(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料、例えばポリカーボネートは、設計の自由度、軽量化、及び改善された安全性に対する需要が高い、自動車、運輸、及び建築用ガラス用途などの種々の用途において、構造材として使用するための、ガラス代替品として有望である。しかしながら普通のポリカーボネート基板は、耐摩耗性、耐薬品性、耐UV性、及び耐候性の欠如によって制約を受けるため、上記の用途におけるこれらの制約を緩和する、光学的に透明なコーティング(被覆)で保護する必要がある。
【0003】
ポリマー材料に対して耐摩耗性を付与するために、ポリカーボネート基板は一般に、加熱硬化性のシリコーンハードコートで被覆される。他方、ポリカーボネートの不十分な耐候性は、シリコーンハードコート層に有機又は無機のUV吸収剤を添加することによって対処される。しかしながら、UV吸収剤、特に有機系のそれを加熱硬化性のシリコーン層に取り入れると、多くの場合に耐摩耗性能の劣化を招く。
【0004】
有機系のUV吸収剤の使用に伴う耐摩耗性能の制限に対処するための1つの手法は、有機系の吸収剤に代えて、少なくとも部分的に無機系のUV吸収剤を使用することである。期待される利点は、シリコーンハードコート中に多量の有機系物質を添加することを回避し、それによって耐摩耗性能を損なわずに維持することである。加えて、有機系のUV吸収剤と比較して、無機系のUV吸収剤が光安定性及び酸化安定性であることから、無機系のUV吸収剤の使用は潜在的に、長期間にわたる耐候性を達成する一助となりうる。
【0005】
プラスチック基板に対してUV保護及び耐摩耗性をもたらすことができ、それらを屋外用途へと投入することを可能にする、ハードコート組成物がこれまで開示されてきている。コーティング配合物に取り入れられた有機系UV吸収剤が、コーティングに対して耐候性をもたらす。しかしながら、有機系吸収剤に固有の光分解及び揮発性によって、長期間の間には、これらのコーティングの耐候性挙動は制限を受ける。また、有機系UV吸収剤をプライマー配合物に添加すると、可塑化効果によって、プライマーのガラス転移温度(Tg)は低下されうる。これは、被覆された物品が供用されている間に曝され得る最大温度を制限することになる。酸化セリウム、酸化チタン、及び酸化亜鉛のような無機金属酸化物の粒子は、コーティング配合物にUV保護をもたらすことができる。しかしながら、コーティングマトリックス中に粒子を取り込むと、粒径の大きさ(直径>200nm)及び粒子とマトリックスの間での屈折率の(RI)の不一致が大きいことから、コーティングの透明性に対して負の影響を及ぼしうる。市販の無機ナノ粒子は水性媒体中にあるものとして入手可能であるが、こうしたゾルを非水系のポリマー材料/コーティング配合物に取り入れると、多くの場合に粒子の凝集が生ずる状況となり、その結果コーティング配合物は不安定になる。
【0006】
従って、コロイド分散物の形態の無機系UV吸収剤を有機系のコーティング組成物中へと取り入れることは、コーティング組成物中にコロイド状シリカを存在させる、させないに関わらず、技術的に困難である。この困難性は、無機系のUV吸収剤分散物の長期的な安定性を得るという能力、即ち無機系UV吸収剤のコロイド状粒子の凝集を阻止する能力に関連している。高濃度の無機ナノ粒子の安定な分散物は、最大のUV遮蔽性能と良好な被膜均一性をもたらす一方で、透明性と耐摩耗性を維持する。例えばEP0732356A2は、酸化セリウムの水性ゾルから導かれた酸化セリウムオルガノゾルの使用と、アクリル系プライマー配合物への酸化セリウムナノ粒子の取り込みを開示している。この従来技術は、有機ポリマー溶液中で酸化セリウムナノ粒子を安定化させるために、配合物中に共溶媒として水が必要であることを開示している。EP0732356A2はその実施例において、セリアに対する水の重量比が0.09又はより多い、PMMA含有配合物を開示している。また着目されるべきことに、固形分が少なく(2.3%)水分量が少ない(<1.6%)PMMA含有配合物は、ヘイズ(曇り)のあるプライマーフィルムをもたらすことが示されている。固形分含量がより高い配合物(≧5.9%)も開示されているが、提示された実施例はすべて高い水分含量(≧4.0%)を有しており、高い固形分含量と低い水分含量のプライマー配合物溶液から形成されたコーティングについては、何の情報も開示されていない。実用的な用途については、固形分含量が高く水分含量が少ないプライマー配合物が好ましい。加えて、安定なコーティング溶液が記載されており、透明でヘイズが少なく薄いフィルムを成型するのに用いられているが、コーティング配合物の貯蔵安定性の長さや、長期にわたる水への浸漬暴露におけるポリカーボネートに対する付着の堅牢性については、何の情報も与えられていない。屋外暴露を必要とする用途においてコーティングが有用とみなされるためには、こうした性能挙動は一般に重要であると考えられる。考慮すべき重要なことであるが、水はPMMA及び他の多くのアクリル系ポリマーに対して逆溶媒であり、従ってポリマー樹脂が溶液から沈澱するのを防止するためには、プライマー配合物中における水の濃度を制限することが重要である。
【0007】
