特許第6563922号(P6563922)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563922ホスファチジルコリンを含む噴霧可能な局部用キャリアー及び組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563922
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ホスファチジルコリンを含む噴霧可能な局部用キャリアー及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/24 20060101AFI20190808BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20190808BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/7036 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/4174 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/4196 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/14 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 33/40 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/60 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/196 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/455 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/167 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/593 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/5578 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/445 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 33/04 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/4412 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/203 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/327 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/7056 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/194 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/568 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/565 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/05 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 38/095 20190101ALI20190808BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/26 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/35 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/40 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/23 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 8/44 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61K47/24
   A61K47/14
   A61K47/10
   A61K9/08
   A61Q19/00
   A61K31/7036
   A61K31/65
   A61K31/351
   A61K31/4174
   A61K31/496
   A61K31/4418
   A61K31/137
   A61K31/4196
   A61K31/5375
   A61K31/522
   A61K31/662
   A61K31/045
   A61K31/155
   A61K31/14
   A61K33/40
   A61K31/573
   A61K31/616
   A61K31/60
   A61K31/196
   A61K31/192
   A61K31/165
   A61K31/455
   A61K31/167
   A61K31/593
   A61K38/13
   A61K31/436
   A61K31/138
   A61K31/5578
   A61K31/445
   A61K33/04
   A61K31/4412
   A61K31/506
   A61K31/203
   A61K31/327
   A61K31/7056
   A61K31/194
   A61K31/198
   A61K31/568
   A61K31/565
   A61K31/05
   A61K38/095
   A61P31/04
   A61P17/00
   A61K8/26
   A61K8/35
   A61K8/49
   A61K8/41
   A61K8/37
   A61K8/40
   A61K8/23
   A61K8/34
   A61K8/44
【請求項の数】18
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2016-528893(P2016-528893)
(86)(22)【出願日】2014年11月6日
(65)【公表番号】特表2016-537339(P2016-537339A)
(43)【公表日】2016年12月1日
(86)【国際出願番号】SE2014051313
(87)【国際公開番号】WO2015072909
(87)【国際公開日】20150521
【審査請求日】2017年10月23日
(31)【優先権主張番号】1300710-9
(32)【優先日】2013年11月14日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】512112035
