(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563949
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】生物の心臓データを処理するための処理装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
A61B6/03 370Z
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-559627(P2016-559627)
(86)(22)【出願日】2015年3月23日
(65)【公表番号】特表2017-509425(P2017-509425A)
(43)【公表日】2017年4月6日
(86)【国際出願番号】EP2015056036
(87)【国際公開番号】WO2015150128
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2018年1月16日
(31)【優先権主張番号】14162702.6
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【弁理士】
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】プレヴラール スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ニッキッシュ ハネス
【審査官】
遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】
特表2013−534154(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/002095(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物の心臓データを処理する処理装置であって、
-前記生物の複数の相違する動脈の血流予備量比を示す第一の血流予備量比値を供給するように構成され、前記第一の血流予備量比値が前記生物の動脈の非侵襲性イメージングデータから計算される、第一の血流予備量比値供給ユニットと、
-前記生物の前記動脈において測定される血流予備量比値を供給するように構成される第二の血流予備量比値供給ユニットと、
-前記供給される第二の血流予備量比値に基づいて、前記供給される第一の血流予備量比値を補正するように構成される、補正ユニットと
を有する、装置。
【請求項2】
前記補正ユニットは、前記生物の前記冠状動脈における位置に対して少なくとも一つの第一の血流予備量比値を、前記生物の前記冠状動脈における同じ位置において測定される第二の血流予備量比値に置換することによって補正する、請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記補正ユニットは、前記生物の前記冠状動脈における相違する位置の少なくとも一つの第二の血流予備量比値を使用して前記第一の血流予備量比を再計算することによって第二の血流予備量比値が現在利用可能でない、又はまだ利用可能でない位置において第一の血流予備量比値を補正する、請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
動脈ツリーモデル供給ユニットを更に有し、供給される動脈ツリーモデルは、前記生物の前記冠状動脈の前記非侵襲性イメージング、動脈内イメージング又はその両方のデータから決定される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項5】
前記補正ユニットは、新たな第二の血流予備量比値が供給されるとき、前記第一の血流予備量比値を補正するように構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記補正ユニットは、前記第一の血流予備量比値及び前記第二の血流予備量比値の間の差が所定の閾値より上のとき、前記第一の血流予備量比値を補正する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項7】
前記第一の血流予備量比値が、前記生物の前記冠状動脈の前記非侵襲性イメージングデータを得ることから10秒以内に計算される、請求項1乃至6の何れか一項に記載の処理装置。
【請求項8】
-請求項1乃至7の何れか一項に記載の処理装置と、
-前記冠状動脈において対応する位置に対する少なくとも一つの第一の血流予備量比値及び対応する第二の血流予備量比値を表示するように構成されるディスプレイユニットと
を有する、生物の心臓データを評価する装置。
【請求項9】
- 生物の心臓領域を非侵襲性イメージングし、血流予備量比値を決定する処理装置を有するイメージング装置と、
