(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングを前記挿入方向で見た場合に、前記仕切部の前記流路に挟まれる最大幅は、前記挿入部の一端である挿入開口を区画する前記ハウジングの内径よりも小さいことを特徴とする、請求項2から6のいずれか1つに記載のコネクタ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るコネクタ及び輸液セットの実施形態について、
図1〜
図17を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0020】
まず、本発明に係るコネクタの1つの実施形態について説明する。
図1は、本実施形態としてのコネクタ1を示す斜視図である。
図2及び
図3は、
図1におけるI−I断面図及びII−II断面図をそれぞれ示す。
【0021】
図1〜
図3に示すように、コネクタ1は、ハウジング2と、このハウジング2に取り付けられる弾性弁体3と、を備える。具体的に、コネクタ1は、中空部4を区画するハウジング2と、中空部4に位置する弾性弁体3と、を備える。中空部4は、オスコネクタ100(
図9等参照)が外方から挿入される挿入部5及びこの挿入部5と連通する流路6を有し、弾性弁体3は、挿入部5を閉塞する。なお、「挿入部と連通する流路」とは、挿入部と直接繋がる流路のみならず、挿入部と別の空間を介して繋がる流路をも含む意味である。本実施形態の流路6は、挿入部5と直接繋がる流路である。
【0022】
ハウジング2は、オスコネクタ100(
図9等参照)が外方から挿入される挿入部5を区画するキャップ7と、流路6を区画すると共に、キャップ7を支持するホルダ8とを備える構成である。
【0023】
キャップ7は天面キャップ9と底面キャップ10とを有しており、弾性弁体3は、天面キャップ9及び底面キャップ10により圧縮、挟持されて中空部4内、具体的には挿入部5内での位置が固定されている。
【0024】
ホルダ8は、流路6を区画すると共に、天面キャップ9及び底面キャップ10を支持する部材である。なお、本実施形態では天面キャップ9及び底面キャップ10の両方がホルダ8に接触して支持される構成であるが、底面キャップ10を天面キャップ9に保持させて、天面キャップ9のみをホルダ8に接触させてホルダ8に支持させる構成としてもよい。また逆に天面キャップ9を底面キャップ10に保持させて、底面キャップ10のみをホルダ8に接触させてホルダ8に支持させる構成としてもよい。
【0025】
なお、本実施形態では、天面キャップ9及び底面キャップ10は、挿入部5を区画している。また、ホルダ8は、挿入部5の一部と、流路6とを区画している。
【0026】
ハウジング2を構成するホルダ8、並びに、キャップ7としての天面キャップ9及び底面キャップ10の材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン;エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA);ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリスチレン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリ−(4−メチルペンテン−1);アイオノマー;アクリル樹脂;ポリメチルメタクリレート;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂);ブタジエン−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル;ポリエーテル;ポリエーテルケトン(PEK);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK);ポリエーテルイミド;ポリアセタール(POM);ポリフェニレンオキシド;変性ポリフェニレンオキシド;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリフェニレンサルファイド;ポリアリレート;芳香族ポリエステル(液晶ポリマー);ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂;などの各種樹脂材料が挙げられる。また、これらのうちの1種以上を含むブレンド体やポリマーアロイなどでもよい。その他に、各種ガラス材、セラミックス材料、金属材料であってもよい。
【0027】
弾性弁体3は、オスコネクタ100(
図9等参照)がコネクタ1に着脱される際に弾性変形して開閉することができるようにスリット11を有し、キャップ7としての天面キャップ9及び底面キャップ10により区画された挿入部5を閉塞するように配置されている。具体的に、弾性弁体3は、天面キャップ9と底面キャップ10とで構成される挟持部32により挟持されて、コネクタ1内での位置が固定される。
【0028】
弾性弁体3は、金型成形され、弾性変形可能に形成される。この弾性弁体3の材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴムのような各種ゴム材料や、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合したものであってもよい。
【0029】
また、弾性弁体3の硬度は、20〜60°(A硬度)であることが好ましい。これにより、弾性弁体3に適度な弾性力を確保することができるため、弾性弁体3に後述する弾性変形を生じさせることができる。
【0030】
以下に本実施形態における各部材及び各部材により構成される特徴部の詳細について説明する。
【0031】
[弾性弁体3]
図4は、弾性弁体3単体の斜視図である。
図5A及び
図5Bは、
図4におけるIII−III及びIV−IV断面図である。
【0032】
図4、
図5に示すように、弾性弁体3は、ディスク状の外形を有する円形扁平のディスク状弁体であって、天面12(
図5A及び
図5Bにおける上面)は、平面状の天面中心部領域13と、当該天面中心部領域13よりも半径方向外側に位置する天面外部領域14とにより構成されている。
【0033】
天面中心部領域13は、天面外部領域14よりも外方(
図5では上方)に突出した形状であって、天面中心部領域13の中央には一文字状のスリット11が形成されている。このスリット11は金型成形されるものであり、成形時には底面17まで貫通しておらず、金型成形後の例えば最初のオスコネクタ100(
図9等参照)の挿入時において、底面17まで貫通する構成としている。なお、スリット11を貫通させる工程を金型成形が完了した後に製造工程の一部として実行することも可能である。
【0034】