【氏名又は名称】リピドール エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100164563
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 貴英
(74)【代理人】
【識別番号】100065651
【弁理士】
【氏名又は名称】小沢 慶之輔
(72)【発明者】
【氏名】ヘルスロフ,ベングト
(72)【発明者】
【氏名】ホルムベック,ヤン
【審査官】 伊藤 清子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−308750(JP,A)
【文献】 特開2008−195712(JP,A)
【文献】 特表2012−516841(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
A61K 31/00−33/44
A61K 38/00−38/58
A61P 17/00
A61P 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2重量%〜15重量%又は20重量%又は25重量%又は30重量%又は40重量%のホスファチジルコリン;
2重量%〜15重量%又は20重量%又は25重量%のモノグリセリド;及び
2重量%〜15重量%又は20重量%又は25重量%又は30重量%のC1−C3アルコールの脂肪酸エステル;
を含み
残部は揮発性溶媒である、局部投与用の薬学的又は化粧品用キャリアーであって、
前記揮発性溶媒は、少なくとも25重量%の濃度のエタノールを含み、そして前記揮発性溶媒は任意に、
i) 20重量%又は30重量%又は40重量%又は50重量%までのC3−C4アルコール;
ii) 50重量%又は60重量%又は75重量%までの揮発性シリコーン油;
iii) 1重量%までの酸化防止剤、着色料、付臭剤、保存料及び変性剤
の1つ又はいくつかを含む、局部投与用の薬学的又は化粧品用キャリアー。
【請求項2】
前記ホスファチジルコリンは、天然品のホスファチジルコリン又は合成品のホスファチジルコリンである、請求項1に記載のキャリアー。
【請求項3】
前記ホスファチジルコリンは、少なくとも50重量%のホスファチジルコリンを含む、大豆、ヒマワリ又は菜種由来の濃縮リン脂質;ジオレオイルホスファチジルコリン;及びジミリストイルホスファチジルコリンからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のキャリアー。
【請求項4】
前記モノグリセリドは、モノアシルグリセロールと、ジグリセリド及び/又はトリグリセリドとの混合物を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキャリアー。
【請求項5】
前記モノグリセリドは、40重量%以上のC8−C10モノアシルグリセロールを含む中鎖モノグリセリド、及び50重量%以上のモノオレイルグリセロールを含むモノオレインからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキャリアー。
【請求項6】
上記エタノールの量が20〜90重量%の範囲内である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャリアー。
【請求項7】
上記C3−C4アルコールの量が1〜20重量%の範囲内にある、請求項1〜のいずれか1項記載のキャリアー。
【請求項8】
上記揮発性シリコーン油の量が10〜55重量%の範囲内にある、請求項1〜のいずれか1項記載のキャリアー。
【請求項9】
上記変性剤の量が2重量%までである、請求項1〜のいずれか1項記載のキャリアー。
【請求項10】
揮発性シリコーン油がデカメチルシクロペンタシロキサンである、請求項1〜のいずれか1項記載のキャリアー。
【請求項11】
a)90重量%又は95重量%又は98重量%から99.999重量%までの請求項1〜10のいずれか1項記載のキャリアー;及び
b)0.001重量%又は0.1重量%から2重量%又は5重量%まで、又は例外的に10重量%までの少なくとも1種の薬学的活性薬剤
を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
上記少なくとも1種の薬学的活性薬剤が、抗菌剤(antibacterial agent)、例えばオキシテトラサイクリン、フシジン酸、ゲンタマイシン(gentamycine)、ムピロシン(mupirocin)、レタパムリン(retapamulin)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗真菌剤(antimycotic agent)、例えばナイスタチン(nystatin)、クロトリマゾール(clotrimazole)、ミコナゾール(miconazole)、エコナゾール(econazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、ビフォナゾール(bifonazole)、イミダゾールとトリアゾール誘導体との組み合わせ、シクロピロックス(ciclopirox)、テルビナフィン(terbinafine)、フルコナゾール(fluconazole)、およびアモロリフィン(amorolfine)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗ウィルス剤(antiviral agent)、例えばアシクロウィル(acyclovir)、バラシクロウィル(valaciclovir)、ペンシクロウィル(penciclovir)、ファムシクロウィル(famciclovir)、フォスカルネット(foscarnet)(3ナトリウムホスホンホルメート・6水和物)およびドコサノール(docosanol)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);防腐剤(antiseptics)、例えばクロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウムおよび過酸化水素;抗炎症剤(anti-inflammatory agents)(グルココルチコイド類)、例えばヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、クロベタゾン(clobetasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベータメタゾン(betamethasone)、モメタゾン(mometasone)、およびクロベタゾール(clobetasol)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);消炎剤(antiphlogistics)/鎮痛剤(analgesics)、例えばアセチルサリチル酸、サリチル酸、ジクロフェナック(diclofenac)、ケトプロフェン(ketoprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、カプサイシン(capsaicin)及びニコチン酸エステル(nicotinate)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);かゆみ止め剤(antipruritics)、例えばグルココルチコイド類、例えばヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、クロベタゾン(clobetasone)、クロベタゾール(clobetasol)、デソニド(desonide)、モメタゾン(mometasone)およびベータメタゾン(betamethasone);および局部麻酔剤、例えばリドカイン(lidocaine)およびプリロカイン(prilocaine)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);乾癬治療薬(antipsoriatic