特許第6563916号(P6563916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563916ターボ機械部品を組み立てる方法、および当該方法において使用されるアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563916
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ターボ機械部品を組み立てる方法、および当該方法において使用されるアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/00 20060101AFI20190808BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20190808BHJP
   F01D 9/02 20060101ALI20190808BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F02C7/00 D
   F01D25/00 X
   F01D9/02 101
   B29C45/16
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-526680(P2016-526680)
(86)(22)【出願日】2014年7月17日
(65)【公表番号】特表2016-531231(P2016-531231A)
(43)【公表日】2016年10月6日
(86)【国際出願番号】FR2014051832
(87)【国際公開番号】WO2015007994
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月20日
(31)【優先権主張番号】1357078
(32)【優先日】2013年7月18日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァタン エリック レモン ジャン
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0108427(US,A1)
【文献】 特開2002−003648(JP,A)
【文献】 特開2008−196385(JP,A)
【文献】 特開平09−123172(JP,A)
【文献】 特許第4657690(JP,B2)
【文献】 特開昭53−069210(JP,A)
【文献】 特開2002−113735(JP,A)
【文献】 特開2002−299356(JP,A)
【文献】 特開2005−254735(JP,A)
【文献】 特開2001−138024(JP,A)
【文献】 特開2008−202599(JP,A)
【文献】 特開2001−207998(JP,A)
【文献】 特開2004−124941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
F04D 29/54
B29C 45/16
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械の第一部品とターボ機械の第二部品を組み立てる方法であって、
可加硫エラストマを、前記第一部品と前記第二部品の結合部における注入部(140)に注入する工程と、
前記可加硫エラストマを加硫するために前記注入部(140)を局所加熱する工程と、を備えており
前記局所加熱する工程は、前記第一部品と前記第二部品を支持するための支持体(22)、および局所加熱システムを備えているアセンブリ(20)を使用して行なわれ、
前記局所加熱システムは、加熱部(27)を備えており、
前記加熱部(27)は、局所加熱が行なわれている間、前記注入部(140)に面するように前記支持体(22)と関連付けられている、
方法。
【請求項2】
前記第一部品と前記第二部品は、組立後にターボ機械の案内羽根(100)を形成する二つの環状部品である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アセンブリ(20)は、前記注入する工程においても支持体として用いられる、
請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記局所加熱する工程は、前記第一部品と前記第二部品上における前記注入部(140)の付近に予め配置された加熱素子を使用して行なわれる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記局所加熱する工程は、前記注入部(140)に熱風を吹き付けるシステム(50)、レーザを照射するシステム、マイクロ波を照射するシステムのような遠隔加熱システムを使用して行なわれる、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記可加硫エラストマは、RTVシリコンと称される常温で加硫されうるシリコン(145)である、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ターボ機械の第一部品とターボ機械の第二部品の結合部における注入部(140)に可加硫エラストマを注入して加硫することにより当該第一部品と当該第二部品を組み立てるためのアセンブリ(20)であって、
