特許第6563954号(P6563954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6563954痛みの緩和のための局所組成物、製造および使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563954
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】痛みの緩和のための局所組成物、製造および使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/165 20060101AFI20190808BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20190808BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20190808BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/60 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/125 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/045 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/105 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/12 20060101ALI20190808BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20190808BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61K31/165
   A61K47/36
   A61K47/34
   A61K47/44
   A61K47/10
   A61K31/60
   A61K31/125
   A61K31/045
   A61K31/352
   A61K31/105
   A61K31/12
   A61K31/56
   A61P29/00
   A61P25/04
【請求項の数】34
【全頁数】55
(21)【出願番号】特願2016-562863(P2016-562863)
(86)(22)【出願日】2015年4月15日
(65)【公表番号】特表2017-511366(P2017-511366A)
(43)【公表日】2017年4月20日
(86)【国際出願番号】US2015025957
(87)【国際公開番号】WO2015160941
(87)【国際公開日】20151022
【審査請求日】2017年9月22日
(31)【優先権主張番号】61/979,905
(32)【優先日】2014年4月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516140395
【氏名又は名称】ヴィズリ・ヘルス・サイエンスィズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ,フィリップ・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】バックス,ダニエル
【審査官】 谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−102097(JP,A)
【文献】 特表2006−522832(JP,A)
【文献】 特開2007−297460(JP,A)
【文献】 特表2008−525505(JP,A)
【文献】 ウェブサイト「http://conquerha.com:80/jointcomfort.php」について「WayBackMachine」上にアーカイブされたHA Concepts, Incによる製品「Joint Comfort Rub」の紹介の上の2011年6月18日付けアーカイブ,2018年 5月17日,[Retrieved from the Internet],URL,https://web.archive.org/web/20110618142537/http://conquerha.com:80/jointcomfort.php
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/165
A61K 31/045
A61K 31/105
A61K 31/12
A61K 31/125
A61K 31/352
A61K 31/56
A61K 31/60
A61K 47/10
A61K 47/34
A61K 47/36
A61K 47/44
A61P 25/04
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY
/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む組成物:
i)0.2〜30重量%のカプサイシノイド、
ii)0.5〜1.5重量%のヒアルロン酸、および
iii)0.5〜15重量%の非イオン性界面活性剤、
であって、前記ヒアルロン酸が、低分子量ヒアルロン酸および高分子量ヒアルロン酸の両方の混合物であり、低分子量ヒアルロン酸の分子量が200kダルトン未満であり、高分子量ヒアルロン酸の分子量が800kダルトンを超える、局所投与に際し前記カプサイシノイドによって作り出される灼熱感および刺痛感の低減または排除に使用するための、前記組成物。
【請求項2】
前記カプサイシノイドがカプサイシンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記カプサイシノイドがトランス−カプサイシンまたはノニバミドである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カプサイシノイドが2〜30重量%のカプサイシノイドである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤がPS80である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤がポリオキシ40水素化ヒマシ油である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに浸透増進剤を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記浸透増進剤が、DGMEまたはプロピレングリコールからなる群より選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
さらにアルコールを含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記アルコールがエタノールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
さらに鎮痛薬または麻酔薬を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記鎮痛薬が、サリチル酸メチル、ショウノウ、メントール、イシリン、ユーカリプトールおよびフェノールからなる群より選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
さらに抗炎症薬を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記抗炎症薬が、フラボノイド、ステロイドおよびNSAIDからなる群より選択される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
組成物が液体溶液である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
.2〜20重量%のカプサイシノイド、および
.5〜15重量%の非イオン性界面活性剤
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
〜20重量%のカプサイシノイドおよび
〜15重量%の非イオン性界面活性剤
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
.20〜20重量%のカプサイシノイド
〜15重量%のPS80またはポリオキシ40水素化ヒマシ油、および
〜40重量%の浸透増進剤
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
.20〜20重量%のカプサイシノイド、
0.5〜1.5重量%のヒアルロン酸、
〜15重量%のPS80またはポリオキシ40水素化ヒマシ油、および
GME、プロピレングリコールおよびアルコールからなる群より選択される、1〜40重量%の1以上の浸透増進剤
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
さらにフェノールを含む、請求項1〜19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
痛みを患う哺乳類に局所投与される、前記哺乳類における痛みの処置において使用するための、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記哺乳類がヒトである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
NSAIDの投与と組み合わせて投与される、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記痛みが関節炎痛である、請求項21に記載の組成物。
【請求項25】
前記関節炎痛が変形性関節症またはリウマチ様関節炎痛である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
カプサイシン応答性状態を患う哺乳類に局所投与される、前記哺乳類における該状態の処置において使用するための、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
カプサイシン応答性状態が、神経障害性疼痛を含む疼痛、炎症性痛覚過敏、ヴルヴォディニア、間質性膀胱炎、鼻炎、口腔灼熱症候群、口腔粘膜炎、ヘルペス、皮膚炎、掻痒症、耳鳴り、乾癬または頭痛である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
哺乳類に局所投与される、前記哺乳類における痒みの処置において使用するための、請求項1〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項29】
低分子量ヒアルロン酸の分子量が20kダルトン未満、または15kダルトン未満である、請求項1〜28のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項30】
高分子量ヒアルロン酸の分子量が1000kダルトンを超えるか、2000kダルトンを超えるか、3000kダルトンを超えるか、4000kダルトンを超えるか、または5000kダルトンを超える、請求項1〜29のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項31】
i)カプサイシノイドを非イオン性界面活性剤に溶解して溶液を形成し、そして
ii)ヒアルロン酸を該溶液に加える、
ことを含む、請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物の形成方法。
【請求項32】
i)カプサイシノイドおよび非イオン性界面活性剤およびエタノールを混合し、そして
ii)ヒアルロン酸を加える、
ことを含む、請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物の生産方法。
【請求項33】
i)請求項1〜30のいずれか1項に記載の組成物、および
ii)非閉塞性アプリケーター機器、
を含む、局所投与に際しカプサイシノイドによって作り出される灼熱感および刺痛感の低減または排除に使用するためのキット。
【請求項34】
さらに、残留カプサイシノイドの除去に使用するための洗浄溶液を含む、請求項33に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプサイシンのような一過性受容器電位バニロイド1(TRPV1)選択性アゴニストの組成物、製造方法、および痛みの緩和方法、ならびにさまざまな医学的状態の処置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カプサイシン
【0003】
【化1】
【0004】
カプサイシンは、唐辛子を含むトウガラシ属植物の主要カプサイシノイドである。カプサイシンは室温において固体で、60〜62℃の融点を有する。痛みをシグナル伝達すると考えられる小径の求心性神経繊維(C線維およびA−デルタ線維)に対し選択的に作用するので、長い間痛みの緩和に用いられてきた。動物での試験から、カプサイシンは、カルシウムおよびナトリウムを透過するカチオンチャネルを開くことにより、C線維膜の脱分極を引き起こすと思われる。
【0005】
カプサイシンは、神経伝達物質として機能し疼痛知覚を促進する神経ペプチドであるP物質とよばれる化合物を、神経終末線維から激減させることにより、作用すると報告されている。しかしながら、カプサイシンは、施用に際し、紅斑および/または強い灼熱感もしくは刺痛感を引き起こす可能性もある。強い灼熱感または刺痛感は、一部の人にとって忍容し得ない可能性がある。加えて、実際の痛みの緩和がもたらされ、強い灼熱感が止まるのに、1日または2日より長くかかる可能性がある。紅斑を伴うことがある初期の強い灼熱痛の後、カプサイシンの局所施用は、さまざまな侵害刺激または疾患状態によって引き起こされる痛みに対する無感覚をもたらす。理論的には、ニューロンがカプサイシンにより刺激された後に活動を停止し、その結果、灼熱感および他の無関係の感覚−痛みを含む−が停止する。ほとんどの市販薬中に存在する低濃度(0.075パーセント以下)のカプサイシンを試験する研究では、目覚ましい結果は得られていない。多くの人は灼熱感を苦に感じるので、処置を中断してしまう。現在の市販のカプサイシン製品は、多くの人にとって有効ではない。高用量カプサイシンパッチが開発されているが、それらは灼熱感および刺痛感に対処するための局所または局部麻酔を必要とし、したがって医師の管理下での重度の慢性疼痛の処置にのみ適している。
【0006】
カプサイシンは末梢組織の侵害受容器を脱感作する能力を有するので、考えうる鎮痛効果がさまざまな臨床試験で評価されてきた。しかしながら、カプサイシンの施用自体が、処置する神経障害性疼痛とは別の灼熱痛および痛覚過敏を引き起こすことが多いので、患者の服薬はあまり順守されず、臨床試験中の脱落率は典型的には50パーセントを超えていた。カプサイシンでもっとも頻繁に起こる有害作用は、とりわけ施用の最初の1週間の施用部位における灼熱痛である。これにより、盲検法を行うことが不可能になる可能性があり、脱落率が33〜67%になる場合がある(Watson CP et al.“A randomized vehicle−controlled trial of topical capsaicin in the treatment of postherpetic neuralgia.”Clinical Therapeutics.15.3(1993):510−26)。服用順守の他の要因は、治療効果が観察される前の時間遅延である。少なくとも1週間または2週間にわたり毎日局所施用することが必要であり得る。
【0007】
多くの個人は、強い刺痛および灼熱痛のため、期待されるカプサイシンの鎮静効果の前に、長期間にわたるカプサイシンの局所処置を打ち切ってしまう。ヘルペス後神経痛を患う患者39人中26人(66.7%)が0.025%カプサイシン製剤(Zostrix、Gen Derm、米国)の処置を忍容しなかったと報告された。0.075%製剤(Zostrix−HP、Gen Derm、米国)では、ヘルペス後神経痛を有する患者16人中5人(31.3%)および74人中45人(60.8%)が長期間の局所処置を忍容しなかった。(Peikert,A.et al.,Topical 0.025% capsaicin in chronic post−herpetic neuralgia:efficacy,predictors of response and long−term course,J.Neurol.238:452−456,1991;Watanabe,A.et al.,Efficacy of capsaicin ointment(Zostrix)in the treatment of herpetic pain and postherpetic neuralgia,Pain Clinic 15:709−713,1994;Bernstein J.E.et al.,Topical capsaicin treatment of chronic postherpetic neuralgia,J.Am.Acad.Dermatol.21:265−270,1989;およびWatson C.P.N.et al.,A randomized vehicle−controlled trial of topical capsaicin in the treatment of postherpetic neuralgia,Clin.Ther.15:510−526,1993.)