agents)、例えばカルシポトリオール(calcipotriol)、カルシトリオール(calcitriol)、7−デヒドロコレステロール、コレカルシフェロール(cholecalciferol)、マキサカルシトール(maxacalcitol)、ドキセルカルシフェロール(doxercalciferol)、パリカルシトール(paricalcitol)、イネカルシトール(inecalcitol)、エルデカルシトール(eldecalcitol)、ベータメタゾン(betamethasone)及びサイクロスポリン(cyclosporine)A(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体); 湿疹及びアトピー性皮膚炎の治療剤;タクロリムス(tacrolimus)及びピメクロィムス(pimecrolimus)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗緑内障薬(antiglaucomateous agents)、例えばチモロール(timolol)、ベタキソロール(betaxolol)、ラタノプロスト(latanoprost)、ビマトプロスト(bimatoprost)及びトラボプロスト(travoprost)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);局部麻酔剤、例えばリドカイン(lidocaine)、プリロカイン(prilocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、メピバカイン(mepivacaine)、ブピバカイン(bupivacaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、ベンゾカイン(benzocaine)及びテトラカイン(tetracaine)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);勃起障害用薬剤、例えばアルプロスタジル(alprostadil)(プロスタグラジンE1)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);フケ防止剤、例えば硫化セレン、ピロクトンオレアミン(piroctone oleamine)及びケトコナゾール(ketoconazole);抗脱毛剤、例えばミノキシジル(minoxidil)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);ニキビ抑制剤、例えばトレチノイン(tretinoin)(レチノイン酸)、イソトレチノイン(isotretinoin)、アダパレン(adapalene)、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン(clindamycin )、アゼライン酸及びニアシナミド(niacinamide)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);傷治癒剤、例えばパントテイン酸、デキサパンテノール(dexpanthenol)及びフシジン酸(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);ステロイドホルモン類、例えばプレドニソン(prednisone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、テストステロン(testosterone)、エストラジオール(estradiol)、ジスチルベストロール(distilbestrol);及びペプチドホルモン類、例えばオキシトシン(oxytocin)、LL-37、DPK-060及びPXL-01(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体)から成る群から選ばれる、請求項11の組成物。
【請求項13】
上記少なくとも一種の薬学的活性薬剤が、カルシポトリオール、ベータメタゾン(又はそのエステル)、ヒドロコルチゾン(又はそのエステル)、フロ酸モメタゾン及び/又はジクロフェナック(又はそのエステル)から成る群から選ばれる、請求項11の組成物。
【請求項14】
a)90重量%又は95重量%又は98重量%から99.999重量%までの請求項1〜10のいずれか1項記載のキャリアー;及び
b)0.001重量%又は0.1重量%から2重量%又は5重量%まで、又は例外的に10重量%までの1種又はそれ以上の化粧学的活性薬剤
を含む、化粧用組成物。
【請求項15】
上記少なくとも1種の化粧学的活性剤が、制汗剤、例えば塩化水酸化アルミニウム(アルミニウムクロロハイドレート);日光遮断剤、例えばアボベンゼン、ベモトリジノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、オクチサレート、オクトクリレン、オキシベンゾン;日焼け剤、例えばジヒドロキシアセトン;昆虫除去剤、例えばDeet;角質溶解剤、例えばグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、サリチル酸、アラントイン、尿素及びイオウ;フケ取り剤;流動促進剤;及び湿潤剤、例えばグリセロール、ソルビトール、デキサパンテノール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、尿素及び乳酸から成る群から選ばれる、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
上記1種又はそれ以上の化粧学的活性薬剤が、尿素、グリコール酸、乳酸、グリセロール、プロピレングリコール及びデキサパンテノールから成る群から選ばれる、請求項14記載の組成物。
【請求項17】
2%までの変性剤を含む、請求項1416のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
請求項1116のいずれか1項記載の組成物、及び任意に推進ガスを含むスプレー具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的及び/又は化粧学的活性薬剤用のキャリアー、並びに該キャリアーと該薬学的又は化粧学的活性薬剤とを含む、局部投与用の薬学的及び化粧用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