前記第一部品と前記第二部品を支持するための支持体(22)と、
加熱部(27)を備えている局所加熱システムと、
を備えており、
前記加熱部(27)は、局所加熱が行なわれている間、前記注入部(140)に面するように前記支持体(22)と関連付けられている、
アセンブリ(20)。
【請求項8】
前記局所加熱システムは、前記加熱部(27)を実現するために、加熱液を流す回路、加熱抵抗、ペルチエ効果システム、および誘電コイルを含むグループから選ばれた加熱手段を含んでいる、
請求項に記載のアセンブリ(20)。
【請求項9】
前記第一部品と前記第二部品のアセンブリをセンタリングするように構成および配置された環状のセンタリング壁を形成することにより、前記局所加熱システムは、前記支持体(22)上に一体化されている、
請求項またはに記載のアセンブリ(20)。
【請求項10】
組立てが完成することにより、ターボ機械の案内羽根(100)のアセンブリの支持体を形成する、
請求項に記載のアセンブリ(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械部品を組み立てる分野に関する。
【0002】
ターボ機械の製造には、複数の組立工程が必要である。そのうちの幾つかは、特に時間とエネルギーを消費する。
【0003】
本発明は、ターボ機械部品を組み立てる方法、および当該方法において使用されるアセンブリに関する。
【背景技術】
【0004】
シリコンのように常温で加硫されうる加硫エラストマは、二つのターボ機械部品を組み立てるのに使用されうる。
【0005】
そのようなアセンブリは、以下に列挙された工程を含むターボ機械部品の組立方法により得られる。
・第一部品と第二部品を支持体上に組み付ける。
・シリコンのように常温で加硫されうる加硫エラストマを、第一部品と第二部品の結合部における選択された領域に注入する。
・支持体、第一部品、および第二部品を、100℃の乾燥室内に約1時間入れておく。
・支持体、第一部品、および第二部品を冷却する。
・第一部品と第二部品のアセンブリを分解する。
【0006】
上記の方法は、常温における加硫よりも迅速にエラストマを加硫できるが、多くの短所が存在する。
【0007】
組み付けられる部品が大きく、特に重い場合、支持体と二つの部品を加熱するために使用される乾燥室は、エネルギーを消費する。さらに、この種の重い部品の冷却に要する時間は2時間を超え、4時間に達する場合がある。なお、支持体および組付け対象の全部品をオペレータが乾燥室に入れ、取り出す作業が必要であることも忘れてはならない。当該部品が大きく重い場合、そうした作業はオペレータにとって困難である。
【0008】
乾燥室の代わりに加熱室を用いる加熱工程を行なう方法も知られている。そのような加熱室は、支持体のカバーあるいは支持体上に配置されたブランケットにより形成される。当該カバーまたはブランケットは、エラストマを加硫するように支持体および組付け対象部品を加熱する加熱システムを備えている。
【0009】
そのような加熱システムは、支持体および組付け対象部品の取扱いに係る問題を緩和しはするものの、加硫に使用されるエネルギーと加熱・冷却時間に係る問題は変わりない。
【0010】
なお、上述した問題は、複数の羽根が既に固定されている内側シェルと外側シェルから案内羽根を組み立てる場合において、当該内側シェルと外側シェルの質量と寸法に起因して特に顕著となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許第2958323号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、これらの短所を克服することを目的とする。
【0013】
本発明の目的の一つは、従来よりもエネルギー消費の少ない加硫工程を含む組立方法を提供することである。
【0014】
本発明の目的の一つは、従来よりも冷却工程の継続時間が短い加硫工程を含む組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の目的を達成するために、本発明が関連するターボ機械の第一部品とターボ機械の第二部品を組み立てる方法は、
好ましくはRTVシリコンと称されるシリコンのような常温で加硫されうる可加硫エラストマを、前記第一部品と前記第二部品の結合部における注入部に注入する工程と、
前記可加硫エラストマを加硫するために前記注入部を局所加熱する工程と、
を備えている。
【0016】
可加硫エラストマを加硫するために注入部を局所加熱する工程は、注入部を局所的に加熱することにより、第一部品と第二部品の過加熱を防ぐ工程である。
【0017】
上記の組立方法によれば、注入部の加熱に要するエネルギーさえ提供すればよい。結果として、従来の方法よりも大幅にエネルギー消費が低くなるだけでなく、加熱時間や冷却時間が短くなる。
【0018】
前記第一部品と前記第二部品は、組立後にターボ機械の案内羽根を形成する二つの環状部品でありうる。
【0019】
