(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記溶融金属供給システムが溶融金属リザーバと導管を介して流体連通した供給先端部を備え、該供給先端部での溶融金属の圧力が該リザーバ内の溶融金属の圧力を制御することによって制御される、請求項1又は2に記載の連続鋳造装置。
前記溶融金属供給システムが溶融金属リザーバと導管を介して流体連通した供給先端部を備え、前記方法が該供給先端部での溶融金属の圧力を該リザーバ内の溶融金属の圧力を制御することによって制御することをさらに含む、請求項10又は11に記載の方法。
動作中に、前記ダイバータは、該ダイバータのそれぞれの横側に溶融金属の流れを与えるように動作し、第1供給導管が該ダイバータの一方の横側に溶融金属を供給し、第2供給導管が該ダイバータの他方の横側に溶融金属を供給する、請求項19〜25のいずれかに記載の連続鋳造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発明の概要
本発明者は、双ロール鋳造などのストリップ鋳造の既知の方法をさらに改善させることができるであろうことを検討する。特に、本発明の第1の開発では、本発明者は、凝固金属ストリップの断面形態(すなわち、断面形状及び/又は断面積)をより厳密に制御する能力が重要な商業的意味を有し、既知の手法よりも望ましい最終形状に近い形状のストリップの鋳造を可能にすることを検討する。同様に、これにより、鋳造ストリップを所望の最終形状に調節する際に鋳造ストリップの廃棄を少なくすることが可能になるであろう。本発明の第1の開発は、既知の方法ではこの問題に対する満足のいく解決策とはならないという事実に対処するために考案された。好ましくは、本発明は、この問題を低減し、改善し、回避し又は克服する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般的な態様では、本発明の第1の開発は、ローラーへの溶融金属供給物の断面形状、すなわち凝固金属ストリップの断面形状を変化させるためにダムの動きに連動してストリップ鋳造中に溶融金属供給物における溶融金属の圧力を制御することを提供する。
【0008】
したがって、第1の好ましい態様では、本発明の第1の開発は、金属ストリップの長さに沿って変化する断面形態を有する金属ストリップを鋳造するための連続鋳造装置であって、該連続鋳造装置は次のものを備え:
対向冷却手段;
該対向冷却手段間に凝固用の溶融金属供給物を与えて凝固金属ストリップを長さ方向に沿って形成させるように配置できる溶融金属供給システム;
該対向冷却手段への溶融金属供給物の断面形状を少なくとも部分的に決定し、それによって凝固金属ストリップの断面形状を決定するための少なくとも1個のダムを備える形状調節システム、ここで、該ダムは、該対向冷却手段への溶融金属供給物の断面形状を変化させるように該装置の動作中に移動可能である;
該連続鋳造装置は、該装置の動作中に該溶融金属供給物における溶融金属の圧力を該ダムの動きと協調して制御するように動作できる溶融金属圧力制御システムをさらに備える
ものを提供する。
【0009】
第2の好ましい態様では、本発明の第1の開発は、金属ストリップの長さに沿って変化する断面形態を有する金属ストリップを鋳造する連続鋳造方法であって、次の工程:
2個の対向冷却手段間に凝固用の溶融金属供給物を与えて長さ方向に沿って凝固金属ストリップを形成し;
該対向冷却手段への溶融金属供給物の断面形状を少なくとも部分的に決定し、それにより凝固した金属ストリップの断面形状に影響を与えるように、少なくとも1個のダムを備える形状調節システムを動作させ、ここで、該装置の動作中に該ダムを移動させて該対向冷却手段への溶融金属供給物の断面形状を変化させ、
鋳造中に溶融金属供給物における溶融金属の圧力を該ダムの動きに連動して制御するように溶融金属圧力制御システムを動作させること
を含む方法を提供する。
【0010】
本発明の第1の開発の第1及び/又は第2の態様は、任意のもの又はこれらが適合する範囲にまで次の任意の特徴の任意の組み合わせを有することができる。
【0011】
好ましくは、本発明は双ロール鋳造で使用される。この場合、対向冷却手段はロールである。双ロール鋳造が特に適している。というのは、下流の変形(すなわち、最終製品を製造するために双ロール鋳造に続くストリップに適用される変形)は、典型的には比較的小さいからである。したがって、後のストリップの圧延は、通常実施されず、又はわずかな程度にしか実施されない。これは、ストリップの不規則な断面形状が有意に延伸されないことを意味する。
【0012】
あるいは、本発明は、ベルト式鋳造及びブロック鋳造及びDC(直接チル)鋳造などの他の連続又は準連続鋳造プロセスに適用できる。
【0013】
鋳造ストリップの断面形態には、鋳造ストリップの断面形状及び/又は断面積が含まれる。この技術において、用語「断面輪郭」は、典型的には、その幅方向にわたるストリップの厚みの変動を説明するために確保される。したがって、この用語は、用語「断面形状」の範囲に含まれる。したがって、本発明の好ましい実施形態は、連続ストリップの鋳造時に、ストリップの断面形態を、例えばストリップの幅を増加させる及び/又はストリップの幅を減少させる及び/又はストリップに孔を含めることにより変更するために使用できる。ストリップの断面形態の変化は、ストリップの厚さの均一な変化(ストリップの幅方向)のみからなるものではないことが意図される。厚みのこのような変化は、例えば、鋳造の実行中にロールの間隔及び速度及び/又はロールに沿った凝固長を変化させることによって達成できる。
【0014】
ストリップの幅は、少なくとも500mm、より好ましくは少なくとも1000mmであることが好ましい。ストリップの幅は、典型的には2000mm以下である。ストリップの厚さは、好ましくは少なくとも1mm以上、より好ましくは少なくとも2mmである。ストリップの厚さは10mmまでであることができる。ストリップの長さには特に制限はない。実際には、ストリップの最大の長さは、鋳造するのに利用可能な金属及び製造業者の鋳造ストリップ処理能力によって、例えば鋳造ストリップをコイラーに乗せることによって決定される。
【0015】
好ましくは、ダムは、少なくとも1個の電磁石によって与えられるAC電磁場ダムである。好ましくは、電磁場ダムは、少なくとも0.5kHzの周波数で動作する。より好ましくは、電磁場ダムは、少なくとも1kHzの周波数で動作する。電磁場ダムは、100kHzのまでの周波数で動作できる。より好ましくは、電磁場ダムは、50kHzまで又は30kHzまでの周波数で動作する。
【0016】
好ましくは、電磁場ダムは、溶融金属供給物内に少なくとも25mTの磁場強度(磁束密度)を与えるように動作できる。
【0017】
好ましくは、電磁場ダムを与える電磁石は、起磁力の少なくとも1000At(アンペア回数)を与えるように動作可能である。
【0018】
電磁石は、好ましくは、既知の方法で磁束コンセントレータ及び通電巻線を有する。磁束コンセントレータは、好ましくは、馬蹄形又はC字形状を有し、磁束コンセントレータを供給先端部の周りに適合させるためにギャップが設けられる。磁束コンセントレータの形状は、供給先端部の近くにあるロールの形状に適合するように構成される。これについては後述する。電磁石は、好ましくは、馬蹄形又はC字形状のアームが鋳造ストリップの長手方向に沿って供給先端部の後ろで出会うように配向される。これにより、ダムを、供給先端部に沿った広い範囲内で鋳造の方向に対して横方向に移動させることが可能になる。
【0019】
溶融金属供給システムは、典型的には供給先端部を備える。これは、典型的には、溶融金属を対向冷却手段に運ぶ。溶融金属のリザーバを設けてもよい。これは、導管を介して供給先端部と流体連通した状態にあることができる。リザーバ、導管及び/又は供給先端部は、溶融金属を凝固前に所望の温度に維持するために好適な加熱及び/又は断熱を与えることができる。導管及び供給先端部の喪失を無視すると(例えば鋳造双ロールにおける比較的小さな流量の場合には特に適切である)、供給先端部内の溶融金属の静圧は、供給先端部と同じ高さでリザーバ内の溶融金属の静圧と実質的に同じである。したがって、供給先端部での溶融金属の圧力は、リザーバ内の溶融金属の圧力を制御することによって制御できる。好都合なことに、これは、リザーバ内における溶融金属のレベルを制御することによって行うことができる。これを行う1つの方法は、供給先端部に対してリザーバを上昇又は低下させることであろう。しかし、これは、可撓性のある導管を必要とし、これは特に好ましくない。より好ましい選択肢は、供給先端部と比較してリザーバ内における溶融金属のレベルの位置を制御するために、リザーバ内において溶融金属を転置させることである。
【0020】
特に好ましい構成は、リザーバに押し込まれるように配置される転置体を有する。好適な転置体を、リザーバに適合するように寸法合わせし及び成形して容器内の溶融金属に好適なスペースを残す。好適な転置体は、溶融金属を冷却することに及ぼすその影響を制限するために断熱され及び/又は積極的に加熱される。リザーバに転置体を押し込んで、溶融金属を移動させ、それによって容器内における溶融金属のレベルを変更する。同様に、これは、リザーバ及び供給先端部内における溶融金属の静的圧力を調節する。
【0021】
例えば導管に沿って溶融金属の流れを制限することと比較した、転置体を使用して圧力を制御する利点は、溶融金属の圧力の迅速かつ正確な調節を達成することが可能であるということである。
【0022】
好ましくは、ダムを、ストリップの幅を増大させるように移動させるときに、溶融金属圧力が上昇する。これは、予めダムによって閉塞された供給先端部内の空間をより迅速に充填することにより利点を与えると考えられる。これは、ストリップの幅の迅速かつより一定の増加を可能にする。
【0023】
