【文献】
QIU, Z. J. et al.,Journal of Immunological Methods,2010年,Vol.362,pp.101-111
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗炎症抗体が、関節リウマチ、又は若年性関節炎、又は変形性関節症、又はキャッスルマン病、又はメサンギウム増殖性糸球体腎炎の処置のための抗体である、請求項3記載の方法。
IL6R活性を阻害するために、抗IL6R抗体の有効量を投与された個体において、請求項1〜8のいずれか一項記載のアッセイを用いて抗抗IL6R抗体抗体(抗薬物抗体)の存在を決定することを含む、個体においてIL6R活性を阻害するためのデータを提供する方法。
【技術分野】
【0001】
本明細書において報告するのは、抗炎症性抗体で処置された患者からの血清サンプル中の抗薬物抗体を検出するための干渉抑制イムノアッセイ及びその使用である。
【0002】
発明の背景
新規治療用抗体の臨床開発では、適当なアッセイによる、それらの潜在的な免疫原性の評価が要求される(Kaliyaperumal, A. and Jing, S., Curr. Pharm. Biotechnol. 10 (2009) 352-358)。抗薬物抗体(ADA)テストは、通常、2段階のアプローチを含む:(1)ADA検出のためのアッセイ及び(2)ADA特徴付けのためのアッセイ。ADA検出アッセイは、スクリーニング及び特異性の確認(確証的)アッセイを含む。マイクロタイタープレートベースの酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)は、それらのハイスループット効率、相対的な単純さ、及び高い感度のため、依然として、ADAについてスクリーニングするために最も広く使用されているフォーマットである(Geng, D., et al., J. Pharm. Biomed. Anal. 39 (2005) 364-375)。ADA ELISAは、最もしばしば、高い選択性、全てのアイソタイプの検出、及び汎種ADA検出能力を提供する架橋フォーマットにおいて設計されている(Mire-Sluis, A.R., et al., J. Immunol. Methods 289 (2004) 1-16)。
【0003】
架橋ELISAが開発され、抗IL6R抗体トシリズマブについてのスクリーニング及び確認ADAアッセイとして使用されてきた(Stubenrauch, K., et al., Clin. Ther. 32 (2010) 1597-1609)。
【0004】
Stubenrauch, K.らは、ヒト抗体に曝露されたマウスからの血清サンプル中での薬物耐性を用いたジェネリック抗薬物抗体アッセイを報告している(Anal. Biochem. 430 (2012) 193-199)。Bourdage, J. S.らは、抗原コーティング濃度依存性に対する二重抗原架橋イムノアッセイフォーマットの効果及びモノクローナル抗体のための免疫原性アッセイを設計するための意義を報告している(J. Pharm. Biochem. Anal. 39 (2005) 685-690)。Mikulskis, A.らは、薬物開発のサポートにおける頑強な、薬物耐性の免疫原性アッセイの開発のための選択肢のプラットフォームとして溶液ELISAを報告している(J. Immunol. Meth. 365 (2010) 38-49)。Pan, J.らは、2つのバイオ治療薬の免疫原性テストにおいて、NIDSA(登録商標)迅速アッセイとELISA方法との比較を報告している(J. Pharm. Tox. Meth. 63 (2010) 150-159)。
【0005】
WO 2009/077127において、識別アッセイが報告されている。
【0006】
Qiu, Z. J.らは、自己免疫血清中のヒト抗治療用抗体の検出のための新規の均一ビオチン−ジゴキシゲニンベースのアッセイを報告している(J. Immunol. Meth. 362 (2010) 101-111)。
【0007】
発明の概要
本明細書において報告するのは、治療用抗体を用いて処置された患者のサンプルを含む血清中での抗薬物抗体(ADA)の検出のためのスクリーニング、確認、及び追跡調査アッセイとして使用することができる架橋酵素結合免疫吸着アッセイ(架橋ELISA)である。本明細書において報告するアッセイは、サンプルを含む血清が、自己免疫疾患(例えば関節リウマチ(RA)など)を伴う患者からである場合に特に有用である。
【0008】
本明細書において報告するアッセイは、分析されるサンプル中の治療用抗体の量に関して、改善された耐性(ADA ELISAでの増加した薬物耐性)を示し、及び、同時に、偽陽性のアッセイ結果の数が低下する。
【0009】
本明細書において報告するアッセイを用いて、遊離薬物による、及びリウマチ因子(RF)による干渉を最小限にすることができることが見出されている。
【0010】
このアッセイは、サンプルが、抗薬物抗体の検出のためのイムノアッセイにおいて干渉することができ、このように、偽陽性のイムノアッセイ結果を説明しうる、問題の抗薬物抗体以外の抗体を含む場合に特に有用である。
【0011】
一実施形態において、本明細書において報告する方法は、抗炎症治療のために使用される薬物抗体の抗薬物抗体の決定のために使用される。
【0012】
増加した薬物耐性は、以下の相乗的な相互作用により達成された:1)ビオチン化及びジゴキシゲニン化捕捉及びトレーサー試薬の濃度を増加させること;2)血清サンプルと捕捉試薬及びトレーサー試薬との同時(連続の代わりの)インキュベーション;3)長期インキュベーション時間;4)均一にモノ共役された捕捉試薬及びトレーサー試薬の使用;並びに5)増加した血清マトリックス含量の使用。
【0013】
リウマチ因子からの干渉は、添加剤としてのオリゴマーヒト免疫グロブリンG(IgG)の添加により抑制することができる。
【0014】
本明細書において報告する干渉抑制ADAアッセイの薬物耐性は、当技術分野において公知のアッセイよりも少なくとも10倍高い。
【0015】
本明細書において報告する一態様は、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体を含むサンプル中の薬物抗体に対する抗薬物抗体の検出のための酵素結合免疫吸着アッセイであり、ここで、
a)捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、0.5μg/mlを上回る濃度で用いられ、
b)サンプルは、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体と4〜24時間にわたり同時にインキュベートされ、
c)捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、単一のリジン残基を介して誘導体化され、
d)サンプルは、7.5%血清又はそれ以上を含み、並びに
e)オリゴマーヒトIgGを、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体とのインキュベーションの前にサンプルに加える。
【0016】
本明細書において報告する一態様は、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体を含む、関節リウマチ患者のサンプル中の薬物抗体に対する抗薬物抗体の検出のための酵素結合免疫吸着アッセイであって、ここで、
a)捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイにおいて0.5μg/ml又はそれ以上の濃度を有し、
b)サンプルを、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体と0.5〜24時間にわたり同時にインキュベートし、
c)捕捉薬物抗体は、捕捉薬物抗体及び特異的結合対の第1成分の1:1コンジュゲートであり、トレーサー薬物抗体は、トレーサー薬物抗体及び検出可能な標識の1:1コンジュゲートであり、
d)サンプルは1%血清又はそれ以上を含み、並びに
e)オリゴマーヒトIgGを、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体とのインキュベーションの前にサンプルに加える。
【0017】
一実施形態において、サンプルは、5%血清又はそれ以上を含む。一実施形態において、サンプルは、7.5%血清又はそれ以上を含む。
【0018】
一実施形態において、サンプルは、抗薬物抗体及びリウマチ因子を含む。
【0019】
一実施形態において、薬物抗体は、炎症性疾患の処置のための抗体である。一実施形態において、炎症性疾患の処置のための抗体は、自己免疫疾患の処置のための抗体である。一実施形態において、自己免疫疾患は、関節リウマチ又は若年性関節炎又は変形性関節症又はキャッスルマン病である。
【0020】
一実施形態において、薬物抗体は、癌の処置のための抗体である。一実施形態において、抗体は、骨髄腫又は形質細胞腫の処置のためである。
【0021】
一実施形態において、薬物抗体は、IL−6受容体に対する(抗IL6R抗体)、又はIGF−1受容体(抗IGF1R抗体)、又はIL−13受容体1α(抗IL13R1α抗体)に対する、又はOX40L(抗OX40L抗体)に対する、又は腫瘍壊死因子α(抗TNFα抗体)に対する抗体である。一実施形態において、薬物抗体は、抗IL6R抗体である。一実施形態において、抗IL6R抗体は、トシリズマブである。
【0022】
一実施形態において、捕捉薬物抗体は、固相にコンジュゲートされている。一実施形態において、固相への捕捉薬物抗体のコンジュゲーションは、特異的結合対を介して実施される。一実施形態において、特異的結合対(第1成分/第2成分)は、ストレプトアビジン若しくはアビジン/ビオチン、又は抗体/抗原(例えば、Hermanson, G.T., et al., Bioconjugate Techniques, Academic Press, 1996を参照のこと)、又はレクチン/多糖類、又はステロイド/ステロイド結合タンパク質、又はホルモン/ホルモン受容体、又は酵素/基質、又はIgG/プロテインA及び/若しくはGより選択される。
【0023】
一実施形態において、捕捉薬物抗体は、(特異的結合対の第1成分として)ビオチンにコンジュゲートされる。この場合において、固相へのコンジュゲーションは、固定化されたアビジン又はストレプトアビジンを介して実施される。
