特許第6563906号(P6563906)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563906
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】PD−1に結合する抗原結合蛋白質
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20190808BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20190808BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20190808BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20190808BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
   C07K16/28ZNA
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P37/06
   A61P29/00
   A61P1/04
   A61P25/28
   A61P29/00 101
   A61P19/02
   A61P31/12
   A61P17/06
   A61P37/02
   A61K39/395 N
   !C12P21/08
   !C12N15/09 Z
   !C12N15/13
【請求項の数】14
【全頁数】50
(21)【出願番号】特願2016-517070(P2016-517070)
(86)(22)【出願日】2014年5月31日
(65)【公表番号】特表2016-521692(P2016-521692A)
(43)【公表日】2016年7月25日
(86)【国際出願番号】US2014040420
(87)【国際公開番号】WO2014194302
(87)【国際公開日】20141204
【審査請求日】2017年5月30日
(31)【優先権主張番号】61/829,941
(32)【優先日】2013年5月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514291864
【氏名又は名称】ソレント・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Sorrento Therapeutics, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ヘユー・ジョウ
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ・エイ・スワンソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ディクソン・グレイ
(72)【発明者】
【氏名】ガナー・エフ・カウフマン
(72)【発明者】
【氏名】エドウィージュ・グロ
【審査官】 藤澤 雅樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−340714(JP,A)
【文献】 特表2010−530753(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/114335(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/004771(WO,A1)
【文献】 Journal of Clinical Oncology (2010) Vol.28, pp.3167-3175
【文献】 ,The New England Journal of Medicine (2012) Vol.366, pp.2443-2453
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00
A61K 39/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD−1エピトープに、少なくとも10-6Mの結合親和性で結合するIgGクラスの完全ヒト抗体であって、配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および
配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、完全ヒト抗体。
【請求項2】
配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗PD−1完全ヒト抗体Fab断片。
【請求項3】
配列番号23のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗PD−1一本鎖ヒト抗体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の抗体、抗体Fab断片または一本鎖ヒト抗体および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の抗体、抗体Fab断片または一本鎖ヒト抗体をがん、炎症性疾患または自己免疫性疾患が処置される有効量で含む、がん、炎症性疾患または自己免疫性疾患の処置剤。
【請求項6】
請求項5記載の処置剤であって、がんが、卵巣がん、結腸がん、乳がん、肺がん、骨髄腫、神経芽腫由来CNS腫瘍、単球性白血病、B細胞由来白血病、T細胞由来白血病、B細胞由来リンパ腫、T細胞由来リンパ腫、皮膚がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部がん、膵臓がん、膀胱がん、脳がん、結腸直腸がん、甲状腺がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、精巣がんおよび肥満細胞由来腫瘍からなる群から選択される、処置剤。
【請求項7】
請求項5記載の処置剤であって、自己免疫性疾患または炎症性疾患が、腸粘膜炎症、大腸炎に伴う消耗性疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ウイルス感染症、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、クローン病および炎症性腸疾患からなる群から選択される、処置剤。
【請求項8】
配列番号23の重鎖可変領域アミノ酸配列および配列番号24の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む、単離された抗PD−1抗体またはその抗原結合断片。
【請求項9】
少なくとも1×10-6Mの結合親和性を有する、請求項8に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項10】
IgGである、請求項8または9に記載の抗体またはその抗原結合断片。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項12】
請求項8〜10のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合断片を、がん、炎症性疾患または自己免疫性疾患が処置される有効量で含む、がん、炎症性疾患または自己免疫性疾患の処置剤。
【請求項13】
請求項12記載の処置剤であって、がんが、卵巣がん、結腸がん、乳がん、肺がん、骨髄腫、神経芽腫由来CNS腫瘍、単球性白血病、B細胞由来白血病、T細胞由来白血病、B細胞由来リンパ腫、T細胞由来リンパ腫、皮膚がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、頭頸部がん、膵臓がん、膀胱がん、脳がん、結腸直腸がん、甲状腺がん、前立腺がん、腎臓がん、胃がん、精巣がんおよび肥満細胞由来腫瘍からなる群から選択される、処置剤。
【請求項14】
請求項12記載の処置剤であって、自己免疫性疾患または炎症性疾患が、腸粘膜炎症、大腸炎に伴う消耗性疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ウイルス感染症、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、クローン病および炎症性腸疾患からなる群から選択される、処置剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗PD−1抗体に関連するか、または由来する組成物および方法を提供する。より具体的には、本発明は、PD−1に結合するヒト抗体、該抗体のPD−1結合断片および誘導体および、該断片を含む、PD−1結合ポリペプチドを提供する。さらに、本発明は、該抗体、抗体断片および誘導体およびポリペプチドをコードする核酸、該ポリヌクレオチドを含む細胞、該抗体、抗体断片および誘導体およびポリペプチドの製造方法、ならびにかかる抗体、抗体断片および誘導体およびポリペプチドの使用方法、例えば、種々の炎症性障害および種々のがんを含む、PD−1に関連する障害または症状を示す対象の処置または診断方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
プログラム細胞死蛋白質-1 (PD−1)は、268アミノ酸のI型膜蛋白質であり、T細胞制御因子の拡大CD28/CTLA-4ファミリーの一員である(The EMBO Journal (1992), vol. 11, issue 11, p. 3887-3895)。ヒトPD−1 cDNAは、EMBL/GenBank Acc. No. NM_005018に示す塩基配列からなり、マウスPD−1 cDNAは、Acc. No. NM_008798に示す塩基配列からなり、その発現は、胸腺細胞がCD4-CD8-細胞からCD4+CD8+細胞へと分化するときに見られる(International Immunology (1996), vol. 18, issue 5, p. 773-780., J. Experimental Med. (2000), vol. 191, issue 5, p. 891-898.)。末梢におけるPD−1発現は、骨髄細胞、例えば抗原受容体からの刺激により活性化されたT細胞またはBリンパ球または活性化マクロファージで見られることが報告されている (International Immunology (1996), vol. 18, issue 5, p. 765-772.)。
【0003】
PD-1は、CD28ファミリーの受容体の一員であり、該ファミリーには、CD28、CTLA-4、ICOS、PD−1およびBTLAが含まれる。該ファミリーの最初のメンバーであるCD28は、モノクローナル抗体の添加後に、T細胞の増殖の促進に対する機能性の効果を示すことにより発見された (Hutloff et al. (1999) Nature 397:263-266; Hansen et al. (1980) Immunogenics 10:247-260)。PD−1に対する2つの細胞表面糖蛋白質リガンドである、 PD−1およびPDL-2が同定され、これらは、PD−1結合に伴って起こるT細胞活性化およびサイトカインの分泌を下方制御することが示された(Freeman et al. (2000) J. Exp. Med. 192:1027-34; Latchman et al. (2001) Nat. Immunol. 2:261-8; Carter et al. (2002) Eur. J. Immunol. 32:634-43; Ohigashi et al. (2005) Clin. Cancer Res. 11:2947-53)。PD−1 (B7-H1)およびPD-L2 (B7-DC) は、PD-1に結合するB7ホモログである。細胞表面のPD−1の発現は、IFN-γ刺激によって上昇することもまた、示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】The EMBO Journal (1992), vol. 11, issue 11, p. 3887-3895.
【非特許文献2】International Immunology (1996), vol. 18, issue 5, p. 773-780.
【非特許文献3】J. Experimental Med. (2000), vol. 191, issue 5, p. 891-898.
【非特許文献4】International Immunology (1996), vol. 18, issue 5, p. 765-772.
【非特許文献5】Hutloff et al. (1999) Nature 397:263-266
【非特許文献6】Hansen et al. (1980) Immunogenics 10:247-260
【非特許文献7】Freeman et al. (2000) J. Exp. Med. 192:1027-34
【非特許文献8】Latchman et al. (2001) Nat. Immunol. 2:261-8
【非特許文献9】Carter et al. (2002) Eur. J. Immunol. 32:634-43
【非特許文献10】Ohigashi et al. (2005) Clin. Cancer Res. 11:2947-53
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、少なくとも10-6Mの結合親和性でPD−1エピトープに結合する、IgGクラスの完全ヒト抗体であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、完全ヒト抗体を提供する。好ましくは、該完全ヒト抗体は、重鎖と軽鎖の両方を有し、該抗体は、配列番号1/配列番号2 (本明細書中でGA1と称する)、配列番号3/配列番号4 (本明細書中でGA2と称する)、配列番号5/配列番号6 (本明細書中でGB1と称する)、配列番号7/配列番号8 (本明細書中でGB6と称する)、配列番号9/配列番号10 (本明細書中でGH1と称する)、配列番号11/配列番号12 (本明細書中でA2と称する)、配列番号13/配列番号14 (本明細書中でC7と称する)、配列番号15/配列番号16 (本明細書中でH7と称する)、配列番号17/配列番号18 (本明細書中でSH-A4と称する)、配列番号19/配列番号20 (本明細書中でSH-A9と称する)、配列番号21/配列番号22 (本明細書中でRG1B3と称する)、配列番号23/配列番号24 (本明細書中でRG1H10と称する)、配列番号25/配列番号26 (本明細書中でRG1H11と称する)、配列番号27/配列番号28 (本明細書中でRG2H7と称する)、配列番号29/配列番号30 (本明細書中でRG2H10と称する)、配列番号31/配列番号32 (本明細書中でRG3E12と称する)、配列番号33/配列番号34 (本明細書中でRG4A6と称する)、配列番号35/配列番号36 (本明細書中でRG5D9と称する)、配列番号37/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-22-15と称する)、配列番号38/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-27-25と称する)、配列番号39/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-3Cと称する)、配列番号40/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-16Cと称する)、配列番号41/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-17Cと称する)、配列番号42/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-19Cと称する)、配列番号43/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-21Cと称する)、配列番号44/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-23C2と称する) およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域の配列を有する。
【0006】
本発明は、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域を有するFab完全ヒト抗体断片であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、Fab完全ヒト抗体断片を提供する。好ましくは、該完全ヒト抗体Fab断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、該抗体は、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。
【0007】
本発明は、重鎖由来の可変領域および軽鎖由来の可変領域ならびに、重鎖と軽鎖の可変領域をつなぐペプチドリンカーを有する一本鎖ヒト抗体であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、一本鎖ヒト抗体を提供する。好ましくは、該完全ヒト一本鎖抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。
【0008】
本発明はさらに、有効量の抗PD−1ポリペプチドを投与することを含む、広範囲の哺乳類がんまたは広範囲の炎症性疾患および自己免疫疾患の処置方法であって、該抗PD−1ポリペプチドが、少なくとも10-Mの結合親和性でPD−1エピトープに結合するIgGクラスの完全ヒト抗体、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域を有するFab完全ヒト抗体断片、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域および重鎖と軽鎖の可変領域をつなぐペプチドリンカーを有する一本鎖ヒト抗体およびその組み合わせからなる群から選択される処置方法を提供し;ここで、
該完全ヒト抗体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有し;
該Fab完全ヒト抗体断片は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有し;
該一本鎖ヒト抗体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する。
【0009】
