特許第6563928号(P6563928)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563928
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ヒドロホルミル化プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/50 20060101AFI20190808BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20190808BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C07C45/50
   C07B61/00 300
   C07C47/02
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-545747(P2016-545747)
(86)(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公表番号】特表2016-536349(P2016-536349A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】US2014054776
(87)【国際公開番号】WO2015047723
(87)【国際公開日】20150402
【審査請求日】2017年8月25日
【審判番号】不服2018-16539(P2018-16539/J1)
【審判請求日】2018年12月11日
(31)【優先権主張番号】61/882,868
(32)【優先日】2013年9月26日
(33)【優先権主張国】US
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(72)【発明者】
【氏名】クロイド・アール・スミス
(72)【発明者】
【氏名】モルテザ・モータザデー
(72)【発明者】
【氏名】アービン・ビー・コックス
【合議体】
【審判長】 瀬良 聡機
【審判官】 菅原 洋平
【審判官】 関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/095766号(WO,A1)
【文献】 特表2002−522518号公報(JP,A)
【文献】 特表2005−514451号公報(JP,A)
【文献】 特開平11−209415号公報(JP,A)
【文献】 特開平8−24624号公報(JP,A)
【文献】 特開平5−230106号公報(JP,A)
【文献】 特表2008−508355号公報(JP,A)
【文献】 特表2005−514451号公報(JP,A)
【文献】 特開昭62−30734号公報(JP,A)
【文献】 特開昭62−116587号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B
C07C
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下において、少なくとも1つの反応器中の反応流体中のヒドロホルミル化触媒の存在下で、CO、H2、及び少なくとも1つのオレフィンを接触させることと、
前記少なくとも1つの反応器から前記反応流体の流れを除去し、前記流れを熱交換器に通過させることと、
前記流れからある量の熱を除去し、冷却流を形成することと、
前記冷却流を前記反応器に戻すことと、を含み、
前記流れ及び/または前記冷却流のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の流速は、前記反応器中の温度を制御するために制御され、
定常状態の反応温度は、前記反応流体が除去される前記少なくとも1つの反応器内で設定点の+/−1℃以内で制御され
反応速度は、アルデヒド2グラムモル/リットル(反応器体積)/時を超える、プロセス。
【請求項2】
前記触媒は、加水分解性有機リン配位子を含む、請求項に記載の前記プロセス。
【請求項3】
前記触媒は、触媒金属としてロジウムを含む、請求項1又は2に記載の前記プロセス。
【請求項4】
前記反応温度は、100℃未満である、請求項1〜のいずれかに記載の前記プロセス。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記流れから少なくとも75kW/m3(反応器体積)を除去することが可能である、請求項1〜のいずれかに記載の前記プロセス。
【請求項6】
前記定常状態の反応温度は、設定点の+/−0.5℃以内で制御される、請求項1〜のいずれかに記載の前記プロセス。
【請求項7】
前記冷却流の少なくとも一部分の前記流速は、前記反応器中の前記温度を制御するために制御される、請求項1〜のいずれかに記載の前記プロセス。
【請求項8】
前記流れの少なくとも一部分の前記流速は、前記反応器中の前記温度を制御するために制御される、請求項1〜のいずれかに記載の前記プロセス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、安定したヒドロホルミル化プロセスに関する。
【0002】
アルデヒドは、金属有機リン配位子錯体触媒の存在下で、オレフィン性不飽和化合物を一酸化炭素及び水素と反応させることを含む、連続プロセスによって生成され得ることが既知である。このプロセスは、例えば、米国第4,148,830号、米国第4,717,775号、及び米国第4,769,498号に開示される。反応温度は、いくつかの理由で重要なヒドロホルミル化プロセス変数である。
【0003】
概して、商業規模のヒドロホルミル化プラントの定常かつ制御された動作が非常に望ましいことが認識される。また、正確な温度制御が触媒寿命にとって重要であることも明らかである。商業規模でのヒドロホルミル化反応における温度制御の問題は、長い間認識されてきた。J.Falbe(ed)“New Syntheses with Carbon Monoxide”(Springer−Verlag,NY 1980)の節1.2.4節において、一貫性のない温度挙動の図を用いた問題の要約が示される。より詳細な解析は、E.P.Van Elk,P.C.Borman,J.A.M.Kuipers,G.F.Versteeg;Chemical Engineering Science 56(2001)1491−1500)に示され、安定性及び動的挙動の複雑な関係が考察される。ロジウムヒドロホルミル化反応は、複雑な反応速度論、質量流量の課題、及びそれらの非常に発熱性(28〜35kcal(118〜147kJ)/モルのオレフィン)の性質を特徴とし、それらは全て、温度の制御を非常に困難にする。
【0004】
米国第4,277,627号は、内因性の不活性化を含む触媒不活性化のいくつかの経路を教示する。動作条件は、ホスフィン系触媒を用いた活性の喪失を最小限に抑えるように指定される。温度は、触媒不活性化速度を制御する重要な変数である。