【0024】
一実施形態において、トレーサー薬物抗体は、検出可能な標識にコンジュゲートされる。一実施形態において、トレーサー薬物抗体は、特異的結合対を介して検出可能な標識にコンジュゲートされる。一実施形態において、特異的結合対(第1成分/第2成分)は、ストレプトアビジン若しくはアビジン/ビオチン、又は抗体/抗原(例えば、Hermanson, G.T., et al., Bioconjugate Techniques, Academic Press, 1996を参照のこと)、又はレクチン/多糖類、又はステロイド/ステロイド結合タンパク質、又はホルモン/ホルモン受容体、又は酵素/基質、又はIgG/プロテインA及び/若しくはGより選択される。
【0025】
一実施形態において、トレーサー薬物抗体は、(検出可能な標識として)ジゴキシゲニンにコンジュゲートされる。この場合において、検出可能な標識への連結は、ジゴキシゲニンに対する抗体を介して実施される。
【0026】
一実施形態において、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)において約0.5μg/mlから約10μg/mlの濃度を有する。一実施形態において、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、0.5μg/ml超から10μg/ml未満の濃度を有する。一実施形態において、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、約1μg/mlから約5μg/mlの濃度を有する。一実施形態において、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、約1.4μg/mlから約1.8μg/mlの濃度を有する。一実施形態において、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、約1.45μg/mlから約1.6μg/mlの濃度を有する。好ましい一実施形態において、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、約1.5μg/mlの濃度を有する。
【0027】
一実施形態において、インキュベーション時間は、少なくとも6時間である。一実施形態において、インキュベーション時間は、少なくとも12時間である。一実施形態において、インキュベーション時間は、少なくとも16時間である。
【0028】
一実施形態において、インキュベーション時間は、最大24時間である。
【0029】
一実施形態において、インキュベーション時間は、4時間と24時間の間である。一実施形態において、インキュベーション時間は、6時間と24時間の間である。一実施形態において、インキュベーション時間は、12時間と24時間の間である。好ましい一実施形態において、インキュベーション時間は、12時間と20時間の間である。一実施形態において、インキュベーション時間は、14時間と18時間の間である。一実施形態において、インキュベーション時間は、約16時間である。
【0030】
一実施形態において、サンプルは、1%〜20%血清を含む。一実施形態において、サンプルは、約10%血清を含む。
【0031】
一実施形態において、オリゴマーヒトIgGを、10μg/mlから1000μg/mlの最終濃度まで加える。一実施形態において、オリゴマーヒトIgGを、15μg/mlから500μg/mlの最終濃度まで加える。一実施形態において、オリゴマーヒトIgGを、20μg/mlから250μg/mlの最終濃度まで加える。一実施形態において、オリゴマーヒトIgGを、25μg/mlから100μg/mlの最終濃度まで加える。好ましい一実施形態において、オリゴマーヒトIgGを、約50μg/mlの最終濃度まで加える。
【0032】
本明細書において報告する一態様は、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体を含む、関節リウマチ患者のサンプル中の薬物抗体に対する抗薬物抗体の検出のための酵素結合免疫吸着アッセイであって、ここで、
a)捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体は、酵素結合免疫吸着アッセイにおいて約1.5μg/mlの濃度を有し、
b)サンプルを、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体と14〜16時間にわたり同時にインキュベートし、
c)捕捉薬物抗体は、捕捉薬物抗体のリジン残基を介した捕捉薬物抗体及びビオチンの1:1コンジュゲートであり、トレーサー薬物抗体は、トレーサー薬物抗体のリジン残基を介したトレーサー薬物抗体及びジゴキシゲニンの1:1コンジュゲートであり、
d)サンプルは1%〜20%血清を含み、並びに
e)オリゴマーヒトIgGを、捕捉薬物抗体及びトレーサー薬物抗体とのインキュベーションの前に、25μg/ml〜100μg/mlの最終濃度までサンプルに加える。
【0033】
本明細書において報告する一態様は、抗薬物抗体ELISAにおけるリウマチ因子の捕捉のためのオリゴマーヒトIgGの使用である。
【0034】
本明細書において報告する一態様は、治療的抗体(薬物)の有効量を個体に投与し、本明細書において報告するアッセイを用いて抗薬物抗体の存在を決定することを含む、疾患を有する個体を処置する方法である。
【0035】
本明細書において報告する一態様は、抗IL6R抗体(薬物)の有効量を個体に投与し、本明細書において報告するアッセイを用いて抗抗IL6R抗体抗体(抗薬物抗体)の存在を決定することを含む、炎症性疾患を有する個体を処置する方法である。
【0036】
一実施形態において、炎症性疾患は、自己免疫疾患である。一実施形態において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節炎、変形性関節症、又はキャッスルマン病より選択される。
【0037】
一実施形態において、炎症性疾患は、メサンギウム増殖性糸球体腎炎である。
【0038】
本明細書において報告する一態様は、抗IL6R抗体(薬物)の有効量を個体に投与し、本明細書において報告するアッセイを用いて抗抗IL6R抗体抗体(抗薬物抗体)の存在を決定することを含む、形質細胞腫を有する個体を処置する方法である。
【0039】
本明細書において報告する一態様は、抗IL6R抗体(薬物)の有効量を個体に投与し、本明細書において報告するアッセイを用いて抗抗IL6R抗体抗体(抗薬物抗体)の存在を決定することを含む、骨髄腫を有する個体を処置する方法である。
【0040】
本明細書において報告する一態様は、IL6R活性を阻害するための抗IL6R抗体の有効量を個体に投与し、本明細書において報告するアッセイを用いて抗抗IL6R抗体抗体(抗薬物抗体)の存在を決定することを含む、個体においてIL6R活性を阻害する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】抗IL6R抗体トシリズマブについて例示した薬物耐性の抗薬物抗体アッセイのアッセイ原理。
【
図2】抗IL6R抗体トシリズマブについての干渉抑制された抗薬物抗体アッセイのアッセイ原理。
【
図3】抗IL6R抗体トシリズマブについての干渉抑制された抗薬物抗体アッセイについて得られた検量曲線。
【
図4】抗IL6R抗体トシリズマブについて本明細書において報告する2ステップ抗薬物抗体ELISAにおける、及び干渉抑制された抗薬物抗体ELISAにおける薬物耐性の比較;増加量の薬物の存在における300ng/mL抗薬物抗体のシグナル;点線:CPの従来のアッセイ;実線:本明細書において報告するCP干渉抑制アッセイ;円を伴う点線:従来のアッセイ;四角を伴う実線:本明細書において報告する干渉抑制アッセイ。
【
図5】干渉抑制された抗薬物抗体ELISAを用いたカットポイント決定。
【
図6】TCZ−Bi(モノ)及びTCZ−Dig(モノ)を伴う干渉抑制された抗薬物抗体ELISAを用いたカットポイント決定。
【
図7】TCZ処置されたRA患者からの77の異なる血清サンプルにおける、従来のELISAを使用したシグナル変動。
【
図8】TCZ処置されたRA患者からの77の異なる血清サンプルにおける、本明細書において報告する干渉抑制ELISAを使用したシグナル変動。
【0042】
定義
用語「1:1コンジュゲート」は、単一の共有結合を介して互いに連結/コンジュゲートされた、正確には2つの実体からなるコンジュゲートを表示する。例えば、用語「捕捉薬物抗体及び特異的結合対の第1の成分の1:1コンジュゲート」は、特異的結合対の第1の成分の正確に1分子への単一の化学結合を介して共有結合的にコンジュゲートされた捕捉薬物抗体の正確に1分子からなる化学的コンジュゲートを表示する。同様に、用語「トレーサー薬物抗体及び検出可能な標識の1:1コンジュゲート」は、正確に1つの検出可能な標識分子への単一の化学的結合を介して共有結合的にコンジュゲートされたトレーサー薬物抗体の正確に1分子からなる化学的コンジュゲートを表示する。
【0043】
本発明に従った用語「薬物抗体」は、個体に投与することができる抗体を表示し、そのため前記個体のサンプルは、投与後に前記薬物抗体を含むことが推測される。薬物抗体は、治療目的のためにヒトに投与されることが意図される抗体である。本明細書に報告される1つのアッセイ内で、薬物抗体、捕捉薬物抗体、及びトレーサー薬物抗体は、例えば、同じ発現ベクターを用いて組換え産生され、同じアミノ酸配列を含む「同じ」抗体分子を含む。薬物抗体(治療用モノクローナル抗体)は、種々の疾患、例えば腫瘍学的疾患(例、血液学的及び固形悪性腫瘍(非ホジキンリンパ腫、乳癌、及び結腸直腸癌を含む)又は炎症性疾患など様々な疾患の処置のために広く使用されている。そのような抗体は、例えば、Levene, A. P., et al., Journal of the Royal Society of Medicine 98 (2005) 145-152;Groner, B., et al., Curr. Mol. Meth. 4 (2004) 539-547;及びHarris, M., Lancet Oncol. 5 (2004) 292-302により報告されている。
【0044】
一実施形態において、薬物抗体は、炎症性疾患の処置のために有用である抗体、即ち、抗炎症抗体、例えば抗IL−6受容体抗体、又は抗IL−IGF−1受容体抗体、又は抗IL−13受容体1α1抗体などである。
【0045】