好ましくは、該完全ヒト抗体は、重鎖と軽鎖の両方を有し、配列番号1/配列番号2 (本明細書中でGA1と称する)、配列番号3/配列番号4 (本明細書中でGA2と称する)、配列番号5/配列番号6 (本明細書中でGB1と称する)、配列番号7/配列番号8 (本明細書中でGB6と称する)、配列番号9/配列番号10 (本明細書中でGH1と称する)、配列番号11/配列番号12 (本明細書中でA2と称する)、配列番号13/配列番号14 (本明細書中でC7と称する)、配列番号15/配列番号16 (本明細書中でH7と称する)、配列番号17/配列番号18 (本明細書中でSH-A4と称する)、配列番号19/配列番号20 (本明細書中でSH-A9と称する)、配列番号21/配列番号22 (本明細書中でRG1B3と称する)、配列番号23/配列番号24 (本明細書中でRG1H10と称する)、配列番号25/配列番号26 (本明細書中でRG1H11と称する)、配列番号27/配列番号28 (本明細書中でRG2H7と称する)、配列番号29/配列番号30 (本明細書中でRG2H10と称する)、配列番号31/配列番号32 (本明細書中でRG3E12と称する)、配列番号33/配列番号34 (本明細書中でRG4A6と称する)、配列番号35/配列番号36 (本明細書中でRG5D9と称する)、配列番号37/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-22-15と称する)、配列番号38/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-27-25と称する)、配列番号39/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-3Cと称する)、配列番号40/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-16Cと称する)、配列番号41/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-17Cと称する)、配列番号42/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-19Cと称する)、配列番号43/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-21Cと称する)、配列番号44/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-23C2と称する) およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。好ましくは、該完全ヒト抗体Fab断片は、重鎖可変領域配列と軽鎖可変領域配列を有し、該抗体は、配列番号1/配列番号2 (本明細書中でGA1と称する)、配列番号3/配列番号4 (本明細書中でGA2と称する)、配列番号5/配列番号6 (本明細書中でGB1と称する)、配列番号7/配列番号8 (本明細書中でGB6と称する)、配列番号9/配列番号10 (本明細書中でGH1と称する)、配列番号11/配列番号12 (本明細書中でA2と称する)、配列番号13/配列番号14 (本明細書中でC7と称する)、配列番号15/配列番号16 (本明細書中でH7と称する)、配列番号17/配列番号18 (本明細書中でSH-A4と称する)、配列番号19/配列番号20 (本明細書中でSH-A9と称する)、配列番号21/配列番号22 (本明細書中でRG1B3と称する)、配列番号23/配列番号24 (本明細書中でRG1H10と称する)、配列番号25/配列番号26 (本明細書中でRG1H11と称する)、配列番号27/配列番号28 (本明細書中でRG2H7と称する)、配列番号29/配列番号30 (本明細書中でRG2H10と称する)、配列番号31/配列番号32 (本明細書中でRG3E12と称する)、配列番号33/配列番号34 (本明細書中でRG4A6と称する)、配列番号35/配列番号36 (本明細書中でRG5D9と称する)、配列番号37/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-22-15と称する)、配列番号38/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-27-25と称する)、配列番号39/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-3Cと称する)、配列番号40/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-16Cと称する)、配列番号41/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-17Cと称する)、配列番号42/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-19Cと称する)、配列番号43/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-21Cと称する)、配列番号44/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-23C2と称する) およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。好ましくは、該完全ヒト一本鎖抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。
【0010】
好ましくは、処置する広範囲の哺乳類のがんは、卵巣がん、結腸がん、乳がん、肺がん、骨髄腫、神経芽腫由来CNS腫瘍、単球性白血病、B細胞由来白血病、T細胞由来白血病、B細胞由来リンパ腫、T細胞由来リンパ腫、肥満細胞由来腫瘍およびその組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、自己免疫疾患または炎症性疾患は、腸粘膜炎症、大腸炎に伴う消耗性疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ウイルス感染症、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、クローン病および炎症性腸疾患からなる群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】リンパ球エフェクター細胞上の抗PD−1による、リンパ球活性化に対する抗体 RG1H10 (配列番号23/配列番号24)の影響を評価するために用いた、混合リンパ球反応(MLR)を示す。T細胞活性を、抗PD−1モノクローナル抗体の存在下または非存在下で測定した。
図2】リンパ球エフェクター細胞中の、リンパ球活性に対する、RG1H10抗体の影響を評価するための混合リンパ球反応 (MLR)を示す。抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の存在下または非存在下においてIL−2分泌を測定した。縦軸は、IFNγ(pg/ml)である。
図3】リンパ球エフェクター細胞に対する、本明細書に記載の抗PD−1抗体RG1H10による、PD−L1/PD−1経路の遮断の影響を示すための、混合リンパ球反応(MLR)を示す。抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の存在下または非存在下における、IFN-γ分泌を測定した。縦軸はIL−2 (pg/ml) である。
図4】抗PD−1抗体の、CHO-PD−1細胞への用量依存的な細胞結合を示す。
図5】抗PD−1抗体による組換えPD−1の組換えPD−L1への結合の阻害の程度を示す。
図6】抗PD−1抗体RG1H10の、組換えPD−1蛋白質への結合特異性を示す。
図7】リンパ球エフェクター細胞上の抗PD−1によるリンパ球活性化に対する、IgG1またはIgG4(S228P)としての抗体RG1H10 (配列番号23/配列番号24)の影響を比較するために用いた、混合リンパ球反応(MLR)を示す。T細胞活性化を、抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の存在下または非存在下において、インターロイキン−2 (IL−2)の受容体 (CD25)の発現上昇として測定した。
図8】リンパ球エフェクター細胞中のリンパ球活性化に対する、IgG1またはIgG4 (S228P)としてのRG1H10抗体の影響を評価するための、混合リンパ球反応 (MLR) を示す。抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の存在下または非存在下における、IL−2分泌を測定した。
図9】リンパ球エフェクター細胞に対する、IgG1またはIgG4 (S228P) としての、本明細書に記載の抗PD−1抗体RG1H10による、PD−L1/PD−1経路の遮断の効果を示すための、混合リンパ球反応 (MLR)を示す。抗PD−1ヒトモノクローナル抗体の存在下または非存在下において、IFN-γ分泌を測定した。
図10】本明細書に記載のヒトおよびマウスの抗PD−1抗体の間の交叉反応の有無を示す。
図11】原文に記載なし
図12】原文に記載なし
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、PD−1エピトープに10-6M以下の結合親和性で結合する、IgGクラスの完全ヒト抗体であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、完全ヒト抗体を提供する。好ましくは、該完全ヒト抗体は、重鎖と軽鎖の両方を有し、配列番号1/配列番号2 (本明細書中でGA1と称する)、配列番号3/配列番号4 (本明細書中でGA2と称する)、配列番号5/配列番号6 (本明細書中でGB1と称する)、配列番号7/配列番号8 (本明細書中でGB6と称する)、配列番号9/配列番号10 (本明細書中でGH1と称する)、配列番号11/配列番号12 (本明細書中でA2と称する)、配列番号13/配列番号14 (本明細書中でC7と称する)、配列番号15/配列番号16 (本明細書中でH7と称する)、配列番号17/配列番号18 (本明細書中でSH-A4と称する)、配列番号19/配列番号20 (本明細書中でSH-A9と称する)、配列番号21/配列番号22 (本明細書中でRG1B3と称する)、配列番号23/配列番号24 (本明細書中でRG1H10と称する)、配列番号25/配列番号26 (本明細書中でRG1H11と称する)、配列番号27/配列番号28 (本明細書中でRG2H7と称する)、配列番号29/配列番号30 (本明細書中でRG2H10と称する)、配列番号31/配列番号32 (本明細書中でRG3E12と称する)、配列番号33/配列番号34 (本明細書中でRG4A6と称する)、配列番号35/配列番号36 (本明細書中でRG5D9と称する)、配列番号37/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-22-15と称する)、配列番号38/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-H2A-27-25と称する)、配列番号39/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-3Cと称する)、配列番号40/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-16Cと称する)、配列番号41/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-17Cと称する)、配列番号42/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-19Cと称する)、配列番号43/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-21Cと称する)、配列番号44/配列番号24 (本明細書中でRG1H10-23C2と称する) およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。
【0013】
本発明は、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域を有するFab完全ヒト抗体断片であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、Fab完全ヒト抗体断片を提供する。好ましくは、該完全ヒト抗体Fab断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、該抗体は、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。
【0014】
本発明は、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域および重鎖と軽鎖の可変領域をつなぐペプチドリンカーを有する一本鎖ヒト抗体であって、
配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、一本鎖ヒト抗体を提供する。好ましくは、該完全ヒト一本鎖抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。
【0015】
本発明はさらに、有効量の抗PD−1ポリペプチドを投与することを含む、広範囲の哺乳類のがんまたは炎症性疾患または自己免疫疾患を処置する方法を提供し、ここで、該抗PD−1ポリペプチドは、少なくとも10-Mの結合親和性でPD−1エピトープに結合するIgGクラスの完全ヒト抗体、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域を有するFab完全ヒト抗体断片、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域および重鎖と軽鎖の可変領域をつなぐペプチドリンカーを有する一本鎖ヒト抗体およびその組み合わせからなる群から選択され;
該完全ヒト抗体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有し;
該Fab完全ヒト抗体断片は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有し;
該一本鎖ヒト抗体は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する。
【0016】
好ましくは、該完全ヒト抗体は、重鎖と軽鎖の両方を有し、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24、およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。好ましくは、該完全ヒト抗体Fab断片は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、該抗体は、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。好ましくは、該完全ヒト一本鎖抗体は、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する。
【0017】
好ましくは、処置する広範囲の哺乳類のがんは、卵巣がん、結腸がん、乳がん、肺がん、骨髄腫、神経芽腫由来CNS腫瘍、単球性白血病、B細胞由来白血病、T細胞由来白血病、B細胞由来リンパ腫、T細胞由来リンパ腫、肥満細胞由来腫瘍およびその組み合わせからなる群から選択される。好ましくは、自己免疫疾患または炎症性疾患は、腸粘膜炎症、大腸炎に伴う消耗性疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ウイルス感染症、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、クローン病および炎症性腸疾患からなる群から選択される。
【0018】
「抗原結合蛋白質」は、抗原結合部位および、場合によっては、抗原結合蛋白質の抗原への結合を促進する構造を抗原結合部位が取ることを可能にする足場もしくはフレームワーク部位を含む、蛋白質である。抗原結合蛋白質の例としては、抗体、抗体断片 (例えば抗体の抗原結合部位)、抗体の誘導体および抗体の類似体が挙げられる。抗原結合蛋白質は、例えば、代替の蛋白質足場または、移植CDRもしくはCDR誘導体を含む人工足場を含んでいてもよい。かかる足場としては、例えば、該抗原結合蛋白質の3次元構造を安定させるために導入した変異を含む、抗体由来の足場ならびに、例えば生体適合性のポリマーを含む全体的に合成の足場が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、Korndorfer et al., 2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, Volume 53, Issue 1:121-129; Roque et al., 2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654を参照のこと。さらに、ペプチド抗体模倣物 (「PAM」)ならびにフィブロネクチン成分を用いた抗体模倣物に基づく足場を、足場として用いてもよい。
【0019】
抗原結合蛋白質は、例えば、天然起源の免疫グロブリン構造を有していてよい。「免疫グロブリン」は、4量体分子である。天然起源の免疫グロブリンにおいて、各4量体は、それぞれ1本の「軽」鎖(約25kDa)と「重」鎖(約50〜70kDa)を有する、同一の2対のポリペプチド鎖からなる。各鎖のN末端部位は、主に抗原認識の原因となる約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のC末端部位は、主にエフェクターの機能の原因となる定常領域を規定する。ヒトの軽鎖は、κまたはλ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεに分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと規定する。軽鎖および重鎖において、可変領域と定常領域は、約12もしくはそれ以上のアミノ酸からなる「J領域」により連結しており、重鎖はまた、約10もしくはそれ以上のアミノ酸の「D領域」も含む。一般的なことについては、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照のこと。インタクトな免疫グロブリンが2つの結合部位を持つように、各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。
【0020】
天然起源の免疫グロブリン鎖の可変領域は、相補性決定領域すなわちCDRとも呼ばれる3つの超可変領域により連結した、比較的保存された、同じ一般的な構造のフレームワーク領域(FR)を示す。軽鎖および重鎖はともに、N末からC末の方向に、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4領域を含む。各ドメインへのアミノ酸の割当は、Kabat et al. (Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5.sup.th Ed., US Dept. of Health and Human Services, PHS, NIH, NIH Publication no. 91-3242, 1991)の定義にしたがう。免疫グロブリン鎖のアミノ酸についての他の番号付け系としては、IMGT.RTM. (International ImMunoGeneTics information system; Lefranc et al., Dev. Comp. Immunol. 29:185-203; 2005)およびAHo (Honegger and Pluckthun, J. Mol. Biol. 309(3):657-670; 2001)が挙げられる。
【0021】
抗体は、血清または血漿のような、種々の抗原特異性を有する免疫グロブリンを含む供給源から入手し得る。該抗体を親和性精製に付した場合、特定の抗原特異性に富むようにすることができる。かかる抗体の富化生成物は、通常、特定の抗原に対する特異的な結合活性を有する抗体が約10%よりも少ない状態から作製される。これらの生成物に対して親和性精製を複数回行うことで、該抗原に対する特異的な結合活性を有する抗体の割合を上昇させることができる。このように作製した抗体は、しばしば、「単一特異性」と称される。単一特異性抗体生成物は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%または99.9%の、特定の抗原に対する特異的な結合活性を有する抗体からなっていてよい。
【0022】
