特許第6563886号(P6563886)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563886
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】給電装置、受電装置および給電方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
   H04L12/44 300
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-218558(P2016-218558)
(22)【出願日】2016年11月9日
(65)【公開番号】特開2018-78432(P2018-78432A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2018年3月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】吉川 英明
【審査官】 西村 純
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−525331(JP,A)
【文献】 特開2005−269890(JP,A)
【文献】 特開2009−106127(JP,A)
【文献】 特開2014−090234(JP,A)
【文献】 特開2008−294951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00−12/955
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1の信号線を介して中継装置に電力を供給する電力供給手段と、
電力供給手段が供給する電力を元に動作する前記中継装置とデータの送受信を、前記第1の信号線を介して行う通信手段と、
前記中継装置の消費電力の情報を前記中継装置から取得する手段と、前記中継装置から供給される電力を元に動作する受電装置の消費電力の情報を、前記中継装置を介して取得する手段とを有する情報取得手段と、
前記情報取得手段が取得した前記中継装置の消費電力と、自装置が供給可能な電力値を基に、前記中継装置への電力供給の可否を判断する手段と、前記情報取得手段が取得した前記中継装置の消費電力と前記受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、前記受電装置への電力供給の可否を判断する手段とを有する判断手段と、
前記判断手段が前記中継装置の消費電力を基に判断した前記中継装置への電力の供給可否を示す情報を、前記中継装置に送信する手段と、前記判断手段が前記中継装置の消費電力と前記受電装置の消費電力の合計値を基に判断した前記受電装置への電力の供給可否を示す情報を、前記中継装置を介して前記受電装置に送信する手段とを有する判断結果送信手段と、
を備え
前記情報取得手段は、前記判断手段が前記中継装置への電力供給が可能と判断し、前記判断結果送信手段が前記中継装置への電力の供給が可能であることを示す情報を前記中継装置に送信した後に、前記中継装置に接続された前記受電装置の消費電力の情報を取得することを特徴とする給電装置。
【請求項2】
前記通信手段は、複数の前記受電装置それぞれとデータの送受信を行い、
前記情報取得手段は、複数の前記受電装置それぞれから前記受電装置ごとの消費電力の情報を取得し、
前記判断手段は、いずれかの前記受電装置から新たに前記消費電力の情報が送られてきたときに、前記中継装置の消費電力および全ての前記受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、新たに送られてきた前記消費電力の情報の送信元の前記受電装置への電力の供給の可否を判断し、
判断結果送信手段は、新たに送られてきた前記消費電力の情報の送信元の前記受電装置に、電力の供給の可否の情報を送信することを特徴とする請求項1に記載の給電装置。
【請求項3】
前記判断手段は、前記中継装置の消費電力および全ての前記受電装置の消費電力の合計値を算出する際に、異常を検知した情報を送信してきた前記受電装置の消費電力の値を加算しないことを特徴とする請求項2に記載の給電装置。
【請求項4】
導電性を有する第1の信号線を介して給電装置とデータの送受信を行う第1の通信手段と、
導電性を有する第2の信号線を介して受電装置とデータの送受信を行う第2の通信手段と、
前記第1の信号線を介して前記給電装置から供給される電力を受電する中継装置受電手段と、
前記中継装置受電手段が受電した電力を元に、前記第2の信号線を介して前記受電装置に電力を供給する電力供給手段と、
前記受電装置と前記給電装置の間で送受信されるデータの中継を行うデータ中継手段と、
前記給電装置に自装置の消費電力の情報を送信し、自装置への給電可否の情報を前記給電装置から取得する手段と、自装置に接続された前記受電装置から送られてくる消費電力の情報を前記給電装置に送信し、前記受電装置への給電可否の情報を前記給電装置から取得する手段とを有する給電情報取得手段と、
前記給電装置から取得した前記給電可否の情報が自装置へ給電可能であることを示すとき、前記受電装置への電力の供給に必要な自装置の機能を動作させる電力を受電するように前記中継装置受電手段を制御する電力供給制御手段と、
を備え
前記給電情報取得手段は、前記中継装置受電手段が前記受電装置への電力の供給に必要な自装置の機能を動作させる電力の受電を開始したとき、自装置に接続された前記受電装置から送られてくる消費電力の情報を前記給電装置に送信することを特徴とする中継装置。
【請求項5】
導電性を有する第2の信号線を介して中継装置から供給される電力を受電する受電手段と、
前記受電手段が受電する電力を元に、前記中継装置とデータの送受信を、前記第2の信号線を介して行うデータ通信手段と、
前記中継装置が電力の供給に必要な機能の動作を開始させたとき、自装置の消費電力の情報を、前記中継装置を介して給電装置に送信し、自装置への給電可否の情報を、前記中継装置を介して前記給電装置から取得する給電可否情報取得手段と、
前記給電装置から取得した前記給電可否の情報が給電可能であることを示すとき、自装置の全ての機能を動作させる電力を受電するように前記受電手段を制御する給電制御手段と、
を備えることを特徴とする受電装置。
【請求項6】
前記給電制御手段は、前記給電可否情報取得手段が前記給電装置から取得した前記給電可否の情報が給電不可であることを示すとき、電力の受電を停止するように前記受電手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の受電装置。
【請求項7】
前記受電手段が受電した電力を蓄電する蓄電手段と、
自装置の異常を検知する異常検知手段と、
をさらに備え、
前記給電制御手段は、前記異常検知手段が異常を検知した際に、電力の受電を停止するように前記受電手段を制御し、前記給電可否情報取得手段は、前記蓄電手段が蓄電していた電力を元に、異常が生じたことを示す情報を前記給電装置に送信することを特徴とする請求項5または6に記載の受電装置。
【請求項8】
請求項1から3いずれかに記載の給電装置と、
前記給電装置と導電性を有する第1の信号線を介して接続されている請求項4に記載の中継装置と、
前記中継装置と導電性を有する第2の信号線を介して接続されている請求項5から7いずれかに記載の受電装置と、
を備え、
前記受電装置は、前記中継装置を介して前記受電装置の消費電力の情報を前記給電装置に送信し、
前記給電装置は、前記中継装置の消費電力と前記受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、前記受電装置への電力供給の可否を判断し、前記受電装置に電力供給の可否を示す情報を、前記中継装置を介して送信することを特徴とする通信システム。
【請求項9】
前記中継装置は、前記給電装置に前記中継装置の消費電力の情報を送信し、前記給電装置から給電可能であることを示す情報を受け取ったとき、前記受電装置への給電を開始し、
前記受電装置は、前記給電装置から供給される電力を元に前記給電装置に前記受電装置の消費電力の情報を、前記中継装置を介して送信することを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
給電装置において、
導電性を有する第1の信号線を介して中継装置に電力を供給し、
前記中継装置の消費電力の情報を前記中継装置から取得し、
前記中継装置の消費電力と自装置が供給可能な電力値を基に、前記中継装置への電力供給の可否を判断し、
前記中継装置への電力供給が可能であったとき、前記中継装置から供給される電力を元に動作する受電装置の消費電力の情報を、前記中継装置を介して取得し、
取得した前記中継装置の消費電力と前記受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、前記受電装置への電力供給の可否を判断し、
判断した前記受電装置への電力供給の可否を示す情報を、前記中継装置を介して前記受電装置に送信することを特徴とする給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号線を介して電力を供給する技術に関するものであり、特に、中継装置を介して電力を供給する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