好ましくは、ダムを、ストリップの幅を増大させるように移動させ、そしてその幅が所望量にまで増大した後に、溶融金属の圧力が低下する。例えば、溶融金属の圧力は、ストリップの幅が増加する前に使用したレベルに相当するレベルにまで低下できる。
【0024】
好ましくは、ダムを、ストリップの幅を減少させるように移動させると、溶融金属の圧力が低下する。これは、ストリップ幅の減少に対して作用する力を低減させることによる利点を与えると考えられる。これは、ストリップの幅のより迅速かつ確実な減少を可能にする。
【0025】
好ましくは、ダムを、ストリップの幅を減少させるように移動させ、そしてその幅が所望量まで減少した後に、溶融金属の圧力を上昇させる。例えば、溶融金属の圧力は、ストリップの幅を減少させる前に使用されたレベルに対応するレベルにまで上昇できる。
【0026】
このように、溶融金属圧力制御システムを使用して、ストリップの断面形状の信頼できる変化の速度を増加させるようにダムの移動中に溶融金属の圧力を調節することが好ましい。
【0027】
また、ストリップの実質的に一定の断面形状、例えば一定の幅を維持するために必要な場合には、溶融金属圧力制御システムを使用して実質的に一定の溶融金属圧力を維持することができる。
【0028】
好ましくは、この方法は、ストリップの断面形状の実質的に段階的な変化を可能にする。例えば、この方法は、ストリップの幅を、ストリップの長手(鋳造)方向に沿って30cmの間隔にわたって少なくとも10%変化させることを可能にすることができる。いくつかの実施形態では、この方法は、より急峻な幅の変化を達成することを可能にする。例えば、ストリップの長手(鋳造)方向に沿って10mm以下の間隔にわたって少なくとも10%のストリップの幅の変化を達成することが可能である。幅のさらに大きな変化を達成することができる。例えば、ストリップの長手(鋳造)方向に沿って10mm以下の間隔にわたって50%までのストリップの幅の変化を達成することが可能である。この場合には、幅の絶対変化は、130mm〜65mmである。ここで、縁部のダムは、約100mm/秒の速度で移動するところ、これはSmith外(2004)によって機械的ダムで実証されたもの(1.5mm/秒)よりもはるかに大きい。
【0029】
ダムは、例えば、電磁石が供給先端部に沿って移動可能であるという意味で移動可能であることができる。しかし、動作状態に選択的に切り替わることのできる、異なる位置に少なくとも2個のダムの配列を設けることができる。一方のダムから他方のダムに切り替える効果は、堰き止め位置を移動させる効果を有する。したがって、これはダムを移動させることに等しい。2個よりも多い、例えば、3、4、5又は6個以上のダムの配列を設けることができる。ダムの実際の位置を供給先端部に対して固定できるが、ダムを選択的にオン及びオフに切り替えることにより、効果的に移動可能なダムが得られる。好ましくは、これらのダムはEMダムである。
【0030】
ダムは、エッジダムの制御が鋳造ストリップの縁の位置を制御するという意味でエッジダムであることができる。鋳造ストリップの両側にエッジダムを設けることができる。
【0031】
しかし、ダムがエッジダムであることは必ずしも必須ではない。というのは、本発明者は、ダムの各側での溶融金属の流れに伴うダムの操作がダムをダイバータとして機能させ、ダイバータが機能する特定の領域から出るモーテル金属(motel metal)の流れをそらせることを実現したからである。ダイバータが溶融金属の流れの外部エッジにはない場合には、ダイバータの動作により、鋳造ストリップに開口が形成する場合がある。ダイバータの動きにより、鋳造が続くときに開口の形状の対応する変化が生じる場合がある。さらに、ダイバータの動き及び/又はダイバータの停止は、開口を閉じることができる。
【0032】
ダイバータは、EMダムに関して上記したような構造及び動作能力を有するEMダイバータとすることができる。1個以上の可動ダイバータを設けてもよい。あるいは、上記静的ダムの配列のように動作に及び動作から切り替えできる2個以上の静的ダイバータの配列を設けることができる。
【0033】
しかし、本発明者は、ダイバータを使用する場合(ただし、これが好ましいかもしれない)には圧力制御が必要でなくてもよいことを認識した。したがって、本発明の第2の開発において、発明者は、ストリップ鋳造になすことができるさらに可能な改善を検討した。本発明者は、ストリップの縁部の位置の観点のみならず、ストリップに孔を配置する観点からストリップの断面形態に影響を与えることが可能であることを認識した。ここで、「孔」は、封入される又は部分的に開放される、ストリップの厚みにわたるボイドであることができる。好ましい実施形態では、これらのものは封入される。
【0034】
このようにストリップの断面形状を制御することには、所望の生成物がストリップに孔をそなえるときに消耗を低減するという意味で利点がある。したがって、凝固金属ストリップの断面形態(即ち、断面形状及び/又は断面積)の制御は、重要な商業的意味を有し、既知の手法よりも所望の最終形状に近い形状のストリップの鋳造を可能にする。同様に、これにより、鋳造ストリップを所望の最終形状にトリミングする際に少しの鋳造ストリップしか無駄にしないことが可能になる。本発明の第2の開発は、この問題に対処するために考案されたものである。好ましくは、本発明は、この問題を低減し、改善し、回避し又は克服する。
【0035】
一般的な態様では、本発明の第2の開発は、ローラーへの溶融金属供給物の断面形状、すなわち凝固金属ストリップの断面形状を変化させ、それによって凝固金属ストリップ内に少なくとも1個の孔を設けるために溶融金属供給物を横方向に切り離すようにダイバータを動作させることを提供する。
【0036】
したがって、第1の好ましい態様では、本発明の第2の開発は、金属ストリップの長さに沿って変化する断面形態を有する金属ストリップを鋳造するための連続鋳造装置であって、次のものを備える連続鋳造装置を提供する:
対向冷却手段;
該対向冷却手段間に凝固用の溶融金属供給物を与えて長さ方向に沿って凝固金属ストリップを形成するように配置できる溶融金属供給システム;
ローラーへの溶融金属供給物の断面形状、すなわち凝固金属ストリップの断面形状を変化させ、それによって凝固金属ストリップに少なくとも1個の孔を設けるために該溶融金属供給物を横方向に切り離すように動作可能である少なくとも1個のダイバータを備える形状調節システム。
【0037】
第2の好ましい態様では、本発明の第2の開発は、金属ストリップの長さに沿って変化する断面形態を有する金属ストリップを鋳造するための連続鋳造方法であって、次の工程:
2個の対向冷却手段間に凝固用の溶融金属供給物を与えて長さ方向に沿って凝固金属ストリップを形成させ;
少なくとも1個のダイバータを備える形状調節システムを設け、そしてローラーへの溶融金属供給物の断面形状、すなわち凝固金属ストリップの断面形状を変化させるために該溶融金属供給物を横方向に切り離し、それによって該凝固金属ストリップ内に少なくとも1個の孔を設けるようにダイバータを動作させること
を含む方法を提供する。
【0038】
本発明の第2の開発の第1及び/又は第2の態様は、任意のもの又はこれらが適合する範囲にまで次の任意の特徴の任意の組み合わせを有することができる。
【0039】
特に、第1の開発に関して記載されたダムの好ましい特徴は、第2の開発のダイバータに適用できる。例えば、ダイバータは、好ましくは電磁ダイバータである。このものは移動可能であることができる。鋳造ストリップについての断面形状の必要な変化を生じさせるために、複数のものを設けてもよい。2個以上のダイバータの配列を設けることができる。これらは静的であってよく、鋳造ストリップの断面形状の必要な変化は、該配列のダイバータの好適な制御により得られる。
【0040】
任意に、ダイバータの動作と連携して装置の動作中に溶融金属供給物における溶融金属の圧力を制御するように動作できる溶融金属圧力制御システムが設けられる。ダイバータが特定の領域から離れて溶融金属を迂回させるように操作される場合には、転置は、供給システム内における溶融金属の静圧の対応する減少によって支援できる。これは、ストリップの全断面積をダイバータの操作によって減少させる場合に有利である。同様に、ダイバータをオフに切り替え又はそうでなければストリップの全断面積を増加させるように操作する場合には、供給システム内の溶融金属の静圧を増加させて、必要な領域を埋めるのを支援することができる。溶融金属の圧力のこれらの変化は、第1の開発に関連して上記したように達成できる。
【0041】
エッジダムとは異なり、ダイバータは、それぞれの横側での溶融金属の流れを可能にするように動作することが意図される。したがって、溶融金属がそれぞれの側に到達する方法を検討する必要がある。溶融金属リザーバからの複数の供給導管を設けることが可能である。第1供給導管は、ダイバータの一方の横側に溶融金属を供給することができ、第2供給導管は、ダイバータの他方の横側に溶融金属を供給することができる。複数のダイバータを設ける場合には、各ダイバータの各横側のために対応する供給導管を設けることができる。
【0042】
ダイバータが移動可能な場合には、ダイバータのそれぞれ可能な位置に相当する供給導管の配列を設けることは非現実的なことがある。この場合には、少なくとも1個のバイパス導管を設けることができる。バイパス導管は、溶融金属が、主供給導管から供給先端部まで遠位のダイバータの横側に到達することを可能とするように動作できる。
【0043】
EMダイバータの場合には、バイパス導管は、EM場からバイパス導管内に溶融金属を実質的に遮蔽する導管であることができる。例えば、バイパス導管は、供給先端部内に形成された導管であることができる。バイパス導管は、例えば、導電性材料、例えば高融点金属などの金属から形成できる。
【0044】