例示的な(好ましくはモノクローナル)薬物抗体は、IL−6受容体に対する抗体(抗IL−6R抗体)である。そのような抗体は、例えば、Mihara, et al., Clin. Immunol. 98 (2001) 319-326;Nishimoto, N., et al, Blood 106 (2005) 2627-2632により、臨床治験NCT00046774において、又はWO 2004/096274において報告されている。
【0046】
例示的な(好ましくはモノクローナル)薬物抗体は、IGF−1受容体に対する抗体(抗IGF1抗体)である。そのような抗体は、例えば、WO 2004/087756において、又はWO 2005/005635において報告されている。
【0047】
例示的な(好ましくはモノクローナル)薬物抗体は、IL−13受容体αに対する抗体(抗IL13R1α抗体)である。IL13R1αに対する抗体は、例えば、WO 96/29417、WO 97/15663、WO 03/080675、Graber, P., et al., Eur. J. Immunol. 28 (1998) 4286-4298;Poudrier, J., et al., J. Immunol. 163 (1999) 1153-1161;Poudrier, J., et al., Eur. J. Immunol. 30 (2000) 3157-3164;Aikawa, M., et al., Cytokine 13 (2001) 75-84から公知であり、例えば、R&D Systems Inc. USAから商業的に入手可能である。IL13R1αに対するさらなる例示的な抗体が、WO 2006/072564に報告されている。
【0048】
本明細書において使用する用語「抗炎症治療のために使用される薬物抗体」は、炎症を媒介する細胞表面受容体に対して向けられた薬物抗体を表示する。そのような受容体は、例えば、IL−6受容体、又はIGF−1受容体、又はIL−13a受容体1である。患者からのサンプル(そのような抗炎症薬物抗体を用いて処理される)を分析する場合、方法の陽性結果が、真の抗薬物抗体(真の陽性結果)又はサンプルの抗薬物抗体以外の抗体(偽陽性結果)に基づくか否かを決定しなければならない。そのような場合の例は、患者からのサンプルであり、その患者は、自己免疫疾患、例えばリウマチなどを有し、このように、前記患者から得られたサンプルは、いわゆる「リウマチ因子」を含む。本明細書において使用する用語「リウマチ因子」は、ヒトIgG、より厳密にはヒトIgGのFc領域に結合する抗体を表示する。大半の場合において、これらの「リウマチ因子」は、オリゴマー結合分子である。
【0049】
本明細書において使用する用語「抗薬物抗体」は、薬物抗体の抗原性領域に対して向けられる、即ち、それに結合する抗体を表示する。この抗原性領域は、薬物抗体の可変領域、CDR、定常領域、又は糖構造でありうる。一実施形態において、抗薬物抗体は、薬物抗体のCDR又は薬物抗体の二次修飾(組換え細胞、例えばCHO細胞、HEK細胞、Sp2/0細胞、又はBHK細胞などにおける薬物抗体の組換え産生に起因する)に対して向けられる。一般的に、抗薬物抗体は、薬物抗体が投与される動物の免疫系により認識される薬物抗体の抗原性領域に対して向けられる。上に記載する抗体を「特異的な抗薬物抗体」と呼ぶ。
【0050】
薬物抗体は、可能な限り少ない抗原性領域を含むように設計される。例えば、ヒトにおける使用が意図される薬物抗体は、薬物抗体に対する免疫応答の生成を最小限にするために、ヒト患者への適用前にヒト化される。この免疫応答は、抗薬物抗体(ADA)の形態でありうるが、それは、そのようなヒト化薬物抗体の非ヒト部分(例えば可変ドメイン中の相補性決定領域など)に対して向けられる(例、Pan, Y., et al., FASEB J. 9 (1995) 43-49を参照のこと)。
【0051】
本明細書において使用する用語「超可変領域」又は「HVR」は、配列(「相補性決定領域」又は「CDR」)において超可変である、及び/又は構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する、及び/又は抗原接触残基(「抗原接触部」)を含む、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。一般的に、抗体は6つのHVRを含む:VH中の3つ(H1、H2、H3)及びVL中の3つ(L1、L2、L3)。本明細書における例示的なHVRは、以下を含む:
(a)アミノ酸残基26−32(L1)、50−52(L2)、91−96(L3)、26−32(H1)、53−55(H2)、及び96−101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987));
(b)アミノ酸残基24−34(L1)、50−56(L2)、89−97(L3)、31−35b(H1)、50−65(H2)、及び95−102(H3)で生じるCDR(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991));
(c)アミノ酸残基27c−36(L1)、46−55(L2)、89−96(L3)、30−35b(H1)、47−58(H2)、及び93−101(H3)で生じる抗原接触部(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262: 732-745 (1996));並びに
(d) HVRアミノ酸残基46−56(L2)、47−56(L2)、48−56(L2)、49−56(L2)、26−35(H1)、26−35b(H1)、49−65(H2)、93−102(H3)、及び94−102(H3)を含む、(a)、(b)、及び/又は(c)の組み合わせ。
【0052】
他に示さない場合、可変ドメイン中のHVR残基及び他の残基(例、FR残基)を、本明細書において、Kabatに従ってナンバリングする。
【0053】
抗体は、多くの反応性成分、例えば、アミノ基(リジン、α−アミノ基)、チオール基(シスチン、システイン、及びメチオニン)、カルボン酸基(アスパラギン酸、グルタミン酸)、及び糖アルコール基などを含む。これらを、表面、タンパク質、ポリマー(例えば、PEG、セルロース、又はポリスチロールなど)、酵素、又は結合対のメンバーなどの結合パートナーへの共役のために用いることができる(例、Aslam M., and Dent, A., Bioconjuation MacMillan Ref. Ltd. (1999) 50-100を参照のこと)。
【0054】
用語「抗イディオタイプ抗体」は、結合特異性(例えば親抗体の結合部位など)に、特異的に結合する抗体を表示し、即ち、抗イディオタイプ抗体は、例えば、親抗体の抗原結合部位に対して向けられる。
【0055】
一実施形態において、抗イディオタイプ抗体は、親抗体のCDRの1つ以上に、特異的に結合する。
【0056】
一実施形態において、親抗体は治療用抗体である。一実施形態において、親抗体は多重特異性抗体である。一実施形態において、親抗体は二重特異性抗体である。
【0057】
タンパク質の最も共通の反応基の1つは、アミノ酸リジンの脂肪族εアミンである。一般的に、ほぼ全ての抗体が大量のリジン残基を含む。リジンアミン/アミノ基は、pH8.0以上で適度に良好な求核剤であり(pKa=9.18)、従って、種々の試薬と簡単及び円滑に反応し、安定な結合を形成する。
【0058】
抗体中の別の共通の反応基は、硫黄を含むアミノ酸シスチン及びその還元産物システイン(又はハーフシスチン)からのチオール残基である。システインは遊離チオール基を含み、それはアミンよりも求核性であり、一般的に、タンパク質中で最も反応性の官能基である。チオールは、一般的に、中性pHで反応性であり、従って、アミンの存在において選択的に他の分子と共役させることができる。遊離スルフヒドリル基は比較的反応性であるため、これらの基を伴うタンパク質は、しばしば、それらを伴い、それらの酸化形態で、ジスルフィド基又はジスルフィド結合として存在する。
【0059】
シスチン及びシステインに加えて、一部のタンパク質は、アミノ酸メチオニンも有し、それはチオエーテル連結中に硫黄を含んでいる。文献には、いくつかのチオール化架橋試薬、例えばトラウト試薬(2−イミノチオラン(iminothiolane))、サクシニミジル(アセチルチオ)酢酸(SATA)、又はスルホスクシニミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサン酸(スルホ−LC−SPDP)などの使用が報告されており、複数のスルフヒドリル基を、反応性アミノ基を介して導入する効率的な方法を提供している。
【0060】
反応性エステル、特にNヒドロキシサクシンイミド(NHS)エステルは、アミノ基の修飾のための最も共通に用いられる試薬である。水性環境中での反応のための最適pHはpH8.0〜9.0である。
【0061】
イソチオシアネートはアミン修飾試薬であり、タンパク質とチオ尿素結合を形成する。それらは、水性溶液中で(最適にはpH9.0〜9.5で)タンパク質アミンと反応する。
【0062】
アルデヒドは、穏やかな水性条件下で、脂肪族及び芳香族のアミン、ヒドラジン、及びヒドラジドと反応し、イミン中間体(シッフ塩基)を形成する。シッフ塩基は、穏やかな又は強い還元剤(例えば水素化ホウ素ナトリウム又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムなど)を用いて選択的に還元されて、安定なアルキルアミン結合を生じることができる。
【0063】
アミンを修飾するために使用されてきた他の試薬は、酸無水物である。例えば、ジエチレントリアミン五酢酸無水物(DTPA)は、2つのアミン反応性無水物基を含む二機能性キレート剤である。それは、タンパク質のN末端基及びε−アミン基と反応し、アミド連結を形成することができる。無水物環が開き、配位複合体中で金属に強固に結合することができる多価の金属キレート化アームが作られる。
【0064】
用語「サンプル」は、生きている物又は過去に生きていた物からの物質の任意の量を含むが、それに限定されない。そのような、生きている物は、ヒト、マウス、サル、ラット、ウサギ、及び他の動物を含むが、これらに限定されない。一実施形態において、サンプルは、サル、特にカニクイザル、又はウサギ、又はマウス若しくはラットから得られる。そのような物質は、一実施形態において、個体からの全血、血清、又は血漿を含むが、これらに限定されず、それらは臨床ルーチンにおいて最も広く使用されるサンプルの供給源である。