- 血流予備量比値の動脈内測定のための測定装置と
を更に有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記イメージング装置が、前記イメージング装置によって検出される検出データから三次元画像データを再構成する画像処理ユニットを更に有する、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
第一の血流予備量比値が補正されるとき、前記ディスプレイユニットは補正血流予備量比を表示するように構成される、請求項7乃至10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
生物の動脈における狭窄の評価のための装置の作動方法であって、前記装置は補正ユニット及びディスプレイユニットを有し、
-前記装置が、前記動脈ツリーの非侵襲性イメージングから得られるデータから計算される前記動脈ツリーの第一の血流予備量比値を受信するステップと、
-前記ディスプレイユニットが、前記動脈における前記位置に関して前記第一の血流予備量比を表示するステップと、
-前記装置が、動脈内測定から得られる前記動脈ツリーの第二の血流予備量比値を受信するステップと、
-前記補正ユニットが、前記第二の血流予備量比値に基づいて前記第一の血流予備量比値を補正するステップと、
-前記ディスプレイユニットが、前記動脈における前記位置に関して前記第二の血流予備量比を表示するステップと
を有する方法。
【請求項13】
動脈ツリーモデル供給ユニットをもたらすステップを更に有し、前記第一及び第二の血流予備量比値は前記動脈ツリーにおける前記位置に関してグラフィカルに表示される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記装置は、第二の血流予備量比値が、前記生物の前記冠状動脈における異なる位置の少なくとも一つの第二の血流予備量比値を使用して利用可能でないか、又はまだ利用可能でない位置において第一の血流予備量比値を計算するステップを更に有する、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
生物の動脈における狭窄の評価のためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるとき、請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法のステップを実行させる命令を有する、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物の心臓データを処理のための処理装置、生物の心臓データを評価するための装置、生物の動脈における狭窄の評価のための方法、及び生物の動脈における狭窄の評価のためのコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
変性狭窄は、G.M. Feuchtner、W.Dichtl他「大動脈弁狭窄患者の検出及び重篤度の定量化のためのマルチスライスコンピュータ断層撮影」(米大学心臓学ジャーナル2006、47(7)、1410-1417)において記載されるように、65歳を超える西欧及び北米の人口の2-7%の発生率で2番目に普通の心血管疾患である。 本発明のコンテキストにおいて、用語狭窄は、動脈のいかなる異常な狭窄化も意味する。 介入心臓学において、狭窄の程度は、カテーテルが冠状動脈にもたらされる血流予備量比(FFR)技術を用いて測定され、動脈における狭窄の前方(近位)及び後方(遠位)の圧力の間の相対的な差が測定され得る。圧力低下がより高いほど、狭窄はより深刻になる。 FFR<0.8の遠位/近位の圧力比率は通常、流量制限とみなされる。
【0003】
例えば米国2012/053918 A1から知られるように、再構成される動脈の情報に基づいてFFR計算を実行することによって狭窄度を決定するためにFFR値は、非侵襲性医用画像(コンピュータ断層撮影、NMR、PETなど)に基づいて計算される、シミュレーション方法が利用可能になった。この「仮想FFR値」はそれから、心臓専門医が、更なる治療方針(例えば、手術又はステント処置のような介入治療又は投薬処方)を決定するための入力として使われてもよい。例えば更なる診断のために、フォローアップ治療がカテーテル法を必要とする場合、実際のFFR値が動脈内測定から測定され得る。
【0004】