かくして、本発明者らの知る限り、当技術分野で現在入手可能なものよりも容易に製造できる構成でもって、典型的な耐摩耗性及び長期の屋外耐候性をもたらすのに有効な、ポリマー基板用の保護コーティング方法及び組成物に対する、継続的なニーズが存在している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は、表面修飾無機ナノ粒子をコーティング組成物中にUV吸収剤として使用し、在来の有機系UV吸収剤を置き換えることを対象としている。この無機ナノ粒子はその表面を官能化シランで修飾し、凝縮なしにコーティング中に均一に分散させることによって、プライマーマトリックスと相溶化されており、かくして最終的な被覆基板の光学特性に対する負の影響を最小限にすると共に、長期のコーティング溶液貯蔵寿命を提供する。最終的な被覆基板は、良好な光学特性と並んで、過酷な試験条件下での良好な長期付着性を有する。1つの実施形態では、官能性シランは酸化セリウムの表面を修飾するために用いられ、安定なナノ酸化セリウムゾルは、有機媒体中で調製される。得られるプライマーコーティングはシリコーントップコートと共に、自動車や建築物のガラスといった用途に必要とされるような通常条件及び過酷条件の下で、高い透過率、低いヘイズ、及びポリカーボネート基板に対する良好な付着性を示す。
【0027】
ナノ粒子は一般に、1から数百ナノメートルの範囲にある寸法を有する粒子として定義できる。透明な被覆用途については、コーティングを通過する光を散乱しないように、ナノ粒子のサイズは所定の限度未満であるべきである。一般に理解されているところでは、直径がλ/2未満のナノ粒子はλの光を散乱せず、ここでλは光の波長であって、従ってナノ粒子が取り込まれているマトリックスの透明性を妨害することはない。それゆえ、直径<190nmの粒子は、コーティングフィルムを通過する可視光線の透過又はヘイズを妨害することなしに、透明被覆において使用できる可能性がある。
【0028】
本発明のプライマー組成物は、(a)有機官能性シラン部分で表面修飾された金属酸化物ナノ粒子;(b)有機ポリマー;及び(c)1又はより多くの溶媒を含有する。これらの成分の各々のについて以下に詳しく説明する。
【0029】
本発明の組成物において使用される金属酸化物ナノ粒子は、特に限定されない。適切な例には、酸化セリウムナノ粒子、酸化チタンナノ粒子、酸化亜鉛ナノ粒子、及びこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。1つの実施形態では、金属酸化物ナノ粒子は酸化セリウムナノ粒子である。本発明の組成物において、有機官能性シラン部分で表面修飾された金属酸化物ナノ粒子の量は、すべて組成物の合計重量を基準として、好ましくは約0.1から約10wt%、より好ましくは約0.1から約5wt%、そして最も好ましくは約0.5から約3wt%の範囲にある。なんら特定の理論に拘束されることを望むものではないが、金属酸化物と有機官能性部分との間の結合力の本質は、非共有結合であると考えられる。また個々のシラン部分は、シラン部分に起因する立体反発に基づいて、懸濁液中の表面修飾ナノ粒子に対して物理的安定性を提供するものと考えられる。
【0030】
本発明の組成物中で用いられる有機官能性シラン部分は好ましくは、式IまたはIIの構造を有し:
【化7】
【化8】
【化9】
【0031】
R=同一又は異なる、1〜12のアルキル炭素鎖
R
1は式(I)の下に記載された基であることができ、また−CH
2CH
2CH
2NHCH
2CH
2NH
2のようなアミノ含有基、−CH
2CH
2CH
2NHC(O)OMe、−CH
2CH
2CH
2NHC(O)OEtのようなカルバメート、ビニル基−CH=CH
2、−C(CH3)=CH2、ビニル及びアミド官能性を含むシラン、例えば(MeO)
a(EtO)
3−aSiCH
2CH
2NHC(O)C(CH
3)=CH
2、ビニルエステルシラン、例えば[CH
3C(O)O]
3SiCH
2CH
2CH
2OC(O)C(Me)=CH
2、(i−PrO)
3SiCH
2CH
2CH
2OC(O)C(Me)=CH
2、(CH
3OCH
2CH
2O)
3SiCH=CH
2、(MeO)
3SiCH
2CH
2CH
2NHCH
2CH
2NHCH
2CH
2C(O)OMe、(i−PrO)
3SiCH
2CH
2CH
2OC(O)C(Me)=CH
2、(MeO)
3Si(CH
2)
3NHCH
2CH
2NH(CH
2)
3Si(OMe)
3、(EtO)
3SiCH
2CH
2CH
2OC(O)C(Me)=CH
2並びに、アミノ、カルバメート、エステル、カルボキシレート官能性を含む他のシラン、及びこれらの組み合わせであり、
R
2、R
5=1〜4のアルキル炭素鎖、−CO−CH
3
R
3、R
4、R
6=H又はCH
3
x=1〜50;好ましくは1〜25、より好ましくは5〜15の間
y=1〜50;好ましくは1〜25;より好ましくは2〜15の間
z=1〜50;好ましくは1〜25;より好ましくは5〜15の間
【0032】
幾つかの好ましい実施形態において、有機官能性シラン部分は2−メトキシ(ポリエチレンオキシ)