図4、
図5に示すように、天面外部領域14には天面中心部領域13を取り囲むように天面環状溝15が形成されており、後述する天面キャップ9の係止突起26(
図2及び
図3参照)がこの天面環状溝15に入り込み弾性弁体3を圧縮して挟持部32(
図2及び
図3参照)の一部を構成する。また、本実施形態の天面環状溝15は、
図5の断面視において、天面中心部領域13側の溝壁が円弧状に形成されている。このような構成とすることにより、弾性弁体3の復元性能を向上させることができる。なお、本実施形態では天面環状溝15が天面中心部領域13と隣接する位置、すなわち
図5の断面視において外方に突出した天面中心部領域13の側壁16が、天面環状溝15の溝壁をも構成しているが、天面環状溝15の位置や形状は、天面キャップ9の係止突起26の位置や形状に応じて適宜変更することが可能である。
【0035】
弾性弁体3の天面12とは反対側の面である底面17は、平面状の底面中心部領域18と、この底面中心部領域18よりも半径方向外側に位置する厚肉部領域19と、厚肉部領域19よりも更に半径方向外側に位置する底面外部領域20とを有している。
【0036】
底面中心部領域18にはスリット11が形成されていないが、上述したとおり、例えば最初のオスコネクタ100の挿入時において、天面12に形成されているスリット11の先端部と底面中心部領域18との間の部分が裂けることによって、スリット11は天面中心部領域13から底面中心部領域18まで繋がる。
【0037】
厚肉部領域19は、底面中心部領域18及び底面外部領域20よりも外方(
図5A及び
図5Bにおいて下方)に突出している。厚肉部領域19を設けない構成の場合には、オスコネクタ100の挿入時や抜去時に弾性弁体3に過剰な負荷がかかる時や、オスコネクタ100を繰り返し着脱した時に、連通したスリット11の底面17側の長手方向端部が裂けてしまうという問題があるが、厚肉部領域19を設けることにより長手方向端部が補強されて上記問題の発生を抑制することが可能である。なお、本実施形態では、弾性弁体3を底面17側から見た場合に、天面12に形成されているスリット11の周りを取り囲むように環状の厚肉部領域19が形成され、その中でもスリット11の長手方向外側の位置での肉厚が最も厚く形成されている。このような構成とすることにより、スリット11端部が裂けることを抑制すると共に、弾性弁体3のオスコネクタ挿入性の良さと弾性復元力の維持とを両立することが可能となる。
【0038】
底面外部領域20には、厚肉部領域19を取り囲むように底面環状溝21が形成されており、後述する底面キャップ10の係止突起31がこの底面環状溝21に入り込み弾性弁体3を圧縮して挟持部32の一部を構成する(
図2及び
図3参照)。
【0039】
なお、
図4及び
図5に示すように、弾性弁体3の天面12における天面外部領域14の外縁と、底面17における底面外部領域20の外縁とは、天面12及び底面17と共に弾性弁体の外壁を構成する略円周状の側面50により接続されている。
【0040】
[天面キャップ9]
以下、
図1〜
図3を参照しながら、天面キャップ9、底面キャップ10、及びホルダ8の構成について説明する。
【0041】
図2、
図3に示すように、天面キャップ9は、略円筒状の中空筒部22と、中空筒部22の一端側に設けられたフランジ部23と、を備える。
図2、
図3に示すように、中空筒部22の他端側に位置する上面(
図2、
図3における上側の面)には、挿入部5の一端である略円形の挿入開口を区画する縁部24があり、中空筒部22の外周面にはISO594で規定されたロックコネクタと螺合することができるようにねじ山25が形成されている。フランジ部23は、中空筒部22と一体で型成形された部位であり、フランジ部23が後述するホルダ8と係合することにより天面キャップ9がホルダ8に保持される構成である。
【0042】
また、
図2、
図3に示すように、中空筒部22の内壁のうち縁部24の近傍には、オスコネクタ100の挿入方向Bに向かって突出し、上述した弾性弁体3の天面環状溝15に入り込んで弾性弁体3を圧縮する係止突起26が設けられている。縁部24と係止突起26の間に形成される内壁27は、オスコネクタ100が挿入されていない状態では上述した弾性弁体3の天面中心部領域13と接触し、オスコネクタ100が挿入されている状態(
図9等参照)ではオスコネクタ100と接触するように構成されている。つまり、オスコネクタ100が挿入されていない状態では天面中心部領域13が内壁27により囲まれる空間に嵌り込み、オスコネクタ100が挿入されている状態ではオスコネクタ100が円筒状の内壁27により天面キャップ9と嵌合する。なお、本実施形態における内壁27は、挿入方向Bに対して平行な円筒状であるが、オスコネクタ100の外形に応じて挿入方向Bに向かって漸減的に内径が小さくなるテーパー状としてもよい。また、本実施形態では、オスコネクタ100が挿入されている状態において、オスコネクタ100が、円筒状の内壁27により天面キャップ9と嵌合する構成であるが、この構成に限られるものではなく、オスコネクタ100が挿入されている状態において、オスコネクタ100が円筒状の内壁27と非接触の構成とすることも可能である。
【0043】
中空筒部22の上面には、上述した縁部24と、この縁部24を取り囲み、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面状の延在部28とがある。弾性弁体3の天面中心部領域13が内壁27により囲まれる空間に嵌まり込んだ状態、すなわちオスコネクタ100が挿入されていない状態においては、弾性弁体3の天面中心部領域13が、オスコネクタ100の抜去方向D(挿入方向Bの逆方向)において縁部24及び延在部28よりも突出する。このように弾性弁体3の天面中心部領域13を抜去方向Dに突出させることにより、ユーザーがオスコネクタ100を挿入する直前に通常実施する消毒を目的とした拭き取り作業時において、天面中心部領域13の全域を容易に拭き取ることが可能となり、弾性弁体3に菌や異物等を残すことなく、衛生的に保つことができる。なお、オスコネクタ100が挿入されていない状態で、弾性弁体3の天面中心部領域13が縁部24の位置(高さ)まで収容され、弾性弁体3の天面中心部領域13と天面キャップ9の延在部28とが同一平面を形成するように構成してもよい。
【0044】
[底面キャップ10]
図2、
図3に示すように、底面キャップ10は、天面キャップ9と同様、略円筒状の中空筒部29と、中空筒部29の一端側に設けられたフランジ部30とを備える。中空筒部29の他端側には、抜去方向Dに向かって突出し、上述した弾性弁体3の底面環状溝21に入り込んで弾性弁体3を圧縮し、天面キャップ9の係止突起26と共に弾性弁体3を挟持する係止突起31が設けられている。このように、弾性弁体3は、上述した天面キャップ9の係止突起26と底面キャップ10の係止突起31とにより構成される挟持部32により、圧縮及び挟持され、中空部4内、具体的には挿入部5内での位置が固定される。