【0005】
温度を制御することは、触媒安定性に対するその効果に加えて、プロセスの効率性に有意な影響を及ぼし得る。より低い温度は、その系を通してより低い反応性をもたらし、オレフィン損失をもたらす。より高い温度は、米国第4,148,830号に教示されるように、必然的なアルドール生成に起因して、より高い配位子分解及び重質物形成速度をもたらす。より高い水素化(アルカンまたはアルコールへの)及び直鎖/分岐(「N:I」)生成物比の変化など、他の温度に関連した効果もまた、プラント生産性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
一般的に言えば、温度を制御するためには、発熱速度及び/または熱除去速度を制御しなければならない。定常状態において、これらの2つは同等である。発熱速度は概して、いくつか例を挙げると、所望のプラント生産速度、及びオレフィンの性質(エチレンは非常に反応性であり、後に一次オレフィン、次いで二次オレフィンが続く)、及び触媒濃度などの要因によって決定される。生産速度及び使用されるオレフィンは概して、結果として生じてくるプラント経済性への悪影響のため、変化させることはない。したがって、焦点の大部分は熱除去に合わせられてきた。
【0007】
熱交換器からの熱の除去は、以下の方程式によって伝統的に記載される。
熱除去=AΔT (1)
【0008】
式中、「U」は、機器のプロセス側及び冷却剤側の両方における条件(粘度、顕熱、流速、気泡の存在など)に依存した熱伝達係数である。「A」は、熱伝達に利用可能な表面積であり、ΔTは、生成物流体と冷却剤との間の温度差である。
【0009】
交換器の表面積は概して一定である。大型の内部冷却コイルが反応器内にあると貴重な反応器空間を取るため、実質的な量の熱除去を必要とする反応器上で外部熱交換器を使用することが慣例である。国際特許出願第2012/008717 A2号、米国第4,523,036号、米国第8,389,774号、及び米国第5,367,106号を参照されたい。熱交換器のサイズを非常に大きな表面積を有するように増加させることは、概して、より良好な安定性をもたらすが、高価であり、プラントの設置面積を増加させ、維持費を増加させる。
【0010】
動作条件の操作を介して反応器温度を制御することを目的とする開示がある。例えば、米国第5,744,650号に開示される高活性ホスファイト系Rh触媒系を用いて、熱交換器のプロセス側と冷却剤側との間の温度差ΔTを最適化することは、定常温度制御にとって重要である。その特許は、ヒドロホルミル化反応器を制御するために使用される実用的な熱交換器設計の良好な概要を示すが、熱交換器の冷却剤側に焦点を合わせる。残念ながら、冷却水の温度を制御することは、プラントの建築及び経営に対する複雑性及び費用を増す。それはまた、冷却水温度への変化に時間がかかり、次いで、変化した冷却水が熱交換器における温度を再確立しなければならず、熱交換器が次いで、反応器における効果を示すために新しいΔTを確立しなければならないため、かなりのプロセス制御応答遅延を増大させる。工業規模のヒドロホルミル化プロセスに関与する大きな質量は、応答時間を大幅に増加させる。
【0011】
伝統的に、熱除去をもたらすための他の手段は、熱交換器中の冷却剤質量流速を変化させることに基づく。冷却剤側の流れを変化させることは、冷却剤側の配管及び機器が概してプロセス側よりも、例えば、6インチ管対20インチ管などとはるかに小さく、例えば、プロセス側のステンレス鋼と比較して炭素鋼など、さほど高価ではない金属を含むため、好ましい経路として見なされてきた。
【0012】
また、温度による影響を受ける反応速度論が、プロセス安定性に大きな影響を及ぼすことも既知である。米国第5,763,679号は、リン化合物を阻害または汚染することによって引き起こされる金属有機リン配位子錯体触媒の不活性化が、ヒドロホルミル化反応速度が一酸化炭素中で負または逆次数である反応領域中で、ヒドロホルミル化プロセスを実施することによって逆転または低減され得ることを教示する。正及び負の両方の次数の速度論(ならびに様々なレベルの阻害剤)の存在により、これらの高活性触媒の制御は、従来のプロセス制御戦略を使用することでは非常に困難である。
【0013】
米国第5,362,917号は、ヒドロホルミル化プロセス中の所定の一定の一酸化炭素分圧を維持するために、合成供給ガスの流速または通気口ガスの流速を変化させることによって、ヒドロホルミル化プロセスの安定性を制御する方法を開示する。生成物異性体(N:I)比がCO分圧によって決まるため、CO分圧を維持しようとする試みは、N:I比を安定させる可能性があるが、他の試薬も同様に変化する可能性があるため、同時に反応速度は安定させない。加えて、反応性を制御するために3つのうち1つの試薬を使用することは、反応器中にすでにある試薬の在庫の量によって制限される。
【0014】
同様に、米国第7,446,231号は、反応器全圧を操作することによって反応を制御することに取り組む。これは、速度論に影響を与えるいくつかのガス状試薬にも同時に取り組むよう試みる。固定CO分圧を設定する代わりに、CO及びH分圧が自己制御するという観察、ならびにより一定したプロセスが得られるという予想に基づき、全圧が一定のプロピレン供給速度で維持される。米国第7,446,231号の図1に示されるように、最適な動作領域は、CO分圧プロットに対するヒドロホルミル化速度のピークにあり、最高速度及びN:I性能が観察される。残念ながら、動力学モデルが変化する反応次数(ピークそれ自体におけるゼロ次を含む)を説明しないため、このピークにおける動作は、本質的に不安定である。したがって、米国第7,446,231号の技術は、負の次数の領域にのみ適用される。
【0015】
したがって、ヒドロホルミル化反応器は、典型的には、本質的に不安定な体制で動作し、安定したプロセス制御を維持するために反応器制御系に依存する。従来のヒドロホルミル化反応器温度制御系は、反応器液体温度を制御するために、冷却水入口温度、冷却水流速、またはこれらの組み合わせを調節してきた。図1は、従来のヒドロホルミル化プロセスを示す。反応器液体温度を制御するために、温度センサ(18)によって測定されるような冷却水入口温度、冷却水出口流れ(7)の流速、またはこれらの組み合わせを調節する、従来のヒドロホルミル化反応器温度制御系。温度センサ(11)によって測定されるようなヒドロホルミル化反応器液体温度は、プロセスの温度制御のための制御装置(9)によって設定点と比較され、所望の一定値で維持される。歴史的に、この制御方式は、ある程度良好に機能してきており、これは主に、第一世代の市販のヒドロホルミル化触媒が比較的低い反応速度、例えば、アルデヒド2グラムモル/リットル(反応器体積)/時未満であり、単位時間/体積当たり比較的低い反応熱をもたらしたためである。しかしながら、近年商品化された次世代ヒドロホルミル化触媒は、従来の触媒と比較して著しく高い反応速度を有する。より高い反応速度は、単位時間当たりのヒドロホルミル化反応器中のより高い発熱をもたらす。従来の反応器温度制御方式は、新しいヒドロホルミル化触媒を使用する反応の効果的な反応器温度制御に対しては遅すぎる。