通常、例えばアーチファクトのようなイメージングエラー又は再構成アルゴリズムにおける制約のために、計算FFR値は、測定FFR値と異なることが分かっている。ときとして仮想FFR値は、測定FFR値とかなり異なり得るので、患者の動脈系の異なるエリアを探すか、又は異なる治療を決定するかのような、異なる治療方針を心臓専門医に対して保証する。これは、診断又は治療に必要とされる時間のかなりの増加をもたらし得る。それ故にこの増加が回避又は少なくとも低減され得ることは所望される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、心臓専門医の治療方針を変更する必要性を減らして、結果として低減される診断又は治療時間をもたらす、より信頼できるFFR値を供給する、生物の心臓データを処理するための処理装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様において、請求項1記載の、生物の心臓データを処理する処理装置が提示される。
【0007】
処理装置は、生物の動脈系における同じ位置に対して、実際の測定FFRに対するシミュレーションFFR値のチェックを容易にする。補正ユニットは、同じ位置に対して測定FFR値を使って生物の動脈系における特定の位置に対してシミュレーションFFR値を補正する。これはいくつかの利点を有する。 最も重要なことに、心臓専門医による治療の柔軟性及び診断の速さ及び信頼度は改善される。 さらに、計算モデルの質は、計算値を実際の測定値と比較することによってチェックされ、改善された将来モデルがもたらされ得る。
【0008】
本発明の処理装置の好ましい実施例において、補正ユニットは、この値を同じ位置で測られた測定FFR値に置換することによって動脈系における位置に対してシミュレーションFFR値を補正する。この補正は実行しやすく、計算データの代わりに実際の測定データを心臓専門医及び計算モデルに提供し、計算FFR値よりも実際的に実際の状況が反映される。
【0009】
本発明の処理装置のさらに好ましい実施例において、血流予備量比値は、測定血流予備量比値の位置より、動脈系における異なる位置において(再)計算される。これらの(再)計算FFR値は、改善された入力データに基づいており、それ故に実測値により近くなる可能性が高い。 これは信頼度及び速さを向上させ、それによって心臓専門医は彼の診断又は治療において支援される。シミュレーションFFR値及び計算モデルの正確さ、それ故に信頼度は、各々の新たな測定値を用いて大幅に改善されるであろう。
【0010】
本発明による処理装置の他の好ましい実施例は、動脈ツリーモデル供給ユニットを更に有する。 生物の動脈ツリーモデルは冠状動脈の非侵襲性イメージングデータ(例えば、シミュレーションFFR値を供給したCTスキャンのようなCTスキャン)、動脈内イメージングから(例えば、測定FFR値が得られたカテーテルのようなカテーテル上に取り付けられるカメラから)得られるデータ、又は非侵襲性及び動脈内イメージングの組合せから構成される。動脈のモデルは、計算及び/又は測定FFR値を用いてディスプレイユニットによって表示されてもよい。これはそれらの実際の位置に関して心臓専門医に実際的なグラフィック情報及び関連するFFR値を供給する。
【0011】
新たな測定FFR値が利用可能になるとき、補正ユニットがシミュレーション血流予備量モデル値を自動的に補正することは好ましい。 これは、動脈ツリーにおける異なる位置における(再)計算シミュレーションFFR値及び/又は測定値によってシミュレーションFFR値を置換していてもよい。補正値が利用可能になった後できるだけ早く、ディスプレイユニットが補正FFR値を表示することはさらに好ましい。 これは、心臓専門医が、必要な場合、できるだけ早く彼の方針を適応させることを支援する。 FFR値が、イメージングデータが得られてから10秒以内に計算されるとき、多かれ少なかれリアルタイムの状況が心臓専門医に提示され得る。 より好ましくは、値は、5秒以内に、より好ましくは2秒以内に、更により好ましくは1秒以内にさえ計算される。 最も好ましくは、技術的に可能な瞬時計算に近いことである。
【0012】
本発明の更なる態様において、請求項8に記載の生物の心臓データを評価する装置が提示される。
【0013】
本発明の更なる態様において、請求項12に記載の生物の動脈における狭窄の評価のための方法が提示される。
【0014】
本発明の更なる態様において、請求項15に記載の生物の動脈における狭窄の評価のためのコンピュータプログラム製品が提示される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明による処理装置の実施例を概略的に示す。
【
図2】本発明による処理装置の他の実施例を概略的に示す。
【
図3a】測定FFR値が利用可能になる時間に渡って心臓専門医に提示される情報の実施例を概略的に示す。
【
図3b】測定FFR値が利用可能になる時間に渡って心臓専門医に提示される情報の他の実施例を概略的に示す。
【
図3c】測定FFR値が利用可能になる時間に渡って心臓専門医に提示される情報の他の実施例を概略的に示す。
【
図3d】測定FFR値が利用可能になる時間に渡って心臓専門医に提示される情報の他の実施例を概略的に示す。