局部投与用の薬学的組成物には、2種類がある:1種は薬学的活性剤を健康な又は疾患のある皮膚に投与して皮膚上及び/又は皮膚の1層又はそれ以上の層上でその効果を生じさせることを目的とし、他の種類は、皮膚を通して薬学的活性剤を運ぶことを目的とする。化粧用組成物は、健康な皮膚に局部的に投与しそして皮膚上でそれらの効果を生じるように設計されている。
【0003】
特許文献1は、リン脂質、揮発性シリコーン油、及び低級アルコールを含む又はこれらから実質的に成る脂質キャリアー組成物を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2011/056115
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、人又は動物の皮膚に薬学的若しくは化粧学的活性薬剤を局部的に投与するための液体の薬学的若しくは化粧用組成物であって、容易に投与可能であり且つ皮膚上で密着した脂質層を形成可能な該薬学的若しくは化粧用組成物を提供することである。上記組成物は、皮膚に適用すると下記の特徴の1つ又はそれ以上を奏するのが望ましい:
−皮膚に適用して構築された皮膚の保護バリヤーを、それが損傷した場合に再構築する;及び/又は
−皮膚への刺激がない。
【0006】
本発明の別の目的は、人又は動物の皮膚に投与するための薬学的若しくは化粧学的活性薬剤用のキャリアーを提供すること、及び該活性薬剤を該キャリアーに混入して、局部用薬学的若しくは化粧用組成物を形成する方法を提供することである。本発明の更なる目的は、下記の発明の概要、実施例の形態で記載されたその好ましい態様、及び添付の特許請求の範囲から明らかであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、ホスファチジルコリン、モノグリセリド、C1−C3アルコールの脂肪酸エステル、及びエタノールを含む揮発性溶媒から実質的になる局部投与用の薬学的若しくは化粧品用キャリアーが開示される。該キャリアーは、酸化防止剤、着色料、付臭剤,保存料、及び変性剤から成る群から選ばれる1員又はそれ以上の部員を任意に含んでもよい。
【0008】
更に詳しくは、本発明の局部投与用の薬学的若しくは化粧品用キャリアーは、実質的に:ホスファチジルコリン;モノグリセリド;C1−C3アルコールの脂肪酸エステル;及びエタノール、エタノールとC3−C4アルコール、エタノールと揮発性シリコーン油、エタノールとC3−C4アルコールと揮発性シリコーン油、から成る群から選ばれる揮発性溶媒;から実質的に成り、該キャリアーは酸化防止剤、着色料、付臭剤,保存料及び変性剤から成る群の1員又はそれ以上の員を任意に含む。
【0009】
本発明のホスファチジルコリンは天然品でも合成品でもよい。天然のホスファチジルコリンには、大豆(大豆レシチン、大豆−PC、例えばリポイド S 100 リポイド S 75)、ヒマワリ又は菜種からの濃縮リン脂質であって、少なくとも50重量%のホスファチジルコリンを含み、残部は主として他の極性脂質(例えばホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール及びガラクトリピド)及びアシルグリセロール類(モノアシルグリセロール、ジアシルグリセロール及びトリアシルグリセロール)であるものが含まれる。合成のホスファチジルコリンの例には、ジオレオイルホスファチジルコリン及びジミリストイルホスファチジルコリンが含まれる。
【0010】
本願で、「皮膚上に」は皮膚の最外層、角質層、を含む。本発明の薬学的又は化粧用組成物は、角質層内の間隙を含む皮膚への局部塗布用に設計されている。
【0011】
本願開示によると、「ベヒクル」は「キャリアー」と同意語である。
【0012】
本発明に使用するのに適した市販のモノグリセリドは、モノアシルグリセロールとジグリセリド(ジアシルグリセロール)及び/又はトリグリセリド(トリアシルグリセロール)との混合物を含む。モノグリセリドの例には、限定的でないが、40重量%以上のC8-C10モノアシルグリセロールを含む中鎖モノグリセリド、及び50重量%以上のモノオレイルグリセロールを含むモノオレインが含まれる。本発明の好ましい脂肪酸エステルは、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オレイン酸エチル及びラウリン酸メチルである。
【0013】
エタノールに加えて、本発明の揮発性溶媒は、C3−C4アルコールの1種以上、例えばイソプロパノール及びn−ブタノール、及び揮発性シリコーン油、例えばシクロメチコン5−NF(デカメチルシクロペンタシロキサン)、及び/又は、好ましくはないがドデカメチルシクロヘキサシロキサン及び/又はデカメチルテトラシロキサン、を含み得る。揮発性溶媒の全ての成分は、1気圧で250℃までの沸点を有し得る揮発性シリコーン油以外は、周囲圧(1気圧)で200℃又はそれ未満の沸点を有する。好ましい揮発性シリコーン油は、1気圧で180−250℃の範囲の沸点を有する。
【0014】
本発明の薬学的キャリアーに、薬学的活性薬剤の1種又はそれ以上を添加し得、これにより局部投与用の薬学的組成物が形成される。本発明の組成物は、活性薬剤を皮膚に効率よく伝達することを意図され、薬学的薬剤の経皮伝達に意図されてなく、有効でもない。本発明の1種以上の薬学的活性薬剤は、下記から成る群から選ばれる:抗微生物剤、抗生物質;抗真菌剤(antimycotic agent);抗菌剤;抗真菌剤(antifungal agent);抗ウィルス剤;防腐剤;消炎剤;かゆみ止め剤;乾癬治療薬;鎮咳剤;抗脱毛剤;抗にきび剤;抗炎症剤;消炎剤;鎮痛剤;抗潰瘍剤;局部麻酔剤及び免疫反応変更剤。
【0015】
更に詳しくは、本発明の薬学的活性薬剤は、下記から選ばれる:抗菌剤(antibacterial agent)、例えばオキシテトラサイクリン、フシジン酸、ゲンタマイシン(gentamycine)、ムピロシン(mupirocin)、レタパムリン(retapamulin)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗真菌剤(antimycotic agent)、例えばナイスタチン(nystatin)、クロトリマゾール(clotrimazole)、ミコナゾール(miconazole)、エコナゾール(econazole)、ケトコナゾール(ketoconazole)、ビフォナゾール(bifonazole)、イミダゾールとトリアゾール誘導体との組み合わせ、シクロピロックス(ciclopirox)、テルビナフィン(terbinafine)、フルコナゾール(fluconazole)、およびアモロリフィン(amorolfine)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗ウィルス剤(antiviral