する確認部と、
前記確認部が前記通信中でないことを確認すると、前記相手装置との接続を前記第2の通信方式に切り替える切替部と、を有し、
前記確認部は、前記所定の優先度より優先度の高いパケットを最後に送信してからの経過時間により、前記通信中であるか否かを確認する通信切替装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記相手装置が前記第2の通信方式に対応していることを確認してから、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する、請求項1記載の通信切替装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記相手装置からの電波強度により前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する、請求項1または2記載の通信切替装置。
【請求項4】
前記切替部は、前記第1の通信方式から前記第2の通信方式に切り替える際に、前記相手装置に前記第2の通信方式に関する情報を含む切断通知を送り、前記相手装置は前記第2の通信方式に関する情報に基づいて前記第2の通信方式で接続する、請求項1からの内の1項記載の通信切替装置。
【請求項5】
前記第1の通信方式はIEEE802.11規格の2.4GHzや5GHzの通信方式を含み、前記第2の通信方式はIEEE802.11規格の60GHzの通信方式を含む、請求項1からの内の1項記載の通信切替装置。
【請求項6】
請求項1からの内の1項記載の通信切替装置で通信を制御されるアクセスポイント。
【請求項7】
請求項1からの内の1項記載の通信切替装置で通信を制御される端末。
【請求項8】
第1と第2の通信方式で接続する相手装置に、前記第1の通信方式で接続しているときに、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出し、
前記検出をすると、前記第1の通信方式で前記相手装置と所定の優先度より優先度の高いパケットを通信中であるか否かを確認し、
前記通信中でないことを確認すると、前記相手装置との接続を前記第2の通信方式に切り替え
前記通信中であるか否かの確認においては、前記所定の優先度より優先度の高いパケットを最後に送信してからの経過時間により、前記通信中であるか否かを確認する通信切替方法。
【請求項9】
前記相手装置が前記第2の通信方式に対応していることを確認してから、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する、請求項記載の通信切替方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線LAN(Local Area Network)などの無線通信における通信方式を切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やゲーム機等、無線子機機能を有する無線端末を、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers:米国電気電子学会)802.11規格である無線LANにより、無線アクセスポイントと接続する技術が広く用いられている。無線LAN通信は、無線アクセスポイントと無線端末が特定の周波数帯の電波を利用することで行われ、その電波が届く範囲ならば、どこでもネットワークに接続できるという利点を持つ。
【0003】
IEEE802.11規格には、11a、11g、11b、11n等が存在し、中でもIEEE802.11ac(以降、11acと表記)は、大容量高速通信を可能とし、近年の主流となっている。
【0004】
また、次世代無線LAN規格として11ad規格が注目を集めている。11adは、これまでの無線LAN規格で用いられてきた2.4GHz帯や5GHz帯とは異なり、60GHz帯のミリ波を使用して通信を行う。このため、広い帯域を使用することで理論上7Gbpsという高速な通信が可能になるという利点を持つ。
【0005】
ところで、上記のような無線LAN技術の普及に伴い、1台のアクセスポイントに複数台の無線端末が帰属して通信を行う場面が増えている。例えば、不特定多数のユーザが利用する公衆無線LANの場面や、家族が各々の無線端末を1台のアクセスポイントに接続する一般家庭での場面や、複数の社員が1台のアクセスポイントに接続するオフィスの場面などである。
【0006】
