(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
β−2アゴニスト、吸入コルチコステロイド、抗ムスカリン薬およびホスホジエステラーゼ−4阻害剤からなる群から選択される、1つ以上の医薬的に活性な成分をさらに含む、請求項1に記載の医薬エアゾール溶液組成物。
吸入コルチコステロイドが、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニドまたはその22R−エピマー、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン、ブチキソコルト、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、ロテプレドノールおよびロフレポニドの群から選択される、請求項7に記載の医薬エアゾール溶液組成物。
ホルモテロール分解生成物全体の濃度が、理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して10%w/w未満であり、ホルモテロールフマル酸塩の残留濃度がその最初の含有量に対して90%w/wを超える、請求項1に記載の医薬エアゾール溶液組成物。
ホルモテロール分解生成物全体の濃度が、理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して2%w/w未満であり、ホルモテロールフマル酸塩の残留濃度がその最初の含有量に対して95%w/wを超える、請求項11に記載の医薬エアゾール溶液組成物。
ホルモテロール分解生成物全体の濃度が、理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して10%w/w未満であり、ホルモテロールフマル酸塩の残留濃度がその最初の含有量に対して90w/wを超えること(fact)をさらに特徴とする、請求項14に記載の方法。
ホルモテロール分解生成物全体の濃度が、理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して2%w/w未満であり、ホルモテロールフマル酸塩の残留濃度がその最初の含有量に対して95%w/wを超えることをさらに特徴とする、請求項14または15に記載の方法。
【背景技術】
【0004】
グリコピロニウム臭化物(グリコピロレートとしても知られる)は、特定の麻酔薬の投与に関連する唾液分泌を減少させるために、および消化性潰瘍の補助療法として、使用されるムスカリンM3抗コリン薬である。これは、喘息症状の処置(treatment)において有効であることも報告されている(Hanselら、Chest 2005;128:1974〜1979)。
【0005】
WO 2005/107873は、小児喘息の処置のためのグリコピロレートの使用に関する。
【0006】
WO 01/76575は、グリコピロレートの肺送達(delivery)のための制御放出製剤について開示している。この製剤は呼吸器疾患、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)の処置における使用を意図している。この特許出願は基本的に、乾燥粉末吸入器(DPI)による送達に好適な乾燥粉末製剤に注目している。
【0007】
WO 2005/074918は、グリコピロレートとグルココルチコイド薬との組合せ、および呼吸器疾患を処置するためのそれらの使用について開示している。
【0008】
WO 2005/110402は、炎症性または閉塞性気道疾患の処置のための、グリコピロレートと、インダン類(class of indane)またはベンゾチアゾール−2−オン誘導体のβ−2アゴニストとの組合せに言及している。
【0009】
WO 2006/105401は、呼吸性、炎症性または閉塞性気道疾患の予防および処置のための、抗コリン薬、コルチコステロイドおよび長時間作用性β−2アゴニストの組合せに言及しており、グリコピロレートは任意の抗コリン薬の中の1つである。
【0010】
WO 2007/057223およびWO 2007/057222によれば、グリコピロニウム臭化物と抗炎症性ステロイド、特にフロ酸モメタゾンとの組合せが、炎症性および閉塞性気道疾患の処置において治療上の利益をもたらすと報告されている。
【0011】
WO 2007/057221およびWO 2007/057219はそれぞれ、グリコピロニウム塩と、インダニル誘導体β−2アゴニスト(もしくはアナログ)、または抗炎症性ステロイド、特にフロ酸モメタゾンとの組合せに言及している。
【0012】
WO 00/07567は、例4において、微粒子化活性物質(micronized active)、つまりホルモテロールフマル酸塩、グリコピロニウム臭化物およびクロモグリク酸二ナトリウムの混合物に対し、2重量%エタノールと一緒に、HFAと一酸化二窒素との噴射剤混合物を添加する、懸濁エアゾール製剤について開示している。
【0013】
「Martindale. The complete drug reference」2002年1月、グリコピロニウム臭化物に関する研究論文(467ページ)は、添加物および注射用の水性輸液(aqueous infusion solution)とこの物質の親和性についての研究において、エステルの加水分解のために、6を上回るpHではグリコピロニウム臭化物の安定性が疑わしいことを示している。
【0014】
US 2002/025299は、様々な活性成分の加圧エアゾール溶液製剤を開示しており、その中には、HClによりさらに酸性化され、そして、ステンレス鋼またはアルマイト(anodised aluminium)などの、あるいは、不活性有機コーティングでさらに覆われた(lined with)、所定の缶中で保管される、ホルモテロールまたはそのジプロピオン酸ベクロメタゾンとの組合せが含まれる。
【0015】
WO 2005/074900は、炎症性または閉塞性呼吸器疾患の処置のための、抗コリン薬とβ−2模倣薬(mimetic agent)との吸入可能な組合せを開示しており、例において、DPI製剤またはpMDI懸濁液のいずれかとして、ホルモテロールと組み合わせた、グリコピロニウム臭化物のR,R−エナンチオマーの製剤を示している。
【0016】
US 2006/0257324は、実質的に同じ粒径分布を有し、従って、同じ肺野領域(lung region tract)での共沈着(co−deposition)を可能にする、HFA噴射剤−共溶媒系に溶解した2つ以上の薬剤の組合せの送達を開示している。これらの製剤は、β−2アゴニスト(ホルモテロールまたはカルモテロールが例示される)、およびコルチコステロイド(ジプロピオン酸ベクロメタゾンが例示される)、あるいは抗コリン薬、例えばイプラトロピウム、オキシトロピウム、チオトロピウムまたはグリコピロニウム臭化物を含み、これらの後者は明細書において総称的に引用されるのみである。
【0017】