自発的な灼熱痛および痛覚過敏は、カプサイシン施用部位における末梢侵害受容器の強い活性化および一時的感作に起因すると考えられる。この活性化および感作は、脱感作段階に先立ち起こり、生じる灼熱痛が処置に対する患者の忍容性を低下させるので、局所的なカプサイシンの使用に対する障壁である。
【0008】
カプサイシンは、Cニューロン終末の局部的分解を引き起こすことにより痛みを緩和すると考えられる。カプサイシンの活性は、バニロイド受容体1すなわちVR1とよばれるイオンチャネルにカプサイシンが結合し、これを活性化することによって生じる。正常な状況では、VR1イオンチャネルは活性化されると短時間開き、Cニューロンが脳まで疼痛信号を伝達するようになる。カプサイシンがVR1に結合してこれを活性化すると、痛みを感知する終末、すなわちCニューロンの末端を分解する細胞内での一連の事象が生じ、これによりニューロンが疼痛信号を伝達することが妨げられる。
【0009】
1997年、カリフォルニア大学サンフランシスコ校のDavid Juliusが率いる研究チームは、カプサイシンが、痛みおよび熱を感知するニューロンの膜上に存在しTRPV1として知られるタンパク質に選択的に結合することを示した。TRPV1は熱によって活性化されるカルシウムチャネルで、37〜45℃(それぞれ98.6および113°F)で開く。カプサイシンがTRPV1に結合すると、該チャネルは37℃未満(正常なヒト体温)で開くようになる。このため、カプサイシンは熱の感知に関連づけられる。カプサイシンによるこれらのニューロンの長期活性化は、痛みおよび熱に関する体の神経伝達物質の1つであるシナプス前物質Pを激減させる。TRPV1を含有しないニューロンは影響を受けない。結果は、化学物質が灼熱感と似た症状を引き起こすように思われる;神経が流入(influx)により圧倒され、長期間にわたり痛みを報告することができない。カプサイシンへの慢性暴露により、ニューロンは神経伝達物質を激減させて、痛覚の減少および神経性炎症の遮断をもたらす。カプサイシンを除去すると、ニューロンは回復する。
【0010】
カプサイシンの鎮痛効果は痛みを引き起こす物質Pの激減に起因すると考えられていたが、最新の証拠は、侵害受容線維の“脱機能化(defunctionalization)”のプロセスがその鎮痛効果に関与することを示唆している(Anand P,Bley K.Topical capsaicin for pain management:therapeutic potential and mechanisms of action of the new high−concentration capsaicin 8% patch.Br J Anaesth.2011;107(4):490−502)。
【0011】
ヒトは、長い間、カプサイシン含有香辛料の食事供給源およびさまざまな医学的適応に用いられる局所製剤に暴露されてきた。この膨大な経験は、カプサイシン暴露の顕著または持続的な悪影響を示していない。無髄感覚求心性神経線維に対するカプサイシンの潜在的治療効果の最近の決定では、さらなる医薬開発のためにはこの化合物の入念な考慮が必要とされている。
【0012】
現在、カプサイシンは、店頭販売用の低用量非滅菌クリームおよびパッチの形態で局所投与用に市販されており、これは吸収されにくい傾向がある。CapZasinTM(Chattem)およびZostrixTM(Rodlen Laboratories)など、30を超える銘柄のクリームおよびパッチが存在する。これらの市販用製剤は処方箋なしで広く購入することができ、痛みを緩和するために消費者によって局所的に用いられ、変形性関節症、帯状疱疹(帯状ヘルペス)、乾癬および糖尿病性ニューロパシーなどの状態において、多様で、しばしば不十分な結果をもたらしている。
【0013】
痛みの緩和に加え、カプサイシンは体の血流を増大させて、皮膚表面上および表皮層内での自然治癒を促進する。これは、外傷、ならびに汚染、日光および冬の気候による環境的損傷の治癒に、特に重要である。カプサイシンはまた、詰まった皮膚の毛穴および毛のう中の細菌を死滅させる強力な抗微生物剤である。
【0014】
局所カプサイシンは、にきび、皮膚炎、湿疹、乾癬、さらにはふけを含む、さまざまな状態を標的にする皮膚および頭皮ケア製品に用いられてきた。カプサイシンは、局所施用すると痒みを止めることができる。医学界では掻痒として知られるが、痒みは多くの皮膚疾患の症状および原因の両方である。人は痒みが増すほど頻繁に掻き、状態を悪化させる。残念ながら、多くの皮膚および頭皮の状態は、慢性的な病的皮膚の周期をもたらす痒みの原因である。虫刺されから湿疹まで、迅速な治癒の鍵は、状態が自然に癒えることができるように痒みを止めることであり、カプサイシンは、これを効果的に行うことができる公知の天然物質である。
【0015】
カプサイシンは、以下を包含する作用を媒介する:(i)末梢組織の侵害受容器の活性化;(ii)1以上の刺激様式に対する末梢侵害受容器の最終的な脱感作;(iii)感受性A−デルタおよびC−線維求心性神経の細胞変性;(iv)ニューロンプロテアーゼの活性化;(v)軸索内輸送の遮断;および(vi)非侵害受容線維の数に影響を及ぼすことのない侵害受容線維の絶対数の低減。
【0016】
カプサイシンの使用は、いくつかの疼痛性障害の処置で公知である。したがって、カプサイシンの局所製剤は、痛みおよび痒みが関与するさまざまな皮膚障害、とりわけ、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、掻痒、乾癬、群発頭痛、乳房切除後疼痛症候群、鼻症、口腔粘膜炎、皮膚アレルギー、排尿筋過反射、腰痛/血尿症候群、頚部痛、断端痛、反射交感神経ジストロフィー、皮膚腫瘍およびリウマチ様関節炎、変形性関節症などの関節炎に起因する疼痛、糖尿病性ニューロパシー、乾癬、掻痒(痒み)、群発頭痛、術後疼痛、口腔痛、ならびに外傷に起因する痛みなどのための局所療法としての用途が見いだされている。(Martin Hautkappe et al.,Review of the Effectiveness of Capsaicin for Painful Cutaneous Disorders and Neural Dysfunction,Clin.J.Pain,14:97−106,1998)
カプサイシンは、筋肉および関節のわずかなうずきおよび痛みを緩和するための局所用軟膏およびクリームに用いられる。カプサイシンは、背部に施用することができる大きな絆創膏に利用することもできる。カプサイシンの濃度は、典型的には0.025重量%〜0.075重量%である。
【0017】
有害作用を最小限に抑え、鎮痛速度を加速するための1つアプローチは、局所麻酔下でQutenza(登録商標)(カプサイシン)8%パッチにより実施されるような、より高濃度のカプサイシンの局所施用であった。Qutenza(登録商標)(カプサイシン)8%パッチの施用は、複合性局所疼痛症候群および神経障害性疼痛の場合、1〜8週間続く持続性鎮痛をもたらす(Robbins et al.Treatment of intractable pain with topical large−dose capsaicin:preliminary report.Anesth.Analg.1998;86:579-583)。局所用局部麻酔薬を1%局所カプサイシンと一緒に施用した場合、健康な被験者において、カプサイシンによってもたらされる痛みの変化は観察されなかった。これは、この同時処置のアプローチが、カプサイシンによって引き起こされる痛みを妨げるのに十分でなかったことを示していた(Fuchs et al.,Secondary hyperalgesia persists in capsaicin desensitized skin.Pain 2000;84:141)。
局所鎮痛薬
局所鎮痛薬の主な用途は、関節炎に関連する痛みなどの痛みのほか、スポーツ外傷または肉体労働により引き起こされる筋肉のうずきおよび痛みの緩和である。局所鎮痛剤の利益の1つは、痛みの部位に直接施用することができるので、体全体にわたる鎮痛剤の全身分布が最小限である点である。この局部的な施用および関連する作用によって、全身性副作用の可能性が最小限になる。これに加えて、局所鎮痛薬の痛みの緩和作用は、ほとんどの経口形態より迅速である。これは、局所鎮痛薬は痛みのある部位に直接施用するのに対し、経口鎮痛薬は、胃腸管で消化、吸収され、肝臓での初回通過代謝で残存した後、体全体に輸送される必要があるためである。
【0018】
鎮痛性および他の望ましい治療特性を持つ構成成分としては、オイゲノール、チモールおよびいくつかの精油が挙げられる。オイゲノールは、チョウジ油およびいくつかの精油の成分であり、鎮痛作用、抗炎症作用および抗菌作用を有する。オイゲノールを他の痛みを低減する製品と混合して、痛みの緩和を増進することもできる。
【0019】
チモールは、顕著な抗細菌性、抗真菌性、防腐性、鎮痛性および抗酸化性を含有する数種のタイムおよびオレガノ植物に見いだされる精油である。
NSAID
NSAIDは、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を遮断することにより痛み、炎症および発熱を低減する。NSAIDの薬理学的性質の理解は進み続けているが、現在、ほとんどのNSAIDは、COX−1、COX−2およびCOX−3として知られる3つの異なるCOXイソ酵素を遮断すると考えられている。COX−1は、胃の内膜を酸から保護する。COX−2は関節および筋肉に見いだされ、痛みおよび炎症に対する作用を媒介する。COX−2を遮断することにより、NSAIDは、関節炎、腰痛、軽い外傷および軟部組織リウマチの患者において、プラセボと比較して痛みを低減する。しかしながら、COX−1酵素も遮断するNSAID(“非選択性NSAID”ともよばれる)は胃腸出血を引き起こすことがある。
【0020】
臨床試験により、局所NSAIDは経口NSAIDより良好な安全性プロフィールを有することが示された。局所NSAIDの使用に続発する有害作用は、患者の約10〜15%に生じ、主に皮膚に関するものである(局所NSAIDを施用した箇所の発疹および掻痒)。胃腸での薬物有害反応は、経口NSAIDでは15%の発生率が報告されているのと比較して、局所NSAIDでは稀である。Hayneman,C.et al,Oral versus topical NSAIDs in rheumatic diseases:a comparison,Drugs,555−74頁,2000年9月。
【0021】
いくつかの局所配合物では、NSAIDS、主にジクロフェナク塩が、カプサイシンと組み合わされている。以下の表1は、これらの配合物のいくつかのリストを包含する。
【0022】
【表1】
【0023】
Gellert Joint Creamは0.17%のカプサイシン濃度を有し、74%の水を含有する。最新の水性カプサイシン配合物は、比較的低いカプサイシン濃度に制限されている。
【0024】
米国特許公報第4424205号には、鎮痛性および抗刺激性を有するさまざまなヒドロキシフェニルアセトアミドが開示されている。
米国特許公報第4486450号には、乾癬皮膚の処置方法および組成物が開示されており、カプサイシンは、カプサイシンが約0.01〜約1重量パーセントの治療的に許容しうる濃度で存在する医薬的に許容しうるキャリヤー中で、乾癬皮膚に局所施用される。処置した乾癬皮膚を続いて低線量の紫外線に暴露することにより、処置は促進される。
【0025】
米国特許公報第4997853号には、表在性疼痛症候群を処置するための方法および組成物が開示されており、カプサイシンは医薬的に許容しうるキャリヤー中に組み込まれ、この組成物にリドカインまたはベンゾカインなどの局部麻酔薬が加えられる。その後、麻酔薬を含有する組成物を痛みの部位に施用する。処置の変形としては、最初に、患者がカプサイシンの存在に対し脱感作するまで局部麻酔薬を含有する組成物で処置し、続いて局部麻酔薬を除外した組成物で処置することが挙げられる。
【0026】
米国特許公報第5134166号には、溶液または懸濁液中のカプサイシンを選択した麻酔薬、局所ステロイドまたは抗ヒスタミン剤と組み合わせて用いて、特定のアレルギー関連状態および頭痛を処置するための方法および組成物が開示されている。
【0027】
米国特許公報第5178879号には、カプサイシン、水、アルコールおよびカルボキシポリメチレン乳化剤を含有し、明澄で、水で洗い落とすことができ、ベタベタしない、局所的な痛みの緩和に有用なゲルが開示されている。ゲルの調製方法も開示されている。
【0028】
米国特許公報第5560910号には、多種多様な疾患により引き起こされる炎症の局所処置に有用な組成物および方法が開示されている。該組成物は、有効量のタンパク質分解酵素、例えばブロメラインを、医薬的に許容しうるキャリヤー中のカプサイシンと組み合わせて含む。
【0029】
米国特許公報第5910512号には、水に基づく局所鎮痛薬および施用方法が開示されており、該鎮痛薬は、トウガラシ、トウガラシオレオレジンおよび/またはカプサイシンを含有する。この鎮痛薬を皮膚に施用すると、リウマチ様関節炎、変形性関節症などの緩和がもたらされる。
【0030】
米国特許公報第5962532号には、鎮痛薬の投与のほかにカプサイシン組成物の注射を含む、痛みの緩和をもたらす方法が開示されている。
米国特許公報第6239180号には、神経障害性疼痛を処置するための、約5重量%超〜約10重量%の濃度のカプサイシンの経皮施用が開示されている。麻酔薬を最初に投与して、続くカプサイシン施用による灼熱感の副作用を最小限に抑える。
【0031】
米国特許公報第6348501号には、カプサイシンおよび鎮痛薬を用いた関節炎の症状を処置するためのローションに加えて、そのような配合物の作製方法が開示されている。
【0032】
米国特許公報第6573302号には、以下を含むクリームが開示されている:局所用キャリヤー、該局所用キャリヤーは、ラベンダー油、ミリスチン酸ミリスタル(myristal myristate)および他の防腐剤を含む群から選択されるメンバーを、セイヨウオトギリソウ、アルニカモンタナ、カプリン酸に加えて含む;0.01〜1.0重量%のカプサイシン;コロイド状オートミール水素化レシチン、グリシルリチン酸二カリウムおよびそれらの組み合わせを含む群から選択される2〜10重量%の封入剤;アミノ酸のエステル;最大100nmの粒子サイズを有する光散乱要素;ならびにヒスチジン。
【0033】
米国特許公報第6593370号には、疼痛性皮膚疾患および神経機能不全の処置のための局所カプサイシン製剤が開示されている。該製剤は、非イオン性、両性またはカチオン性の界面活性剤を、カプサイシンによって引き起こされる灼熱痛を排除または実質的に改善するのに有効な量で含有する。
【0034】
米国特許公報第6689399号には、カプサイシノイドをグルコサミンと併せて経皮送達することによる、関節痛および筋肉痛を処置するための抗炎症組成物が提供されている。高濃度での、本発明の組成物の構成成分、すなわち、グルコサミンなどの第一級アミンと組み合わせたカプサイシノイド。
【0035】