データ通信用の信号を伝送するメタリック通信線を介して、給電機能を有する通信装置から受電側の通信装置に電力を供給する通信システムが広く用いられている。そのような通信システムは、Ethernet(登録商標)に基づいて構成されている場合には、PoE(Power over Ethernet)と呼ばれる。また、複数の受電装置に電力を供給する場合などには、給電装置は、中継装置を介して受電装置に電力を供給することがある。中継装置を介して受電装置に電力を供給する構成では、中継装置は、給電装置から供給される電力から、自装置の消費電力を差し引いた電力を、受電装置に供給することができる。
【0003】
信号を伝送するメタリック通信線を介して各通信装置に電力を供給する通信システムにおいて、通信を安定して行うためには、各通信装置への電力の供給が安定して行われる必要がある。そのため、各通信装置に供給される電力の合計が、供給可能な電力量を超えないように、各通信装置への給電の制御が行われる。給電の制御を正確に行うためには、受電装置、すなわち、受電側の通信装置が新たに接続された場合などにおいても消費電力を正確に把握し、受電装置の消費する電力の総量が給電可能な電力を超えないように制御する必要がある。そのため、信号を伝送するメタリック通信線を介して各通信装置に電力を供給する通信システムにおいて、受電装置の消費電力の情報を取得する技術の開発が行われている。そのような、受電装置の消費電力の情報を取得する技術としては、例えば、特許文献1のような技術が開示されている。
【0004】
特許文献1の通信システムは、給電側機器と、複数の受電側機器を備えている。また、給電側機器と各受電側機器はLAN(Local Area Network)ケーブルを介して接続されている。特許文献1の各受電側機器は、動作モードごとの最大動作電力の情報を受電側機器に通知する。特許文献1の給電側機器は、各受電側機器から取得した消費電力の情報を基に、供給電力が供給可能な範囲に入るように各受電側機器の動作モードを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−90234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は次のような点で十分ではない。特許文献1の通信システムでは、各受電側機器は、それぞれの最大消費電力の情報を直接、給電側装置に通知している。よって、特許文献1の通信システムでは、給電側機器と受電側機器の間に中継装置を用いた場合には、給電側機器は、受電側機器の消費電力の情報を取得することはできない。そのため、特許文献1では、中継装置を用いた場合に、給電側機器が、消費電力を正確に把握することができずに、供給電力が不足して通信システムの動作が不安定に成る恐れがある。よって、特許文献1の技術では、中継装置を介して給電を行う場合において、消費電力を正確に把握して安定した給電制御を行う技術としては十分ではない。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するため、中継装置を介して給電を行う場合においても、消費電力を正確に把握して安定した給電制御を行うことができる給電装置を得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の給電装置は、電力供給手段と、通信手段と、情報取得手段と、判断手段と、判断結果送信手段を備えている。電力供給手段は、導電性を有する第1の信号線を介して中継装置に電力を供給する。通信手段は、電力供給手段が供給する電力を元に動作する中継装置とデータの送受信を、第1の信号線を介して行う。情報取得手段は、中継装置の消費電力の情報を中継装置から取得する手段を有する。また、情報取得手段は、中継装置から供給される電力を元に動作する受電装置の消費電力の情報を、中継装置を介して取得する手段をさらに有する。判断手段は、情報取得手段が取得した中継装置の消費電力と受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、受電装置への電力供給の可否を判断する。判断結果送信手段は、判断手段が判断した受電装置への電力の供給可否を示す情報を、中継装置を介して受電装置に送信する。
【0009】
本発明の給電方法は、導電性を有する第1の信号線を介して中継装置に電力を供給する。本発明の給電方法は、中継装置の消費電力の情報を中継装置から取得し、中継装置から供給される電力を元に動作する受電装置の消費電力の情報を、中継装置を介して取得する。本発明の給電方法は、取得した中継装置の消費電力と受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、受電装置への電力供給の可否を判断する。本発明の給電方法は、判断した受電装置への電力供給の可否を示す情報を、中継装置を介して受電装置に送信する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、中継装置を介して給電を行う場合においても、消費電力を正確に把握して安定した給電制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施形態の構成の概要を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態の構成の概要を示す図である。
図3】本発明の第2の実施形態の給電装置の構成を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態の給電装置における電力の経路を模式的に示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態の受電装置の構成を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態の受電装置における電力の経路を模式的に示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態の中継装置の構成を示す図である。
図8】本発明の第2の実施形態の中継装置における電力の経路を模式的に示す図である。
図9】本発明の第2の実施形態におけるフレームの構成の例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施形態における電力情報格納部のデータ構成の例を示す図である。
図11】本発明の第3の実施形態の構成の概要を示す図である。
図12】本発明の第3の実施形態の給電装置の構成を示す図である。
図13】本発明の第3の実施形態の受電装置の構成を示す図である。
図14】本発明の第3の実施形態におけるフレームの構成の例を示す図である。
図15】本発明の第3の実施形態の受電装置における電力の経路を模式的に示す図である。
図16】本発明の第3の実施形態における死活監視情報の送信経路を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態の給電装置の構成の概要を示したものである。本実施形態の給電装置は、電力供給手段1と、通信手段2と、情報取得手段3と、判断手段4と、判断結果送信手段5を備えている。電力供給手段1は、導電性を有する第1の信号線を介して中継装置に電力を供給する。通信手段2は、電力供給手段1が供給する電力を元に動作する中継装置とデータの送受信を、第1の信号線を介して行う。情報取得手段3は、中継装置の消費電力の情報を中継装置から取得する手段を有する。また、情報取得手段3は、中継装置から供給される電力を元に動作する受電装置の消費電力の情報を、中継装置を介して取得する手段をさらに有する。判断手段4は、情報取得手段3が取得した中継装置の消費電力と受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、受電装置への電力供給の可否を判断する。判断結果送信手段5は、判断手段4が判断した受電装置への電力の供給可否を示す情報を、中継装置を介して受電装置に送信する。
【0013】
本実施形態の給電装置は、情報取得手段3において、中継装置から供給される電力を元に動作する受電装置の消費電力の情報を、中継装置を介して取得している。本実施形態の給電装置は、判断手段4において中継装置の消費電力と受電装置の消費電力の合計値と、自装置が供給可能な電力値を基に、受電装置への電力供給の可否を判断している。本実施形態の給電装置は、中継装置を介して取得した受電装置の消費電力の情報を用いて給電可否の判断を行っているので、供給する電力が供給可能な範囲内かを適切に判断することができる。また、本実施形態の給電装置は、判断結果送信手段5から電力の供給可否を示す情報を、中継装置を介して受電装置に送信しているので受電装置と給電可否の情報を共有し、供給可能な範囲内で給電を行うことができる。その結果、本実施形態の給電装置を用いることで、中継装置を介して給電を行う場合においても、消費電力を正確に把握して安定した給電制御を行うことができる。
【0014】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図2は、本実施形態の通信システムの構成を示したものである。本実施形態の通信システムは、給電装置10と、受電装置20と、中継装置30と、上位装置40を備えている。本実施形態の通信システムは、受電装置20−1、受電装置20−2、受電装置20−3および受電装置20−4の4台の受電装置20を備えている。また、本実施形態の通信システムは、中継装置30−1および中継装置30−2の2台の中継装置を備えている。