第一部品は、案内羽根の内側シェルでありうる。第二部品は、案内羽根が既に組み付けられている外側シェルから形成されうる。
【0020】
第一部品が案内羽根の内側シェルであり、第二部品が羽根であってもよい。
【0021】
案内羽根に用いられる部品は特に大きな質量を有するため、組み立てられる部品が上記の場合において、エネルギーおよび組立時間の観点から上記の方法は特に有益である。
【0022】
前記局所加熱する工程は、前記第一部品と前記第二部品用の支持体、および局所加熱システムを備えているアセンブリを使用して行なわれうる。前記局所加熱システムは、加熱部を備えている。前記加熱部は、局所加熱が行なわれている間、前記注入部に面するように前記支持体と関連付けられている。
【0023】
上記のアセンブリは、特に効率的な局所加熱を提供しうる。加熱部が直接注入部に面するからである。
【0024】
前記アセンブリは、前記注入する工程においても支持体として用いられうる。
【0025】
この場合、注入工程後に第一部品と第二部品からなるアセンブリを取り扱う必要がない。これにより、時間が節約されるとともに、作業者にとって特に困難な工程が省略されうる。
【0026】
前記局所加熱する工程は、前記第一部品と前記第二部品上における前記注入部の付近に予め配置された加熱素子を使用して行なわれうる。
【0027】
上記加熱素子は、注入工程において使用される従来の支持体に対して直接的に局所加熱工程を行ないうる。したがって、第一部品と第二部品から形成されたアセンブリを分解する必要がない。
【0028】
局所加熱工程において、加熱素子は、注入部に面する表面を有しているターボ機械の第一部品と第二部品のいずれかに接触されうる。
【0029】
前記局所加熱する工程は、前記注入部に熱風を吹き付けるシステム、レーザを照射するシステム、マイクロ波を照射するシステムのような外部の加熱システムを使用して行なわれうる。
【0030】
上記の外部加熱システムにより、局所加熱工程は、注入工程において使用される従来の支持体上の部品の位置を変えることなく行なわれうる。したがって、第一部品と第二部品から形成されたアセンブリを分解する必要がない。
【0031】
本発明は、ターボ機械の第一部品とターボ機械の第二部品の結合部における注入部に可加硫エラストマを注入して加硫することにより当該第一部品と当該第二部品を組み立てるためのアセンブリにも関連する。当該アセンブリは、
支持体と、
加熱部を備えている局所加熱システムと、
を備えており、
前記加熱部は、局所加熱が行なわれている間、前記注入部に面するように前記支持体と関連付けられている。
【0032】
上記のアセンブリは、第一部品を第二部品に組み付ける手段を提供しうる。当該手段は、可加硫エラストマの注入工程と局所加熱工程において使用されうる。
【0033】
前記局所加熱システムは、前記加熱部を実現するために、加熱液を流す回路、加熱抵抗、ペルチエ効果システム、および誘電コイルを含むグループから選ばれた加熱手段を含んでいる。
【0034】
局所加熱を行なう上記のような加熱手段の設置に必要な空間は比較的小さい。したがって、当該手段は、本発明に係るアセンブリと容易に一体化されうる。
【0035】
例えば前記第一部品と前記第二部品のアセンブリをセンタリングするように構成および配置された環状のセンタリング壁を形成することにより、前記局所加熱システムは、前記支持体上に一体化されうる。
【0036】
上記の支持体は、ベースを備えうる。当該ベースからは局所加熱システムの環状支持壁が延びる。局所加熱システムは、環状壁に沿って設置される。ベースは、注入部に面する加熱部に対して第一部品と第二部品のアセンブリをセンタリングするよう寸法と配置が定められる。
【0037】
上記の支持体は、第一部品と第二部品のアセンブリをセンタリングするための壁の内部に加熱システムを含みうる。
【0038】
上記のアセンブリは、組立てが完成することにより、ターボ機械の案内羽根のアセンブリの支持体を形成しうる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】発明の第一実施形態に係る組立方法に使用されるアセンブリを示す。熱伝導液によって加熱が行なわれる。組み立てられる二部品は支持体上に配置されている。
図2】発明の第二実施形態に係る組立方法に使用されるアセンブリを示す。加熱抵抗によって加熱が行なわれる。組み立てられる二部品は支持体上に配置されている。
図3】第三実施形態に係る組立方法における局所加熱工程を示す。加熱ストリップが使用される。
図4】第四実施形態に係る組立方法における局所加熱工程を示す。一定位置における温風吹付けが行なわれる。
図5】第五実施形態に係る組立方法における局所加熱工程を示す。回転する温風吹付けが使用される。
【0040】
同一、同様、あるいは同等の部品については、比較を容易にするために図面間で同じ参照番号が付与されている。
【0041】
図示されている部品の縮尺は、見やすさを優先し、図面間で同一であるとは限らない。
【0042】
複数の可能性(実施形態および変形)は、相互に相容れないものではなく、相互に組み合わせられうる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、実施形態例の詳細な説明を読むことによってより良く理解される。当該説明は、添付の図面を参照しつつ、限定的でない情報を提供する。