本発明者は、溶融金属の流れを迂回させるようにダイバータを操作することがエッジダムの動作と比較して重要な課題を与える場合があることを認識した。これは、ダイバータが溶融金属を縁部の位置ではなく溶融金属の流れの本体内の必要な場所から押し出さなければならないためである。したがって、1個以上のダイバータ支援機能を設けてもよい。これらのものは、例えば、供給先端部内に設けることができる。これらのものは固定位置を有することができる。EMダイバータの場合には、好適なダイバータ支援機能は、EMダイバータによって生成されるEM場を供給先端部に集中させる構造的特徴である。典型的には、EM場の集中はダイバータ支援機能の位置と一致する。この効果は、EMダイバータによって生成されるEM場が成長するときに、EM場がダイバータ支援機能で集中し、ボイドが溶融金属内で核となるというものである。このボイドは、ボイド内のEM場の集中のため成長し、溶融金属を方向転換させ、開口を形成する。
【0045】
好適なダイバータ支援機能は、その機能での溶融金属の流れを低減又はブロックするが、EM場が溶融金属を貫通することができるよりも容易にEM場を貫通することを可能にする構造上の特徴である。例えば、ダイバータ支援機能は、供給先端部内の非磁性材料(例えば、セラミックなどの非導電性材料)の突起によって設けることができる。好適な突起は、供給先端部の後部内面から前方に突出することができる。追加的に又は代替的に、好適な突起は、鋳造ストリップの主表面に相当する供給先端部の内面から上方又は下方に突出することができる。
【0046】
好適な開口が溶融金属内に形成されたら、ダイバータを制御(例えば移動)させて孔の形状を制御することができる。
【0047】
本発明のさらなる任意の特徴を以下で説明する。
【0048】
本発明の実施形態を、添付図面を参照して一例として説明する。
【発明を実施するための形態】
【0050】
好ましい実施形態の詳細な説明及び本発明のさらなる任意の特徴
かなりの量のアルミニウムが鋳造され、その後不規則な形状の製品を製造するプロセスで切り取られる。というのは、サプライチェーンは、全て規則的な形状の在庫製品を製造するように配置されているからである。金属薄板製品のサプライチェーンをさらによく統合することが可能であり、その際、電磁石を使用して双ロール鋳造でシート金属の輪郭を操作する。以下、シートの一方の端部を電磁石によって制御し移動させる第1の実験的試験を提示する。
【0051】
アルミニウムのサプライチェーンは、2つの別個の部分に分類される:鉱石からアルミニウムを生成し、その後鋳造し、この金属をロールさせてシートのコイルなどの在庫製品を製造する金属産業、及びこれらの在庫品を引き取り、それらを再形成して消費者向け製品、例えば自動車のドアを製造する製造業。これは、サプライチェーンを減少させることになる;金属鋳造の大部分が排除され、最終消費者向け製品には到達しない。この損失は、金属鋳造の元の質量に対する最終製品中の金属の比率である歩留りによって定量化できる。Cullen及びAllwood(2013)は、全てのアルミニウム製品全体の平均歩留まりを60%と算出し、アルミニウム自動車のドアのケーススタディ(Milford外,2011)では40%の歩留まりを見出し、ここで、長方形のシートに寄与する金属減少の半分はブランキング及びパンチングプロセスにおけるドア及び窓の輪郭を作製するために切断される。したがって、不規則なシート製品の輪郭を鋳造する能力は、歩留まりの大幅な改善の機会を直接的に創出するであろう。
【0052】
本発明の好ましい実施形態は、余分なコントロールを追加して不規則シート製品の輪郭を直接鋳造することを可能にすることによってネットの厚みにさらに近づけて鋳造するための既存の努力に基づいて構築された。最も確立された直接的なシート鋳造プロセスの双ロール鋳造を開始点とする。
図1に示すように、双ロール鋳造(TRC)では、シートを、耐火性(例えばセラミック)供給先端部10を介して液体金属20を2個の逆回転冷却ロール12、14(対向冷却手段)間に供給することによって直接鋳造する。液体金属がロールに触れるとすぐに固体シェルを形成し始め、これは、線Bとして示されるロールバイトに向かって移動するに従って成長する。上部ロール及び下部ロール上のシェルは、ロールバイトの直前にある凝固点18で接触し、そしてそこからシート16は熱間圧延工程中にあるときに変形する。凝固領域の断面を
図1に示す。鋳造方向は方向Cである。サンプの深さを22として示す。
【0053】
電磁(EM)エッジダムを使用して、鋳造中にサンプに沿って圧力を加えることによって金属を操作し、金属の縁部の制御を可能にし、それによって鋳造シートの幅を変化させることができる。以下でより詳細に議論するように、EMエッジダムをストリップの各縁部で使用でき、及び/又はEMアクチュエータを追加して孔を有するストリップを鋳造することができる(金属供給物に対する追加変更を必要とする)。第1工程として、本発明では、このプロセスを、実験室規模の双ロール鋳造機で鋳造ストリップの一方の縁部を制御することによって実証する。
【0054】
従来の双ロール鋳造プロセスにおいて幅を設定し変更する方法及び電磁格納の原理を以下で説明し、幅制御のためにEMエッジダムを使用する機会を特定する。
【0055】
双ロール鋳造プロセスは、Ferry(2006)に詳細に記載されている。液体アルミニウムは、それが凝固するまで金属を完全に含有する耐火供給先端部を介してTRCの後ろに供給される。上部及び下部ピースは、所望の凝固長さによって決定されるロールバイトからの固定セットバックで終了する。2個のエッジ片は、液体金属に対する物理的障壁となるようにロールバイトに向けてさらに突出し、それによって静的な機械エッジダムとして作用する。ストリップの幅を変化させるために、鋳造プロセスを停止しなければならず、異なる幅を有する新たな供給先端部や耐火性プラグを使用して、既存の供給先端部の開口の幅を減少させなければならない。
【0056】
Smith外(2004)は、パイロットキャスターで、先端部の内側で幅に沿って横方向に摺動できるように供給先端部からエッジダムを分離するFata Hunter Optiflowシステムを提案しかつ実証する。グラファイトシールにより液体アルミニウムがギャップを通って漏れるのを防止し、エッジダムを作動させて制御された幅を得ることができる。鋳造を停止させることなく、彼らは1.5mm/秒の最大速度で鋳造の2時間にわたって徐々に200mmの幅が増加することを実証した。このOptiflowシステムは、鋳造を中断することなく、異なる幅でシートの連続コイルを鋳造するように設計されるが、それよりもはるかに速い速度でエッジダムを移動させようとするときに問題が発生する場合がある:グラファイトは供給先端部に良好な密閉を維持することができるのか?その寿命が急速な動きによって損なわれないか?及び幅を小さくするときにどのようにして移動エッジダムを部分的に凝固したシェルと相互作用させるのか?フォローアップの報告は文献では行われていない。
【0057】
全ての機械的エッジダムでは、エッジダムの前進している固体シェルと静的金属対向面との間には摺動接触が存在する。ストリップからの摩擦及び不要な熱伝達は、その縁部での欠陥につながる。特に、縁部の亀裂は、Monaghan外(1993)によって説明されたメカニズムにより形成する。エッジダムを通した余分な熱伝達は、凝固が中心よりもストリップの縁部で早期に生じるため、ストリップを圧延したときに縁部が変形し、特に硬質合金では亀裂が生じやすい。これは、アルミニウム双ロール鋳造における共通の問題であり、その結果、全ての産業用キャスターは、亀裂領域、通常は2000mmの全幅から20〜30mmを除去するために下流に縁部トリミングを有する(Romano及びRomanowski,2009)。
【0058】
これらの欠点を考慮すると、電磁(EM)閉じ込めは、アルミニウム双ロール鋳造で使用するために既に提案され実証されている。デビッドソン(2001)によってさらに詳しく導き出された原理は、AC磁場を、収容される表面に対して接線方向に印加することを伴う。適当に高い周波数(kHzのオーダー)では、交番磁界は、金属に小さな距離( 「表皮深さ」)しか拡散することができない。電流が金属の表面に誘起され、そして印加磁場とこの電流との相互作用は、磁場から金属を追い払うように作用する磁気圧力を発生させる。平均磁気圧力P
mは式(1)で与えられる。μ
0は自由空間の透磁率であり、B
0は磁場の大きさである。
【数1】
式(1)
【0059】
双ロール鋳造でEMエッジダムを使用することが、実験室規模でWhittington外(1998)により水平アルミニウムTRCについて実証され、理論設計ではGerber(2000)により垂直スチールキャスターについて提案されている。WhittingtonのEMエッジダム及びその磁場の形状を
図2に示す。このWhittington設計は、スチールロール32、34が磁束36、38をロールバイトに向かわせる磁気であるという事実を使用する、キャスター側にボルト固定された馬蹄形コア30である。磁場の分布は、アルミニウムにおける圧力の増加により磁場が束になり、強度が増加するというものであるため、この構成は本質的に剛性でありかつ安定である。
【0060】
WhittingtonのEMエッジダムは、4000Atまでを印可して16〜30kHzで操作され、鋳造ストリップの一方の縁部を収容することに成功した。起動時にEMエッジダムに印加される電流を変化させる場合には3mmの小さな幅の変動が認められたが、磁場はすぐに磁石から離れて減衰するため、幅の大きな変化は、電流のみを変化させることでは不可能であろう。動作周波数は、剛性の最適化に基づいて選択された;この周波数では、アルミニウム中における圧力に伴う幅の変化が最小限に抑えられる。アルミニウムにおける表皮深さは0.6mmである。4000Atを適用すると、EMエッジダムは、コア内における渦電流及びヒステリシスによって発生する熱を抽出するために水冷却を必要とする。