【0016】
従来技術の欠点を考慮して、ヒドロホルミル化反応器のための改善された反応器温度制御プロセスを有することが望ましくあり得る。
【発明の概要】
【0017】
本発明のプロセスは、少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下において、少なくとも1つの反応器中の反応流体中のヒドロホルミル化触媒の存在下で、CO、H、及び少なくとも1つのオレフィンを接触させることと、
少なくとも1つの反応器から反応流体の流れを除去し、流れを熱交換器に通過させることと、
流れからある量の熱を除去し、冷却流を形成することと、
冷却流を反応器に戻すことと、を含むプロセスであり、
流れ及び/または冷却流のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の流速は、反応器中の温度を制御するために制御される。
【0018】
驚くべきことに、本発明のプロセスは、ヒドロホルミル化反応器温度の迅速な応答時間及び良好な制御を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、従来技術のヒドロホルミル化プロセスの概略図である。
図2図2は、本発明の例示的なプロセスの概略図である。
図3図3は、本発明の例示的なプロセスの概略図である。
図4図4は、比較実験Aの結果のグラフである。
図5図5は、実施例1の結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、温度などの反応速度及び/またはプロセスパラメータの急速な、多くの場合極端な変化または循環に対して、ヒドロホルミル化プロセスを安定させる方法に関する。本発明のプロセスは、α−オレフィンのヒドロホルミル化によってアルデヒドを生成するための連続プロセスである。そのようなプロセスによって生成されるアルデヒドは、例えば、脂肪族アルコールへの水素化、脂肪族アミンへのアミノ化、脂肪族酸への酸化、及び可塑剤を生成するためのアルドール縮合のための中間体として、幅広い有用性がある。
【0021】
元素周期表及びその中の種々の族の全ての参照は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991−1992)CRC Press,at page I−10に公開される版への参照である。
【0022】
反対の記述がない限り、または文脈から黙示的ではない限り、全ての部及び百分率は重量に基づき、全ての試験方法は本願の出願日の時点で最新のものである。米国特許慣行の目的で、いずれの参照された特許、特許出願、または出版物の内容も、特に定義の開示(本開示において明確に提供されるいずれの定義にも矛盾しない範囲で)及び当該技術分野における一般知識に関して、その全体が参照により組み込まれる(またはその同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0023】
本明細書で使用されるように、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」、及び「1つ以上の」は、互換的に使用される。用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、及びその変形は、それらの用語が本明細書及び請求項の中で現れる限定的な意味を有しない。したがって例えば、「1つの」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、その組成物が「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味するように解釈され得る。
【0024】
本明細書ではまた、終止点ごとの数字の範囲の詳述は、その範囲に包含される全ての数値を含む(例えば、1〜5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5等を含む)。本発明の目的として、当業者が理解するであろうことと一貫して、数字の範囲は、その範囲に含まれる全ての可能な部分範囲を含む、及び維持することが意図される。例えば、1〜100の範囲は、1.01〜100、1〜99.99、1.01〜99.99、40〜60、1〜55等を伝達すると意図される。本明細書ではまた、そのような請求項内の詳述を含む、数字の範囲及び/または数値の詳述を、用語「約」を含むように読解することができる。そのような例では、用語「約」は、実質的に本明細書で詳述されるものと同一である、数字の範囲及び/または数値を言及する。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「ppmw」は、100万分の1重量部を意味する。
【0026】
本発明の目的で、用語「炭化水素」は、少なくとも1個の水素及び1個の炭素原子を有する全ての許容される化合物を含むと考えられる。そのような許容される化合物はまた、1個以上のヘテロ原子を有してもよい。広い態様において、許容される炭化水素は、置換または非置換であり得る非環式(ヘテロ原子ありまたはなし)及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族有機化合物を含む。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「置換された」は、別段の指示がない限り、有機化合物の全ての許容される置換基を含むと考えられる。広い態様において、許容される置換基は、有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族置換基を含む。例示的な置換基としては、例えば、炭素の数が1〜20個以上、好ましくは1〜12個に及び得る、アルキル、アルキルオキシ、アリール、アリールオキシ、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、ならびにヒドロキシ、ハロ、及びアミノが挙げられる。許容される置換基は、適切な有機化合物に対して1個以上であり、同じであってもまたは異なってもよい。本発明は、有機化合物の許容される置換基によって任意の方法によっても限定されることを意図していない。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロホルミル化」は、1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン化合物、または1つ以上の置換もしくは非置換オレフィン化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換もしくは非置換アルデヒド、または1つ以上の置換もしくは非置換アルデヒドを含む反応混合物に変換することを伴う、全ての許容される不斉及び非不斉ヒドロホルミル化プロセスが挙げられるがこれらに限定されないと考えられる。