ホルモテロールは、気管支の平滑筋を弛緩させ、気道を開かせて喘鳴状態を低減させることが可能なβ−2アドレナリンアゴニスト薬である。それは通常、喘息およびその他の呼吸器状態の管理(management)に使用される。
【0018】
近年、ホルモテロールフマル酸塩およびジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)を含む有効な組合せ治療薬が、商品名Foster(登録商標)として入手可能となっている。前記製品は、加圧定量吸入器(pMDI)も含めた多様なエアゾール手段によって肺へ送達されるようにデザインされる。
【0019】
この点において、ホルモテロールフマル酸塩のエアゾール溶液は比較的不安定であり、準最適な(suboptimal)条件下で保管された場合、貯蔵寿命が短いことが知られている。この弱点を防ぐため、Foster(登録商標)組成物は、例えばEP 1157689に記載されるように、選択された明白なpH範囲でホルモテロール成分を安定化させるため、好適な量の無機酸を組み込むことにより適切に開発された。
【0020】
WO 2011/076843において、さらに、出願者は、グリコピロニウム臭化物をホルモテロールまたはその塩との組合せとして含み、任意でBDPなどの吸入コルチコステロイドを含み、ホルモテロールおよびグリコピロニウム臭化物成分がともに適切に安定化されるように、好適な量の鉱酸、特に0.1〜0.3μg/μlの範囲内の1M HClが加えられた、pMDIエアゾール溶液製剤を開示している。さらに、上記組成物により、そこではDP3と呼ばれる分解生成物の量を低濃度(low level)に維持することが可能となった。
【0021】
しかし、ホルモテロールおよびグリコピロニウム成分両方に対する安定化補助剤として比較的多量の酸を使用すると、25℃および相対湿度(RH)60%で3ヶ月間保管して検出されたDP3の量は、実際には優れていた。
【0022】
したがって、WO 2011/076843に開示されるように、例えばエアゾールキャニスターを充填するプロセスにおいて、真空圧着(vacuum crimping)によって酸素をパージするステップを組み込むなどにより、エアゾールキャニスターのヘッドスペースから酸素を除去することを含むさらなるステップが、DP3含有量を低下させるために必要となるかもしれない。
【発明の概要】
【0023】
このような組合せの製剤開発中に、分解生成物DP3がN−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド(実験セクションでの分析的詳細を参照)であるとそのとき同定された。
【0024】
この分解生成物が、同定/定性閾値(identification/qualification threshold)(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して1.0%w/w以上[ICHガイドラインQ3B(R2)で定義される])を有意に上回って定量された場合、分解生成物の形成はこれらのpMDI組合せ製剤の潜在的な問題を表すかもしれないので、製造中、エアゾールキャニスター充填において、専用のパージするステップを必要とし、酸素の除去を含む、既知の手段以外の、許容可能な閾値より低くDP3含有量を低下させる手段が特に有利でありうる。
【0025】
従って、このように、理想的には、DP3などの分解生成物を低濃度に維持するために別に必要とされるかもしれない、温度または湿度の特定の保管条件が必要とされない、長期にわたる製品寿命を通して、有効用量(dose)および一定用量で各医薬的に活性な成分が適切に肺に送達されるように、吸入コルチコステロイドなどの追加の活性成分、特にジプロピオン酸ベクロメタゾンを任意で併用した、ホルモテロールまたはその塩または前記塩の溶媒和物、およびグリコピロニウム臭化物の治療上の利益を組み合わせる、臨床的に有用なエアゾール組合せ製品を提供することが望ましい。
【0026】
今、我々は、上記製剤の組合せが、フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされ、さらに標準のバルブを備え付けたアルミニウム缶中に一旦適切に保管されると、温度および湿度の過酷な条件下での保管後に決定される検出閾値未満であっても、貯蔵寿命中の分解生成物量、特にDP3の量を最小化することを可能にすることを思いがけず見出した。
【0027】
発明の要約
したがって本発明は、加圧定量吸入器における使用を意図した医薬エアゾール溶液組成物であって、
(a)作動1回あたり5〜26μgの範囲内の投与量(dosage)のグリコピロニウム臭化物、
(b)作動1回あたり1〜25μgの範囲内の投与量のホルモテロール、またはその塩、または前記塩の溶媒和物、
(c)HFA噴射剤、
(d)共溶媒、
(e)安定化させる量の鉱酸
を含み、前記組成物が、フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされたエアゾール缶中に含まれる、医薬エアゾール溶液組成物を提供する。
【0028】
本発明によれば、25℃および相対湿度(RH)60%の加速条件下で少なくとも6ヶ月間保管した場合、または40℃および相対湿度(RH)75%の加速条件下で1ヶ月間保管した場合、以下、簡単にDP3と呼ぶ、分解生成物N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドの量が、定量下限である、理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して0.10%w/w未満である。
【0029】
任意で、組成物は、さらに、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、フロ酸モメタゾン、ブデソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、シクレソニド、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、メチルプレドニゾロンおよびプレドニゾンからなる群から選択される吸入コルチコステロイドを含む。
【0030】
別の態様では、本発明は、
(a)作動1回あたり5〜26μgの範囲内の投与量のグリコピロニウム臭化物、
(b)作動1回あたり1〜25μgの範囲内の投与量のホルモテロール、またはその塩、または前記塩の溶媒和物、
(c)HFA噴射剤、
(d)共溶媒、
(e)安定化させる量の鉱酸、および、任意で、
(f)吸入コルチコステロイド
を含む、加圧定量吸入器における使用を意図した医薬エアゾール溶液組成物とともに使用するための、フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされたエアゾール缶を提供する。
【0031】
さらに別の態様では、本発明は、
(a)作動1回あたり5〜26μgの範囲内の投与量のグリコピロニウム臭化物、