「抗体」は、特にことわらない限り、インタクトな免疫グロブリンまたは、特定の結合についてインタクトな抗体と競合する、その抗原結合部位を指す。抗原結合部位は、組み換えDNA技術またはインタクトな抗体の酵素的もしくは化学的切断により作製し得る。抗原結合部位としては、とりわけ、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv、ドメイン抗体 (dAb) および相補性決定領域(CDR) 断片、一本鎖抗体(scFv)、キメラ抗体、二特異性抗体、三特異性抗体、四特異性抗体および特定の抗原をポリペプチドに結合させるのに十分な免疫グロブリンの一部を少なくとも含むポリペプチドが挙げられる。
【0023】
Fab断片は、VL、VH、CLおよびCH1領域を有する一価の断片であり; F(ab’)断片は、ヒンジ領域においてジスルフィド結合により連結した2つのFab断片を有する二価の断片であり; Fd断片は、VHおよびCH1領域を有し; Fv断片は、抗体の単一のアームのVL領域およびVH領域を有し; dAb断片は、VH領域、VL領域または、VHもしくはVL領域の抗原結合断片を有する (米国特許第6,846,634号および第6,696,245号、米国特許出願公開第20/0202512号; 第2004/0202995号; 第2004/0038291号; 第2004/0009507号;第2003/0039958号明細書およびWard et al., Nature 341:544-546, 1989)。
【0024】
一本鎖抗体(scFv)は、VL領域およびVH領域が、リンカー(例えばアミノ酸残基の合成配列) により連結して連続的な蛋白質鎖を形成し、該蛋白質が折り重なり、一価の抗原結合部位を形成できる程度に該リンカーが長い抗体である(例えば、Bird et al., 1988, Science 242:423-26およびHuston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-83参照)。二特異性抗体は、2つのポリペプチド鎖を含み、各ポリペプチド鎖が、同一鎖上の2つの領域間で対になるには短すぎるリンカーにより連結しているVHおよびVL領域を含むため、各ドメインが他のポリペプチド鎖上の相補的なドメインと対になることができる二価の抗体である(例えば、Holliger et al., 1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-48およびPoljak et al., 1994, Structure 2:1121-23参照)。二特異性抗体の2つのポリペプチド鎖が同一である場合、それらが対になることにより生じる二特異性抗体は、2つの同一の抗原結合部位を有する。異なる配列を有するポリペプチド鎖は、2つの異なる抗原結合部位を有する二特異性抗体の作製に用いることができる。同様に、三特異性抗体および四特異性抗体は、それぞれ3つおよび4つのポリペプチド鎖を含み、3つおよび4つの抗原結合部位を形成する抗体であり、該抗原結合部位は同一であっても異なっていてもよい。
【0025】
特定の抗体の相補性決定領域(CDR)およびフレームワーク領域 (FR)は、上述のKabat et al; Lefranc et al.,および/またはHonegger and Pluckthunに記載されている系を用いて同定し得る。1種以上のCDRを共有結合もしくは非共有結合により分子に組み入れて、抗原結合蛋白質としてもよい。抗原結合蛋白質は、大きいポリペプチド鎖の一部としてCDRを取り込んでも、他のポリペプチド鎖にCDRを共有結合させていても、またはCDRを非共有結合により取り込んでいてもよい。該CDRにより、抗原結合蛋白質が、所望の特定の抗原に特異的に結合することが可能になる。
【0026】
抗原結合蛋白質は、1つ以上の結合部位を有していてよい。結合部位が2つ以上である場合、該結合部位は、互いに同一であっても異なっていてもよい。例えば、天然起源のヒト免疫グロブリンは、典型的には2つの同一の結合部位を持ち、「二重特異性」または「二機能性」抗体は、2つの異なる結合部位を持つ。
【0027】
「ヒト抗体」という語は、ヒト免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を1つ以上有する抗体全てを含む。態様の一において、可変領域および定常領域は、全てヒト免疫グロブリン配列由来である(完全ヒト抗体)。これらの抗体は、例えば以下に示すような種々の方法で作製されてよく、例えば、ヒトの重鎖および/または軽鎖をコードする遺伝子から得られる抗体を発現するように遺伝的に修飾したマウスを、所望の抗原で免疫化することにより作製することも含まれる。
【0028】
ヒト化抗体は、該ヒト化抗体をヒト対象に投与した場合に、非ヒト種抗体と比較して、免疫応答を誘発する可能性が低くなるように、および/または誘発する免疫応答の重症度が低くなるようにするための、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失および/または付加により、非ヒト種由来の抗体配列とは異なる配列を有する。態様の一において、非ヒト種抗体の重鎖および/または軽鎖のフレームワーク領域および定常領域の特定のアミノ酸を変異させてヒト化抗体を作製する。他の態様において、ヒト抗体の定常領域を、非ヒト種の可変領域に融合させる。他の態様において、非ヒト抗体の1つ以上のCDR配列の1つ以上のアミノ酸残基を変異させて、ヒト対象に投与した場合に、該非ヒト抗体の免疫原性を低下させ、ここで、前述の変異させたアミノ酸残基は、抗体の抗原への免疫特異的な結合にとって重要なものでないか、または、アミノ酸配列の変異が、保存的な変異であるため、該ヒト化抗体の抗原への結合が、非ヒト抗体の抗原への結合よりも有意に低くなることはない。ヒト化抗体の作製方法は、例えば米国特許第6,054,297号; 第5,886,152号;および第5,877,293号明細書に記載されている。
【0029】
「キメラ抗体」という語は、1つの抗体由来の1つ以上の領域と他の1つ以上の抗体由来の1つ以上の領域とを含む抗体を指す。態様の一において、1つ以上のCDRは、ヒト抗PD−1抗体由来である。他の態様において、全てのCDRがヒト抗PD−L1抗体由来である。他の態様において、2つ以上のヒト抗PD−1抗体由来のCDRが、キメラ抗体において混合され、対応している。例えば、キメラ抗体は、第一のヒト抗PD−1抗体の軽鎖由来のCDR1、第二のヒト抗PD−1抗体の軽鎖由来のCDR2およびCDR3ならびに、第三の抗PD−1抗体の重鎖由来CDRを含んでいてよい。他の組み合わせも可能である。
【0030】
さらに、フレームワーク領域は、同一の抗PD−1抗体の1つ由来であっても、1つ以上の異なる抗体由来であってもよく、例えばヒト抗体由来であっても、またはヒト化抗体由来であってもよい。キメラ抗体の一例においては、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種由来の抗体と同一であるか、相同であるかもしくは該抗体由来であるか、または、特定の抗体のクラスまたはサブクラスに属しており、一方、該鎖の残りは、他の種由来の抗体と同一であるか、相同であるかもしくは該抗体由来であるか、または他の抗体のクラスもしくはサブクラスに属している。所望の生物活性(すなわち、PD−1に対する特異的な結合能)を示す該抗体の断片も含まれる。
【0031】
「中和抗体」または「阻害抗体」は、過剰の抗PD−1抗体が本明細書の実施例に記載のアッセイで、活性化の量を少なくとも約20%低下させる場合、PD−1の蛋白質分解性の活性化を阻害する抗体である。種々の態様において、該抗原結合蛋白質は、PD−1の蛋白質分解性の活性化量を少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%および99.9%低下させる。
【0032】
抗体の断片または類似体は、本明細書の記載にしたがって、および当該分野で公知の技術を用いて当業者により容易に製造し得る。断片または類似体のN末端およびC末端は、機能性ドメインの境界の近くであることが好ましい。構造ドメインおよび機能性ドメインは、ヌクレオチドおよび/またはアミノ酸配列データを、公共のもしくは私有の配列データベースと比較することにより特定し得る。コンピューターによる比較方法を用いて、構造および/または機能が知られている他の蛋白質に見られる配列モチーフまたは予測される蛋白質立体構造を特定してもよい。公知の3次元構造に折りたたまれる蛋白質配列を特定する方法が知られている。Bowie et al., 1991, Science 253:164を参照のこと。
【0033】
「CDR移植抗体(CDR grafted antibody)」は、特定の種またはアイソタイプの抗体由来の1つ以上のCDRと、同じもしくは異なる種またはアイソタイプの抗体由来のフレームワークを含む抗体である。
【0034】
「多重特異性抗体」は、1つ以上の抗原の2つ以上のエピトープを認識する抗体である。この種類の抗体のサブクラスは、同じもしくは異なる抗原の2つの異なるエピトープを認識する、「二重特異性抗体」である。
【0035】
抗原結合蛋白質は、抗原(例えばヒトPD−L1)に1nM以下の解離定数で結合する場合、「特異的に結合」しているとみなされる。
【0036】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用し、抗原結合蛋白質の抗原に対する特異性および親和性に寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含む、抗原結合蛋白質の一部である。抗原に特異的に結合する抗体については、ここに、少なくとも1つのCDRドメインの少なくとも一部が含まれる。
【0037】
「エピトープ」は、抗原結合蛋白質(例えば抗体)が結合する、分子の部位である。エピトープは、該分子の非近接部位(例えば、ポリペプチドにおいて、その一次配列では近接していないが、三次構造および四次構造では、抗原結合蛋白質が結合できる程度に互いに近接しているアミノ酸残基)を含んでいてもよい。
【0038】
2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「パーセント同一性」は、該配列をGAPコンピュータープログラム(GCG Wisconsin Package, version 10.3 の一部(Accelrys, San Diego, Calif.))をそのデフォルトのパラメーターで用いて比較することにより決定する。
【0039】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」という語は、本明細書を通じて互換可能なように用いられ、DNA分子 (例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA分子 (例えばmRNA)、核酸類似体(例えばペプチド核酸および非天然起源のヌクレオチド類似体)を用いて作製したDNAまたはRNA類似体およびその混成体を含む。該核酸分子は、一本鎖であっても二本鎖であってもよい。態様の一において、本発明の核酸分子は、抗体、その断片、誘導体、ムテインまたは変異体をコードする、近位のオープンリーディングフレームを含む。
【0040】
ギャップを導入することなく、1本のポリヌクレオチド中の全てのヌクレオチドが、もう1本のポリヌクレオチドの相補的なヌクレオチドと反対になるように、2本の一本鎖ポリヌクレオチドの配列を逆平行方向に並べることができ、いずれかの配列の5’末端または3’末端に不対ヌクレオチドが生じることがない場合、これらのポリヌクレオチドは互いの「相補体」である。2つのポリヌクレオチドが、適度に厳密な条件下で互いにハイブリダイズすることができる場合、ポリヌクレオチドは、他のポリヌクレオチドと「相補的」である。したがって、ポリヌクレオチドは、他のポリヌクレオチドの相補体ではないが、相補的である場合がある。
【0041】
「ベクター」は、そこに連結した他の核酸を細胞に導入するのに用い得る核酸である。ベクターの1種は、「プラスミド」であり、これは、付加的な核酸セグメントを結合させることができる、直鎖もしくは環状の二本鎖DNA分子を指す。他の種類のベクターとしては、付加的なDNAセグメントをウイルスゲノムに導入することができるウイルスベクター(例えば、複製欠損レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルス)がある。特定のベクターは、それらが導入されたホスト細胞中で、自立的に複製を行うことができる(例えば、バクテリアの複製起源を含むバクテリアベクターおよびエピソーム哺乳類ベクター)。他のベクター (例えば非エピソーム哺乳類ベクター) には、ホスト細胞への導入時に、ホスト細胞のゲノムに取り込まれ、それにより、ホストゲノムとともに複製されるものがある。「発現ベクター」は、選択したポリヌクレオチドを発現させ得る、ベクターの一種である。
【0042】
調節配列がヌクレオチド配列の発現(例えばレベル、タイミングまたは発現部位)に影響を与える場合、ヌクレオチド配列は、調節配列に「作動可能に連結」している。「調節配列」は、それが作動可能に連結している核酸の発現(例えばレベル、タイミングまたは発現部位)に影響を与える核酸である。調節配列は、例えば、直接的に、または1つ以上の他の分子(例えば、調節配列および/または核酸に結合するポリペプチド)の作用を介して、調節される核酸に影響を及ぼし得る。調節配列の例としては、例えばプロモーター、エンハンサーおよび他の発現調節エレメント(例えばポリアデニル化シグナル)が挙げられる。調節配列のさらなる例は、例えば、Goeddel, 1990, Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CalifおよびBaron et al., 1995, Nucleic Acids Res. 23:3605-06に記載されている。
【0043】
「ホスト細胞」は、核酸、例えば本発明の核酸を発現させるのに用い得る細胞である。ホスト細胞は、例えば大腸菌 (E. Coli)のような原核生物であっても、または真核生物、例えば単細胞真核生物(例えば酵母または他の真菌)、植物細胞(例えばタバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えばヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)またはハイブリドーマであってもよい。ホスト細胞の例としては、サルの腎臓細胞であるCOS-7細胞株 (ATCC CRL 1651) (Gluzman et al., 1981, Cell 23:175参照)、L細胞、C127細胞、3T3細胞 (ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞またはその誘導体、例えばVeggie CHOおよび血清不含培地で増殖する、関連細胞株(Rasmussen et al., 1998, Cytotechnology 28:31参照)またはDHFRが欠損しているCHO系統のDX-B11 (Urlaub et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-20参照)、HeLa細胞、BHK (ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザルの腎臓細胞株CV1 (ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株(McMahan et al., 1991, EMBO J. 10:2821参照)、ヒト胎児由来腎臓細胞、例えば293、293 EBNAもしくはMSR 293、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、初代培養組織の試験管内培養由来の細胞株、初代人工培養組織、HL-60、U937、HaKまたはJurkat細胞が挙げられる。典型的に、ホスト細胞は、ポリペプチドをコードする核酸で形質転換または遺伝子導入し、次にそれを該ホスト細胞中で発現させることのできる培養細胞である。「組み換えホスト細胞」という語は、発現させる核酸で形質転換したか、または遺伝子導入したホスト細胞を表すのに用い得る。ホスト細胞はまた、核酸を含むが、調節配列を該核酸と作動可能に連結するように該ホスト細胞に導入しなければ、所望のレベルでは該核酸を発現しない細胞であってもよい。ホスト細胞という語は、特定の対象細胞だけでなく、該細胞の子孫もしくは潜在的な子孫も指すということは理解されている。世代が引き継がれる際に、例えば変異または環境の影響によって特定の変化が起こり得るため、かかる子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性もあるが、本明細書で用いる該用語の範囲内に含まれる。
【0044】
好ましくは、処置する哺乳類のがんは、卵巣がん、結腸がん、乳がんまたは肝がん細胞株、骨髄腫、神経芽腫由来CNS腫瘍、単球性白血病、B細胞由来白血病、T細胞由来白血病、B細胞由来リンパ腫、T細胞由来リンパ腫、肥満細胞由来腫瘍およびその組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
本発明のポリペプチドは、当該分野で公知の、任意の標準的な方法を用いて作製してよい。一例としては、ポリペプチドは、該ポリペプチドをコードする核酸配列(例えばcDNA)を組み換え発現ベクターに挿入し、発現を促進する条件下にて該DNA配列を発現させることによる、組み換えDNA法により作製する。
【0046】
本明細書に記載する種々のポリペプチドの任意のものをコードする核酸は、化学的に合成してもよい。細胞内の発現を上昇させるために、コドン使用頻度を選択してもよい。該コドン使用頻度は、選択する細胞の種類に依存する。大腸菌および他の細菌ならびに哺乳類細胞、植物細胞、酵母細胞および昆虫細胞について、特定化したコドン使用頻度パターンが発達している。例えば: Mayfield et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2003 100(2):438-42; Sinclair et al. Protein Expr. Purif. 2002 (1):96-105; Connell N D. Curr. Opin. Biotechnol. 2001 12(5):446-9; Makrides et al. Microbiol. Rev. 1996 60(3):512-38; およびSharp et al. Yeast. 1991 7(7):657-78を参照のこと。
【0047】
核酸操作の一般的な技術は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Vols. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 2 ed., 1989またはF. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology (Green Publishing and Wiley-Interscience: New York, 1987) およびその最新版に記載されており、これらの文献は引用により本明細書中に包含される。ポリペプチドをコードするDNAは、哺乳類、ウイルスまたは昆虫遺伝子由来の適当な転写もしくは翻訳調節エレメントに作動可能に連結している。かかる調節エレメントには、転写プロモーター、転写を調節する任意のオペレーター配列、適当なmRNAリボソーム結合部位をコードする配列ならびに転写および翻訳の終結を調節する配列が含まれる。通常複製起点によってもたらされる、ホストにおける複製能および、形質転換体の認識を促進するための選択遺伝子をさらに組み込んでもよい。
【0048】