【0029】
用語「反応流体」、「反応媒体」、及び「触媒溶液」は、本明細書において区別しないで使用され、(a)金属有機リン配位子錯体触媒、(b)遊離有機リン配位子、(c)反応中に形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応反応物、(e)該金属有機リン配位子錯体触媒及び該遊離有機リン配位子のための溶媒、ならびに任意に、(f)反応中に形成される1つ以上の亜リン酸化合物(均一または不均一であってもよく、これらの化合物は、プロセス機器表面に付着したものを含む)を含む混合物が挙げられ得るがこれらに限定されない。反応流体は、(a)反応区画中の流体、(b)分離区画に向かう途中の流体流れ、(c)分離区画中の流体、(d)再循環流れ、(e)反応区画または分離区画から引き出される流体、(f)緩衝水溶液で処理される引き出された流体、(g)反応区画または分離区画に戻される処理された流体、(h)外部冷却器中の流体、ならびに(i)配位子分解生成物及びそれらの塩を包含し得るがこれらに限定されない。
【0030】
「加水分解性有機リン配位子」は、少なくとも1つのP−Z結合を含む三価リン配位子であり、Zは、酸素、窒素、塩素、フッ素、または臭素である。例としては、ホスファイト、ホスフィノ−ホスファイト、ビスホスファイト、ホスホニト、ビスホスホニト、ホスフィニト、ホスホラミダイト、ホスフィノ−ホスホラミダイト、ビスホスホラミダイト、フルオロホスファイトなどが挙げられるがこれらに限定されない。配位子は、キレート構造を含んでもよく、ならびに/またはポリホスファイト、ポリホスホラミダイトなどの複数のP−Z部分、及びホスファイト−ホスホラミダイト、フルオロホスファイト−ホスファイトなどの混合P−Z部分を含んでもよい。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「錯体」は、1個以上の電子的に乏しい分子または原子(すなわち、遷移金属)と1個以上の電子的に豊富である分子または原子(すなわち、配位子)の結合によって形成される配位化合物を意味する。例えば、本明細書で採用可能な有機リン配位子は、金属との配位共有結合を形成することが可能である、1つの非共有電子対を有する、1個のリン(III)ドナー原子を有する。本明細書で採用可能なポリ有機リン配位子は、2個以上のリン(III)ドナー原子を有し、それぞれは1つの非共有電子対を有し、それらのそれぞれは独立して、または場合によっては遷移金属と協調して(例えば、キレート化を介して)、配位共有結合を形成することが可能である。一酸化炭素もまた存在し得、遷移金属と錯体を形成し得る。錯体触媒の最終的な組成物は、上記のような追加の配位子(複数可)、例えば、水素、モノ−オレフィン、または金属の配位部位もしくは核電荷を満たすアニオンを含有してもよい。
【0032】
遷移金属上で利用可能な配位部位の数は、当該技術分野において周知であり、選択される特定の遷移金属によって決まる。触媒種は、単量体、二量体、またはより高次の核性の形態の錯体触媒混合物を含んでもよく、その形態は、好ましくは、金属、例えば、ロジウムの1分子当たり錯体を形成する、少なくとも1個の有機リン含有分子を特徴とする。例えば、ヒドロホルミル化反応中で用いられる好ましい触媒の触媒種は、1個以上の有機リン配位子(複数可)に加えて、一酸化炭素及び水素と錯体を形成し得ることが考慮される。
【0033】
開示されたプロセスは、成分として遷移金属及び有機リン配位子を含むヒドロホルミル化触媒の存在下で、少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下において、CO、H、及び少なくとも1つのオレフィンを接触させることを含む。任意のプロセス成分は、米国第5,288,918号、米国第5,731,472号、及び米国第5,741,944号に記載されるように、アミン及び/または水を含む。
【0034】
水素及び一酸化炭素は、石油分解及び精製作業を含む任意の好適な源から得られ得る。シンガス混合物は、水素及びCOの好ましい源である。
【0035】
シンガス(syngas)(合成ガス(synthesis gas)から)は、様々な量のCO及びHを含有するガス混合物に付けられる名前である。生成方法は周知である。水素及びCOは、典型的には、シンガスの主な成分であるが、シンガスは、COならびにN及びArなどの不活性ガスを含有し得る。H:COのモル比は大きく異なるが、概して、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1に及ぶ。シンガスは市販されており、多くの場合、燃料源として、または他の化学物質の生成のための中間体として使用される。最も好ましいH:CO比は、3:1〜1:3であり、より好ましくは、約1:2〜2:1である。
【0036】
ヒドロホルミル化プロセスにおいて用いられ得る置換または非置換オレフィン不飽和反応物は、2〜40個、好ましくは3〜20個の炭素原子を含む、光学活性(プロキラル及びキラル)ならびに非光学活性(アキラル)オレフィン不飽和化合物の両方を含む。これらの化合物は、米国第2010/006980号に詳述される。そのようなオレフィン不飽和化合物は、末端または内部が不飽和であってもよく、直鎖、分岐鎖、または環式構造、ならびにプロペン、ブテン、イソブテンなどのオリゴマー化から得られるようなオレフィン混合物を有し得る(例えば、米国第4,518,809号及び同第4,528,403号に開示される、いわゆる二量体、三量体、または四量体プロピレンなど)。
【0037】
エナンチオマーアルデヒド混合物を生成するために用いられ得る不斉ヒドロホルミル化において有用なプロキラル及びキラルオレフィンは、式:
【0038】
【化1】
【0039】
によって表されるものを含み、式中、R、R、R、及びRは、同じであるかまたは異なり(ただし、RはRとは異なり、RはRとは異なる)、水素;アルキル;置換アルキル(該置換は、ベンジルアミノ及びジベンジルアミノなどのジアルキルアミノ、メトキシ及びエトキシなどのアルコキシ、アセトキシ、ハロ、ニトロ、ニトリル、チオ、カルボニル、カルボキサミド、カルボキサルデヒド、カルボキシル、及びカルボン酸エステルなどのアシルオキシから選択される);フェニルを含むアリール;フェニルを含む置換アリール(該置換は、アルキル、ベンジルアミノ及びジベンジルアミノなどのアルキルアミノ及びジアルキルアミノを含むアミノ、ヒドロキシ、メトキシ及びエトキシなどのアルコキシ、アセトキシ、ハロ、ニトリル、ニトロ、カルボキシル、カルボキサルデヒド、カルボン酸エステル、カルボニル、及びチオなどのアシルオキシから選択される);アセトキシなどのアシルオキシ;メトキシ及びエトキシなどのアルコキシ;ベンジルアミノ及びジベンジルアミノなどのアルキルアミノ及びジアルキルアミノを含むアミノ;アセチルベンジルアミノ及びジアセチルアミノなどのアシルアミノ及びジアシルアミノ;ニトロ;カルボニル;ニトリル;カルボキシル;カルボキサミド;カルボキサルデヒド;カルボン酸エステル;ならびにメチルメルカプトなどのアルキルメルカプトから選択される。この定義のプロキラル及びキラルオレフィンもまた、上記の一般式の分子を含み、式中、R基は連結されて、環状化合物、例えば、3−メチル−1−シクロヘキセンなどを形成することが理解される。