(b)作動1回あたり1〜25μgの範囲内の投与量のホルモテロール、またはその塩、または前記塩の溶媒和物、
(c)HFA噴射剤、
(d)共溶媒、
(e)安定化させる量の鉱酸、および、任意で、
(f)吸入コルチコステロイド
を含む、加圧定量吸入器における使用を意図した医薬エアゾール溶液組成物の貯蔵寿命中の、分解生成物N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド(DP3)の量を低減させる方法であって、
フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされたエアゾール缶中に前記組成物を含ませるステップを含む、方法を提供する。
【0032】
さらに別の態様では、本発明は、
(a)作動1回あたり5〜26μgの範囲内の投与量のグリコピロニウム臭化物、
(b)作動1回あたり1〜25μgの範囲内の投与量のホルモテロール、またはその塩、または前記塩の溶媒和物、
(c)HFA噴射剤、
(d)共溶媒、
(e)安定化させる量の鉱酸、および、任意で、
(f)吸入コルチコステロイド
を含む、加圧定量吸入器における使用を意図した医薬エアゾール溶液組成物用の容器としての、フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされたエアゾール缶の使用を提供する。
【0033】
さらなる態様では、本発明は、喘息およびCOPDを含めた閉塞性呼吸器障害の予防および/または処置のための、上記のエアゾール組成物の使用を提供する。
【0034】
好ましい実施形態の詳細な説明
(a)作動1回あたり5〜26μgの範囲内の投与量のグリコピロニウム臭化物、
(b)作動1回あたり1〜25μgの範囲内の投与量のホルモテロール、またはその塩、または前記塩の溶媒和物、
(c)HFA噴射剤、
(d)共溶媒、
(e)安定化させる量の鉱酸、および、任意で、
(f)吸入コルチコステロイド
を含む、加圧定量吸入器における使用を意図した医薬エアゾール溶液組成物において、フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む、特定の、内部をコーティングされた金属缶の使用により、使用される計量バルブ(metering valve)の種類とは独立して、組成物が25℃および相対湿度(RH)60%の加速条件下で少なくとも6ヶ月間保管された場合に、ホルモテロールおよびグリコピロニウム臭化物の相互作用により形成される、分解生成物N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドの濃度が、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)定量下限である、0.10%w/w未満に維持されることが思いがけず判明した。
【0035】
この特定のキャニスターで製造された本組合せの加圧エアゾール溶液組成物は、25℃およびRH60%で6ヶ月間保管後、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)定量下限0.10%w/w未満の分解生成物DP3濃度に加え、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)10%w/w未満、好ましくは3%w/w未満、最も好ましくは2%w/w未満で、許容可能限度内のホルモテロール分解生成物全体の濃度を示し、また、その最初の含有量に対し、90%w/wを超える、好ましくは92%を超える、最も好ましくは95%w/wを超える、組成物の中の最も不安定な成分である、ホルモテロールフマル酸塩の残留濃度の維持を示した。
【0036】
グリコピロニウム臭化物および任意の吸入コルチコステロイド濃度は、最初の各濃度とほぼ同じに維持された。
【0037】
市販されている、様々なポリマーまたは不動態化技術(passivation technologies)で内部をコーティングされたその他の種類の缶は、前記組合せ成分の適切な化学安定性プロファイルおよび前記特定の分解生成物の形成を制御し続けることができなかった。
【0038】
グリコピロニウム臭化物は、3−[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドと化学的に定義され、(3R,2’R)−、(3S,2’R)−、(3R,2’S)−および(3S,2’S)−の構造を有する4つの潜在的な種々の立体異性体に対応する、2つのキラル中心を有する。これらの純粋なエナンチオマーまたはジアステレオマーまたはそれらの任意の組合せのうち、いずれかの形態のグリコピロニウム臭化物が、本発明の実施に際して使用可能である。本発明の一実施形態においては、トレオ混合物と定義され、グリコピロレートとしても知られる、(3S,2’R)、(3R,2’S)−3−[(シクロペンチルヒドロキシフェニルアセチル)オキシ]−1,1−ジメチルピロリジニウムブロミドのラセミ混合物が好ましい。グリコピロニウム臭化物は、製剤中に0.005〜0.14%(w/w)、好ましくは0.008〜0.090%(w/w)、より好ましくは0.01〜0.045%(w/w)の範囲内の量で存在し、%(w/w)は、組成物の総重量に対するパーセントとして表される、成分の重量による量を意味する。
【0039】
グリコピロレートは市販されており、そして、US 2,956,062またはFranko BV and Lunsford CD、J Med Pharm Chem 2(5)、523〜540、1960に記載される方法に従って合成することができる。
【0040】
ホルモテロールは、通常、ラセミ混合物(R,R)、(S,S)として治療に使用され、(±)、(R
*,R
*)−N−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドと化学的に定義され、遊離塩基、または塩、またはその溶媒和物の形態であってよい。好ましくは、ホルモテロールはそのフマル酸塩の形態で提供され、より好ましくは、ホルモテロール塩の溶媒和物の形態がホルモテロールフマル酸塩二水和物である。ホルモテロールフマル酸塩は、例えば、製剤中、0.002〜0.08%w/w、好ましくは0.005〜0.02%w/wの量で使用可能である。
【0041】
組成物の医薬的に活性な成分が、噴射剤および共溶媒の混合物中に完全にかつ均一に溶解していることが好ましい、すなわち、組成物は好ましくは溶液製剤である。
【0042】
本発明は、活性成分が製剤中に完全に溶解している溶液製剤に言及しているので、明細書にホルモテロールフマル酸塩が総称的に引用される場合、市販されている溶媒和物形態である、ホルモテロールフマル酸塩およびホルモテロールフマル酸塩二水和物両方の形態が意図される。
【0043】