【0044】
図1は、ターボ機械の案内羽根100を組み立てるためのアセンブリ20を示している。案内羽根100は、内側シェル110と外側シェル120から成り、複数の羽根130が予め取り付けられている。
【0045】
そのようなアセンブリ20は、案内羽根100の組立てにおいて使用される。組立ては、以下の工程を含んでいる。
・外側シェル120を内側シェル110に取り付ける。複数の羽根130における外側シェル120と反対側の端は、シェル110において対応する複数の穴に収容される。
・内側シェル110と外側シェル120のアセンブリを、アセンブリ20上に載せる。
・注入カバー30をアセンブリ20上に載置することにより、外側シェル120に設けられた羽根130と内側シェル110の結合部における注入部140を閉塞する。
・RTVシリコンの名称で知られるような常温で加硫されうるシリコン145を注入する。
・注入部140を局所的に加熱することにより、シリコン145を加硫して羽根130と内側シェル110の結合部を封止する。
【0046】
このような案内羽根100の組立方法は、局所加熱工程を除いて特許文献1に記載されている。したがって、本明細書においては、局所加熱工程以外の工程については具体的な特徴を詳述しない。
【0047】
このような組立方法は、内側シェル110内の羽根130を封止するために用いられることが可能であり、ターボ機械におけるロータとステータのアセンブリにおける摩耗封止機能を提供する。
【0048】
アセンブリ20は、支持体22とセンタリング・加熱用のリング25を備えている。
【0049】
支持体22は、ベース23と、リング25を支持するための環状壁24を備えている。ベース23は、概ね円盤形状であり、その外径は、外側シェル120の直径以上である。環状壁24は、ベース23から延びる円筒形状であり、その外径は、内側シェル110の外径よりも小さい。
【0050】
リング25は、環状壁24の径方向外側に取り付けられるように構成されている。そのため、リング25の内径は、環状壁24の外径よりも僅かに大きい。環状壁24に対向するリング25の外形状は、注入されたシリコン145の流れを制限してシリコン145を所望の形状にするように構成されている。また、リング25の外形状は、内側シェル110のアセンブリ20への取り付け時においてセンタリングを行なうガイド機能を奏する。これにより、内側シェル110は、アセンブリ20に取り付けられる際に、リング25によって外側シェル120に対してセンタリングされうる。
【0051】
なお、本発明の一変形例においては、上記の支持体22は、複数のリング25と組み合わせられうる。各リング25は、案内羽根100の種別に対応する外形状を有している。そのような実施形態は、複数種の案内羽根100に対して単一の支持体22を使用することを可能にする。
【0052】
リング25は、加熱装置26を備えている。加熱装置26は、熱伝導液回路からなる。加熱装置26は、リング25に内蔵されている。これにより、リング25は、アセンブリ20が内側シェル110と外側シェル120のアセンブリを支持する際に、注入部140に面する加熱部27を区画する。
【0053】
加熱装置26は、加熱手段を構成する。リング25は、局所加熱系を構成する。
【0054】
図示しない本発明の一変形例においては、リング25は、熱電対のような温度測定系を含みうる。このような温度測定系は、シリコン145を加硫するために加熱装置26が注入部140を正確に加熱しているかを確認する上で特に有利である。
【0055】
図示しない本発明の有利な一変形例においては、リング25は、二つの異なる材料から形成されうる。一方は、断熱材料であり、特に支持体22と接触するリング25の内面を形成する。他方は、熱伝導材料である。これにより、リング25の加熱部27は、比較的均一な温度となる。
【0056】
注入カバー30は、内側シェル110と外側シェル120が組み付けられた後でアセンブリ20に配置される。これにより、注入カバー30は、注入部140を閉塞する。結果として、注入部140は、リング25の外面、内側シェル110、および注入カバー30によって区画される。これにより、注入部140への注入工程により形成されるシールの形状が完全に定まる。
【0057】
第一の実施形態に係るアセンブリ20によれば、局所加熱工程において加熱された熱伝導液が熱伝導液回路内を循環され、加熱部27が注入されたシリコン145を加硫する温度になる。特にRTVシリコンの場合、熱伝導液の温度は、例えば60℃とされうる。局所加熱工程において、当該熱伝導液は、約30分間、熱電動液回路内を循環されうる。
【0058】
このような加熱装置26によれば、注入部140を強制冷却するために熱伝導液回路を使うこともできる。局所加熱工程において熱伝導液を循環させた後、強制冷却を行なうために、注入部140の温度よりも低い温度の液体が循環されうる。
【0059】
図2は、本発明の第二実施形態に係るアセンブリ20を示している。本実施形態に係るアセンブリ20において、加熱装置26は抵抗加熱回路である。本実施形態に係るアセンブリ20は、熱伝導液回路が抵抗加熱回路で置き換えられている点において、第一実施形態に係るアセンブリ20と異なる。