9−12プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2−[(アセトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]−トリエトキシシラン、トリプロピレングリコールプロピルエーテルカルバメートシラン、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリエチレンオキサイド、トリエチレングリコールモノブチルエーテルカルバメートシラン、メチルトリメトキシシラン、アミノシラン、エポキシ官能化シラン、イソシアネートシラン、アルデヒド含有シラン、メルカプトシラン、ヒドロキシ末端シラン、アクリレートシラン、N−ベータ−(アミノエチル)−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチル−ジメトキシシラン、ジアミノ−アルコキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]−トリメトキシシラン[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]−ジメトキシシラン又は[メトキシ(ポリエチレンオキシ)プロピル]−モノメトキシシラン、及びこれらの組み合わせである。
【0033】
金属酸化物ナノ粒子を表面修飾する有機官能性シラン部分の量は、金属酸化物ナノ粒子の合計重量を基準として、好ましくは約0.1から約50wt%の範囲にあり、より好ましくは、金属酸化物ナノ粒子の合計重量を基準として約5から約30wt%の範囲にある。
【0034】
本発明の有機ポリマー成分は、特に限定されるものではない。本発明の組成物において有用な適切なポリマーには、アルキルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリウレタン、ポリカーボネート、ウレタンヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)、並びにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されるものではない。1つの好ましい実施形態では、有機ポリマーはポリメチルメタクリレートである。本発明の組成物における有機ポリマーの量は、すべて組成物の合計重量を基準として、好ましくは約0.5から約15wt%、より好ましくは約2から約10wt%、そして最も好ましくは約3から約8wt%の範囲にある。
【0035】
有機官能性シラン部分で修飾された金属酸化物ナノ粒子、及び上述した有機(例えばアクリル系)ポリマーに加えて、本発明のプライマー組成物は、溶媒を含む。この溶媒は特に限定されるものではない。例示的な溶媒に含まれるものにはアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、メトキシプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールブチルエーテル、又はこれらの組み合わせがある。他の極性有機溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコールモノプロピルエーテル、及び2−ブトキシエタノールもまた利用可能である。好ましい実施形態では、使用される溶媒は1−メトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコール(DAA)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メトキシプロピルアセテート、ケトン、グリコールエーテル、及びこれらの混合物から選択される1又はより多くである。本発明の組成物における溶媒の量は、すべて組成物の合計重量を基準として、好ましくは約80から約99wt%、より好ましくは約85から約99wt%、そして最も好ましくは約90から約97wt%の範囲にある。本発明の組成物はさらに、任意選択的な追加の添加剤、例えばUV吸収剤、被り防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、界面活性剤、IR吸収剤、及びこれらの組み合わせを含んでよい。
【0036】
有機官能性シランで表面修飾された金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物ナノ粒子と有機官能性シランを適切な溶媒中で混合し、水及び溶媒を例えば真空下に除去して粘稠液体状又はゲル状の残留物を生成し、この残留物を有機溶媒、例えばジアセトンアルコール又は1−メトキシ−2−プロパノールに溶解することによって調製してよい。本発明のプライマー組成物は、表面修飾ナノ粒子、アクリル系ポリマー、及び任意選択成分を、溶媒中で単に混合することによって調製することもできる。成分を混合する順序は重要ではない。混合は当業者に既知の何らかの手段、例えば破砕、混合、撹拌などを通じて達成可能である。さまざまな装荷量で表面修飾ナノ粒子CeO
2を有するプライマー組成物が、数ヶ月又は1年以上にもわたって安定であることが見出された。
【0037】
本発明のプライマー組成物は、ポリマー基板、例えばプラスチック表面上へと、適切に塗工可能である。こうしたプラスチックの例には、アクリル系ポリマーなどの合成有機ポリマー材料、例えばポリ(メチルメタクリレート)など;ポリエステル、例えばポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンテレフタレート)など;ポリアミド、ポリイミド、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエンターポリマー、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンなど、ポリカーボネート、及びコポリカーボネート、高耐熱ポリカーボネートが含まれる。