【0045】
底面キャップ10は、天面キャップ9の中空筒部22の内面及び/又はフランジ部23の下面(
図2、
図3における下側の面)に超音波接着されることにより天面キャップ9により保持されると共に、更に底面キャップ10のフランジ部30を後述するホルダ8により支持されることにより、位置が固定されている。
【0046】
[ホルダ8]
図2、
図3に示すように、ホルダ8は、天面キャップ9及び底面キャップ10を支持し、その内部に流路6を区画している。本実施形態のホルダ8は、天面キャップ9及び底面キャップ10と直接接触することにより両者を支持しているが、例えば、ホルダ8が天面キャップ9とは接触せずに底面キャップ10のみと直接接触し、天面キャップ9は底面キャップ10に接触、支持させる構成としてもよい。すなわちホルダ8が天面キャップ9と底面キャップ10のいずれか一方と直接接触して支持し、他方とは直接接触しない構成としてもよい。なお、直接接触する部材同士は、例えば超音波接着などにより接着するようにすることが好ましい。
【0047】
なお、本実施形態では、天面キャップ9及び底面キャップ10が弾性弁体3を挟持して、弾性弁体3を挿入部5内に保持する構成であるが、例えば、本実施形態におけるホルダ8と、底面キャップ10とを一体の構成としたホルダと、本実施形態のような天面キャップとで、弾性弁体3を圧縮、挟持する構成としてもよい。すなわち、コネクタのハウジングは、ホルダ、天面キャップ及び底面キャップの3つの部材で構成されるものに限らず、例えばこれらの部材のうち2つの部材で構成することも可能であり、更には、これら部材に別の部材を加えることにより、4つ以上の部材で構成することも可能である。
【0048】
次に、本実施形態のホルダ8の詳細な構成について説明する。
図2、
図3に示すように、本実施形態のホルダ8は、内周面にロックコネクタ用のねじ山33が設けられた略円筒状の外筒部34と、この外筒部34の内壁が区画する中空部内に設けられた内筒部としてのオスルアー部35と、外筒部34及びオスルアー部35の挿入方向Bの上流側(抜去方向Dの下流側)の端部で外筒部34とオスルアー部35とを連結する連結部36と、を備える。本実施形態のホルダ8では、オスルアー部35の内壁及び連結部36の内壁が流路6を区画している。
【0049】
本実施形態のホルダ8が区画する流路6は、挿入方向Bの下流側に向かうにつれて内径が小さくなるテーパー状の、オスルアー部35の内壁が区画する管状流路37と、挿入方向Bにおいて挿入部5と管状流路37との間に位置し、挿入部5と管状流路37とを繋ぐ、連結部36が区画する連結流路38と、で構成されている。
【0050】
ここで、
図2、
図3に示すように、ハウジング2の内壁のうち流路6を区画する内壁には、挿入部5に挿入されたオスコネクタ100の先端開口104(
図9等参照)と挿入方向Bにおいて対向し、先端開口104から流出する液体と衝突する液体衝突面39が、一体で形成される。本実施形態では、流路6のうち連結流路38を区画する連結部36の内壁に、液体衝突面39が一体で形成されている。つまり、液体衝突面39自体も、流路6を区画する内壁の一部である。また、液体衝突面39は、流路6を区画する内壁を有する部材自体に形成されている。
【0051】
また、別の言い方をすれば、本実施形態の液体衝突面39は、ハウジング2の仕切部40に設けられている。具体的に、本実施形態のハウジング2は、挿入方向Bと直交する方向Cに流路6を仕切る仕切部40を備え、液体衝突面39は、仕切部40における挿入方向Bの上流側の面である上流面41(
図2、
図3における上側の面)により構成されている。より具体的に、本実施形態におけるハウジング2のホルダ8は、挿入方向Bと直交する方向Cに連結流路38を複数の分離された流路(本実施形態では2つの分離された流路)に仕切る仕切部40を備えており、液体衝突面39は、その上流面41で構成されている。
【0052】
本実施形態におけるハウジング2のホルダ8は、上述したように、液体衝突面39としての上流面41を有する仕切部40を備えるため、コネクタ1の挿入部4に挿入されたオスコネクタ100の先端開口104(
図9等参照)からコネクタ1の流路6内へと供給される薬液などの液体が、液体衝突面39としての上流面41に衝突し、流路6内で乱流を引き起こす。そのため、薬液などの液体が、コネクタ1の中空部4内で継続的に滞留してしまうことを抑制することができる。なお、仕切部40の詳細な構成については後述する(
図6〜
図8等参照)。
【0053】
また、
図2、
図3に示すように、本実施形態のハウジング2の内壁のうち流路6を区画する内壁には、オスコネクタ100の先端部101(
図9〜
図11参照)を受ける先端受け面42が設けられている。先端受け面42は、弾性弁体3のスリット11を通じて外方から挿入されるオスコネクタ100の先端部101を受けることにより、オスコネクタ100が、オスコネクタの挿入方向Bにおいて、コネクタ1の内方へと過度に挿入されることを抑制するものである。
【0054】
より具体的に、本実施形態の先端受け面42は、ホルダ8の内壁のうち連結流路38を区画する内壁に一体で形成されている。また、本実施形態の先端受け面42は、挿入方向Bにおいて、上流面41よりも上流側に位置する構成である。従って、挿入部5に挿入されたオスコネクタ100の先端部101が先端受け面42により受けられた状態において、オスコネクタ100の先端開口104と仕切部40の上流面41との間には空隙が形成される。また、本実施形態の先端受け面42は、
図3に示すように、上述した仕切部40の上流面41と連続して一体で形成されている。なお、この先端受け面42の詳細については後述する(
図9〜
図11等参照)。
【0055】
[仕切部40]
次に、仕切部40の詳細な構成について説明する。
図6は、ホルダ8の単体について、
図2に示すコネクタ1の断面と同じ断面を示す断面斜視図である。また、
図7は、ホルダ8の単体について、
図3に示すコネクタ1の断面と同じ断面を示す断面斜視図である。更に、
図8は、ホルダ8の単体を挿入方向Bで見た上面図である。なお、
図8で示す円形の二点鎖線は、説明の便宜上、このホルダ8に取り付けられる天面キャップ9の縁部24の位置を示している。以下、
図2、
図3及び
図6〜
図8を参照しながら、仕切部40について詳細に説明する。
【0056】
仕切部40は、上述したように、その上流面41が上述した液体衝突面39を構成すると共に、流路6を挿入方向Bと直交する方向Cに仕切るものである。
図6〜