【0061】
Gerberの設計は、磁束コンセントレータのない楔形導体を使用し、磁場がその周りに同心円状に発生する。この導体の形状は、静圧が最大である場合に磁場がロールバイトで最も強くなり、自由液体金属表面が略垂直となるように設計される。
【0062】
両方のEMエッジダム設計は、幅の急速かつ大きな変化には適していない。というのは、これらは、液体金属に影響を及ぼすことなくロールに沿って横方向に移動するのは容易にはできないからである。異なる形状がMcBrien及びAllwood(2013)に提案されており、この設計を
図3及び
図4に示す。WhittingtonのEMエッジダムと同様に、馬蹄形電磁石40が使用されるが、これは90°回転し、鋳造方向Cに向って供給先端部の背後に配置されている。この馬蹄は、供給先端部の周りに嵌りかつロール42、44の表面を介してロールバイト領域に磁場を誘導し、これを横方向に(ロールの回転軸に対して平行に)直接移動させて幅を制御するように輪郭形成される。このEMエッジダム設計は、低融点合金を用いて5kHz及び15kHzの周波数で試験され、そして、ロールバイトで磁束密度を増加させて閉じ込めの強度及び剛性を改善するためには、より低い周波数が必要であったことが示唆された。
【0063】
閉じ込めの範囲外では、EM場と液体金属との相互作用を使用して広範囲の効果を生じさせることができる。産業用途の検討において、Li(1998)は、金属を輸送する際に(バルブ、ブレーキ及びポンプ)、溶質を分配するために(スチールの連続鋳造において)又は金属を溶融させるために撹拌して使用することを特定した。産業界では、閉じ込めのためのEMの使用は、主としてEM場を介して行い、DC鋳造プロセスにおいて銅鋳型を交換し、その際に、別の冷却条件及び撹拌がより均一な微細構造を生じさせるため、表面を除去するための鋳造ビレットのスカルピングが低減される。Vives(1989)に記載されたCREM(「鋳造、精製、電磁」)プロセス及びMao(2003)による「電磁ロール鋳造」プロセスは、両方とも低周波磁場(10〜50Hz)の撹拌効果を使用して鋳造金属の微細構造を精製する。
【0064】
凝固点で適用されたときに、撹拌は、固体・液体界面を破壊し、核部位を広く分布させる。両方の場合において、観察された結晶粒微細化は、専用の結晶粒微細化添加剤を添加することによって達成されるものよりも良好でなかった。
【0065】
McBrien及びAllwood(2013)のEMエッジダム設計は、4.75ターン銅コイル及びキャスター供給ノズルの周りに収まる馬蹄形コアからなる。
図3及び
図4を参照されたい。コア40は、ロール半径と一致する輪郭形成端部46、48を有し、それによって、磁束50がそれらに効果的に連結できるようになっている。磁力線は、コアを介して集中し、そして強磁性ロールに導かれ、それらの間にあるエアギャップを飛び越えることによりループを形成する。Whittington(1998年)の設計と同様に、エアギャップ内の磁場は、液体金属の閉じ込めを与える。このEMエッジダムは、所望の幅の変化を達成するために、ロールの圧延軸に対して平行に移動できる。
【0066】
McBrien及びAllwood(2013)のEMエッジダム設計は、いくつかの外部要因によって制約される。これは、既存の実験室規模の双ロール鋳造機内に収まらなければならないため、ロール半径及び材料の制約を受ける。好適な電流定格(3000Aまで)を有し、かつ、ほぼ正確な周波数範囲(15〜30kHz)で動作するStatipower BSP12電源が、McBrien及びAllwood(2013)で報告された予備試験のために使用された。さらに幾何学的制約は、供給ノズルの高さであり、これは、シートの厚み及び凍結を防止するのに十分な断熱の必要性に依存する。
【0067】
McBrien及びAllwood(2013)のEMエッジダムは、Fluxtrol社が製造する実験材料「Fluxtrol EM」から作製されたコアを使用した。このものは鉄がドープされたプラスチックであり、振動磁場で生じた渦電流により内部発熱を低減させる。これにもかかわらず、依然として冷却が必要である。内部の水の流れを、コアの両半分の内面に機械加工された冷却チャネル(図示せず)を介して設ける。これらの半分を互いに接着させてシールを与え、水が該コアの後ろからホースを介して供給される。
【0068】
McBrien及びAllwood(2013年)における実験の基礎は、磁場の分布に重要な影響を及ぼす双ロール鋳造機の領域を示すことである。2つの実験が実施された:第一に、磁場の測定を行い、第二にエッジダムを液体金属で試験して、収容できる圧力の限度を決定した。
【0069】
磁場を測定するために、サーチコイルを、セラミックフォーマの周りに銅線を巻いて構成した。コイルを通る平均磁束密度は、その領域及び開回路電圧から推定できる。静的に保持されたEMエッジダムと共に、サーチコイルを、磁束密度の分布を測定するためにロール間の様々な位置に配置した。
【0070】
70℃で溶融するウッド金属を使用して液体金属によるEMエッジダムの性能を検証した。
図5(ロールは示されていない)を参照すると、ウッド金属の一定量がポリカーボネートリザーバ52からセラミックノズル51を満たしており、ロールギャップが差し込まれ、ロールバイトからの様々なオフセットで密封されている。EMエッジダム54は、アクチュエータ56を介してロール間を移動し、ウッド金属に磁気圧力を加え、そしてそれをリザーバ内に流入させる。圧力ヘッドは、EMエッジダムによって加えることができる限度まで増加し、金属及びEMエッジダムの相対運動は、エッジダムの剛性を示す。
【0071】
磁場分布測定及び静圧閉じ込め試験の実験結果を以下に説明する。EMエッジダムを384A及び16.3kHzで動作させた。
【0072】
磁場分布の測定から、エッジダムが低い剛性を有することが示された。
【0073】
静圧閉じ込め試験で決定された最大圧力は、アルミニウムの約5mmと同等である。
【0074】
McBrien及びAllwood(2013)で報告された実験は、システムの動作がロールバイト付近の磁束密度によって影響を受け、収容できる全圧力及びEMエッジダムの剛性を制限し、鋳造中におけるエッジの安定性に影響を及ぼすであろうことを示す。
【0075】
磁束密度、すなわち収容できる圧力は、EMエッジダムコアからの距離と共に減衰する。ロールバイト磁束密度を増大させるために多数の選択肢が存在する;EMエッジダムへの電流を増大させて、どこであても磁場の強度を高めることができる。McBrien及びAllwood(2013年)で示された設計では、コアの飽和は、約800Aの電流を超えると利益を制限し、さらに高い電流はコアにおいてより多くの熱を生成し、冷却要件を増加させ又は動作時間を制限する。より魅力的な選択肢は、動作周波数を減少させることであり、これは、ロールにおける表皮効果の厚みを増大させ、より多くの磁束を運ぶことを可能にする。電流を800Aに増加させ周波数を3kHzに減少させると、60mTのロールバイト磁束密度を達成し、30mmアルミニウムヘッドと同等の磁気圧力を生成させることができる。これは低いが、水平双ロール鋳造操作にとっては十分である。
【0076】
EMエッジダムの低い剛性は、EMエッジダムの向きのため、この構造の固有の欠点である。幅の大きな変化を実現する能力についての要件では、これは、唯一の可能な向きであるように思われるので、低剛性を受け入れなければならない。実際には、低剛性は、異なるサイズのシート間で変化したときに、鋳造中にエッジ位置で振動を引き起こし、幅の変化速度を制限する場合がある。この影響を緩和するために、液体金属における低い全圧力が必要となるところ、これは、ロールに対する熱転写及び潜在的には鋳造プロセスの安定性を低下させることになる。
【0077】
さらなる実験研究を、鋳造ストリップの幅の比較的急激な変化を達成することができる方法を示すために実施した。
【0078】
実験を実験室規模の水平TRCで実施した。キャスターは、小径ロール(320mm)及び狭い作業部(最大の産業用キャスターの2000mmと比較して120mmのシート幅)を有する産業規模ユニットの小型版である。ロールは、H13熱間加工工具スチールから製造され、これは、約680の磁気比透磁率を有する(Smithells Metal Reference,2004)。このキャスターの主な用途は、非変形微細構造を必要とする金属学的実験を実施することであるため、このものは低剛性で設計される。大きな圧延力を加えないように上部ロールを上方に移動させることができるところ、これは、ストリップ微細構造が可能な限り鋳造状態に近いことを意味する。EMエッジダム及び他の機器は、このキャスターに特に収まるように設計された。
【0079】
EMエッジダム60は、Fluxtrol100から作製された磁束コンセントレータに巻き付けた銅コイルである。Fluxtrol100は、渦電流の最小化のため発熱が減少した120の比透磁率を有する鉄ドーププラスチックである。これにもかかわらず、コアは、依然として内部チャネルにより水冷却しなければならない。
図4に示すように、コンセントレータの幾何学的形状は、ロールバイトに向かって前方に保持されるロール表面に磁束を導くように輪郭形成され、供給先端部の周りに収まる。EMエッジダムの横方向の位置は、リニアアクチュエータを介して制御される。
【0080】
供給システム及び電磁エッジダムを
図6に示す。供給先端部62は、EMエッジダムによって発生する磁界に対して透明になるように非導電性かつ非磁性でなければならない。このものは、N17、すなわちTRC供給先端部で一般的に使用されるケイ酸カルシウム耐火性材料から作製される。供給先端部は、EMエッジダムをロールバイトの近くに配置し、それによってサンプに沿った磁場の強度を増加させることができるように、可能な限り薄く設計された。2個の機械的エッジダム64、66を供給先端部に集積する:1個は、非制御エッジに閉じ込めを提供するためのもので、1個は始動時に使用するためのEMエッジダムの横にあり、かつ、EMエッジダムがオフに切り替わる場合にフェイルセーフな状況を提供するためのものである。