また、該組み換えDNAは、蛋白質精製に有用であり得る、任意の種類の蛋白質タグ配列を含んでいてよい。蛋白質タグの例としては、ヒスチジンタグ、FLAGタグ、mycタグ、HAタグ、またはGSTタグが挙げられるが、これらに限定されるものではない。細菌、真菌、酵母および哺乳類細胞ホストに用いる適当なクローニングおよび発現ベクターはCloning Vectors: A Laboratory Manual, (Elsevier, N.Y., 1985)に記載されている。
【0049】
該発現コンストラクトを、ホスト細胞に適当な方法を用いて、該ホスト細胞に導入する。ホスト細胞へ核酸を導入する方法としては、当該分野において種々の方法が知られており、例えば、エレクトロポレーション;塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストランまたは他の物質を用いた遺伝子導入;微粒子銃;リポフェクション;および感染(ベクターが感染性である場合)が挙げられるが、これらに限定されない。適当なホスト細胞としては、原核生物、酵母、哺乳類細胞または細菌細胞が挙げられる。
【0050】
適当な細菌としては、グラム陰性もしくはグラム陽性生物、例えば大腸菌またはバチルス種(Bacillus spp.)が挙げられる。酵母、好ましくはサッカロマイシス(Saccharomyces)種、例えば出芽酵母(S. cerevisiae)を、ポリペプチドの作製に用いてもよい。種々の哺乳類もしくは昆虫細胞の培養系を、組み換え蛋白質の発現に用いてもよい。昆虫細胞内で異種性の蛋白質を作製するためのバキュロウイルス系は、LuckowおよびSummersにより概説されている(Bio/Technology, 6:47, 1988)。適当な哺乳類ホスト細胞株の例としては、内皮細胞、COS-7サル腎臓細胞、CV-1、L細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、HEK(ヒト胎児由来腎臓)細胞、HeLa、293、293TおよびBHK細胞株が挙げられる。精製ポリペプチドは、適当なホスト/ベクター系を培養して組み換え蛋白質を発現させることにより作製する。多くの適用において、本明細書に記載のポリペプチドの多くはサイズが小さいため、大腸菌での発現が好ましい発現方法となる。その後、該蛋白質を、培養培地または細胞抽出物から精製する。
【0051】
本明細書に記載の蛋白質は、細胞翻訳系を用いて作製してもよい。かかる目的のためには、該ポリペプチドをコードする核酸を修飾して、試験管内での転写によるmRNAの産生および、用いる特定の無細胞系(真核生物、例えば哺乳類もしくは酵母の無細胞翻訳系または原核生物、例えば細菌の無細胞翻訳系)における該mRNAの無細胞翻訳を可能にしなければならない。
【0052】
PD−1結合ポリペプチドはまた、化学合成 (例えば、Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd ed., 1984, The Pierce Chemical Co., Rockford, Illに記載の方法)を用いて作製してもよい。該蛋白質の修飾もまた、化学合成によって作製してよい。
【0053】
本発明のポリペプチドは、蛋白質化学の分野で一般的に知られている蛋白質の単離/精製方法により精製し得る。非限定的な例としては、抽出、再結晶、塩析(例えば、硫酸アンモニウムもしくは硫酸ナトリウムを用いた塩析)、遠心分離、透析、限外濾過、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、順相クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過、ゲル浸透クロマトグラフィー、親和性クロマトグラフィー、電気泳動、向流分配またはこれらの任意の組み合わせが挙げられる。精製後、ポリペプチドは、当該分野で公知の種々の方法のうちの任意の方法、例えば非限定的な例としては、濾過および透析によって、緩衝媒体を交換するか、および/または、濃縮してもよい。
【0054】
該精製ポリペプチドは、好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の純度である。厳密な純度の値に関わらず、本ポリペプチドは、医薬的製品として用いるのに充分な純度である。
【0055】
ポリペプチドの翻訳後修飾
特定の態様において、本発明の結合ポリペプチドは、さらに、翻訳後修飾を含んでいてもよい。翻訳後の蛋白質修飾の例としては、リン酸化、アセチル化、メチル化、ADP-リボース化、ユビキチン化、グリコシル化、カルボニル化、SUMO化、ビオチン化またはポリペプチド側鎖もしくは疎水性基の付加が挙げられる。結果として、修飾された可溶ポリペプチドには、非アミノ酸エレメント、例えば脂質、多糖もしくは単糖、およびリン酸が含まれていてよい。グリコシル化の好ましい形態は、該ポリペプチドに1つ以上のシアル酸部分を結合させる、シアル酸付加である。シアル酸部分は、該蛋白質の溶解度および血清半減期を改善する一方で、免疫原性を低下させる。Raju et al. Biochemistry. 2001 31; 40(30):8868-76を参照のこと。該非アミノ酸エレメントのポリペプチドの官能性に対する影響は、そのPD−L1またはPD−1の機能に対する拮抗作用、例えば血管新生または腫瘍成長に対する阻害効果について試験してよい。
【0056】
特定の態様の一において、対象の可溶ポリペプチドの修飾形態は、該対象可溶ポリペプチドの非蛋白質性のポリマーへの連結を含む。特定の態様の一において、該ポリマーは、米国特許第4,640,835号; 第4,496,689号; 第4,301,144号; 第4,670,417号; 第4,791,192号または第4,179,337号明細書に記載されているように、ポリエチレングリコール(「PEG」)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンである。修飾ポリペプチドの例としては、PEG化VK-B8が挙げられる。
【0057】
PEGは、市販されているか、または当該分野でよく知られている方法によるエチレングリコールの開環重合により製造し得る水溶性ポリマーである(Sandler and Karo, Polymer Synthesis, Academic Press, New York, Vol. 3, p 138-161)。「PEG」という語は、サイズまたはPEG末端の修飾に関わらず、任意のポリエチレングリコール分子を広く指すのに用いられ、
式: X--O(CHCHO)-1CHCHOH (1)
で表され、式中で、nは20〜2300であり、XはHまたは末端修飾、例えばC1-4アルキルである。態様の一において、本発明のPEGは、一方の末端がヒドロキシまたはメトキシである、すなわち、XがHまたはCHである(「メトキシPEG」)。PEGは、さらに、結合反応に必要な化学基を含んでいてよく; それは、該分子の化学合成により生じたものか、または;分子の距離が最適になるためのスペーサーである。さらに、該PEGは、互いに結合している1つ以上のPEG側鎖からなっていてよい。2つ以上のPEG鎖を有するPEGは、多アーム(multiarmed)または分枝PEGと呼ばれる。分枝PEGは、例えば、ポリエチレンオキシドを種々のポリオール、例えば、グリセロール、ペンタエリトリトール(pentaerythriol)およびソルビトールに添加することにより作製し得る。例えば、4分枝PEGは、ペンタエリトリトール(pentaerythriol)とエチレンオキシドから作製し得る。分枝PEGは、例えば欧州特許出願公開第0 473 084号および米国特許第5,932,462号明細書に記載されている。PEGの形態の一つには、リジンの第一級アミノ基を介して結合した2PEG側鎖 (PEG2) が挙げられる(Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)。
【0058】
PEGはよく知られているが、PEG化10Fn3ポリペプチドが、PEG化して、リガンド結合活性を維持し得ることが示されたのは、知る限りではこれが最初である。好ましい態様において、該PEG化10Fn3ポリペプチドは、部位特異的なPEG化、特に、N末端またはC末端におけるシステインへのPEGの結合により、作製される。したがって、本発明は、薬理学的な性質が改善されている標的結合性の10Fn3ポリペプチドであって、該10Fn3ドメインのループの少なくとも1つが標的結合に機能している、約80〜約150アミノ酸の10Fn3ドメインおよび;共有結合したPEG部分を含む10Fn3ポリペプチドを提供し、ここで、該10Fn3ポリペプチドは哺乳類において、100nMより低いKで標的に結合し、30mL/時間/kgより低いクリアランス率を示す。該PEG部分は、10Fn3ポリペプチドに、部位特異的なPEG化、例えばCys残基への結合によって結合していてよく、ここで、該Cys残基は、該10Fn3ポリペプチドのN末端またはN末端とN最末端のβ鎖もしくはβ様鎖の間、または該10Fn3ポリペプチドのC末端またはC末端とC最末端のβ鎖もしくはβ様鎖の間に位置していてよい。Cys残基は、他の位置、具体的には、標的結合に関与しない任意のループ上であってもよい。PEG部分は、他の化学反応、例えば、アミンへの結合によって、結合していてもよい。
【0059】
PEGのペプチドまたは蛋白質への結合は、一般的に、PEGの活性化および活性化PEG中間体の、標的蛋白質/ペプチドまたはリンカーへの直接的な結合を伴い、該リンカーは次いで活性化し、標的蛋白質/ペプチドへ結合する(Abuchowski et al., J. Biol. Chem., 252, 3571 (1977) and J. Biol. Chem., 252, 3582 (1977), Zalipsky, et al., and Harris et. al., in: Poly(ethylene glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications; (J. M. Harris ed.) Plenum Press: New York, 1992; Chap.21 and 22参照)。PEG分子を含む結合ポリペプチドは結合型蛋白質として知られているが、一方、結合しているPEG分子を欠く蛋白質は、非結合型とも称され得ることは留意すべきである。
【0060】
PD−1結合ポリペプチドへの結合については、例えば、約1,000ダルトン (Da)〜100,000Da (nは20〜2300)の、種々の分子量のPEGを選択してよい。PEGにおける繰り返しユニットの数「n」は、Daで表される分子量に近似される。活性化リンカー上のPEGの組み合わせた分子量が、医薬用途に適当であることが好ましい。したがって、態様の一において、該PEG分子の分子量は、100,000Daを超えない。例えば、3つのPEG分子がリンカーに結合している場合、各PEG分子は、12,000Da (各nは約270)という同じ分子量を有し、このとき、リンカー上のPEGの総分子量は約36,000Da (nの合計は約820)である。該リンカーに結合したPEGの分子量は異なっていてもよく、例えば、リンカー上の3つの分子のうち、2つのPEG分子がそれぞれ5,000Da (各nは約110) であり、1つのPEG分子が12,000Da (nは約270)であってよい。
【0061】
本発明の特定の態様において、PD−1結合ポリペプチドは、
式:--CO--(CH)--(OCHCH)--OR
のポリ(エチレングリコール)基の1つに、該ポリ(エチレングリコール) 基の--CO (すなわちカルボニル)が、結合ポリペプチドのアミノ基の1つとアミド結合を形成するように、共有結合しており;Rは低級アルキルであり; xは2または3であり; mは約450〜約950であり; nおよびmは、結合体から結合性のポリペプチドを引いた分子量が約10〜40kDaになるように選択される。態様の一において、結合ポリペプチドのリジンの6-アミノ基は、利用可能な (遊離の) アミノ基である。
【0062】
上述の結合体は、より具体的には、式(II):
P--NHCO--(CH)--(OCHCH)--OR (II)
によって表されてよく、式中、Pは本明細書に記載の結合ポリペプチドの基であり(すなわち式(II)に示すカルボニルとアミド結合を形成するアミノ基を含まない);Rは低級アルキルであり; xは2または3であり; mは約450〜約950であり、結合体から結合ポリペプチドを引いた分子量が約10〜約40kDaになるように選択される。本明細書において、「m」の特定の範囲は、配向について意味を持つ。「m」の範囲は、いずれの場合においても、PEG基の分子量によって厳密に決定される。
【0063】
当業者は、例えば、PEG化結合ポリペプチドが、治療的にどのように用いられるか、所望の用量、循環時間、蛋白質分解に対する耐性、免疫原性および他の考慮する事項に基づいて、PEGの適当な分子量を選択し得る。蛋白質の性質を増強させるためのPEGおよびその使用に関する議論については、Katre, Advanced Drug Delivery Reviews 10: 91-114 (1993)を参照のこと。
【0064】
態様の一において、PEG分子は、活性化して、結合ポリペプチド上のアミノ基、例えばリジンと反応してもよい (Bencham et al., Anal. Biochem., 131, 25 (1983); Veronese et al., Appl. Biochem., 11, 141 (1985).; Zalipsky et al., Polymeric Drugs and Drug Delivery Systems, adrs 9-110 ACS Symposium Series 469 (1999); Zalipsky et al., Europ. Polym. J., 19, 1177-1183 (1983); Delgado et al., Biotechnology and Applied Biochemistry, 12, 119-128 (1990))。
【0065】
特定の態様の一において、PEGのカルボネートエステルは、PEG−結合ポリペプチド結合体を形成するのに用いられる。N,N’-ジスクシンイミジルカルボネート (DSC)を、PEGとの反応に用いて、活性化混合PEG-スクシンイミジルカルボネートを形成し、これを次にリンカーの求核基または結合ポリペプチドのアミノ基と反応させてもよい (米国特許第5,281,698号および第5,932,462号明細書参照)。同様の種類の反応において、1,1’-(ジベンゾトリアゾリル)カルボネートおよびジ-(2-ピリジル)カルボネートを、PEGと反応させて、それぞれPEG-ベンゾトリアゾリルおよびPEG-ピリジル混合カルボネート(米国特許第5,382,657号明細書)を形成してよい。
【0066】
10Fn3ポリペプチドのPEG化は、当該分野の最新の方法によって、例えば結合ポリペプチドと求電子活性PEG(供給元: Shearwater Corp., USA, www.shearwatercorp.com)の反応によって行ってよい。本発明の好ましいPEG試薬は、例えば、N-ヒドロキシスクシンイミジルプロピオネート (PEG-SPA)、ブタノエート (PEG-SBA)、PEG-スクシンイミジルプロピオネートまたは分枝N-ヒドロキシスクシンイミド、例えばmPEG2-NHS (Monfardini et al., Bioconjugate Chem. 6 (1995) 62-69)である。該方法を、結合ポリペプチドのリジンのf−アミノ基またはN末端のアミノ基でのPEG化に用いてよい。
【0067】
他の態様において、PEG分子を、結合ポリペプチド上のスルフヒドリル基に結合させてよい(Sartore et al., Appl. Biochem. Biotechnol., 27, 45 (1991); Morpurgo et al., Biocon. Chem., 7, 363-368 (1996); Goodson et al., Bio/Technology (1990) 8, 343; 米国特許第5,766,897号明細書)。米国特許第6,610,281号および第5,766,897号明細書には、スルフヒドリル基に結合させてよい、反応性のPEG種の例が記載されている。
【0068】
PEG分子が、結合ポリペプチドのシステイン残基に結合している態様において、該システイン残基は、結合ポリペプチド由来のものである場合もあり、一方、他の態様においては、1つ以上のシステイン残基が結合ポリペプチド中に操作により導入されている場合もある。システイン残基を作製するために、結合ポリペプチドコード配列に変異を導入してもよい。これは、例えば、1つ以上のアミノ酸残基をシステインに変異させることにより達成し得る。システイン残基に変異させるのに好ましいアミノ酸としては、セリン、スレオニン、アラニンおよび他の親水性残基が挙げられる。システインに変異させる残基は、表面に露出している残基であることが好ましい。一次配列または蛋白質に基づいて、残基の表面接近性を予測するためのアルゴリズムが、当該分野ではよく知られている。あるいは、結合ポリペプチドがそれに基づいてデザインされ、展開されているフレームワークの結晶構造が解明されている場合、結合ポリペプチドのアミノ酸配列を比較することにより、表面残基を予測し(Himanen et al., Nature. (2001) 20-27; 414(6866):933-8を参照のこと)、それにより表面に露出する残基を特定することができる。態様の一において、システイン残基をN末端および/またはC末端もしくはその付近、またはループ領域内にて、結合ポリペプチドに導入する。
【0069】
いくつかの態様において、PEG化結合ポリペプチドは、N末端のアミノ酸のαアミノ基に共有結合したPEG分子を含む。部位特異的なN末端の還元的アミノ化は、Pepinsky et al., (2001) JPET, 297, 1059および米国特許第5,824,784号明細書に記載されている。他の利用可能な求核性アミノ基を用いた蛋白質の還元的アミノ化のためのPEG−アルデヒドの使用が、米国特許第4,002,531号明細書、Wieder et al., (1979) J. Biol. Chem. 254,12579および Chamow et al., (1994) Bioconjugate Chem. 5, 133に記載されている。
【0070】
他の態様において、PEG化結合ポリペプチドは、リンカーに共有結合した1つ以上のPEG分子を含み、該リンカーは、それ自体は結合ポリペプチドのN末端のアミノ酸残基のαアミノ基に結合している。かかる方法は、米国特許出願公開第2002/0044921号明細書および国際公開第094/01451号に記載されている。
【0071】
態様の一において、結合ポリペプチドは、C末端においてPEG化される。特定の態様の一において、蛋白質は、C末端のアジドメチオニンの導入およびそれに続くシュタウディンガー反応を介するメチル−PEG−トリアリールホスフィン化合物の結合によりC末端でPEG化される。このC末端の結合方法は、Cazalis et al., Bioconjug. Chem. 2004; 15(5):1005-1009に記載されている。
【0072】
結合ポリペプチドのモノPEG化は、また、国際公開第94/01451号に記載の一般的な方法によって作製してもよい。国際公開第94/01451号は、修飾された末端のアミノ酸のα炭素反応基を有する組み換えポリペプチドを作製する方法を記載している。該方法の工程には、該組み換えポリペプチドの形成および該ポリペプチドを、N末端αアミンおよびC末端αカルボキシルに生物学的に付加した、1つ以上の保護基で保護することを含む。その後、該ポリペプチドを、化学的な保護剤と反応させて、反応性の側鎖基を選択的に保護し、それにより、側鎖が修飾されるのを防いでよい。その後、該ポリペプチドを、生物学的な保護基に特異的な切断試薬で切断し、保護されていない末端アミノ酸α炭素反応性基を形成する。かかる保護されていない末端のアミノ酸のα炭素反応基を、化学修飾剤を用いて修飾する。次に、側鎖が保護されている、末端が修飾されたシングルコピーのポリペプチドを、側鎖基において脱保護し、末端が修飾された組み換えシングルコピーポリペプチドを形成する。該方法の工程の数および順番は、該ポリペプチドのN末端および/またはC末端のアミノ酸にて選択的な修飾を達成するために変動してよい。