【0015】
給電装置10と受電装置20−1の間、並びに、給電装置10と中継装置30−1および中継装置30−2の間は、メタリック通信線、すなわち、導電性を有する信号線で接続されている。また、中継装置30−1と受電装置20−2の間、並びに、中継装置30−2と受電装置20−3および受電装置20−4の間もメタリック通信線で接続されている。また、給電装置10と上位装置40の間も信号線によって接続されている。
【0016】
図2に示すとおり、給電装置10は、受電装置20−1、中継装置30−1および中継装置30−2と接続され、さらに上位装置40と接続されている。中継装置30−1は、受電装置20−2とさらに接続されている。また、中継装置30−2は、受電装置20−3および受電装置20−4とさらに接続されている。受電装置20および中継装置30は、他の台数であってもよい。例えば、給電装置10に直接、接続されている受電装置20は、2台以上であってもよい。また、1台の中継装置30に接続されている受電装置20は、3台以上であってもよい。また、給電装置10に接続されている中継装置30は、3台以上であってもよい。
【0017】
本実施形態の通信システムは、受電装置20と上位装置40の間で、給電装置10および中継装置30を介してデータの送受信を行うデータ通信システムである。本実施形態の通信システムは、Ethernet(登録商標)として構成されている。また、受電装置20および中継装置30は、給電装置10からメタリック通信線を介して供給される電力によって構成されている。すなわち、本実施形態の通信システムは、PoE(Power over Ethernet)として構成されている。また、受電装置20には、例えば、無線通信のアクセスポイント等の通信装置や、計測装置やカメラ等の通信機能を有する電子機器が用いられる。
【0018】
給電装置10の構成について説明する。図3は、本実施形態の給電装置10の構成を示したものである。給電装置10は、信号用トランス11と、電力用フィルタ12と、電力供給部13と、信号処理部14と、上位側信号用トランス15と、電力信号処理部16と、給電可否判定部17と、電力情報格納部18を備えている。また、給電装置10は、上位装置40と接続されている信号線との接続を行う上位側ポートを備えている。また、給電装置10は、受電装置20または中継装置30と接続されているメタリック通信線との接続を行う受電側ポートを備えている。
【0019】
本実施形態の給電装置10は、信号用トランス11−1、信号用トランス11−2および信号用トランス11−3の3台の信号用トランス11を備えている。また、本実施形態の給電装置10は、電力用フィルタ12−1、電力用フィルタ12−2および電力用フィルタ12−3の3台の電力用フィルタを備えている。信号用トランス11および電力用フィルタ12の一方の側の信号線は、接続されて受電側ポートにそれぞれ接続されている。
【0020】
本実施形態では、信号用トランス11−1および電力用フィルタ12−1の信号線が、受電側ポートA、信号用トランス11−2および電力用フィルタ12−2の信号線が受電側ポートBに接続されている。また、信号用トランス11−3および電力用フィルタ12−3の信号線が受電側ポートCに接続されている。信号用トランス11および電力用フィルタ12は、4台以上、備えられていてもよい。
【0021】
信号用トランス11は、受電装置20または中継装置30との間でデータ通信を行うためのトランスである。信号用トランス11は、信号処理部14と受電側ポートの間に備えられている。信号用トランス11は、信号処理部14から出力された信号を通信ネットワークの規格に基づいた電圧の信号に変換して出力する。また、信号用トランス11は、受電側ポートを介して入力された信号を、給電装置10の内部で用いる電圧の信号に変換して信号処理部14に出力する。
【0022】
電力用フィルタ12は、電力供給部13が出力する電力をメタリック通信線に重畳するフィルタである。電力用フィルタ12は、電力供給部13と受電側ポートの間に備えられている。
【0023】
電力供給部13は、受電側ポートを介して受電装置20および中継装置30に電力を供給する。電力供給部13は、給電可否判定部17の制御に基づいて電力を電力用フィルタ12に出力する。電力供給部13は、外部電源から供給を受けた電力を元に、電力の供給を行う。
【0024】
図4は、本実施形態の給電装置10において電力が供給される際の電力の経路を模式的に示したものである。図4では、電力の経路を破線の矢印で示している。図4に示すように電力供給部13から出力された電力は、電力用フィルタ12を介して信号用トランス11と受電側ポートを接続する信号線に重畳されている。信号用トランス11と受電側ポートを接続する信号線に重畳された電力は、受電側ポートから出力され、受電側ポートに接続された受電装置20または中継装置30に、メタリック通信線を介して供給される。また、本実施形態の電力供給部13は、第1の実施形態の電力供給手段1に相当する。
【0025】
信号処理部14は、入力された信号の送信先を識別し、送信先に応じた経路に出力するスイッチング機能を有する。信号処理部14は、信号用トランス11、上位側信号用トランス15および電力信号処理部16とそれぞれ接続されている。本実施形態の信号処理部14は、第1の実施形態の通信手段2に相当する。
【0026】
上位側信号用トランス15は、上位装置40と通信を行うためのトランスである。上位側信号用トランス15は、信号処理部14と上位側ポートの間に備えられている。上位側信号用トランス15は、信号処理部14から出力された信号を上位装置40との通信をする際の信号電圧に変換して出力する。また、上位側信号用トランス15は、上位側ポートを介して入力された信号を、給電装置10の内部で用いる電圧の信号に変換して信号処理部14に出力する。
【0027】
電力信号処理部16は、受電装置20および中継装置30の消費電力の情報を管理する機能を有する。また、電力信号処理部16は、受電装置20および中継装置30への給電可否の情報を管理する機能を有する。電力信号処理部16は、信号処理部14、給電可否判定部17および電力情報格納部18とそれぞれ接続されている。
【0028】
電力信号処理部16は、受電装置20および中継装置30の消費電力の情報を、各装置から消費電力情報として受け取ったとき、受け取った消費電力情報を電力情報格納部18に保存する。また、電力信号処理部16は、給電可否判定部17の制御に基づいて、給電の可否を示す情報を給電可否情報として受電装置20および中継装置30に電力信号によって送る。本実施形態の電力信号処理部16は、第1の実施形態の情報取得手段3および判断結果送信手段5に相当する。
【0029】
給電可否判定部17は、受電装置20および中継装置30への給電の可否を判断する機能を有する。給電可否判定部17は、電力供給部13、電力信号処理部16および電力情報格納部18とそれぞれ接続されている。
【0030】
給電可否判定部17は、電力情報格納部18に保存されている消費電力情報および最大給電電力情報に基づいて、各装置への給電の可否を判断する。最大給電電力情報は、給電装置10が供給可能な電力の最大値としてあらかじめ設定されている。給電可否判定部17は、各装置への給電の可否を判断すると、装置ごとの給電の可否を示す情報を給電可否情報として生成する。給電可否判定部17は、給電可否情報、給電可否情報の送信先の情報および給電可否情報の送信を要求する情報を電力信号処理部16に送る。また、本実施形態の給電可否判定部17は、第1の実施形態の判断手段4に相当する。
【0031】
電力情報格納部18は、消費電力情報および最大給電電力情報を保存する機能を有する。電力情報格納部18は、各装置の消費電力の情報を、各装置の識別子の情報と関連づけて保存している。本実施形態では、各装置の識別子の情報には、各装置のアドレスの情報が用いられる。各装置の識別子の情報は、各装置を特定できる情報であればアドレス以外の情報が用いられてもよい。電力情報格納部18は、例えば、不揮発性の半導体記憶装置によって構成されている。
【0032】
受電装置20の構成について説明する。図5は、本実施形態の受電装置20の構成を示したものである。受電装置20は、信号用トランス21と、電力信号処理部22と、主回路23と、電力用フィルタ24と、電力受電部25と、電力分配制御部26を備えている。また、受電装置20は、給電装置10または中継装置30と接続されているメタリック通信線との接続を行う給電側ポートを備えている。
【0033】
信号用トランス21は、給電装置10または中継装置30との間でデータ通信を行うためのトランスである。信号用トランス21は、電力信号処理部22と、給電側ポートの間に備えられている。
【0034】
信号用トランス21は、電力信号処理部22から出力された信号を通信ネットワークの規格に基づいた電圧の信号に変換して給電側ポートに出力する。また、信号用トランス21は、給電側ポートを介して入力された信号を、受電装置20の内部で用いる電圧の信号に変換して電力信号処理部22に出力する。
【0035】