【0065】
用語「固相」は、非液体物質を表示し、材料、例えばポリマー、金属(常磁性粒子、強磁性粒子)、ガラス、及びセラミックなどで作られた粒子(微粒子及びビーズを含む);ゲル物質、例えばシリカゲル、アルミナゲル、及びポリマーゲルなど;毛細管(ポリマー、金属、ガラス、及び/又はセラミックで作られうる);ゼオライト及び他の多孔物質;電極;マイクロタイタ―プレート;固体細片;及びキュベット、チューブ、又は他の分光計サンプル容器を含む。固相成分は、「固相」が、サンプル中の物質と相互作用することが意図される、少なくとも1つの部分をその表面上に含む点で、不活性な固体表面から区別される。固相は、固定成分、例えばチューブ、細片、キュベット、若しくはマイクロタイタ―プレートなどでありうる、又は、非固定成分、例えばビーズ及び微粒子などでありうる。タンパク質及び他の物質の非共有付着又は共有付着の両方を可能にする種々の微粒子を使用することができる。そのような粒子は、ポリマー粒子、例えばポリスチレン及びポリ(メチルメタクリル酸)など;金粒子、例えば金ナノ粒子及び金コロイドなど;並びにセラミック粒子、例えばシリカ、ガラス、及び金属酸化物粒子などを含む。例えば、Martin, C.R., et al., Analytical Chemistry-News & Features, 70 (1998) 322A-327A、又はButler, J.E., Methods 22 (2000) 4-23を参照のこと。
【0066】
色原体(蛍光性又は発光性の基及び色素)、酵素、NMR活性基、金属粒子、又はハプテン(例えばジゴキシゲニンなど)から、検出可能な標識が、一実施形態において選択される。一実施形態において、検出可能な標識は、ジゴキシゲニンである。検出可能な標識は、また、光活性化可能な架橋基(例、アジド基又はアジリン基)でありうる。電気化学発光により検出することができる金属キレートは、また、一実施形態において、シグナル放出基であり、特に好ましくはルテニウムキレート(例、ルテニウム(ビスピリジル)
32+キレート)である。適切なルテニウム標識基が、例えば、EP 0 580 979、WO 90/05301、WO 90/11511、及びWO 92/14138において記載されている。
【0067】
異なるイムノアッセイの原理が、例えば、Hage, D. S.(Anal. Chem. 71 (1999) 294R-304R)により記載されている。Lu, B.ら(Analyst. 121 (1996) 29R-32R)には、イムノアッセイにおける使用のための抗体の配向固定化が報告されている。アビジン−ビオチン媒介性イムノアッセイが、例えば、Wilchek, M. and Bayer, E.A., Methods Enzymol. 184 (1990) 467-469により報告されている。
【0068】
発明の詳細な説明
本明細書において報告するのは、遊離の治療用抗体への増加した耐性及びリウマチ因子干渉への増加した抵抗性を伴う血清サンプルを使用した、干渉抑制された抗薬物抗体アッセイである。
【0069】
抗薬物抗体アッセイの原理は、ジゴキシゲニン化薬物(薬物Dig)及びビオチン化薬物(薬物Bi)(例、トシリズマブ(それぞれTCZ−Dig及びTCZ−Bi))との複合体中の抗薬物抗体(ADA)の捕捉であり、後者は、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート(SA−MTP)上への固定化に導く。SA−MTP上で薬物Biに結合されたADA/薬物Dig複合体は、抗ジゴキシゲニン抗体西洋ワサビペルオキシダーゼ酵素コンジュゲート(抗Dig−HRP)により検出される。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、基質ABTSの呈色反応を触媒する。色の強度は、検体物の濃度に比例する。抗薬物抗体アッセイの一般的原理を
図1に示す。
【0070】
一般的なアッセイ原理の変更を伴わず、従来の抗薬物抗体アッセイの薬物及びリウマチ因子耐性は、以下により増加されうることが見出されている:
1)ビオチン化及びジゴキシゲニン化捕捉及びトレーサー試薬の濃度を増加させること;
2)血清サンプルと捕捉試薬及びトレーサー試薬との同時(連続の代わりの)インキュベーション;
3)血清サンプルと捕捉試薬及びトレーサー試薬との延長されたインキュベーション;
4)不均一に共役された混合物の代わりでの、均一の捕捉試薬及びトレーサー試薬の使用;
5)増加した血清マトリックスの使用;
6)アッセイ添加剤としてのオリゴマーIgGの含有;並びに
7)モノビオチン化捕捉及びモノジゴキシゲニン化トレーサー抗体の使用。
【0071】
これらの対処は、相乗効果を提供した。
【0072】
上の対処は、治療薬物抗体に対する抗薬物抗体の検出のための、干渉抑制された薬物耐性の抗薬物抗体アッセイに導く。
【0073】
本明細書において報告する、干渉抑制された薬物耐性の抗薬物抗体アッセイの一般的な原理を
図2に示し、抗IL6R抗体トシリズマブについて例示する。
【0074】
本明細書において報告するアッセイのセットアップを用いて、ADAアッセイの薬物耐性が、従来の抗薬物抗体アッセイと比較して、患者からの血清サンプル中で少なくとも10倍増加した。同時に、偽陽性のアッセイ結果に導くリウマチ因子への感受性も減少した。
【0075】
治療用の抗炎症抗体トシリズマブ(TCZ)は、インターロイキン6受容体に対する組換えヒト化モノクローナル抗体である。それは、関節リウマチの臨床試験において効果的であることが示されている(Ohsugi, Y. and Kishimoto, T., Expert Opin. Biol. Ther. 8 (2008) 669-681)。これらの試験において使用されるADAスクリーニング及び確認アッセイは、静脈内投薬計画を使用し、定常状態で達した、典型的なTCZ血清濃度について十分な薬物耐性を示す。
【0076】
しかし、異なる投与の経路、例えば皮下投与、より頻繁な投与、及び小児における新たな適応症は、定常状態でより高いTCZ血清濃度をもたらしうる。
【0077】
加えて、例えば、リウマチ因子(RF)は、しばしば、自己免疫疾患を伴う患者(例えば関節リウマチ患者など)において有意に増加する。RFは、凝集されたガンマグロブリンへの優先的な結合を実証し、インビボでの免疫複合体のクリアランス機構に含まれる(Tatarewicz, S., et al., J. Immunol. Methods. 357 (2010) 10-16)。RFは、優先的に五量体免疫グロブリンM(IgM抗体)アイソタイプであり(Artandi, S.E., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89 (1991) 94-98)、多価及び培地親和性を伴い、治療用抗体の定常部に非特異的に結合することができ、ADAアッセイにおいて偽陽性結果に導く。例えば、親和性精製されたウサギ抗ヒトIgM抗体をサンプル希釈物中に含めて、RAサンプル中の交差反応性IgM抗体干渉が克服された(例、Araujo, J., et al., J. Pharm. Biomed. Anal., 55 (2011) 1041-1049を参照のこと)。
【0078】
治療用抗体の血清サンプル中に存在するRFの非特異的結合が、ADAアッセイを実施する前に、オリゴマーヒトIgGをサンプルに加えることにより防止することができることが見出された。加えられたオリゴマーIgGは、RFのための追加の標的を提供し、本明細書において報告するADAアッセイにおいてRFの干渉を最大に排除する。
【0079】
以下において、本明細書において報告する干渉抑制ADAアッセイは、トシリズマブで処置された関節リウマチ患者の血清サンプル(TCZ)の分析により例示される。
【0080】
抗IL6R抗体トシリズマブに対する抗薬物抗体を検出するための従来の抗薬物抗体アッセイの薬物耐性を増加させるための対処は、以下である:
1)ビオチン化及びジゴキシゲニン化TCZの濃度を増加させること(例、0.5μg/mlから1.5μg/mlまで);
2)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの同時インキュベーション;
3)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの長期インキュベーション(例、1時間〜16時間);
4)リジン及び糖共役試薬の混合物の代わりの、リジン共役TCZ−Bi及びTCZ−Dig試薬だけの使用;
5)増加した血清マトリックス含量の使用;並びに
6)TCZ−Bi及びTCZ−Digのインキュベーションの前にサンプルへのオリゴマーヒトIgGの添加。
【0081】
薬物耐性
臨床サンプル中で検出される抗IL6R抗体トシリズマブの濃度は、0.5μg/ml又はそれより高く、しばしば、1μg/ml〜10μg/mlの範囲中にある。
【0082】
従来の抗薬物抗体アッセイの薬物耐性は、陽性対照ADAの所与の濃度が、カットポイントを上回り検出することができる最も高いTCZ濃度を決定することにより評価された。表1は、結果の要約を提示する。
【0083】
【表1】
【0084】
125ng/mLのADA濃度が検出され、10μg/mlのTCZの存在において陽性とテストされた。
【0085】
本明細書において報告する干渉抑制された薬物耐性の抗薬物抗体アッセイでの薬物耐性を、陽性対照ADAの所与の濃度が、カットポイントを上回り検出することができる最も高いTCZ濃度を決定することにより評価した。表2は、結果の要約を提示する。
【0086】
【表2】
【0087】
本明細書において報告する干渉抑制された薬物耐性の抗薬物抗体ELISAにおいて、30ng/mLの非常に低いADA濃度が検出され、10μg/mlのTCZの存在において陽性とテストされた。さらに、100ng/mL及び300ng/mLのADA濃度は、それぞれ30μg/ml及びさらに100μg/mlの薬物抗体耐性を示す。
【0088】
以前に使用された、トシリズマブについての二段階の従来の抗薬物抗体ELISAを用いて行われた同じ実験との比較において、干渉抑制アッセイを用いて少なくとも10倍高い薬物耐性が明らかになった(また、300ng/mLのADA濃度についての
図4を参照のこと)。
【0089】