agent)、例えばアシクロウィル(acyclovir)、バラシクロウィル(valaciclovir)、ペンシクロウィル(penciclovir)、ファムシクロウィル(famciclovir)、フォスカルネット(foscarnet)(3ナトリウムホスホンホルメート・6水和物)およびドコサノール(docosanol)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);防腐剤(antiseptics)、例えばクロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウムおよび過酸化水素;抗炎症剤(anti-inflammatory agents)(グルココルチコイド類)、例えばヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、クロベタゾン(clobetasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、ベータメタゾン(betamethasone)、モメタゾン(mometasone)、およびクロベタゾール(clobetasol)(およびそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);消炎剤(antiphlogistics)/鎮痛剤(analgesics)、例えばアセチルサリチル酸、サリチル酸、ジクロフェナック(diclofenac)、ケトプロフェン(ketoprofen)、イブプロフェン(ibuprofen)、ナプロキセン(naproxen)、カプサイシン(capsaicin)及びニコチン酸エステル(nicotinate)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);かゆみ止め剤(antipruritics)、例えばグルココルチコイド類、例えばヒドロコルチゾン(hydrocortisone)、クロベタゾン(clobetasone)、クロベタゾール(clobetasol)、デソニド(desonide)、モメタゾン(mometasone)およびベータメタゾン(betamethasone);および局部麻酔剤、例えばリドカイン(lidocaine)およびプリロカイン(prilocaine)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);乾癬治療薬(antipsoriatic agents)、例えばカルシポトリオール(calcipotriol)、カルシトリオール(calcitriol)、7−デヒドロコレステロール、コレカルシフェロール(cholecalciferol)、マキサカルシトール(maxacalcitol)、ドキセルカルシフェロール(doxercalciferol)、パリカルシトール(paricalcitol)、イネカルシトール(inecalcitol)、エルデカルシトール(eldecalcitol)、ベータメタゾン(betamethasone)及びサイクロスポリン(cyclosporine)A(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体); 湿疹及びアトピー性皮膚炎の治療剤;タクロリムス(tacrolimus)及びピメクロィムス(pimecrolimus)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);抗緑内障薬(antiglaucomateous agents)、例えばチモロール(timolol)、ベタキソロール(betaxolol)、ラタノプロスト(latanoprost)、ビマトプロスト(bimatoprost)及びトラボプロスト(travoprost)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);局部麻酔剤、例えばリドカイン(lidocaine)、プリロカイン(prilocaine)、ロピバカイン(ropivacaine)、メピバカイン(mepivacaine)、ブピバカイン(bupivacaine)、レボブピバカイン(levobupivacaine)、ベンゾカイン(benzocaine)及びテトラカイン(tetracaine)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);勃起障害用薬剤、例えばアルプロスタジル(alprostadil)(プロスタグラジンE1)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);フケ防止剤、例えば硫化セレン、ピロクトンオレアミン(piroctone oleamine)及びケトコナゾール(ketoconazole);抗脱毛剤、例えばミノキシジル(minoxidil)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);ニキビ抑制剤、例えばトレチノイン(tretinoin)(レチノイン酸)、イソトレチノイン(isotretinoin)、アダパレン(adapalene)、過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン(clindamycin )、アゼライン酸及びニアシナミド(niacinamide)(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);傷治癒剤、例えばパントテイン酸、デキサパンテノール(dexpanthenol)及びフシジン酸(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体);ステロイドホルモン類、例えばプレドニソン(prednisone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、トリアムシノロン(triamcinolone)、フルドロコルチゾン(fludrocortisone)、テストステロン(testosterone)、エストラジオール(estradiol)、ジスチルベストロール(distilbestrol);ペプチドホルモン類、例えばオキシトシン(oxytocin)、LL-37、DPK-060及びPXL-01(並びにそれらの薬学的許容塩およびそれらの誘導体)。
【0016】
一態様によると、少なくとも一種の薬学的活性薬剤は、カルシポトリオール、ベータメタゾン(又はそのエステル)、ヒドロコルチゾン(又はそのエステル)、フロ酸モメタゾン及び/又はジクロフェナック(又はそのエステル)である。
【0017】
本発明の酸化防止剤は、酸化によりその成分が劣化するのを阻止するあらゆる追加の成分である。酸化防止剤は、限定的でないが下記のもので例示される:還元剤、例えばチオール、アスコルビン酸又はポリフェノール;遊離基除去剤、例えばトコフェノール類(ビタミンE)及びトコトリエノール類;金属イオン封鎖剤、例えばEDTA及びリン酸塩類;又は有機酸、例えば酢酸、グリコール酸又は乳酸。当業者は、どの着色料、付臭剤及び保存料が本発明のキャリアーに適するか理解する。
【0018】