米国特許出願公開第2005/0090557号は、カプサイシンなどのTRPV1アゴニストの組成物および浸透増進剤などの溶媒系に関する。
米国特許出願公開第2006/0100272号には、痛み、とりわけ神経障害性疼痛を処置するための組成物および方法が開示されている。該配合物は、カプサイシノイドおよび局部麻酔薬および/または鎮痒薬の共融混合物である。
【0036】
米国特許出願公開第2006/0148903号は、ある用量のカプサイシノイドゲルを手術部位に投与することを含む、術後疼痛の処置方法に関する。
米国特許公報第7282224号には、痛みをシグナル伝達する神経終末を麻痺させるか阻害する、カプサイシン、カプサイシノイドまたはカプサイシン類似体を含む有効量の神経阻害成分を、以下の少なくとも1つ:関節および筋肉の即時の痛みを低減し、今後の痛みを妨げるように設計された、有効量の炎症制御成分;有効量の冷却成分;有効量の熱最小化または遮断成分;皮膚および神経への活性成分のより良好な浸透をもたらす、有効量の血行増進成分;ならびに、硫酸グルコサミンまたはHCl、ショウガ(根ショウガ)抽出物、メチルスルホニルメタン(MSM)、イタドリを含む、関節および/または筋肉のための有効量の無痛化および抗炎症性複合体;と組み合わせて含む、痛みを緩和する組成物が開示されている。
【0037】
米国特許公報第7632519号には、さまざまなTRPV1アゴニスト化合物(カプサイシノイドおよびその関連エステル)およびその配合物が開示されている。
米国特許公報第7771760号には、カプサイシノイド、カプサイシノイドを可溶化することができる溶媒、およびカプサイシノイド結晶化阻害剤を含む、カプサイシノイドの局所用オイルが開示されている。
【0038】
米国特許公報第7943166号は、10%(w/v)〜約30%(w/v)のカプサイシンなどのTRPV1アゴニストの浸透増進剤の方法および液体溶媒系に関し、液体配合物の単回局所施用により、少なくとも2週間にわたる痛みの緩和がもたらされる。
【0039】
米国特許公報第7943666号には、カプサイシンのエステル誘導体およびミリストレイン酸のエステル誘導体の配合物が開示されている。これらの誘導体は、酵素的または化学的加水分解後に活性親化合物に戻ることができる。これらの誘導体は、親化合物に比べ高い親油性、脂溶性および低い皮膚刺激性を有し、したがって、クリームおよび軟膏医薬配合物を含む特定の医薬配合物に、より良好に組み込むことができる。開示されている医薬組成物は、哺乳類におけるin vivoでの疼痛管理に有用であり、ヒトにおけるさまざまな痛みの処置に用いられることが企図されている。
【0040】
米国特許公報第8703741号は、痛みを処置するための作用物質を作製するために、バニロイド受容体アゴニストをグリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンと一緒に用いることに関する。
【0041】
米国特許公報第8802736号は、TRPV1アゴニストの局所組成物に関する。
当該分野での進歩にもかかわらず、より有効な痛みを緩和するカプサイシノイド配合物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】米国特許公報第4424205号
【特許文献2】米国特許公報第4486450号
【特許文献3】米国特許公報第4997853号
【特許文献4】米国特許公報第5134166号
【特許文献5】米国特許公報第5178879号
【特許文献6】米国特許公報第5560910号
【特許文献7】米国特許公報第5910512号
【特許文献8】米国特許公報第5962532号
【特許文献9】米国特許公報第6239180号
【特許文献10】米国特許公報第6348501号
【特許文献11】米国特許公報第6573302号
【特許文献12】米国特許公報第6593370号
【特許文献13】米国特許公報第6689399号
【特許文献14】米国特許出願公開第2005/0090557号
【特許文献15】米国特許出願公開第2006/0100272号
【特許文献16】米国特許出願公開第2006/0148903号
【特許文献17】米国特許公報第7282224号
【特許文献18】米国特許公報第7632519号
【特許文献19】米国特許公報第7771760号
【特許文献20】米国特許公報第7943166号
【特許文献21】米国特許公報第7943666号
【特許文献22】米国特許公報第8703741号
【特許文献23】米国特許公報第8802736号
【非特許文献】
【0043】
【非特許文献1】Clinical Therapeutics.15.3(1993):510−26
【非特許文献2】J.Neurol.238:452−456,1991
【非特許文献3】Pain Clinic 15:709−713,1994
【非特許文献4】J.Am.Acad.Dermatol.21:265−270,1989
【非特許文献5】Clin.Ther.15:510−526,1993
【非特許文献6】Br J Anaesth.2011;107(4):490−502
【非特許文献7】Clin.J.Pain,14:97−106,1998
【非特許文献8】Anesth.Analg.1998;86:579-583
【非特許文献9】Pain 2000;84:141
【非特許文献10】Drugs,555−74頁,2000年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
本発明の目的は、処置範囲の感覚を喪失することなく長期の痛みの緩和をもたらす、局所用の痛みを緩和する組成物を提供することである。
本発明の目的は、製剤中のカプサイシンおよび他の関連化合物などのTRPV1選択性アゴニストの局所組成物であって、局所投与後に観察されるTRPV1選択性アゴニスト化合物に起因する初期灼熱痛/刺痛を排除または実質的に改善し、これによって製剤を初期および長期使用後に忍容しうるものにする、前記局所組成物を提供することである。
【0045】
本発明の目的は、関節痛、筋肉痛、腱炎の処置に用いるためのものであり、現在市販されている局所製剤での処置に適していない特定の形態の局部神経障害性疼痛のためのものであり、全身処置の副作用を有さない、カプサイシン配合物などの局所TRPV1選択性アゴニスト含有組成物を提供することである。
【0046】
カプサイシノイドの使用に通常は関連する副作用なしで痛みの緩和作用をもたらすのに治療的に有効な濃度で、カプサイシンまたはその類似体などの組成物を含有する方法および組成物を提供することが有利であろう。
【0047】
したがって、本発明の目的は、カプサイシンまたはカプサイシン類似体を高濃度で局所投与して、局所施用後に重度の灼熱感をもたらすことなく、長期にわたる痛みの低減効果を達成する方法を提供することである。
【0048】
本発明のさらに他の目的は、関節および筋肉の痛みおよび他の医学的状態を処置するための、カプサイシンまたは関連化合物の治療特性を補足するための作用物質を含有する組成物を提供することである。該作用物質は、カプサイシンと一緒に投与すると好都合である。
【0049】
本発明のさらに他の目的は、安全かつ有効であり、オピオイドまたは従来のNSAIDSの副作用を有さない、痛みおよび炎症を局所的に処置するための組成物および方法を提供することである。
【0050】
本発明の他の目的は、相当濃度の比較的水不溶性のTRPV1選択性アゴニスト(カプサイシンなど)を可溶化して組成物をもたらす溶媒系を提供することである。そのような溶媒系は、皮膚層に迅速に浸透して、著しいカプサイシン濃度の局所施用に起因する刺痛および灼熱痛を和らげる、鎮痛性および抗炎症性構成成分を含有し、貯蔵安定性を改善することができる。
【0051】
本発明の他の目的および利点は、以下の明細書を精査することから明らかになるであろ
う。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]以下を含む組成物:
i)0.075〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)前記組成物の哺乳類への投与に際し前記組成物からの前記カプサイシノイドの放出を遅くするための徐放性作用物質、および
iii)界面活性剤、
であって、局所投与に際し前記カプサイシノイドによって作り出される灼熱感および刺痛感を低減または排除する、前記組成物。
[2]前記カプサイシノイドがカプサイシンである、[1]に記載の組成物。
[3]前記カプサイシノイドがトランス−カプサイシンまたはノニバミドである、[1]に記載の組成物。
[4]前記カプサイシノイドが2〜30重量%のカプサイシノイドである、[1]に記載の組成物。
[5]前記徐放性作用物質がヒアルロン酸である、[1]に記載の組成物。
[6]前記ヒアルロン酸が前記組成物の0.5〜1.5重量%である、[5]に記載の組成物。
[7]前記徐放性作用物質がコラーゲンまたはエラスチンである、[1]に記載の組成物。
[8]前記ヒアルロン酸が、低分子量ヒアルロン酸および高分子量ヒアルロン酸の両方の混合物である、[5]に記載の組成物。
[9]前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である、[1]に記載の組成物。
[10]前記界面活性剤がPS80である、[9]に記載の組成物。
[11]前記界面活性剤がポリオキシ40水素化ヒマシ油である、[9]に記載の組成物。
[12]さらに浸透増進剤を含む、[1]に記載の組成物。
[13]前記浸透増進剤が、DGMEまたはプロピレングリコールからなる群より選択される、[12]に記載の組成物。
[14]さらにアルコールを含む、[1]に記載の組成物。
[15]前記アルコールがエタノールである、[14]に記載の組成物。
[16]さらに鎮痛薬または麻酔薬を含む、[1]に記載の組成物。
[17]前記鎮痛薬が、サリチル酸メチル、ショウノウ、メントール、イシリン、ユーカリプトールおよびフェノールからなる群より選択される、[16]に記載の組成物。
[18]さらに抗炎症薬を含む、[1]に記載の組成物。
[19]前記抗炎症薬が、フラボノイド、ステロイドおよびNSAIDからなる群より選択される、[18]に記載の組成物。
[20]組成物が液体溶液である、[1]に記載の組成物。
[21]i)カプサイシノイド、
ii)徐放性作用物質、
iii)非イオン性界面活性剤、および
iv)浸透増進剤
を含む、[1]に記載の組成物。
[22]i)0.2〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)0.1〜0.5重量%の前記徐放性作用物質、
iii)0.5〜15重量%の非イオン性界面活性剤
を含む、[1]に記載の組成物。
[23]i)2〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)0.2〜0.5重量%のヒアルロン酸、および
iii)2〜15重量%の非イオン性界面活性剤
を含む、[1]に記載の組成物。
[24]i)0.20〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)0.1〜0.5重量%のヒアルロン酸、
iii)2〜15重量%のPS80またはポリオキシ40水素化ヒマシ油、および
iv)1〜40重量%の浸透増進剤
を含む、[1]に記載の組成物。
[25]i)0.20〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)0.1〜1.5重量%のヒアルロン酸、
iii)2〜15重量%のPS80またはポリオキシ40水素化ヒマシ油、および
iv)DGME、プロピレングリコールおよびアルコールからなる群より選択される、1〜40重量%の1以上の浸透増進剤
を含む、[1]に記載の組成物。
[26]さらにフェノールを含む、[1]に記載の組成物。
[27]痛みを患う哺乳類における痛みの処置方法であって、[1]に記載の組成物を前記哺乳類に局所投与することを含む方法。
[28]前記哺乳類がヒトである、[27]に記載の方法。
[29]さらに、NSAIDを投与することを含む、[27]に記載の方法。
[30]前記痛みが関節炎痛である、[27]に記載の方法。
[31]前記関節炎痛が変形性関節症またはリウマチ様関節炎痛である、[30]に記載の方法。
[32]カプサイシン応答性状態を患う哺乳類における該状態の処置方法であって、[1]に記載の組成物を前記哺乳類に局所投与することを含む方法。
[33]カプサイシン応答性状態が、神経障害性疼痛を含む疼痛、炎症性痛覚過敏、ヴルヴォディニア、間質性膀胱炎、鼻炎、口腔灼熱症候群、口腔粘膜炎、ヘルペス、皮膚炎、掻痒症、耳鳴り、乾癬または頭痛である、[32]に記載の方法。
[34][1]に記載の組成物を局所投与することを含む、哺乳類における痒みの処置方法。
[35]i)カプサイシノイドを界面活性剤に溶解して溶液を形成し、そして
ii)ヒアルロン酸を該溶液に加える、
ことを含む、水性カプサイシノイド配合物の形成方法。
[36]i)カプサイシノイドおよび界面活性剤およびエタノールを混合し、そして
ii)ヒアルロン酸を加える、
ことを含む、カプサイシンの水性局所配合物の生産方法。
[37]i)[1]に記載の組成物、および
ii)非閉塞性アプリケーター機器、
を含むキット。
[38]さらに、残留カプサイシノイドを除去するための洗浄溶液を含む、[37]に記載のキット。
【課題を解決するための手段】
【0052】
本発明は、以下を含む組成物:
i)0.075〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)前記組成物の哺乳類への投与に際し前記組成物からの前記カプサイシノイドの放出を遅くするための徐放性作用物質、および
iii)界面活性剤、
であって、局所投与に際し前記カプサイシノイドによって作り出される灼熱感および刺痛感を低減または排除する、前記組成物に関する。
【0053】
他の態様において、本発明は、以下を含む組成物:
i)0.075〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)非イオン性界面活性剤(カプサイシノイドの溶解またはエマルションの形成または安定溶液の維持用)、および哺乳類における前記組成物の局所投与に際し前記水性記組成物からの前記カプサイシノイドの放出を遅くするための徐放性作用物質、
であって、前記水性ビヒクルが、局所投与に際し前記カプサイシノイドによって作り出される灼熱感および刺痛感を低減または排除する、前記組成物である。
【0054】
有利な態様において、カプサイシノイドは2〜30重量%のカプサイシノイドであり、徐放性作用物質は、組成物の0.5〜1.5重量%のヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、低分子量ヒアルロン酸および高分子量ヒアルロン酸の両方の混合物であると有利である。他の態様において、徐放性作用物質はコラーゲンまたはエラスチンである。
【0055】
他の有利な態様において、本発明は、DGME、エタノールおよび/またはプロピレングリコールなどの溶媒/浸透増進剤;サリチル酸メチル、ショウノウ、メントール、イシリン、ユーカリプトールおよび/もしくはフェノールなどの鎮痛薬または麻酔薬;あるいは、フラボノイド、ステロイドおよび/またはNSAIDなどの抗炎症薬を包含する。