【0081】
ターゲット幅変化は、供給先端部開口の幅(65〜130mm)の50%〜100%である。必要なEMエッジダムの動きを可能にするために、先端部への液体金属供給は非対称である。供給先端部の内側輪郭は、幅にわたる流れをさらに促進させるように先細になっている。既に凝固したストリップからの閉塞が鋳造中に確立されたら、液体金属が先端部全体を満たす。液体金属は、磁場の分布に影響を与えないようにEMエッジダムからは十分に離れたステンレススチールリザーバ70から供給管(またN17から製造)を介して供給される。供給システム全体は、各部分の機械加工孔に挿入されたカートリッジヒーター72で予熱される。N17は効果的な断熱体であり、低熱質量を有するため、低電力を供給先端部62及び供給管68に使用する(それぞれの部分において2×100Wヒーター、合計400W)一方で、リザーバ70は、より多くのヒーターと、離れて伝導されるより多くの熱を確保するためにより高い電力を有する(6個のヒーター、合計1400W)。キャスターに供給されるときの液体アルミニウムの温度は、予熱温度及び/又は時間を変更することによって又は注入時に液体アルミニウムの過熱を変化させることにより変更できる。
【0082】
EMエッジダムから加えられた磁気圧力と釣り合う液体アルミニウムの金属静圧は、リザーバ内の液体金属の表面の高さによって設定される(小流量及び低粘度では、供給管の圧力損失は無視される)。OptoNCDT−1302レーザー距離センサ74は、圧力ヘッドを測定するために使用され、圧力ヘッドは、鋳造中に注入速度を変化させることにより手動で制御できる。符号76は、リザーバ内の液体金属の表面の高さの変化を示す。
【0083】
EMエッジダムの概念を用いた以前の試験からの推奨は、ロールバイトで磁場の強度を高めるために、1〜3kHzの範囲の低い周波数で動作させることであった。好適な仕様の既製解決手段が利用可能でない場合には、カスタム電源を作製した。これは、正弦波出力電圧を共に生成する信号発生器及び工業増幅器からなるものであった。増幅器90は、AE Techron7700(最大75Vrms、1.2kHz)であった。インダクタ(EMエッジダム)とキャパシタの並列共振の組み合わせが信号を拡大して電磁エッジダムに高い電流を与える。キャパシタ92は、並列に12×47μFであり、564μFの合計容量を与えた。インダクタ94及び抵抗器96によって概略的に示されるEMエッジダムは、24μHのインダクタンス及び20mΩの抵抗を有していた。回路図を
図7に示す。インダクタンス及びキャパシタンスの値を、約1.2kHzで共振について選択した。
【0084】
これらの実験の目的は、幅を変化させる際にEMエッジダムの動作を証明及び定量化し、どのパラメータ又は物理的な効果が重要であるかを特定し、及び鋳造ストリップの品質をチェックすることである。最初に、信頼できる鋳造のために新たな機器についての最適な設定値を決定するのに試運転試験が必要であった。EMエッジダムは、まず、一定の幅を維持することを目指して静的エッジダムとして試験し、その後幅を変更することを目指して動的ユニットとして試験した。電磁エッジダムの段階的応答を、固定磁石を保持し、そしてこれをオン及びオフに切り替えることによって得、幅の変化を観察した後に、制御幅の変動を、圧力ヘッドを変化させて及び変化なしで、電磁エッジダムを横方向移動させることにより試みた。
【0085】
鋳造シートの機械的特性を、引張試験及び硬さの測定により確認し、サンプルを金属組織分析のために採取した。
【0086】
有限要素モデルを、ロール間の領域における磁場分布を計算するためにCOMSOL AC/DCモジュールで作成した。このモデルは、磁場がどのようにしてロール及び代表的なアルミニウム供給幾何学的形状と相互作用するかを、導電性金属内部からの磁場を除く表皮効果を含めて計算する。このモデルは、磁場分布と流体圧力/表面張力との結びついた問題を解決するのではなく、自由アルミニウム表面の形状を推定する。これは、以前にMcBrien及びAllwood(2013)に記載された実験において双ロール鋳造機のモックアップ部で得られた測定値によって確認されたものであり、ここでは、アルミニウムの動きに及ぼす観察された影響を説明するために使用される。
【0087】
TRCによる確立された好結果の鋳造試験から出発して、表1に示す鋳造パラメータは、供給先端部においてブレークアウト又は早期の凝固を生じさせることなく信頼性の高い鋳造ストリップを与えることが分かった。焼付きを避けるために、選択された合金は2.5重量%のMg含有量を有し、ロールには鋳造前にグラファイト潤滑剤を被覆した。合金を予め純アルミニウム及びマグネシウムから製造し、鋳造前に1時間にわたって混合及び均質化させ、そして酸化物を注入直前に表面をスキミングすることにより除去した。
【0089】
供給先端部で得られた温度測定値は、熱損失が予想よりも高いことを示したため、40℃の注ぎ過熱を使用して補正した。予熱温度は、カートリッジヒーターの能力の限界であったが、十分な予熱時間により、定常状態に到達することができた。
【0090】
ロール速度を1rpmに設定し、そして3mmの公称ロールギャップを用いて、18mm/sの線鋳造速度で厚さ4〜5mmのストリップを製造した。これは、鋳造が液体ブレークアウトを生じにくいことを確保する程度に十分に凝固点がロールバイトからずらされていることを示す。供給先端部の一部である機械的エッジダムを使用して、幅130mmのストリップを作製し、典型的にはいくつかのエッジの亀裂が観察された。
【0091】
EMエッジダムを、最初に供給システムとは別個に試験した。その動作の限界は、増幅器が過熱しトリップする前にどのくらい出力信号を維持することができるかであった。170A出力(8ターンEMエッジダムに適用された1400Atに相当)及び3分間にわたる1.2kHzでの動作が可能であった。磁束密度測定値をロールバイトに向かって突出したコアの中心線上の点で得、そしてFEA結果と共に、カスタム電源部からの磁場と以前に使用された高周波数との間で
図8において比較を行った。周波数が低いため、磁場は、ロール間でさらに保持されるので、最終的な凝固が生じる領域でさらに強い。測定された磁束密度は、供給先端部出口での6mmAlからEMエッジダムの近くでの15mmAlまでの磁気圧力を示す。磁力線はアルミニウム縁部の周りで束になる傾向があるため、これらの値はアルミニウムの存在下で増加する。
【0092】
より強力な増幅器又は2個の増幅器を並列に使用することによって出力を向上させ、より強い磁場を与えることが可能である。高周波電源を用いた以前の経験から、限界は、コアにおける発熱又はコア材料の飽和のいずれかである。これらを考慮すると、増大した増幅器出力では、磁界強度を2倍に増加させることができるため、圧力は上記(1)式に基づいて4倍大きくなる。
【0093】
EMエッジダムを、供給先端部の中心で保持し、機械的なエッジダムの約半分の幅のシートを鋳造するために使用することによって実証した。これらの試験では、金属を注いでからEMエッジダムをオンに切り替えたため、金属がなくなったときに圧力ヘッドが減少した。
図9に示すように幅の先細りが観察され、これを使用して、2つの別個の鋳造操作のデータを示す
図10において圧力ヘッドに対して幅をプロットすることによってEMエッジダムの剛性を推定する。剛性は、両方の鋳造について圧力ヘッド変化mm当たり幅変化約2.1〜2.7mmであり、これは一定幅での鋳造のためにEMエッジダムを使用するのに必要な圧力制御の精度の指標となる。また、これらのグラフは、同一の印加電流、圧力ヘッド及び鋳造条件について、ストリップ幅が10mm変化することを示すが、これは、EMエッジダムの応答が完全には再現できないことを示している。
【0094】
EMエッジダムの段階的応答を、再度中心を供給先端部の中心と一致させてEMエッジダムを静止に保持しながら電流をオン及びオフに切り替えることにより測定した。製造されたストリップを
図11に示す。EMエッジダムをオンに切り替えると、130mmから約75mmまでの幅の初期減少が生じ、セトリング前に若干のリバウンドがある。「テール」の特徴が全ての垂直後縁部で観察できる。EMエッジダムをオフに切り替えると、幅は130mmに戻り、場合によっては短いオーバースピルが供給先端部を越える。電源オンと観察された幅の縮小との間には約5秒の遅延があったが、EMエッジダムをオフに切り替えるときに応答は即時であった。これは、幅の増減のメカニズムが異なることを示唆するものであり、以下の議論でさらに探求する。
【0095】
鋳造試験の最終セットを、移動EMエッジダムを用いて実施し、2mm/sの速度で幅を90mmから130mmに変更し、再度傾斜運動を介して戻すことを目指した。達成された最も正確な結果を
図12に示す。目標幅を、EMエッジダムの動きから計算すると共に、実際の幅を、鋳造ストリップ上での直接の測定によって得た。また、レーザーで得た圧力ヘッドの測定値も得た。鋳込み速度を変化させることによる圧力ヘッドの手動の摂動により、シート幅は、ターゲットと同じ形状をたどる。ストリップの幅の変化は、EMエッジダムの40mmの移動について約30mmである。また、磁石の作用とシート幅の減少との間では遅延が観察されると共に、幅の増加はほとんど瞬間的である。
【0096】
EMエッジダムを有効にすると、縁部の亀裂又はストリップ表面の可視条件に識別可能な変化はなかった。引張試験片を、EMエッジダムを有効にした又は有効にしなかったストリップから得、ASTM B557−06に従って試験し、得られた機械的特性を