【
図3e】測定FFR値が利用可能になる時間に渡って心臓専門医に提示される情報の他の実施例を概略的に示す。
【
図3f】測定FFR値が利用可能になる時間に渡って心臓専門医に提示される情報の他の実施例を概略的に示す。
【
図4】本発明による方法の実施例のためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明による処理装置の実施例を概略的に示す。この実施例において、処理装置1は、第一のFFR値供給ユニット11、第二のFFR値供給ユニット12、及び補正ユニット13を有する。FFR値は、ディスプレイユニット14で表示される。
【0017】
第一のFFR値供給ユニット11は、コンピュータ断層撮影イメージング装置、超音波イメージング装置、陽電子放射断層撮影イメージング装置、磁気共鳴イメージング装置、X線イメージング装置、及び当業者に知られる他の非侵襲性イメージング装置又はそれらの組合せのような非侵襲性イメージング装置2から得られる画像を処理する画像処理装置21から得られるシミュレーションFFR値を供給する。画像処理装置21は、例えば当業者に知られている冠状動脈情報のような、再構成される動脈情報に基づく計算を通じて第一のFFR値をシミュレーションすることによって、非侵襲性イメージング装置2によって検出される検出データから第一のFFR値を決定する。好ましくは、第一のFFR値供給ユニットは、動脈ツリーにおいて様々な位置に第一のFFR値を供給する。
【0018】
第二のFFR値供給ユニット12は、動脈内測定、例えば冠状動脈のような動脈3に挿入されるカテーテル31を通じて送られる圧力ワイヤ32によって実行される測定から得られるFFR値を供給し、動脈圧力は動脈内における少なくとも二つの位置、例えば動脈3における既知の狭窄33の前後において測定される。第二のFFR値はそれから、二つの位置で測定される圧力の間の比率として決定される。 狭窄33の位置は、非侵襲性イメージング装置からの再構成画像データの視覚検査によって、又は前記再構成画像データを解析する画像解析アルゴリズムを通じて最初に決定される。 好ましくは、再構成画像データは、同じ非侵襲性イメージング装置2を使って第一のFFR値を得る少なくとも直前に、又は同時に得られる。
【0019】
補正ユニット13において、動脈3における位置に対する供給された第一及び第二のFFR値は互いに比較され、必要な場合、第一のFFR値は補正される。第一のFFRは、第一のFFR値を計算する際にエラーを本質的に引き起こし得る仮定、及びイメージングデータを使うアルゴリズムを使用して画像データから間接的にのみ決定されるが、第二のFFR値は実際の測定値であるため、第二のFFR値が第一のFFR値より動脈3における実際の状況をよく反映することは当然仮定される。それ故に、補正ユニット13は第二のFFR値により多くの重みを与え、好ましくは、それは単に第一のFFR値を第二のFFR値によって置換するであろう。 これは最も簡単で、可能な補正を実行するのが容易である。 しかしながら、第一及び第二のFFR値が正確にアラインされない場合、第一及び第二のFFR値が決定される位置を考慮する、他の補正も使われてもよい。
【0020】
好ましい実施例において、補正ユニットは、生物の冠状動脈における異なる位置の少なくとも一つの第二のFFR値を使用して前記第一のFFR値を再計算することによって第二のFFR値が現在利用可能でない、又はまだ利用可能でない位置において第一のFFR値を補正する。測定データが特定の位置に対して利用可能になるとき、それはその位置において第一のFFR値を改善するだけでなく、それは他の位置、例えば更に動脈3においてFFR値を(再)計算するための、より実際的な基礎としての役割を果たしてもよく、結果として心臓専門医に利用可能な、より信頼できる正確な情報がもたらされる。
【0021】
さらに好ましい実施例において、第一及び第二のFFR値の間の差が所定の閾値を上回るとき、例えば差が1、2、5又は10%をよりも大きいとき、補正ユニット13は、第一のFFR値のみを補正する。この閾値より下の差は心臓専門医の治療方針をおそらく変更しないが、第一のFFR値を補正するか、又は再計算することを不要にすることによって時間は節約される。
【0022】
ディスプレイユニット14は、第一及び第二のFFR値を心臓専門医に表示する。 これは、表、グラフィック画像又は情報の他の何れかの好適な表示の形態でなされてもよい。たとえば、例1は、どのように情報が表の形態で表され得るかを示す。
例1
【0023】