本願で定義される変性剤は、本発明の組成物をヒトの消費に魅力をなくする薬剤又は薬剤混合物である。変性剤の例は、フタル酸のエステル、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、安息香酸デナトニウム、3−メチル−シクロペンタデカノン、酢酸エチル及びそれらの組み合わせ。C3−C4アルコールは該変性剤の一部で有り得るが、本願の文脈では、本願に記載する揮発性溶媒に含まれる。投与に便利な室温(20℃)で、本発明のキャリアー及び組成物は単一相の均質液体である。それらは皮膚にスプレー掛けで投与するのが好ましい。投与には、液体組成物の局部投与に適したスプレーポンプを使用できる。揮発性溶媒が皮膚から蒸発すると、その上に密着層が残る。このようにして形成された層は脂っぽい感触がなく、皮膚を通っての水分損失を低減させ、そして保護用の皮膚バリヤーが損傷されていると、再構築する。
【0019】
本発明のキャリアー及び組成物は健康なヒトの皮膚及び炎症を起こしたヒトの皮膚に十分に適用可能である。
【0020】
本発明のキャリアー及び組成物の非揮発性成分は、上記溶媒の蒸発後、皮膚を通っての水分損失を低減させる、連続した単相の層を皮膚上に形成する。
【0021】
本発明の組成物に含まれる薬学的活性薬剤は、局部処置に適する皮膚疾患の治療に適した、いかなる薬剤であってもよい。
【0022】
本発明の組成物は、特に炎症性疾患、例えばアトピー性皮膚炎、の治療に適する。ヒドロコルチゾンは紅斑の治療に好ましい薬学的活性薬剤であり、本発明のキャリアーに混入することができ、そして本発明の組成物に含ませることができる。ジオフェナックは皮膚の炎症の治療に好ましい別の薬学的活性薬剤であり、本発明のキャリアーに混入することができ、そして本発明の組成物に含ませることができる。
【0023】
本発明の薬学的組成物は乾癬の治療にも特に有用である。カルシポトリオール(calcipotriol)は乾癬の治療に好ましい薬学的活性薬剤であり、本発明のキャリアーに混入することができ、そして本発明の組成物に含ませることができる。
【0024】
本発明の第1の観点によると、
ホスファチジルコリン;
モノグリセリド;
C1−C3アルコールの脂肪酸エステル;及び
エタノール;エタノールとC3−C4アルコール;エタノールと揮発性シリコーン油;エタノールとC3−C4アルコールと揮発性シリコーン油;から成る群から選ばれる揮発性溶媒;
から実質的に成り、酸化防止剤、着色料、付臭剤,保存料及び変性剤から成る群の1員又はそれ以上の部員を任意に含み得る局部投与用の薬学的又は化粧品用キャリアーが提供される。
【0025】
本発明の一態様によると、上記キャリアーは:
2又は5重量%〜15又は20又は25又は30又は40重量%のホスファチジルコリン;
2又は5重量%〜15又は20又は25重量%のモノグリセリド;
2又は5重量%〜15又は20又は25又は30重量%のC1−C3アルコールの脂肪酸エステル
を含み、残部は少なくとも25%の濃度のエタノールであり、該エタノールは任意に、
i) 20又は30又は40又は50重量%までのC3−C4アルコール;
ii) 50又は60又は75重量%までの揮発性シリコーン油;
iii) 1重量%までの酸化防止剤、着色料、付臭剤,保存料及び変性剤
の1つ又はいくつかを含む。
【0026】
本発明の一態様によると、キャリアー中のエタノールの量は、20〜90重量%の範囲内である。
【0027】
本発明の一態様によると、キャリアー中のC3−C4アルコールの量は、1〜20重量%の範囲内である。
【0028】
本発明の別の態様によると、キャリアー中のエタノールは、50重量%までのイソプロパノールを含む。
【0029】
更に別の態様によると、本発明のキャリアー中の揮発性シリコーン油の量は、10〜55重量%の範囲内である。
【0030】
本発明の一態様によると、上記キャリアーは、2重量%までの変性剤を含む。
【0031】
デカメチルシクロペンタシロキサンは本発明のキャリアーの好ましい揮発性シリコーン油である。
【0032】
本発明の薬学的組成物は実質的に:
a)90又は95又は98重量%から99.999重量%までの本発明の薬学的キャリアー;及び
b)0.001又は0.1重量%から2又は5重量%まで、又は例外的に10重量%までの少なくとも1種の薬学的活性薬剤
から成る。
【0033】
好ましい一態様によると、本発明の薬学的組成物は、
a)90又は95又は98重量%から99.999重量%までの下記から成るキャリアー(a):
2又は5重量%〜15又は20又は25又は30又は40重量%のホスファチジルコリン;
2又は5重量%〜15又は20又は25重量%のモノグリセリド;
2又は5重量%〜15又は20又は25又は30重量%のC1−C3アルコールの脂肪酸エステル
残部は少なくとも25%の濃度のエタノールであり、該エタノールは任意に、
i) 20又は30又は40又は50重量%までのC3−C4アルコール;
ii) 50又は60又は75重量%までの揮発性シリコーン油;
iii) 1重量%までの酸化防止剤、着色料、付臭剤,保存料及び変性剤の1つ又はいくつかを含む、及び
b)0.001又は0.1重量%から2又は5重量%まで、又は例外的に10重量%までの少なくとも1種の薬学的活性薬剤、
から成り、ここで上記組成物中のキャリアー及び少なくとも1種の薬学的活性薬剤の重量部は合計100%である。
【0034】
一態様によると、上記薬学的組成物は、2%までの変性剤を含む。
【0035】
デカメチルシクロペンタシロキサンは本発明の組成物の好ましい揮発性シリコーン油である。
【0036】
本発明の化粧用組成物は実質的に:
a)90又は95又は98重量%から99.999重量%までの本発明の化粧品用キャリアー;及び
b)0.001又は0.1重量%から2又は5重量%まで、又は例外的に10重量%までの1種又はそれ以上の化粧学的活性薬剤
から成る。
【0037】
上記組成物中のキャリアー及び1種以上の化粧学的活性薬剤の重量部は合計100%である。
【0038】
好ましい一態様によると、本発明の化粧用組成物は、
a)90又は95又は98重量%から99.999重量%までの下記から成るキャリアー(a):
2又は5重量%〜15又は20又は25又は30又は40重量%のホスファチジルコリン;
2又は5重量%〜15又は20又は25重量%のモノグリセリド;
2又は5重量%〜15又は20又は25又は30重量%のC1−C3アルコールの脂肪酸エステル、
残部は少なくとも25%の濃度のエタノールであり、該エタノールは任意に、
i) 20又は30又は40又は50重量%までのC3−C4アルコール;
ii) 50又は60又は75重量%までの揮発性シリコーン油;
iii) 1重量%までの酸化防止剤、着色料、付臭剤,保存料及び変性剤の1つ又はいくつかを含む、及び
b)0.001又は0.1重量%から2又は5重量%まで、又は例外的に10重量%までの少なくとも1種の化粧学的活性薬剤、
から実質的に成り、ここで上記組成物中のキャリアー及び少なくとも1種の化粧学的活性薬剤の重量部の合計は100%である。
【0039】
一態様によると、上記化粧用組成物は、2%までの変性剤を含む。
【0040】
本発明の一態様によると、上記薬学的組成物は、50%までのイソプロパノールを含む。
【0041】