【0056】
本発明の組成物の有利な態様としては、
i)カプサイシノイド、
ii)徐放性作用物質、
iii)界面活性剤、および
iv)浸透増進剤
を含む組成物;
i)0.2〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)0.1〜0.5重量%の前記徐放性作用物質、
iii)0.5〜15重量%の非イオン性界面活性剤
を含む組成物;
i)2〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)0.2〜0.5重量%のヒアルロン酸、および
iii)2〜15重量%の非イオン性界面活性剤
を含む組成物;ならびに
i)0.20〜20重量%のカプサイシノイド、
ii)0.1〜0.5重量%のヒアルロン酸、
iii)2〜15重量%のPS80またはポリオキシ40水素化ヒマシ油、および
iv)1〜40重量%の浸透増進剤
を含む組成物;
が挙げられる。
【0057】
本発明はまた、
i)カプサイシノイドを界面活性剤に溶解して溶液を形成し、そして
ii)ヒアルロン酸水溶液を段階i)の溶液に加える、
ことを含む、水性カプサイシノイド配合物の形成方法;
i)カプサイシノイド、界面活性剤および浸透増進剤を混合し、そして
ii)ヒアルロン酸水溶液を段階i)の生成物に加える、
ことを含む、カプサイシンの水性局所配合物の生産方法;ならびに
i)カプサイシノイドおよび浸透増進剤を混合し、そして
ii)ヒアルロン酸水溶液を段階i)の生成物に加え、
iii)界面活性剤を段階ii)の生成物に加える、
ことを含む、カプサイシンの水性局所配合物の生産方法;
を包含する。
【0058】
本発明はまた、関節痛(例えば関節炎痛)、筋肉痛などの痛みの処置、およびさまざまな他の医学的状態の処置のための組成物の作製および使用方法に関する。哺乳類における痒みまたは手指爪もしくは足指爪の真菌の処置方法も包含する。典型的には、投与は、患部への局所施用である。
【0059】
哺乳類(例えばヒト)における痛みの処置方法は、本発明の組成物の局所投与を含み、哺乳類の選択領域の真皮および表皮において侵害受容器神経線維の密度を低下させる方法であって、本発明の組成物を前記領域に投与し、例えば機能性侵害受容神経線維の密度を、該組成物の局所投与後に少なくとも20%、30%、40%または50%低下させることを含む方法を包含する。
【0060】
本発明は、神経障害性疼痛を含む疼痛、炎症性痛覚過敏、ヴルヴォディニア(vulvodynia)、間質性膀胱炎、鼻炎、口腔灼熱症候群、口腔粘膜炎、ヘルペス、皮膚炎、心因性掻痒症、耳鳴り、乾癬または頭痛などのカプサイシン応答性状態を、本発明の組成物で処置する方法を包含する。
【0061】
最後に、本発明はまた、本発明の液体配合物および非閉塞性アプリケーター機器を含むキットに関する。他の態様において、該キットはさらに、残留アゴニストを除去するための洗浄溶液を含む。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明は、治療的に有効な量のTRPV1アゴニスト、ヒアルロン酸などの徐放性作用物質、界面活性剤、および所望により1以上の浸透増進剤を含有する、局所用医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、哺乳類、典型的にはヒトへの局所投与に適した形態をしている。カプサイシンの濃度は、典型的には配合物の0.02重量%超〜20重量%未満である。
【0063】
一態様において、該組成物は、カプサイシノイド、ヒアルロン酸、界面活性剤および1以上の浸透増進剤を含み、前記界面活性剤および1以上の浸透増進剤は、一緒になって、配合物の少なくとも約20重量%、少なくとも約50重量%、および最大70重量%を構成する。
【0064】
浸透増進剤は、エーテルまたはアルコールであることができる。配合物は、プロピレングリコール、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(DGME)およびジメチルスルホキシドからなる群より選択される1以上の浸透増進剤を含有することができ、非イオン性界面活性剤、例えば、PS−80およびポリオキシ−40水素化ヒマシ油を含有することができる。
【0065】
有利な態様において、分子量が約11kダルトンであるヒアルロン酸を70重量%および分子量が約1000kダルトンのヒアルロン酸を30重量%含有する混合物で構成される0.4重量%ヒアルロン酸水溶液を、エチルアルコール、プロピレングリコールおよびPS80および/またはポリオキシ40水素化ヒマシ油(バランス水)からなる可溶化剤および浸透剤に溶解した0.25重量%〜10重量%のカプサイシンを含有するアルコール混合物溶液に加えた。該混合物は、光学的に無色明澄で適度に粘性の溶液になった。ヒアルロン酸の分子量の相対的百分率および界面活性剤の組成を調整すると、混合物の粘性に変動がもたらされた。
【0066】
上記段落に記載した0.25重量%〜10重量%のカプサイシン配合物を、3.7mLのローラーボールバイアルを用いて数人の被験者の膝、腕に施用した(実施例参照)。施用した液体皮膜は迅速に乾燥し、灼熱感および刺痛感からの最小限の不快感が認められた。該配合物は比較的無臭だった。
【0067】
意外にも、本発明の方法および組成物をヒトで用いると、はるかに低濃度のカプサイシンを含有する従来のカプサイシン配合物の投与に比べ痛みまたは不快感が少なくなる。以下の実施例2は、0.25重量%カプサイシン液体配合物が、0.15重量%カプサイシンを含有する一般的な液体カプサイシン配合物に比べ、少ない灼熱感および刺痛感をもたらしたことを示している。
【0068】
本発明は、1重量%超、2%超、5%超、8%超、またはさらに10重量%超の濃度のカプサイシンなどのTRPV1アゴニストを、著しい灼熱感および刺痛感を伴わずに投与するための方法を提供する。
本発明の組成物
本発明は、TRPV1選択性アゴニストおよび前記TRPV1選択性アゴニストを可溶化することができる界面活性剤を含む組成物、有利には液体水溶液に関し、前記組成物は、前記組成物を局所施用したときに機能性侵害受容神経線維の密度を低下させるのに十分な量のTRPV1選択性アゴニストを有し、前記組成物は、TRPV1選択性アゴニストの局所投与によって生じた灼熱および/もしくは刺痛感または紅斑を排除または低減するのに十分な量の徐放性作用物質および界面活性剤を有する。本発明の液体溶液は、水溶液であると有利である。
【0069】
本発明の医薬組成物での使用に適したTRPV1選択性アゴニスト、ヒアルロン酸または他の徐放性作用物質、界面活性剤および賦形剤は、ヒト皮膚に施用したときに医薬的に許容しうるもの、すなわち、使用レベルにおいて許容しうる毒性を有するものである。本発明の配合物の成分はすべて、USPグレードである。本発明の好ましい態様において、組成物は、米国食品医薬品局のGMP規定を全面的に順守して製造される。
【0070】
一態様において、TRPV1選択性アゴニストの量は、局所施用後に、機能性侵害受容神経線維の密度を、少なくとも20%または少なくとも50%低下させるのに十分な量である。他の態様において、組成物は、0.20〜30重量%のTRPV1選択性アゴニストである。TRPV1選択性アゴニストはバニロイドであるか、有利な態様において、カプサイシンなどのカプサイシノイドであることができる。
【0071】
本明細書中に開示する構成成分と組み合わせる場合、局所製剤中のTRPV1選択性アゴニスト、例えばカプサイシノイド(例えばトランス−カプサイシン)の量は、0.075〜30重量%、0.2重量%〜30重量%、1重量%〜20重量%、例えば1重量%、5重量%、10重量%および20重量%であることができる。
【0072】
カプサイシノイドは、局所施用の場合、施用による灼熱感が軽減した投与のために、医薬的および生理学的に許容しうる水性ビヒクル中に組み込むことにより調製される。本発明は、痛みの処置および緩和のために、別個の局部範囲にカプサイシンを局所投与することを対象とする。著しい利点は、限定範囲において知覚神経機能(TRPV−1)の改変によって治療結果がもたらされるように、ミリグラム分量のカプサイシンを施用することによって得られる。
【0073】
本発明は、主として痛みの処置のための、カプサイシノイドまたはカプサイシン類似体などのTRPV1選択性アゴニスト(すなわち、カプサイシンのようにTRPV1の特異的アゴニストとして作用するもの)の組成物、典型的には液体溶液医薬配合物に関する。該組成物は、TRPV1選択性アゴニストの投与によって引き起こされる灼熱痛または刺痛を低減または排除し、これによってTRPV1選択性アゴニスト配合物を、長期投与においてを含め、投与に忍容しうるものにする、1以上の徐放性作用物質および界面活性剤を包含する。本出願は、TRPV1選択性アゴニスト含有局所組成物が、ヒトにおける痛みの処置に非常に有効であり、徐放性作用物質および界面活性剤と一緒に投与すると、そのような成分を含まない同じ組成物と比較して、施用部位における灼熱痛を著しく減少させるという発見を開示するものである。
【0074】
本発明は、TRPV1選択性アゴニスト、例えばカプサイシンによってもたらされる長長時間効果のある痛みの緩和を、従来技術のカプサイシン配合物に付随するものと同じ重症度のカプサイシンの濃度依存性副作用なしで提供する。該配合物は、疾患の状態および重症度に応じて数週間〜数カ月の期間にわたり痛みの緩和を提供することができる。重要なことには、麻酔薬およびオピオイドとは異なり、本発明の配合物は、配合物を局所施用した皮膚の触覚を低減または排除しない。
【0075】
とりわけ痛みを処置するための局所配合物は、通常用いられているものより高レベルのカプサイシンなどのTRPV1選択性アゴニストを含有する。対象配合物は、従来技術のカプサイシン配合物に付随する不快感および灼熱感を有さない。TRPV1選択性アゴニストの配合物は、抗炎症薬のほか、関節炎痛、変形性関節症、関節障害、筋肉痛、神経障害性疼痛、頚部および背部の痛み、帯状疱疹、群発頭痛、および他の疾患または健康関連状態などの病理学的状態の痛みの緩和および治療的処置に寄与する他の添加物を、包含することができる。
【0076】
対象発明は、著しい分量のカプサイシンまたは関連化合物などのTRPV1選択性アゴニスト化合物を皮膚を介して送達するための医薬局所組成物に関する。TRPV1選択性アゴニスト化合物の投与に付随する灼熱感を低減または排除するため、および前記TRPV1選択性アゴニスト化合物の皮膚浸透を増進するために、TRPV1選択性アゴニスト化合物以外の組成物の成分を包含させる。追加的成分は、典型的にはヒアルロン酸およびPS80などの非イオン性界面活性剤であり、安全なものとして一般に許容されているものである。
【0077】
十分な分量のこれらの構成成分をカプサイシン製剤に組み込むと、カプサイシンに起因する初期灼熱痛/刺痛が排除または改善されるような痛みの局所処置のための混合物が形成することを発見した。水の濃度は製剤の典型的には30〜60重量%または40〜60重量%であり、配合物の50%またはさらに55重量%を超えることができる。
【0078】
これらの構成成分は、カプサイシンなどのTRPV1選択性アゴニスト化合物の局所施用後に生じる灼熱/刺痛感を低減することが示された。本発明の組成物は、かなりの分量のヒアルロン酸および界面活性剤、および所望により、カプサイシンの局所施用後に生じる灼熱/刺痛感を最小限にするフェノールを包含する。生育可能な(viable)皮膚層および皮下組織中へのカプサイシンの浸透を増進する成分も、加えることができる。
【0079】
したがって、本発明は、初期および長期または反復投与において特定の皮膚障害および神経機能不全に関連する痛みを低減するのに有効な量のカプサイシンなどのTRPV1選択性アゴニストを含む、局所製剤を提供する。
【0080】
本発明の配合物の成分を以下で検討する。
カプサイシノイドを含むTRPV1選択性化合物
本発明のカプサイシノイドを含むTRPV1アゴニストの一般的解説に関しては、米国特許出願公開第2008/0262091号、および所有者共通の米国特許第13/609100号参照。これらのそれぞれを、本明細書では全体を参考として援用する。本明細書中で用いる“カプサイシノイド”という用語は、カプサイシン、カプサイシン以外のカプサイシノイド、すなわち、ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシンおよびノニバミド、ならびにカプサイシンと1以上の他のカプサイシノイドの混合物を包含する。用いる薬剤の量は、カプサイシンの用量に対する治療的用量に基づく。カプサイシンはほとんど水に溶解しないが、エチルアルコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)、ジメチルスルホキシド(DMSO)およびプロピレングリコールに溶解しやすい。カプサイシンは脂溶性の白色結晶質粉末で、融点は摂氏60〜65度である。
【0081】
あるいは、レシニフェラトキシンなどの“カプサイシン類似体”を、カプサイシノイドの一部またはすべての代わりに投与することができる。投与する類似体の量は、カプサイシンと治療的に同等の用量である−本明細書で全体を参考として援用する米国特許出願公開第2008/0262091号参照。他の態様では、カプサイシノイド以外のTRPV1アゴニストまたはカプサイシン類似体を、本発明の配合物および方法に利用する。
【0082】
本発明によると、痛みを緩和する組成物は、痛みをシグナル伝達する神経終末を阻害する、治療的に有効な量の神経阻害成分−TRPV1選択性アゴニストを含む。TRPV1選択性アゴニスト成分は、典型的にはバニロイド、カプサイシノイド、より具体的にはカプサイシン、ノニバミド、または他のカプサイシン類似体、またはそれらの混合物である。
【0083】
対象発明のTRPV1選択性アゴニスト化合物としては、天然カプサイシノイド(カプサイシンオレオレジン)、および合成(ノニバミド)形態、ならびにカプサイシンの類似体が挙げられる。カプサイシンは、化学名N−(4−ヒドロキシ−3−メトキシベンジル)−8−メチルノン−トランス−6−エンアミドで知られる。カプサイシンは唐辛子の主要カプサイシノイド(典型的には69%)であり、ジヒドロカプサイシン(典型的には22%)およびノルジヒドロカプサイシン(典型的には7%)がこれに続く。ノニバミドは唐辛子中に微量見いだされる。
【0084】
【表2】
【0085】
表2で上記したように、カプサイシンおよびいくつかの関連化合物は、カプサイシノイドとよばれる。n−ノナン酸のバニリルアミドであるノニバミド(PAVAともよばれる)は、カプサイシノイドの相対的辛味を決定するための参照物質として用いられるほか、辛味を加えるための食品添加物として用いられる。
【0086】
カプサイシンおよびジヒドロカプサイシンは、一緒になって、唐辛子に見いだされるカプサイシノイドの80〜90%を占める。異なるカプサイシノイド化合物は炭化水素尾部にわずかな構造的変動を有し、神経受容体に結合する能力ならびに舌、口および咽頭上の受容体層に浸透する能力が変化している。