本発明の製剤中に組み込まれる共溶媒は噴射剤よりも極性が高く、噴射剤中に、組成物の医薬的に活性な成分(ホルモテロールフマル酸塩、グリコピロニウム臭化物および任意で吸入コルチコステロイド)を可溶化させることが可能な量で、医薬的に許容可能なアルコールまたはポリオールなどの物質を1つ以上含んでいてよい。
【0044】
有利には、アルコール共溶媒は、例えば、エタノールおよびイソプロピルアルコールなどの低分子分岐鎖または直鎖アルキル(C
1〜C
4)アルコールの群から選択される。好ましくは、共溶媒はエタノールである。
【0045】
有利には、ポリオール共溶媒は、グリセロール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールから選択される。
【0046】
共溶媒の濃度は、製剤中の活性成分の最終濃度および噴射剤の種類によって変化することができる。例えば、エタノールは5〜30%(w/w)、好ましくは8〜25%(w/w)、より好ましくは10〜15%(w/w)の範囲内に含まれる濃度で使用することができる。好ましい一実施形態において、エタノール濃度は約12%(w/w)である。
【0047】
組成物の噴射剤成分は任意の加圧液化(pressure−liquefied)噴射剤であってよく、好ましくはヒドロフルオロアルカン(HFA)または種々のHFAの混合物であり、より好ましくはHFA134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)、HFA227(1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン)、およびそれらの混合物からなる群から選択される。好ましいHFAはHFA134aである。HFAは70〜95%(w/w)、好ましくは85〜90%(w/w)の範囲内の量で組成物中に存在しうる。
【0048】
組成物中の噴射剤と共溶媒との比は70:30〜95:5(w/w)の範囲内である。
【0049】
グリコピロニウム臭化物およびホルモテロールを安定化させるのに十分な、安定化させる量の鉱酸は、製剤の0.1〜0.3μg/μl、好ましくは0.15〜0.28μg/μl、より好ましくは0.18〜0.26μg/μl、さらにより好ましくは0.200〜0.240μg/μl、最も好ましくは0.200〜0.227μg/μl、特には製剤の0.213〜0.222μg/μlの範囲内の1M塩酸(HCl)に相当する酸の量である。
【0050】
異なるモル濃度のHClまたは別の無機酸(鉱酸)を、本発明の組成物における1M HClの代わりとしてもよい。例えば、1M HClとは異なる濃度の酸を使用する場合、その量は、当業者に知られている計算ステップに従って、その濃度に対して釣り合わせなければならない。
【0051】
別の酸は、任意の医薬的に許容可能な一塩基または多塩基酸、例えば(ただしこれに限定されない)、ハロゲン化水素(塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸など)、リン酸、硝酸、硫酸およびハロゲンオキソ酸などであってよい。
【0052】
任意で、エアゾール溶液組成物は、当技術分野で既知の、その他の医薬添加剤または添加物を含んでいてよい。特に、本発明の組成物は、1つ以上の低揮発性成分を含んでいてよい。吸入器の作動に際し、エアゾール粒子の空気力学的質量中央径(mass median aerodynamic diameter)(MMAD)を増大させるため、および/または、噴射剤/共溶媒混合物における活性成分の溶解性を改善させるため、低揮発性成分は有用である。
【0053】
低揮発性成分は、存在する場合、25℃での蒸気圧が0.1kPa未満であり、好ましくは0.05kPa未満である。低揮発性成分の例は、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸アスコルビル、トコフェロールエステルなどのエステル;プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなどのグリコール;および飽和有機カルボン酸(例えば、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸)または不飽和カルボン酸(例えば、オレイン酸もしくはアスコルビン酸)などの界面活性剤である。
【0054】
低揮発性成分量は、0.1〜10%w/w、好ましくは0.5〜5%(w/w)、より好ましくは1〜2%(w/w)の間で変化することができる。
【0055】
別の実施形態において、作動に際し、エアゾール液滴のMMADを増大させることなく活性成分の溶解性に有利に影響を与えるために、任意で、0.005〜0.3%(w/w)の間に含まれる水の量が、組成物に添加されてよい。
【0056】
有利には、本発明の組成物は、共溶媒、噴射剤および安定化させる量の酸以外の添加剤(例えば界面活性剤)を含まない。
【0057】
さらに、本発明の医薬組成物は、別々の、連続的な、または同時の使用のための、1つ以上の追加の医薬的に活性な薬剤を含んでいてよい。組成物の1つ以上の追加の医薬的に活性な薬剤は、呼吸器疾患およびそれらの症状の予防または処置のための、当技術分野で既知な任意の活性成分を含む。1つ以上の追加の医薬的に活性な薬剤の例は、以下の種類から選択される:
サルブタモール、フェノテロール、カルモテロール(TA−2005;CHF4226)、インダカテロール、ミルベテロール、ビランテロール(GSK642444)、オロダテロール、アベジテロール、テルブタリン、サルメテロール、ビトルテロール、メタプロテレノールおよびそれらの塩、任意で単一の立体異性体またはそれらの混合物の形態、の群から選択される、β−2アゴニスト;
ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニドまたはその22R−エピマー、シクレソニド、フルニソリド、プロピオン酸フルチカゾン、フロ酸フルチカゾン、フロ酸モメタゾン、ブチキソコルト、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、ロテプレドノールおよびロフレポニドの群から選択される、吸入コルチコステロイド;
臭化物塩、またはその他の医薬的に許容可能な対イオンを含む塩としての、メトスコポラミン、イプラトロピウム、オキシトロピウム、トロスピウム、チオトロピウム、アクリジニウムおよびウメクリジニウムから選択される抗ムスカリン剤;
CHF6001、シロミラスト、ロフルミラスト、テトミラスト、オグレミラストおよびそれらの塩から選択されるホスホジエステラーゼ−4(PDE−4)阻害剤。
【0058】
好ましい実施形態において、本発明の組成物は、ホルモテロールフマル酸塩およびグリコピロニウム臭化物成分に加えて、ジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)、ブデソニド、フロ酸フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾンおよびフロ酸モメタゾンから選択される吸入コルチコステロイドを含む。その実施形態において、より好ましい吸入コルチコステロイドは、BDPおよびブデソニドから選択される。BDPまたはブデソニドは、0.02〜0.8%w/w、より好ましくは0.042〜0.43%w/wの量で存在する。最も好ましい吸入コルチコステロイドはBDPである。