電力信号処理部22は、給電装置10または中継装置30に自装置の消費電力を示す情報を消費電力情報として送信する機能を有する。電力信号処理部22は、給電装置10または中継装置30から給電可否情報を受信する機能を有する。電力信号処理部22は、信号用トランス21、主回路23および電力分配制御部26とそれぞれ接続されている。
【0036】
電力信号処理部22は、給電装置10または中継装置30に自装置の消費電力を示す消費電力情報を電力信号によって送信する。また、電力信号処理部22は、給電装置10または中継装置30から給電可否情報に基づく電力信号を受信する。電力信号処理部22は、受信した電力信号から給電可否の情報を抽出し、抽出した給電可否の情報を電力分配制御部26に送る。
【0037】
電力信号処理部22は、給電可否情報が給電可能であることを示すとき、データ透過モードとして動作する。データ透過モードとは、信号用トランス21と、主回路23の間で電力信号処理部22を介してデータの送受信が可能な状態となり、電力信号処理部22は、信号の内容に関する処理を行わない状態のことをいう。
【0038】
主回路23は、受電装置20の主機能に関する処理を行う回路である。主回路23は、上位装置40との間でデータの送受信を行って動作する。主回路23は、例えば、受電装置20が通信端末装置であるときには、上位装置40との間で行うデータ送受信に関する処理を行う。主回路23は、例えば、受電装置20が計測装置やカメラであるときには計測データや映像データの取得や、取得したデータの上位装置40への送信に関する処理を行う。
【0039】
主回路23は、電力分配制御部26から供給される電力によって動作する。主回路23は、電力信号処理部22と接続されている。主回路23は、電力信号処理部22がデータ透過モードのとき、上位装置40とデータの送受信を行う。
【0040】
電力用フィルタ24は、メタリック信号線に重畳された電力を受電するフィルタである。電力用フィルタ24は、電力受電部25と、給電側ポートの間に備えられている。
【0041】
電力受電部25は、給電側ポートを介して給電装置10または中継装置30から供給される電力を受電する。電力受電部25は、受電した電力を電力分配制御部26に出力する。
【0042】
電力分配制御部26は、電力信号処理部22および主回路23への電力の供給および停止を制御する。電力分配制御部26は、電力信号処理部22から送られてくる給電可否情報が給電可能な状態を示すとき、電力信号処理部22および主回路23に電力を供給する。また、電力分配制御部26は、電力信号処理部22から送られてくる給電可否情報が給電不可を示すとき、電力信号処理部22および主回路23への電力の供給を停止する。電力信号処理部22と電力分配制御部26は、給電可否情報等の制御信号の送受信を行う信号線と、電力分配制御部26から電力信号処理部22に電力を供給する信号線によって接続されている。
【0043】
図6は、本実施形態の受電装置20において電力が供給される際の電力の経路を模式的に示したものである。図6では、電力の経路を破線の矢印で示している。図6に示すように、受電装置20に給電側ポートから供給された電力は、電力用フィルタ24を介して電力受電部25によって受電される。電力受電部25は、受電した電力を電力分配制御部26に送る。電力分配制御部26は、電力受電部25から送られてくる電力を元に、電力信号処理部22および主回路23に電力を供給する。
【0044】
中継装置30の構成について説明する。図7は、本実施形態の中継装置30の構成を示したものである。中継装置30は、給電側信号用トランス31と、電力信号処理部32と、主回路33と、給電側電力用フィルタ34と、電力受電部35と、電力分配制御部36を備えている。また、中継装置30は、受電側信号用トランス37と、受電側電力用フィルタ38と、電力供給部39をさらに備えている。また、中継装置30は、給電装置10と接続されているメタリック通信線との接続を行う給電側ポートを備えている。また、中継装置30は、受電装置20と接続されているメタリック通信線との接続を行う受電側ポートを備えている。
【0045】
中継装置30は、給電装置10から電力の供給を受け、供給された電力を元に受電装置20に電力を供給する。中継装置30は、受電機能と給電機能を備える装置である。
【0046】
給電側信号用トランス31は、給電装置10とデータ通信を行うためのトランスである。給電側信号用トランス31は、電力信号処理部32と、給電側ポートの間に備えられている。給電側信号用トランス31は、電力信号処理部32から出力された信号を通信ネットワークの規格に基づいた電圧の信号に変換して出力する。また、給電側信号用トランス31は、給電側ポートを介して入力された信号を、中継装置30の内部で用いる電圧の信号に変換して電力信号処理部32に出力する。
【0047】
電力信号処理部32は、給電装置10に自装置の消費電力を示す情報を消費電力情報として送信する機能を有する。電力信号処理部32は、給電装置10から給電可否情報を受信する機能を有する。電力信号処理部32は、給電側信号用トランス31、主回路33および電力分配制御部36とそれぞれ接続されている。
【0048】
電力信号処理部32は、給電装置10に自装置の消費電力を示す消費電力情報を電力信号によって送信する。また、電力信号処理部32は、給電装置10から給電可否情報に基づく電力信号を受信する。電力信号処理部32は、受信した電力信号から給電可否の情報を抽出し、抽出した給電可否の情報を電力分配制御部36に送る。
【0049】
電力信号処理部32は、給電可否情報が給電可能であることを示すとき、データ透過モードとして動作する。データ透過モードとは、給電側信号用トランス31と、主回路33の間で電力信号処理部32を介してデータの送受信が可能であり、電力信号処理部32は、信号の内容に関する処理を行わない状態のことをいう。
【0050】
主回路33は、中継装置30の主機能に関する処理を行う回路である。また、主回路33は、電力分配制御部36から供給される電力によって動作する。主回路33は、電力信号処理部32および受電側信号用トランス37とそれぞれ接続されている。主回路33は、電力信号処理部32がデータ透過モードのとき、給電装置10と受電装置20の間のデータ通信の中継を行う。
【0051】
給電側電力用フィルタ34は、メタリック信号線に重畳された電力を受電するフィルタである。給電側電力用フィルタ34には、給電側ポートと給電側信号用トランス31の間で分岐された信号線が接続されている。給電側電力用フィルタ34は、電力受電部35と、給電側ポートの間に備えられている。
【0052】
電力受電部35は、給電側ポートを介して給電装置10から供給される電力を受電する。電力受電部35は、受電した電力を電力分配制御部36に出力する。
【0053】
電力分配制御部36は、電力信号処理部32、主回路33および電力供給部39への電力の供給および停止を制御する。電力分配制御部36は、電力受電部35から送られてくる電力を元に、電力信号処理部32、主回路33および電力供給部39に電力を供給する。電力分配制御部36は、電力信号処理部32から送られてくる給電可否情報が給電可能な状態を示すとき、電力信号処理部32、主回路33および電力供給部39に電力を供給する。また、電力分配制御部36は、電力信号処理部32から送られてくる給電可否情報が給電不可を示すとき、電力信号処理部32、主回路33および電力供給部39への電力の供給を停止する。
【0054】
電力信号処理部32と電力分配制御部36は、給電可否情報等の制御信号の送受信を行う信号線と、電力分配制御部36から電力信号処理部32に電力を供給する信号線によって接続されている。
【0055】
受電側信号用トランス37は、受電装置20とデータ通信を行うためのトランスである。受電側信号用トランス37は、主回路33と、受電側ポートの間に備えられている。受電側信号用トランス37は、主回路33から出力された信号を通信ネットワークの規格に基づいた電圧の信号に変換して、受電側ポートに出力する。また、受電側信号用トランス37は、受電側ポートを介して入力された信号を、中継装置30の内部で用いる電圧の信号に変換して主回路33に出力する。
【0056】
受電側電力用フィルタ38は、電力供給部39が出力する電力をメタリック通信線に重畳するフィルタである。受電側電力用フィルタ38の出力側の信号線は、受電側信号用トランス37と受電側ポートを接続する信号線と接続されている。受電側電力用フィルタ38は、電力供給部39から供給される電力を、受電側信号用トランス37と受電側ポートを接続する信号線に重畳する。
【0057】
電力供給部39は、受電側ポートを介して対向する受電装置20に電力を供給する。電力供給部39は、電力分配制御部36から供給される電力を受電側電力用フィルタ38に出力する。
【0058】
図8は、本実施形態の中継装置30において、給電装置10から電力の供給を受けて、受電装置20に電力の供給を行う際の電力の経路を模式的に示したものである。図8では、電力の経路を破線の矢印で示している。図8に示すように、中継装置30に給電側ポートから供給された電力は、給電側電力用フィルタ34を介して電力受電部35によって受電される。電力受電部35は、受電した電力を電力分配制御部36に送る。電力分配制御部36は、電力受電部35から送られてくる電力を元に、電力信号処理部32、主回路33および電力供給部39に電力を供給する。