一価結合ビオチン及びジゴキシゲニンと捕捉及びトレーサー薬物抗体との、それぞれ1:1コンジュゲートを伴う、本明細書において報告する干渉抑制された薬物耐性の抗薬物抗体アッセイの薬物耐性を、陽性対照ADAの所定の濃度が、カットポイントを上回り検出することができる、最も高いTCZ濃度を決定することにより評価した。表3は、結果の要約を提示する。
【0090】
【表3】
【0091】
本明細書において報告する干渉抑制された薬物耐性の抗薬物抗体ELISAにおいて、250ng/mLのADA濃度が検出され、80μg/mlのTCZの存在において陽性とテストされた。
【0092】
干渉抑制:
16の臨床血清サンプルが、Stubenrauchら(上記)において記載される通りの従来の抗薬物抗体アッセイにより分析された。結果を表4aに要約する。
【0093】
【表4】
【0094】
アッセイ原理の変更を伴わず、一連の対処が、本明細書において報告する通りの干渉抑制された薬物耐性の抗薬物抗体ELISAを得るために取られた。
【0095】
これらは以下である:
1)ビオチン化及びジゴキシゲニン化TCZの濃度を増加させること(例、0.5μg/mlから1.5μg/mlまで);
2)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの同時インキュベーション;
3)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの長期インキュベーション(例、1時間〜16時間);
4)リジン及び糖共役試薬の混合物の代わりの、リジン共役TCZ−Bi及びTCZ−Dig試薬だけの使用;
5)増加した血清マトリックス含量の使用;並びに
6)TCZ−Bi及びTCZ−Digのインキュベーションの前にサンプルへのオリゴマーヒトIgGの添加。
【0096】
本明細書において報告する干渉抑制アッセイを用いて得られた結果を表4bに示す。
【0097】
【表5】
【0098】
上に概説する通りの対処の一部だけが取られた場合、干渉の低下が十分ではなく、依然として、リウマチ因子による干渉に対する感受性が存在し、偽陽性ADAアッセイ結果をもたらすことが見出されている。
【0099】
例えば、以下の対処が取られた場合、
1)ビオチン化及びジゴキシゲニン化TCZの濃度を増加させること(例、0.5μg/mlから1.5μg/mlまで);
2)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの同時インキュベーション;
3)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの長期インキュベーション(例、1時間〜16時間);
4)リジン及び糖共役試薬の混合物の代わりの、リジン共役TCZ−Bi及びTCZ−Dig試薬だけの使用;並びに
5)増加した血清マトリックス含量の使用;
偽陽性のアッセイ結果に対する感受性の完全な低下を見ることはできない。比較データを表4cに示す。
【0100】
【表6】
【0101】
従来のADAアッセイ及び本明細書において報告する干渉抑制された薬物耐性のADAアッセイを用いた、TCZ処置RA患者からの258の異なる血清サンプルの比較評価では、12サンプルにおいて同じ陽性結果が示された。従来のアッセイでは、27のプラセボ患者が陽性と測定されたのに対し、本明細書において報告する干渉抑制された薬物耐性のADAアッセイでは4つだけであった。結論として、本明細書において記載する一連の対処及びADAアッセイ添加物としてのオリゴマーヒトIgGの添加によって、従来のADAアッセイと比較し、増加した薬物耐性及び抑制されたRFによる干渉が付与された。
【0102】
上記のデータのサブセット分析を表7に示す。
【0103】
【表7】
試験関連CP:0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0104】
表8aにおいて、TCZで処置されていない27人のプラセボ患者についてのアッセイシグナルが示されている。TCZ処置誘導性ADAの非存在に起因して、この群における高いアッセイシグナルは、予想されておらず、潜在的な干渉を示しうる。
【0105】
【表8】
試験関連カットポイント(CP):0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0106】
両方のアッセイのシグナルパターンは、非常に異なっている:全ての27のプラセボサンプルが、従来のELISAを使用して陽性と決定されたのに対し、しかし、27サンプルのうち4つだけが、本明細書において報告する干渉抑制ELISAを用いて陽性と決定された。
【0107】
プラセボ処置患者に加えて、TCZ処置患者のサンプルが分析されている。表8bにおいて、TCZ処置前の患者についての結果が示されている。表8cにおいて、TCZ処置患者についての結果が示されている。
【0108】
【表9】
試験関連CP:0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0109】
【表10】
試験関連CP:0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0110】
本明細書において報告するアッセイは、用いられる治療用抗体及び標的から独立した利益を提供する。これは、関節リウマチについて陽性と診断された患者のサンプルを使用して、抗IL6R抗体、抗IGF−1R抗体、抗IL13Rα抗体、抗OX40L抗体、及び抗Abeta抗体について、下表に示す。
【0111】
【表11】
【0112】
【表12】
【0113】
【表13】
【0114】
【表14】
【0115】
【表15】
【0116】
以下の実施例及び図を提供し、本発明の理解を助け、その真の範囲は、添付の特許請求の範囲に示されている。改変が、本発明の精神から逸脱することなく示される手順においてなされうることが理解される。
【0117】
実施例
材料及び方法
精製されたプールヒト免疫グロブリンクラスG(IgG)を、Stubenrauchら(Anal. Biochem. 390 (2009) 189-196)により記載される通りに調製した。簡単には、健康なドナーからのプールヒト血清を、Aerosil(二酸化ケイ素、1.5%(w/v))を用いて脱脂し、硫酸アンモニウム(2.0M)を用いて沈殿させた。ペレットをリン酸緩衝液中でホモジナイズし、リン酸緩衝液(pH7.0)に対して透析した。この混合物を、DEAEイオン交換クロマトグラフィー(pH7.0)により分離し、フロースルー中のIgGを5.93mg/mLまで濃縮し、ゲル濾過により精製した。
【0118】
ポリクローナル抗ジゴキシゲニン西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲート(Fabフラグメント)を、Roche Diagnostics GmbH(ドイツ、マンハイム)(カタログ番号11633716)から入手した。陽性品質管理(QC)及び較正標準(CS)として使用されるポリクローナルウサギ抗TCZ抗体(0.5mg等量/mL)を、Stubenrauchら(上記)に記載される通りに調製した。
【0119】
個々のヒト血清サンプルは、Roche Diagnostics GmbH(ドイツ、ペンツベルク)の血清銀行により提供された。陰性対照用のプールヒト血清マトリクスは、TCS Biosciences Ltd.(英国、バッキンガム)により供給された。
【0120】
以下の試薬は、Roche Diagnostics GmbH(ドイツ、マンハイム)から入手した:2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)基質(カタログ番号11684302−001)、ELISA用の洗浄緩衝液:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)(0.01M KH2PO4、0.1M Na2HPO4、1.37M NaCl、0.027M KCl;pH7.0)/0.05%ポリソルベート20(Tween 20)(カタログ番号11332465−001)及びELISAにおいて希釈緩衝液として使用される調整済みユニバーサル緩衝液(カタログ番号4742672)。全ての化学物質は分析グレードであった。
【0121】
ストレプトアビジンコーティングされたマイクロタイタープレート(SA−MTP)は、MicroCoat Biotechnologie GmbH(ベルンリート)から得られた。コーティングされていないNunc 96マイクロウェルプレートは、Fisher Scientific GmbH(ドイツ、シュヴェーアテ)(カタログ番号442587)からであり、プレインキュベーションのために使用された。
【0122】
従来の抗薬物抗体アッセイ:
アッセイは室温で実施した。第1工程において、TCZ−Biを、シェーカー上で、400rpmで1時間にわたり100μLをインキュベートすることにより、0.5μg/mlの濃度でSA−MTPに結合させた。プレインキュベーション溶液をSA−MTPに加える前に、過剰の未結合TCZ−Biを、3回洗浄することにより除去した。コーティング手順と並行して、標準及びサンプルのプレインキュベーションは、別々のコーティングされていない96ウェルプレート中で2通りに実施した。サンプル及び標準を、ウェル中で10%血清マトリックスを用いて75μLの容量まで希釈し(1:10)、同じ容量のTCZ−DIGと混合し、1時間のプレインキュベーション期間を開始した。TCZ−BiコーティングされたSA−MTPを、プレインキュベーションプレートの各ウェルから、コーティングされたMTPのウェルに100μLを移すことにより添加し、シェーカー上で、400rpmで1時間にわたりインキュベートした。洗浄後、100μL(100mU/mL)の容量中のポリクローナル抗Dig西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)コンジュゲートをウェルに加え、1時間にわたりシェーカー上でインキュベートした。洗浄後、HRP触媒による発色反応を、100μLのABTS溶液を加えることにより開始した。最大光学密度(OD)が約2.0であった時、通常20〜30分間以内に、呈色反応のシグナルを、405nm(参照、490nm)の波長で、ELISAリーダーにより測定した。同じアッセイを、確認試薬の存在において、確認試薬を伴わない同時測定を用いて実施した。得られたODのデータは、サンプル濃度を算出するためのWiemer−Rodbard方法に従った非線形4パラメーター回帰曲線適合により標準検量曲線を作成するために使用した。
【0123】