このような場面では、複数台の無線端末で限られた周波数帯域を分け合うこととなり、アクセスポイントには大きな負荷がかかる。その結果、通信品質が低下するといった問題が生じている。この問題に対して特許文献1には、アクセスポイントの通信チャネル毎に通信状況を検出し、通信状況が悪化した時に、アクセスポイントと通信端末の間での通信方式および通信チャネルを切り換えることによって、所要の通信品質を確保する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011−188122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術は、以下の課題を有している。すなわち、アクセスポイントと通信端末の間での通信方式および通信チャネルの切り換えに際し、切り替え中には通信が切断されるために通信の安定性が損なわれる。その結果、特定の種別のパケットあるいは優先度の高いパケットの通信において、切り替え動作を挟むことでの通信の遅延やパケットの紛失などの通信障害が生じている。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、切り替え時の通信の不安定性の影響を抑制して、通信方式を切り替えることができる通信切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の通信切替装置は、第1と第2の通信方式で接続する相手装置に、前記第1の通信方式で接続しているときに、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する検出部と、前記検出部が前記検出をすると、前記第1の通信方式で前記相手装置と特定パケットを通信中であるか否かを確認する確認部と、前記確認部が前記通信中でないことを確認すると、前記相手装置との接続を前記第2の通信方式に切り替える切替部と、を有する。
【0011】
本発明のアクセスポイントは、本発明の通信切替装置で通信を制御されるアクセスポイントである。
【0012】
本発明の端末は、本発明の通信切替装置で通信を制御される端末である。
【0013】
本発明の通信切替方法は、第1と第2の通信方式で接続する相手装置に、前記第1の通信方式で接続しているときに、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出し、前記検出をすると、前記第1の通信方式で前記相手装置と特定パケットを通信中であるか否かを確認し、前記通信中でないことを確認すると、前記相手装置との接続を前記第2の通信方式に切り替える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、切り替え時の通信の不安定性の影響を抑制して、通信方式を切り替えることができる通信切替装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態の通信切替装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントの構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントが管理するアクセスポイントに接続する無線端末の登録情報を含む無線端末管理テーブルを示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントの通信可能領域を説明するための図である。
図5】本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントの通信可能領域を無線端末が移動する様子を説明するための図である。
図6】本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントの動作を示すフローチャートである。
図7】本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントから送信されるDeauthenticationに付加されるVendor Specific IEの構造を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントから送信されるDeauthenticationに付加されるVendor Specific IEに含まれるSubelement IDの使用可能通信方式との対応を示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態の無線端末から送信されるAssociation Requestに付加されるVendor Specific IEの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の通信切替装置の構成を示すブロック図である。本実施形態の通信切替装置1は、第1と第2の通信方式で接続する相手装置10に、前記第1の通信方式で接続しているときに、前記相手装置10が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する検出部11を有する。さらに、前記検出部11が前記検出をすると、前記第1の通信方式で前記相手装置10と特定パケットを通信中であるか否かを確認する確認部12を有する。さらに、前記確認部12が前記通信中でないことを確認すると、前記相手装置10との接続を前記第2の通信方式に切り替える切替部13を有する。