【0059】
図8において、電力供給部39から出力された電力は、受電側電力用フィルタ38を介して受電側信号用トランス37と受電側ポートを接続する信号線に重畳されている。受電側信号用トランス37と受電側ポートを接続する信号線に重畳された電力は、受電側ポートから出力され、受電側ポートに接続された受電装置20に、メタリック通信線を介して供給される。
【0060】
図7に示す中継装置30は、受電側ポートに接続される受電装置20が1台のみに対応する構成を有しているが、中継装置30は、複数の受電装置20を接続できる構成を備えていてもよい。複数の受電装置20を接続する構成とする場合には、受電装置20が接続する台数に応じた数の受電側信号用トランス37、受電側電力用フィルタ38および受電側ポートを備える構成とする。
【0061】
上位装置40は、給電装置10および中継装置30を介して受電装置20とデータの送受信を行う。上位装置40には、例えば、サーバ等の情報処理装置が用いられる。本実施形態の上位装置40は、外部電源によって動作する。上位装置40も給電装置10から電源の供給を受ける構成としてもよい。
【0062】
本実施形態の通信システムの動作について説明する。図2の構成の通信システムにおいて、給電装置10の受電側ポートBに中継装置30−1が接続され、中継装置30−1にさらに受電装置20−2が接続された場合を例に説明する。
【0063】
始めに給電装置10に中継装置30−1が接続された場合の動作について説明する。以下の説明では、中継装置30−1を中継装置30として表記する。給電装置10の受電側ポートBにメタリック通信線を介して中継装置30が接続されると、給電装置10から中継装置30への電力の供給が開始される。給電装置10の電力供給部13から出力された電力は、電力用フィルタ12を介して信号線に重畳される。信号線に重畳された電力は、受電側ポートから出力される。給電装置10の受電側ポートから出力された電力は、メタリック通信線を伝送されて中継装置30に供給される。
【0064】
メタリック通信線に重畳されて中継装置30に供給された電力は、給電側電力用フィルタ34を介して電力受電部35で受電される。電力受電部35は、給電装置10から供給される電力を受電すると、受電した電力を電力分配制御部36に送る。電力分配制御部36は、電力受電部35から電力が送られてくると、送られてきた電力を電力信号処理部32にのみ供給する。すなわち、このとき、電力分配制御部36は、主回路33および電力供給部39には電力を供給しない。
【0065】
電力信号処理部32の消費電力が、主回路33の消費電力に比べ、十分に小さい値であるとき、給電装置10から中継装置30に供給される電力は、中継装置30の通常の動作時に比べ十分に小さい。そのため、電力信号処理部32にのみ電力を供給している際に、給電装置10から中継装置30への電力供給が、過電流状態となる恐れは無い。
【0066】
電力信号処理部32は、電力分配制御部36から電力の供給を受けると動作を開始する。電力信号処理部32は、動作を開始すると、自装置の消費電力の最大値の情報示す消費電力情報を電力信号として給電側信号用トランス31に出力する。中継装置30における自装置の消費電力の最大値とは、主回路33を含む中継装置30の全機能が動作した場合の消費電力のことをいう。
【0067】
消費電力情報に基づく電力信号が入力されると、給電側信号用トランス31は、受け取った電力信号を、通信規格に沿った電圧の電力信号に変換して出力する。給電側信号用トランス31から出力された電力信号は、中継装置30の給電側ポートからメタリック通信線に出力される。
【0068】
中継装置30から出力された電力信号は、メタリック通信線を伝送され、給電装置10の受電側ポートに入力される。給電装置10の受電側ポートに入力された電力信号は、信号用トランス11に入力される。電力信号が入力されると、信号用トランス11は、受け取った電力信号を中継装置30の内部で用いる電圧の信号に変換し信号処理部14に送る。
【0069】
信号処理部14は、消費電力情報に基づく電力信号を受信すると、受信した信号の識別子を参照して、通常のデータか消費電力情報等の制御情報であるかを確認し、通常のデータの場合には、送信先に基づいて各ポートに信号を振り分ける。また、信号処理部14は、入力されたEthernetヘッダを参照し、送信元のアドレスを基に、各ポートのアドレス学習を行う。電力信号のEthernetヘッダの送信元アドレスに「01」が設定されていたとすると、信号処理部14は、中継装置30が接続されている受電側ポートに対応するアドレスとして「01」を登録する。
【0070】
本実施形態の通信システムでは、通常データと電力信号は、Ethernetフレームフォーマットで構成されている。図9は、本実施形態の通信システムにおけるフレームフォーマットの例を模式的に示したものである。図9の例に示すとおり、本実施形態のEthernetフレームは、ヘッダ、識別子、データおよびFCS(Frame Check Sequence)によって構成されている。ヘッダは、宛先アドレス、送信元アドレスおよびフレームの種別を示すTYPE等の情報によって構成されている。図9の例では、識別子の領域に通常のデータフレームか、電力信号のフレームかを判別する情報が付加されている。
通常データと電力信号は、それぞれに割り当てられた識別子によって判別される。フレームが電力信号に基づくものであるとき、データの領域は、消費電力情報または給電可否情報によって構成されている。
【0071】
信号処理部14は、受け取ったフレームが電力信号であることを検知すると、消費電力情報を抽出する。信号処理部14は、消費電力情報を抽出すると、中継装置30を識別する情報と、消費電力の情報を関連づけて電力情報格納部18に保存する。本実施形態では、中継装置30を識別する情報は、中継装置30のアドレスが用いられる。
【0072】
図10は、電力情報格納部18に保存されているデータの構成を模式的に示したものである。電力情報格納部18は、図10に示すように、給電装置10が供給可能な最大の電力の情報と、各装置のアドレスおよび各装置のアドレスと関連づけられた各装置の消費電力の情報が保存されている。
【0073】
給電可否判定部17は、中継装置30から消費電力情報を受け取ると、電力情報格納部18に情報が保存されている各装置の消費電力の合計値と、供給可能な電力の最大値を比較する。消費電力の合計値が供給可能な電力の最大値以下のとき、給電可否判定部17は、新たに接続された装置への給電、すなわち、電力の供給が可能と判断する。また、消費電力の合計値が供給可能な電力の最大値以下のとき、給電可否判定部17は、新たに接続された装置への電力の供給は不可と判断する。
【0074】
電力の供給の可否を判断すると、給電可否判定部17は、給電可否の示す情報を電力信号処理部16に送る。給電可否の情報を受け取ると、電力信号処理部16は、受けった給電可否の情報を基に中継装置30に送る電力信号を生成する。中継装置30に送る電力信号を生成すると、電力信号処理部16は、生成した信号を信号処理部14に送る。
【0075】
信号処理部14は、電力信号を受け取ると、ヘッダを参照して送信先を判断する。送信先が中継装置30を示すアドレス「01」であるとき、信号処理部14は、対応する受電側ポートに接続されている信号用トランス11に電力信号を送る。
【0076】
信号用トランス11は、電力信号を受け取ると、受け取った信号をメタリック通信線で通信を行う際の電圧の信号に変換して出力する。信号用トランス11から出力された電力信号は、受電側ポートを介して給電装置10からメタリック通信線に出力される。
【0077】
給電装置10から出力された電力信号は、メタリック通信線を伝送されて、中継装置30の給電側ポートに入力される。給電側ポートから給電装置10に入力された電力信号は、給電側信号用トランス31に入力される。
【0078】
電力信号が入力されると、給電側信号用トランス31は、電力信号を中継装置30内で用いる電圧の信号に変換し、電力信号処理部32に送る。電力信号処理部32は、電力信号を受け取ると、受信した電力信号から給電可否情報を抽出し、給電装置10からの給電可否を確認する。給電可否情報が給電可能であることを示しているとき、電力信号処理部32は、データ透過モードとして動作する。
【0079】
また、電力信号処理部32は、給電可否情報を抽出すると、抽出した給電可否情報を電力分配制御部36に送る。電力分配制御部36は、給電可否情報を受け取ると、給電装置10からの給電が可能であるかを確認する。給電可能であるとき、電力分配制御部36は、主回路33および電力供給部39への電力の供給を開始する。
【0080】
主回路33および電力供給部39への電力の供給が開始されると、中継装置30の装置全体が動作可能になる。電力供給部39への電力の供給が開始されると、受電側ポートにメタリック通信線を介して受電装置20が接続されたときに、受電装置20への電力の供給が可能な状態となる。また、電力信号処理部32がデータ透過モードとして動作しているので、給電側信号用トランス31と主回路33の間でデータ通信が可能な状態となる。
【0081】
給電可否情報が給電不可であることを示しているとき、電力分配制御部36は、給電不可であることを確認すると、電力供給を全て停止する。電力分配制御部36から中継装置30の各部位への電力供給が全て停止されるので、中継装置30は、動作を停止しシャットダウン状態となる。シャットダウン状態となった中継装置30は、給電側ポートの再接続を行うことで、メタリック通信線からの電力を受電し、初期状態となる。