テスト結果についてのカットオフポイントは、健康なボランティア及びRAを伴う患者からのヒトブランク血清サンプルの複数の分析からのアッセイシグナル(OD)の95%CIで設定した。スクリーニングテストの結果は、カットオフを上回る値で陽性と考えた。非スパイクサンプルと比べた、吸光度における>20%の減少は、陽性結果を示した。スクリーニングのカットオフは、参照抗体の61.4ng/mLで決定した。アッセイ内及びアッセイ間の正確性は、それぞれ84.8%〜93.1%及び91.3%〜92.2%であった。アッセイ内及びアッセイ間の精度についての対応する値は1.8%〜2.0%及び6.8%〜8.0%であった。ELISAの正確性は、アッセイの結果が真の値と一致した程度により定義した。正確性は、ヒト血清中にスパイクされたウサギポリクローナル抗TCZ陽性対照標準の測定濃度を、抗TCZの名目濃度と比較することにより決定した。高濃度(360ng当量/mL)及び低濃度(60ng当量/mL)陽性対照標準を、アッセイ内の正確性を決定するために、2通りに測定された各陽性対象標準の6アリコート中、及び、アッセイ間の正確性を決定するために、2通りに測定された各陽性対照標準の3アリコート中で分析した。
【0124】
実施例1
抗IL6R抗体トシリズマブのビオチン化
a)従来のビオチン化IgGの調製
抗IL6R抗体トシリズマブを、緩衝液(100mMリン酸カリウム緩衝液(以下において、K−PO4として表示する)、pH8.5)に対して透析した。その後、溶液を、5mg/mLのタンパク質濃度まで調整した。D−ビオチノイル−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、1:5のモル比で抗体溶液に加えた。60分後、反応を、L−リジンを加えることにより停止させた。余剰の標識試薬を、150mM KCl、pH7.5を添加した50mM K−PO4に対する透析により除去した。TCZ−Biのアリコートに、6.5%スクロースを含め、−80℃で保存した。
【0125】
b)モノビオチン化IgGの調製
抗IL6R抗体トシリズマブを、100mM K−PO4、pH8.5に対して透析し、その後、溶液を5mg/mLのタンパク質濃度まで調整した。D−ビオチノイル−アミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、1:1のモル比で抗体溶液に加えた。60分後、反応を、L−リジンを加えることにより停止させた。余剰の標識試薬を、150mM KCl、pH7.2を添加した25mM K−PO4に対する透析により除去した。混合物を、1M硫酸アンモニウムを含む100mM K−PO4、150mM KCl、pH7.2を伴う緩衝液に移し、ストレプトアビジンムテインセファロースを伴うカラムに適用した。非ビオチン化IgGはフロースルー中あり、モノビオチン化IgGは、100mM K−PO4、150mM KCl、1.5%DMSO、pH7.2を用いて溶出し、より高いビオチン化集団を含むビオチン化IgGを、100mM K−PO4、150mM KCl、2mM D−ビオチン、pH7.2を用いて溶出する。モノビオチン化抗体を、150mM KCl、pH7.5を添加した50mM K−PO4に対して透析した。アリコートに、6.5%スクロースを含め、−80℃で保存した。
【0126】
実施例2
抗IL6R抗体トシリズマブのジゴキシゲニン化
a)従来のジゴキシゲニン化IgGの調製
抗IL6R抗体トシリズマブを、緩衝液(100mMリン酸カリウム緩衝液(以下において、K−PO4として表示する)、pH8.5)に対して透析した。その後、溶液を、5mg/mLのタンパク質濃度まで調整した。ジゴキシゲニン3−O−メチル−εアミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、DMSO中に溶解し、1:4のモル比で抗体溶液に加えた。60分後、反応を、L−リジンを加えることにより停止させた。余剰の標識試薬を、150mM NaCl、pH7.5を添加した50mM K−PO4に対する透析により除去した。ジゴキシゲニン化TCZ(TCZ−Dig)は、6.5%スクロースを含むアリコートとして、−80℃で保存した。
【0127】
b)モノジゴキシゲニン化IgGの調製
抗IL6R抗体トシリズマブを、100mM K−PO4、pH8.5に対して透析し、その後、溶液を5mg/mLのタンパク質濃度まで調整した。ジゴキシゲニン3−O−メチル−εアミノカプロン酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、ジメチルスルホキシド(DMSO)中に溶解し、1:1のモル比で抗体溶液に加えた。60分後、反応を、L−リジンを加えることにより停止させた。余剰の標識試薬を、150mM KCl、pH7.5を添加した50mM K−PO4に対する透析により除去した。混合物を、ジゴキシゲニンに対する固定化モノクローナル抗体を伴うセファロースカラムに適用した。非ジゴキシゲニン化抗体は通過画分にあり、モノジゴキシゲニン化IgGは、穏やかな溶出緩衝液(Thermo Scientific、#21013)を用いて溶出し、より高いジゴキシゲニン化集団を含むジゴキシゲニン化抗体を、1Mプロピオン酸を用いて溶出する。モノジゴキシゲニン化抗体を伴う分画を、第1に20mM TRIS、20mM NaCl、pH7.5に対して、第2に50mM K−PO4、150mM KCl、pH7.5に対して透析した。アリコートに、6.5%スクロースを含め、−80℃で保存した。
【0128】
実施例3
オリゴマー形態におけるヒトIgGの生成
イオン交換クロマトグラフィーによりヒト血清から精製したヒトIgGを、100mM NaCl、pH8.4を含む150mMリン酸カリウム緩衝液に対して透析し、タンパク質溶液を、50mg/mLタンパク質濃度まで濃縮した。ジスクシンイミジルスベレート(DSS)をDMSO中に溶解し、1:6(IgG:DSS)のモル比で抗体溶液に加えた。混合物を25℃及びpH8.4で撹拌を伴いインキュベートし、反応物を、分析用ゲル濾過カラム(例、TSK4000カラムを使用して)を用いて分析した。重合を、140分後に、最終濃度20mMまでリジンを加えることにより停止させた。25℃での45分のインキュベーション後、オリゴマーヒトIgGをゲル濾過(例、セファクリルS400カラムを使用する)により分離し、低分子量画分を除去した。オリゴマーの組成物は、UV分光法、サイズ排除クロマトグラフィー、及びSDS−PAGEゲル電気泳動により特徴付けた。オリゴマーヒトIgGを分注し(10.5mg/mL)、それを、イムノアッセイにおけるADAアッセイ添加剤(AAA)としての使用のために、Universal緩衝液(カタログ番号4742672)を用いて55.6μg/mlの濃度まで新たに希釈するまで、−65℃で保存した。
【0129】
実施例4
較正標準及び品質管理サンプルの調製
較正標準(CS)及び品質管理サンプル(QC)のためのストック溶液を別々に調製した。CSサンプルは、TCZの0.5mg/mLストック溶液を使用し、アッセイの日に新たに調製した。ヒトプール血清(HPS)を用いた予備希釈後、結果として得られたCS作業溶液を、100% HPSを用いて段階的に希釈し、アッセイ使用前に、1,000;500;250;125;62.5;31.3;及び15.6ng/mLのキャリブレータ濃度をもたらした。陰性対照は100% HPSであった。アッセイにおけるプレインキュベーション工程のために、CSサンプルを1:10に希釈し、10%の血清濃度及び100ng/mL〜1.56ng/mLのアッセイ濃度範囲に調整した。
【0130】
使用されたQCストックサンプルは、100%ヒトプール血清中で作られ、単一使用のアリコートとして−20℃で保存した。3つの別々のQCサンプルを調製し、高(750ng/mL)、中程度(400ng/mL)、及び低(50ng/mL)の非希釈血清濃度を表すストック濃度で保存した。アッセイにおけるプレインキュベーション工程のために、QCサンプルを、10%の血清濃度に達するように、捕捉/検出溶液中で新たに1:10希釈した。25ng/mLでのアッセイの典型的なカットポイントでの第4のQCサンプルをさらに使用した。
【0131】
実施例5
ADAスクリーニング及び確認アッセイ
サンドイッチELISAを、トシリズマブ(TCZ)に対する抗薬物抗体(ADA)のスクリーニング及び確認の両方のために使用した(Stubenrauch, K., et al., Clin. Ther. 32 (2010) 1597-1609を参照のこと)。この方法の原理は、TCZ−Dig及びTCZ−Biとの複合体におけるADAの捕捉であり、後者は、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート上での固定化に導く。SA−MTPに結合したTCZ−Bi/ADA/TCZ−Dig複合体は、抗Dig−HRP酵素コンジュゲート抗体により検出された。薬物耐性抗薬物抗体アッセイの原理を
図1に示す。ADAアッセイの添加剤としてのオリゴマーIgGの包含は、
図2に示す通りの干渉抑制された抗薬物抗体アッセイに導く。ポリクローナル抗体の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、基質ABTSの呈色反応を触媒する。色の強度は、分析物の濃度に比例する。
【0132】
スクリーニングアッセイは、室温で実施した。試薬及び血清サンプルを、Universal緩衝液(カタログ番号4742672)を用いて希釈し、全ての洗浄工程を、洗浄緩衝液(PBS、0.05%ポリソルベート20(Tween 20)(カタログ番号11332465−001))を用いて3回実施した(1ウェル当たり300μL)。インキュベーションは、500rpmでのマイクロタイタープレートシェーカー(MTPシェーカー)上で、震盪下で実施した。テストサンプル、QC及びCSサンプルは、捕捉抗体TCZ−Bi及び検出抗体TCZ−Digを用いて、一晩(16時間まで)インキュベートした。プレインキュベーションマイクロタイタープレート(MTP)の各ウェルに、オリゴマーヒトIgG ADAアッセイ添加剤(AAA)を伴う、1.667μg/mlのTCZ−Bi及び1.667μg/mlのTCZ−Digを含む捕捉/検出溶液の225μLを添加し、その後、それぞれのサンプルの25μLを加えた。結果として得られるTCZ−Bi及びTCZ−Digの濃度は、各々1.5μg/mlであり、オリゴマーヒトIgGは50μg/mlの濃度を有していた。添加されたMTPは、蒸発を防止するために被覆し、一晩インキュベートした。プレインキュベーションプレートの各ウェルの100μLの2通りを、ストレプトアビジンコーティングされたマイクロタイタープレート(SA−MTP)のウェルに移し、被覆し、1時間にわたりインキュベートした。