デカメチルシクロペンタシロキサン及びデカメチルテトラシロキサンは本発明の化粧用組成物の好ましい揮発性シリコーン油である。
【0042】
本発明の化粧学的活性剤は、本発明の化粧品用キャリアーに混入可能な化粧品の用途に適したいかなる薬剤であってもよい。本発明の好ましい化粧学的活性剤には下記が含まれる:
制汗剤、例えば塩化水酸化アルミニウム(アルミニウムクロロハイドレート);日光遮断剤、例えばアボベンゼン、ベモトリジノール、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイルヘキシルベンゾエート、オクチサレート、オクトクリレン、オキシベンゾン;日焼け剤、例えばジヒドロキシアセトン;昆虫除去剤、例えばDeet;角質溶解剤、例えばグリコール酸;乳酸;リンゴ酸;サリチル酸;アラントイン;尿素及びイオウ;フケ取り剤;流動促進剤;及び湿潤剤、例えばグリセロール、ソルビトール、デキサパンテノール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、尿素及び乳酸。
【0043】
本発明の一態様によると、1種又はそれ以上の化粧学的活性薬剤は、尿素、グリコール酸、乳酸、グリセロール、プロピレングリコール及びデキサパンテノールから選ばれる。
【0044】
本発明の薬理学的若しくは化粧用組成物は、キャリアー中又は該キャリアー中の1種又はそれ以上の成分中に薬学的若しくは化粧学的活性薬剤を溶解し、次いでキャリアー成分を混合することにより、該キャリアーを調製することができる。
【0045】
本発明の一態様によると、スプレー具は、本発明の組成物と任意に推進ガスとを含む。
【発明を実施するための形態】
【0046】
材料及び方法
実施例に使用される脂質
【0047】
実施例に使用されるアルコールは、エタノール99.9%(”EtOH”,VWR)、2−プロパノール(イソプロパノール、HPLC等級、ラスバーン(Rathburn))、及び2−ブタノール(ReagentPlus(登録商標、シグマ−アルドリッヒ社(Sigma-Aldrich))であった。実施例で使用したシリコーン油は、シクロメチコンーン5−NF(“5−NF”ダウコーニング、デカメチルシクロペンタシロキサン)及びデカメチルテトラシロキサン(“DMTS”、ダウコーニング)であった。
【0048】
配合実験(CAS Nos.を有する)で使用した薬理学的及び化粧学的活性薬剤及び添加剤は、アダパレン(106685-40-9)、アスコルビン酸(50-81-7), ベンゾカイン(94-36-0),ジプロピオン酸ベタメタゾン(5593-20-4), ニコチン酸ベンジル(94-44-0), 吉草酸ベタメタゾン(2152-44-5), ブチルヒドロキシトルエン(128-37-0), カルシポトリオール (112965-21-6), カプサイシン(404-86-4), クエン酸(77-92-9), クリンダマイシン(clindamycin)ヒドロクロリド(21462-39-5), クルクミン(458-37-7), デキサパンテノール(81-13-0), ジクロフェナックナトリウム(15307-79-6), 硝酸エコナゾール(24169-02-6), グリコール酸(79-14-1), ヒドロコルチゾン(50-23-7), 酢酸ヒドロコルチゾン(50-03-3), イブプロフェン(15687-27-1), ケトプロフェン(22071-15-4), 乳酸(50-21-5), ニコチン酸メチル(93-60-7), ミノキシジル(38304-91-5), フロ酸モメタゾン(mometasone furoate)(83919-23-7), ムピロシン(mupirocin)(12650-69-0), ナプロキセン(naproxen)(22204-53-1), 酢酸オキシトシン(50-56-6), ペプチドLL-37 (ヒトカセリシジン(human cathelicidin)), プロピレングリコール(57-55-6), サリチル酸(69-72-7), フシジン酸ナトリウム(751-94-0), タクロリムス(tacrolimus)(104987-11-3), テルニナフィン(terbinafine)ヒドロクロリド(78628-80-5), 尿素(57-13-6)及びビタミンD3 (コレカルシフェロール(cholecalciferol), 67-97-0)であった。ペプチドLL-37 はリポペプチドエービー(Lipopeptide AB) (スエーデン、ソルナ)からのもので、その他の全てはシグマ−アルドリッヒ社からのものであった。
【0049】
配合実験は次の一般的手順に従って行った。脂質を秤量し、そしてエタノール又はエタノールと本発明の他のアルコールとの混合物中に溶解した。いくつかの実験で、脂質の完全な溶解は、浴型超音波器中で約30−40℃で短時間の超音波処理により促進した.前もって秤量した量の活性薬剤及び添加剤をベヒクルに加えた。本発明によると、用語「ベヒクル」は「キャリアー」と同意語である。いくつかの実験で、上記混合物を透明な溶液が形成されるまで静かに加熱しそして超音波処理した。脂質のアルコール溶液を場合によっては揮発性シリコーン油で希釈した。このようにして得られた黄色ないし褐色を帯びた溶液を気密ガラス瓶中で室温にて保存した。
【0050】
従来の薬学的組成物及びキャリアー、並びに本発明の組成物の、ヒトの皮膚に対する影響を、視覚検査により、又はDermaLab Combo及びDSM II 着色計(コルテックス テクノロジー(Cortex Technology), デンマーク)を使用して紅斑インデックスを測定することにより、観察した。
【0051】
ニコチン酸メチル誘発紅斑の測定を、当業界で知られた方法(Bonina F P et al., In vitro and in vivo evaluation of polyoxyethylene esters as dermal prodrugs of ketoprofen, naproxen and diclofenac. Europ J Pharm Sci 14 (2001) 123-134; Duval C et al., Difference among moisturizers in affecting skin susceptibility to hexyl nicotinate, measured as time to increase skin blood flow. Skin Res Techn 9 (2003) 59-63; Wiren K et al., Enhancement of bioavailability by lowering of fat content in topical formulations. Br J Dermat 160 (2009) 552-556)に従って、皮膚バリヤー機能及び活性成分の伝達に対するベヒクルの影響を研究するために使用した。ニコチン酸メチル(いくつかのケースではニコチン酸ベンジル)のアルコール又はグリセロール/水溶液を皮膚の領域に、試験配合物での予備処理後に、又は該配合物を塗布した後に、塗布した。皮膚の色を、活性色検出チップに基づき測定した。ここでは、照明は白色LEDで与えられそして測定したパラメータ(紅斑インデックス、E.I.)は皮膚の赤みに対応する(Bonina F P 外, 上記)。曲線下の面積(AUC)を,測定したE.I.とベースラインとの間の面積として計算した。