図13にプロットした。これらの結果は、磁場を加えたときに鋳造ストリップの強度及び延性の両方が増加することを示す。しかし、結果の広がりは、EMエッジダムを使用するとさらに大きくなり、最悪の場合のクーポンについては、失敗した表面に目に見える空隙が存在したが、これは、EMエッジダムの効果が不安定であることを示唆するものである。
図13の結果は、長手方向の試験片からのものである:横方向の試験片も試験し、特性に差は認められなかった。
【0097】
また、硬度測定値を、EMエッジダムをオンに切り替えて又はオンに切り替えることなく、ストリップの上部表面の幅にわたって3箇所で得た。
図14は、通常のストリップ及びEMエッジダムについての幅にわたる平均値及び全平均値を示す。アルミニウムの平均硬度は53HVから59HVまで増加したが、
図14のグラフから、引張り試験と同様に、これらの値は「通常」のストリップよりも大きく変動したことが分かる。幅方向の硬度に有意差はなかったが、これは、EMエッジダムが縁部から60mmの距離で所定の効果を奏することを示す。
【0098】
機械的性質の明らかな改善を説明するために、顕微鏡写真をサンプルから撮影し、ストリップの通常の微細構造と磁場を加えた微細構造とを比較した。試験片を切断し、固定し、磨き、その後、試験片をアノードとし、ステンレススチールポットをカソードとして、30秒にわたって20Vでバーカーの溶液中において電解エッチングした。画像を偏光下で検板と共に撮影した。
【0099】
図15(a)及び(b)は、それぞれ通常の鋳造物及びEM鋳造物についての厚みを通した微細構造を試験する縦図である(サンプル間の厚みに差があることに注意されたい;これは、ストリップが狭い場合におけるキャスターのたわみの減少によるものである)。両方の微細構造は、ロールとの接触がある表面での微細な結晶粒径及び非常に高い局所冷却速度と、底面からの厚みの約2/3付近の最終凝固点での中心線偏析とを示す。しかし、通常のストリップは全体にわたって大きな樹枝状結晶粒を有するのに対し、EMストリップは、かなりの結晶粒微細化及びストリップの頂部においてより丸みを帯びた「ロゼット」粒子形状を示す。底部の第3部分は、磁場の作用に影響を受けないように思われる。
【0100】
また、
図15には、通常のストリップの縁部(
図15(c))とEMストリップとをEMエッジダムから最も近い(d)及び最も遠い(e)縁部で比較する横方向図も示されている。また、結晶粒微細化が見られるが、ただし、EMエッジダムからさらに離れたところでは程度が低く、これはストリップの幅全体にわたる不均一な効果を示唆する。
【0101】
鋳造試験の結果は、ストリップ幅と鋳造ストリップの特性の興味深い変化との期待できる制御を実証した。この節では、これらの結果の影響を検討する。
【0102】
全体的に、新規供給システム設計及び方法は予想通りに機能し、金属が早期に凍結する問題もなく、適度な縁部品質を有する固体ストリップが得られた。供給の非対称性は、鋳造にいかなる問題も生じさせなかった。しかし、鋳造操作がEMエッジダムの性能に干渉する程度に十分に矛盾したと考える理由がある。
図16は、EMエッジダムによる異なる試験で得た箇所の範囲にわたる厚みに対する幅のプロットを示し、これらの箇所は、試験が成功したか(緑はEMエッジダムの作用によって制御された幅の変化を示す)、失敗したか(赤、幅の変化なし)又はおおよそその間か(琥珀色、この場合、幅は変化したが、EMエッジダムの作用には直接関連しない)どうかに基づいて着色されている。
【0103】
成功した多くの試験については、所定の幅で厚みがより大きい一般的な傾向がある。幅と厚さとの比は、一定であるキャスターの剛性とロールを離す凝固性シェルの成長とによって決定される。より厚い鋳造シートは、EMエッジダムに近くでのより速い凝固の原因となる場合がある:この場合には、磁場がより強くなるため、試験がより成功することが予想される。ロール速度を変化させてこの理論を直接試験することを試みたところ、これらの結果は一致する。鋳造物11及び12において、より緩やかなロール速度を使用してより早期の凝固を生じさせたところ、予想通りより大きな厚みが得られた。
【0104】
したがって、この研究で使用した構成でのキャスターと供給システムとの組み合わせは、最終凝固点の場所に明らかに影響を受けやすいEMエッジダムの性能を適切に分離するのには十分に再現できない。これは、供給先端部を出たときのアルミニウム温度又はロール速度のいずれかの変化に起因し得ると推測される。
【0105】
最大収容圧力は15mm
Al(
図10から)であったが、これは、アルミニウムの存在からの電界強度の向上を考慮したとしてしても、供給先端部出口での磁気圧力よりも有意に大きい(
図8)。アルミニウムは外部に漏れなかったため、ストリップ縁部の追加の要因助成閉じ込めが存在しなければならない。
【0106】
磁場の物理的効果は、アルミニウム縁部の表面に磁気圧力を加えることである。この圧力は、流体圧力、表面張力及び動的な場合には慣性及び粘性とバランスとしなければならない。三次元では、この問題は複雑になる:液体アルミニウムの縁部は、供給先端部の輪郭及び縁部に沿った断面において形状を変化させることができる自由表面を形成する。磁場の分布及び強度がこの形状に結びつき、表面張力の寄与は、供給先端部の固定形状及び移動固体シェルとの接触角に応じて変化する。
【0107】
単純な2次元近似が
図17に提案されており、該図は、鋳造方向に対する縦方向のスライスを示す(すなわち、鋳造方向はその頁の平面にある)。平面から外れる変化はなく、液体金属は、分離hの2つの固体シェル100、102間に隆起104で閉じ込められて、表面張力γが作用する液体と固体表面との間に接触角αを形成するものと推測される。磁場106は、ロール間に垂直に保持され、表皮効果によりアルミニウムの表面に限定される。これは、ストリップに反発するように作用する磁気圧力P
mを発揮する。最後に、自由縁部から外側に液体アルミニウムを押すように作用するリザーバ内の圧力ヘッドからの内部流体圧力P
fと、潜在的にはそれぞれ慣性及び粘性抵抗F
i及びF
v(両者は、液体アルミニウムの動きに対抗する)からの寄与とが存在する。
【0108】
ここで、移動EMエッジダムによる幅の制御についての影響を考慮すると、力のバランスは磁石の動きに応じて変化し、3つの異なるレジームが存在する:
・慣性及び粘性力はゼロであり、表面張力は磁気圧力で機能して液体アルミニウムを収容する場合の一定幅
・幅の増加−流体の圧力ヘッドは表面張力、慣性、及び粘度を克服し、磁場の役割は最終的な幅を制御することである
・幅の減少−磁場が縁部を内側に押し、かつ、圧力ヘッド、慣性及び粘性を克服するのみならず、閉じ込めに対して表面張力の寄与を置き換えなければならない最も困難な場合。
【0109】
明らかに、最大の課題は、鋳造試験中にこの場合には応答遅れによって裏づけられるように、ストリップの幅を減少させることである。
【0110】
一定幅の場合について、慣性及び粘性力がゼロの場合には、水平方向の力平衡は式(2)で与えられる:
【数2】
式(2)。
【0111】
式(2)を使用して、表面張力が
図18のグラフによりサンプ内での液体金属の閉じ込めにより電磁エッジダムを補助する上でどのように重要な役割を果たしているかを決定することができる。固形シェルの分離hは、固体シェルが成長するにつれてロールバイトのより近くで小さくなるため、水平方向の力平衡における表面張力の影響が増大する。供給先端部出口において、ちょうど形成している固体シェル間にh=16mmの分離が存在する場合には、表面張力が4mm
Al圧力ヘッドまで保持できる。これは、最終凝固点、例えば固化前に20mm
Al圧力ヘッドが表面張力のみによって保持できる5mmまで増加する。
【0112】
表面張力が静的閉じ込めのために重要なときには、幅が変化している任意の場合は、表面張力並びに圧力ヘッド、慣性、及び粘度を克服する必要がある。幅の増加は比較的単純である。というのは、磁場は、EMエッジダムの電力を移動又は低減することにより強度が低下する場合があり、圧力ヘッドは増大して適宜表面張力を克服するからである。これは、シート幅を大きくするときに遅延が観察されなかった理由を説明するものである。
【0113】
幅を狭くするために、磁場は、供給先端部の内部に液体のメニスカスを押し戻し、固体シェル間での閉じ込めを維持しなければならない。小さな皮膜厚みを与える周波数については、その後、固体シェルは、既に固化し始めている領域から磁場を遮断するように作用する場合が多い。したがって、幅の変化は、供給先端部の内側で開始しなければならず、必然的にロールの凝固長さ及び速度に依存する遅延が発生することになる。遅延は、移動EMエッジダム(
図12)及び静的切り替えEMエッジダムによる両方の試験で観察された。オフセットは43mmであり、ロール表面速度は18mm/秒、2.4秒の遅延を与えた。これは、観察された遅延(5〜10秒)よりも短いので、他の要因が役割を果たしているに違いない。
【0114】
供給先端部の内部では、2つの効果が液体金属の動きに対抗する。第1に、表面張力は、固体シェルから供給先端部の背面への直線縁部で得られるであろう最小の自由表面領域を維持するように作用する。第2に、供給先端部の壁上での液体アルミニウムの慣性及び粘性抵抗を克服しなければならない。鋳造試験のいずれも、表面張力の効果についての明確な証拠を与えておらず、慣性力の計算は、流体がどのように供給先端部内を流れるのかに依存することになる。近似として、キャスターからのマスフロー(これは厚み及びシート速度が固定されている場合には幅に比例する)が幅を変更する際の横方向のマスフローよりもはるかに大きい場合には、EMエッジダム及び慣性に影響を受けるのに必要な金属のわずかな量が小さな影響を及ぼすに過ぎない。横方向のマスフローが大きい(急激な幅変化に相当する)場合には、質量保存のための、金属はリザーバ内に押し戻されるはずであり、慣性力は大きい。
【0115】