【0133】
洗浄後、25mU/mLの濃度を伴うポリクローナル抗Dig Fab−HRP複合体を、各ウェルに100μLの容量で加え、1時間にわたりインキュベートした。洗浄後、ABTS調製済み溶液を、各ウェルに100μLアリコートで加え、約10〜15分間にわたり、振盪しながらインキュベートした。発色反応のシグナルを、405nm波長(リファレンス波長:490nm)でELISAリーダーにより測定した。各々の血清サンプルの吸光度値を3通りに測定した。最も高い標準は、1.8〜2.2の間の任意単位(AU)の光学密度(OD)に達しなくてはならない。得られたODのデータを、サンプル濃度を算出するために、非線形4パラメーター適合「Wiemer Rodbard」により標準検量曲線を生成するために使用した。サンプルは、濃度の回収が、特異性カットポイント未満である場合、ADAに陽性として確認された。
【0134】
特異性カットポイントの評価を、1つのMTPについて2通りに、関節リウマチ患者の32の個々のブランクヒト血清サンプルの分析により実施した。カットポイントによって、それを上回る場合、サンプルがADAスクリーニングアッセイにおけるADAの存在について潜在的に陽性として定義されるシグナルが特定される。データの非正規性に起因して、95%パーセンタイルを伴う非パラメトリックアプローチが、複製プレート上のカットポイントの平均値に基づくカットポイントの算出のために適用された。
【0135】
関節リウマチ患者の32の個々のヒトブランク血清サンプルの重複測定からADAアッセイのカットポイントを決定するために行った実験によって、約0.009の標準偏差(SD)を伴う3つの異なるプレート上での約0.026の平均AUが明らかになった。対応する変動係数(CV)は、それぞれ23.8%;20.0%;及び19.0%であった。これらのデータセットに基づき、NF=1.6905の正規化係数が得られ、それは、アッセイ定量化を通して使用され、プレート特異的なカットポイントに適用される(プレート特異的なカットポイント[AU]=シグナル[AU](陰性対照)×NF)。
【0136】
スクリーニングADAアッセイの定量化については、1.56ng/mL〜100ng/mLのアッセイ濃度範囲を伴う7つの較正サンプル及びブランクサンプルを伴う5つの独立した検量曲線製剤を、1つのプレート上で2通りに測定した。アッセイ内での定量化の実行は、単一のプレート上で2通りに測定された4つのQCサンプルの各々を伴う5つの複製物(5つの別々のバイアル)を用いて実施した。2通りに測定された全てのQCサンプルのアッセイ間の定量化データが、4つの異なる日に少なくとも2人のオペレーターにより実施される7つの独立したテストの実行から得られた。
【0137】
干渉抑制ELISAの典型的な較正曲線を
図3に示す。サンプルの二重測定の精度を定量化実験の間に評価し、そのCVは15%を超えなかった。干渉抑制ADA ELISAのアッセイ内及びアッセイ間の精度及び正確性の値を表5に要約する。
【0138】
【表16】
【0139】
決定されたアッセイ内精度は、25ng/mLのカットポイントQCを含む、全てのQCについて<5%であった。決定されたアッセイ内の正確性は、91.1%〜102%の範囲中にあったが、全てのカットポイントQCサンプルは陽性とテストされた。逆算されたQCについてのアッセイ間の精度は、全てのQCについて<6%であった。決定されたアッセイ間の正確性は、高、中、低QCについて92.8%〜105%であった。全てのカットポイントのQC測定値が、ADA陽性を提供した。
【0140】
潜在的な高用量フック効果は、25,000ng/mL〜6.1ng/mLのアッセイ濃度範囲内の陽性対照サンプルでの連続滴定(2:1)により評価した。アッセイ範囲内のADA濃度の回復は、77.9%と98.9%の間であった。潜在的なマトリックス効果の分析のために、11の個々の正常ヒト血清サンプルを、高及び低用量QC、即ち、100%血清中の50及び750ng/mLで、陽性対照ADAを用いてスパイクし、定量化した。また、QCサンプルも同じプレート上で分析した。低及び高ADA濃度の回復は、111%(範囲:104〜117%)及び111%(範囲:107〜117%)であり、干渉抑制ADA ELISAにおいてマトリックス効果がないことを示した。
【0141】
薬物耐性は、最も高いTCZ濃度を決定することにより評価したが、その濃度では、陽性対照ADAの所与の濃度が、カットポイントを上回り検出することができる。表2は、完全なデータセットの要約を提示する。
【0142】
【表17】
【0143】
臨床サンプル中で検出される抗IL6R抗体トシリズマブの濃度は、0.5μg/ml又はそれより高く、しばしば、1μg/ml〜10μg/mlの範囲中にある。30ng/mLの非常に低いADA濃度が検出され、10μg/mlのTCZの存在において陽性とテストされた。さらに、100ng/mL及び300ng/mLのADA濃度は、それぞれ30μg/ml及びさらに100μg/mlの薬物抗体耐性を示す。以前に使用された、トシリズマブについての二段階の従来のADA ELISAを用いて行われた同じ実験によって、干渉抑制アッセイを用いて少なくとも10倍高い薬物耐性が明らかになった(300ng/mLのADA濃度についての
図4を参照のこと)。
【0144】
確認アッセイにおける過剰な遊離薬物として使用されたTCZの濃度は、薬物干渉実験において得られたデータセットに基づいていた。サンプル中の高レベルのADAを抑制することができるTCZ濃度を評価するために、陽性対照サンプルの4つの異なる濃度(100%血清中の1,000;500;250;83.3ng/mL)を、各々、漸増濃度のTCZ(100%血清中の0;16;31;63;125;250μg/ml)とインキュベートした。陽性対照ADAの高濃度での測定シグナルの少なくとも95%(5%未満のシグナル回復に相当する)を阻害するTCZ濃度は、TCZの25μg/mlと決定された。
【0145】
後の試験中のテスト段階の間に試験サンプル中のADAの親和性の差に起因する偽陰性の可能性を低下させるために、決定された値の2倍高い過剰な遊離薬物濃度を、さらなる評価のために使用した(即ち、100%血清中の400μg/mlに相当する40μg/mlのアッセイ濃度)。
【0146】
特定のADAを確認するために必要とされる最小のシグナル阻害値は、関節リウマチ患者の16の個々のブランクヒト血清サンプルとTCZとのプレインキュベーションにより決定され、1つのテスト実行において2通りに分析された。分析は、400μg/mlの遊離TCZを伴い、又は伴わずに実施された。遊離TCZの添加は、平均14.1%(−11.5%から34.8%の範囲及び11.2%のSD)だけアッセイシグナルを低下させることが見出されている。99.9%の信頼区間(平均値+3.09SD)を適用することによって、ブランク血清サンプルについての49%の最小シグナル低下がもたらされた。この計算に基づき、サンプルは、シグナルが、遊離薬物の非存在下におけるそれと比較した際に、過剰の遊離薬物の存在において多く49%を上回り減少した場合、陽性確認と評価された。参照サンプルとして、過剰TCZを伴わない、対応するサンプルが使用された。確認アッセイにおけるシグナル阻害の再現性を実証するために、高、中、低の陽性QC濃度を伴う血清サンプルを、事前に定められた濃度で、過剰のTCZを伴い、及び伴わず、3回分析した。
【0147】
TCZについての干渉抑制ADAアッセイは、100%血清中のADAキャリブレータの1,000ng/mL〜15.6ng/mLの測定範囲を有していた。アッセイ内の精度は、全ての品質管理について5%未満であり、アッセイ内の正確性は、91.1%〜102%であった。アッセイ間の精度及び正確性は、それぞれ6%未満及び92.8%〜105%であった。
【0148】
アッセイの定量化によって、フック及びマトリックス効果が排除された。
【0149】
干渉抑制ADAアッセイの薬物耐性は、以前のバージョンよりも少なくとも10倍高いことが分かる。
【0150】
確認アッセイは、サンプルが、過剰な遊離薬物、即ち、TCZを伴わず、及び伴い、並行して分析されたことを除き、本質的に、スクリーニングアッセイについて前に記載された通りに実施された。確認の捕捉/検出溶液には、サンプルの添加後に40μg/ml TCZの最終アッセイ濃度を達成するために、追加の過剰TCZ(44.4μg/ml)を伴う、捕捉/検出溶液の同じ用量が含まれた。過剰薬物を伴う確認条件下でのパーセントシグナル阻害の算出は、以下の等式を使用して行われた:
%シグナル阻害=100×(1−([AU]薬物前処理サンプル/[AU]未処理サンプル))
【0151】
実施例6
臨床サンプルへの干渉抑制ADAアッセイの適用
1)ビオチン化及びジゴキシゲニン化TCZの濃度を増加させること(例、1.5μg/mlまで);2)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの同時インキュベーション;3)血清サンプルとTCZ−Bi及びTCZ−Digとの長期インキュベーション(例、一晩);4)リジン及び糖共役試薬の混合物の代わりの、リジン共役TCZ−Bi及びTCZ−Dig試薬だけの使用;並びに、増加した血清マトリックス(例、5%の代わりに10%)の使用からなる薬物耐性を増加させるための対処は、12/28から25/28へのADA陽性の増加をもたらした。
【0152】
16の臨床血清サンプルを、一連の3つの異なるADAアッセイにより分析した:従来のADAアッセイ、本明細書において報告する干渉抑制ADAアッセイ(オリゴマーヒトIgGを加えない)、及び本明細書において報告する干渉抑制ADAアッセイ(オリゴマーヒトIgGを加える)。結果を表6に要約する。16サンプルのうち、15が、ADAアッセイのバージョンにおいて陽性とテストされ、ここで、対処1から5だけが取られているのに対し、8/16だけが、従来の、並びに本明細書において報告する干渉抑制された薬物耐性ADAアッセイにおいて陽性とテストされ、ここで、対処1から6が取られており、8サンプル中7つにおいて同一の結果を伴った。同一の結果を伴う、これらの7のサンプルは、サンプル中の低RF濃度により、及び/又はベースラインで特徴付けられた。全ての7つのサンプルが、真のトシリズマブ特異的なADAを示しているトシリズマブのFab部分に結合したIgGアイソタイプのADAを含んだ。7つのサンプルのうち3つが、また、IgMアイソタイプADAを有していたが、しかし、それは、また、Fab部分に結合していた。対照的に、残りのサンプルの大部分が、主に、トシリズマブの定常Fc部分に結合したIgMアイソタイプのADAを有していた。これらのサンプルは、また、RFの高い、即ち、>1,000U/mLの濃度を含んでいた。