【0060】
このようなアセンブリ20は、利用目的も異なる。本実施形態に係るアセンブリ20は、局所加熱工程後に注入部140を強制冷却するようには構成できないからである。
【0061】
図示しない本発明の一変形例においては、加熱装置26は、ペルチエ効果システムや誘電コイルとされてもよい。熱伝導液回路と同様にして、ペルチエ効果システムは、強制冷却を行なうように構成されうる。誘電コイルをリング25に内蔵する場合、当該誘電コイルに電流を発生させるために誘電電流発生手段も必要である。
【0062】
上記二つの実施形態の一変形例においては、アセンブリ20は、単一の支持体22、内側シェル110と外側シェル120のアセンブリをガイドおよびセンタリングするための環状壁24に加え、注入部に面する加熱部を構成する加熱装置27を備えうる。
【0063】
図3は、第三実施形態に係る組立法における局所加熱工程を示している。局所加熱は、羽根130上の注入部140付近に配置された加熱素子40により行なわれる。加熱素子40は、注入部140を局所的に加熱するために、注入部140に十分近づけて配置されることを要する。この第三実施形態に係る組立法は、リング25を使用せず、加熱工程においてリング25に内蔵された熱伝導液回路26ではなく加熱素子40を使用している点で、第一実施形態に係る組立法と異なる。
【0064】
したがって、この第三実施形態においては、アセンブリ20は、支持体22のみを備えている。環状壁24は、内側シェル110と外側シェル120のアセンブリをアセンブリ20に取り付ける際に内側シェル110を案内して内側シェル110と外側シェル120のアセンブリをセンタリングするように構成されている。環状壁24の外面形状は、注入されたシリコン145の流れを制限してシリコン145を所望の形状にするように構成されている。
【0065】
この第三実施形態においては、加熱素子40は、加熱ストリップである。その温度は、シリコン145を加硫するために適切な温度となるように制御される。例えばRTVシリコンの場合、当該温度は60℃でありうる。
【0066】
第三実施形態に係る局所加熱工程は、以下のサブ工程を含む。
・羽根130における注入部140付近に加熱素子40を配置する。
・注入部140を局所的に加熱するために加熱素子40を使用する。
【0067】
羽根130に加熱素子40を配置している間、当該加熱素子40は、注入部140に面する表面を有している内側シェル110に接触する。よって、加熱素子40が配置されている間、加熱素子40より内側シェル110へ伝えられる熱の大部分は、内側シェル110の当該表面を通じて注入部140に加えられる。このようにして加熱が行なわれることにより、注入部140が局所的に加熱される。
【0068】
図4は、第四実施形態に係る組立法における局所加熱工程を示している。局所加熱は、注入部140へ熱風50を吹き付けることにより行なわれる。この第四実施形態に係る方法は、羽根130上に配置された加熱素子40を使用せず、図示しない遠隔の加熱系により局所加熱が行なわれる点において、第三実施形態に係る方法と異なる。
【0069】
このような局所加熱工程は、例えば、シリコン145を加硫するために注入部140へ熱風50を吹き付ける送風フードを使用することにより行なわれうる。この送風フードは、据置型の送風システムであってもよいし、注入部140に面している支持体22の上方にオペレータによって配置される送風装置であってもよい。
【0070】
図5は、第五実施形態に係る組立法における局所加熱工程を示している。局所加熱は、注入部140に沿って回転移動する熱風50を吹き付けることにより行なわれる。この第五実施形態に係る方法は、熱風50の流れが注入部140に集中的に向けられ、注入部140全体をカバーできるように自由に移動できる点において、第四実施形態に係る方法と異なる。
【0071】
このように集中された熱風50の流れは、可動吹き付けノズルが装着された送風装置により提供されうる。当該吹き付けノズルは、局所加熱工程の間、注入部140に対向配置されるように構成されている。これにより、熱風50は、注入部140へ集中的に向けられる。この吹き付け工程の間、当該吹き付けノズルは、注入部140全体をカバーするように、注入部140に沿って円弧を描くように動かされる。この吹き付けノズルの動きにより、回転する熱風が提供される。
【0072】
別実施形態においては、熱風50の代わりにレーザ照射やマイクロ波放射によって遠隔加熱がなされうる。このような遠隔加熱手段に係る制約は熱風50の場合と同様であるため、本明細書ではこれ以上の詳細な説明は行なわない。
【0073】
上記の実施形態においては、第一部品と第二部品は案内羽根100の内側シェル110と外側シェル120であるが、加硫されうるエラストマの注入を伴うのであれば、当該エラストマがシリコン145であるかに依らず、上記の方法が他のターボ機械の部品の組立てに適用可能であることは明らかである。
【0074】
すなわち、本発明は、RTVシリコン以外の加硫可能なエラストマを用いるターボ機械部品の組立方法に適用されうる。
図1
図2
図3
図4
図5