【0059】
本発明の組成物は、任意の好適な既知の加圧MDI器具(device)から吸入可能である。製剤の医薬的に活性な各成分の望ましい用量は、成分の独自性(identity)ならびに疾患状態の重症度および種類に左右されるが、好ましくは、活性成分の治療量が1回または2回の作動で送達される用量である。概して、活性成分の用量は、作動1回あたり約0.5〜1000μg、例えば約1〜300μg/作動、時には約5〜150μg/作動の範囲内である。当業者は、医薬的に活性な各成分の好適な投与量をいかにして決定するかについて熟知している。
【0060】
二水和物形態でのホルモテロールフマル酸塩に関して、好ましい投与量は作動1回あたり1〜24μgの範囲内であり、より好ましくは作動1回あたり6〜12μgの範囲内である。特定の実施形態において、ホルモテロールフマル酸塩二水和物の用量は、作動1回あたり6または12μgである。
【0061】
グリコピロニウム臭化物に関して、好ましい投与量は作動1回あたり5〜26μgの範囲内であり、より好ましくは作動1回あたり6〜25μgの範囲内である。特定の実施形態において、グリコピロニウム臭化物の用量は、作動1回あたり6、12.5または25μgである。
【0062】
任意の成分に関して、それが吸入コルチコステロイドから選択される場合、好ましい投与量は作動1回あたり20〜1000μgの範囲内であり、好ましくは作動1回あたり50〜250μgの範囲内である。特定の実施形態において、ジプロピオン酸ベクロメタゾンおよびブデソニドの用量は、作動1回あたり50、100または200μgから選択される。
【0063】
本発明の医薬組成物は、当技術分野で既知のpMDI器具に充填される。前記器具は計量バルブを装えた缶を含む。計量バルブを作動させると噴霧製品のほんの一部が放出される。
【0064】
当技術分野で既知の缶の一部または全てが、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼またはアルマイトなどの、金属製であってよい。代わりに、キャニスターはプラスチック缶またはプラスチックコーティングされたガラス瓶であってもよい。
【0065】
pMDIのための金属キャニスターは、その内部表面の一部または全てを、従来のコーティングまたはプラズマコーティングにより適用される、不活性な有機または無機コーティングで不動態化されるか、あるいは、覆われていてよい。コーティングの例は、エポキシフェノール樹脂、パーフルオロ化ポリマー(perfluorinated polymer)、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン、パーフルオロアルコキシアルキレン、パーフルオロアルキレン、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリエーテルスルホン(PES)、または、フッ化エチレンプロピレンポリエーテルスルホン(FEP−PES)混合物、あるいは、それらの組み合わせなどである。その他の好適なコーティングは、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、または、それらの組合せであってよい。
【0066】
本発明によれば、缶はその内部表面をFEPポリマーまたはFEP−PES混合物を含む樹脂でコーティングされている。
【0067】
好適な缶は、例えば3M、PresspartおよびPressteckなどの製造業者から入手可能である。
【0068】
缶は、治療上有効な用量の活性成分を送達するための計量バルブで閉じられる。通常、計量バルブアセンブリは、その中に開口部が形成される口金(ferrule)、計量チャンバーを収納する、口金に取り付けられた本体成形物(body moulding)、コアおよびコア伸長部(core extension)からなるステム(stem)、計量チャンバー周りの内側および外側シール(seal)、コア周りのスプリング、ならびに、バルブを通して噴射剤が漏れるのを防止するためのガスケットを含む。
【0069】
計量バルブ周りのシールおよびガスケットシールは、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)、ネオプレンおよびブチルゴムから選択されるエラストマー材料を含んでいてよい。ブチルゴムの中では、クロロブチルおよびブロモブチルゴムが好ましく選択される。EPDMゴムが特に好ましい。
【0070】
計量チャンバー、コアおよびコア伸長部は、例えば、ステンレス鋼、ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT))、または、アセタールなどの好適な材料を使用して製造される。スプリングはステンレス鋼で製造され、最終的にチタンを含む。口金は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、または、アルマイトなどの金属製であってよい。好適なバルブは、例えば、Valois−Aptar、Bespak plc、V.A.R.I.、3M−Neotechnic Ltd.、Rexam、Costerなどの製造業者から入手可能である。
【0071】
pMDIは、作動1回あたり、25〜150μlの範囲内、好ましくは50〜100μlの範囲内、より好ましくは50μlまたは63μlの量を送達可能な計量バルブにより作動する。
【0072】
好都合には、充填された各キャニスターは、患者の肺へ薬物(medicament)を投与する定量吸入器を形成するために使用される前に、好適なチャネリング器具(channelling device)に取り付けられる。好適なチャネリング器具は、例えば、バルブアクチュエーター、および円柱状または円錐状通路(cone−like passage)を含み、この通路を通って薬物が充填されたキャニスターから計量バルブを経て患者の口、例えば、マウスピースアクチュエーターに送達されうる。
【0073】
典型的な配置において、バルブステムは、膨張チャンバー(expansion chamber)へ通じるオリフィスを有するノズルブロック内のバルブステム容器(valve stem receptacle)中に据え付けられる。膨張チャンバーはマウスピース内へ伸びる出口オリフィスを有する。通常、直径0.15〜0.45mmの範囲内、長さ0.30〜1.7mmのアクチュエーター出口オリフィスが、好適である。好ましくは、直径0.2〜0.45mm、例えば、0.22、0.25、0.30、0.33または0.42mmのオリフィスが使用される。
【0074】