【0017】
本実施形態の通信切替装置1によれば、通信切替装置1と相手装置10の間での通信方式の切り換えに際し、特定パケットの通信中には切り替えは行われず、特定パケットの通信のないときに切り替えが行われる。これにより、特定パケットへの切り替え動作を挟むことでの通信障害が抑制される。
【0018】
以上のように、本実施形態によれば、切り替え時の通信の不安定性の影響を抑制して、通信方式を切り替えることができる通信切替装置を提供することができる。
(第2の実施形態)
図2は、本発明の第2の実施形態の通信切替装置であるアクセスポイントの構成を示すブロック図である。アクセスポイント2は、無線LANにおけるIEEE802.11規格での2.4GHz帯と5GHz帯に対応する2.4GHz通信部21と5GHz通信部22(11ac規格)、及び11ad規格での60GHz帯に対応する60GHz通信部23を有する。さらにIEEE802.15.1規格でのBluetooth(登録商標)に対応するBluetooth通信部24を有する。本実施形態の通信部の構成としては、2.4GHz通信部21と5GHz通信部22のいずれか一方と、60GHz通信部23とを有していれば、その他の構成は任意とすることができる。
【0019】
アクセスポイント2は、さらに、接続情報格納部25と、通信履歴格納部26と、切替判定部27と、制御部28とを有する。
【0020】
接続情報格納部25は、アクセスポイント2に無線LAN接続する無線端末20の各々が対応している通信方式と、各通信方式で通信する無線端末20の通信部のMACアドレス(Media Access Control address)の情報を格納する。図3は、無線端末1からN(Nは正の整数)ごとの通信方式とそのMACアドレスを含む無線端末管理テーブルを示す。接続情報格納部25は、図3の無線端末管理テーブルを格納する。アクセスポイント2は、無線端末20の前記情報を、例えば、無線端末20がアクセスポイント2に無線LAN接続することで取得することができる。
【0021】
通信履歴格納部26は、特定の種別のパケットや、所定の優先度よりも優先度の高いパケットなどの、特定パケットを、最後に送受信した時間を記録する。これによりアクセスポイント2は、現時点において特定パケットを通信中であるか否かを確認することができる。
【0022】
切替判定部27は、特定パケットを最後に通信した時間からの経過時間を算出し、この経過時間が所定の閾値以上である場合、特定パケットは通信中でないと判定し、通信方式の切り替えを実施することを決定する。
【0023】
制御部28は、例えば、アクセスポイント2が5GHz通信部22で無線端末20に接続しているときに、無線端末20が11ad規格での60GHz帯に対応しているか否かを確認する。この確認は、無線端末20から取得した情報を有する図3の無線端末管理テーブルを確認することで可能である。
【0024】
制御部28は、無線端末20が11ad規格での60GHz帯に対応していることを確認した後、無線端末20が60GHz通信部23の通信可能領域に入ったか否かを検出する。
【0025】
無線端末20が60GHz通信部23の通信可能領域に入ったか否かの検出には、まず、制御部28が、60GHz通信部23に対して、無線端末20に対してBeacon信号を送信するよう指示をする。この指示を受けて、60GHz通信部23は無線端末20に対してBeacon信号を送信する。無線端末20は、Beacon信号を受信すると、これへの返信としての送信Frame信号を送信する。60GHz通信部23が無線端末20からの送信Frame信号を受信すると、制御部28は、この送信Frame信号の電波強度が閾値以上である場合、無線端末20が60GHz通信部23の通信可能領域に入ったと判定する。
【0026】
なお、制御部28は、60GHz通信部23への前記の指示を定期的に行うことができる。また、5GHz通信部22が5GHzでの通信の電波強度を検出していて、この電波強度が閾値を超えたことを確認した時に、さらにはこの時以降、閾値を超え続けている場合は定期的に、指示してもよい。
【0027】
制御部28は、無線端末20が60GHz通信部23の通信可能領域に入ったことを確認すると、切替判定部27に、通信方式の切り替えの実施が可能であるか否かを確認する。制御部28は、切替判定部27が通信方式の切り替えの実施が可能であると返答すると、無線端末20との接続を5GHz通信部22から60GHz通信部23に切り替える。
【0028】