図8に示すように、本実施形態の仕切部40は、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて対向する内壁を連結するように架け渡されており、挿入方向Bと直交する方向Cであって、かつ、対向する内壁の対向方向と直交する方向において、流路6を2つの分離された流路に仕切っている。より具体的に、本実施形態の仕切部40は、流路6のうち連結流路38を、互いに分離された第1連結流路43と第2連結流路44とに仕切るものであり、挿入部5に挿入された状態のオスコネクタ100の先端開口104(
図9等参照)から流出する液体は、仕切部40により分岐され、第1連結流路43及び第2連結流路44を通り、管状流路37において合流する。
【0057】
本実施形態の仕切部40は板状であって、液体衝突面39としての上流面41と、この上流面41と反対側の面(挿入方向Bにおいて下流側の面)である下流面45と、上流面41及び下流面45を繋ぐ側面46と、を有する。
【0058】
本実施形態では、上流面41及び下流面45は、共に、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面である。従って、本実施形態では、オスコネクタ100が挿入部5に挿入された状態において、オスコネクタ100の先端開口104から流出する液体は、上流面41(液体衝突面39)に衝突した後、平面状の上流面41に沿って、挿入方向Bと直交する方向Cに向かって流れる。そのため、先端開口104から流出する液体は、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて仕切部40の周囲に位置する、連結流路38を区画する内壁まで到達し易くなる。これにより、流路6を区画する内壁に沿うような液体の流れを形成することができるため、中空部4内において継続的に滞留してしまう液体を一層低減することができる。
【0059】
更に、液体衝突面39としての上流面41は、ハウジング2を挿入方向Bで見た場合に、挿入部5の一端である、ハウジング2の内壁が区画する挿入開口と重なる位置に設けられている。具体的に、上流面41は、
図8に示すように、挿入部5の一端である挿入開口(
図8において二点鎖線で示す縁部24により区画される開口)と重なる位置に設けられている。特に、本実施形態では、上流面41の全領域が、ハウジング2を挿入方向Bで見た場合に、挿入部5の一端である挿入開口の内側に位置すると共に、上流面41が、少なくとも挿入開口の中央領域と重なる位置に設けられている(
図8参照)。上流面41の位置をこのような位置とすることにより、上流面41を、外方から挿入されるオスコネクタ100の先端開口104(
図9〜
図11参照)と、挿入方向Bにおいて対向させることができる。また、別の言い方をすれば、本実施形態の上流面41は、管状流路37に対して挿入方向Bの上流側に位置している。
【0060】
なお、ここで言う「ハウジング2を挿入方向Bで見た場合」とは、外方からハウジング2を挿入方向Bで見た仮想平面上に、対象物を投影した場合を意味するものであり、実際に目視できるか否かを意味するものではない。従って、上述の上流面41と挿入開口との関係においては、ハウジング2を挿入方向Bで見た仮想平面上に、上流面41と、挿入開口を区画するハウジング2の内壁(本実施形態では縁部24)とを投影した場合を意味している。
【0061】
また更に、本実施形態では、ホルダ8、天面キャップ9及び底面キャップ10で構成されるハウジング2を挿入方向Bで見た場合に、仕切部40の流路6に挟まれる幅W1の最大幅W1maxは、挿入部5の一端である挿入開口を区画するハウジング2の内径dよりも小さい。より具体的に、
図2に示すように、第1連結流路43及び第2連結流路44に挟まれた仕切部40の最大幅W1maxは、天面キャップ9の縁部24の内径dよりも小さい。
【0062】
また、
図2に示すように、連結流路38を区画する内壁の、挿入方向Bと直交する方向Cにおける幅W2の最大幅W2maxは、挿入部5の一端である挿入開口を区画するハウジング2の内径dよりも大きい。すなわち、本実施形態では、W1max<d<W2maxが成立する構成である。従って、本実施形態のコネクタ1によれば、ハウジング2内に設けられた仕切部40によって液体の乱流を引き起こし、中空部4内に継続的に滞留する液体を低減することができると共に、仕切部40に対して挿入方向Bと直交する方向Cに位置する流路(本実施形態では第1連結流路43及び第2連結流路44)を比較的広く確保しているため、流路6内を流れる液体の単位時間当たりの流量が、仕切部40によって制限され難い。なお、上述の最大幅W2maxは、仕切部40に対して挿入方向Bと直交する方向Cに位置し、同方向Cにおいて流路6(本実施形態では第1連結流路43及び第2連結流路44)及び仕切部40を挟んで互いに対向する内壁の最大幅を意味している。
【0063】
また、本実施形態の仕切部40は、
図8に示すように、挿入方向Bで見た場合に略円形状の外形を有している。すなわち、本実施形態の上流面41及び下流面45は、同一外径の、略円形状の外形を有する平面である。また、側面46は、上流面41及び下流面45のそれぞれ外縁を繋ぐ、挿入方向Bで見た場合に円弧状となる曲面である。従って、本実施形態の上述の最大幅W1maxは、挿入方向Bで見た場合の、仕切部40の外径、つまり、上流面41又は下流面45の外径となる。
【0064】
ここで、本実施形態の仕切部40は、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて対向する内壁を連結するように架け渡され、挿入方向Bと直交する方向Cであって、かつ、対向する内壁の対向方向と直交する方向において、分離された2つの流路に形成するものであるが、例えば、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて対向する内壁の一方側から他方側に向かって突出し、他方側には繋がっていない仕切部とし、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて一部が繋がった1つの流路を形成する構成としてもよい。また、本実施形態の仕切部40は、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて対向する内壁を連結するように架け渡されたものであるが、仕切部40が架け渡される位置はこの位置に限られるものではなく、例えば、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて対向しない内壁を連結するように架け渡す構成としてもよい。更に、仕切部により分離される流路の数は2つに限られるものではなく、互いに分離された3つ以上の流路を形成するように流路を仕切る仕切部としてもよい。