【0038】
好ましい基板は、ポリカーボネート又はアクリル系樹脂で形成される。ポリカーボネートはその優れた物理的、機械的、及び化学的性質のゆえに、透明基板として特に好ましい材料である。一般に基板の選択は、最終的には予定されている末端用途によって定まる。
【0039】
本発明のプライマー組成物は、基板上に、フローコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング又は当業者に既知の他の方法によって塗工されたならば、例えば蒸発によって溶媒を除去することによって乾燥され、それによって乾燥したコーティングが得られる。溶媒の蒸発を助けるために行うプライマー組成物の加熱は、基板の熱変形温度によって定まる最大温度まで行うことが可能であり、溶媒を含まないプライマー層がもたらされる。
【0040】
本発明のプライマー組成物から形成されるプライマー層は、耐摩耗性トップコート層の基板に対する付着をもたらすのに有効であり、本発明の被覆された物品の一部として使用可能である。かくして本発明の別の実施形態によれば、ポリマー基板、この基板の少なくとも1つの表面上に配置されたプライマー層、及びこのプライマー層上に配置された耐摩耗性シリコーンハードコート層を含む、被覆された物品が提供され、ここで前記プライマー層が本明細書に開示された本発明のプライマー組成物のいずれかから作成される。
【0041】
シリコーンハードコートは、最初にコーティング組成物をプライマー層に対して塗工し、その後組成物を硬化させることによって形成される。このシリコーンハードコート組成物は、特に限定されない。トップコートとして使用してよいコーティング組成物の1つの例は、シロキサノール樹脂/コロイド状シリカ分散物を含有するシリコーンハードコートである。シリコーンハードコートは所望ならば付加的な有機系UV吸収剤を含有してよいが、その添加量は、プライマー層又はハードコート層のいずれにも無機系吸収剤を有していない場合よりも少なくできる。かくして有機系UV吸収剤の量を制限することにより、耐摩耗性が保持され、場合によっては改善されると同時に、耐候性が改善される。
【0042】
以下の実施例は例示的なものであり、ここに開示され特許請求された本発明を限定するものと解釈されるべきではない。明示的に別様に記載しない限り、全ての部及びパーセントは重量基準であり、全ての温度は摂氏である。ここに引用した全ての特許出願、特許、及び他の刊行物は、それらの全体を参照によって取り入れるものとする。
[実施例]
CeO
2ゾルの調製
実施例S−1:ポリエチレンオキシプロピルトリメトキシシラン(PEOシラン)を使用した表面官能化酸化セリウムゾルの調製
【0043】
50gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%水性、2.5%の酢酸で安定化)を、マグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。次いで1.0gのPEOシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社、A1230)を酸化セリウム分散物に滴下して添加し、続いて40gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加した。この溶媒の添加は、反応混合物の温度を25℃から34℃に上昇させた。この反応混合物を12時間撹拌した後、揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去(ストリッピング)した。容器中の残留物が固形分〜50wt%となった時点で、真空ストリッピングを停止した。セリアナノゾルの最終固形分含量は49.76%であり、最終水分含量は26.7%であった。このゾルの色は黄色に表れ、半透明で数ヶ月間安定であった。
実施例S−2:15wt%ポリエチレンオキシプロピルトリメトキシシラン(PEOシラン)のシラン修飾酸化セリウムナノゾルの調製
【0044】
100gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%水性、2.5%の酢酸で安定化)を、マグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。次いで3.0gのPEOシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社、A1230)CeO
2分散物に滴下して添加し、続いて80gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加した。この溶媒の添加は、反応混合物の温度を25℃から34℃に上昇させた。揮発性成分を次いで、50℃で真空下(30mbar)に除去した。容器中の残留物が固形分〜50wt%となった時点で、真空ストリッピングを停止した。セリアナノゾルの最終固形分含量は51.72%であり、最終水分含量は25.6%であった。このゾルの色は黄色に表れ、透明で数ヶ月間安定であった。
実施例S−3:トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)カルバメートシランをベースとするセリアゾルの合成
【0045】