【0082】
次に、中継装置30−1の装置全体が動作可能な状態となった後に、中継装置30−1に受電装置20−2が接続された場合における動作について説明する。以下の説明では、中継装置30−1を中継装置30、受電装置20−2を受電装置20として表記する。
【0083】
中継装置30の受電側ポートにメタリック通信線を介して受電装置20が接続されると、中継装置30から受電装置20への電力の供給が開始される。中継装置30の電力供給部39から出力された電力は、受電側電力用フィルタ38を介して信号線に重畳される。信号線に重畳された電力は、受電側ポートから出力される。中継装置30の受電側ポートから出力された電力は、メタリック通信線を伝送されて受電装置20に供給される。
【0084】
メタリック通信線に重畳されて受電装置20に供給された電力は、電力用フィルタ24を介して電力受電部25で受電される。電力受電部25は、中継装置30から供給される電力を受電すると、受電した電力を電力分配制御部26に送る。
【0085】
電力分配制御部26は、電力受電部25から電力が送られてくると、送られてきた電力を電力信号処理部22にのみ供給する。すなわち、このとき、電力分配制御部26は、主回路23には電力を供給しない。
【0086】
電力信号処理部22の消費電力が、主回路23の消費電力に比べ、十分に小さい値であるとき、中継装置30から受電装置20に供給される電力は、受電装置20の通常の動作時に比べ十分に小さい。そのため、電力信号処理部22にのみ電力を供給している際に、中継装置30から受電装置20への電力供給が、過電流状態となる恐れは無い。
【0087】
電力信号処理部22は、電力分配制御部26から電力の供給を受けると動作を開始する。電力信号処理部22は、動作を開始すると、自装置の消費電力の最大値の情報示す消費電力情報を電力信号として信号用トランス21に出力する。受電装置20における自装置の消費電力の最大値とは、主回路23を含む受電装置20の全機能が動作した場合の消費電力のことをいう。
【0088】
消費電力情報に基づく電力信号が入力されると、信号用トランス21は、受け取った電力信号を、通信規格に沿った電圧の電力信号に変換して出力する。信号用トランス21から出力された電力信号は、受電装置20の給電側ポートからメタリック通信線に出力される。
【0089】
受電装置20から出力された電力信号は、メタリック通信線を伝送され、中継装置30の受電側ポートに入力される。中継装置30の受電側ポートに入力された電力信号は、受電側信号用トランス37に入力される。電力信号が入力されると、受電側信号用トランス37は、受け取った電力信号を受電装置20の内部で用いる電圧の信号に変換して主回路33に送る。電力信号を受け取ると、主回路33は、受け取った電力信号を電力信号処理部32に送る。
【0090】
電力信号を受け取ると、電力信号処理部32は、データ透過モードとして動作しているので、受け取った電力信号を給電側信号用トランス31に出力する。給電側信号用トランス31は、電力信号を受け取ると、受け取った電力信号を通信規格に基づいた電圧に変換して給電側ポートを介してメタリック通信線に出力する。
【0091】
中継装置30から出力された電力信号は、メタリック通信線を伝送され、給電装置10の受電側ポートBに入力される。給電装置10の受電側ポートBに入力された電力信号は、信号用トランス11に入力される。電力信号が入力されると、信号用トランス11は、受け取った電力信号を給電装置10の内部で用いる電圧の信号に変換し信号処理部14に送る。
【0092】
信号処理部14は、消費電力情報に基づく電力信号を受信すると、受信した信号の識別子を参照して、通常のデータか消費電力情報等の電力信号であるかを確認し、通常のデータの場合には、送信先に基づいて各ポートに信号を振り分ける。また、電力信号処理部32は、入力されたEthernetヘッダを参照し、送信元のアドレスを基に、各ポートのアドレス学習を行う。
【0093】
電力信号のEthernetヘッダの送信元アドレスに「02」が設定されていたとすると、信号処理部14は、受電装置20が接続されている受電側ポートBに対応するアドレスとして「02」を登録する。
【0094】
電力信号処理部32は、受け取ったフレームが電力信号であることを検知すると、消費電力情報を抽出する。電力信号処理部32は、消費電力情報を抽出すると、受電装置20を識別する情報と、消費電力の情報を関連づけて電力情報格納部18に保存する。本実施形態では、受電装置20を識別する情報は、受電装置20のアドレスが用いられる。
【0095】
給電可否判定部17は、中継装置30を介して受電装置20の消費電力情報を受け取ると、電力情報格納部18に情報が保存されている各装置の消費電力の合計値と、供給可能な電力の最大値を比較する。消費電力の合計値が供給可能な電力の最大値以下のとき、給電可否判定部17は、新たに接続された受電装置20への給電、すなわち、電力の供給が可能と判断する。また、消費電力の合計値が供給可能な電力の最大値以下のとき、給電可否判定部17は、新たに接続された装置への電力の供給は不可と判断する。
【0096】
電力の供給の可否を判断すると、給電可否判定部17は、給電可否の示す情報を電力信号処理部16に送る。給電可否の情報を受け取ると、電力信号処理部16は、受けった給電可否の情報を基に中継装置30に送る電力信号を生成する。中継装置30に送る電力信号を生成すると、給電可否判定部17は、生成した信号を信号処理部14に送る。
【0097】
信号処理部14は、電力信号を受け取ると、ヘッダを参照して送信先を判断する。送信先が中継装置30を示すアドレス「02」であるとき、信号処理部14は、対応する受電側ポートBに接続されている信号用トランス11に電力信号を送る。
【0098】
給電側信号用トランス31は、電力信号を受け取ると、受け取った信号をメタリック通信線で通信を行う際の電圧の信号に変換して出力する。信号用トランス11から出力された電力信号は、受電側ポートBを介して給電装置10からメタリック通信線に出力される。
【0099】
給電装置10から出力された電力信号は、メタリック通信線を伝送されて、中継装置30の給電側ポートに入力される。
【0100】
給電側ポートを介して中継装置30に入力された電力信号は、給電側信号用トランス31に送られる。給電側信号用トランス31は、電力信号を受け取ると、受け取った電力信号を中継装置30内で用いる電圧の信号に変換し、電力信号処理部32に送る。電力信号処理部32は、データ透過モードで動作しているため、電力信号を受け取ると受け取った電力信号を受電側信号用トランス37に出力する。受電側信号用トランス37は、電力信号を受け取ると、通信規格に沿った電圧の信号に変換し、受電側ポートを介して電力信号をメタリック通信線に出力する。
【0101】
中継装置30から出力された電力信号は、メタリック通信線を伝送されて、受電装置20に入力される。給電側ポートから受電装置20に入力された電力信号は、信号用トランス21に入力される。
【0102】
電力信号が入力されると、信号用トランス21は、電力信号を受電装置20内で用いる電圧の信号に変換し、電力信号処理部22に送る。電力信号処理部22は、電力信号を受け取ると、受信した電力信号から給電可否情報を抽出し、給電装置10からの給電可否を確認する。給電可否情報が給電可能であることを示しているとき、電力信号処理部22は、データ透過モードとして動作する。
【0103】
また、電力信号処理部22は、給電可否情報を抽出すると、抽出した給電可否情報を電力分配制御部26に送る。電力分配制御部26は、給電可否情報を受け取ると、給電装置10からの給電が可能であるかを確認する。給電可能であるとき、電力分配制御部26は、主回路23への電力の供給を開始する。主回路23への電力の供給が開始されると、受電装置20の装置全体が動作可能になる。
【0104】
給電可否情報が給電不可であることを示しているとき、電力分配制御部26は、給電不可であることを確認すると、電力供給を全て停止する。電力分配制御部26から受電装置20の各部位への電力供給が全て停止されるので、受電装置20は、動作を停止しシャットダウン状態となる。シャットダウン状態となった受電装置20は、給電側ポートの再接続を行うことで、中継装置30を介して供給されている電力をメタリック通信線から受電し、初期状態となる。
【0105】
中継装置30および受電装置20が通常の動作状態、すなわち、全ての機能が動作している状態となると、給電装置10から電力の供給を受けて動作している受電装置20と上位装置40との間でデータ通信が行われる。
【0106】
本実施形態の通信システムでは、給電装置10にメタリック通信線を介して中継装置30が接続された際に、中継装置30は、給電装置10から供給される電力を基に、電力信号処理部32のみを動作させて消費電力の情報を給電装置10に送信している。消費電力の情報の送信に必要な最小限の機能のみを動作させて、消費電力の情報を送信しているので、給電装置10は、電力の供給能力を超える状態を避けつつ中継装置30の消費電力の情報を取得することができる。
【0107】