【0073】
結合反応中の、結合ポリペプチドの活性化PEGに対する比率は約1:0.5〜1:50、約1:1〜1:30または約1:5〜1:15であってよい。PEGの結合ポリペプチドへの共有結合による付加を触媒する本発明の方法において、種々の水性緩衝液を用いてよい。態様の一において、用いる緩衝液のpHは、約7.0〜9.0である。他の態様において、該pHは、わずかに塩基性の範囲、例えば約7.5〜8.5である。中性のpH範囲に近いpKaを有する緩衝液、例えばリン酸緩衝液を用いてもよい。
【0074】
PEG化結合ポリペプチドの精製に、当該分野で知られている慣用的な分離および精製技術、例えばサイズ排除クロマトグラフィー(例えばゲル濾過)およびイオン交換クロマトグラフィーを用いてよい。生成物は、SDS-PAGEを用いて分離してもよい。分離し得る生成物としては、モノ−、ジ−、トリ−、ポリ−PEG化および非PEG化結合ポリペプチドならびに遊離のPEGが含まれる。モノPEG結合体のパーセンテージは、溶出ピーク周辺のより広範囲の画分をプールすることにより、組成物中のモノPEGのパーセンテージが高くなるように調節することができる。モノPEG結合体が約90%である場合に、収量および活性のバランスが良い。例えば、結合体の少なくとも92%または少なくとも96%がモノPEG種である組成物が望ましい場合もある。本発明の態様の一において、モノ−PEG結合体のパーセンテージは、90%〜96%である。
【0075】
態様の一において、本発明のPEG化結合ポリペプチドは、1つ、2つまたはそれより多いPEG部分を含む。態様の一において、該PEG部分は、蛋白質の表面上および/または標的リガンドに接触する表面から離れた、アミノ酸残基に結合している。態様の一において、PEG−結合ポリペプチド中のPEGの、組み合わせたまたは合計の分子量は、約3,000Da〜60,000Daであり、場合によっては約10,000Da〜36,000Daである。態様の一において、該PEG化結合ポリペプチド中のPEGは、実質的に直線の、直鎖PEGである。
【0076】
本発明の態様の一において、該PEG化結合ポリペプチド中のPEGは、例えば450mM ヒドロキシルアミン(pH6.5)を用いた、8〜16時間、室温におけるヒドロキシルアミンアッセイを用いて、該PEG化アミノ酸残基から加水分解されていないために、安定である。態様の一において、該組成物の80%より多く、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%が、安定したモノPEG結合ポリペプチドである。
【0077】
他の態様において、本発明のPEG化結合ポリペプチドは、修飾されていない蛋白質が有する生物活性を少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%または100%維持していることが好ましい。態様の一において、生物活性は、KD、konまたはkoffによって評価される、PD−1への結合能を指す。特定の態様の一において、該PEG化結合ポリペプチド蛋白質は、非PEG化結合ポリペプチドと比較した、PD−1への結合の上昇を示す。
【0078】
PEG修飾ポリペプチドの血清クリアランス率は非修飾結合ポリペプチドと比較して約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%または90%低下し得る。該PEG修飾ポリペプチドの半減期(t1/2)は、非修飾蛋白質の半減期と比べて、上昇していてよい。PEG−結合ポリペプチドの半減期は、非修飾結合ポリペプチドと比較して、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、125%、150%、175%、200%、250%、300%、400%または500%または1000%上昇していてよい。いくつかの態様において、該蛋白質の半減期は、試験管内、例えば緩衝生理食塩水もしくは血清中で決定する。他の態様において、該蛋白質の半減期は、生体内半減期、例えば、血清または動物の他の体液中での半減期である。
【0079】
治療用製剤と投与方法
本発明は、PD−1の生物活性の阻害に応答する症状の処置または前症状の予防方法を特徴づける。好ましい例は、炎症または細胞の過剰増殖により特徴づけられる症状である。投与技術および用量は、具体的なポリペプチドの種類および処置する具体的な症状によって変わるが、これは当業者によって容易に決定し得るものである。一般的に、規制当局は、治療剤として用いる蛋白質製剤は、発熱物質が許容できる程度に低いレベルになるように製剤することを要求している。したがって、一般的に治療剤は、本質的に発熱性物質を含まないか、または適当な規制当局(例えばFDA)により決定された許容されるレベル以下の発熱性物質しか含まないという点において、他の製剤と異なる。
【0080】
本発明の治療用組成物は、薬学的に許容される希釈剤、担体または賦形剤とともに単位剤形で投与してもよい。投与は、非経口(例えば静脈内、皮下)、経口または局所投与であってよいが、これらに限定されるものではない。さらに、本発明のポリペプチドをコードする核酸を用いた任意の遺伝子治療技術、例えばDNA自体の送達、組み換え遺伝子およびベクター、細胞ベースの送達、例えば患者の細胞の生体外操作などを用いてもよい。
【0081】
本組成物は、経口投与用の丸剤、錠剤、カプセル剤、液剤または徐放性錠剤;静脈内、皮下もしくは非経口投与用の液剤;局所投与用のゲル剤、ローション剤、軟膏剤、クリーム剤またはポリマーまたは他の徐放性ビヒクルの形態であってよい。
【0082】
当該分野でよく知られている、製剤の製造方法は、例えば「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」 (20th ed., ed. A. R. Gennaro A R., 2000, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, Pa.)に記載されている。非経口投与用の製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物由来の油または水素化ナフタレンを含んでいてよい。生体適合性の、生分解性乳酸ポリマー、乳酸/グリコール酸コポリマーまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを、該化合物の徐放に用いてもよい。ナノ粒子性の製剤(例えば、生体分解性ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、リポソーム) を該化合物の生体内分布の制御に用いてもよい。有用な可能性のある他の非経口送達系としては、エチレン−ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入系およびリポソームが挙げられる。製剤中の該化合物の濃度は、多数の要素、例えば投与する薬物の用量、および投与経路によって変化する。
【0083】
該ポリペプチドは、薬学的に許容される塩、例えば製薬業で通常用いられている、非毒性の酸付加塩または、金属錯体として投与してもよい。酸付加塩の例としては、有機酸、例えば酢酸、乳酸、パモ酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、またはトリフルオロ酢酸など;ポリマー酸、例えばタンニン酸またはカルボキシメチルセルロースなど;無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸またはリン酸などが挙げられる。金属錯体には、亜鉛および鉄などが含まれる。一例において、該ポリペプチドは、熱安定性を高めるために、酢酸ナトリウムの存在下で製剤する。
【0084】
経口使用に用いる製剤としては、有効成分を、非毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合して含む錠剤が挙げられる。これらの賦形剤は、例えば、不活性の希釈剤または注入剤(例えばスクロースおよびソルビトール)、滑沢剤、滑剤および付着防止剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油またはタルク)であってよい。
【0085】
経口用の製剤はまた、咀嚼錠または有効成分が不活性の固体希釈剤と混合している硬ゼラチンカプセル剤、または有効成分が水もしくは油性媒体と混合している軟ゼラチンカプセル剤として提供されてもよい。
【0086】
治療上有効な用量、という語は、そのために投与している治療効果をもたらす用量を指す。厳密な用量は、処置する障害により変わるが、公知の技術を用いて当業者により確認できるものである。一般的に、該ポリペプチドは、1日あたり約0.01μg/kg〜約50mg/kg、好ましくは1日あたり0.01mg/kg〜約30mg/kg、最も好ましくは1日あたり0.1mg/kg〜約20mg/kg投与される。該ポリペプチドは、毎日(例えば、1日1回、2回、3回、または4回) または好ましくはより低い頻度で(例えば毎週、2週間毎、3週間毎、毎月または3ヶ月毎)投与してよい。さらに、当該分野では知られていることであるが、年齢ならびに体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与のタイミング、薬物相互作用および疾患の重症度に応じて調節することが必要な場合もあるが、これらは、当業者の通常の試験方法により決定し得るものである。
【0087】
本明細書に記載の抗体と腫瘍ワクチンの医薬製剤
本明細書に記載の抗PD−1抗体と治療用ワクチンの組み合わせ治療製品または製剤は、相乗的な腫瘍治療上の利点をもたらす。例えば、本発明は、本明細書に記載の抗PD−1抗体と、米国特許第8,222,214号に記載されている、アジュバントとしてGM-CSFを組み合わせた、HER2/neuから単離されたE75由来の9merの合成ペプチドである「Neuvax」との組み合わせ剤を提供し、該文献の記載内容は、引用により本明細書に包含される。さらに、本発明は、本明細書に記載の抗PD−1抗体と、がん胎児抗原と組み合わせたカナリアポックスウイルスであるALVAC-CEAワクチンとの組み合わせ剤を提供する。
【0088】
使用例
本明細書に記載のPD−1結合蛋白質およびその関連する変異体は、多数の治療および診断への適用に有用である。これらには、PD−1への結合の競合または遮断によるPD−1の生物活性の阻害ならびに、細胞、特にPD−1発現細胞への細胞毒性またはイメージング剤の送達が含まれる。これらの分子のサイズが小さく、構造が安定していることは、薬物の製造、急速なクリアランスが望ましい特定の適用における、体内からの急速なクリアランスまたは、かかる特徴を有する分子を用いた、適当なまたは改善した新規の送達系への製剤について特に有用であり得る。
【0089】
本発明のポリペプチドは、そのPD−1生物活性の阻害剤としての有効性に基づいて、多数のがんの症状ならびにがんに起因する合併症、例えば胸水貯留および腹水貯留に対して有効である。好ましくは、本発明のPD−1結合ポリペプチドは、過増殖性疾患またはがんおよび、がんの転移による広がりの処置または予防に有用であり得る。本明細書に記載する抗PD−1抗体にとって適当な適応症としては、結腸直腸がん、頭頸部がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)および膵臓がんが挙げられる。がんの非限定的な例としては、膀胱がん、血液がん、骨がん、脳がん、乳がん、軟骨がん、結腸がん、腎臓がん、肝臓がん、肺がん、リンパ節がん、神経組織がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、骨格筋がん、皮膚がん、脊髄がん、脾臓がん、胃がん、精巣がん、胸腺がん、甲状腺がん、気管がん、泌尿生殖器がん、尿管がん、尿道がん、子宮がんまたは膣がんが挙げられる。
【0090】
さらに、本明細書に記載の抗PD−1結合ポリペプチドにより、種々の炎症性障害を処置し得る。該炎症性障害としては、例えば、腸粘膜炎症、大腸炎に伴う消耗性疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ウイルス感染症、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬およびクローン病が挙げられる。
【0091】
PD−1結合ポリペプチドは、単独でまたはさらなる治療、例えば化学療法、放射線療法、免疫療法、外科的介入またはこれらの任意の組み合わせの1つ以上と組み合わせて投与してよい。上述するように、他の治療戦略における補助治療として、長期間の治療も同様に可能である。
【0092】
本明細書に記載の抗PD−L1抗体薬剤は、単独でまたは、増殖性障害(例えば腫瘍)の処置または予防に関する他の慣用的な抗がん治療法と組み合わせて用いてよい。例えば、該方法は、がんの予防、外科手術後のがんの再発および転移の予防に用いてよく、他の慣用的ながん治療の補助として用いてよい。慣用的ながん治療(例えば化学療法、放射線療法、光線療法、免疫療法および外科手術)の効果を対象のポリペプチド治療剤によって増強し得ることは、本明細書の記載により確認できる。
【0093】
一連の広い範囲の公知化合物が、抗腫瘍活性を示すことが示されている。これらの化合物は、化学療法において、固形腫瘍の収縮、転移およびさらなる増殖の予防または白血病性または骨髄悪性腫瘍中の悪性細胞の数を減少させるために医薬として用いられている。化学療法は種々の種類の悪性腫瘍を処置する上で効果的であるが、抗腫瘍性の化合物は、多くが望ましくない副作用を誘発する。2つ以上の異なる処置を組み合わせた場合、かかる処置は相乗的に作用し、各処置の用量を低下させ、それにより各化合物が高用量で引き起こす有害な副作用を軽減することができることが示されている。他の例において、処置に対して不応性の悪性腫瘍は、2つ以上の異なる治療の組み合わせには反応する場合がある。
【0094】
本ポリペプチド治療剤を他の慣用的な抗腫瘍剤と組み合わせて、同時または連続的に投与するとき、該治療剤は、該抗腫瘍剤の治療効果を増強するか、または該抗腫瘍剤への細胞の耐性を克服することができることが示され得る。これにより、抗腫瘍剤の用量を低下させ、それにより、望ましくない副作用を低下させるか、または、耐性細胞における抗腫瘍剤の効果を回復することが可能になる。
【0095】
組み合わせ抗腫瘍治療に用い得る医薬化合物としては、例えば:アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン(campothecin)、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエンエストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イロノテカン(ironotecan)、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミソール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンが挙げられる。
【0096】
特定の化学療法用抗腫瘍化合物は、その作用機序によって、例えば次の群に分けられる: 抗代謝剤/抗がん剤、例えばピリミジン類似体(5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビンおよびシタラビン)およびプリン類似体、葉酸拮抗剤および関連阻害剤(メルカプトプリン、チオグアニン、ペントスタチンおよび2-クロロデオキシアデノシン(クラドリビン)); 抗増殖/抗有糸分裂剤、例えば天然産物、例えばビンカアルカロイド (ビンブラスチン、ビンクリスチンおよびビノレルビン)、微小管崩壊剤(microtubule disruptor)、例えばタキサン (パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポシロンおよびナベルビン、エピジポドフィロトキシン(epidipodophyllotoxins) (エトポシド、テニポシド)、DNA傷害剤(アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、ヘキサメチルメラミンオキサリプラチン、イホスファミド(iphosphamide)、メルファラン、メクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホラミド(triethylenethiophosphoramide)およびエトポシド(VP16)); 抗生物質、例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン (アドリアマイシン)、イダルビシン、アントラサイクリン、ミトキサントロン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミスラマイシン) およびマイトマイシン;酵素(L-アスパラギンを全身的に代謝し、自身でアスパラギンを合成する能力を持たない細胞を取り除くL−アスパラギナーゼ); 抗血小板剤; 抗増殖/抗有糸分裂アルキル化剤、例えばナイトロジェンマスタード(メクロレタミン、シクロホスファミドおよび類似体、メルファラン、クロラムブシル)、エチレンイミンおよびメチルメラミン(ヘキサメチルメラミンおよびチオテパ)、アルキルスルホネート-ブスルファン、ニトロソウレア(カルムスチン(BCNU) および類似体、ストレプトゾシン)、トラゼン−ダカルバジニン(trazenes-dacarbazinine) (DTIC); 抗増殖/抗有糸分裂抗代謝剤、例えば葉酸類似体 (メトトレキサート); プラチナ配位錯体(シスプラチン、カルボプラチン)、プロカルバジン、ヒドロキシウレア、ミトタン、アミノグルテチミド; ホルモン、ホルモン類似体 (エストロゲン、タモキシフェン、ゴセレリン、ビカルタミド、ニルタミド) およびアロマターゼ阻害剤(レトロゾール、アナストロゾール); 抗凝固剤(ヘパリン、合成ヘパリン塩および他のトロンビン阻害剤); 血栓溶解剤 (例えば組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼ)、アスピリン、ジピリダモール、チクロピジン、クロピドグレル、アブシキシマブ; 抗遊走剤(antimigratory agent); 抗分泌剤(ブレフェルジン(breveldin)); 免疫抑制剤 (シクロスポリン、タクロリムス (FK-506)、シロリムス(ラパマイシン)、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル); 抗血管新生化合物(TNP-470、ゲニステイン)および増殖因子阻害剤(例えばVEGF阻害剤、線維芽細胞増殖因子(FGF)阻害剤); アンジオテンシン受容体遮断薬; 一酸化窒素ドナー; アンチセンスオリゴヌクレオチド; 抗体 (トラスツズマブ); 細胞周期阻害剤および分化誘導因子 (トレチノイン); mTOR阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤 (ドキソルビシン (アドリアマイシン)、アムサクリン、カンプトテシン、ダウノルビシン、ダクチノマイシン、エニポシド(eniposide)、エピルビシン、エトポシド、イダルビシンおよびミトキサントロン、トポテカン、イリノテカン)、コルチコステロイド (コルチゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン(methylpednisolone)、プレドニゾンおよびプレドニゾロン); 増殖因子シグナル伝達キナーゼ阻害剤; ミトコンドリア機能不全誘導因子およびカスパーゼ活性化因子;およびクロマチン崩壊剤。
【0097】