【0065】
また、本実施形態の上流面41は、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面であるが、流路6を区画する内壁に沿うような液体の流れを形成し易くなる形状であればよく、このような平面に限られるものではない。従って、例えば、挿入方向Bと直交する方向Cに対して所定の角度を有する平面であってもよく、挿入方向B又は抜去方向Dに向かって湾曲した曲面としてもよい。但し、仕切部40の上流面41は、本実施形態のように、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面で構成されることが特に好ましい。このような構成とすれば、流路6を区画する内壁に沿うような液体の流れを形成し易くすることができると共に、例えばコネクタ1の使用後などにおいて、薬液などの液体が、上流面41上に留まり、停滞してしまうことをも抑制することができるためである。
【0066】
更に、本実施形態の仕切部40の下流面45は、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面であり、側面46は、変局点を有さない湾曲面であるが、このような形状に限られるものではない。但し、本実施形態の仕切部40のように、外壁を構成する各面を、平面や、変局点を有さない湾曲面で構成すれば、各面内において、溝壁と溝底との間の角部など、液体が滞留し易い部分が形成されないため、各面上で液体が滞留してしまうことを一層抑制することができる。
【0067】
また更に、
図8に示すように、本実施形態の仕切部40は、挿入方向Bで見た場合に全体として略円形状の外形を有する、円形平板状のものであるが、この形状に限られるものではなく、例えば、挿入方向Bで見た場合に互いに平行する2本の直線を外縁の輪郭とする、直方体状や立方体状などの柱状のものとしてもよい。また更に、複数の立体形状を組み合わせたような仕切部とすることもでき、例えば、液体衝突面を有する円柱状の円形平板部と、この円形平板部の側面から径方向に延在し、円形平板部の周囲に位置する流路の内壁と円形平板部とを繋ぐ、複数の棒状部と、で仕切部を構成することも可能である。なお、このような構成の仕切部における上記最大幅W1maxは、円形平板部の外径となる。
【0068】
ここで、
図13は、本実施形態の仕切部40の1つの変形例としての仕切部60を示す図であり、
図2と同断面における仕切部60の拡大断面図である。
図13に示す仕切部60の液体衝突面39としての上流面61は、抜去方向D側の頂部62から挿入方向Bに向かうにつれて拡がり、挿入方向B側の端部が側面63と連続する斜面64により構成された錐体の側面形状を有している。上流面61をこのような形状とすることにより、本実施形態の仕切部40の上流面41と比較して、上流面61に衝突した薬液などの液体が斜面64に沿って連結流路38に案内され易くなる。つまり、上流面61において、挿入方向Bの上流側から下流側に下る、連結流路38に向かって傾斜する斜面64を設けることによって、挿入部5側から管状流路37側に流れる液体の単位時間当たりの流量を確保し易くなるため、中空部4内に滞留している液体の除去に要する時間を短縮することができる。なお、
図13に示す上流面61についても、挿入方向Bに向かって凸となるような湾曲部がないため、例えばコネクタ1の使用後などにおいて、薬液などの液体が、上流面61上に留まり、停滞してしまうことが抑制される。
【0069】
更に、
図13に示す仕切部60の下流面65は、挿入方向B側の頂部66から抜去方向Dに向かうにつれて拡がり、抜去方向D側の端部が側面63と連続する斜面67により構成された錐体の側面形状を有している。下流面65をこのような形状とすることにより、本実施形態の仕切部40の下流面45と比較して、下流面65上に滞留する液体を低減することができる。
【0070】
なお、
図13に示す仕切部60の上流面61は、本実施形態の仕切部40の上流面41と同様、流路6としての連結流路38を区画する内壁と一体で形成されている。具体的に、上流面61は、連結流路38を区画する先端受け面42と一体で形成されている。より具体的に、上流面61は、先端受け面42と連続して一体で形成されている段差面68を介して、先端受け面42と一体で形成されている。
【0071】
また、
図13に示す仕切部60は、本実施形態の仕切部40と比較して、上流面61及び下流面65の形状が相違するが、その他の構成は同様である。
【0072】
図14は、
図13に示す仕切部60と類似した形状を有する仕切部材70を示す図である。より具体的に、
図14は、仕切部材70が取り付けられたコネクタ1000について、
図2と同様の断面での仕切部材70を拡大して示した拡大断面図である。
図14に示す仕切部材70は、流路600としての連結流路3800を区画する内壁に一体で形成されたリブ状の支持部71に対して取り付けられることにより、支持部71により支持されている。
図14に示す仕切部材70には、側面72の対向する位置(
図14に示す例では紙面に垂直な方向において対向する位置)に、支持部71が入り込む切欠き部73が形成されている。切欠き部73は、上流面74から下流面75まで延在しており、上流面74側の上流側切欠き部73aと、この上流側切欠き部73aと段差面76を介して連続し、上流側切欠き部73aよりも挿入方向Bと直交する方向Cの幅が大きい下流側切欠き部73bと、で構成されている。支持部71は、切欠き部73と対応する形状を有しており、抜去方向D側の端面がオスコネクタ100の先端部101(
図9等参照)を受ける先端受け面77を構成し、上流側切欠き部73aに嵌合する第1嵌合部71aと、この第1嵌合部71aよりも挿入方向Bと直交する方向Cの幅が大きく、下流側切欠き部73bに嵌合する第2嵌合部71bと、を備えている。第1嵌合部71aの外面と第2嵌合部71bの外面との間の段差面78は、切欠き部73の段差面76と当接し、取り付けられた仕切部材70の挿入方向Bへのそれ以上の移動を規制する。すなわち、仕切部材70は、仕切部材70の段差面76が支持部71の段差面78に突き当たることにより、支持部71に対する挿入方向Bの位置が位置決めされる。
【0073】
図15は、本実施形態の液体衝突面39の別の変形例を示す図である。具体的に、
図15は、仕切部40に代えて張り出し壁部80を備えるコネクタ1を示す図であり、
図3と同断面における張り出し壁部80の拡大断面図である。また、
図16は、張り出し壁部80を備えるホルダ8の単体について、
図3に示すコネクタ1の断面と同じ断面を示す断面斜視図である。
図15、
図16に示す張り出し壁部80は、流路6を区画する内壁に一体で形成され、挿入方向Bと直交する方向Cに位置する周囲の内壁よりも内方(