【0040】
不斉ヒドロホルミル化において有用な例示的な光学活性またはプロキラルオレフィン化合物は、例えば、米国第4,329,507号、同第5,360,938号、及び同第5,491,266号に記載される。
【0041】
溶媒は、有利にヒドロホルミル化プロセスで用いられる。ヒドロホルミル化プロセスを過度に妨げない任意の好適な溶媒が使用され得る。例示目的で、ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスのための好適な溶媒としては、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号、及び同第5,929,289号に開示されるものが挙げられる。好適な溶媒の限定されない例としては、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、水、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エスエル、及びアルデヒド縮合生成物が挙げられる。溶媒の特定の例としては、テトラグリム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒド、及びベンゾニトリルが挙げられる。有機溶媒はまた、飽和限界まで溶存水を含有してもよい。例示的な好ましい溶媒としては、ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、エステル(例えば、エチルアセテート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えば、トルエン)、ニトロ炭化水素(例えば、ニトロベンゼン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))、及びスルホランが挙げられる。ロジウム触媒ヒドロホルミル化プロセスにおいて、例えば、米国第4,148,380号及び米国第4,247,486号に記載されるように、生成されることが望ましいアルデヒド生成物、及び/または、例えば、ヒドロホルミル化プロセス中にその場で生成され得るような、より高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物に対応するアルデヒド化合物を、一次溶媒として用いることが好ましくあり得る。一次溶媒は通常、最終的に、連続プロセスの性質によって、アルデヒド生成物及びより高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物(「重質物」)の両方を含む。溶媒の量は特に重要ではなく、所望の量の遷移金属濃度を有する反応媒体を提供しさえすればよい。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量に基づき、約5重量%〜約95重量%に及ぶ。溶媒の混合物が用いられてもよい。
【0042】
そのようなヒドロホルミル化反応において採用可能な例示的な金属有機リン配位子錯体としては、金属有機リン配位子錯体触媒が挙げられる。これらの触媒ならびにそれらの調製方法は、当該技術分野において周知であり、本明細書に言及される特許に開示されるものを含む。概して、そのような触媒は、予形成されてもよく、またはその場で形成されてもよく、有機リン配位子、一酸化炭素、及び任意に水素との錯体組み合わせで金属を含む。配位子錯体種は、単核、二核、及び/またはより高い核性の形態で存在してもよい。しかしながら、触媒の正確な構造は未知である。
【0043】
金属有機リン配位子錯体触媒は、光学活性または非光学活性であってもよい。金属としては、ロジウム(Rh)、コバルト(Co)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、オスミウム(Os)、及びこれらの混合物から選択される第8、9、及び10族金属が挙げられ得、好ましい金属は、ロジウム、コバルト、イリジウム、及びルテニウムであり、より好ましくは、ロジウム、コバルト、及びルテニウム、特にロジウムである。これらの金属の混合物が使用されてもよい。金属有機リン配位子錯体及び遊離有機リン配位子を構成する許容される有機リン配位子としては、モノ、ジ、トリ、及びより高次のポリ有機リン配位子が挙げられる。配位子の混合物は、金属有機リン配位子錯体触媒及び/または遊離配位子中で用いられてもよく、そのような混合物は、同じであってもまたは異なってもよい。
【0044】
金属有機リン配位子錯体触媒及び/または遊離配位子の配位子としての機能を果たし得る有機リン化合物は、アキラル(光学不活性)またはキラル(光学活性)型のものであってもよく、当該技術分野において周知である。キラル有機リン配位子が好ましい。
【0045】
金属有機リン配位子錯体触媒の配位子としての機能を果たし得る有機リン配位子の中には、トリアリールホスフィン、モノオルガノホスファイト、ジオルガノホスファイト、トリオルガノホスファイト、オルガノポリホスファイト、オルガノモノホスホラミダイト、及びオルガノポリホスホラミダイト化合物、ならびに他の加水分解性有機リン化合物がある。そのような有機リン配位子及びそれらの調製方法は、当該技術分野において周知である。
【0046】
本開示のプロセスにおいて採用可能なトリアリールホスフィンは、3つのアリール、もしくはアリールアルキルラジカル、またはこれらの組み合わせに共有結合した1個のリン原子を含む任意の有機化合物を含む。トリアリールホスフィン配位子の混合物も用いられ得る。代表的なオルガノモノホスフィンとしては、式:
【0047】
【化2】
【0048】
を有するものが挙げられ、式中、各R29、R30、及びR31は、同じであってもまたは異なってもよく、4〜40個の炭素原子またはそれ以上を含む置換または非置換アリールラジカルを表してもよい。そのようなトリアリールホスフィンは、例えば、米国第3,527,809号により詳細に記載されているのが見られ、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。例示的なトリアリールホスフィン配位子は、トリフェニルホスフィン、トリナフチルフィン(trinaphthylphine)、トリトリルホスフィン、トリ(p−ビフェニル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m−クロロフェニル)−ホスフィン、p−N,N−ジメチルアミノフェニルビス−フェニルホスフィンなどである。トリフェニルホスフィン、すなわち、式Iの化合物(式中、各R29、R30、及びR31はフェニルである)は、好ましいオルガノモノホスフィン配位子の一実施例である。ヒドロホルミル化反応は、過剰な遊離トリアリールホスフィンを含有する液体中で選択的にもたらされる。