図4に示すように、11ac規格と11ad規格の通信可能領域は、ミリ波を用いる11ad規格の方が11ac規格よりも狭い。よって、図5に示すように、無線端末20が、11ac規格の領域内で11ad規格の領域に侵入した場合に、上記の切り替えの動作が生じることになる。
【0029】
また、図5とは反対に、無線端末20が11ad規格の領域から外れて11ac規格の領域内に移動した場合は、上記の切り替えの動作とは反対に、無線端末20との接続を60GHz通信部23から5GHz通信部22に切り替える。無線端末20が11ad規格の領域から外れたことは、60GHz通信部23の電波強度が閾値を下回ることによって確認することができる。なお、このときにも、制御部28は、切替判定部27に、通信方式の切り替えの実施が可能であるか否かを確認する。切替判定部27は、上記と同様の方法で、通信方式の切り替えの実施が可能であるか否かを判定する。
【0030】
なお、以上の説明、および、以下の図6のフローチャートを用いたアクセスポイント2の動作の説明では、11ad規格と併用する通信方式として11ac規格を挙げているが、これには限定されない。11ac規格の代わりに、2.4GHz帯や別の5GHz帯の規格である11a規格や11n規格などを用いてもよい。また、11ac規格と併用する通信方式として11ad規格を挙げているが、これには限定されない。11ad規格の代わりに、2.4GHz帯や別の5GHz帯の規格である11a規格や11n規格などを用いてもよい。
【0031】
通信方式を切り替えることによって、ひとつの通信方式のチャネルに集中していた通信を、分散させることができ、アクセスポイントの負荷を軽減させることができる。結果として、所望の通信品質を保つことができる。
【0032】
図6は本実施形態の通信切替装置であるアクセスポイント2の動作を示すフローチャートである。図6のフローチャートでは、利用者が、アクセスポイント2に無線端末20が対応している通信方式と、各通信方式で通信する無線端末20の通信部のMACアドレスの情報を、予め登録しておく。
【0033】
これらの通信に関する情報は、図3の無線端末管理テーブルに登録されて接続情報格納部25に保存される。利用者による無線端末管理テーブルへの登録には、アクセスポイント2のWebブラウザでの設定・表示機能であるWEB−GUI(Graphical User Interface)などを用いることができる。
【0034】
図6のフローチャートは、アクセスポイント2と無線端末20とが接続の動作を開始すると、開始となる。接続の動作は、例えば、アクセスポイント2と無線端末20の各々の利用者が、アクセスポイント2と無線端末20の接続動作を起動させるなどにより、開始される。なお、アクセスポイント2と無線端末20の各々の利用者は、同一の利用者であってもよい。
【0035】
ステップS101で、アクセスポイント2は、11ac規格での接続が可能な領域内で、5GHz通信部22で無線端末20と接続する。
【0036】
すなわち、アクセスポイント2の制御部28は、無線端末20が5GHz通信部22の送信するBeacon信号を受けて返送する送信Frameを、5GHz通信部22が受信することで、無線端末20が11ac規格での接続が可能な領域にあることを認識する。制御部28は、これを認識すると、5GHz通信部22に無線端末20との接続を指示する。この指示を受けて、5GHz通信部22は11ac規格で無線端末20と接続する。
【0037】
なお、制御部28は、11ac規格以外の規格でも無線端末20との接続が可能な場合、予め接続する規格に優先順位を設定しておくことで、優先順位の高い規格で接続することができる。
【0038】
ステップS102で、アクセスポイント2は、無線端末20の通信方式を確認する。すなわち、アクセスポイント2の制御部28は、接続情報格納部25に保存されている無線端末管理テーブルを確認することによって、無線端末20の通信方式を確認することができる。
【0039】
ステップS103で、アクセスポイント2は、11ac規格での接続を切り替えることのできる規格、この場合は11ad規格に、無線端末20が対応しているか否かを判定する。すなわち、アクセスポイント2は、無線端末管理テーブルの使用可能通信方式に11ad規格がない場合(S103のNO)、フローチャートを終了する。無線端末管理テーブルの使用可能通信方式に11ad規格がある場合(S103のYES)、ステップS104に移行する。
【0040】
ステップS104で、アクセスポイント2は、無線端末20が11ad規格での通信可能領域に入ったか否かを判定する。
【0041】
すなわち、アクセスポイント2の制御部28は、60GHz通信部23に対して、無線端末20に対してBeacon信号を送信するよう指示をする。この指示を受けて、60GHz通信部23は無線端末20に対してBeacon信号を送信する。無線端末20は、Beacon信号を受信すると、これへの返信としての送信Frame信号を送信する。60GHz通信部23が無線端末20からの送信Frame信号を受信すると、制御部28は、この送信Frame信号の電波強度が閾値以上である場合、無線端末20が11ad規格での通信可能領域に入ったと判定する。