本発明を下記の非限定的実施例で記述する。
【実施例】
【0052】
実施例1:皮膚を本発明のキャリアーで12日間閉鎖して処置したことによる紅斑の発生
紅斑発生を、2つのヒト研究で評価した。第1の研究で、種々のキャリアーの皮膚刺激潜在力を評価した。33人の健康なボランティアは試験配合物、及び正負の対照物をみっぺい条件下で受け取った。試験物を1週間当たり5日塗布し、刺激等級を12日後、4段階評価インデックス(0=反応なし;1=僅かな広範囲の部分的紅斑;2=明瞭な、はっきり区切られた紅斑;3=硬化を伴う激しい紅斑;4=硬化及び/又は表皮損傷を伴う重度の紅斑)に従って採点した。異なる処置についての平均評価インデックスを表1に提示する。
【0053】
負の対照ペトロタラム及び2種のホスファチジルコリン含有ベヒクル(C及びD)については、紅斑発生が殆ど観察されなかったが、IPM(A)及びMCM(B)含有ベヒクルについては、僅かに高い平均評価インデックスが見られた。正の対照、ドデシル硫酸ナトリウム0.25%、については。3.0の平均評価インデックスが得られた。
【0054】
カルシポトリオール組成物の尋常性乾癬(plaque psoriasis)に対する効果を評価することを主な目的とする第2の研究で、脂質キャリアーの悪い反応をも監視した。試験手順及び処置スケジュールは第1の研究と同じであり、患者数は24であった。12日間の処置後、本発明のベヒクルEを受け取ったどの患者にも、紅斑は観察されなかったが、第1の研究で、ペトロタラム及び本発明に含まれない他のキャリアー(A〜D)で処置した患者の幾人かには僅かな紅斑が観察された。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例2:種々の脂質ベヒクルの塗布によるニコチン酸エステル誘発紅斑の発現
円形領域(3.5cm)を健康な男性の両方の前腕の手のひら部分にマーク付けした。皮膚の色のベースライン測定(紅斑インデックス、E.I.)を該試験領域に行った。ニコチン酸メチルの0.2%エタノール溶液5μl及びその後ベヒクル5μlを該試験領域にマイクロピペットを使用して均等に分布させた。E.Iを約2時間測定した。本発明のキャリアー8はキャリアー7及び9に関して紅斑インデックスを減少させた。これらのデータは、ミリスチン酸イソプロピルとモノグリセリドとホスファチジルコリンの組み合わせ(キャリアーG)は紅斑形成を抑制することを示す。
【0057】
【表2】
【0058】
実施例3:ヒドロコルチゾン組成物で皮膚予備処理した後の紅斑発現
ヒドロコルチゾン組成物での皮膚予備処理の、その後のニコチン酸エステル誘発紅斑への効果を研究した。円形領域(3.5cm)を健康な男性の両方の前腕の手のひら部分にマーク付けした。5μlの従来技術のヒドロコルチゾン組成物(軟膏)及び本発明の組成物を試験領域にマイクロピペットを使用して均等に分布させた。該組成物で2時間予備処理した後、皮膚の色のベースライン測定(紅斑インデックス、E.I.)を該試験領域に行った。ニコチン酸メチルの0.4%エタノール溶液5μlを該試験領域に塗布して紅斑を誘発し、次いで2時間にわたってE.I.を測定した。本発明の組成物は、市販の軟膏と比較して、紅斑発現を抑制した。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例4:ベヒクルと比較したジクロフェナック配合物による紅斑治療
ニコチン酸メチル誘発紅斑を有する領域に対するジクロフェナック組成物での治療の効果を、対応するキャリアーの効果と、実施例2に記載の手順と同様の手順を使用して比較した。全ての組成物はそれらのベヒクルよりも紅斑を減少させた(表5)。ホスファチジルコリン、ミリスチン酸イソプロピル及び中鎖モノグリセリドを含む本発明の組成物2は、最も高い紅斑低減効果を示した。本発明の対応するキャリアー(キャリアー2)はキャリアー1及び3よりも紅斑を減少させた。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例5:公知の市販組成物と比較したジクロフェナック組成物による紅斑治療
実施例2に記載の手順と同様の手順を使用して、ニコチン酸ベンジル誘発紅斑を有する領域をジクロフェナック組成物で処置し、そしてボルタレン(登録商標)ゲル(11.6mg/ml)と比較した。本発明の組成物C2及びC4はボルタレン(登録商標)ゲルよりも紅斑を減少させた(表5)。
【0063】
【表5】
【0064】
実施例6:ヒドロコルチゾン組成物及びケトプロフェン組成物による紅斑治療
実施例2に記載の手順と同様の手順を使用して、ニコチン酸メチル誘発紅斑を有する領域を本発明のヒドロコルチゾン組成物及び市販の軟膏で処置した。本発明の組成物は市販製品よりも良い効果を与えた(表6)。同様に、本発明のケトプロフェン組成物を市販の親水性ゲル製品と比較した。本発明の組成物は公知の製品よりも僅かに良い効果を与えた(表6)。
【0065】
【表6】
【0066】
実施例7:カルシポトリオール配合物での治療後の尋常性乾癬試験
臨床研究で、本発明のカルシポトリオール組成物(C6)を市販のカルシポトリオール組成物(Daivonex,登録商標)及びホスファチジルコリンを欠く対応する組成物と比較した。本発明の組成物C6は最も高い乾癬低減の結果となった(表7)。
【0067】
【表7】
【0068】
実施例8:本発明のキャリアー及び組成物の例
本発明のキャリアーの例を表8に示す。
【0069】
【表8】
【0070】
本発明の薬学的組成物の例を表9−17に、そしてキャリアーの例を表18に示す。
【0071】
【表9】
【0072】
【表10】
【0073】
【表11】
【0074】
【表12】
【0075】
【表13】
【0076】
【表14】
【0077】
【表15】
【0078】
【表16】
【0079】
【表17】
【0080】
【表18】
【0081】
本発明の化粧用組成物の例No.i)〜xi)を表19に示す。
【0082】
【表19】
【0083】
実施例9:本発明のキャリアー及び比較用キャリアーの塗布後のニコチン酸エステル誘発紅斑の発現
円形領域(3.5cm)を健康な男性の両方の前腕の手のひら部分にマーク付けした。該試験領域に、皮膚の色のベースライン測定(紅斑インデックス、E.I.)を行った。18mmフィルターペーパーを、水/グリコール混合物(4:1)中のニコチン酸メチルの0.20%溶液160μlに浸した。該フィルターペーパーを、18mmフィンチャンバーポリプロピレン被覆チャンバー中に置き、該試験領域に5分間取り付けた。20分後、表18からの本発明のキャリアーVIII及び表20に掲げた比較用キャリアーをそれぞれ10μl、マイクロピペットを使用して該試験領域に均等に分布させた。E.I.を約2時間監視した。△E.I.の曲線下の平均面積(AUC)を比較用キャリアーI,J,K,L,M及びN、及び本発明のキャリアーVIIIについて計算した。結果を表20に示す。本発明のキャリアーVIIIは全ての比較用キャリアーと比較して、より低い紅斑反応を与えた。
【0084】
【表20】