【0049】
代表的なモノオルガノホスファイト、ジオルガノホスファイト、トリオルガノホスファイト、及びオルガノポリホスファイト(2つ以上の第3級(三価)リン原子を含む)としては、国際特許出願第2012/14541号に詳述される以下の式を有するものが挙げられ得る。
【0050】
【化3-1】
【0051】
【化3-2】
【0052】
さらなる選択肢として、任意のオルガノホスホラミダイト配位子が、有機リン配位子として、または任意の他の有機リン配位子と組み合わせて使用され得、任意のオルガノポリホスホラミダイト配位子が、有機リン配位子として、または任意の他の有機リン配位子と組み合わせて使用され得る。オルガノホスホラミダイト配位子は既知であり、それらは、オルガノホスファイト配位子と同じ方法で使用される。代表的なオルガノホスホラミダイト配位子は、式(X〜XII)を有する。
【0053】
【化4】
【0054】
オルガノホスホラミダイトは、例えば、米国特許第7,615,645号にさらに記載される。本明細書で使用される場合、「有機リン配位子」及び同様の用語は、特に指定のない限り、オルガノモノホスホラミダイト及びオルガノポリホスホラミダイト配位子を含む。
【0055】
そのような有機リン配位子の特定の例示としては、以下が挙げられる:2−t−ブチル−4−メトキシフェニル(3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト、メチル(3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル−2,2’−ジイル)ホスファイト、6,6’−[[3,3’−ビス(1,1−ジメチルエチル)−5,5’−ジメトキシ−[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6,6’−[[3,3’,5,5’−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)−1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイル]ビス(オキシ)]ビス−ジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン、(2R,4R)−ジ[2,2’−(3,3’,5,5’−テトラキス−tert−ブチル−1,1−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスファイト、(2R,4R)ジ[2,2’−(3,3’−ジ−tert−ブチル−5,5’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル)]−2,4−ペンチルジホスファイト、2−[[2−[[4,8,−ビス(1,1−ジメチルエチル)、2,10−ジメトキシジベンゾ−[d,f][1,3,2]ジオキソホスフェピン−6−イル]オキシ]−3−(1,1−ジメチルエチル)−5−メトキシフェニル]メチル]−4−メトキシ、亜リン酸のメチレンジ−2,1−フェニレンテトラキス[2,4−ビス(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エステル、及び亜リン酸の[1,1’−ビフェニル]−2,2’−ジイルテトラキス[2−(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシフェニル]エステル。
【0056】
金属有機リン配位子錯体触媒は、均一または不均一な形態であってもよい。例えば、予形成されたロジウムヒドリド−カルボニル−有機リン配位子触媒が調製され、ヒドロホルミル化反応混合物中に導入されてもよい。より好ましくは、ロジウム−有機リン配位子錯体触媒は、活性触媒のその場形成のための反応媒体中に導入されてもよいロジウム触媒前駆体から得られ得る。例えば、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、Rh、Rh(CO)12、Rh(CO)16、Rh(NOなどのロジウム触媒前駆体が、活性触媒のその場形成のための有機リン配位子と共に、反応混合物中に導入されてもよい。好ましい実施形態では、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネートがロジウム前駆体として用いられ、有機リン配位子と溶媒の存在下で反応し、活性触媒のその場形成のための過剰な(遊離)有機リン配位子と共に反応器中に導入される触媒ロジウム−有機リン配位子錯体前駆体を形成する。いずれの場合においても、一酸化炭素、水素、及び有機リン配位子が全て、金属と錯体を形成することが可能である配位子であり、活性金属−有機リン配位子触媒が、ヒドロホルミル化反応で使用される条件下で、反応混合物中に存在することが十分である。カルボニル及び有機リン配位子は、ヒドロホルミル化プロセスの前、あるいはヒドロホルミル化プロセス中その場で、ロジウムと錯体を形成してもよい。
【0057】
例示目的で、好ましい触媒前駆体組成物は、可溶化ロジウムカルボニル有機リン配位子錯体前駆体、溶媒、及び任意に、遊離有機リン配位子から本質的になる。好ましい触媒前駆体組成物は、ロジウムジカルボニルアセチルアセトネート、有機溶媒、及び有機リン配位子の溶液を形成することによって調製され得る。有機リン配位子は、一酸化炭素ガスの発生によって証明されるように、ロジウムアセチルアセトネート錯体前駆体のカルボニル配位子のうちの1つに容易に取って代わる。
【0058】
したがって、金属有機リン配位子錯体触媒は、有利に、一酸化炭素及び有機リン配位子と錯体を形成する金属を含み、該配位子は、キレート化及び/または非キレート化の方法で金属と結合(錯体形成)される。
【0059】
触媒の混合物が用いられ得る。反応流体中に存在する金属有機リン配位子錯体触媒の量は、例えば、上記の特許に開示されるように、用いられることが望ましい所与の金属濃度を提供するのに必要な最小限の量であり、かつ関係する特定のヒドロホルミル化プロセスに触媒作用を及ぼすのに必要な金属の少なくとも触媒量に対する基準を提供するだけでよい。概して、反応媒体中の遊離金属として計算される、10ppmw〜1000ppmwの範囲の触媒金属、例えば、ロジウム濃度が、ほとんどのプロセスにとって十分であるべきである一方で、10〜500ppmwの金属を用いることが概して好ましく、より好ましくは、25〜350ppmwの金属を用いる。