本発明の特定の実施形態において、WO 03/053501に記載されるように、直径0.10〜0.22mm、特に、0.12〜0.18mmの範囲内のアクチュエーターオリフィスを利用することが有用でありうる。前記微細なオリフィス(fine orifice)の使用により、雲の発生(cloud generation)の持続期間を増大させることもでき、ゆえに、雲の発生と患者のゆっくりした吸気との協調を促すことができる。
【0075】
本発明の組成物の送達に好適なアクチュエーターは、(バルブステム容器の縦軸と平行である(aligned with))缶の縦軸が、アクチュエーターオリフィスと通常平行であるマウスピースの縦軸に対して90°以上の角度で傾いている従来のアクチュエーターであるが、アクチュエーター出口オリフィスの縦軸がバルブステム容器の縦軸と平行である、WO 2012/032008によるアクチュエーターも使用できる。
【0076】
本発明の組成物の送達に好適な他のアクチュエーターは、ノズルブロックオリフィスが、マウスピース部分の縦軸と平行である縦軸において、オリフィス開口部からマウスピース部分内へ伸びる管状部材(tubular element)の存在を特徴とする、WO 2014/033057に開示されるアクチュエーターである。特に、前記管状部材は、凹部(recess)内のオリフィス開口部を囲うように配置される。
【0077】
製剤への水の侵入を避けるべき場合には、水の浸入に抵抗可能である柔軟なパッケージでMDI製品を包装することが望まれるかもしれない。キャニスターから漏れる可能性のあるあらゆる噴射剤および共溶媒を吸着可能であるパッケージ(例えばシリカゲルまたはモレキュラーシーブ)内に材料を組み込むことも望まれるかもしれない。
【0078】
任意で、本発明の組成物で充填されたMDI器具は、吸入器の正しい使用を支持する好適な補助器具とともに利用できる。前記補助器具は市販されており、その形状やサイズによって、「スペーサー」、「リザーバー」または「膨張チャンバー」として知られている。例えば、Volumatic(登録商標)は、最も広く知られ、使用されているリザーバーの1つであり、一方、Aerochamber(登録商標)は、最も広く使用され、知られているスペーサーの1つである。好適な膨張チャンバーは、例えば、WO 01/49350で報告されている。
【0079】
本発明の組成物は、普通の加圧息作動性吸入器(pressurised breath−activated inhaler)、例えば、Easi−Breathe(登録商標)およびAutohaler(登録商標)の登録名で知られる吸入器などでも使用できる。
【0080】
さらに、本発明の組成物は、アクチュエーターの内部に統合される、または、アクチュエーターの外部から上部に搭載される(top−mounted)ことができる、当技術分野で既知の、機械式もしくは電子式用量カウンターまたは用量インジケーターが備え付けられたアクチュエーターを通して投与できる。このような用量カウンターまたは用量インジケーターは、それぞれ、投与された用量数もしくは範囲、および/または、缶に残っている用量数もしくは範囲を示すことができる。
【0081】
MDI器具の有効性は、肺の適切な部位に沈着した用量と相関関係がある。沈着は、いくつかのパラメータによってインビトロで特徴を明らかにすることができる、製剤の空気力学的粒径分布の影響を受ける。
【0082】
本発明の組成物の空気力学的粒径分布は、欧州薬局方第7版、2013(7.8)、パート2.9.18に記載される手順に従って、カスケードインパクターを使用して特徴を明らかにすることができる。30 l/分〜100 l/分の流量範囲内で動く装置Eが使用される。各カスケードインパクターカップにおける薬剤の沈着が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により決定される。
【0083】
加圧MDIにより放出される粒子の以下のパラメータが決定できる:
i)空気力学的質量中央径(MMAD)は、放出粒子の空気力学的質量径がその直径を中心にして均等に分布される直径である。
ii)送達用量は、カスケードインパクターにおける累積沈着から算出され、実験あたりの作動数で割られる。
iii)呼吸可能用量(微粒子用量=FPD)は、直径5ミクロン以下の粒子の質量に相当し、実験あたりの作動数で割られる。
iv)呼吸可能画分(微粒子画分=FPF)は、呼吸可能用量と送達用量とのパーセント比である。
v)「超微粉(superfine)」用量は、カップ6(C6)からフィルターまでの沈着から得られ、直径1.4ミクロン以下の粒子に相当し、実験あたりの作動数で割られる。
【0084】
本発明の溶液は、それらが含まれるpMDI器具の作動に際し、25%を超える、好ましくは30%を超える、より好ましくは35%を超える総FPFを提供することが可能である。
【0085】
さらに、本発明の組成物は、インパクターの、カップにおけるC3からフィルター(C3〜F)までに収集される総微粒子用量と比較して、カスケードインパクターの、カップC6からフィルター(C6〜F)までの含有量により定義される、直径1.4ミクロン以下の放出粒子の15%以上の画分を、作動に際して、提供することが可能である。好ましくは、直径1.4ミクロン以下の放出粒子の画分は、20%以上、より好ましくは25%を超える。
【0086】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の組成物でエアゾール吸入器を充填する方法が提供される。医薬エアゾール製造分野において周知である、従来のバルク製造法および機械装置が、充填されたキャニスターの商業用生産のための大規模バッチの調製に使用できる。
【0087】
第1の方法は、
a)組成物が蒸発しない温度−50〜−60℃で、共溶媒(例えば、エタノール)、鉱酸、HFAを含む噴射剤、ならびに、任意の低揮発性成分における、グリコピロニウム臭化物、ホルモテロールフマル酸塩、ならびに、任意の、好ましくはジプロピオン酸ベクロメタゾンおよびブデソニドから選択される吸入コルチコステロイドの、溶液を調製するステップ、
b)調製した溶液で缶を低温充填する(cold−filling)ステップ、ならびに、
c)空の缶の上の方にバルブを配置し、圧着するステップ
を含む。
【0088】
別の方法は、
a)共溶媒(例えば、エタノール)、鉱酸、ならびに、任意の低揮発性成分における、グリコピロニウム臭化物、ホルモテロールフマル酸塩、ならびに、任意の、好ましくはジプロピオン酸ベクロメタゾンおよびブデソニドから選択される吸入コルチコステロイドの、溶液を調製するステップ、
b)バルク溶液で開放缶(open can)を充填するステップ、
c)缶の上の方にバルブを配置し、圧着するステップ、ならびに、
d)バルブを通してHFA噴射剤で缶を圧力充填(pressure−filling)するステップ
を含む。
【0089】
さらに別の方法は、