組み合わせ療法の性質によって、本ポリペプチド治療剤の投与を、他の治療剤を投与している間および/またはその後に続けてもよい。本ポリペプチド治療剤の投与は、単回用量で行っても複数用量で行ってもよい。本ポリペプチド治療剤の投与は、慣用療法の少なくとも数日前に開始する場合もあれば、慣用療法の投与の直前または慣用療法の投与時に投与を始める場合もある。
【0098】
該PD−1結合ポリペプチドを、検出可能な標識にさらに結合させる(該標識は、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素コファクターであってよい)。活性部分は、例えば、放射活性剤、例えば放射活性重金属、例えば鉄キレート、ガドリニウムまたはマンガンの放射活性キレート、酸素、窒素、鉄、炭素またはガリウムのポジトロン放射体、43K、52Fe、57Co、67Cu、67Ga、68Ga、123I、125I、131I、132Iまたは99Tcであってよい。かかる部分に取り付けた結合剤は、イメージング剤として用いてもよく、哺乳類、例えばヒトにおいて診断に用いるために有効量を投与した後、該イメージング剤の局在および集積を検出する。イメージング剤の局在および集積は、ラジオシンチグラフィー、核磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影、またはポジトロン放出断層撮影により検出し得る。PD−1を対象とする、PD−1結合ポリペプチドを用いた免疫シンチグラフィーは、がんおよび脈管構造の検出および/または診断に使用し得る。例えば、99テクネチウム、111インジウムまたは125ヨウ素で標識したPD−1マーカーに対する任意の結合ポリペプチドを、かかるイメージングに有効に用いてよい。当業者には明らかなことであるが、投与する放射性同位体の量は、該放射性同位体に依存する。当業者は、活性部分として用いる特定の放射性核種の特定の活性およびエネルギーに基づいて、投与するイメージング剤の量を容易に処方することができる。典型的には、イメージング剤1用量あたり0.1〜100ミリキュリー、好ましくは1〜10ミリキュリー、最も頻繁には2〜5ミリキュリーが投与される。したがって、放射活性部分に結合した標的化部分を含む、イメージング剤として有用な本発明の組成物は、0.1〜100ミリキュリー、いくつかの態様においては、好ましくは1〜10ミリキュリー、いくつかの態様においては好ましくは2〜5ミリキュリー、いくつかの態様においてはより好ましくは1〜5ミリキュリーを含む。
【0099】
本PD−1結合ポリペプチドはまた、さらなる治療剤(薬物化合物、化学療法用化合物および放射線療法用化合物を含むが、これらに限定されない)を、PD−1を発現する細胞または組織に送達するのに用いてもよい。一例において、PD−1を発現する腫瘍細胞または組織を標的として送達するために、化学療法剤に本PD−1結合ポリペプチドを融合させる。
【0100】
本PD−1結合ポリペプチドは、研究、診断および治療など種々のものに適用するのに有用である。例えば、受容体またはその一部の単離および/または精製、ならびに受容体構造(例えば立体構造)および機能の研究に用い得る。
【0101】
本発明はまた、哺乳類の特定のがんに対する易罹患性を検出する方法を提供する。例えば、該方法は、哺乳類における、細胞上に存在するPD−1の量および/またはPD−1陽性細胞の数に基づいて、進行する疾患に対する哺乳類の易罹患性を検出するのに使用し得る。
【0102】
ポリペプチド配列は、標準の一文字または三文字の略号を用いて表記する。とくにことわらない限り、各ポリペプチド配列は、左側がN末端、右側がC末端であり;各一本鎖ヌクレオチド配列および各二本鎖核酸配列の上側の鎖は、左側が5’末端、右側が3’末端である。参照配列とどのように相違するかを説明することによって、特定のポリペプチド配列を表記することも可能である。
【0103】
以下の用語は、とくにことわらない限り、次の意味を有するものと理解されるべきである:
【0104】
「PD−1阻害剤」および「PD−1拮抗剤」という語は、互換可能に用いられる。それぞれは、PD−1の機能の少なくとも1つを検出可能に阻害する分子である。反対に、「PD−1作動薬」は、PD−1の機能の少なくとも1つを検出可能に上昇させる分子である。PD−1阻害剤により引き起こされる阻害は、アッセイを用いて検出可能であれば、完全なものでなくてもよい。PD−1の機能については任意のアッセイを用いてよく、その例は本明細書に記載する。PD−1阻害剤により阻害され得る、またはPD−1作動薬により上昇し得るPD−1の機能の例としては、がん細胞増殖またはアポトーシス(プログラム細胞死)などが挙げられる。PD−1阻害剤およびPD−1作動薬の種類の例としては、抗原結合蛋白質(例えばPD−1阻害性抗原結合蛋白質)、抗体、抗体断片および抗体誘導体などのPD−1結合ポリペプチドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
「ペプチド」、「ポリペプチド」および「蛋白質」という語はそれぞれ、ペプチド結合により互いに結合した2つ以上のアミノ酸残基を含む分子を指す。これらの語は、例えば、天然および人工の蛋白質、蛋白質断片および蛋白質配列のポリペプチド類似体(例えばムテイン、変異体および融合蛋白質)ならびに翻訳後、もしくはそれ以外の方法で、共有結合または非共有結合により修飾された蛋白質を含む。ペプチド、ポリペプチドまたは蛋白質は、単量体もしくは多量体であってよい。
【0106】
ポリペプチド(例えば抗体)の「変異体」は、他のポリペプチド配列と比較して、アミノ酸配列に1つ以上のアミノ酸が挿入されているか、欠失しているかおよび/または置換されているアミノ酸配列を含む。本明細書に記載する変異体としては、例えば、融合蛋白質が挙げられる。
【0107】
ポリペプチドの「誘導体」は、例えば他の化学的な部分(例えばポリエチレングリコールまたはアルブミン、例えばヒト血清アルブミン)への結合、リン酸化およびグリコシル化により化学的に修飾されたポリペプチド(例えば抗体)である。特にことわらない限り、「抗体」という語は、2本の全長の重鎖および2本の全長の軽鎖を含む抗体に加え、その誘導体、変異体、断片およびムテインを含み、その例は以下に記載する。
【0108】
「抗原結合蛋白質」は、抗原結合部位および、場合によっては、抗原結合蛋白質の抗原への結合を促進する構造を抗原結合部位が取ることを可能にする足場もしくはフレームワーク部位を含む、蛋白質である。抗原結合蛋白質の例としては、抗体、抗体断片 (例えば抗体の抗原結合部位)、抗体の誘導体および抗体の類似体が挙げられる。抗原結合蛋白質は、例えば、代替の蛋白質足場または、移植CDRもしくはCDR誘導体を含む人工足場を含んでいてもよい。かかる足場としては、例えば、該抗原結合蛋白質の3次元構造を安定させるために導入した変異を含む、抗体由来の足場ならびに、例えば生体適合性のポリマーを含む全体的に合成の足場が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例えば、Korndorfer et al., 2003, Proteins: Structure, Function, and Bioinformatics, Volume 53, Issue 1:121-129; Roque et al., 2004, Biotechnol. Prog. 20:639-654を参照のこと。さらに、ペプチド抗体模倣物 (「PAM」)ならびにフィブロネクチン成分を用いた抗体模倣物に基づく足場を、足場として用いてもよい。
【0109】
抗原結合蛋白質は、例えば、天然起源の免疫グロブリン構造を有していてよい。「免疫グロブリン」は、4量体分子である。天然起源の免疫グロブリンにおいて、各4量体は、それぞれ1本の「軽」鎖(約25kDa)と「重」鎖(約50〜70kDa)を有する、同一の2対のポリペプチド鎖からなる。各鎖のN末端部位は、主に抗原認識の原因となる約100〜110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のC末端部位は、主にエフェクターの機能の原因となる定常領域を規定する。ヒトの軽鎖は、κまたはγ軽鎖に分類される。重鎖は、μ、δ、γ、αまたはεに分類され、それぞれ、抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと規定する。好ましくは、本明細書中に記載の抗PD−1抗体は、重鎖のVHおよび軽鎖のVLアミノ酸配列の可変領域配列により特徴づけられる。好ましい抗体は、κIgG抗体であるA6である。軽鎖および重鎖において、可変領域と定常領域は、約12もしくはそれ以上のアミノ酸からなる「J領域」により連結しており、重鎖はまた、約10もしくはそれ以上のアミノ酸の「D領域」も含む。一般的なことについては、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N.Y. (1989))を参照のこと。インタクトな免疫グロブリンが2つの結合部位を持つように、各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。
【0110】
抗原結合蛋白質は、抗原(例えばヒトPD−1)に1nM以下の解離定数で結合する場合、「特異的に結合」しているとみなされる。
【0111】
「抗原結合ドメイン」、「抗原結合領域」または「抗原結合部位」は、抗原と相互作用し、抗原結合蛋白質の抗原に対する特異性および親和性に寄与するアミノ酸残基(または他の部分)を含む、抗原結合蛋白質の一部である。抗原に特異的に結合する抗体については、ここに、少なくとも1つのCDRドメインが少なくとも部分的に含まれる。
【0112】
「エピトープ」は、抗原結合蛋白質(例えば抗体)が結合する、分子の部位である。エピトープは、該分子の非近接部位(例えば、ポリペプチドにおいて、その一次配列では近接していないが、三次構造および四次構造では、抗原結合蛋白質が結合できる程度に互いに近接しているアミノ酸残基)を含んでいてもよい。
【0113】
2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の「パーセント相同性」は、該配列をGAPコンピュータープログラム(GCG Wisconsin Package, version 10.3 の一部(Accelrys, San Diego, Calif.))をそのデフォルトのパラメーターで用いて比較することにより決定する。
【0114】
「ホスト細胞」は、核酸を発現させるのに用い得る細胞である。ホスト細胞は、例えば大腸菌のような原核生物であっても、または真核生物、例えば単細胞真核生物(例えば酵母または他の真菌)、植物細胞(例えばタバコまたはトマト植物細胞)、動物細胞(例えばヒト細胞、サル細胞、ハムスター細胞、ラット細胞、マウス細胞または昆虫細胞)またはハイブリドーマであってもよい。ホスト細胞の例としては、サルの腎臓細胞であるCOS-7細胞株 (ATCC CRL 1651) (Gluzman et al., 1981, Cell 23:175)、L細胞、C127細胞、3T3細胞 (ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO) 細胞またはその誘導体、例えばVeggie CHOおよび血清不含培地で増殖する、関連細胞株(Rasmussen et al., 1998, Cytotechnology 28:31)またはDHFRが欠損しているCHO系統のDX-B11 (Urlaub et al., 1980, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-20)、HeLa細胞、BHK (ATCC CRL 10)細胞株、アフリカミドリザルの腎臓細胞株CV1(ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株(McMahan et al., 1991, EMBO J. 10:2821)、ヒト胎児由来腎臓細胞、例えば293、293 EBNAもしくはMSR 293、ヒト表皮A431細胞、ヒトColo205細胞、他の形質転換霊長類細胞株、正常二倍体細胞、初代培養組織の試験管内培養由来の細胞株、初代人工培養組織、HL-60、U937、HaKまたはJurkat細胞が挙げられる。典型的に、ホスト細胞は、ポリペプチドをコードする核酸で形質転換または遺伝子導入し、次にそれを該ホスト細胞中で発現させることのできる培養細胞である。「組み換えホスト細胞」という語は、発現させる核酸で形質転換したか、または遺伝子導入したホスト細胞を表すのに用い得る。ホスト細胞はまた、核酸を含むが、調節配列を該核酸と作動可能に連結するように該ホスト細胞に導入しなければ、所望のレベルでは該核酸を発現しない細胞であってもよい。ホスト細胞という語は、特定の対象細胞だけでなく、該細胞の子孫もしくは潜在的な子孫も指すということは理解されている。世代が引き継がれる際に、例えば変異または環境の影響によって特定の変化が起こり得るため、かかる子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性もあるが、本明細書で用いる該用語の範囲内に含まれる。
【0115】
抗原結合蛋白質 (例えば、抗体、抗体断片、抗体誘導体、抗体ムテインおよび抗体変異体) は、PD−1 (好ましくはヒトPD−1)に結合するポリペプチドである。抗原結合蛋白質には、PD−1の生物活性を阻害する抗原結合蛋白質が含まれる。
【0116】
「Fcポリペプチド」という語は、抗体のFc領域由来のポリペプチドの天然およびムテイン形態を含む。二量体化を促進するヒンジ領域を含む、該ポリペプチドの切断型もまた含まれる。Fc部 (およびそこから形成される多量体) を含む融合蛋白質は、プロテインAまたはプロテインGカラムでの親和性クロマトグラフィーによる精製が容易であるという利点をもたらす。
【0117】
本発明の抗原結合蛋白質の抗原結合断片は、慣用的な技術により作製してよい。かかる断片の例としては、FabおよびF(ab’)断片が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
本発明は、PD−1に結合するモノクローナル抗体を提供する。モノクローナル抗体は、当該分野で知られている任意の技術、例えば免疫化スケジュールの完了後に遺伝子導入動物から回収した脾臓細胞を不死化することにより作製してよい。該脾臓細胞は、当該分野で公知の任意の技術、例えばそれらを骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマを作製することにより不死化し得る。ハイブリドーマ作製融合手法で用いる骨髄腫細胞は、抗体を産生せず、融合効率が高く、所望する融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を支持する特定の選択的な培地中での増殖を不可能にする酵素欠損を有することが好ましい。マウスの融合において使用する適当な細胞株の例としては、Sp-20、P3-X63/Ag8、P3-X63-Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210-Ag14、FO、NSO/U、MPC-11、MPC11-X45-GTG 1.7およびS194/5XX0 Bulが挙げられ; ラット融合に用いる細胞株の例としては、R210.RCY3、Y3-Ag 1.2.3、IR983Fおよび48210が挙げられる。細胞融合に有用な他の細胞株としては、U-266、GM1500-GRG2、LICR-LON-HMy2およびUC729-6が挙げられる。
【0119】
PD−1に対する抗原結合蛋白質を、例えば、試験管内または生体内において、PD−1ポリペプチドの存在を検出するためのアッセイに使用してよい。該抗原結合蛋白質はまた、免疫親和性クロマトグラフィーによるPD−1蛋白質の精製に用いてもよい。遮断性抗原結合蛋白質は、本明細書に記載の方法に使用してよい。PD−1拮抗剤として機能する該抗原結合蛋白質は、任意のPD−1誘発性の症状、例えば非限定的な例としては種々のがんの処置に使用し得る。
【0120】
抗原結合蛋白質は、試験管内手法に使用しても、生体内でPD−1誘発性の生物活性を阻害するために投与してもよい。したがって、本明細書中に例を挙げるような、PD−1の蛋白質分解性の活性化により(直接的または間接的に)引き起こされるもしくは悪化する障害を処置してもよい。態様の一において、本発明は、PD−1誘発性の生物活性を低下させるために、PD−1遮断性抗原結合蛋白質を、それを必要としている哺乳類に有効量で生体内投与することを含む、治療方法を提供する。
【0121】
抗原結合蛋白質は、PD−1の生物活性を阻害する完全ヒトモノクローナル抗体を含む。
【0122】
抗原結合蛋白質は、多数の慣用技術のうちの任意の技術により作製してよい。例えば、天然で発現する細胞から単離してもよく(例えば、抗体を、それを産生するハイブリドーマから精製してよい)または、当該分野で公知の任意の技術を用いて組み換え発現系で作製してよい。例えば、以下を参照のこと:Monoclonal Antibodies, Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses, Kennet et al. (eds.), Plenum Press, New York (1980); およびAntibodies: A Laboratory Manual, Harlow and Land (eds.), Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1988)。
【0123】
当該分野で公知の任意の発現系を、本発明の組み換えポリペプチドの作製に用いてよい。一般的に、ホスト細胞を、所望のポリペプチドをコードするDNAを含む組み換え発現ベクターを用いて形質転換する。使用し得るホスト細胞としては、原核生物、酵母または高等真核生物細胞が挙げられる。原核生物には、グラム陰性または陽性生物、例えば大腸菌または桿菌(bacilli)が含まれる。高等真核生物細胞には、昆虫細胞および哺乳類起源の確立された細胞株が含まれる。適当な哺乳類ホスト細胞株の例としては、サル腎臓細胞のCOS-7株(ATCC CRL 1651) (Gluzman et al., 1981, Cell 23:175)、L細胞、293細胞、C127細胞、3T3細胞 (ATCC CCL 163)、チャイニーズハムスター卵巣 (CHO)細胞、HeLa細胞、BHK (ATCC CRL 10) 細胞株および、McMahan et al., 1991, EMBO J. 10: 2821に記載されている、アフリカミドリザル腎臓細胞株CV1 (ATCC CCL 70)由来のCV1/EBNA細胞株が挙げられる。細菌、真菌、酵母および哺乳類ホスト細胞に用いるのに適当なクローニングおよび発現ベクターは、Pouwels et alに記載されている(Cloning Vectors: A Laboratory Manual, Elsevier, N.Y., 1985)。
【0124】
形質転換細胞は、ポリペプチドの発現を促進する条件下で培養してよく、該ポリペプチドは、慣用的な蛋白質精製手法により回収する。かかる精製手法の1つは、親和性クロマトグラフィー、例えばそこに結合しているPD−1の全てまたは一部(例えば細胞外ドメイン)を有するマトリクスに対する親和性クロマトグラフィーの使用を含む。本明細書で使用することを考慮しているポリペプチドとしては、内在性の物質の混入を実質的に含まない、実質的に同種の組み換え哺乳類抗PD−1抗体ポリペプチドが挙げられる。
【0125】
多数の公知の技術のうちの任意のものを用いて、抗原結合蛋白質を作製し、所望の性質についてスクリーニングしてよい。特定の技術は、所望の抗原結合蛋白質(例えば抗PD−1抗体)のポリペプチド鎖(またはその一部)をコードする核酸を単離すること、および該核酸を組み換えDNA技術によって操作することを含む。該核酸はまた、所望の他の核酸に融合させても、または(例えば変異導入または他の慣用的な技術によって)例えば1以上のアミノ酸残基を付加、欠失または置換させて変異させてもよい。
【0126】