【0087】
カプサイシノイドは、構造が非常に似ており、長い炭化水素部分(すなわち、炭素および水素原子のみを含有する部分)の長さによって、およびその炭化水素部分に炭素と炭素の二重結合が1つあるか否か(炭素−炭素二重結合)によってのみ異なっている。天然に存在するカプサイシンおよびアルキル鎖がわずかに異なる合成バージョンはともに、同様の薬理学的効果を有する。
【0088】
ノニバミドは唐辛子中に存在するが、一般に合成的に製造される。カプサイシンより熱安定性が高い。関節炎および筋肉痛を緩和するために販売されている軟膏は、しばしばノニバミドを含有する。皮膚上へ軟膏を施用すると、温感〜灼熱感および数時間にわたる痛みの緩和がもたらされると主張されている。
【0089】
レシニフェラトキシン(RTX)は、非常に強力なカプサイシン類似体である。他のTRPV1選択性アゴニストとしては、アナンダミドおよびNADAが挙げられる。多くの追加的アゴニストが米国特許公報第7943166号および米国特許公報第7632519号に開示されており、これらのそれぞれの全体を本明細書で参考として援用する。いくつかのカプサイシン類似体が、全体を本明細書で参考として援用する米国特許公報第5962532号に記載されている。
【0090】
本発明の配合物は、典型的には0.075〜30重量%、0.2〜30%、または2〜20%、2〜10%、または5〜15%のカプサイシノイド(例えばカプサイシン)または関連化合物を包含する。TRPV1選択性アゴニストがカプサイシン以外のものである場合、効能が異なる可能性があるので、配合物中のアゴニストの量は、カプサイシンに関し本明細書中で述べる重量パーセント範囲によって達成される結果と同じ結果を達成する量である。
【0091】
徐放性作用物質
配合物からのカプサイシノイドの放出を遅くする(徐放をもたらす)ある種の化合物を包含させると、灼熱および刺痛作用が低減することが見いだされた。徐放性作用物質は、前記カプサイシノイドを15分超、30分、1時間または4時間超の期間にわたり放出すると有利である。一態様において、カプサイシノイドは、1週間超の期間にわたり放出される。典型的には、用量が多いほど長期間にわたり放出される。本発明の一態様において、徐放性作用物質はグリコサミノグリカンまたはプロテオグリカンではない。
【0092】
ヒアルロン酸
本発明のヒアルロン酸(HA)の分子量は、有利には3kダルトン〜1000kダルトンの範囲である。特定の態様において、配合物は、800kダルトンを超える、すなわち、1000、2000、3000、4000または5000kダルトンの“高”分子量ヒアルロン酸を包含することができる。特定の態様において、配合物は、200kダルトン未満、有利には20kダルトン未満、さらに有利には15kダルトン未満の“低”分子量ヒアルロン酸を包含することができる。可溶化カプサイシン配合物のヒアルロン酸成分は水溶液中に多糖類の網目を形成し、これが、カプサイシンの遅延的および持続的放出に寄与し、したがってカプサイシノイドの施用に起因する不快感の最小化に寄与する。
【0093】
HAは、その粘弾性および優れた生体適合性に起因して、化粧品に広く利用されている。HA含有化粧品の皮膚への施用は、潤いを与えて弾力を回復させ、これにより、しわ防止効果を実現すると報告されている。
【0094】
非イオン性界面活性剤PS80および/またはCremophor RH40を、人体内に自然に存在し、さまざまな組織(皮膚、関節の滑液および結合組織)に見いだされる物質であるヒアルロン酸と一緒に用いて、カプサイシンを高度に可溶化することは、カプサイシン配合物に関連する灼熱感および刺痛感の改善に寄与する。有利な態様において、<0.5重量%のヒアルロン酸およびその塩(約0.35重量%の<50kダルトンのHAおよび約0.15重量%の800〜1200kダルトンのHA)は、カプサイシンに関連する灼熱および刺痛反応の低減に大いに寄与する。本明細書中の実施例に用いられる高分子量ヒアルロン酸は、1000kダルトンの平均分子量を有していた。理論に拘束されようとするものではないが、ヒアルロン酸成分をカプサイシンに加えると水溶液中に多糖類の網目が形成し、これによりカプサイシンは制御された様式でより緩慢に放出されるようになり、灼熱痛および刺痛の軽減につながると考えられる。
【0095】
皮膚のもっとも外側にあり生育不可能な(non-viable)層である角質層の生理学的機能は、体の保護バリヤーとして働くことであり、したがって、いくつかの薬物を包含する親水性分子が、生育可能な細胞が位置している皮膚のより深部の層に浸透するのを妨げるのに、とりわけ有効である。低分子量(MW)HAは、より高分子量のHAに比べ良好な浸透能力を提供し、したがって、老化および光による損傷を受けた皮膚において減少すると報告されているケラチノサイトの分化および細胞間密着結合複合体の形成に寄与するものを含む、多くの遺伝子の発現に影響を及ぼした。高分子量および低分子量HAのこれらの異なる分子特性は異なるin−vivo効果を生み出し、高分子量HAでは顕著な保湿および弾力特性がみられ、低分子量HAではしわの著しい減少が示された。減少した分子量での向上した活性は、より小さなHA分子のより効率的な皮膚浸透によって説明することができる。(Farwick,M.,et al.,Low Molecular Weight Hyaluronic Acid:Its Effects on Epidermal Gene. Expression and Skin Aging.,International Journal for Applied Science)
【0096】
低分子量ヒアルロン酸は、皮膚の表皮層に浸透してより深部の領域に滲出することができ、そこで、水分損失を補い、天然の皮膚細胞の再生特性の修復を助ける。高分子量ヒアルロン酸は表皮レベルで働いて保護作用を示して、皮膚の保護バリヤーを水和し、修復する。これにより、より滑らかな皮膚表面がもたらされる。低および高HA分子量の組み合わせは、カプサイシノイドの灼熱および刺痛作用を低減するために2つのタイプのHAの独特な特性および利益を利用するものである。
【0097】
カプサイシンの経皮投与に関するHAの利点は、以下である:表面の水和および皮膜形成により、局所薬物に対する皮膚の浸透性が向上し、表皮における薬物の保持および局在化が促進される;抗炎症作用がもたらされる(中および高分子量HA)。本発明の一態様において、ヒアルロン酸は架橋ヒドロゲルの形態にある。
【0098】
コラーゲンおよびエラスチン
コラーゲンは、動物のさまざまな結合組織の主要な構造タンパク質である。結合組織の主要成分であるので、哺乳類においてもっとも豊富なタンパク質であり、全身のタンパク質含量の25%〜35%を占める。伸長した原線維の形態にあるコラーゲンは、おもに腱、靱帯および皮膚などの線維組織に見いだされ、角膜、軟骨、骨、血管、腸管および椎間板にも豊富に存在する。
【0099】
エラスチンは、弾性を有する結合組織中のタンパク質で、体内の多くの組織が伸張または収縮後にそれらの形状を回復するのを可能にする。エラスチンは、皮膚を押したり締め付けたときに、皮膚が元の位置に戻るのを助ける。エラスチンはまた、脊椎動物の体の重要な耐荷重組織であり、機械的エネルギーを蓄える必要がある箇所で用いられる。
【0100】
カプサイシノイドと一緒になったコラーゲンおよび/またはエラスチンは、変形性関節症痛を含む痛みの処置に有利である。可溶化カプサイシン配合物にコラーゲンおよび/またはエラスチン成分を添加すると、水溶液中にタンパク質の網目が形成し、これが、カプサイシンの遅延的および持続的放出に寄与し、したがってカプサイシンの局所施用または注射のいずれかに由来する灼熱感を伴う不快感の最小化に寄与する。これに加えて、カプサイシノイドと一緒に注射すると、これら自然に存在する高分子量タンパク質は、神経へのカプサイシン放出速度を制御して灼熱感を低減する役割を果たし、滑動する骨表面に潤滑を提供するほか、骨軟骨修復のための構築材料を提供する。これら自然に存在する高分子量タンパク質のいずれかまたは両方を含有するカプサイシノイド配合物にヒアルロン酸を加えると、忍容性および効力がさらに最適化される。本発明の組成物において、コラーゲンまたはエラスチンは、液体またはゲルの形態でなければならない。
【0101】
生体吸収性ポリマーマトリックス
生体吸収性ポリマーマトリックス、例えば架橋酸化デキストランヒドロゲルも、本発明の配合物に徐放性作用物質として用いることができる。本明細書で全体を参考として援用する米国特許公報第8435565号参照。
【0102】
界面活性剤
カプサイシノイドを可溶化し、カプサイシノイドの皮膚浸透を増進するために、1以上の界面活性剤、有利には非イオン性のもの(例えば、PS80などのポリソルベート、Cremophor(登録商標)RH40(ポリオキシ40水素化ヒマシ油)、ソルビタンエステル(Spans)、ポロキサマー、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール、ステアリルアルコールなど)を、本発明の組成物に加えることもできる。それらは、局所投与に関し医薬的に許容しうるキャリヤー構成成分との混加物中のカプサイシン(または関連化合物)によって引き起こされる初期刺痛を改善することができる。調合薬、化粧品および食料品に利用される脂肪酸エステル非イオン性界面活性剤は、生物組織との適合性を有するので有利である。
【0103】
界面活性剤が湿潤剤、可溶化剤および乳化剤として働き、カプサイシノイド投与に関連する刺痛感または灼熱感を伴う不快感の最小化に寄与するように、非イオン性界面活性剤、例えばPS80および/またはCremophor(登録商標)RH40(ポリオキシ40水素化ヒマシ油)(あるいはSolute(登録商標)HS15)などの界面活性剤を、ヒアルロン酸および本明細書中に記載する1以上の医薬的に許容しうるビヒクルと組み合わせることができる。
【0104】
さらに、界面活性剤/カプサイシン(または他のカプサイシノイド(1以上))濃縮物を、本明細書中で全体を参考として援用する所有者共通の米国特許公報第8637569号に記載されているように、本発明の配合物および方法で使用するために形成することができる。
【0105】
本発明の一態様では、界面活性剤は組成物中に存在しない。一例は、カプサイシノイド濃度が0.25重量%未満の場合である。
界面活性剤PS80を含む本発明の配合物の例を以下に示す:
【0106】
【表3】
【0107】
界面活性剤Cremophor RH40を含む本発明の配合物の例を以下に示す:
【0108】
【表4】
【0109】
皮膚浸透を増進する作用物質
ジエチレングリコールモノエチルエーテル(DGME)は、本発明の配合物に有用な浸透増進剤(および溶媒)である。Transcutol(登録商標)(Gattefosse Corp.,Paramus,ニュージャージー州)として市販されている。DGMEは、カプサイシノイドに関し有効な溶媒であり浸透剤である。他の浸透剤としては、プロピレングリコール、エトキシジグリコール、およびジメチルイソソルビドが挙げられ、これらはそれぞれ、局所配合物開発の分野において皮膚浸透を増進することが公知である。
【0110】
エチルアルコール、ベンジルアルコール、グリセロール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール類などを含むアルコールを、有効なカプサイシン可溶化剤および浸透剤として配合物に加えることができる。アルコールを加えると、より粘度が低く乾燥時間が短い組成物が得られる。
【0111】
ジメチルスルホキシド(DMSO)は式(CHSOを有する有機硫黄化合物である。この無色液体は、極性および非極性化合物の両方を溶解する重要な極性非プロトン性溶媒であり、広範な有機溶媒および水に混和性を示す。皮膚に非常に容易に浸透し、DMSOが皮膚に接触した後、多くの個人が口内にニンニク様の味覚を感じるという、珍しい特性を有する。
【0112】
鎮痛薬
対象発明の組成物は、鎮痛薬−−1以上の鎮痛剤も包含する。本明細書中で用いる場合、“鎮痛薬”は、局所施用したときに、触感を喪失させることなく痛みまたは灼熱感を低減する化合物または複数の化合物である。本発明の鎮痛薬はカプサイシノイドを包含せず、オピオイドを包含しない。さらに、該鎮痛薬は、TRPV1特異性アゴニスト含有配合物中に、リドカイン(またはプロカイン、アメトカイン(amethocaine)、コカインリドカイン(リグノカインとしても知られる)、プリロカイン、ブピバカイン、レボブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン、ジブカイン)などの局所用局部鎮痛剤を包含しない。これらのカイン局部鎮痛剤は、カプサイシンと同時に局所投与したときにカプサイシンの灼熱作用を十分に緩和するのに有効ではなかった;それらは、カプサイシンと比較して作用の開始が遅い。灼熱感を低減するために、これらのカイン局部鎮痛剤は典型的にはカプサイシンより先に投与して、カプサイシンに関連する灼熱感に先立ち十分な鎮痛作用を引き出すように試みる。
【0113】
本出願は、局所TRPV1選択性アゴニスト含有組成物が、局所鎮痛薬および/または麻酔薬と組み合わせたときに、(鎮痛薬および/または麻酔薬を含まない同じ組成物と比較して)施用部位に著しく少ない灼熱痛を有し、ヒトを含む哺乳類における痛みの処置に極めて有効であるという発見を包含する。本明細書中で用いる場合、“局所”は、体の規定範囲、例えば皮膚表面または粘膜の規定範囲への組成物の投与をさす。
【0114】
メントール
メントールは、合成的に作製されるかペパーミントまたは他のミント油から得られる、冷たい感触をもたらす有機化合物である。有利には、対象発明では(l)−メントール(ペパーミント油から誘導される天然メントール)を鎮痛作用のために用いる。あるいは、他のイシリンまたはユーカリプトールなどの一過性受容器電位サブファミリーM8(TRPM8)を用いることができる。
【0115】
本発明の配合物は、1〜20重量%、5〜15重量%または10〜20重量%のメントールを包含することができる。
サリチル酸メチルおよびショウノウ
該配合物は、サリチル酸メチル(1〜20重量%、5〜15重量%または10〜20重量%)およびショウノウ(1〜20重量%、2〜10重量%または10〜20重量%)も包含することができる。以下の実施例12および13参照。
【0116】
フェノール
フェノールは、接触時に皮膚を冷却し麻痺させて、有効な局所鎮痛性構成成分になる。また、微生物を死滅させ、軽い皮膚刺激における感染症のリスクを低下させる。フェノールは、これらおよび他の施用に関し100年超にわたり医学的に用いられてきた。フェノールは、痒みの緩和における製剤の有効性を改善することができるため、虫刺され、日焼け、ならびに他の痛みおよび痒みを伴う皮膚状態の緩和を意図した配合物に加えられる。
【0117】
本発明の配合物は、0〜4.6重量%、有利には0.1〜0.5重量%のフェノールを包含することができる。
オイゲノール/チョウジ油およびチモール/タイム油を、フェノールに加えて、またはフェノールの代替として加えることができる。