図15では管状流路37の中心軸線O側)に向かって張り出している。換言すれば、ハウジング2(
図2等参照)は、挿入方向Bと直交する方向Cに位置する周囲の内壁より内方に向かって張り出した張り出し壁部80を備えている。
【0074】
図15に示すように、張り出し壁部80は、液体衝突面39としての上流面81と、この上流面81の流路6側の端縁と連続し、挿入方向Bに延在する側面82と、この側面82の挿入方向Bの端部と連続し、挿入方向Bに進むにつれて流路6の径方向外側に拡がる斜面で構成された下流面83と、を備えている。
【0075】
張り出し壁部80の液体衝突面39としての上流面81は、張り出し壁部80における挿入方向Bの上流側の面、すなわち張り出し壁部80の抜去方向D側の面であり、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面部84と、この平面部84に一体で形成され、平面部84から抜去方向Dに向かって突出するリブ状突出部85と、を備えている。
【0076】
図15、
図16に示す平面部84は、オスコネクタ100の先端部101(
図9等参照)を受ける先端受け面42と、段差面86を介して一体で形成されている。
【0077】
また、
図16に示すように、先端受け面42は、中心軸線Oの周りの周方向Eにおいて、流路6を区画する内壁の一部のみに形成されており、この先端受け面42は、周方向Eにおける他の部分よりも、流路6の内方に突出している。換言すれば、流路6を区画する内壁のうち、先端受け面42と周方向Eにおいて隣接する部分は、段差を介して、先端受け面42よりも流路6の径方向外側に位置する拡径面87である。なお、
図15、
図16に示すように、先端受け面42は、流路6を挟んで対向する位置に設けられている。そして拡径面87は、挿入方向Bと直交する方向Cのうち、2つの先端受け面42の対向方向と直交する方向において、流路6を挟んで対向して配置されている。別の言い方をすれば、拡径面87は、周方向Eにおいて、対向する2つの先端受け面42の間に位置している。なお、拡径面87は、例えば肉盗み箇所として形成することができる。また、
図16に示すように、対向する拡径面87は、挿入方向Bに向かうにつれて、挿入方向Bと直交する方向Cの対向距離が漸減する湾曲したテーパー形状を有しており、その挿入方向Bの端部が管状流路37を区画する内壁と連続している。
【0078】
また、
図15、
図16に示すリブ状突出部85は、挿入方向Bと直交する方向Cのうち、対向する先端受け面42の対向方向と直交する方向に延在している。換言すれば、リブ状突出部85は、対向する拡径面87の対向方向に延在している。そして、リブ状突出部85の延在方向の両端は、拡径面87と連続して一体で形成されている。
【0079】
したがって、
図15、
図16に示すように、上流面81の平面部84は、リブ状突出部85のうち流路6の径方向外側の面、先端受け面42及びこの先端受け面42と連続する段差面86、並びに対向する拡径面87により区画された凹部の底部を構成している。
【0080】
なお、コネクタ1内にオスコネクタ100が挿入される際は、先端受け面42がオスコネクタ100の先端部101を直接的または間接的に受けることにより、オスコネクタ100の挿入方向Bの位置が位置決めされる。そして、オスコネクタ100が先端受け面42によって位置決めされた状態では、オスコネクタ100と拡径面87との間には隙間が形成された状態となる。
【0081】
また、張り出し壁部80の側面82は、リブ状突出部85の流路6の径方向内側の面と面一になるように挿入方向Bに延在している。
【0082】
このような張り出し壁部80を設けることにより、コネクタ1に接続されたオスコネクタ100の先端部101から流入する液体は、液体衝突面39としての上流面81に衝突して乱流を発生する。具体的には、
図16に矢印で示すように、リブ状突出部85と段差面86とに挟まれた平面部84から、オスコネクタ100と拡径面87との間に形成された隙間を通じて、拡径面87に沿って周方向Eに流れ、張り出し壁部80のリブ状突出部85を乗り越えて管状流路37へと挿入方向Bに流れていく流れが形成される。つまり、コネクタ1の中空部4を区画する内壁に沿った流れが形成されるため、中空部4内において継続的に滞留してしまう液体を低減することができる。
【0083】
更に、
図15、
図16に示すコネクタ1は、先端受け面42と周方向Eにおいて隣接する位置に、先端受け面42よりも径方向外側に設けられた拡径面87を備えているため、液体が滞留し易い径方向外側の位置まで液体を流すことができ、中空部4内での液体の滞留をより一層抑制することができる。
【0084】
また、
図15、
図16に示す張り出し壁部80の下流面83は、挿入方向Bに対して傾斜する斜面であるため、これを挿入方向Bと直交する平面とする場合と比較して、下流面83上に液体が滞留し難くなる。
【0085】
更に、
図15、
図16に示す張り出し壁部80の上流面81は、コネクタ1に挿入されたオスコネクタ100の先端部101から流入する液体の一部とのみ衝突する。つまり、張り出し壁部80を挿入方向Bに見た場合に、張り出し壁部80の面積は、
図13に示す仕切部60の面積よりも小さくなっており、コネクタ1に挿入されたオスコネクタ100の先端部101から流入する液体の一部は、上流面81と衝突することなく管状流路37へと流れていく。そのため、
図15、
図16に示す張り出し壁部80は、
図13に示す仕切部60と比較して、挿入部5側から管状流路37側に流れる液体の単位時間当たりの流量を一層確保し易い。特に、
図15及び
図16に示す張り出し壁部80は、コネクタ1を挿入方向Bに見た場合に、管状流路37の中心軸線O上に配置されておらず、同挿入方向Bに見た場合に、管状流路37の中心軸線Oと中心軸線が略一致するように挿入されたオスコネクタ100の先端開口104(
図9等参照)と中心軸線Oとは異なる位置で重なるように、張り出して配置されている。そのため、張り出し壁部80は、挿入部5側から管状流路37側に流れる液体の単位時間当たりの流量をより一層確保し易い構成となっている。また更に、
図15、
図16に示す張り出し壁部80は、1つの金型で成形可能であり、型構造を単純化できる点でも有益である。
【0086】
図17は、本実施形態の液体衝突面39の別の変形例を示す図である。具体的に、
図17は、仕切部40に代えて環状フランジ部90を備えるコネクタ1を示す図であり、
図3と同断面における環状フランジ部90の拡大断面図である。環状フランジ部90は、流路6の内周面から、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて流路6の内方に向かって突出する構成を有しており、流路6を区画する内壁と一体で形成されている。換言すれば、ハウジング2(