一本鎖抗体は、重鎖と軽鎖の可変領域(Fv領域)断片を、アミノ酸架橋(短ペプチドリンカー)を介して連結し、一本鎖のポリペプチド鎖を得ることにより形成し得る。該一本鎖Fv (scFv) は、2つの可変領域ポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNA間のペプチドリンカーをコードするDNAを融合することにより作製する。得られたポリペプチドは、折りたたまれて、2つの可変領域間の可動性リンカーの長さによって、抗原結合単量体を形成するか、またはマルチマー(例えば二量体、三量体または四量体)を形成し得る(Kortt et al., 1997, Prot. Eng. 10:423; Kortt et al., 2001, Biomol. Eng. 18:95-108)。異なるVLおよびVHを含むポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合するマルチマーscFvを形成し得る(Kriangkum et al., 2001, Biomol. Eng. 18:31-40)。一本鎖抗体の作製用に開発された技術には、米国特許第4,946,778号; Bird, 1988, Science 242:423; Huston et al., 1988, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879; Ward et al., 1989, Nature 334:544, de Graaf et al., 2002, Methods Mol. Biol. 178:379-87に記載されているものが含まれる。
【0127】
所望の抗体から、異なるサブクラスまたはアイソタイプの抗体を得る、すなわちサブクラススイッチの技術は公知である。したがって、例えば、IgM抗体からIgG抗体を得ることは可能であり、逆もまた可能である。かかる技術により、特定の抗体(親抗体)の抗原結合性を有するが、親抗体とは異なる抗体のアイソタイプもしくはサブクラスに関連する生物学的性質をも示す、新規の抗体を作製することが可能である。組み換えDNA技術を用いてよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローニングしたDNA、例えば所望のアイソタイプの抗体の定常領域をコードするDNAを、かかる手法に用いてよい(Lantto et al., 2002, Methods Mol. Biol. 178:303-16)。さらに、IgG4抗体を作製しようとする場合、IgG4抗体において不均一性をもたらし得る重鎖間ジスルフィド結合が形成される傾向を低下させるために、ヒンジ領域に点変異(CPSCP→CPPCP)を導入することが望ましい場合もある (Bloom et al., 1997, Protein Science 6:407)。
【0128】
特定の態様において、本発明の抗原結合蛋白質は、PD−1に対して少なくとも10の結合親和性(Ka)を示す。他の態様において、該抗原結合蛋白質は、少なくとも10、少なくとも10、少なくとも10または少なくとも1010MのKaを示す。他の態様において、該抗原結合蛋白質は、本明細書の実施例に記載する抗体と実質的に同じKaを示す。
【0129】
他の態様において、本発明は、PD−1からの解離速度の低い抗原結合蛋白質を提供する。態様の一において、該抗原結合蛋白質は1X10-4〜1X10-1Mまたはそれより低いKoffを示す。他の態様において、Koffは5X10-5〜5X10-1Mであるかまたはそれより低い。他の態様において、Koffは、本発明の明細書に記載する抗体と実質的に同じである。他の態様において、該抗原結合蛋白質は、本明細書に記載する抗体と実質的に同じKoffでPD−1と結合する。
【0130】
他の局面において、本発明は、PD−1の活性を阻害する、抗原結合蛋白質を提供する。態様の一において、該抗原結合蛋白質は、1000nM以下のIC50を有する。他の態様において、該IC50は100nM以下であり; 他の態様において、IC50は10nM以下である。他の態様において、該IC50は本明細書の実施例に記載する抗体のIC50と実質的に同じである。他の態様において、該抗原結合蛋白質は、本明細書に記載する抗体と実質的に同じIC50でPD−1の活性を阻害する。
【0131】
他の局面において、本発明は、細胞の表面に発現しているヒトPD−1に結合し、そのように結合したときに、細胞表面のPD−1量を有意に減少させることなく細胞内のPD−1シグナル伝達活性を阻害する抗原結合蛋白質を提供する。細胞の表面および/または内部のPD−1量を決定または評価するための任意の方法を用いてもよい。他の態様において、該抗原結合蛋白質のPD−1発現細胞への結合は、細胞表面のPD−1の内在化を約75%、50%、40%、30%、20%、15%、10%、5%、1%または0.1%より低く減少させる。
【0132】
他の局面において、本発明は、試験管内または生体内(例えばヒト対象に投与したとき)において、少なくとも1日の半減期を有する、抗原結合蛋白質を提供する。態様の一において、該抗原結合蛋白質は少なくとも3日の半減期を有する。他の態様において、該抗原結合蛋白質は、4日以上の半減期を有する。また別の態様において、該抗原結合蛋白質は、8日以上の半減期を有する。また別の態様において、該抗原結合蛋白質は、誘導体化していないまたは修飾していない抗原結合蛋白質と比較して半減期が長くなるように誘導体化または修飾される。また別の態様において、該抗原結合蛋白質は、例えば、国際公開第00/09560号に記載されているように、血清半減期を長くするための1以上の点変異を含み、該文献は引用により本明細書中に包含される。
【0133】
本発明はさらに、多特異性抗原結合蛋白質、例えば二重特異性抗原結合蛋白質、例えば、2つの異なる抗原結合部位または領域を介して、PD−1の異なる2つのエピトープに結合するか、またはPD−1のエピトープと他の分子のエピトープとに結合する抗原結合蛋白質を提供する。さらに、本明細書に記載の二重特異性抗原結合蛋白質は、本明細書に記載する抗体の1つ由来のPD−1結合部位と、他文献の引用により本明細書に包含される抗体を含む、本明細書に記載する他の抗体由来の第二のPD−1結合領域とを含んでいてもよい。あるいは、二重特異性抗原結合蛋白質は、本明細書に記載する抗体の1つ由来の抗原結合部位と、当該分野で公知の他のPD−1抗体、または公知の方法もしくは本明細書に記載の方法により作製した抗体由来の第二の抗原結合部位を含んでいてよい。
【0134】
二重特異性抗体の作製方法は当該分野で多数知られている。かかる方法には、Milstein et al., 1983, Nature 305:537に記載のハイブリッド−ハイブリドーマの使用および抗体断片の化学カップリング(Brennan et al., 1985, Science 229:81; Glennie et al., 1987, J. Immunol. 139:2367; 米国特許第6,010,902号)が含まれる。さらに、二重特異性抗体は、組み換え方法、例えばロイシンジッパー部分(すなわち、優先的にヘテロダイマーを形成するFosおよびJun蛋白質由来のロイシンジッパー部分; Kostelny et al., 1992, J. Immunol. 148:1547) または米国特許第5,582,996号明細書に記載されるような他の重要な相互作用性のドメイン構造を用いて作製してもよい。さらなる有用な技術としては、米国特許第5,959,083号および第5,807,706号明細書に記載されるものも含まれる。
【0135】
他の局面において、該抗原結合蛋白質は、抗体の誘導体を含む。かかる誘導体の抗体は、所望の性質、例えば特定の用途における半減期の延長などを該抗体にもたらす任意の分子または物質を含んでいてよい。かかる誘導体抗体は、例えば、検出可能な(または標識)部分(例えば放射活性、発色性、抗原性または酵素分子)、検出可能なビーズ(例えば磁気ビーズまたは高電子密度ビーズ(electrodense)(例えば金ビーズ))または他の分子に結合する分子(例えばビオチンまたはストレプトアビジン)、治療用または診断用部分(例えば放射活性、細胞毒性または薬学的に活性な部分)または該抗体の特定の使用(例えば対象、例えばヒト対象への投与または他の生体内もしくは試験管内の使用)に対する適性を高める分子を含んでいてもよい。抗体を誘導体化させるのに使用し得る分子の例としては、アルブミン(例えばヒト血清アルブミン)およびポリエチレングリコール(PEG)が挙げられる。抗体のアルブミン連結およびPEG化誘導体は、当該分野でよく知られている技術を用いて作製し得る。態様の一において、該抗体は、トランスチレチン(TTR)またはTTR変異体に共役しているかまたは別の方法で連結していてよい。該TTRまたはTTR変異体は、例えば、デキストラン、ポリ(n−ビニルプロリドン)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリビニルアルコールからなる群から選択される化学物質により化学的に修飾されていてもよい。
【0136】
適応症
本発明は、疾患、障害、症状または疾病(「症状」)を処置、予防、治療、軽減または改善(「処置」)するための、対象の処置方法を提供する。処置する症状には、PD−1の不適当な発現または活性に特徴づけられる症状が含まれる。かかる症状には、発現または活性のレベルが高すぎるものがあり、処置にはPD−1拮抗剤を投与することが含まれる。該障害または症状はがんと関連するものである。特に、それらのがんには、肺がん、卵巣がんおよび結腸がんおよび種々の骨髄腫が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
本明細書に記載の抗原結合蛋白質で処置または予防し得る、具体的な医学的症状および疾患には、種々のがんが含まれる。
【0138】
治療方法および抗原結合蛋白質の投与
本明細書に記載の特定の方法には、PD−1結合性の抗原結合蛋白質を対象に投与し、それにより、PD−1誘発性の、特定の症状において機能する生物応答を低下させることが含まれる。特定の態様において、本発明の方法は、内在性のPD−1をPD−1結合性の抗原結合蛋白質と、例えば対象への投与または生体外手法により接触させることを含む。
【0139】
「処置」という語は、障害の少なくとも1つの症候または他の局面の軽減または予防、または疾患の重症度の低下などを含む。抗原結合蛋白質は、実用可能な治療剤を構成するにあたって、完全な治癒をもたらすか、疾患の全ての症候(symptom)または徴候(manifestation)を根絶する必要はない。関連分野では認識されていることであるが、治療剤として使用されている薬物は、有用な治療剤とみなされるためには、特定の疾患状態の重症度を低下させればよく、該疾患の全ての徴候を根絶する必要はない。同様に、実用可能な予防薬を構成するために、予防用に投与した処置が、症状の発症を予防するにあたって完全に有効である必要はない。単純に、(例えば、症候の数もしくは重症度を低下させることによって、または他の処置の有効性を高めることによって、または他の有用な効果をもたらすことによって)疾患の影響を低下させるか、または該疾患が対象において発症もしくは悪化する可能性を低下させれば充分である。本発明の態様の一は、患者にPD−1拮抗剤を、かかる特定の障害の重症度を反映する指標の、ベースラインを超えた持続的に改善を引き起こすのに十分な量および期間投与することを含む、方法に関する。
【0140】
関連分野では理解されているように、抗体およびその断片を含む、本発明の医薬組成物は、適応症に適当な方法で対象に投与する。医薬組成物は任意の適当な技術によって投与してよく、例えば、非経口、局所または吸入による投与が挙げられるが、これらに限定されるものではない。注射する場合、該医薬組成物は、例えば、関節内、静脈内、筋肉内、病巣内、腹腔内または皮下経路を介して、ボーラス注射または持続点滴により投与してよい。局所投与、例えば疾患または損傷が考えられる部位への局所投与は、経皮投与およびインプラントからの徐放である。吸入による送達としては、例えば、経鼻もしくは経口吸入、ネブライザーの使用、エアロゾル形態での該拮抗剤の吸入等が挙げられる。他の代替例としては、点眼剤:丸剤、シロップ剤、トローチ剤またはチューインガムを含む経口製剤:およびローション剤、ゲル剤、スプレー剤および軟膏剤のような局所用製剤が挙げられる。
【0141】
生体外手法での抗原結合蛋白質の使用もまた考えられている。例えば、患者の血液もしくは他の体液を、生体外でPD−1に結合する抗原結合蛋白質と接触させてもよい。該抗原結合蛋白質は、適当な不溶マトリクスまたは固体の支持物質に結合させてよい。
【0142】
抗原結合蛋白質は、1種以上の付加的な成分、例えば生理学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤を含む組成物の形態で有利に投与される。該組成物は、1種以上の生理学的に有効な剤、例えば、第二の炎症もしくは免疫阻害物質、抗血管新生物質、鎮痛物質等を含んでいてよく、その非限定的な例を本明細書中に記載する。種々の特定の態様において、本組成物は、PD−1結合性の抗原結合蛋白質に加えて、1種、2種、3種、4種、5種または6種の生理学的に有効な剤を含む。
【0143】
組み合わせ療法
本発明は、PD−1阻害性抗原結合蛋白質と1種以上の他の処置を用いて対象を処置する方法を提供する。かかる組み合わせ療法により、例えば、腫瘍中の複数の部位または分子標的を攻撃することにより、相乗効果または相加効果が達成される。用い得る組み合わせ療法の種類としては、単一の疾患関連性経路、標的細胞の複数の経路および標的組織内の複数の細胞型における複数の結節(nodes)を阻害または活性化すること(何れか適切な方)が挙げられる。
【0144】
組み合わせ療法の方法は、対象に、本明細書に記載するPD−1作動薬または拮抗剤を、2、3、4、5、6またはそれ以上の種類投与することを含む。他の態様において、該方法は、対象に、ともにPD−1介在性のシグナル伝達を(直接的または間接的に)阻害または活性化する2つ以上の処置を投与することを含む。該方法の例としては、2種以上のPD−1阻害性抗原結合蛋白質、1種のPD−1阻害性抗原結合蛋白質と1種以上の抗がん性の他の治療剤 (例えば、細胞傷害性薬剤および/または免疫調節剤)、または1種のPD−1阻害性抗原結合蛋白質と1つ以上の他の処置(例えば外科手術または放射線照射)の組み合わせが挙げられる。さらに、1種以上の抗PD−1抗体または抗体誘導体は、1種以上の分子または他の処置と組み合わせて使用してよく、ここで、かかる他の分子および/または処置は、PD−1に直接的には結合または影響を及ぼさないが、組み合わせることにより、処置する症状の処置または予防に効果的である。態様の一において、1種以上の分子および/または処置は、治療の過程において、他の1種以上の分子または処置により引き起こされる症状、例えば悪心、疲労、脱毛、悪液質、不眠等を処置または予防する。分子および/または他の処置の組み合わせを使用する全ての場合において、個々の分子および/または処置を、有効である任意の順番、期間で、例えば、同時、連続的または交互に与えてよい。態様の一において、該処置方法は、1種の分子または他の処置による第一の処理過程が完了した後に、第二の処理過程を開始することを含む。第一の処置過程の終了と第二の処置過程の開始の間の期間は、該治療過程が全体的に有効になり得る任意の期間であってよく、例えば秒、分、時間、日、週、月または年単位であってよい。
【0145】
実施例1
抗PD−1抗体の、免疫応答性調節能を、混合リンパ球反応(MLR)を用いて評価した。このアッセイによって、抗PD−1抗体(RG1H10)の、細胞活性化ならびに、IL−2およびインターフェロンγ両方の産生に対する影響を測定した。MLRは、1人のドナー由来の精製ヒトCD4+細胞105個を、他のドナーから調製した単球由来の樹状細胞104個とともに培養することにより行った。樹状細胞を調製するために、精製した単球を、GM-CSF (1,000 U/ml)およびIL-4 (500 U/ml)とともに7日間培養した。とくにことわらない限り、抗PD−1抗体または対照抗体を、同種MLR培養物に10μg/mlになるように添加した。市販のELISAキット(Biolegend)を用いてIL−2およびIFNγをそれぞれ測定するために、2日目または3日目、および5日目に上清を回収できるように、プレートを並行して準備した。5日目の残りの細胞を、細胞活性化の指標として、CD25発現について評価した。
【0146】
細胞活性化についての結果を図1に示す。全ての抗PD−1抗体について、細胞活性化の上昇が見られた。図1では、データを、全く抗体を追加していない状態で得られた試験値に対するパーセンテージで表す。縦軸の値は、%CD25+であり、これは、細胞の活性化を培地対照に対する%上昇として表す。この方法により、細胞活性化の%上昇を表した。上清を培養物から回収し、3日目にIL−2を測定するか(図2)、または5日目にインターフェロンγ(図3)を測定した。図2では、縦軸の値はIFNγ (pg/ml)である。図3では、縦軸の値はIL−2 (pg/ml)である。両方のサイトカインの産生が、抗PD−1抗体の添加により上昇していた。
【0147】
実施例2
本実施例は、細胞結合EC50測定および細胞結合特異性についての試験管内データを示す。より具体的には、本実施例は、抗PD−1抗体(図4に示す)の、特異的な細胞結合および50%結合飽和(EC50)に到達する濃度についての結合特性を示す。本実施例では、抗PD−1抗体を、市販されている治療用抗PD−1抗体であるBMS 5C4と比較する。手順は以下の通りである: CHO-PD−1細胞およびCHO-PD−L1細胞を、CHO-K1細胞にPD−1 cDNA ORFクローン(Origene RG210364)およびPD−L1 cDNA ORFクローン(Origene RG213071)をそれぞれ安定的に形質導入することにより得た。ネオマイシンで2週間選択した後、クローンを蛍光標示式細胞分取器 (FACS) により単離し、さらに増殖させた。卵巣がんからES-2細胞株を確立し(ATCC CRL-1978)、これは、検出できるレベルのPD−1を発現しない。細胞結合アッセイのために、50,000個のCHO−PD−1細胞、CHO−PD−L1細胞およびES-2細胞を100μl FACSバッファー(PBS + 2% FBS)中で、96ウェル、v字底プレートに加えた。12ポイントの、各抗PD−1抗体の希釈曲線(x3)を、FACSバッファー中で50μg/ml (3.33x10-7 M)から出発して作成した。細胞のスピンダウン、FACSバッファーを用いた2回の洗浄後の、抗体溶液25μlでの再懸濁を3つ組みで行った。0.5時間インキュベーションした後、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、PE結合型のヤギ抗ヒトIgG (γ鎖特異的) 二次抗体 (Southern Biotech カタログ番号2040-09) 50μlで再懸濁した。細胞をさらに0.5時間インキュベーションした後、FACSバッファーで1回洗浄した。細胞をFACSバッファー25μl中で再懸濁した後、FL2-Hチャンネルの蛍光強度中央値(MFI: median fluorescence intensity)を、Intellicyt HTFCフローサイトメーターを用いて決定した。データは、非線形回帰適合を用いて、Graph Pad Prismで解析およびプロットを行った。
【0148】
用いた抗体は、本明細書に開示する、GA2、RG1B3、RG1H10およびRG2A7、RG2H10、SH-A4、RG4A6およびRG6B5であり、公知文献に記載の抗体配列から、内製して得た公知文献に記載の抗体である5C4 (Bristol-Myers-Squibb/Medarex)と比較した(米国特許出願公開第2009/0217401号明細書; 当該文献の内容は参照により本明細書中に包含される)。
【0149】