また、給電装置10は、中継装置30への電力の供給が可能と判断すると、中継装置30に給電可能であることを示す電力信号を送信している。中継装置30は、給電可能であるありことを示す情報を受け取ると、全ての機能を動作状態にし、受電装置20への電力の供給を開始している。このように中継装置30への電力の供給を開始することで、中継装置30が新たに給電装置10に接続された際に、電力の供給不足を生じることなく給電を開始することができる。
【0108】
中継装置30にさらに受電装置20が接続されたときに、受電装置20は、中継装置30から供給される電力を基に、電力信号処理部22のみを動作させて消費電力の情報を、中継装置30を介して給電装置10に送信している。消費電力の情報の送信に必要な最小限の機能のみを動作させて、消費電力の情報を送信しているので、給電装置10は、電力の供給能力を超える状態を避けつつ受電装置20の消費電力の情報を取得することができる。
【0109】
また、給電装置10は、受電装置20への電力の供給が可能と判断すると、受電装置20に給電可能であることを示す電力信号を送信している。受電装置20は、給電可能であるありことを示す情報を受け取ると、全ての機能を動作状態にしている。このように受電装置20への電力の供給を開始することで、受電装置20が中継装置30を介して新たに接続された際に、電力の供給不足を生じることなく給電を開始することができる。
【0110】
本実施形態の通信システムでは、上記のように受電装置20や中継装置30が新たに接続された場合でも、各装置が複数段階による受電開始動作を行うことで、電力の供給不足が生じて通信システムの動作に不具合が生じることを避けることができる。そのため、本実施形態の通信システムは、新たな装置の接続が行われた場合でも、データ通信を安定して継続することができる。
【0111】
本実施形態の通信システムでは、Ethernetフレームを用いて消費電力の情報および給電可否の情報の送受信を行っている。よって、本実施形態の通信システムでは、データ通信に用いる主信号と同形式のフレームを用いて消費電力の情報および給電可否の情報の送受信を行うことができる。そのため、本実施形態の通信システムでは、消費電力情報や給電可否の情報の送受信を新たな設備等を必要とせずに行うことができる。以上より、本実施形態の通信システムは、中継装置を介して給電を行う場合においても、複雑な設備を必要とすることなく、消費電力を正確に把握して安定した給電制御を行うことができる。
【0112】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態について図を参照して詳細に説明する。図11は、本実施形態の通信システムの構成の概要を示したものである。第2の実施形態の通信システムにおいて、受電装置の電力信号処理部は、通常の動作時に、データ透過モードで動作を行っていた。本実施形態の通信システムでは、通常の動作時においても電力信号処理部が処理を継続し、自装置の動作状態を給電装置に通知することを特徴とする。
【0113】
本実施形態の通信システムは、給電装置50と、受電装置60と、中継装置30と、上位装置40を備えている。本実施形態の通信システムは、受電装置60−1、受電装置60−2、受電装置60−3および受電装置60−4の4台の受電装置60を備えている。また、本実施形態の通信システムは、中継装置30−1および中継装置30−2の2台の中継装置を備えている。各装置の間は、第2の実施形態と同様にメタリック通信線等を介して接続されている。また、受電装置60および中継装置30は、他の台数であってもよい。
【0114】
本実施形態の通信システムにおいて、中継装置30および上位装置40の構成は第2の実施形態を同様である。
【0115】
給電装置50の構成について説明する。図12は、本実施形態の給電装置50の構成を示したものである。給電装置50は、信号用トランス51と、電力用フィルタ52と、電力供給部53と、信号処理部54と、上位側信号用トランス55と、電力信号処理部56と、給電可否判定部57と、電力情報格納部58を備えている。また、給電装置50は、上位装置40と接続されている信号線との接続を行う上位側ポートを備えている。また、給電装置50は、受電装置60または中継装置30と接続されているメタリック通信線との接続を行う受電側ポートを備えている。
【0116】
本実施形態の信号用トランス51、電力用フィルタ52、電力供給部53、上位側信号用トランス55および給電可否判定部57の構成と機能は第2の実施形態の同名称の部位と同様である。
【0117】
信号処理部54は、第2の実施形態の信号処理部14と同様の機能に加え、死活監視情報に基づく電力信号の処理を行う機能を有する。死活監視情報とは、受電装置60が正常に動作しているか、動作を停止している状態であるかを給電装置50に通知する情報のことをいう。信号処理部54は、信号用トランス51から入力されたフレームのヘッダを参照し、ヘッダに受電装置60の死活監視情報を示す識別子が付加されていないかを確認する。ヘッダに死活監視情報を示す識別子が付加されているとき、信号処理部54は、死活監視情報を電力信号処理部56に送る。
【0118】
電力信号処理部56は、第2の実施形態の電力信号処理部16と同様の機能に加え、受電装置60の死活監視を行う機能を有する。電力信号処理部56は、受電装置60から異常を示す情報が死活監視情報として送られてきたとき受電装置60に異常が生じていると判断する。また、電力信号処理部56は、電力情報格納部58に登録されている受電装置60について基準時間内に死活監視情報を受信しているかを確認する。基準時間は、受電装置60の接続状態や、受電装置60の本体に異常が生じていることを判断するための時間としてあらかじめ設定されている。基準時間は、受電装置60が死活監視情報を送信する時間間隔よりも長くなるように設定されている。
【0119】
電力信号処理部56は、受電装置60に異常が生じていると判断すると、異常が生じていると判断した受電装置60の情報を電力情報格納部58から消去する。また、電力信号処理部56は、正常に動作していることを示す死活監視情報を受け取ったとき、受け取った日時の情報を電力情報格納部58に、送信元の受電装置60の識別子の情報と関連づけて保存する。送信元の受電装置60の識別子の情報は、受電装置60のアドレスを用いて設定されている。
【0120】
電力情報格納部58は、第2の実施形態と同様の情報に加え、死活監視情報を受け取った日時の情報を、受電装置60の識別子の情報と関連づけて保存する機能を有する。
【0121】
受電装置60の構成について説明する。図13は、本実施形態の受電装置60の構成について示したものである。受電装置60は、信号用トランス61と、電力信号処理部62と、主回路63と、電力用フィルタ64と、電力受電部65と、電力分配制御部66と、異常検出部67と、充放電回路68を備えている。また、受電装置60は、給電装置50または中継装置30と接続されているメタリック通信線との接続を行う給電側ポートを備えている。
【0122】
本実施形態の信号用トランス61、主回路63、電力用フィルタ64および電力受電部65の構成と機能は、第2の実施形態の同名称の部位と同様である。
【0123】
電力信号処理部62は、第2の実施形態の電力信号処理部22と同様の機能に加え、自装置の動作状態を死活監視情報として給電装置50に送信する機能を有する。
【0124】
電力信号処理部62は、受電装置60が正常に動作しているとき、所定の時間ごとに正常であることを示す死活監視情報を生成し、死活監視情報と基にした電力信号を給電装置50に送信する。死活監視情報を生成する所定の時間は、死活監視を適切に行いつつ、負荷増によってデータ通信の処理に影響を与えない間隔としてあらかじめ設定されている。電力信号処理部62は、Ethernetフレームのヘッダに死活監視情報であることを示すヘッダを付加して、死活監視情報を基にした電力信号を送信する。
【0125】
図14は、受電装置60から給電装置50に送られるフレーム構成の例を模式的に示したものである。第2の実施形態の電力信号は、消費電力情報および給電可否情報を通知する信号として設定されていたが、本実施形態では、さらに、死活監視情報を通知する信号として設定されている。死活監視情報を通知する信号の場合には、Ethernetフレームの識別子の領域に死活監視情報であることを示す情報が付加される。図14では、消費電力情報および給電可否情報を通知する電力信号の識別子は「電力1」、死活監視情報と通知する電力信号の識別子は「電力2」として設定されている例を示している。
【0126】
電力信号処理部62は、異常検出部27が異常を検出したとき、異常が生じたことを示す死活監視情報を生成し、死活監視情報を基にした電力信号を給電装置50に送信する。
【0127】
電力信号処理部62は、充放電回路68を介して電力分配制御部66から供給される電力を元に動作する。そのため、電力分配制御部66からの電力の供給が停止した場合においても、電力信号処理部62は、充放電回路68から供給される電力を元に異常が生じたことを示す死活監視情報を給電装置50に送信することができる。また、本実施形態の電力信号処理部62は、給電可否情報が給電可能であることを示すときも、データ透過モードとして動作せずに信号の処理を継続する。
【0128】