抗炎症薬
炎症、腫脹、発赤、および/または炎症に関連する関節および筋肉の痛みを低減または緩和する有効量の炎症制御成分を、加えることができる。
抗炎症性ポリフェノールおよびセスキテルペン
多くのポリフェノールは、抗炎症活性を有することが知られている。例は、フラボノイド(例えばアピゲニン)およびクルクミンである。アピゲニンは、いくつかの自然界でもっとも強力で有効な抗炎症特性および抗酸化特性を示す。配合物に包含させると、治療効果をさらに高めることができる。アピゲニンは広範囲の抗炎症特性を有し、痛みを引き起こす化合物、例えば、関節炎を引き起こす物質シクロオキシゲナーゼ(COX)の産生を妨げる能力について言及されてきた。対象の疼痛緩和配合物の構成要素中のカプサイシン混合物へのアピゲニンの添加は、アピゲニンを最初に高温でPS80に溶解して濃縮物を形成した後、これを混合物に加える、高温界面活性剤技術を用いて達成することができる(米国特許出願公開第2011/0311592 A1号参照)。
【0118】
αビサボロールは、同様に麻酔性、抗刺激性、抗炎症性、抗真菌性および抗微生物性を有することが知られている、もう1つの強力な抗炎症性セスキテルペンである。αビサボロールも、特定分子の経皮吸収を増進すると実証されている。αビサボロールは、皮膚浸透を増進することによって活性構成成分の経皮輸送を促進する(R.KadirおよびB.W.Barry.Alpha−Bisabolol,a Possible Safe Penetration Enhancer for Dermal and Transdermal Therapeutics.Int.J.Phann.70:87−94 (1991))。
【0119】
NSAID/ジクロフェナクナトリウム
本発明の他の態様では、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)をTRPV−1選択性アゴニスト配合物と同時投与する。NSAIDおよびTRPV−1選択性アゴニストは、単一組成物として一緒に投与するか(局所NSAIDを用いる場合)、別個の組成物として投与する(局所または非局所NSAIDを用いる場合)ことができる。NSAIDは、TRPV−1選択性アゴニストの前、後またはそれと同時に、同一または異なる投与経路によって投与することができる。例えば、TRPV−1選択性アゴニストを局所投与することができ、それと同時にNSAID薬を経口、局所または非経口投与することができる。
【0120】
本発明の配合物中の補助薬として有用なNSAIDとしては、アスピリン(アセチルサリチル酸)、イブプロフェン、ナプロキセン、ジクロフェナク、ベノキサプロフェン、ケトプロフェンなど、およびそれらの混合物が挙げられる。本明細書中で用いる場合、“NSAID”はサリチル酸メチルを包含しない。
【0121】
局所配合物中でジクロフェナク塩などのNSAIDをカプサイシンと組み合わせると、2つの異なる作用機序(MOA)を介して機能する2つの確立した疼痛緩和薬、すなわちTRPV1神経脱機能化剤(nerve defunctionalizer)および強力なCOX−2阻害剤が組み合わされる。溶解性試験を行い(以下参照)、対象発明を利用して、NSAID、ジクロフェナクナトリウムをTRPV1選択性アゴニストであるカプサイシンと一緒に含有する配合物を調製した。
【0122】
表3に、調製したいくつかのカプサイシン配合物の成分を挙げる。これらの配合物について実施例で検討する。
【0123】
【表5】
【0124】
他の態様において、該配合物はスプレーまたはゲルであることができる。本発明の局所組成物は、水および界面活性剤または乳化システムを上記液体配合物と一緒に用いて、エマルションとして配合することができる。
配合物の作製方法
カプサイシンおよびヒアルロン酸を含有する配合物の作製方法は、ヒアルロン酸およびカプサイシン溶液を調製した後、これらの溶液をブレンドして配合物を生産することを包含する。典型的には、ヒアルロン酸水溶液の調製物(分子量が約11kダルトンであるヒアルロン酸を70重量%および分子量が約1000kダルトンであるヒアルロン酸を30重量%含有する混合物で構成される)を、エチルアルコール、プロピレングリコール、およびポリオキシ40水素化ヒマシ油またはPS80(バランス水)からなる可溶化(浸透)剤に溶解している0.25重量%〜10重量%のカプサイシンを含有するアルコール混合物溶液に加えた。ヒアルロン酸の分子量の相対的百分率および界面活性剤の組成を調整すると、混合物の粘性に変動がもたらされた。実施例1に、2重量%カプサイシンHA配合物の調製法の詳細を提供する。他のカプサイシノイド配合物の作製方法は上記と同様である。
配合物の使用方法
痛み
上記の本発明の組成物は、特定部位における痛みを和らげることによって痛みに関連するさまざまな状態を処置するために、用いることができる。配合物の諸成分は、典型的には同時に投与する。処置される状態の例としては、限定されるものではないが、侵害受容性疼痛(無傷のニューロン経路を通過して伝わる痛み)、神経障害性疼痛(神経構造への損傷により引き起こされる痛み)、神経損傷による痛み(神経腫および連続的神経腫)、神経痛による痛み(神経の疾患および/または炎症に由来する痛み)、筋肉痛による痛み(筋肉の疾患および/または炎症に由来する痛み)、発痛点に関連する痛み、軟組織の腫瘍による痛み、神経伝達物質−調節異常(dysregulation)症候群(正常な神経におけるシグナル伝達に関連する神経伝達物質分子の量/質の乱れ)に関連する痛み、ならびに、足、膝、股関節部、脊椎、肩、肘、手、頭部および頚部の状態などの整形外科的障害に関連する痛みが挙げられる。
【0125】
神経障害性疼痛は、一般に、軸索または鞘の退行変性など神経自体の異常を包含する。例えば、ある種のニューロパシーでは、髄鞘の細胞および/またはシュワン細胞は機能不全性、退行性である場合があり、死滅する可能性があるが、軸索は影響を受けないままである。あるいは、ある種のニューロパシーでは軸索のみが妨げられ、ある種のニューロパシーでは軸索ならびに髄鞘の細胞および/またはシュワン細胞が関与する。ニューロパシーはまた、その発生プロセスおよび位置(例えば、脊髄で生じて外側に広がるか、その逆)によって区別することができる。神経への直接的損傷のほか、AIDS/HIV、帯状ヘルペス、梅毒、糖尿病およびさまざまな自己免疫疾患を含む多くの全身性疾患が、この状態をもたらす可能性がある。神経障害性疼痛は、灼熱痛、または電撃タイプの痛み、またはうずきもしくは痒みを伴う痛みと表現されることが多く、強度が和らがない可能性があり、原因となる初期の損傷または疾患プロセスよりさらに衰弱させる場合がある。痛覚の感知に関与する受容器は、侵害受容器−侵害刺激の受容器−とよばれるのに十分適している。これらの侵害受容器は、皮膚痛を感知するために皮膚の直下で終結している自由神経終末である。侵害受容器は、体性痛を感知するために腱および関節に、そして内臓痛を感知するために体器官にも位置している。痛みの受容器は皮膚に非常に多く存在し、したがって、ここでの痛覚感知は十分に明確であり、痛みの発生源を容易に突き止めることができる。腱、関節および体器官では、痛みの受容器はより少ない。したがって、痛みの発生源は容易に突き止められない。侵害受容器の数は、感じる痛みの持続期間にも影響を及ぼすと思われる。皮膚痛は典型的には持続期間が短いが、新たな衝撃により再び活性化する可能性がある一方、体性痛および内臓痛の持続期間はより長い。ほぼすべての体組織が侵害受容器を備えていることに留意することが重要である。先に説明したように、痛みは主要な警告機能を有するため、これは重要な事実である。侵害受容性疼痛としては、好ましくは、限定されるものではないが、術後疼痛、群発頭痛、歯痛、外科的疼痛、重度の火傷に起因する痛み、産後疼痛、アンギナ、尿生殖路痛、スポーツ外傷(腱炎、滑液包炎など)に関連する痛み、ならびに関節の変性および膀胱炎に関連する痛みが挙げられる。
【0126】
本発明の組成物の局所製剤は、痛みおよび痒みが関与するさまざまな皮膚障害、とりわけ、ヘルペス後神経痛、糖尿病性ニューロパシー、乾癬、群発頭痛、乳房切除後疼痛症候群、鼻症、口腔粘膜炎、皮膚アレルギー、排尿筋過反射、腰痛/血尿症候群、頚部痛、断端痛、反射交感神経ジストロフィー、皮膚腫瘍およびリウマチ様関節炎、変形性関節症などの関節炎に起因する痛み、糖尿病性ニューロパシー、乾癬、掻痒(痒み)、群発頭痛、術後疼痛、腱炎、口腔痛、ならびに外傷に起因する痛みなどのための局所療法としての用途が見いだされている。
【0127】
これに加えて、本発明の製剤は、坐骨神経痛、線維筋痛、痛風、帯状疱疹、湿疹、皮膚アレルギー状態、皮膚炎状態、皮膚微生物/真菌感染症、三叉神経痛、洞および鼻の詰まり、副鼻腔の圧迫感、副鼻腔炎、鼻炎、アレルギー性鼻炎、過反応性鼻症、浜ポリープ、鼻閉症、副鼻腔感染症、ドライアイ症候群、慢性ドライアイ、肛門/性器の痒み、肛門周囲疾患、腕橈骨部の掻痒、痔、爪甲真菌症、嚥下機能を改善するための非閉塞性嚥下障害に関する聴覚刺激、耳鳴り、片頭痛、ふけおよび発毛のための局所療法としての用途も見いだされている。
【0128】
本明細書中で用いる場合、“治療的に有効な量”は、生物学的もしくは化学的応答など臨床的に望ましい結果、または疾患もしくは状態の症状の低減もしくは排除、例えば痛みの低減もしくは排除をもたらす、作用物質の分量または用量をさす。
【0129】
投与
局所
本発明の組成物は、処置する範囲の上に施用することにより局所的に用いることができる。典型的な使用方法は、配合物を範囲全体の上に、配合物が見えなくなるまで施用または擦り込み、1日に約1〜3または4回使用する。これに加えて、用いる配合物の量は、連続的に施用するたびに漸進的に増大させることができる。局所投与は、1〜7日間、数週間または数カ月にわたり継続することができる。
【0130】
本明細書中に開示する構成成分と組み合わせた場合、局所製剤中のカプサイシノイド(例えばトランス−カプサイシン)の量は、0.075〜30重量%、0.2重量%〜30重量%、1重量%〜20重量%、例えば、1重量%、5重量%、10重量%、および20重量%であることができる。
【0131】
特定の態様において、別個の部位にカプサイシンなどのTRPV1選択性アゴニストの配合物を投与すると、少なくとも約48時間〜約16週間にわたり痛みの減少または痛みの緩和がもたらされる。
【0132】
いくつかの方法が、皮膚表面上でのカプサイシン配合物の投薬に利用可能である。TRPV1選択性アゴニスト含有配合物は、アプリケーターパッド、スワブ、または薄膜状に配合物を施用することを意図した他の機器、例えば、ローラーボトル、フエルトチップまたはスポンジチップアプリケーターを含む、物理的手段により施用することができる。
【0133】
ローラーボトル
液体配合物の場合、ディスペンサーは、皮膚への流体液滴の施用を促進するためのくびを有するボトルを包含することができる。カプサイシン含有液体配合物に特に有利なのは、スポンジまたは‘ロールオン’アプリケーターを有するチューブおよび/またはボトルである。
【0134】
ロールオンボトル(ローラーボトルともよばれる)は特に有利である。ロールオンボトルにより、皮膚表面への流体の投薬は非常に簡単になる。指での擦り込みまたは綿棒での施用は必要ない。皮膚上でのローラーボールの動きにより流体は皮膚中に揉み込まれる。
【0135】
ロールオンボトルは、プラスチック製、ガラス製または金属製のロールオンボールおよびガラス製または適したプラスチック製のハウジングを有する。ボールは、回転するにつれて溶液を拾い上げ、これを皮膚表面上に施用する。ロールオンボトルのキャップは、内側に特別なリングを含有していてもよい。このリングは、キャップをきつく閉めたときにボールを圧迫する。ボールへの圧力により製品の漏出が妨げられる。
【0136】
ボトルに充填した後、ロールオンハウジングおよびボールをボトルの口に取り付ける。ロールオンハウジングおよびボールは、ボトルの口にハウジングを押し込むことにより取り付けられる。
【0137】
配合物を施用する箇所の正確な制御は重要である。ロールボールは、配合物が施用される箇所のより正確な制御を提供して、眼、コンタクトレンズ、触れると痛い皮膚、衣類などとの接触を回避する。“ロールオンボトル”では、体へのカプサイシン溶液皮膜の塗布に指での施用が必要でないため、唇および/または眼の灼熱感が生じる可能性が最小化される。
【0138】
ロールオンボトルの形状により、TRPV1選択性アゴニスト組成物を均質な薄膜として施用することが可能になる。一般に、薄膜配合物の施用は、施用後、迅速に皮膚表面内に吸収される。いくつかの態様において、皮膜の実質的に完全は消失は、施用後15分以内、より一般的には10分以内で完了し、いくつかの態様では、さらに施用後5分未満で完了する。
【0139】
キット
本発明は、液体TRPV1選択性アゴニスト組成物、および持続放出性作用物質、および界面活性剤、および非閉塞性アプリケーター機器を含むキットも包含する。該キットは、残留TRPV1選択性アゴニストを除去するための洗浄溶液、例えばポリエチレングリコールも包含することができる。
【0140】
本発明は、以下の非限定的な実施例を慎重に検討した後、さらに理解されるであろう。
【実施例】
【0141】
実施例1
100グラムの“2%Cap−HA形態2”局所配合物の調製
構成成分:
・2グラムのトランス−カプサイシン粉末、Aversion Technologies,Bowie,メリーランド州,USP 30
・0.15グラムのヒアルロン酸ナトリウム粉末、Making Cosmetics Inc.,Snoqualmie,ワシントン州
・0.35グラムのヒアルロン酸ナトリウム(SLMW)粉末、Making Cosmetics Inc.,Snoqualmie,ワシントン州
・20グラムのエチルアルコール、Graves Grain Alcohol,190 Proof
・10グラムのDGME(エトキシジグリコール)、Lotioncrafter Inc.,Eastsound,ワシントン州
・10グラムのプロピレングリコール、Lotioncrafter Inc.,Eastsound,ワシントン州
・2グラムの超精製ポリソルベート80、Croda Inc.Florham Park,ニュージャージー州
・5グラムのCremophor RH 20、BASF Corp,Florham Park,ニュージャージー州
・適量の蒸留水
【0142】
段階I−ヒアルロン酸溶液の調製
1.“風袋重量”の200ccのパイレックス(登録商標)ビーカーを調達し、0.15グラムのヒアルロン酸ナトリウム粉末および0.35グラムのヒアルロン酸ナトリウム(SLMW)粉末を加える。
2.段階1からの混合物に50グラムの冷却(約40°F)蒸留水を激しく撹拌しつつ徐々に加え、この混合物を、すべての粉末が溶解し、均一で光学的に明澄な混合物が得られるまで、時々撹拌しつつ約2時間にわたり放置する。
【0143】
段階II−カプサイシン溶液の調製
1.2グラムのトランス−カプサイシン粉末を140ccのパイレックスビーカーに加える。
2.20グラムのエチルアルコールを段階1のカプサイシン粉末に加え、ゆっくり撹拌する。