結果: 図4および表1に示すように、CHO-PD−1細胞に対する抗PD−1抗体の細胞結合EC50を、36pM〜2802 pMの範囲と決定した。グラフ上のデータポイントは、抗体濃度による、陽性標識細胞の蛍光強度の中央値(MFI)±標準誤差として示す。PD−1を発現しない細胞 (CHO-PD−L1細胞およびES-2細胞)について、非特異的な結合は全く見られなかった。
【表1】
【0150】
実施例3
本実施例は、組換えPD−1の組換えPD−L1に対する結合の、抗PD−1抗体による阻害の解析を示す(図5)。端的には、ELISAプレートをPD−L1-Hisでコートし、PBS中のカゼインでブロッキングした後、抗PD−1抗体(scFv)および組換えヒトPD−1蛋白質の混合物を添加して、プレインキュベーションを行った。PD−1蛋白質のPD−L1蛋白質への残存する結合を測定した。
【0151】
用いた抗体は、本明細書に記載のGA1、GA2、GB1、GB6、GH1、A2、C7、H7、SH-A4、SH-A9、RG1B3、RG1H10およびRG1H11であり、公知文献に記載の抗体配列から内製した公知文献に記載の抗体5C4 (Bristol-Myers-Squibb/Medarex)と比較した(米国特許出願公開第2009/0217401号明細書; 当該文献の内容は参照により本願明細書に包含される)。
【0152】
結果: 該抗PD−1抗体は、組換えヒトPD−1およびPD−L1蛋白質間の相互作用の遮断能を有する。
【0153】
実施例4
本実施例は、BIAcore方法論を用いた、該抗体ヒンジ領域の228番目のセリン残基をプロリンに変える安定化変異(S228P)を有する、免疫グロブリンγ1(IgG1)および免疫グロブリンγ4(IgG4)としての、特定の抗PD−1抗体RG1H10の親和性測定値の比較を提供する。端的には、CM5チップを抗ヒトFc抗体でコートし、該抗PD1 mAbを捕捉した後、系列希釈した組換えヒトPD1 (His-タグ)蛋白質を解析に用いた。
【0154】
結果: 表2に示すように、該ヒト抗PD−1抗体RG1H10は、IgG1またはIgG4(228P)としての、ヒトPD−1に対する認識および結合について、優れた動態学的な性質を有する。
【表2】
【0155】
実施例5
本実施例は、細胞結合EC50の測定値についての試験管内データを示す。より具体的には、本実施例は、細胞結合および50%結合飽和(EC50)に達する濃度についての、IgG1またはIgG4(S228P)としての、抗PD−1抗体の結合特性を示す。手順は以下の通りである。末梢血単核細胞(PBMC)を24ウェルプレートに添加し、抗CD3 (3 ng/ml)で刺激した。3日間細胞を培養した後、回収し、100μl FACSバッファー(PBS + 2% FBS)中で、96ウェルv字底プレートのウェルに添加した。12ポイントの、各抗PD−1抗体の希釈曲線(x3)を、FACSバッファー中で、10μg/ml (0.6 x10-7 M)から出発して作成した。細胞のスピンダウン、FACSバッファーでの2回洗浄後の、抗体溶液25μl中への再懸濁を3つ組みで行った。0.5時間インキュベーションした後、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、PE結合型ヤギ抗ヒトIgG (γ鎖特異的)二次抗体(Southern Biotech カタログ番号2040-09) 50μlで再懸濁した。細胞をさらに0.5時間インキュベーションした後、FACSバッファーで1回洗浄した。細胞をFACSバッファー25μlで再懸濁し、Intellicyt HTFCフローサイトメーターを用いてFL2-HチャンネルのMFIを決定した。データは、非線形回帰適合を用いて、Graph Pad Prismで解析およびプロットを行った。
【0156】
結果: 表3に示すように、活性化末梢血単核細胞(PBMC)に対する抗PD−1抗体の細胞結合EC50は、IgG4 (S228P) アイソタイプについては、47 (pM) であり、IgG1バージョンについては670 pMと決定した。
【表3】
【0157】
実施例6
本実施例は、RG1H10の、組換えPD−1には特異的に結合するが、他の関連蛋白質には結合しない性質についての解析を示す (図6)。端的には、適当な組換え蛋白質、すなわちヒトPD−1、カニクイザルPD−1、ヒトCTLA-4、ヒトCD28およびヒトICOSでコートしたELISAプレートをPBS中のカゼインでブロッキングした後、抗PD−1抗体(RG1H10)とともにインキュべーションした。RG1H10の結合を測定した。
【0158】
結果: 抗PD−1抗体RG1H10は、(ヒトまたはカニクイザル)PD−1に対する優れた特異性を示すが、PD−1関連蛋白質は認識しない。
【0159】
実施例7
混合リンパ球反応(MLR) を用いて、RGH10の2つのアイソタイプ、すなわちIgG1およびIgG4(S228P)の、免疫応答性調節能を測定した。このアッセイによって、抗PD−1抗体の、細胞活性化ならびに、IL−2およびインターフェロンγ産生に対する影響を測定した。該MLRは、1人のドナー由来の、精製ヒトCD4+細胞 105個を、他のドナーから調製した単球由来の樹状細胞104個とともに培養することにより行った。樹状細胞を調製するために、精製した単球を、GM-CSF (1,000U/ml)およびIL−4 (500U/ml) とともに7日間培養した。とくにことわらない限り、抗PD−1抗体または対照抗体を、同種MLR培養物に10μg/ml添加した。市販のELISAキット(Biolegend)を用いてIL−2およびIFNγをそれぞれ測定するために、2日目または3日目、および5日目に上清を回収できるように、プレートを並行して準備した。5日目の残りの細胞を、細胞活性化の指標として、CD25発現について評価した。
【0160】
細胞活性化についての結果を図7、8および9に示す。両方の抗PD−1抗体アイソタイプに関して、細胞活性化の上昇が見られた (図7)。該データは、全く抗体を添加せずに得られた試験値のパーセンテージとして表す。この方法において、細胞活性化の%上昇を表した。上清を培養物から回収し、3日目にIL−2を測定するか(図8)またはインターフェロンγを測定した(図9)。両方のサイトカインの産生が、同様に抗PD−1抗体の添加により上昇した。
【0161】
実施例8
親和性成熟プロセスにより、重鎖配列をさらに最適化した。具体的には、抗体RG1H10 (重鎖配列番号23) の親和性成熟により、軽鎖配列番号24とともに、末尾の配列表に記載する12のさらなる重鎖配列 (配列番号37〜49) を得た。
【0162】
実施例9
本実施例は、図5に示す抗体を用いた、PD−1ブロッキングELISAアッセイを示す。ELISAプレートをPD−L1-Hisでコートし、PBS中のカゼインでブロッキングした後、scFvおよびPD1/Fcのプレインキュベーションした混合物 (12.5μL 10μg/ml PD1/Fc+ 12.5μl ファージスープ)を添加した。インキュベーションを1時間行い、PBSで3回洗浄した。カゼイン中に 1:200で希釈した抗ヒトFc-HRPを添加した。30分間インキュベーションし、PBSで3回洗浄した。基質としてTMBを用い、2M H2SO4を用いて反応を停止した。O.D. 450nmの値を測定した。GA2およびH7を除く、試験した全ての抗体が、PD−1受容体を遮断した。
【0163】
実施例10
本実施例は、図5に示す抗体を用いたPD−1ブロッキングアッセイを示す。ELISAプレートを、PD−L1-Hisでコートし、PBS中のカゼインでブロッキングした後、scFvおよびPD1/Fcのプレインキュベーションした混合物(12.5μL 0.7μg/ml PD1/Fc+ 12.5 μlファージスープ)を添加した。1時間インキュベーションし、PBSで3回洗浄した。カゼイン中に1:500で希釈した抗ヒトFc-HRPを添加した。30分間インキュベーションし、PBSで3回洗浄した。基質としてTMB を用い、2M H2SO4を用いて反応を停止した。O.D. 450nmの値を測定した。
【0164】
実施例11
本実施例は、図10に示すヒトおよびマウス抗PD−1抗体間の交叉反応の有無を示す。1μg/ml ヒトPD−L1/HisまたはマウスPD1/His (対照: PBS) を、Ni-NTAプレート上に50μlロードし、1時間インキュベーションし、PBSで3回洗浄した、カゼインで希釈したIgGを添加し、30分間インキュベーションした。PBSで3回洗浄した。カゼイン中に1:300で希釈したヤギ抗ヒトFc-HRPを添加した。30分間インキュベーションし、PBSで3回洗浄した。基質としてTMBを用い、2M H2SO4を用いて反応を停止した。O.D. 450nmを測定した。
【0165】
実施例12
本実施例は、抗体である5C4およびRG1H10のエピトープの比較を示す。IgG5C4を、AR2Gセンサー上にコートした。PBSでベースラインを測定した。PD1/Hisをセンサー上で捕捉した。その後、該センサーをPBSおよびRG1H10を含むウェル中に浸した。
【0166】
実施例12
本実施例は、本明細書に記載の抗PD−1抗体の親和性の比較を示す。抗ヒトFc抗体を約1000 RUで、CM5センサーチップ上に固定した。抗体(約10μg/ml)を、流速10μl/分で60秒間捕捉した。PD1/Hisをランニングバッファー(HBS-EP)中に連続的に希釈した。測定は全て、流速30μL/分で行った。60秒間、3M MgCl2を用いて表面を再生した。1:1 (Langmuir) 結合モデルをデータに当てはめた。
【表4】
【0167】
実施例13
本実施例は、RG1H10抗体の、3つの抗PD−1競合抗体に対する標的(PD−1)特異性を示す試験である。抗ヒトIgG4重鎖または抗ヒトλ軽鎖検出反応薬のいずれかを用いた試験管内ELISAアッセイを用いて、RG1H10が組換えヒトおよびカニクイザルPD−1には特異的に結合するが、マウスPD−1には結合しないことを確認することができる。ヒトおよびカニクイザルのPD−1に対するRG1H10の結合についてのEC50値は、それぞれ0.391nMおよび0.840nMであり、試験した3つの参照抗体、競合抗体1 (ヒトEC50 0.419 nM、カニクイザルEC50 1.02 nM)、競合抗体2 (ヒトEC50 0.495nM、カニクイザルEC50 0.773 nM)および競合抗体3 (ヒトEC50 0.390 nM、カニクイザルEC50 1.295nM)と基本的に同等であった。さらに、RG1H10は、他の構造的に関連のあるファミリーメンバー、例えばヒトCTLA4、ヒトCD28およびヒトICOSには結合しない。これらの結果は、RG1H10がPD−1に対する特有の標的特異性を有することを示すものである。
【0168】
実施例14
本実施例は、Biacore親和性特徴付けおよび細胞ベースの結合試験を用いた、3つの抗PD−1競合抗体に対するRG1H10抗体の、標的(PD−1)親和性を示す試験である。Biacore親和性測定のために、抗PD−1抗体を、プロテイン-Aを固定したCM5センサーチップ上に捕捉した後、単量体の組換えヒトPD−1をチップ上に流した。この条件下において、RG1H10は、競合抗体1(7.0 nM)、競合抗体2(3 nM)および競合抗体3 (42 nM)に対して、3.2 nMの親和性(KD)を示した。これらの試験は、RG1H10が、競合分子1および2と同等の標的親和性を示し、競合分子3の約10倍の高さの親和性を有することを示す。
【0169】
さらに、ヒトPD−1を安定的に高いレベルで発現するヒトJurkat T細胞株を用いて、RG1H10および3つの参照抗体の、T細胞表面上に発現しているヒトPD−1への結合を測定した。Jurkat PD−1細胞への一次抗体の結合を、蛍光色素に直接的に結合した、抗重鎖または軽鎖抗体のいずれかを用いたフローサイトメトリーにより検出した(いずれの検出反応薬を用いた場合でも同一の結合曲線が得られた)。このアッセイにおいて、競合抗体1 (5.18 nM)、競合抗体2 (4.57 nM)および競合抗体3 (8.83 nM)と比較して、RG1H10は、膜に発現しているPD−1に25.76 nMのEC50値で結合していた。
【0170】
これらの試験を行う間に、種々の抗PD−1抗体が結合するPD−1受容体分子の最大値の変動を観察した結果、RG1H10は、1103 平均蛍光強度(MFI)単位のCmaxを示し、これは、競合抗体2について観察される値 (Cmax:1110 MFI)と同等であり、競合抗体3について観察される値よりも高く (Cmax:789 MFI)、競合抗体1について観察される値の約半分 (Cmax:1906 MFI)である。まとめると、RG1H10は、試験した全ての参照抗体と同等の強度で、膜に発現するヒトPD−1に結合する。
【0171】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
さらに、本願発明は、次の態様を包含する。
項1. PD−1エピトープに、少なくとも10-6Mの結合親和性で結合するIgGクラスの完全ヒト抗体であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、完全ヒト抗体。
項2. 請求項1に記載の完全ヒト抗体であって、配列番号1/配列番号2 (GA1と称する)、配列番号3/配列番号4 (GA2と称する)、配列番号5/配列番号6 (GB1と称する)、配列番号7/配列番号8 (GB6と称する)、配列番号9/配列番号10 (GH1と称する)、配列番号11/配列番号12 (A2と称する)、配列番号13/配列番号14 (C7と称する)、配列番号15/配列番号16 (H7と称する)、配列番号17/配列番号18 (SH-A4と称する)、配列番号19/配列番号20 (SH-A9と称する)、配列番号21/配列番号22 (RG1B3と称する)、配列番号23/配列番号24 (RG1H10と称する)、配列番号25/配列番号26 (RG1H11と称する)、配列番号27/配列番号28 (RG2H7と称する)、配列番号29/配列番号30 (RG2H10と称する)、配列番号31/配列番号32 (RG3E12と称する)、配列番号33/配列番号34 (RG4A6と称する)、配列番号35/配列番号36 (RG5D9と称する)、配列番号37/配列番号24 (RG1H10-H2A-22-15と称する)、配列番号38/配列番号24 (RG1H10-H2A-27-25と称する)、配列番号39/配列番号24 (RG1H10-3Cと称する)、配列番号40/配列番号24 (RG1H10-16Cと称する)、配列番号41/配列番号24 (RG1H10-17Cと称する)、配列番号42/配列番号24 (RG1H10-19Cと称する)、配列番号43/配列番号24 (RG1H10-21Cと称する)、配列番号44/配列番号24 (RG1H10-23C2と称する) およびその組み合わせからなる群から選択される、重鎖/軽鎖可変領域配列を有する、完全ヒト抗体。
項3. 重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域配列を有するFab完全ヒト抗体断片であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、Fab完全ヒト抗体断片。
項4. 請求項3記載の完全ヒト抗体Fab断片であって、該抗体が、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する、完全ヒト抗体Fab断片。
項5. 重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域および重鎖と軽鎖の可変領域配列をつなぐペプチドリンカーを有する一本鎖ヒト抗体であって、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、一本鎖ヒト抗体。
項6. 請求項5記載の完全ヒト一本鎖抗体であって、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する、完全一本鎖ヒト抗体。
項7. 重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有する請求項5記載の完全ヒト一本鎖抗体であって、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24、およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する、完全ヒト一本鎖抗体。
項8. 有効量の抗PD−1ポリペプチドを投与することを含む広範囲の哺乳類のがんまたは炎症性疾患もしくは自己免疫性疾患の処置方法であって、
該抗PD−1ポリペプチドが、PD−1エピトープに少なくとも10-6Mの結合親和性で結合する、IgGクラスの完全ヒト抗体、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域を有するFab完全ヒト抗体断片、重鎖由来の可変領域と軽鎖由来の可変領域および重鎖と軽鎖の可変領域をつなぐペプチドリンカーを有する一本鎖ヒト抗体およびその組み合わせからなる群から選択され;ここで、
該完全ヒト抗体が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有しており;
該Fab完全ヒト抗体断片が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有しており;
該一本鎖ヒト抗体が、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である重鎖可変領域配列を有し、
配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36およびその組み合わせからなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一である軽鎖可変領域配列を有する、処置方法。
項9. 請求項8記載の広範囲の哺乳類のがんの処置方法であって、
該完全ヒト抗体が、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する、処置方法。
項10. 請求項8記載の広範囲の哺乳類のがんの処置方法であって、
該完全ヒト抗体Fab断片が、重鎖可変領域と軽鎖可変領域の両方を有し、該抗体が、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する、処置方法。
項11. 請求項8記載の広範囲の哺乳類のがんの処置方法であって、
該ヒト完全一本鎖抗体が重鎖可変領域および軽鎖可変領域の両方を有し、配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号24、配列番号38/配列番号24、配列番号39/配列番号24、配列番号40/配列番号24、配列番号41/配列番号24、配列番号42/配列番号24、配列番号43/配列番号24、配列番号44/配列番号24およびその組み合わせからなる群から選択される重鎖/軽鎖可変領域配列を有する、処置方法。
項12. 請求項8記載の広範囲の哺乳類のがんまたは炎症性疾患もしくは自己免疫性疾患の処置方法であって、処置する広範囲の哺乳類のがんが、卵巣がん、結腸がん、乳がん、肺がん、骨髄腫、神経芽腫由来CNS腫瘍、単球性白血病、B細胞由来白血病、T細胞由来白血病、B細胞由来リンパ腫、T細胞由来リンパ腫、肥満細胞由来腫瘍およびその組み合わせからなる群から選択される、処置方法。
項13. 請求項8記載の広範囲の哺乳類のがんまたは炎症性疾患もしくは自己免疫性疾患の処置方法であって、広範囲の自己免疫性疾患または炎症性疾患が、腸粘膜炎症、大腸炎に伴う消耗性疾患、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、ウイルス感染症、関節リウマチ、変形性関節症、乾癬、クローン病および炎症性腸疾患からなる群から選択される、処置方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]