ここで、静的EMエッジダムをオン及びオフに切り替えることにより幅を変化させることを検討する。幅の減少と増加の両方における非常に急速な変化を示したストリップの段階的応答は、ストリップ幅を制御するためのさらなる機構が存在することを示唆する。ストリップの縁部を移動させるように作用するのではなく、EMエッジダムをオンに切り替えたときに、このものは供給管内で流れを既に分割している。
図19は、切り替え、静止、EMエッジダムによる鋳造試験で生じた特徴的なパターン及びこのパターンがどのように鋳造期間に応じて変化するのかを示す。磁場はストリップの中央で生成されるため、供給先端部内にある金属を中心線で2つに効果的に分割する。
図19の下にある固定縁部は、アルミニウムの連続供給物を有する一方で、頂部縁部への供給は磁場によってブロックされる。残りのアルミニウムはこの頂部端部からのテールとして凝固し、その後約半分の幅のストリップを残して迅速に流れ出る。
【0116】
EMエッジダムがオフに切り替えられると、機械的エッジダムによって設定された開口部を超えたオーバースピルが標準的な130mmストリップを製造する前に短期間に発生する。既に凝固したストリップによって与えられる閉塞なしに、液体金属は、最初に供給先端部の幅を越えて流れることができるが、この液体を与えると金属は完全にキャスターから漏れることなく凝固し、その後固体障壁が形成され、この状況はすぐに解決して安定した鋳造物となる。圧力ヘッドが小さくなり金属が冷却したときに、オーバースピル作用が小さくなり、その後鋳造において後で消失するが、これは、オーバースピルをこれらのパラメータの適切な制御により防止することが可能であることを示唆する。
【0117】
全ての場合において、EMエッジダムをオンにした後に幅の単一の変動が発生した。オーバーシュート及び最終的に定まった幅は鋳造時間と共に変動し、また、リザーバは、注がれたアルミニウムよりも低い温度であるため、そのときには供給温度の変化がこの変動の最も可能性の高い原因であり、また、観察される共通の傾向がある。最高供給温度は、最大のオーバーシュート及び最も幅広のストリップを与え、温度が下がるとオーバーシュート及び幅は最終工程のためにそれらの最小まで減少する。供給温度は凝固特性に影響を及ぼすが、これはEMエッジダムの性能を決定する際の凝固点の位置の重要性を示す。
【0118】
磁場の分布は、液体アルミニウムが供給先端部を満たす程度に応じて変化し、ストリップ幅に対する金属の表面での磁気圧力のグラフを
図20に示す。これらの値は、有限要素モデルから、液体アルミニウムがストリップの幅まで供給先端部を完全に満たす形状をとり、及び自由縁部が鋳造方向に対して平行であるという推論で算出されたものである(これらの両方は、実際に真である可能性は低いため、これらの結果からは定性的な結論のみを導き出すことができる)。これらの結果は、自由縁部上への磁気圧力が広いストリップに対して弱く、自由縁部がEMエッジダムの場所に整列する場合には最大に増加し、その後再び減少することを示す。これは、リバウンド及びセトリング効果が段階的応答で観察された理由を説明することができる。金属は、まず磁場が弱いため緩やかに応答し、より小さな幅に向かって加速し、そしてオーバーシュートし、次に、磁場が弱いため、EMエッジダムに沿って平衡位置にリバウンドする。このメカニズムが正しいと仮定すると、段階的応答の精度は、この振動を減衰させるためにEMエッジダム電流及び圧力ヘッドを制御することで改善できる。
【0119】
ここで、鋳造ストリップの品質を参照すると、ストリップは、これを使用して製品を製造するために、通常のシートに対する要件を満たす又は超えるべきであることに留意されたい。実際には、これは、トリミングが予想される場合には、EMエッジダムが低品質の縁部を生じさせる場合があるが、ストリップの表面品質が良好でなければならず、しかもシートの機械的特性が仕様を超え、理想的にはシート全体にわたって均一でなければならないことを意味する。縁部の亀裂や表面品質には認識可能な変化はないが、機械的特性は、微細構造の変化のため改善されている。
【0120】
この変化は、EMエッジダムの撹拌作用に起因する場合がある。この撹拌動作を生じさせるメカニズムを
図21に提案する。磁場102は、ロールバイトBに向かってエッジダム100から減衰しており、この勾配は鋳造方向に対して平行な縁部に沿って流体の流れを設定する。質量保存により、液体金属は再循環104しなければならず、液体−固体界面で液体アルミニウムの横方向の流れを与える。この横方向の流れは、潜在的な核部位を分配して樹枝状成長を中断させ、かつ、その代わりに観察される特徴的なロゼット構造を生成する。結晶粒微細化剤の添加と比較していないが、EMエッジダムは、通常の鋳造シートの機械的性質と同等のものを少なくとも達成するであろうと思われる。
【0121】
図15の顕微鏡写真は、微細構造の改善が主としてストリップの上半分で生じたことを示し、厚みの下3分の1は、通常のストリップからほとんど変化していないことを示す。これは、ストリップの熱伝達、すなわち凝固速度の相違に起因する可能性が高い−中心線偏析がストリップの上面近くで見出されているため、固体シェルが上部よりも下部ロールで速く成長し、微細構造に影響を与えるための撹拌時間はそれほど残されていないことは明らかである。凝固速度の差は、供給先端部の設定の詳細及び液体金属とロールとの間の接触圧力差に起因する場合がある。供給先端部は、キャスターの下部ロールに対して固定され、液体金属とこの下部ロールとの接触は、供給先端部の出口で直ちに生じるのに対し、上部ロールは1〜2mm上向きにずれており、最初の接触での遅延を生じさせる。また、接触圧力も変化する。というのは、圧力ヘッドは、シートの厚さと同じ桁であるため、上面の接触圧は、下部表面の半分程度に低くなり、熱伝達係数が減少し、それによって凝固がさらに緩やかになるからである。
【0122】
追加点は、ストリップの機械的特性に関連していた。これらは、EM制御ストリップから得られたサンプルの全てが通常のストリップに対して改善したわけではないという点で比較的矛盾していた。これは、生成された撹拌流に不安定要素があり、その機械的特性の向上のみならず、歩留まりの改善(この研究の主な焦点)が望まれると仮定すると、さらなる作業が必要な場合があることを示唆するものである。
【0123】
この節の結論として、提案されたEMエッジダム設計は、プロセスを実際に使用できるようにするために必要な程度の制御なしにもかかわらず、双ロールの幅を変化させ、従来の任意の試みよりもはるかに迅速に鋳造することが実証された。EMエッジダムによる鋳造試験から、幅を変化させる2つの方法が特定された−シート幅の同時変更によりEMエッジダムを横方向に移動させること、又は静的EMエッジダムをオン及びオフに切り替えることである(これは、流れを分割し、幅の離散的な段階的変化を与える)。
【0124】
切り替えられた静的EMエッジダムは、さらに迅速な幅変動を生じたが、両方の方法は、追加の制御によって改善される。特に、鋳造プロセスは、凝固輪郭に対するEMエッジダム性能の感度のためさらに安定化されなければならず、EMエッジダム位置及び電流と共に圧力ヘッドを直接制御することが、正確な幾何学的形状及びより速い幅変化を達成するために必要である。
【0125】
これらの鋳造試験で示した縁部の動きを超えて、第2EMエッジダムを使用して、同様に反対側の縁部を制御することができる。また、電磁石を供給先端部の周囲に中心に配置することができ、金属を供給する方法のいくつかの変形例では、電磁石を使用して孔を鋳造することができ、これらの孔は、歩留まり損失の最大限の可能な減少を達成するシート内の任意の輪郭を鋳造するために柔軟性を付与するであろう。依然として縁部の亀裂が存在しているため、トリミングが必要とされ、歩留まりは100%にはならないと考えられるが、非常に不規則な製品では、改善は依然としてかなりのものになるだろう。特に好適な目標の用途は、車体パネルであるが、これには、鋳造シートの品質を向上させるために双ロール鋳造プロセスの開発が必要となるであろう。
【0126】
ここに記載された鋳造手順は、凝固点をより正確に制御するように改良でき、より広い双ロール鋳造機を使用して幅の変化を大きくすることができる。EMエッジダムは、より強力な電源供給で出力を増加させることによって改良できる(例えば、複数の増幅器を並列に使用して)。これらの改変は、正確な幅の形状を鋳造するために、EMエッジダムの電流及び位置をリザーバ内の圧力ヘッドの制御に結びつける制御システムを構築するためのより安定した基盤を与える。この制御の必要性は一定の幅及び変化する幅の両方の場合について示されている。
【0127】
図22は、鋳造ロール又はEMエッジダムなしの鋳造システムの概略斜視図を示す。供給先端部62は、前の図に示されているとおりであり、溶融金属は溶融金属リザーバ70から加熱導管68によって供給先端部に供給される。この実施形態では、溶融金属リザーバの位置は、供給先端部に対して固定されている。リザーバ内の溶融金属のレベルは、次の2つの要因によって決定される。第1に、リザーバ内の溶融金属の量、第2に、リザーバ内の溶融金属への転置体110の侵入度によって決定される。明確に理解されるように、
図22において下方への転置体の溶融金属への移動により、溶融金属が上方に変位する。これは、リザーバ内の溶融金属のレベルを上昇させ、供給先端部内の溶融金属の静圧を上昇させる。これは、
図23及び
図24に示されており、これらは、溶融金属への転置体の最大侵入及び供給先端部62のレベルよりも高いリザーバ内の溶融金属の得られる高さhのため溶融金属の供給先端部内の静圧の増加を模式的に示す。
【0128】
溶融金属の供給圧力の制御とEMエッジダムとの間の相互作用を
図25〜27に示す。
【0129】
鋳造ストリップのエッジの位置の制御は、液体金属における液圧のバランス、液体金属縁部上の表面張力及びEMエッジダムによって金属縁部に加えられる磁気圧力に依存する。上記のように、液体金属の圧力は、供給先端部の高さと比較して、リザーバ内の金属の高さを変化させることによって制御でき(圧力ヘッドとして知られている)、また、磁気圧力は、EMエッジダムに印加される電流及び液体金属縁部に対するその位置によって制御される。