50gの酸化セリウム分散物(ナイヤコール社、20wt%、酢酸塩で安定化、10〜20nm、pH3.0)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。2.0gのトリエチレングリコールモノブチルエーテルをベースとするカルバメートシラン(トリエチレングリコールモノブチルエーテル及びイソシアネートプロピルトリエトキシシランから合成)を滴下して添加し、室温で一晩撹拌した。次いで80gの1−メトキシ−2−プロパノールを混合物に添加し、揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去した。容器中の残留物が固形分〜33wt%となった時点で、真空ストリッピングを停止した。セリアナノゾルの最終固形分含量は32.39%であり、溶液中に水は残っていなかった。ゾルは安定で透明であり、色は薄い黄色であった。
実施例S−4:アセトキシポリエチレンオキシプロピルトリメトキシシランをベースとするセリアゾル
【0046】
20gの酸化セリウム分散物(ナイヤコール社、20wt%、酢酸塩で安定化、10−20nm、pH3.0)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。0.8gのアセトキシポリエチレンオキシプロピルトリメトキシシラン(ゲレスト社)を滴下して添加し、室温で一晩撹拌した。次いで35gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加し、揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去した。容器中の残留物が固形分〜25%となった時点で、真空ストリッピングを停止した。セリアナノゾルは安定な黄色の透明ゾルであり、最終固形分含量は26.59%で溶液中に水は残っていなかった。
実施例S−5:5wt%のγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた表面官能化酸化セリウムゾルの調製
【0047】
100gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%水性、2.5%の酢酸で安定化)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。このCeO
2分散物に対して1.0gのγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(A174モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)を滴下して添加し、続いて80gのエタノールを添加した。混合物を80℃で5時間撹拌した後、揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去した。残った残留物はゲルであり、これはジアセトンアルコールに再溶解可能であって、安定なセリアゾルを与えた。再溶解ゾルの最終固形分2.81wt%であった。このゾルは焦げ茶で、外観は半透明であった。
実施例S−6:20wt%のガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた表面官能化酸化セリウムゾルの調製
【0048】
50gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%、2.5wt%の酢酸で安定化)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。2.0gのγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社、A174)を滴下して添加した。この反応混合物は、添加から5分以内にゲルに変化した。約40gのDowanol(商品名)を反応混合物に添加してゲルを溶解し、揮発性成分を真空下(30mbar)に除去した。真空ストリッピングは、容器内の残留物の固形分が〜15wt%に達するまで継続した。15gのジアセトンアルコールを反応混合物に添加し、減圧下に揮発性成分の除去を継続した。この除去は、容器内の残留物の固形分が20〜22wt%に達した時点で停止した。最終のゾルは固形分22wt%を有し、最終水分含量は24.7%であった。
【0049】
関連する修正プロセスが、より少ない量のDAAでセリアを安定化するのに役立ち、また修飾されたセリアをMPとDAA溶媒の混合物中で良好に安定化した。以下の実施例S−7に示すように、この修正は本質的に、溶媒混合物の除去(ストリッピング)に関する。
実施例S−7:修正された溶媒交換を介する20wt%のガンマ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた表面官能化酸化セリウムゾルの調製
【0050】
200gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%固形分、2.5%の酢酸で安定化)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。8.0gのγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社より、A174)を滴下して添加し、続いて175gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加した。この反応混合物は室温で2時間撹拌したが、その時間の間に不透明なゾルへと変化した。この反応混合物から85gの揮発性物質を、70℃で真空下(290mbar)に除去した。追加で80gの1−メトキシ−2−プロパノールを容器内の残留物に添加し、真空ストリッピングを繰り返して、追加の揮発性成分を除去した。この工程を合計で3回繰り返した後、30gのジアセトンアルコールを添加して、安定な茶色の半透明なセリアゾル(最終収量105g)を得たが、これは47%の最終固形分を有しており、溶液中には水は残っていなかった。ゾル中のセリアナノ粒子の大きさを動的光散乱法を用いて測定した(
図2)。セリア粒子の80%が36nmの平均半径を有していることが観察された。
実施例S−8
【0051】
実施例S−5を繰り返して、ジアセトンアルコール中で茶褐色のセリアゾルを23.6wt%の最終固形分で得た。
実施例S−9:20wt%のN
1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エタン−1,2−ジアミンを用いた表面官能化酸化セリウムゾルの調製
【0052】
20gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%水性、2.5%の酢酸で安定化)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。0.8gのN
1−(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エタン−1,2−ジアミン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社より、A1120)をこのCeO
2分散物に滴下して添加し、続いて20gのメトキシプロパノールを添加した。白色の沈殿物が最初は分散状態で形成され、数分間撹拌した後に、半透明の緑がかったゾルが得られた。この混合物を25℃で2時間撹拌した後に、15gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加し、揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去した。1gのアセチルアセトンを残留物に添加し、安定な茶色の半透明なゾルを8.8%の最終固形分含量で得た。
比較例CS−1
【0053】
50gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%固形分、2.5%の酢酸で安定化)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。この工程中にシランは添加していない。次いで71gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加し、揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去した。容器内の残留物が固形分〜21%に達した時点で、真空ストリッピングを停止した。このセリアナノゾルは不透明で麦わら色であり、固形粒子が数分の間に沈降した。最終固形分含量は20.79%であり水分含量は8.3%であった。
比較例CS−2
【0054】
25.13gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%固形分、2.5%の酢酸で安定化)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。次いで1.0gのメチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社)をこのCeO
2分散物に滴下して添加し、室温で2時間撹拌した。次いで35gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加し、揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去した。容器内の残留物が固形分〜20%に達した時点で、真空ストリッピングを停止した。このセリアナノゾルは半透明で緑がかった麦わら色であり、固形粒子が数分の間に沈降した。最終固形分含量は20.13%であり、水分含量は13.9%であった。
比較例CS−3
【0055】
20gの酸化セリウム分散物(アルドリッチ社、20wt%水性、2.5%の酢酸で安定化)をマグネチックスターラーバーを備えた丸底フラスコに入れた。0.8gのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社より、A−187)をこのCeO
2分散物に滴下して添加し、続いて20gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加した。この混合物を25℃で2時間撹拌した後、追加で15gの1−メトキシ−2−プロパノールを混合物に添加し、次いで揮発性成分を50℃で真空下(30mbar)に除去した。得られた濃縮ゾルは、溶液からセリアの薄い黄色の沈澱が形成されたことを示した。最終固形分含量は20%であり、溶液中に水は残存していなかった。
プライマー配合物の調製
【0056】