3.10グラムのDGME(エトキシジグリコール)を段階2の混合物に加え、ゆっくり撹拌する。
4.10グラムのプロピレングリコールを段階3の混合物に加え、ゆっくり撹拌する。
5.すべてのトランス−カプサイシン粉末が完全に溶解するまで、段階4からの溶液混合物を撹拌し、ホットプレート上で約40℃の温度に加熱する。
6.段階5からの溶液を放置して周囲温度まで冷却する。
【0144】
段階III−段階IおよびIIからの混合物をブレンドして、“2%Cap−HA形態2”配合物を生産する。
1.段階IIからの液体内容物を段階IのHA混合物に加え、十分に撹拌する。
2.5グラムのCremophor RH20を段階1からの混合物に加え、十分に撹拌する。
3.5グラムの超精製ポリソルベート80を段階2からの混合物に加え、十分に撹拌する。
4.段階4からの混合物を、撹拌しつつホットプレート上で約50℃に加熱する。
5.段階4からの混合物を周囲温度まで冷却する。
6.ここで、段階8からの混合物は、続いて包装できる状態になっている。
【0145】
100グラムの“2%Cap−HA”局所配合物の追加的な調製方法
構成成分
・トランス−カプサイシン粉末、CAS#404−86−4、Formosa Labs,Taoyuan,台湾
・ヒアルロン酸ナトリウム粉末(約1000kDa)、Making Cosmetics Inc.,Snoqualmie,ワシントン州
・ヒアルロン酸ナトリウム(SLMW)粉末、Making Cosmetics Inc.,Snoqualmie,ワシントン州
・エチルアルコール、Graves Grain Alcohol,190 Proof
・DGME(エトキシジグリコール)、Lotioncrafter Inc.,Eastsound,ワシントン州
・プロピレングリコール、Lotioncrafter Inc.,Eastsound,ワシントン州
・ポリソルベート80、Croda Inc.Florham Park,ニュージャージー州
・Cremophor RH20、BASF Corp,Florham Park,ニュージャージー州
・蒸留水
【0146】
段階I−ヒアルロン酸溶液の調製
1.“風袋重量”の500ccのパイレックスビーカーに1.95グラムのヒアルロン酸ナトリウム粉末(約1000kDa)および1.05グラムのヒアルロン酸ナトリウム(SLMW、約20kDa)粉末を加える。
2.段階1からのビーカーに、297グラムの約40°Fの蒸留水を、公称500rpmで公称5分間にわたり撹拌しつつ徐々に加える。この混合物を、すべての粉末が溶解し、均一で光学的に明澄な溶液が得られるまで、時々撹拌しつつ約2時間にわたり放置する。
【0147】
段階II−カプサイシン溶液の調製
1.“風袋重量”の140ccのパイレックスビーカーに2グラムのトランス−カプサイシン粉末を加える。
2.20グラムのエチルアルコールを段階1のカプサイシン粉末に加え、スパチュラを用いて約50rpmでゆっくり撹拌する。
3.10グラムのDGME(エトキシジグリコール)を段階2の混合物に加え、スパチュラを用いて約50rpmでゆっくり撹拌する。
4.10グラムのプロピレングリコールを段階3の混合物に加え、スパチュラを用いて約50rpmでゆっくり撹拌する。
5.7グラムの界面活性剤(ポリソルベート−80またはCremophor RH20など)を段階4の混合物に加え、スパチュラを用いて約50rpmでゆっくり撹拌する。
6.均一溶液が得られるまで、段階5からの溶液混合物を、ホットプレート上で約50℃の温度に加熱しつつ、スパチュラを用いて約50rpmで撹拌する。
7.段階6からの溶液を放置して周囲温度まで冷却する。
【0148】
段階III−段階IおよびIIからの混合物をブレンドして、“2%Cap−HA”配合物を生産する。
1.51グラムの段階IのHA混合物を、スパチュラを用いて約50rpmで撹拌しつつ、段階IIのカプサイシン溶液に徐々に加える。
2.均一溶液が得られるまで、段階1からの溶液混合物を、ホットプレート上で約50℃の温度に加熱しつつ、スパチュラを用いて約50rpmで撹拌する。
3.段階6からの溶液を放置して周囲温度まで冷却する。
4.ここで、段階3からの溶液は、続いて包装および使用できる状態になっている。
【0149】
実施例2
0.25%カプサイシン−HA配合物の局所施用
この試験では、59才の健常男性の右および左大腿部での灼熱感および皮膚刺激を記録することにより、4つの局所カプサイシン配合物の忍容性を評価した。配合物はローラーボールアプリケーターで施用した。
【0150】
【表6】
【0151】
配合物の施用
各配合物を、大腿部背面に位置する皮膚の25平方センチメートル(5×5cm)の範囲に施用した。各配合物を、右または左大腿部のいずれかに無作為に割り当てた。配合物の施用は、皮膚範囲上でローラーボールまたはアプリケーターを重複しないように蛇行して通過させ、これにより皮膚を湿らせ、溶液の薄膜を生じさせることを包含する。
【0152】
被験者は、投与前、投与の1分後、投与後20分および40分、ならびに2時間後に温水シャワーをかけた後に、忍容性を評価した。灼熱感は、Wong−Bakerフェイスを指針として用いて0〜10の数値評定尺度で定量化した。皮膚刺激は、標準的な0〜7の評定尺度の熱傷評定尺度(Burn Rating Scale)を用いて定量化した。
【0153】
被験者は、Wong−Bakerフェイススケールを指針として以下の0〜10の数値評定尺度を用いて、配合物を施用した各部位について灼熱痛を評定した:
【0154】
【化2】
【0155】
被験者は、以下の定義を用いて皮膚刺激を定量化した:
0=刺激の証拠なし
1=ほとんど知覚できない最小限の紅斑
2=容易に分かる明確な紅斑;最小限の浮腫または最小限の丘疹反応
3=紅斑および丘疹
4=明確な浮腫
5=紅斑、浮腫および丘疹
6=小胞性発疹
7=試験結果を超えて広がる強い反応
結果
配合物の施用前に、皮膚の試験部位に灼熱感または皮膚刺激の徴候はなかった。
【0156】
【表7】
【0157】
結論
0.15%M/A配合物はCapZaicinに匹敵する忍容性を示した。灼熱感の評点は、施用後1分および40分で同一であった;しかしながら、施用後20分では、0.15%M/A配合物は、評点した灼熱感が1単位高かった。皮膚刺激の評点は、施用後1分、20分および40分で同一であった;しかしながら、CapZaicinは施用後2時間での温水シャワー後に皮膚発赤を引き起こしたが、0.15%M/A配合物は皮膚刺激を引き起こさなかった。
【0158】
1%ヒアルロン酸を添加すると、エトキシジグリコールおよびプロピレングリコールを浸透増進剤として含有する0.25%カプサイシン水性配合物によって引き起こされる灼熱感および皮膚刺激は劇的に低減した。
実施例3
0.25%カプサイシン−HA配合物の局所施用
年齢が35〜55才で健常な成人男性2人および成人女性2人の群が、3.7mLのローラーボールアプリケーターから表6に示す4つの配合物の多重局所施用を行った。被験者らは、0.25重量%HA/カプサイシン配合物が灼熱感および紅斑の評定に関しもっとも忍容性が高いと述べた。被験者4人の灼熱感および紅斑の平均評定を表6にまとめる。
【0159】
【表8】
【0160】
実施例4
2%カプサイシン−HA配合物の局所施用
40才の健常女性が、前腕に、3.7mLのローラーボールアプリケーターを用いて、表3に示す2%トランス−カプサイシン配合物の多重局所施用を行った。灼熱感を0〜10の尺度で評定した。紅斑(発赤)を0〜10の尺度で評定した(0は紅斑なし)。紅斑(発赤)を0〜10の尺度で評定した。被験者は、2%Cap−HA形態2および2%Cap−HA形態3配合物の両方に関し、灼熱感も紅斑も経験しなかった。2%M/A配合物については、灼熱感および刺痛感の<3という記録を施用後60分の時間枠で経験した。3つの配合物の局所施用に関する被験者の意見の詳細を、以下の表にまとめる。
A)2%Cap−HA形態2(表3の配合物3)−最初に、この施用部位は顕著な感受性を示さなかった。試験の全体にわたり刺激/紅斑なし。60分の時点より前に灼熱感または発赤はなかった。温水中での製品の洗浄に際し、わずかな痒み感および紅斑が生じ、読み取り時は両方とも1であった。これは、30分の洗い流し時間内にすぐにゼロに達した。
B)2%Cap−HA形態3(表3の配合物3)−最初に、この施用部位は顕著な感受性を示さなかった。時間枠の全体にわたり刺激/紅斑なし。18時間後にシャワーをかけた際、該当範囲の心地よい温度上昇として記載することができるものがあったことに、留意することが重要である。この温度上昇はシャワー後30分以内に消散した。
C)(1)2%MA−最初に、この施用部位は、ほとんど目立たない、痒み感として記載される感受性を示した。最初の施用に際し軽度の刺激/紅斑がみられた。灼熱感は、10分の点で2.5まで上昇した。灼熱感は、軽度の痒みまで漸進的に消散していった。灼熱感は、温水に暴露するとすぐに3まで上昇し、その後10分間はこのレベルのままであった。その後、洗い流した後40分の間に痛みは漸進的に0まで低下した。翌日シャワーをかけるまで、顕著な紅斑または痛みはなかった。このとき、薄い紅斑および3と特徴付けられる軽度の灼熱感がみられた。この痛みは30分以内に消散した。
注釈:(1)組成:カプサイシン、2重量%;サリチル酸メチル、50重量%;メントール、15重量%;ショウノウ、11重量%;エチルアルコール、19.5重量%;フェノール 1.35重量%;水、1.15重量%。
【0161】
【表9】
【0162】
【表10】
【0163】
実施例5
2%カプサイシン−HA配合物の局所施用
50才の健常男性が、ローラーボールアプリケーターにより3つの2重量%トランス−カプサイシン配合物の単回局所施用を行った。灼熱感および紅斑の評定を表9にまとめる。HAを含有する配合物は両方とも、表9に示すように施用後60分の期間中に同様の灼熱感および紅斑の評定を有していた。被験者は、2重量%M/A配合物を、HA配合物よりわずかに灼熱感が強く刺激が強いと評定した。灼熱感および紅斑のレベルはすべて、被験者の意見では、局所使用に十分“忍容しうる”レベル内にあるとみなされた。
【0164】
【表11】
【0165】
実施例6
5%および10%カプサイシン配合物の局所施用
79才男性が5重量%および10重量%カプサイシン−HAの両方の評価に参加して、カプサイシンの灼熱および紅斑作用を評価した。灼熱作用を(0〜10)の尺度で評定し、同時に紅斑発赤も目測により(1〜5)の尺度で決定した。
【0166】
被験者の左腕裏側、肘関節の下20cmに位置する左腕の25cm(5cm×5cm)の皮膚範囲に最初の投与を達成するために、3.7mLのローラーボールボトルを用いて5重量%カプサイシン−HA配合物の施用を行った。25cmの施用範囲全体にローラーボールを数回通過させた。
【0167】
同様に、右腕表側、肘関節の上20cmに位置する、被験者の左腕の25cm(5cm×5cm)の皮膚範囲に最初の投与を達成するために、3.7mLのローラーボールボトルを用いて10重量%カプサイシン−HA配合物の施用を行った。25cmの施用範囲にローラーボールを数回通過させた。
【0168】
観察された灼熱感および紅斑の結果を、表10および11にまとめる。被験者は、灼熱感が20分の点で5重量%カプサイシンでレベル3、10重量%カプサイシン配合物でレベル2.5まで漸進的に上昇した後、60分後にゼロまで漸進的に低下すると述べた。被験者は、流体施用後に約5〜15分続くわずかな痒みについて述べた。
【0169】
どちらの場合も、5重量%および10重量%カプサイシン/HA配合物の灼熱感のレベルはともに、十分に忍容されるものであった。
【0170】
【表12】
【0171】
【表13】
【0172】
実施例7
5%および10%カプサイシン−HA配合物の局所施用
71才の健常女性が、実施例6に記載した方法と同様の方法で、5重量%カプサイシン−HA配合物を左前腕、10重量%カプサイシン−HA配合物を右前腕に、単回局所施用した。観察された灼熱感および紅斑の結果を、表12および13にまとめる。5重量%および10重量%カプサイシン/HA配合物の灼熱感のレベルはともに、十分に忍容されるものであった。
【0173】
【表14】
【0174】
【表15】
【0175】
実施例8
PS80を含む2%、5%および10%カプサイシン−HA配合物のラットへの局所施用
以下のカプサイシン−HA配合物を利用して、ラットでの小規模試験を行った:
【0176】
【表16】
【0177】
2%および5%カプサイシン配合物の30分間の単回投与は、ラットにおいて忍容された。10%カプサイシン配合物の30分間の単回投与は、ラットにおいて十分に忍容されなかった。
【0178】
実施例9
PS80を含む10%カプサイシン−HA配合物のヒトへの局所施用
53才の健常男性が、10%トランス−カプサイシンヒアルロン酸(HA)PS80溶液を120分間にわたり単回局所施用した後、洗い流した。この配合物は、PS80を界面活性剤として用いて配合した。配合物の組成を以下の表に示す。
【0179】
【表17】
【0180】
膝蓋骨の半分および膝蓋骨の真上の箇所の範囲にわたる右膝の15in(5インチ×3インチ)の皮膚範囲上に“テカテカするような(glistening)”大量の投与が達成されるように、10mgのローラーボールボトルを用いて配合物の施用を行った。施用範囲全体にローラーボールを数回通過させて、この配合物の大量投与を達成した。
【0181】
刺痛/灼熱感(S&B)および発赤(紅斑)の評定を、局所施用後の時間の関数として以下の表に示す。
【0182】
【表18】
【0183】
上の表において、0〜10のS&Bの尺度は“刺痛感および灼熱感”の表示であり、ゼロはS&Bがないことを表し、1はわずかなS&Bであり、5は忍容できない量のS&Bであり、10は想像しうる最悪の痛みである。同様に、0〜5の紅斑の尺度は視覚的に観察される発赤の量を表し、ゼロは発赤がなく、1は皮膚のわずかな発赤を示し、3は暗赤色を示し、5は紫色である。
【0184】
全般的に、被験者は、施用後最初の40分の間にわずかではあるが非常に忍容性が高い灼熱および刺痛感が漸進的に開始した後、120分の点までポイントは漸進的に低下し、この時点で非常にわずかなS&B感覚が依然として残っていることを観察した。より詳細には、1と評定されるわずかなS&B感覚がほんの2分後に感じられ、10分後には2の評定に上昇した。2.5(0〜10の尺度で)と評定された最大S&Bは、40分後に観察された。S&B感覚は、40分の点の前に緩慢かつ漸進的に上昇した。この2.5と評定された最大S&B感覚はピークにおいて完全に忍容可能であり、その後、40分の点を超えると漸次的に消散することが観察された。40分の点から、被験者は100分の点までS&B感覚の漸進的低下を観察し、100分にS&Bレベルは非常にわずかな0.5の評点(0〜10の尺度で)と観察された。この非常にわずかな0.5の評点は、記録した120分間の最後まで続いた。刺激のレベルはすべて、被験者の意見では、局所使用に十分“忍容しうる”レベル内にあるとみなされた。
【0185】