図2等参照)は、流路6の内方に向かって突出する環状フランジ部90を備えている。環状フランジ部90の液体衝突面39としての上流面91は、環状フランジ部90における挿入方向Bの上流側の面であり、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面部92と、この平面部92の内縁から抜去方向Dに向かって突出する環状リブ93と、を備えている。上流面91が環状リブ93を備えるため、挿入されたオスコネクタ100の先端部101から流入し平面部92に衝突する液体は、環状リブ93によって流れる方向が規制され、流路6を区画する内壁に沿って周方向Eに流れ易い。つまり、流路6を区画する内壁に沿った流れが形成されるため、中空部4内において継続的に滞留してしまう液体を低減することができる。
【0087】
なお、
図17に示す先端受け面42については、
図15、
図16に示したものと同様の構成を有している。また、
図17に示す先端受け面42と周方向Eにおいて隣接する部分の内壁は、
図15、
図16に示す拡径面87と同様、先端受け面42よりも流路6の径方向外側に位置するように構成することが好ましい。
【0088】
[外方からオスコネクタ100が挿入されている状態でのコネクタ1]
ここまでは、
図1〜
図8に示すように、主に、外方からオスコネクタ100が挿入されていない状態でのコネクタ1の構成について説明した。以下、挿入部5に外方からオスコネクタ100が挿入されている状態のコネクタ1について説明する。
図9は、オスコネクタ100が挿入されている状態のコネクタ1について、
図2に示す断面と同じ断面を示す断面図である。
図10は、オスコネクタ100が挿入されている状態のコネクタ1について、
図3に示す断面と同じ断面を示す断面図である。また、
図11は、
図10のうち、オスコネクタ100の先端部101付近を拡大した拡大断面図である。
【0089】
まず、コネクタ1に挿入されるオスコネクタ100について説明する。ここで用いられるオスコネクタ100は、ISO594により規定された形状を有するものであり、オスコネクタ挿入方向Bに直交する断面における外径が、先端部101に向かって1mm当たり6%ずつ漸減的に小さくなるテーパー度を有するものである。より具体的に、オスコネクタ100は、上述したハウジング2と同様の材料により形成することが可能であり、オスコネクタ100を剛性材料で形成する場合には、先端の直径を3.925mm〜3.990mmとし、半剛性材料で形成する場合には、先端の直径を3.925mm〜4.027mmとする。また、オスコネクタ100の長さは、7.50mm以上とする。
【0090】
オスコネクタ100がコネクタ1の挿入部5(
図2等参照)に挿入されると、オスコネクタ100の先端部101が、弾性弁体3をコネクタ1の内方へと押し込むように弾性変形させ、貫通したスリット11を通じてホルダ8内の流路6に到達する。すなわち、本実施形態では、
図9〜
図11に示す状態において、オスコネクタ100内の流路103は、ホルダ8の流路6と直接連通している。
【0091】
弾性弁体3は、オスコネクタ100の挿入により弾性変形し、底面キャップ10の内壁とオスコネクタ100の外壁との間に入り込み、オスコネクタ100の外面に密着した状態となる。これにより、コネクタ1の挿入部5から外部へ液体が漏れることが抑制される。
【0092】
図10に示すように、オスコネクタ100の先端部101は、ホルダ8の内壁のうち、連結流路38を区画する内壁に設けられた先端受け面42に対して、弾性弁体3を挟んだ状態で突き当たり、オスコネクタの挿入方向Bでの位置決めがされる。より具体的に、オスコネクタ100の先端部101は、
図11に示すように、オスコネクタの挿入方向Bに直交する方向Cにおける外壁を構成する先端周面101aと、オスコネクタ100内の流路103の先端開口104を区画し、オスコネクタの挿入方向Bにおける外壁を構成する先端平面101bと、
図9〜
図11の断面視において先端周面101aと先端平面101bとを接続する円弧状断面を有する先端曲面101cと、を備え、オスコネクタ100の先端部101のうち先端曲面101cが、先端受け面42を、弾性弁体3を介して押圧することにより、オスコネクタ100の挿入方向Bにおける挿入が規制され、オスコネクタ100の先端部101の挿入方向Bにおける位置が、位置決めされる。
【0093】
なお、本実施形態では、先端受け面42が、弾性弁体3を介して、オスコネクタ100の先端曲面101cを受ける構成であるが、先端受け面42が、オスコネクタ100の先端曲面101cの代わりに、又は先端曲面101cに加えて先端周面101aや先端平面101bを受けるような構成としてもよい。更に、本実施形態では、先端受け面42が、弾性弁体3を介して、オスコネクタ100の先端部101を受ける構成であるが、先端受け面42が、弾性弁体3を介さず、オスコネクタ100の先端部101のいずれかの面と直接接触して、先端部101を受けるような構成としてもよい。
【0094】
ここで、
図10、
図11に示すように、先端受け面42がオスコネクタ100の先端部101を受けた状態において、オスコネクタ100の先端部101と仕切部40の上流面41(液体衝突面39)とは非接触である。つまり、オスコネクタ100が先端受け面42によって受けられている状態において、オスコネクタ100の先端平面101bは、仕切部40の上流面41と接触しないように、上流面41(液体衝突面39)は、挿入方向Bにおいて、先端受け面42よりも下流側に位置している。より具体的に、本実施形態の上流面41は、挿入方向Bと直交する方向Cに延在する平面であり、先端受け面42は、
図10、
図11の断面視において、上流面41の両端と連続すると共に挿入方向Bと直交する方向Cに対して所定の角度を有する直線状断面となる、曲面である。
【0095】
つまり、本実施形態の先端受け面42は、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて対向する2つの曲面(
図10、
図11の断面視においては直線)で構成され、これら2つの曲面は、
図10、
図11に示すように、挿入方向Bに向かうにつれて、挿入方向Bと直交する方向Cにおける対向距離が小さくなくテーパー状に形成されている。そして、この2つの曲面それぞれの挿入方向Bの下流側の端部が上流面41と連続している。従って、先端受け面42がオスコネクタ100の先端部101を受けた状態であっても、挿入方向Bにおいて、オスコネクタ100の先端平面101bと仕切部40の上流面41(液体衝突面39)との間には間隙が形成され、オスコネクタ100の先端平面101bは、仕切部40の上流面41と接触しない。このような構成とすることにより、挿入されたオスコネクタ100の先端開口104からコネクタ1内へ薬液等の液体が供給される場合であっても、仕切部40の上流面41が、オスコネクタ100の先端開口104を塞がないので、オスコネクタ100から供給される液体の注入抵抗を低減することができる。