【0042】
なお、無線端末20が11ad規格での通信可能領域に入ったか否かの判定は、電波強度が閾値以上であるか否かの評価には限定されない。前記判定は、例えば、無線端末20からの送信Frame信号の信号雑音比(Signal−Noise Ratio)の評価によっても可能である。
【0043】
制御部28は、無線端末20が11ad規格での通信可能領域に入っていないと判定すると(S104のNO)、前記の電波強度の監視を続けるために、ステップS104を繰り返す。この繰り返しは、定期的に行うことができる。また、5GHz通信部22が5GHzでの通信の電波強度を検出していて、この電波強度が閾値を超えたことを確認した時に、さらにはこの時以降、閾値を超え続けている場合は定期的に、行うこともできる。
【0044】
制御部28は、無線端末20が11ad規格での通信可能領域に入ったと判定すると(S104のYES)、ステップS105に移行する。
【0045】
ステップS105で、アクセスポイント2は、特定パケットを最後に送信してからの経過時間を算出する。
【0046】
すなわち、アクセスポイント2の制御部28は、切替判定部27に、特定パケットを最後に送受信してからの経過時間を算出するよう指示する。この指示を受けて、切替判定部27は、通信履歴格納部26に記録されている、特定パケットを最後に送受信した時間から、前記の経過時間を算出する。なお、特定パケットを最後に送受信した時間とは、送受信を開始した時間や送受信を終了した時間などを、任意に選択することができる。
【0047】
ここで、特定パケットとは、特定の種別のパケットや、所定の優先度よりも優先度の高いパケットなどを含む。これらの特定パケットは、通信中の瞬断による影響を強く受ける可能性があるために、通信方式を切り替える際の瞬断を受けないようにするべきパケットである。
【0048】
特定のパケット種別としては、例えば、RTP(Real−Time Transport Protocol)などが挙げられる。また、高優先度のパケットは、QoS(Quality of Survice)に含まれるDSCP(Differentiated Services Code Point)値で特定することができる。高優先度のパケットとして扱うDSCP値の閾値は任意に設定することができる。
【0049】
ステップS106で、アクセスポイント2は、算出した経過時間が所定の閾値以上であるか否かを判定する。
【0050】
切替判定部27は、経過時間が所定の閾値以上ではない場合(S106のNO)、特定パケットが通信中である可能性があると判定し、通信の安定性を優先するために通信方式の切り替えを実施しないことを決定して、フローチャートを終了する。
【0051】
経過時間の所定の閾値の設定に際しては、例えば、まず、通信履歴格納部26に記録されている最後に送受信した特定パケットの容量と、これを送受信した5GHz通信部22のデータ転送速度(通信速度)とから、送受信にかかる時間を割り出す。さらに、この時間に必要に応じて所定の時間マージンを加算することによって、閾値を設定することができる。なお、所定の時間マージンは、切り替えによる影響がなくなるのに十分な時間マージンであり、過去の実績をフィードバックして更新することができる。
【0052】
なお、切替判定部27が通信方式の切り替えを実施しないことを決定したとき、一定時間の経過後に、ステップS105以降を繰り返すようにしてもよい。また、切替判定部27が通信方式の切り替えを実施しないことを決定したとき、一定時間の経過後に、ステップS104以降を繰り返すようにしてもよい。なお、一定時間の経過後に、無線端末20の位置も変わっていることが想定される場合は、ステップS104以降を繰り返すのが、より好ましい。
【0053】
切替判定部27は、経過時間が所定の閾値以上である場合(S106のYES)、特定パケットは通信中でないと判定することから、通信方式の切り替えを実施することを決定して、ステップS107に移行する。
【0054】
なお、特定パケットが通信中であるかないかの判定は、以上に説明した特定パケットを最後に送受信してからの経過時間には限定されない。特定パケットを通信中であるか否かの判定は、例えば、5GHz通信部22が通信中である場合、通信中のパケットがRTPであるか否かや、QoSに含まれるDSCP値によって、特定パケットであるか否かを判定することでも可能である。
【0055】
ステップS107で、アクセスポイント2は、無線端末20にVendor Specific IEを付加したDeauthentication(切断通知)を送信し、無線端末20を切断する。
【0056】