これに加えて、50cmの施用範囲全体の発赤(紅斑)および発赤の減少が、施用後の最初の120分間にわたり観察された。被験者は、5分後の0.5(1〜5の尺度で)の評定から、10分後の1.0の評定、20分後の1.5の評定の発赤を観察した。この1.5の発赤の評定が、観察された最大レベルであり、20分の点から40分の点まで継続した。発赤は40分の点の後に漸進的に減少し、100分後に0.5のS&Bの評定まで低下した。この評定0.5のわずかな発赤は、記録した120分間の最後でもなお観察された。発赤は均一で、斑点または矛盾する作用の他の形態は観察されなかった。発赤範囲は、施用範囲を超えて広がらなかった:配合物で直接処置した皮膚範囲だけが、それに関連する紅斑を有していた。配合物を施用した120分の間、皮膚の感受性がさらに高くなることはなかった。
実施例10
PS80を含む10%カプサイシン−HA配合物のヒトへの局所施用
41才の健常女性が、10%トランス−カプサイシンヒアルロン酸(HA)PS80溶液を120分間単回局所施用した後、洗い流した。この配合物の組成を以下の表に示す。
【0186】
【表19】
【0187】
右前腕内側の8in(4インチ×2インチ)の皮膚範囲の上に“テカテカするような”大量の初期投与が達成されるように、10mgのローラーボールボトルを用いて配合物の施用を行った。施用範囲全体にローラーボールを数回通過させて、この配合物の大量投与を達成した。
【0188】
刺痛/灼熱感(S&B)および発赤(紅斑)の評定を、局所施用後の時間の関数として以下の表に示す。
【0189】
【表20】
【0190】
上の表において、0〜10のS&Bの尺度は“灼熱感および刺痛感”の表示であり、ゼロはS&Bがないことを表し、1はわずかなS&Bであり、5は忍容できない量のS&Bであり、10は想像しうる最悪の痛みである。同様に、0〜5の紅斑の尺度は視覚的に観察される発赤の量を表し、ゼロは発赤がなく、1は皮膚のわずかな発赤を示し、3は暗赤色を示し、5は紫色である。
【0191】
1と評定されるわずかな刺痛感が5分後に感じられ、100分の点まで変わらずその状態が継続し、100分に刺痛感は漸進的に低下した。1(0〜10の尺度で)と評定された最大S&Bは、90分まで観察された。この1と評定されたS&Bは完全に忍容可能であることが観察された。100分の点から、被験者はS&B感覚の漸進的低下を観察した。非常にわずかな0.5のS&Bは、記録した120分間の最後まで続いた。刺激のレベルはすべて、被験者の意見では、局所使用に十分“忍容しうる”レベル内にあった。
【0192】
これに加えて、施用範囲全体の発赤(紅斑)および発赤の減少が、施用後の最初の120分間にわたり観察された。被験者は、5分後の1(1〜5の尺度で)の評定から、10分後の1.5の評定の発赤を観察し、この評定は90分の点を超えて継続した。発赤は100分の点の後に漸進的に減少し、継続期間中に0.5まで低下した。この評定0.5のわずかな発赤は、記録した120分間の最後でもなお観察された。発赤は均一で、斑点または矛盾する作用の他の形態は観察されなかった。発赤範囲は、施用範囲を超えて広がらなかった:配合物で直接処置した皮膚範囲だけが、それに関連する紅斑を有していた。
配合物を施用した120分の間、皮膚の感受性がさらに高くなることはなかった。
【0193】
実施例11
10%カプサイシン−HA配合物を用いた変形性関節症の4回分の1日用量での処置
重度の進行した変形性関節症を患う59才男性が、変形性関節症痛を緩和するために、10%カプサイシンヒアルロン酸配合物を、1日1回、4日間連続して用いた。用いた配合物は、10%w/wカプサイシンをヒアルロン酸(HA)と一緒に含有し、Cremaphore RH40を安定剤として利用するものであった(以下の表参照)。この男性は白人、肥満体で、退行性関節疾患(変形性関節症)を特に両側の膝に有し、内・外側半月板および関節軟骨の重度の退行変性が両側にあり、左側より右側の方が重度であった。当時、痛みは1日3回の50〜100mgのトラマドールで最低限に制御されており、部分的な緩和がもたらされ、痛みのレベルは痛みの尺度で約4まで低下しており、最大8〜9まで上昇する鋭い電撃痛を伴っていた。
【0194】
効力
被験者は、“私の悪化した膝(右)を10%配合物で1日1時間、4日間処置した後、痛みの緩和は痛みのレベル2まで改善し、より問題のある膝はより良くなり、ほとんど痛みのない膝になった。鋭い電撃痛も改善し、頻度はかなり少なくなり、瞬間的な重度の痛みのレベルは5にしか達しなかった。この改善は数週間続いた”と述べた。
【0195】
忍容性
被験者は、“処置施用中の刺痛/灼熱感はほんのわずかであり、大ざっぱに見積もって1未満であった。シャワー中に刺痛感/灼熱感は少しだけ上昇し、痛みの尺度で1以下であった。シャワー中、処置範囲をすすいだ際に軽度の管理しうる咳があったが、配合物は容易に、迅速に、そして完全に洗い流されるので、幸いにもこれは瞬間的に過ぎなかった。”と述べた。
【0196】
全体的評価
被験者は結果に非常に満足していた。
【0197】
【表21】
【0198】
実施例12
10%カプサイシン−HA配合物での変形性関節症の単回投与パルス治療
多数の関節に中程度〜重度の変形性関節症歴を有する(2008年に股関節置換手術に成功している)79才男性が、股関節および肩関節の両方の関節炎痛を緩和するために、10%カプサイシンHA配合物を数回用いた。用いた配合物は、10%w/wカプサイシンをヒアルロン酸(HA)と一緒に含有し、Cremaphore RH40を安定剤として利用するものであった(以下の表参照)。
【0199】
効力:
被験者は、変形性関節症の痛みを制御するために、上記配合物を左股関節部および右肩の両方に数回施用した。10%カプサイシンHA配合物を、“必要に”応じて、平均して2週間に1回と概算される基準で施用した。配合物を施用したときに、概して少なくとも1時間放置してから洗い流した。投与を連日繰り返すことはせず、その代わりに、単回投与を施用した後、次の投与の施用を痛みが再発するまで待った。このヒアルロン酸を含む10%カプサイシン配合物の単回投与を施用すると、肩関節の関節炎痛は約2週間にわたり完全に排除された。同様に、関節炎を患う股関節に施用すると痛みは約80%減少し、単回投与から約2週間の間、股関節に著しい痛みは戻ってこなかった。両方の関節における痛みの再発の平均時間は、約2週間であった。被験者は、各単回投与後にカプサイシンによって痛みが1〜2週間緩和する利便性に、非常に満足していた。
【0200】
忍容性:
被験者は、この配合物の施用は非常に忍容性が高いものであった(刺激がなかった)と述べた。被験者は、肩への施用のすべてに関し、肩関節への施用に際し灼熱および刺痛(S&B)刺激を観察しなかった。配合物を股関節に(鼠径部および臀部範囲を避けて)施用したときに、最大S&B感覚は0〜10の尺度で2の評定を超えることはなかった(ゼロはS&B感覚がないことを意味し、5は忍容できない痛みを示し、10は想像しうる最悪の痛みを表すと定義される)。紅斑(発赤)は、施用に際し肩関節には存在せず、配合物を股関節に施用したときに1.5の評定(0〜5の尺度で)が見積もられた(ゼロと定義される評定は発赤がないことを表し、3は暗赤色、5は紫色を表す)。S&B感覚および紅斑の両方に関し、被験者は配合物が非常に忍容性が高いことを見いだした。
【0201】
【表22】
【0202】
実施例13
カプサイシン−HA配合物含有鎮痛薬
分子量20Kダルトンのヒアルロン酸を70%および分子量100Kダルトンのヒアルロン酸を30%含有する混合物で構成される1重量%ヒアルロン酸水溶液を、20%エチルアルコールおよび10%プロピレングリコールに溶解した0.25重量%および2.0重量%のカプサイシンならびに15重量%および17重量%のCremophorTM RH40をそれぞれ含有するアルコール混合物溶液に加えた。光学的に無色明澄で適度に粘性の溶液が形成した。ヒアルロン酸の分子量の相対的百分率を調整すると、混合物の粘性を変動させることができた。
【0203】
上記段落に記載した0.25重量%および2.0重量%のカプサイシン配合物(以下の表参照)の両方を、5mLのローラーボールバイアルを用いて80才の男性被験者の右前腕に施用した。施用した液体皮膜は数分で乾燥した。灼熱感および刺痛感による最小限の不快感がみられた。10重量%のサリチル酸メチルを含有する配合物は比較的無臭であることが顕著であった。
【0204】
【表23】
【0205】
実施例14
2つの(2%)カプサイシンHA配合物の局所施用後の忍容性および紅斑の比較:鎮痛薬の包含効果
この試験の目的は、カプサイシンヒアルロン酸(HA)配合物に局所鎮痛薬を包含させることによって局所施用後にもたらされる忍容性および紅斑を評価することであった。53才の男性が、2%カプサイシンHAの2つの別個の配合物(一方の配合物は局所鎮痛薬を含み、他方は含まない)を、単一の膝に近接して施用した。忍容性および紅斑の特性を単独および2つの配合物の比較で評価するために、局所施用後の灼熱感および刺痛感(S&B)を皮膚発赤と一緒に定量化した。2つの配合物の組成を、以下に配合物1(カプサイシンHA)および配合物2(カプサイシンHA+鎮痛薬)として示す。
【0206】
【表24】
【0207】
以下の配合物1は2%カプサイシンHA配合物である。以下の配合物2は、2%カプサイシンHAのほかにいくつかの周知の天然鎮痛性化合物からなる。忍容性(S&B)は0〜10の尺度を用いて評価し、ゼロはS&Bがないことを表し、1はわずかなS&Bであり、5は忍容できない量のS&Bであり、10は想像しうる最悪の痛みである。同様に、同様に、0〜5の紅斑の尺度は皮膚上で視覚的に観察される発赤の量を表し、ゼロの評定は発赤がなく、1は皮膚のわずかな発赤を示し、3の評定は暗赤色を示し、5は紫色である。
【0208】
53才男性が、両配合物を同時に施用した。2つの配合物を近接して施用した後、120分間にわたり各配合物の施用に関する忍容性(S&B)および紅斑(発赤)の評定を行った。評定を以下のS&Bの表および発赤の表に示す。配合物2(2%カプサイシンHA+鎮痛薬)の忍容性は、どちらの測定でも忍容性の尺度の極度に低い限界にあるだけでなく、直接的な比較で配合物1(2%カプサイシンHA)よりさらに低かった。配合物1の場合、2.0の最大S&B評定および1.5の最大紅斑評定が、20分の時点までに観察された。評定は両方とも、90分の時点までにゼロに漸進的に低下した。配合物2の場合、1.5の最大S&B評定が30分の時点で観察された後、90分の時点までにゼロに漸進的に低下した。配合物2の紅斑の最大値は20分の時点までに0.5の評定で観察され、この評定は60分の時点までにゼロに低下した。
【0209】
【表25】
【0210】
【表26】
【0211】
2%カプサイシンを含有しているにもかかわらず、配合物は両方とも、刺痛および灼熱感(S&B)ならびに視覚的な発赤(紅斑)の両方に関し、非常に忍容性が高いことが観察された。さらに、2%カプサイシンHAに鎮痛薬を加えると(配合物2、カプサイシンHA+鎮痛薬)、2%カプサイシンHA(配合物1、カプサイシンHA)に比べ、S&B感覚および紅斑の両方の評定が低下した。
【0212】
実施例15
10%カプサイシン−HA配合物での背筋の単回投与処置
79才男性が、背筋が痙攣で動かなくなり強い痛みが生じたため、背部の痛みを緩和するために10%カプサイシンHA配合物を用いた。用いた配合物は、10%w/wカプサイシンをヒアルロン酸(HA)と一緒に含有し、Cremaphore RH40を安定剤として利用するものであった(以下の表参照)。
【0213】
効能:
今なお活動的な生活様式(および腰痛歴)を有する79才男性は、テニスボールを拾い上げる間に背部が“機能しなくなった”とき、テニスをしていた。彼はコート上で倒れ、動こうとすると、彼が0〜10の尺度(ゼロは痛みがなく、10は想像しうる最悪の痛みである)で8と評定する強い痛みが生じた。被験者は実質的に動かなくなり、テニスコート上に仰向けで横たわり、起き上がってベッドに移動するのに助けが必要であった。彼は、背部の中央および下部の筋肉が、背部の神経の異常により動かなくなったと報告した(医師は予め彼に説明していた)。以前にこの問題が起こったとき、回復までに数日間の床上安静が必要であった。ベッドに入るとすぐに、彼は妻に頼んで、10%カプサイシンおよびヒアルロン酸(Cremaphore RH40を含む)の配合物を、痙攣で筋肉が動かなくなった背部の12’’×12’’の範囲に施用してもらった。処置範囲の約90%は、中央に脊椎がある筋肉からなっていた。このヒアルロン酸を含む10%カプサイシン配合物の単回投与を施用すると、背部の痛みは施用後20分以内に排除された。彼の背筋は弛緩した。筋痙攣は消失し、彼は1時間にわたって痛むことなく正常な動きで動き回り始めた。2時間の終わりに、彼は正常だと感じ、外出してテニスゲームを再開した。HAを含むカプサイシン配合物は、これまでは数日間の床上安静および制限された活動によってのみ達成された緩和をもたらした。
【0214】
忍容性:
被験者は、この配合物の局所施用が非常に忍容性が高い(刺激がない)ことを観察した。彼は、背部への施用に際しほんのわずかな刺痛および灼熱(S&B)刺激を観察した。配合物を背部の比較的広い範囲に施用すると、彼は、施用後の最初の2〜3分にわたり温度上昇感覚が大きくなることを漸進的に感じた。被験者は、これは心地よい感覚であると述べた。彼は、刺痛および灼熱感(S&B)は、最大において、0〜10の尺度(ゼロはS&B感覚がないことを意味し、5は忍容できない痛みを示し、10は想像しうる最悪の痛みを表すと定義される)で2.5以下の評定であると観察した。紅斑(発赤)は、非常に均一に施用範囲全体にわたって存在し、最悪の状態において軽度の日焼けのように見えた。最悪の状態において、この紅斑は0〜5の尺度で1.5の評定と見積もられた:ゼロは紅斑が完全にないことを表し、1はわずかな発赤であり、3は暗赤色、5は紫色である。S&B感覚および紅斑の両方に関し、被験者は配合物が非常に忍容性が高いことを見いだした。
【0215】
【表27】
【0216】
実施例16
変形性関節症を患っている膝に対するポリソルベート80を含有する5%カプサイシン−HA配合物の忍容性
【0217】
【表28】
【0218】
70才男性が、ポリソルベート80を含有する5%カプサイシンHA配合物(組成を上記表に示す)を、変形性関節症を患っている両膝に施用した。その男性は、局所施用後32分間(試験期間)にわたり灼熱感および刺痛感または掻痒を感じなかった。
【0219】
本発明を代表的態様に関連して記載してきたが、当業者なら、本発明の範囲から逸脱することなく、さまざまな変更を加えることができ、その要素を同等物で置き換えることができることを理解するであろう。これに加えて、本発明の本質的範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために、多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実行することを企図した最善の方法として開示された特定の態様に限定されるわけではなく、本発明は、添付する特許請求の範囲内にあるすべての態様を包含するであろうことを意図している。
【0220】
本明細書中で引用するすべての文書および他の情報源は、その全体を本明細書で参考として援用する。