表1は、クリティカル(FFR<=0.8)と識別されている三つの異なる冠状動脈セグメント(近位LAD:近位左前下行枝、遠位LCX:遠位左回旋枝、近位D1:近位対角1)の第一(シミュレーション)及び第二(測定)のFFR値の最初の状況を示す。他の実施例において、クリティカルでないセグメントが示されてもよい。この最初の状況において、例えば動脈の測定プロシージャがまだ開始されていないか、又は測定モジュールがまだこれらのセグメントに達していないため、第一のFFR値は決定されているが、第二のFFRはまだ利用可能でない。第一のFFR値は示されるが、フレーズ「未定」が第二のFFR値に対して示される。他のフレーズ、カラーコード、シンボル(例えば砂時計)又は単にブランクスペースも可能である。
【0024】
表2は、侵襲性測定が「近位LAD」に対して行われ、シミュレーションが再び実行された後の状況を示す。シミュレーションFFRは、「近位D1」に対して0.85、「遠位LCX」に対して0.88に変わった。シミュレーションがそれらは二次的に重要であることを示すとき、心臓専門医はこれらの二つのセグメントの侵襲性評価をスキップするように決定してもよく、それによって必ずしもプロシージャは延長されない。 当然のことながら、心臓専門医は、彼がまだこれらのサイトにおいてFFR値を測定することを決定すべきであり、それから提示される情報の正確さ及び信頼度はさらに改善されるであろう。測定は、シミュレーションFFRより低くても確かに「近位LAD」セグメントがクリティカルFFR値を有することを確認した。補正ユニット13は、更なる計算のために測定FFR値のみを考慮するようにFFR値を補正する。「近位LAD」のためのシミュレーションFFR値はこの場合、この値が補正されたことを心臓専門医に警告するためにブラケットの間に示される。代わりに、それは測定FFR値によって置換され、消去され、色分けされてもよく、又はそれはこの値がもはや現在の値でないことが他の方法で示されてもよい。
【0025】
図2は、本発明による処理装置の更なる実施例を概略的に示す。 この実施例は
図1に示されるものに対応するが、更に、処理装置は動脈ツリー供給ユニット15を有する。 この実施例において、画像処理ユニット21において再構成される画像データに基づいて動脈ツリー供給ユニット15が生物又はそのセグメントの(3D-)モデル化動脈ツリーを供給する。前記画像データは、第一のFFR値の決定のために基礎も形成し、それによって動脈ツリー情報及び第一のFFR値の間で最適なマッチングが確実にされるが、先行して収集される画像データを使うこともでき、それによって検査時間及び放射線ドーズ量は減らされる。 更に又は代わりに、画像データは動脈内イメージングから、例えば測定カテーテル31に取り付けられるカテーテル治療用カメラから得られるイメージングデータに基づいてもよい。これは動脈の内側から実際の画像を供給し、動脈ツリーモデルを改善するために用いられてもよい。
【0026】
動脈ツリーは、狭窄位置を決定する際に心臓専門医を支援するためにディスプレイユニット14によって表示されてもよい。特に好ましい実施例において、第一及び第二のFFR値は、それらが決定されるか、又は測定されている動脈ツリーにおける位置において、又はその近くにおいて表示される。これの具体例は、
図3a〜3fにおいてもたらされる。 この例は、プロシージャの実際の表現としてではなく、本発明を例示する簡略化される態様として意味される。
【0027】
図3aにおいて、動脈ツリーセグメントの3Dモデルは、(頭字語SIM及びFFR値によって示される)動脈ツリーにおける五つの位置に対する第一の(シミュレーション)FFR値を用いて示される。FFR値がクリティカル値より高い(この場合FFR >0.8)とき、それは語「OK」によって示される。 FFR値がクリティカルな場合(この場合FFR <= 0.8)、警告標識は示される。 代わりに、これは、例えばクリティカル値を光らせることによって、又はクリティカルなFFRに対して赤、クリティカルでないFFRに対して緑、及び随意に、境界ケースに対してオレンジ色(例えば0.8<FFR 0.85)のように、二つ又はそれより多くの色で色分けすることによって、異なる態様で示されることができる。
図3aにおいて、シミュレーションFFR値は、クリティカルFFR値がトップから4番目の位置にあることを示す。
【0028】
図3bにおいて、第二の(測定)FFR値は、トップの位置に対して利用可能になっている。 この例において、シミュレーションFFR値は、(頭字語MEAS及び新たなFFR値によって示される)測定FFR値に置換されている。 代わりに、最初のシミュレーションFFR値は、(例1の実施例又はFFR値が動脈ツリーにおけるその位置に対して補正されていることを示す他の方法と同様に)まだ利用可能であってもよい。 他の四つの示される位置のFFR値は、トップ位置に対する補正FFR値を使って再計算される。再計算が進められる間、心臓専門医は砂時計シンボルによってこれを知らされる。代わりに、これは、(例えば、フレーズ「未定」、「再計算」等を用いることによって、又は色分けすることによって)異なる方法で行われ得るか、又は全く行われない(新たな値が利用できるとき、値は単に置換されることを意味する)。