【0060】
金属有機リン配位子錯体触媒に加えて、遊離有機リン配位子(すなわち、金属と錯体を形成しない配位子)もまた、反応媒体中に存在し得る。遊離有機リン配位子は、上記に考察される上記に定義された有機リン配位子のいずれかに対応してもよい。遊離有機リン配位子は、用いられる金属有機リン配位子錯体触媒の有機リン配位子と同じであることが好ましい。しかしながら、そのような配位子は、任意の所与のプロセスにおいて同じである必要はない。本発明のヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中の金属1モル当たり、0.1モル以下〜100モル以上の遊離有機リン配位子を含んでもよい。好ましくは、ヒドロホルミル化プロセスは、反応媒体中の金属1モル当たり、1〜50モルの遊離有機リン配位子の存在下で実施される。より好ましくは、オルガノポリホスファイトに対して、0.1〜4モルの遊離オルガノポリホスファイト配位子が、金属1モル当たり用いられる。必要に応じて、例えば、反応媒体中で所定のレベルの遊離配位子を維持するために、いかなる時でも、かつ任意の好適な方法で、ヒドロホルミル化プロセスの反応媒体に追加の有機リン配位子が供給され得る。
【0061】
ヒドロホルミル化プロセスは周知であり、広く商業的に実践されている。例えば、米国特許第4,148,830号、同第5,237,106号、同第5,763,679号、同第5,741,945号、同第5,767,321号、同第7,446,231号、同第7,906,688号、及び同第7,863,487号を参照されたい。ヒドロホルミル化プロセスの反応条件は、光学活性及び/または非光学活性アルデヒドを生成するために従来用いられる任意の好適な種類のヒドロホルミル化条件を含んでもよい。用いられるヒドロホルミル化反応条件は、所望のアルデヒド生成物の種類によって制御される。例えば、ヒドロホルミル化プロセスの水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の全ガス圧は、1〜69,000kPaに及んでもよい。しかしながら、概して、プロセスは、14,000kPa未満、より好ましくは3,400kPa未満の水素、一酸化炭素、及びオレフィン出発化合物の全ガス圧で動作されるのが好ましい。最小全圧は、所望の反応速度を得るために必要な反応物の量によって主に制限される。より具体的には、ヒドロホルミル化プロセスの一酸化炭素分圧が、好ましくは1〜6,900kPa、より好ましくは21〜5,500kPaである一方で、水素分圧は、好ましくは34〜3,400kPa、より好ましくは69〜2,100kPaである。概して、ガス状H:COのモル比は、1:10〜100:1またはそれ以上に及んでもよく、より好ましいモル比は、1:10〜10:1である。概して、ヒドロホルミル化プロセスは、任意の動作可能な反応温度で実施されてもよい。有利に、ヒドロホルミル化プロセスは、−25℃〜200℃、好ましくは50℃〜120℃の反応温度で実施される。有利に、反応温度は、本発明のプロセスによって冷却される反応器中で100℃未満である。
【0062】
より新しい「次世代」ヒドロホルミル化触媒(典型的には、加水分解性有機リン配位子に基づく)は、より古い触媒と比較して、より高い反応速度、例えば、アルデヒド2グラムモル/リットル(反応器体積)/時を超える反応速度を有する。反応速度はまた、複雑な速度論を示す(例えば、COに対して正及び負の反応次数)。これらの触媒は典型的には、触媒劣化を最小限に抑えるために、より低い反応温度、例えば、60〜80℃で動作する。より低い動作温度は、冷却媒体と反応媒体との間のより低いΔTをもたらし、それにより熱交換器の熱除去能力を低減する。これらの要因は、適切な温度制御系の設計を、従来技術のプロセスに対するものよりも複雑にしてきた。
【0063】
改善されたヒドロホルミル化反応温度制御方法が、反応器から外部熱交換器を通って、かつ反応器へと戻って循環する流れの態様を制御することによって、反応器の内容物の温度を制御することに関する温度制御方式を設計することを伴うことがわかっている。上記の通り、従来技術の制御方式は、外部熱交換器の冷却剤側に焦点を合わせた。本発明のプロセスは、外部熱交換器のプロセス側の態様を制御する。本発明の一実施形態では、本発明のプロセスは、定常状態の反応温度を設定点の+/−1℃以内、好ましくは設定点の+/−0.5℃以内で制御する。
【0064】
触媒の性質は本発明にとって重要ではないことが理解されるべきである。触媒は、高い反応性(反応器中でアルデヒド2グラムモル/リットル(反応器体積)/時を超える)を示すことが好ましい。
【0065】
2つ以上のヒドロホルミル化反応器が所与のオレフィンに対して使用されるとき、トレーン中の第1の反応器の下流のヒドロホルミル化反応器は、より高い温度で動作してもよいが、利用可能なオレフィンの量が、反応流体が下流の反応器に達するときまでに大幅に低減されているため、これらの高温でさえ生成されている熱の量はあまりに低いので、従来の冷却方式が下流の反応器に対して用いられ得る。本発明の一実施形態では、本発明の冷却方式は、全ての反応器に使用される。しかしながら、制御方式の任意の組み合わせが可能である。
【0066】
本発明の一実施形態では、図2を参照すると、反応器(2)または反応器を出る管(4)中の反応流体の温度は、温度検知装置(11)を使用して測定される。温度測定値を示す信号は、検知装置から温度制御装置デバイス(9)に送信される。温度制御装置(9)からの信号は、ポンプ(3)ならびに関連配管(4)及び(10)を用いて、反応器(2)から外部熱交換器(5)に、次いで反応器(2)に戻って循環される流れ(10)の流速を制御するために、制御弁(8)に送信される。本実施形態では、冷却水入口(18)において測定される冷却水流れ(6)の流速及び温度を一定値で設定することが好ましい。
【0067】
別の実施形態が図3に示され、外部冷却器(5)の周囲のバイパス管路(15)が存在し、したがって、バイパス流れの流速の変化は、流れ(10)の温度を急速に変化させ、反応器に戻る流れ(10)の本質的に一定の総流量を維持する。流れ(10)の温度は、流れ(15)及び(16)の流速の比によって決定される。この流れ(10)の温度の迅速な制御、及びしたがって反応器(2)からの熱除去の量は、反応器中の温度変化への迅速な応答を可能にする。
【0068】
別の実施形態は、熱交換器を通る流体流動の迅速かつ可逆的制御をもたらすために、ポンプ吐出ラインから、流動抵抗装置(典型的には、オリフィス板であるが、任意の他の流動抵抗装置が許容され得る)を通って、ポンプの吸込または入口ラインに戻る、バイパス管路を用いる。弁(8)は、好ましくは、熱交換器の前にポンプの吐出側に位置するが、代わりに、熱交換器の後に位置することができる。
【0069】