PMMA溶液を得られた酸化セリウムゾルと、また任意選択的に追加の溶媒及び流動制御剤と混合することによって、種々のプライマー配合物の例を調製した(表1及び表2)。PMMA溶液は、PMMA樹脂を、1−メトキシ−2−プロパノール(85wt%)及びジアセトンアルコール(15wt%)の混合物中に溶解することによって調製した。溶媒希釈は、1−メトキシ−2−プロパノール:ジアセトンアルコールの85:15(重量比)混合物で行った。成分は適当な大きさのガラス又はポリエチレン製のびんに入れて組み合わせ、次いで十分に振盪して混合した。試料はコーティングの適用に先立って、少なくとも1時間放置した。
【表1】
【表2】
比較例C−1:有機UV吸収剤含有プライマーの調製
【0057】
500mLの3口丸底フラスコ(RBF)に41.85gのジアセトンアルコールと237.15gの1−メトキシ−2−プロパノールを添加した。RBFには還流冷却器とオーバーヘッドスターラーを装着した。撹拌開始に次いで、粉末用漏斗を通じて15.77gのPMMA樹脂をゆっくりと添加した。この混合物を穏やかに還流加熱して、PMMAを溶解させた。室温まで冷却した後、5.20gの2,4−ジベンジルレゾルシノールと0.03gのBYK331をPMMA溶液に添加して、〜1時間にわたって撹拌した。合計で300.0gの薄い黄色の液体が作成された。この溶液の固形分含量は7.0wt%であった。
比較例C−2
【0058】
20gの5.56wt%PMMA溶液に対して0.74gのCS−1セリアゾルを、0.010gのBYK331と共に添加した。このプライマー混合物を十分に振盪してセリアゾルを分散させた結果、不透明な麦わら色の配合物が得られた。この調製された配合物は不安定であり、非常に粘稠になると共に、セリア粒子を沈澱させた。
比較例C−3
【0059】
10gの5.56wt%PMMA溶液に対して0.69gのCS−2セリアゾルを、0.010gのBYK331と共に添加した。このプライマー混合物を十分に振盪してセリアゾルを分散させた結果、不透明な麦わら色の配合物が得られた。
比較例C−4
【0060】
8.3gのPMMA溶液(5.56wt%)に対し、0.866gのセリアゾル(アルドリッチ社、20wt%固形分、2.5%の酢酸で安定化)を滴下して添加し、続いて0.01gのBYK331を添加して激しく振盪した。プライマーに対してセリアゾルを添加するにつれて形成されたセリアゲルは、数分間ヘラですり潰すことによって分散させ、その結果、非常に粘着性で粘稠な、セリア分散物を有するプライマー配合物が得られた。
被覆されたポリカーボネートパネルの調製
【0061】
表1のプライマー配合物を、以下の手順に従ってポリカーボネートプレート上に塗工した。ポリカーボネート(PC)の飾り板(6×6×0.3cm)をN
2ガス流で清掃して表面に付着した塵埃粒子を除去し、続いて表面をイソ−プロパノールで洗い流した。プレートは次いで、ドラフトチャンバー内で20分間乾燥させた。次いでプライマー溶液をPCプレートに対して、フローコーティングによって塗工した。プライマーコーティング溶液中の溶媒は、ドラフトチャンバー(22℃、45%RH)内で〜20分間にわたってフラッシュオフさせ、次いで予備加熱された125℃の熱風循環式オーブンに45分間入れた。室温まで冷却した後に、この下塗りしたPCプレートを次いで、AS4700ハードコート溶液でフローコーティングした。〜20分間乾燥した後(22°C、45%RH)、被覆されたプレートを予備加熱された125℃の熱風循環式オーブンに45分間入れた。
被覆特性
【0062】
光学特性(透過率とヘイズ)はBYKガードナー社のヘイズガード装置でASTMD1003により測定した。初期付着は、ASTMD3002/D3359に従いクロスハッチ付着試験を用いて測定した。付着性は5B〜0Bのスケールでランク付けし、5Bが最高の付着性を示す。水浸漬後の付着性は、被覆されたPCプレートを65℃の温水に浸漬し、続いて異なる時間間隔でクロスハッチ付着試験を行うことによって測定した。セリアナノ粒子の粒径は、Viscotek動的光散乱装置を用いて、1−メトキシ−2−プロパノール中1%のゾル溶液について測定した。コーティングの形態はTEM(Tecnai)を用い、ミクロトームで準備した試料について、明視野透過モードで調べた。
【表3】
【0063】
プライマー配合物に添加したセリアゾルの非揮発性留分中に存在するセリア留分は、表4に示すようにして計算した。
【表4】
【0064】
実施例S−1からS−7において述べたようにして調製したセリアゾルは、全て1年以上にわたって安定であり、固形分は20〜50wt%の範囲であった。一般に、全てのゾルは色が薄い黄色から暗い黄色に表れ、外観は透明から半透明であった。例えば、実施例S−1、S−2、S−3及びS−4におけるようにして調製されたゾルは薄黄色から暗黄色で外観は透明であったのに対し、実施例S−5、S−6、S−7のゾルは茶色がかった黄色で半透明であった。他方、比較例CS−1で説明したゾルは不透明で白色で溶液の安定性に乏しく、調製から数時間以内にセリアが沈澱した。外観及び安定性について同様の傾向が、比較例CS−2の場合にも観察された。これらの観察が明らかに示すように、セリアに対するシランの修飾は、セリア装荷量の高い安定なプライマー配合物の調製にとって不可欠な、有機溶媒中での非常に良好な安定性と分散とをもたらす。
【0065】