すなわち、アクセスポイント2の5GHz通信部22は、切替先となる60GHz通信部23の通信方式とMACアドレスの情報を含むVendor Specific IEを付加したDeauthenticationを無線端末20に送信することによって、無線端末20との接続を切断する。
【0057】
図7は、Vendor Specific IEの構造を示す図である。本実施形態のVendor Specific IEは、切替先の通信方式に紐付けられたSubelement IDと、切替先となる通信部のMACアドレスを含んでいる。図8は、Subelement IDとこれに対応する通信方式の例を示す。図8のように、Subelement IDと通信方式を紐付けしておくことにより、切替先となる通信方式の情報を付与することができる。また、切替先の通信部のMACアドレスは、切替先となる60GHz通信部23のMACアドレスである。
【0058】
Subelement IDとMACアドレスとを合わせてDeauthenticationに付加することで、切断後の切替先となる通信方式と通信部の情報を無線端末20に与えることができるので、無線端末20を迅速に切替先へ接続させることが可能となる。
【0059】
ステップS108で、アクセスポイント2は、60GHz通信部23で11ad規格により無線端末20と接続して、フローチャートを終了する。
【0060】
図6のフローチャートでは、利用者がアクセスポイント2に無線端末20が対応している通信方式と、各通信方式で通信する無線端末20の通信部のMACアドレスの情報を無線端末管理テーブルに登録した後に、開始となるとした。しかしながら、利用者がWEB−GUIなどから手動で入力する場合、操作ミスにより誤りが生じる可能性がある。また、接続する無線端末の台数が増える度に入力の操作を行う必要があり、利用者にとっては負担となる。
【0061】
そこで、アクセスポイント2に無線端末20の通信方式とMACアドレスを登録する前に、フローチャートを開始してステップS101の11ac規格での無線端末20との接続を実施する。その際に、無線端末20から送信されるAssociation Requestに、無線端末20の通信方法とMACアドレスの情報を含むVendor Specific IEを付加することで、自動的に無線子機管理テーブルを更新するようにしてもよい。
【0062】
図9は、無線端末から送信されるAssociation Requestに付加されるVendor Specific IEの構造を示す図である。図9のVendor Specific IEでは、無線端末20が対応している通信方式とMACアドレスを全て含むことができる。Vendor Specific IEに無線端末20の通信方法とMACアドレスの情報を付与することで、アクセスポイント2は無線端末20の通信方式とMACアドレスを取得し、無線子機管理テーブルに登録することができる。
【0063】
以上の後、図6のフローチャートのステップS102以降を実施すればよい。
【0064】
なお、本実施形態の通信切替装置であるアクセスポイント2とこれに接続する相手装置である無線端末20との関係は、入れ替わってもよい。すなわち、無線端末20が、以上で説明したアクセスポイント2の構成要素を有して、図6のフローチャートの動作を行うようにすることもできる。
【0065】
本実施形態の通信切替装置であるアクセスポイント2によれば、アクセスポイント2と通信端末20の間での通信方式の切り換えに際し、特定パケットの通信中には切り替えは行われず、特定パケットの通信のないときに切り替えが行われる。これにより、特定パケットへの切り替え動作を挟むことでの通信障害が抑制される。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、切り替え時の通信の不安定性の影響を抑制して、通信方式を切り替えることができる通信切替装置を提供することができる。
【0067】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものである。
【0068】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限られない。
(付記1)
第1と第2の通信方式で接続する相手装置に、前記第1の通信方式で接続しているときに、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する検出部と、
前記検出部が前記検出をすると、前記第1の通信方式で前記相手装置と特定パケットを通信中であるか否かを確認する確認部と、
前記確認部が前記通信中でないことを確認すると、前記相手装置との接続を前記第2の通信方式に切り替える切替部と、を有する通信切替装置。
(付記2)