a)加圧容器を使用して、共溶媒(例えば、エタノール)、鉱酸、HFAを含む噴射剤、ならびに、任意の低揮発性成分における、グリコピロニウム臭化物、ホルモテロールフマル酸塩、ならびに、任意の、好ましくはジプロピオン酸ベクロメタゾンおよびブデソニドから選択される吸入コルチコステロイドの、溶液を調製するステップ、
b)空の缶の上の方にバルブを配置し、圧着するステップ、ならびに、
c)バルブを通して最終溶液で缶を圧力充填するステップ
を含む。
【0090】
本発明の一実施形態において、特により高い酸濃度で、ホルモテロール成分をさらに安定化させるために、従来技術を使用して、酸素が、エアゾールキャニスターのヘッドスペースから実質的に除去される。これは容器を充填する方法によって決まる種々の方法で達成できる。パージングは、例えば、真空圧着または噴射剤の使用により達成できる。好ましい実施形態において、上記第2(the second)の充填方法は、真空圧着による酸素をパージするステップをステップ(c)に組み込むように変更される。
【0091】
本発明のパッケージされた組成物は、温度および湿度の通常の条件下で保管された場合、長期間安定である。好ましい実施形態において、パッケージされた組成物は、25℃およびRH60%で6ヶ月を超えて、より好ましくは少なくとも9ヶ月間安定である。安定性は、残留活性成分の含有量および不純物/分解生成物の含有量を測定することにより評価される。本明細書で定義される「安定な」組成物は、HPLC/UV−VISで測定されるように、所定の時点で、残留活性成分の含有量が、少なくとも約90%w/w(時間0でのその最初の含有量に対する含有量の重量パーセントである)、好ましくは少なくとも約95%w/wであり、分解生成物の総含有量が、時間0での最初の活性成分含有量に対して約10重量%以下、好ましくは、約5重量%以下であることを意味する。
【0092】
最適化された安定な組成物は、薬剤登録を目的とした医薬品安定性試験に関連したICHガイドラインQ1A(R2)によって必要とされる規格を満たす。
【0093】
本発明の組合せ製品組成物は、広範囲な状態の、症状緩和のために、あるいは、予防目的、または、治療目的のために使用でき、それ故に、一態様において、本発明は、薬物としてのこれらの医薬組成物のうちいずれかの使用に関する。特に、本発明の組合せ製品は、全種類の喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの多くの呼吸器障害の予防または処置において有用である。
【0094】
したがって、別の態様において、本発明は、喘息およびCOPDなどの呼吸器疾患を予防および/または処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に対して、治療上有効な量の本発明による医薬組成物を投与するステップを含む、方法に関する。
【0095】
本発明は、呼吸器疾患およびそれらの症状の、治療的もしくは緩和的処置または予防のための、本発明の医薬組成物の使用も提供する。
【0096】
本発明の医薬組成物の使用がまた有益でありうる呼吸器障害は、例えば、慢性閉塞性細気管支炎、慢性気管支炎、気腫、急性肺損傷(ALI)、嚢胞性線維症、鼻炎および成人または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの、炎症および粘液の存在の結果としての末梢気道の閉塞を特徴とする障害である。
【0097】
例1
25℃および相対湿度(RH)60%で6ヶ月間保管された、3つの組合せのエアゾール溶液組成物の安定性
様々な種類のバルブで圧着された、様々な種類の缶中で、25℃および相対湿度(RH)60%で6ヶ月間保管された、表1にその組成を示すエアゾール溶液製剤中の、ホルモテロールフマル酸塩(FF)、グリコピロニウム臭化物(GLY)およびジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)の3つの組合せの安定性を調査する研究を実施した。
【0099】
試料バッチを、医薬品(drug product)の安定性にとっての最悪条件(worst case condition)と考えられる、逆さ向きで保管し、6ヶ月のチェックポイントで各バッチについてのキャニスター3つを、活性成分の残留含有量および総ホルモテロール分解生成物(その中には、N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドに相当するDP3が含まれる)について解析した。
【0100】
エアゾール溶液製剤中の、ホルモテロールフマル酸塩、グリコピロニウム臭化物およびジプロピオン酸ベクロメタゾンの3つの組合せの分解試料について実施されたHPLC/MS/MS実験により、DP3の構造を同定した。
【0101】
置換する臭素原子の位置を帰属するために、重水素化されたホルモテロールフマル酸塩(N−(3−ジュウテロ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド)、グリコピロニウム臭化物およびジプロピオン酸ベクロメタゾンの3つの組合せを、普通の(plain)アルミニウム缶中で製造し、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)ゴムシール(Bespak製RB700)を備えるバルブで圧着し、40℃およびRH75%で1ヶ月間保管した。分解生成物の解析により、重水素化されたホルモテロールフマル酸塩の重水素原子が、分解生成物DP3を与える臭素原子により置換されたことが指摘された。さらに、N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド標準物質を合成し、
1H−NMRおよびMS/MS解析により特徴を明らかにした。N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミド標準物質のMS/MSスペクトルは、DP3のフラグメンテーションパターンに相当するフラグメンテーションパターンを示した。
【0102】
各活性成分の残留含有量、DP3およびホルモテロール分解生成物の総量を、有効なHPLC/UV−VIS法を使用して測定した。マススペクトル検出器は、各缶において発見された、検出された分解生成物の分子量を確認するために使用した。
【0103】
以下の表2にまとめた結果は、25℃/相対湿度(RH)60%で、6ヶ月後に、より高い活性成分(特にグリコピロニウム臭化物およびホルモテロールの)含有量に関して最高な結果を為した構成、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)最低濃度の総ホルモテロール分解生成物を為した構成、および、思いがけず、分解生成物DP3において、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)定量下限である0.10%w/w未満を為した構成が、フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされたアルミニウム缶中で組成物が保管されたものであったことを示した。