本発明の一実施形態では、ポンプ(3)は、熱交換器を通る流量を変化させるために可変速ポンプである。しかしながら、当業者は、任意の好適なポンプを作用することができるであろう。
【0070】
上記の実施形態の任意の組み合わせが使用され得ることを理解されたい。
【0071】
本プロセスは、当業者に既知のように、容易に商業的に利用可能であるプロセス制御ハードウェア及びソフトウェアを使用して実施され得る。本発明のプロセスの改善された反応器制御及び安定性は、多変数モデル予測制御(MMPC)、ダイナミックマトリクス制御(DMC)、実時間最適化(RTO)、または先進的制御・最適化(AC&O)などの高度プロセス制御(APC)戦略の効果的な実装のための有用な基礎を提供する。
【0072】
任意の好適なプロセス機器が用いられ得る。ヒドロホルミル化プロセス機器の好適な構成材料の選択を含む設計及び構築は、当業者に周知である。本発明の一実施形態では、熱交換器は、流れから少なくとも75kW/m(反応器体積)を除去することが可能である。
【0073】
図2に示される実施形態では、1つの外部熱交換器が用いられる。また、冷却機器の異なる構成を用いることも可能である。例えば、冷却コイル、反応器ジャケット冷却、及び外部熱交換の任意の組み合わせが用いられ得る。少なくとも1つの外部熱交換器を用いることが好ましい。
【0074】
従来技術のプロセスと比較して、本発明のプロセスは、温度変化へのより迅速な応答を提供し得る。従来技術と比較して、反応器温度の増加が検出された場合、反応器への冷却されたプロセス流体の流量の増加は、反応器に冷却を迅速に送達し、その温度を低減する。熱交換器は、そのような状況における需要の増加を経験し、熱交換器内の温度は変動し得るが、熱交換器中のそのような温度変動は、反応器中の変動よりも好ましい。
【0075】
本発明の特定の実施形態
次の実施例は、本発明を例示するために示されており、その範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0076】
比較実験A(本発明の実施形態ではない)
従来のヒドロホルミル化反応器制御方式の動作を例示するために、シミュレーションが実施される。図1に示されるプロセスの流れは、このシミュレーションの基礎である。図1からのヒドロホルミル化反応器(2)、ポンプ(3)、及び外部冷却器、(5)は、市販されているAspen Plus Dynamics(商標)ソフトウェアを使用してモデル化される。モデルにおいて使用される典型的な初期プロセス条件は、以下に示される。
熱交換器までのプロセスの流れ=1,816メートルトン/時
プロセスの流れの温度=95℃
冷却水流動=735メートルトン/時
冷却水入口温度=48℃
冷却水出口温度=73℃。
熱交換器熱負荷=21,600KW
熱交換器面積=1160平方メートル
熱交換器熱伝達係数=0.85kW/平方メートル/K
反応器反応速度=5.6グラムモル/リットル/時。
【0077】
従来の反応器温度制御方式の結果は、図4に示される。シミュレーションは、95℃の定常状態の反応器温度で開始する。1時間後、反応器温度制御装置設定点は、1℃低下する。この温度設定点の変化は、その系のプロセス制御運動の結果である、振動する不安定な反応器温度を開始する。5時間後、反応器温度制御設定点は、上昇し元の設定点に戻る。次の2時間にわたって、反応器温度は、元の定常状態値に戻る。
【0078】
実施例1
反応器温度制御装置(9)が、ここではライン(10)に位置する弁(8)を使用して、外部冷却器(5)を通るプロセス流体液体循環の流速を調節することを可能にするために、図2に示されるプロセスがシミュレーションの基礎として使用されることを除いて、比較実験Aが繰り返される。他の違いは、冷却水入口温度が制御されるのとは対照的に、48℃に固定されるという点である。改善された反応器温度制御方式の結果が図5に示される。シミュレーションは、95℃の定常状態の反応器温度で開始する。1時間後、反応器温度制御装置設定点は、1℃低下する。この温度設定点の変化は、従来の制御系の高振幅の振動する不安定な反応器温度を開始しない。代わりに、反応器温度制御応答は、1〜5時間目にわたって非常に安定し、制御されている。
【0079】
5時間目に、反応器温度制御設定点は、95℃まで上昇する。反応器温度は、2時間以内に元の温度に戻る。
【0080】
実施例1及び比較実験Aからのデータは、本発明のプロセスがヒドロホルミル化反応の制御の劇的な改善を達成し得ることを実証する。流れ(10)の流動の制御は、より堅固で安定した反応器温度制御系をもたらすと同時に、ヒドロホルミル化反応器に対する安定した動作のより幅広い動作手段を提供する。この方式に対する応答時間は、従来技術の設計よりもはるかに迅速であることがわかっており、反応器温度の驚くほど改善された制御を提供する。
本開示は以下の態様も包含する。
[1] 少なくとも1つのアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下において、少なくとも1つの反応器中の反応流体中のヒドロホルミル化触媒の存在下で、CO、H2、及び少なくとも1つのオレフィンを接触させることと、
前記少なくとも1つの反応器から前記反応流体の流れを除去し、前記流れを熱交換器に通過させることと、
前記流れからある量の熱を除去し、冷却流を形成することと、
前記冷却流を前記反応器に戻すことと、を含み、
前記流れ及び/または前記冷却流のうちの少なくとも1つの少なくとも一部分の流速は、前記反応器中の温度を制御するために制御される、プロセス。
[2] 反応速度は、アルデヒド2グラムモル/リットル(反応器体積)/時を超える、上記態様1に記載の前記プロセス。
[3] 前記触媒は、加水分解性有機リン配位子を含む、上記態様1または2のいずれかに記載の前記プロセス。
[4] 前記触媒の前記触媒金属は、ロジウムである、上記態様1〜3のいずれかに記載の前記プロセス。
[5] 前記反応温度は、100℃未満である、上記態様1〜4のいずれかに記載の前記プロセス。
[6] 前記熱交換器は、前記流れから少なくとも75kW/m3(反応器体積)を除去することが可能である、上記態様1〜5のいずれかに記載の前記プロセス。
[7] 前記定常状態の反応温度は、設定点の+/−1℃以内で制御される、上記態様1〜6のいずれかに記載の前記プロセス。
[8] 前記定常状態の反応温度は、設定点の+/−0.5℃以内で制御される、上記態様1〜7のいずれかに記載の前記プロセス。
[9] 前記冷却流の少なくとも一部分の前記流速は、前記反応器中の前記温度を制御するために制御される、上記態様1〜8のいずれかに記載の前記プロセス。
[10] 前記流れの少なくとも一部分の前記流速は、前記反応器中の前記温度を制御するために制御される、上記態様1〜8に記載の前記プロセス。
[11] 少なくとも1つの高度プロセス制御(APC)戦略が、前記ヒドロホルミル化プロセスを制御するために用いられる、上記態様1〜10に記載の前記プロセス。
図1
図2
図3
図4
図5