【0130】
上で報告した実験研究は、これらの要因の連関した制御が好適な制御により幅の迅速な変化を達成する際に重要であることを示している。
図25〜27は、EMエッジダムの位置及び圧力ヘッドを、どのようにして幅の所望の変化を達成するために調節することができるのかについての図を示す。この方法は、シートの対向する縁部を、鋳造ストリップの両側でEMダムによって対称的に移動させる場合の幅の変化に最も適していることに留意されたい。また、この方法は、製品形状が非対称の動きを必要とする場合に使用することもできるが、ただし、その後、それに応じてストリップの幅の制御精度の減少がある。
【0131】
図25〜27では、図は、装置内における溶融金属を通した概略断面図である。しかし、ここでは便宜上リザーバ120及び導管122がストリップ124を介して横方向に整列するように示されているが、これはEMダム126が移動できる方向と同じであることに留意されたい。実際には、リザーバ及び導管は
図22に示すように配置されており、EMダムは、リザーバから供給先端部までの導管に沿った溶融金属の流れの方向に直交する方向に移動可能である。
【0132】
図25は、ストリップを一定幅で鋳造することを目的とする定常状態の配置を示す。溶融金属は、リザーバ内の所望の基準レベルDに保持される(溶融金属を基準レベルに維持するために適宜追加の溶融金属をリザーバに添加し及び/又は溶融金属を基準レベルに維持するために転置体を溶融金属に挿入して、鋳造中にリザーバから失われる溶融金属を補填する)。EMエッジダム126は、一定のコイル電流で所望の位置に保持される。
【0133】
図26は、鋳造ストリップの幅を増加させる際の構成を示す。リザーバ120内における溶融金属のレベルは、転置体の好適な変位によって増大する。EMエッジダム126は、増加幅方向に移動する。同時に、コイル電流を低下させることができる。供給先端部での溶融金属圧力の増加は、EMエッジダムの動きによって利用可能になる追加の領域を満たすのに役立つ。
【0134】
図27は鋳造ストリップの幅を減少させる際の構成を示す。リザーバ120内における溶融金属のレベルは、転置体の好適な変位によって減少する。EMエッジダム126は、減少幅方向に移動する。同時に、コイル電流を増大させることができる。EMエッジダムによって供給される圧力は、より制限された領域に溶融金属を押し込むように作用し、溶融金属圧力の低下は、これに対する抵抗を減少させる。
【0135】
上記実施形態では、EMエッジダムは、電磁石の物理的移動によって移動する。
図28に示される別の実施形態では、静的EMダムの配列200、202、204、206が設けられている。この実施形態では、鋳造ストリップ208の幅を選択し、それに従ってEMダムがオンに切り替えられ、それによってEMエッジダムの位置を規定する。図示した実施形態は、供給先端部210の一方側にある4個のEMエッジダムを示す。商業規模のTRC装置について、ストリップの最大幅は2000mmまでとすることができるところ、これは多くのEMダムのための部屋を提供し、それによってEMダムの好適なオン・オフ制御によりストリップの幅の比較的細かい制御を可能にする。EMダムを、供給先端部の幅にわたって完全に設けることや、所望の位置に設けることができる(例えば一方又は両方の縁部に向かって)。
【0136】
図28の実施形態を考慮して、本発明者は、本発明が鋳造ストリップの幅の位置を制御することに限定される必要はないことを理解することができた。ダムのいずれかの側に溶融金属が存在するときのEMダムの操作は、溶融金属を離れさせる。このように、EMダムは、溶融金属を磁場からそらすためのダイバータとして作用する。この効果は、適度に高い磁場強度のため、溶融金属の供給を通じて孔を形成し、その結果として、鋳造ストリップに対応する孔を形成することである。再びEM場をオフにすると、溶融金属が以前には除外された場所に戻って流れ、孔の後端を閉鎖することが可能になる。しかし、この鋳造ストリップ内における孔形成の概念は、EMダムの使用には限定されないが、EMダムは、本発明を実現するために特に好適な機構を提供することができる。その代わりに、機械ダイバータを含めてダイバータを使用することができる。
【0137】
製品を直接鋳造する際に最小限の歩留まり損失を達成するために、不規則な幅のパターンを有することに加えて又はその代わりにこれらに設けられた1以上の孔を有するブランクとして最初に鋳造されることから利益を得るであろう製品を想起することは容易である。例えば、単一部品で製造される自動車のドアパネルは、不規則な幅及び窓を収容するための孔が必要である。EMエッジダムは、幅全体にわたって外側の縁部と同様に孔のために内縁を制御することができる。この場合には、EMダムの両側上に液体金属の流れを与えることが必要である。この場合には、EMダムは、エッジダムではなくダイバータとして機能する。
【0138】
EMダイバータの両側上に液体金属の流れを与えるのに好適な方法を
図29〜31に提案する。
【0139】
図29は、供給先端部300、鋳造ストリップ302及びEMダイバータ304の模式平面図を示す。ダイバータの各側に、EMダイバータのいずれかの側にあるように配置される供給306、308を介して供給先端部における異なる位置に対して独立に液体金属を与えることにより液体金属が供給される。孔310は、EMダイバータ304の好適な操作によって生成される。
【0140】
図30は、
図29とは別の実施形態を示し、ここで、供給先端部300内においてEMのダイバータ304によって発生した磁場を通って伝導性管体320が延在し、該伝導性管体内の磁場からの液体金属の流れを実質的に遮蔽するようになっている。これは、液体金属が伝導性管体320を介して供給され、EMのダイバータをバイパスしてEMダイバータの反対側に供給することを可能にする。
図31は、EMダイバータ304、EM場ライン322、供給先端部300、溶融金属324及び伝導性管体320の長手方向断面図を示す。
【0141】
閉じられた孔は、EMダイバータをオンにし、シートを鋳造して必要な内部開口を生成する間にわたって保持することによって生成でき、その後再度オフに切り替え、それによって内部縁部を再結合させて孔を閉じることができる。
【0142】
図29〜31の実施形態では、EMダイバータの様々な構成を使用することができる。小さな孔(例えば約50mmまでの直径の孔)については、EMエッジダムについて上記した形状を有する1個のEMダイバータを使用することができる。このEMダイバータは、孔の必要な位置及び形状に応じて静的又は可動であることができる。大きな孔については、2個のEMダイバータを設けることができる。これらのものは、好ましくは移動可能である。実際には、それぞれは、内部EMエッジダムを与える。あるいは、
図28に関連して説明したように、静的EMのダイバータの配列を設けることができ、これらのオン・オフ制御により、孔の内部縁部の位置を制御することが可能になる。キャスターの幅にわたって上記構成を一回以上繰り返すことによりシートの幅にわたって複数の孔を製造することができる。
【0143】
鋳造ストリップの縁部の位置の制御に関連して上記した鋳造ストリップの断面形状の変化の検討と同様に、鋳造ストリップに孔を形成する際には溶融金属の圧力の制御及び調節が有利である。
【0144】
鋳造ストリップの縁部の1個以上の位置をEMエッジダムによって制御し、鋳造中に鋳造ストリップ内の所望の位置に孔を形成させるためにEMダイバータも設ける実施形態が意図される。
【0145】
鋳造中にダイバータを使用して溶融金属における孔の形成を促進することが可能である。
図32は、供給先端部300を通した概略断面斜視図を示す。バッフル340の配列が設けられている。これらのバッフルは、非強磁性、好ましくは非導電性材料から形成される。例えば、これらのものは、セラミックから形成でき、例えば、同じ材料から形成でき、それから供給先端部の残りの部分が形成される。それらの効果は、ロールの1バイトに到達するために、溶融金属をそれらの周りに流れさせることである。EMダイバータ304からの磁場は、(導電性)溶融金属を通してよりも、バッフルを通しての方がより容易に通過できる。したがって、磁場は、EMのダイバータの位置に最も近い1個以上のバッフルに集中する傾向がある。適度に高いEM場が生成されると、EM場が最も高いバッフルの近くで孔が開始される。その後、この開始された孔を、EMダイバータの好適な制御により、後で到達する溶融金属のために拡張させ又は移動させることができる。このようなバッフルの効果は、EM場が溶融金属を側方及び前方ではなく側方に押すことを可能にすることであると考えられる。
【0146】
図33は、
図32の代わりの実施形態を示しており、ここで、供給先端部の後部内面は、隆起部350の配列を有する。これらのものは、供給先端部の残りの部分と同じ材料(すなわちセラミック)から形成されている。それらの効果は、
図32のバッフルの効果と同様であり、EMダイバータを適切に制御することにより孔の開始を可能にする。
【0147】
本発明を上記例示的な実施形態に関連して説明してきたが、この開示に接した当業者であれば多くの均等な変更及び変形が明らかであろう。したがって、上記本発明の例示実施形態は、例示であって限定ではないものとみなされる。説明した実施形態に対する様々な変更を、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【0148】
上で引用した及び/又は下に列挙する参考文献は、全て、参照により本明細書において援用される。
【0149】
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