前記検出部は、前記相手装置が前記第2の通信方式に対応していることを確認してから、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する、付記1記載の通信切替装置。
(付記3)
前記検出部は、前記相手装置からの電波強度により前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する、付記1または2記載の通信切替装置。
(付記4)
前記電波強度は、前記相手装置に送信するBeacon信号を前記相手装置が受けて返信する信号の強度を含む、付記3記載の通信切替装置。
(付記5)
前記確認部は、前記特定パケットを最後に送信してからの経過時間により、前記通信中であるか否かを確認する、付記1から4の内の1項記載の通信切替装置。
(付記6)
前記確認部は、前記経過時間が閾値以上の場合、前記通信中でないとする、付記5記載の通信切替装置。
(付記7)
前記特定パケットは、特定の種別のパケットや所定の優先度以上のパケットを含む、付記1から6の内の1項記載の通信切替装置。
(付記8)
前記切替部は、前記第1の通信方式から前記第2の通信方式に切り替える際に、前記相手装置に前記第2の通信方式に関する情報を含む切断通知を送り、前記相手装置は前記第2の通信方式に関する情報に基づいて前記第2の通信方式で接続する、付記1から7の内の1項記載の通信切替装置。
(付記9)
前記第2の通信方式に関する情報は、前記第2の通信方式で接続するアドレスを含む、付記8記載の通信切替装置。
(付記10)
前記第2の通信方式は、通信できる領域が前記第1の通信方式よりも狭い、付記1から9の内の1項記載の通信切替装置。
(付記11)
前記第1の通信方式はIEEE802.11規格の2.4GHzや5GHzの通信方式を含み、前記第2の通信方式はIEEE802.11規格の60GHzの通信方式を含む、付記1から10の内の1項記載の通信切替装置。
(付記12)
付記1から11の内の1項記載の通信切替装置で通信を制御されるアクセスポイント。
(付記13)
付記1から11の内の1項記載の通信切替装置で通信を制御される端末。
(付記14)
第1と第2の通信方式で接続する相手装置に、前記第1の通信方式で接続しているときに、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出し、
前記検出をすると、前記第1の通信方式で前記相手装置と特定パケットを通信中であるか否かを確認し、
前記通信中でないことを確認すると、前記相手装置との接続を前記第2の通信方式に切り替える、通信切替方法。
(付記15)
前記相手装置が前記第2の通信方式に対応していることを確認してから、前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する、付記14記載の通信切替方法。
(付記16)
前記相手装置からの電波強度により前記相手装置が前記第2の通信方式の領域に入ったことを検出する、付記14または15記載の通信切替方法。
(付記17)
前記電波強度は、前記相手装置に送信するBeacon信号を前記相手装置が受けて返信する信号の強度を含む、付記16記載の通信切替方法。
(付記18)
前記特定パケットを最後に送信してからの経過時間により、前記通信中であるか否かを確認する、付記14から17の内の1項記載の通信切替方法。
(付記19)
前記経過時間が閾値以上の場合、前記通信中でないとする、付記18記載の通信切替方法。
(付記20)
前記特定パケットは、特定の種別のパケットや所定の優先度以上のパケットを含む、付記14から19の内の1項記載の通信切替方法。
(付記21)
前記第1の通信方式から前記第2の通信方式に切り替える際に、前記相手装置に前記第2の通信方式に関する情報を含む切断通知を送り、前記相手装置は前記第2の通信方式に関する情報に基づいて前記第2の通信方式で接続する、付記14から20の内の1項記載の通信切替方法。
(付記22)
前記第2の通信方式に関する情報は、前記第2の通信方式を行う部分のアドレスを含む、付記21記載の通信切替方法。
(付記23)
前記第2の通信方式は、通信できる領域が前記第1の通信方式よりも狭い、付記14から21の内の1項記載の通信切替方法。
(付記24)
前記第1の通信方式はIEEE802.11規格の2.4GHzや5GHzの通信方式を含み、前記第2の通信方式はIEEE802.11規格の60GHzの通信方式を含む、付記14から23の内の1項記載の通信切替方法。
【符号の説明】
【0069】
1 通信切替装置
10 相手装置
11 検出部
12 確認部
13 切替部
2 アクセスポイント
20 無線端末
21 2.4GHz通信部
22 5GHz通信部
23 60GHz通信部
24 Bluetooth通信部
25 接続情報格納部
26 通信履歴格納部
27 切替判定部
28 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9