【0096】
次に、先端受け面42がオスコネクタ100の先端部101を受けた状態において、薬液等の液体が、オスコネクタ100の先端開口104からコネクタ1内に供給された場合の、コネクタ1内での液体の流れについて、
図9を参照して説明する。
図9には、コネクタ1内での液体の流れを矢印により示している。
【0097】
オスコネクタ100の先端開口104から流出する液体は流路6のうち連結流路38へと進入し、まず、上述したように仕切部40の上流面41(液体衝突面39)に衝突する。上流面41に衝突した液体は、その後、上流面41に沿って挿入方向Bと直交する方向Cに向かって進行する。なお、本実施形態では、先端受け面42が上流面41と連続し、先端受け面42がオスコネクタ100の先端部101を受けているため、上流面41に沿って進行する液体は、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて、第1連結流路43及び第2連結流路44に向かって流れる。そして、第1連結流路43及び第2連結流路44を通じて、管状流路37へと流入する。
【0098】
ここで、上流面41に沿って第1連結流路43及び第2連結流路44に向かって流れる液体は、上流面41の外縁から、挿入方向Bと直交する方向Cにおける上流面41の外側に向かって勢い良く押し出される。そのため、上流面41から押し出された液体は、挿入方向Bと直交する方向Cにおいて第1連結流路43、第2連結流路44及び仕切部40を挟んで対向する、ホルダ8の内壁(連結流路38を区画する内壁)まで到達し、この内壁に沿った流れを形成する。連結流路38を区画する内壁に到達した液体は、
図9の矢印で示すように、この内壁に沿って、弾性弁体3と、ハウジング2(
図2等参照)の内壁、具体的にはホルダ8及び底面キャップ10の内壁と、の間に形成された隙間へと入り込む流れと、この内壁に沿って、第1連結流路43及び第2連結流路44へと流れる流れと、に分岐する。なお、大部分の液体は、後者の流れにより、管状流路37へと流入する。
【0099】
上述したように、弾性弁体3は、オスコネクタ100の挿入により弾性変形し、底面キャップ10の内壁とオスコネクタ100の外壁との間に入り込み、オスコネクタ100の外面に密着した状態となる。しかしながら、例えば、外方から挿入されるオスコネクタの挿入抵抗力の低減を目的として、底面キャップ10などのハウジングの内壁とオスコネクタの外壁との間に弾性弁体を収容可能な広いスペースを確保することがある。かかる場合には、弾性弁体の復元力によって、弾性弁体を、オスコネクタの外壁に密着させることは可能であるが、ハウジングの内壁に密着させることができないことがある。更に、挿入抵抗力を低減する目的以外にも、例えば、弾性弁体の取り付け精度、コネクタを構成する部材の寸法公差などにより、弾性弁体をハウジングの内壁に密着させることができないことがある。このような場合、オスコネクタが挿入されている状態においてオスコネクタの先端開口から流出する液体が、上述の密着していない部分の隙間に偶発的に入り込み、継続的に滞留してしまうことがある。そして、この液体の種類によっては、継続的な滞留によって微生物が増殖してしまうおそれがある。
【0100】
そこで、本実施形態では、上述したように、連結流路38を区画する内壁に沿うような液体の流れを形成し、たとえ弾性弁体3の外壁と、ホルダ8及び底面キャップ10の内壁との間に隙間があったとしても、その隙間に液体を意図的に入り込ませるようにしている。弾性弁体3の外壁と、ホルダ8及び底面キャップ10の内壁との間の隙間に入り込んだ液体は、例えば、既にその隙間に入り込んでいる液体をその隙間から連結流路38内へと押し出す。これにより、隙間内の液体が置換されるため、液体が隙間で継続的に滞留してしまうことが抑制される。なお、この隙間に入り込んだ液体は、隙間に入り込んだ位置の近傍から再び連結流路38に押し出されることもあるが、例えば、
図10、
図11に示すような、先端受け面42、弾性弁体3、ホルダ8及び底面キャップ10により囲まれる管状空間を通って、挿入方向Bを中心とする周方向に移動し、隙間に入り込んだ位置やその近傍とは異なる位置から押し出されることもある。
【0101】
このように、本実施形態のコネクタ1は、液体衝突面39としての上流面41を有する仕切部40を備えるため、流路6内で液体の乱流を引き起こし、液体がハウジング2(
図2等参照)内で継続的に滞留してしまうことを抑制することができる。
【0102】
[コネクタ1を備える輸液セット110]
最後に、本発明の1つの実施形態としての、コネクタ1を備える輸液セット110について説明する。
図12は輸液セット110を示す図である。
【0103】
輸液セット110は、シリンジなどのオスコネクタ100を有する第1医療用器具から、留置針などの第2医療用器具に接続する輸液ラインを形成するものである。具体的に、本実施形態の輸液セット110は、シリンジなどのオスコネクタを有する第1医療用器具が接続されるコネクタ1と、複数の輸液チューブ111と、輸液チューブ111内の輸液剤などの液体の流量を調整するクレンメ112と、輸液ラインに存在する空気を排出(又は供給)するエアベントフィルタ113と、輸液チューブ111を閉塞するクランプ114と、を備える。
【0104】
なお、本実施形態では、オスコネクタを第1医療用器具と接続する位置にコネクタ1を設けたが、この位置に限らず、例えば、
図12に示すような輸液ラインをメインラインとして、このメインラインに別の薬液等を混注可能とするサブラインを設け、このサブラインに混注ポートとしてコネクタ1を設ける構成としてもよい。
【0105】
また、本実施形態の輸液セット110は、コネクタ1、輸液チューブ111、クレンメ112、エアベントフィルタ113及びクランプ114で構成されているが、輸液セットを構成する部材はこれらに限られるものではなく、例えば、上述の部材に加えて、点滴筒や、T字型の混注用コネクタなどを備える構成など、輸液セットの目的や用途に応じて適宜変更することができる。
【0106】
本発明は、上述した実施形態で特定された構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0107】
なお、ここで用いられている「天面キャップ」とは、弾性弁体の天面に接触するキャップを意味している。同様に、「底面キャップ」とは、弾性弁体の底面に接触するキャップを意味するものである。