【0029】
図3cは、再計算FFR値の結果を示す。 開始点として補正される、より信頼できるFFR値を使うことにより、トップから4番目の位置に対するクリティカルなFFR値が確認される。 トップからの3番目及び5番目の位置に対する再計算FFR値はまだクリティカルではないと分類されるが、それらはクリティカル値に非常に近いため、更なる調査が心臓専門医によって考慮される可能性は高いであろう。
【0030】
図3dにおいて、第二の位置の測定FFR値は利用可能になっており、その位置に対してクリティカルでない値が確認されている。 再び、残りのシミュレーションFFR値は再計算される。結果は
図3eに示され、この場合、トップから3、4及び5番目の位置に対する補正FFR値が示される。 計算のためのより正確な開始点を使用すると、この場合、トップから3番目及び5番目の位置も0.8のクリティカル値より下に降下していることが分かる。トップから5番目の位置に対するシミュレーションFFR値がクリティカルになっているため、その特定の動脈枝に対する更なる検査及び測定は確実にされ、先行する、あまり信頼できないシミュレーション値が利用可能になっている場合、それは行われ得ない。 その位置に対するシミュレーションFFR値が(明らかに)クリティカルでない場合、検査時間はその特定の枝を測定する必要がないことによって減らされることができる。
【0031】
図3fにおいて、トップから3番目の位置に対するFFRも測定され、残りの二つのシミュレーションFFR値は再計算されている。3番目の位置に対する測定FFRは、最初のシミュレーション値より先行する測定に基づくシミュレーション値により近いが、計算のための開始点はずっと正確で信頼できるため、それは正しい。これは、動脈狭窄の可能な危険な結果を避けるための治療選択に影響を与える可能性が高い。
【0032】
図4は、動脈ツリーの非侵襲性イメージングから得られるデータから計算される動脈ツリーの第一の血流予備量比値を受信するステップ111、動脈における位置に関して第一の血流予備量比値を表示するステップ114、動脈内測定から得られる動脈ツリーの第二の血流予備量比値を受信するステップ112、第二の血流予備量比値に基づいて第一の血流予備量比値を補正するステップ113、及び動脈における位置に関して第二の血流予備量比値を表示するステップ114を有する、生物の動脈における狭窄の評価のための方法のためのフローチャートを示す。
【0033】
好ましい実施例において、本方法は、動脈ツリーモデル供給ユニット115を供給し、第一及び第二の血流予備量比データが動脈ツリーにおける位置に関してグラフィカルに表示される114ステップを更に有する。
【0034】
さらに好ましい実施例において、本方法は、第二の血流予備量比値が、生物の冠状動脈における異なる位置の少なくとも一つの第二の血流予備量比値を使用して利用可能でないか、又はまだ利用可能でない位置において第一の血流予備量比を計算するステップを更に有する。
【0035】
本発明は、コンピュータプログラム製品がコンピュータ上で実行されるとき、本方法のステップを実行させる命令を有するコンピュータプログラム製品によって実行されてもよい。
【0036】
本発明は、図面及び上述の記載において詳細に図示されると共に記載されているが、このような図面及び記載は例示的であり、限定的なものでないことは考慮されるべきであり、本発明は開示の実施例に限定されるものではない。
【0037】
開示の実施例に対する他のバリエーションは、図面、開示、及び従属請求項の検討から特許請求の範囲に記載の発明を実施する当業者によって理解され得ると共にもたらされ得る。
【0038】
請求項において、「有する、有する(comprising)」という語は、他の構成要素若しくはステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、複数を除外しない。単一のユニット又は装置は、請求項に列挙されるいくつかのアイテムの機能を果たすことができる。
【0039】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。
【0040】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又はその一部として供給される、例えば光学記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶され/配布されることができるが、他の形式で、例えばインターネット又は他のワイヤド又はワイヤレス通信システムを介して配布されることもできる。
【0041】
請求項における任意の参照符号は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。