電力分配制御部66は、第2の実施形態の電力分配制御部26と同様の機能を有する。本実施形態の電力分配制御部66は、充放電回路68を介して電力信号処理部62に電力を供給する。また、電力分配制御部66は、異常検出部67から異常を検出したことを示す情報を受け取ると、電力信号処理部62および主回路63への電力の供給を停止する。
【0129】
図15は、本実施形態の受電装置60において電力が供給される際の電力の経路を模式的に示したものである。図15では、電力の経路を破線の矢印で示している。図15に示すように、受電装置60に給電側ポートから供給された電力は、電力用フィルタ64を介して電力受電部65によって受電される。電力受電部65は、受電した電力を電力分配制御部66に送る。電力分配制御部66は、電力受電部65から送られてくる電力を元に、電力信号処理部62および主回路63に電力を供給する。電力分配制御部66は、充放電回路68を介して電力信号処理部62に電力を供給する。
【0130】
異常検出部67は、受電装置60の動作状態を監視し、異常を検知する機能を有する。異常検出部67は、例えば、受電装置60に過電流が生じた場合や、主回路63の動作に不具合が生じた場合に、異常が発生したと判断する。異常検出部67は、異常を検知すると、異常が発生したことを示す情報を、電力信号処理部62および電力分配制御部66に送る。
【0131】
充放電回路68は、電力分配制御部66から供給される電力を蓄える機能を有する。充放電回路68は、電力分配制御部66からの電力の供給が停止した際に、電力信号処理部62が、異常が生じたことを示す死活監視情報を基にした電力信号を給電装置50に送信するために必要な電力を保持する機能を有する。充放電回路68は、例えば、電力信号処理部62が、電力信号を給電装置50に送信するために必要な電力を保持できる容量のキャパシタによって構成されている。充放電回路68は、リチウムイオン電池などの2次電池を用いて構成されていてもよい。
【0132】
本実施形態の通信システムの動作について説明する。図11の構成の通信システムにおいて、給電を開始した後、給電装置50と、受電装置60−2が中継装置30−1を介して死活監視情報の送受信を行う場合について説明する。本実施形態の通信システムにおいて、消費電力情報を基に給電可否が判断され給電が開始されるまでの動作は、第2の実施形態と同様である。よって、以下では、受電装置60−2からの死活監視情報の送信によって、給電装置50が受電装置の死活監視情報の管理を行う際の動作についてのみ説明する。また、以下の説明では受電装置60−2を受電装置60として表記する。
【0133】
給電装置50から中継装置30を介して、受電装置60に電力の供給が行われると、上位装置40と受電装置60は、給電装置50および中継装置30を介してデータの送受信を行う。通常の動作を行っている際に、受電装置60の電力信号処理部62は、所定の時間ごとに受電装置60の動作状態を示す死活監視情報を基にした電力信号を給電装置50に送る。通常の動作時に受電装置60が正常に動作しているとき、電力信号処理部62は、正常に動作していることを示す死活監視情報を基にした電力信号を、所定の時間ごとに給電装置50に送る。
【0134】
また、通常の動作を行っている際に、受電装置60の異常検出部67は、受電装置60の動作状態を監視し異常の有無の確認を行う。異常検出部67は、異常を検知すると、異常を検知したことを示す情報を電力信号処理部62および電力分配制御部66に送る。
【0135】
電力分配制御部66は、異常検出部67から異常を検知した情報を受け取ると、電力信号処理部62および主回路63への電力の供給を停止する。電力信号処理部62および主回路63への電力の供給を停止すると、受電装置60は、中継装置30を介しての給電装置50からの電力の供給を受けていない状態となる。
【0136】
電力分配制御部66からの電力の供給が停止されると、主回路63は、動作を停止する。また、電力信号処理部62は、充放電回路68の放電によって電力の供給を受け、動作状態を継続する。
【0137】
電力信号処理部62は、異常検出部67から異常を検知した情報を受け取ると、異常が生じたことを示す死活監視情報を生成する。電力信号処理部62は、異常が生じたことを示す死活監視情報を生成すると、充放電回路68が放電によって供給する電力を元に、生成した死活監視情報を給電装置50に送信する。電力信号処理部62が、異常が生じたことを示す死活監視情報に基づく電力信号を送信した後に、充放電回路68に蓄えられた電力が全て放電されると、受電装置60は、動作を停止し、シャットダウン状態となる。
【0138】
受電装置60から送信された死活監視情報を基にした電力信号は、中継装置30を介して給電装置50に送られる。
【0139】
給電装置50に入力された死活監視情報を基にした電力信号は、信号用トランス51を介して信号処理部54に入力される。信号処理部54は、入力されるフレームのヘッダを監視し、死活監視情報を基にした電力信号であることを検知すると、受け取った電力信号を電力信号処理部56に出力する。
【0140】
電力信号処理部56は、死活監視情報を基にした電力信号を受け取ると、死活監視情報を抽出して受電装置60の動作状態を判断する。受電装置60が正常に動作しているとき、電力信号処理部56は、電力情報格納部58に死活監視情報を受け取った日時を受電装置60の識別子の情報と関連づけて保存する。死活監視情報を受け取った日時を保存すると、電力信号処理部56は、次に信号が入力されるまで待機する。
【0141】
死活監視情報に受電装置60に異常が生じていることを示す情報が含まれているとき、電力信号処理部56は、電力情報格納部58に保存されている受電装置60の情報を削除する。電力信号処理部56は、異常が生じた受電装置60の情報を削除する際に、死活監視情報の送信元の受電装置60のアドレスと一致する情報を電力情報格納部58から削除する。
【0142】
異常が検知されて給電が停止している受電装置60の情報が電力情報格納部58から削除されたため、給電可否判定部57は、新たに給電の可否を判断する際に、異常が生じた受電装置60の消費電力を除いて消費電力の合計値の算出を行う。
【0143】
図16は、本実施形態の通信システムにおいて、各受電装置60から中継装置30を介して給電装置50に送れる死活監視情報に基づく電力信号の経路を模式的に示している。図16に示すように、給電装置50は、直接、または、中継装置30を介して受電装置60から死活監視情報を収集する。死活監視情報を各受電装置60から収集することで、給電装置50は、給電の制御をより適切に行うことができる。
【0144】
本実施形態の通信システムは、第2の実施形態の通信システムと同様の効果を有する。また、本実施形態の通信システムの給電装置50は、受電装置60の動作状態を死活監視情報として得ることで各装置の消費電力の合計値をより正確に認識することができる。そのため、本実施形態の通信システムは、動作していない受電装置60の消費電力を給電可否の判断の際に除外できるので、受電装置60の動作状態に基づいて効率的に給電の制御を行うことができる。
【0145】
第2および第3の実施形態の通信システムでは、給電装置および中継装置を介して上位装置と受電装置に間でデータの送受信を行っているが受電装置間でデータの送受信を行う構成としてもよい。受電装置間でデータの送受信を行う場合には、給電装置および中継装置がそれぞれスイッチ機能やルータ機能を有する構成とする。
【0146】
第3の実施形態の通信システムでは、受電装置60から給電装置50に死活監視情報が送信されている。そのような構成に加えて、異常検出機能を有する中継装置からも給電装置50に死活監視情報が送信されるようにしてもよい。中継装置からも死活監視情報が給電装置50に送信されることで、給電装置50は、中継装置に異常が生じた場合にも正確に消費電力の合計値を算出することが可能になる。その結果、給電装置50は、中継装置の動作状態に基づいてより効率的に給電の制御を行うことができる。また、中継装置から死活監視情報が給電装置50に送信される構成とする場合には、例えば、中継装置を受電装置60と同様に充放電回路を備える構成とすることで、異常によって中継装置が停止した場合にも死活監視情報を送信することができる。
【符号の説明】
【0147】
1 電力供給手段
2 通信手段
3 情報取得手段
4 判断手段
5 判断結果送信手段
10 給電装置
11 信号用トランス
12 電力用フィルタ
13 電力供給部
14 信号処理部
15 上位側信号用トランス
16 電力信号処理部
17 給電可否判定部
18 電力情報格納部
20 受電装置
21 信号用トランス
22 電力信号処理部
23 主回路
24 電力用フィルタ
25 電力受電部
26 電力分配制御部
30 中継装置
31 給電側信号用トランス
32 電力信号処理部
33 主回路
34 給電側電力用フィルタ
35 電力受電部
36 電力分配制御部
37 受電側信号用トランス
38 受電側電力用フィルタ
39 電力供給部
40 上位装置
50 給電装置
51 信号用トランス
52 電力用フィルタ
53 電力供給部
54 信号処理部
55 上位側信号用トランス
56 電力信号処理部
57 給電可否判定部
58 電力情報格納部
60 受電装置
61 信号用トランス
62 電力信号処理部
63 主回路
64 電力用フィルタ
65 電力受電部
66 電力分配制御部
67 異常検出部
68 充放電回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16