【0104】
たとえ、上記のWO 2011/076843から既知であるように、真空圧着が、エアゾール缶からの酸素の除去によって、組成物の安定性を改善するとしても、実際に、安定性に対する予期しない改善が、FEPコーティング缶を使用することにより得られた。
【0105】
フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされた缶中にパッケージされた本発明の組成物は、本条件での保管後、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)定量下限である0.10%w/w未満の分解生成物DP3濃度、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)2%w/w未満の総ホルモテロール分解生成物濃度、および95%w/wを超える残留濃度の、組成物の最も不安定な成分であるホルモテロールフマル酸塩の維持を示した。
【0109】
例2
40℃および相対湿度(RH)75%で1ヶ月間保管された、3つの組合せのエアゾール溶液組成物の安定性
様々な種類のバルブで圧着された、様々な種類の缶を使用して、よりストレスを与えられた条件で、特に、40℃および相対湿度(RH)75%で1ヶ月間保管された、例1の表1に示すものと同じ組成を有するエアゾール溶液製剤中の、ホルモテロールフマル酸塩(FF)、グリコピロニウム臭化物(GLY)およびジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)の3つの組合せの安定性を調査する研究をさらに実施した。
【0110】
試料バッチを、医薬品の安定性にとっての最悪条件と考えられる、逆さ向きで保管し、1ヶ月のチェックポイントで各バッチについてのキャニスター3つを、活性成分の残留含有量および総ホルモテロール分解生成物(その中には、N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドに相当するDP3が含まれる)について解析した。
【0111】
各活性成分の残留含有量、DP3およびホルモテロール分解生成物の総量を、有効なHPLC/UV−VIS法を使用して測定した。MS検出器は、各缶において発見された、検出された分解生成物の分子量を確認するために使用した。
【0112】
以下の表3にまとめた結果は、25℃およびRH60%で6ヶ月保管後に得られた結果を裏付けた。
【0115】
例3
種々のHCl濃度で、25℃および相対湿度(RH)60%で6ヶ月間保管された、3つの組合せエアゾール溶液組成物の安定性
1M塩酸の量を、0.200〜0.240μg/μLの範囲内で変化させ、EPDMバルブ(タイプ2、Bespak製のBK700に相当)で圧着された、(先に定義したように)本発明によるFEPコーティングアルミニウム缶中で、25℃および相対湿度(RH)60%で6ヶ月間保管された、例1(表1)のものに相当するエアゾール溶液製剤中の、ホルモテロールフマル酸塩(FF)、グリコピロニウム臭化物(GLY)およびジプロピオン酸ベクロメタゾン(BDP)の3つの組合せの安定性を調査する研究をさらに実施した。
【0116】
試料バッチを、医薬品の安定性にとっての最悪条件と考えられる、逆さ向きで保管し、6ヶ月のチェックポイントで各バッチについてのキャニスター3つを活性成分の残留含有量および総ホルモテロール分解生成物(その中には、N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドに相当するDP3が含まれる)について解析した。
【0117】
各活性成分の残留含有量、DP3およびホルモテロール分解生成物の総量を、有効なHPLC/UV−VIS法を使用して測定した。MS検出器は、各缶において発見された、検出された分解生成物の分子量を確認するために使用した。
【0118】
以下の表4にまとめた結果は、FEPコーティング缶中で保管された製剤中に存在する1M HClの量のより詳細な範囲について、25℃およびRH60%で6ヶ月保管後に得られた結果を裏付けた。
【0120】
例4
25℃および相対湿度(RH)60%で6ヶ月間保管された、さらなる3つの組合せのエアゾール溶液組成物の安定性
様々な種類のバルブで圧着された、様々な種類の缶中で、25℃および相対湿度(RH)60%で6ヶ月間保管された、表5にその組成を示すエアゾール溶液製剤中の、ホルモテロールフマル酸塩(FF)、グリコピロニウム臭化物(GLY)およびブデソニドの3つの組合せの安定性を調査する研究を実施した。
【0122】
試料バッチを、医薬品の安定性にとっての最悪条件と考えられる、逆さ向きで保管し、6ヶ月のチェックポイントで各バッチについてのキャニスター3つを活性成分の残留含有量および総ホルモテロール分解生成物(その中には、N−(3−ブロモ)−[2−ヒドロキシ−5−[1−ヒドロキシ−2−[1−(4−メトキシフェニル)プロパン−2−イルアミノ]エチル]フェニル]ホルムアミドに相当するDP3が含まれる)について解析した。
【0123】
各活性成分の残留含有量、DP3およびホルモテロール分解生成物の総量を、有効なHPLC/UV−VIS法を使用して測定した。マススペクトル検出器は、各缶において発見された、検出された分解生成物の分子量を確認するために使用した。
【0124】
以下の表6にまとめた結果は、25℃/相対湿度(RH)60%で、6ヶ月後に、より高い活性成分(特に、グリコピロニウム臭化物およびホルモテロールの)含有量に関して最高な結果を為した構成、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)最低濃度の総ホルモテロール分解生成物を為した構成、および、主に、分解生成物DP3において、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)定量下限である0.10%w/w未満を為した構成が、フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされたアルミニウム缶中で組成物が保管されたものであったことを裏付けた。
【0125】
フッ化エチレンプロピレン(FEP)ポリマーを含む樹脂で内部をコーティングされた缶中にパッケージされた本発明の組成物は、異なる吸入コルチコステロイド(BDPの代わりにブデソニド)の存在下でさえも、本条件での保管後、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)定量下限である0.10%w/w未満の分解生成物DP3濃度、(理論上のホルモテロールフマル酸塩含有量6μg/作動に対して)2%w/w未満の総ホルモテロール分解生成物濃度、および、95%w/wを超える残留濃度の、組成物の最も不安定な成分であるホルモテロールフマル酸塩の維持を示した。