【0153】
【表18】
【0154】
実施例5において報告するADAイムノアッセイを使用し、ベースラインで、及びトシリズマブの投与後に採取した、関節リウマチ患者からの148の異なる血清サンプルを分析した。干渉抑制ADAアッセイを用いた分析の結果を、従来のADAイムノアッセイを用いた分析により得られた結果と比較した。より詳細な分析のために、ADAアイソタイプ及び結合領域、並びに臨床事象に関する追加情報を伴う18人の異なる患者からの(148のうちの)合計92の血清サンプルを選択した。患者は、彼らが以下の基準の少なくとも1つ満たした場合に選択された:1)任意の時点でのADA陽性免疫応答;2)高いTCZ血清濃度;3)臨床反応(例えば注入関連、過敏症、又はアナフィラキシーなど)。ADAの結合領域及びアイソタイプの分析は、以前に記載された通りに(Stubenrauch, K., et al., Anal. Biochem. 390 (2009) 189-196)、バイオセンサーイムノアッセイを用いて実施した。簡単には、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイのセットアップでは、ADAの差動結合分析のための、完全長抗体並びにその定常(Fc)及び抗原結合(Fab)フラグメントの固定化により、単一のバイオセンサーチップ上で4つの平行フローセルが使用された。異なるアイソタイプのポリクローナルヒトADAを模倣する陽性対照標準コンジュゲートは、ヒト免疫グロブリン(Ig)M、IgG、又はIgEへのTCZに対するポリクローナルウサギ抗体をコンジュゲートさせることにより得られた(WO 2008/061684を参照のこと)。リウマチ因子(RF)アッセイは、Siemens Healthcare Diagnostics(Newark, DE, USA)からのRF試薬を使用して、Siemens BN II比濁計で実施した。簡単には、ヒト免疫グロブリン及び羊からの抗ヒトIgGからなる免疫複合体を用いてコーティングされたポリスチレン粒子は、RFを含むサンプルと混合した場合に凝集する。これらの凝集体は、サンプルを通過した光のビームを散乱する。散乱光の強度は、サンプル中のそれぞれのタンパク質の濃度に比例する。結果は、公知の濃度の標準との比較により評価される。
【0155】
本明細書において報告する従来のアッセイ及び干渉抑制された薬物耐性ADAアッセイを用いた、TCZ処置されたRA患者からの258の異なる血清サンプルの比較評価では、12のサンプルにおいて同じ陽性結果が示された。従来のアッセイでは、27のプラセボ患者が測定されたのに対し、干渉抑制された薬物耐性ADAアッセイは、本明細書において報告する通りである4。結論として、本明細書において報告する一連の対処及びADAアッセイの添加物としてのオリゴマーヒトIgGの添加によって、増加した薬物耐性が付与され、従来のADAアッセイと比較し、RFによる干渉が抑制された。
【0156】
上記データのサブセット分析を以下の表7に示す。
【0157】
【表19】
試験関連CP:0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0158】
表8Aには、TCZで処置されていない27人のプラセボ患者についてのアッセイシグナルをバー及び数字として示す。TCZ処置誘導性のADAの非存在に起因して、この群における高いアッセイシグナルは予想されず、潜在的な干渉を示しうる。
【0159】
【表20】
試験関連CP:0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0160】
両方のアッセイのシグナルパターンは、非常に異なっている:全ての27のプラセボサンプルが、従来のELISAを使用して陽性と決定されたのに対し、27サンプル中の4つだけが、本明細書において報告する干渉抑制ELISAを用いて陽性と決定された。
【0161】
プラセボ処置された患者に加えて、TCZ処置された患者のサンプルが分析されている。表8bには、TCZ処置前の患者についての結果を示す。表8cには、TCZ処置された患者についての結果を示す。
【0162】
【表21】
試験関連CP:0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0163】
【表22】
試験関連CP:0.215(従来のELISA);0.058(干渉抑制ELISA);+:陽性のELISA結果;−:陰性のELISA結果
【0164】
両方のアッセイを用いたシグナルパターンは、類似していない:25人の患者が、従来のELISAを使用して陽性と決定されたのに対し、10人の患者だけが、本明細書において報告する干渉抑制ELISAを使用して陽性と決定された。
【0165】
実施例7
捕捉試薬及びトレーサー試薬の誘導体化の種類の影響
モノラベリング対マルチラベリング
ビオチン化及びジゴキシゲニン化TCZの濃度を増加させる(例、1.5μg/mlまで)ことからなる、薬物耐性を増加させるための対処;これによって、粘着性のジゴキシゲニンにより、より高いバックグラウンドが起こりうる;より高いカットポイントに起因する悪化した薬物耐性に注意するために、モノビオチン化及びモノジゴキシゲニン化によって、より高い捕捉及びトレーサー濃度の存在により、より低いバックグラウンドシグナルが与えられる。
【0166】
サンドイッチELISAを、トシリズマブ(TCZ)に対する抗薬物抗体(ADA)のスクリーニング及び確認の両方のために使用した(Stubenrauch, K., et al., Clin. Ther. 32 (2010) 1597-1609を参照のこと)。この方法の原理は、TCZ−Dig(モノ)及びTCZ−Bi(モノ)との複合体におけるADAの捕捉であり、後者は、ストレプトアビジンでコーティングされたプレート上での固定化に導く。SA−MTPに結合したTCZ−Bi/ADA/TCZ−Dig複合体(一晩のインキュベーション)は、抗Dig−HRP酵素コンジュゲート抗体により検出された。薬物耐性抗薬物抗体アッセイの原理を
図1に示す。ADAアッセイの添加剤としてのオリゴマーIgGの含有は、
図2に示す通りの干渉抑制された抗薬物抗体アッセイに導く。ポリクローナル抗体の西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)は、基質ABTSの呈色反応を触媒する。色の強度は、分析物の濃度に比例する。
【0167】
スクリーニングアッセイは、室温で実施した。試薬及び血清サンプルを、Universal緩衝液(カタログ番号4742672)を用いて希釈し、全ての洗浄工程を、洗浄緩衝液(PBS、0.05%ポリソルベート20(Tween(登録商標)20)(カタログ番号11332465−001))を用いて3回実施した(1ウェル当たり300μL)。インキュベーションは、500rpmでのマイクロタイタープレートシェーカー(MTPシェーカー)上で、震盪下で実施した。テストサンプル、QC及びCSサンプルは、捕捉抗体TCZ−Bi及び検出抗体TCZ−Digを用いて、一晩(16時間)インキュベートした。プレインキュベーションマイクロタイタープレート(MTP)の各ウェルを、オリゴマーヒトIgG ADAアッセイ添加剤(AAA)を伴う、1.667μg/mlのTCZ−Bi(モノ)及び1.667μg/mlのTCZ−Dig(モノ)を含む捕捉/検出溶液の225μLを添加し、その後、それぞれのサンプルの25μLを加えた。結果として得られるTCZ−Bi(モノ)及びTCZ−Dig(モノ)の濃度は、各々1.5μg/mlであり、オリゴマーヒトIgGは50μg/mlの濃度を有していた。添加されたMTPは、蒸発を防止するために被覆し、一晩インキュベートした。プレインキュベーションプレートの各ウェルの100μLの2通りを、ストレプトアビジンコーティングされたマイクロタイタープレート(SA−MTP)のウェルに移し、被覆し、1時間にわたりインキュベートした。
【0168】
洗浄後、25mU/mLの濃度を伴うポリクローナル抗Dig Fab−HRP複合体を、各ウェルに100μLの容量で加え、1時間インキュベートした。洗浄後、ABTS調製済み溶液を、各ウェルに100μLアリコートで加え、約10〜15分間、振盪しながらインキュベートした。色生成反応のシグナルを、405nm波長(参照波長:490nm)でELISAリーダーにより測定した。各血清サンプルの吸光度値を3通りに測定した。最も高い標準は、1.8〜2.2の間の任意単位(AU)の光学密度(OD)に達しなくてはならない。得られたODのデータを、サンプル濃度を算出するために、非線形4パラメーター適合「Wiemer Rodbard」により標準検量曲線を生成するために使用した。サンプルは、濃度の回収が、特異性カットポイント未満である場合、ADAに陽性として確認された。
【0169】
カットポイントを決定するために、RD(リウマチ性疾患)を伴う患者の35の未処理の血清を、両方のアッセイにおいて測定した。
図5及び6に示す通り、TCZ−Bi(モノ)及びTCZ−Dig(モノ)を伴う干渉抑制された抗薬物抗体ELISAと比較し、干渉抑制された抗薬物抗体ELISAにおける血清のシグナル間の変動は高かった。
【0170】
さらなる評価のために、TCZ処置されたRA患者からの77の異なる血清サンプルを、干渉抑制ADAアッセイの両方の変異体を用いて分析した。全てのサンプルが、TCZ処置の前(ベースライン)に採取されたため、TCZに対するADAは存在しないはずである。カットポイントよりも高いシグナルは、処置薬物(TCZ)に対するADAと関係のない推定(偽陽性)を示しうる。
【0171】
マルチラベルTCZを用いたアッセイ(
図7)では、モノラベルTCZを用いたアッセイ(
図8)よりも多くのシグナル変動が示された。見て分かる通り、この変動はシステムの体系的セットアップではないが(単純に、Y軸上でのシフトでありうる)、しかし、それは、得られたシグナルのバンド幅における増加である。これらのアッセイ特異的なカットポイントを使用し、干渉抑制された薬物耐性ADAアッセイ(モノ)におけるほぼ全てのサンプルが、カットポイントを下回っている。マルチアッセイにおいて測定されたほとんど全てのサンプルが、カットポイントを上回っている。