実施例S−1からS−7で述べたセリアゾルを用いて調製されたプライマー配合物は、乾燥フィルム中のセリア装荷量が10wt%から35wt%の範囲において、プライマー配合物中で安定であった。このプライマー溶液配合物は透明で薄い黄色であり、周囲条件の下で1年以上もの優れた安定性を有する。対照的に、セリアゾルCS−1及びCS−2のそれぞれを用いて調製されたプライマー配合物C−2及びC−3は、不透明で麦わら色の外観であった。これらのプライマー溶液配合物は不安定で、セリアは初期配合の1日目に完全に沈澱した。プライマー配合物CE−4は安定で半透明であったが非常に粘稠であり、塗工は困難であった。これは恐らく、含有量の多い水が、溶液中でPMMAに対する逆溶媒として作用するためである。
【0066】
実施例S−1からS−7で調製されたセリアゾルを含むプライマー配合物で作成されたコーティングは、90%に近い良好な透明度と、1未満のヘイズ値とを有していた。特に表3に示す実施例7及び8は、コーティングが実施例S−2のセリアゾルを含むプライマー配合物から作成されている場合に、乾燥フィルム中のセリア装荷量がそれぞれ22wt%及び34wt%であったとしても、優れた透明度(>90.0%)と非常に低いヘイズ(<1.0%)とを示した。
【0067】
表3の実施例1〜21の全ての被覆試料は、良好な初期付着性5Bを示し、65℃での水浸漬後の付着試験は全ての試料について最低限の10日間にわたって5Bであり、また幾つかについては30日まで安定であった。コーティング(実施例8、表3)についてのTEM分析(
図3)は、PMMAプライマー層におけるセリアナノ粒子の一様な分散を明らかにしたが、これはセリア装荷量が高い場合でも良好な光学的特性をもたらすために必要である。明らかなことに、シラン官能化セリアナノゾルを使用することにより、コーティングアセンブリ中における光学的特性及び付着特性に大きな影響を与えることなしに、コーティング組成物中にセリアナノ粒子を取り入れることが可能になる。
【0068】
市販の未修飾水性ゾルにおけるセリアナノ粒子の平均粒子径は、5〜40nmの範囲にある。表面官能化を行うと、粒子はシロキサンマトリックスで被覆され、粒径が僅かに増大する結果となる。また、最終コーティングの光透過値が高いことは、その粒径が最終コーティングの光学的特性に影響する最小値を下回っていることの証左である。表面官能化セリアナノ粒子の流体力学的半径を、動的光散乱法を用いて測定した。その結果を表5に、市販の水性セリアゾル及び修飾セリアゾルについて対比して示す。このデータは、本発明で有用であることが見出された、金属酸化物ナノ粒子のシランによる修飾は、可視光の散乱を生ずるような粒径の増大をもたらさない、という結論を支持するものである。
【表5】
UV吸収性測定:
【0069】
5wt%のメタクリロキシプロピルトリメトキシシランでシラン修飾されたセリア(S−8)を含有する、実施例22〜25のプライマー配合物を調製し、コーニング社の平板状のスライドガラス上に塗工した。このスライドガラスは水洗し、拭き取り乾燥し、次いでIPAで洗浄した。残存するIPAは、スライドをドラフトチャンバー内に20分間つり下げることによって揮発乾燥させた。スライドガラスに窒素流を吹きつけ、調製した配合物でフローコーティングした。溶媒を20分間かけてドラフトチャンバー内で揮発させた後、スライドを熱風オーブン内で45分間、125℃で硬化させた。配合物はそれぞれ、表2に示すように異なるセリア装荷量を有していた。これらの被覆されたプライマー配合物のUV吸収能を測定し、比較例C−1からのプライマー配合物と比較した。
図1は〜2マイクロメートルの厚みを有するこれらのコーティング(プライマーマトリックス中に10〜20wt%のセリアを含有する)の吸収性を示している。
図1に示されているように、20wt%のセリア装荷量のCeO
2含有フィルムは、マイクロメートルの厚みのC−1と比べたときに330nmにおいて同様の吸収性を示す。
【表6】
熱的特性:
【0070】
実施例26〜28
PMMA溶液、セリアゾル、及びBYK331を前述のプライマーの実施例において記載したように混合することにより、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン修飾セリア(ゾルの実施例S−5より)をそれぞれ5.68、12.33、及び24.33wt%含有するプライマー配合物を調製した。次いで一部分として〜1gをアルミニウム製のカップに入れ、125℃で45分間加熱してプライマーの固形フレークを生成した。この固形材料についてDSCを行い、固体のTgを測定した。〜25%の有機系UV吸収剤を含む比較例C−1と、純なPMMAの比較例を同様にして調製し、やはりDSCを用いて測定した。セリア装荷量とTg値を表7に示す。
【表7】
【0071】
純なPMMAのTgは124〜121℃付近であるが、比較例C−1のTgに示すように、これは有機UV吸収剤が存在すると81℃まで低下する。他方、表5の実施例26、27及び28のプライマー配合物はそれぞれ、120、118及び117のTg値を示し、セリア装荷量が24wt%である場合でも、PMMAのガラス転移温度から最小限の変化しか示さなかった。これは有機UV吸収剤含有プライマーと比較して、セリア含有プライマーがより高い供用温度条件を許容するという利点をもたらす。
【0072】
上記においては本発明をその具体的な実施形態を参照して説明してきたが、ここに開示された本発明の概念から逸脱することなく、多くの変更、修正、及び改変を行いうることが明らかである。従って、添付の特許請求の範囲の思想及び広範な範囲内に含まれる、そうした全ての変更、修正、及び改変を包含することが意図されている。