(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記成分Bは、平均一次粒子径が15nm以上300nm以下のシリカ粒子が平均一次粒子径が5nm以上40nm以下の粒状セリアで被覆され、且つセリアとシリカの質量比(シリカ/セリア)が0.5以上4.0以下のセリアコートシリカ粒子である、請求項1又は2に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
前記酸化珪素膜研磨用研磨液組成物中の前記成分Aの含有量は、前記水溶性高分子(成分A)と前記セリアコートシリカ粒子(成分B)と前記水系媒体(成分C)の質量の合計を100質量%とすると、0.05質量%以上5質量%以下である請求項1から4のいずれかの項に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
酸化珪素膜と前記酸化珪素膜の下に前記酸化珪素膜に接して配置されたポリシリコン膜を有する被研磨基板の、前記酸化珪素膜を、研磨液組成物を用いて前記ポリシリコン膜上の前記酸化珪素膜が除去されるまで研磨する工程を含み、
前記研磨液組成物として、請求項1から6のいずれかの項に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物を用いる、半導体基板の製造方法。
酸化珪素膜と前記酸化珪素膜の下に前記酸化珪素膜に接して配置されたポリシリコン膜を有する被研磨基板の、前記酸化珪素膜を、研磨液組成物を用いて前記ポリシリコン膜上の前記酸化珪素膜が除去されるまで研磨する工程を含み、
前記研磨液組成物として、請求項1から6のいずれかの項に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物を用いる、半導体基板の研磨方法。
半導体基板の製造工程において、酸化珪素膜と前記酸化珪素膜の下に前記酸化珪素膜に接して配置されたポリシリコン膜とを有する被研磨基板の、前記ポリシリコン膜上の前記酸化珪素膜が除去されるまで、前記酸化珪素膜を研磨するための、請求項1から6のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物の使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、研磨粒子としてシリカ粒子の表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆されたセリアコートシリカ粒子(以下、単に「セリアコートシリカ粒子」ともいう)を含み、研磨助剤として、ポリエチレングリコール(PEG)鎖を含む水溶性高分子を含むことで、ポリシリコン膜(研磨停止膜)の研磨を極力抑制し、かつ、酸化珪素膜の研磨を高速で進行させることができるという高い研磨選択性が発現されるとともに、ポリシリコン膜表面の研磨傷を低減できる、という知見に基づく。
【0017】
本発明の効果発現のメカニズムの詳細は明らかではないが、以下の様に推定している。ほぼ中性下では、酸化珪素膜の表面は負に帯電し且つ親水性であり、一方、ポリシリコン膜の表面は負に帯電しており且つ強い疎水性である。本発明の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物(以下、「研磨液組成物」と略称する場合もある。)に含まれる水溶性高分子は、疎水性物と強い相互作用を示すPEG鎖を含んでいるので、疎水性相互作用によりポリシリコン膜に吸着し易く、他方、負に帯電して親水性の研磨粒子や酸化珪素膜の表面には電荷反発により吸着しにくい。故に、酸化珪素膜の研磨が進行してポリシリコン膜が露出すると、前記研磨助剤は、疎水性相互作用によってポリシリコン膜に選択吸着する。よって、ポリシリコン膜に吸着した研磨助剤によってポリシリコン膜上に厚い被膜(吸着層)が形成され、当該被膜の存在によってポリシリコン膜の研磨が効果的に抑制される。
【0018】
また、現状、研磨粒子として広く使用されている、粉砕法によって製造されたセリア粒子は、多くのエッジを有するのに対して、本発明の研磨液組成物に含まれるセリアコートシリカ粒子は、シリカ粒子表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆された構造である。そのために、本発明の研磨液組成物は、研磨粒子として粉砕法によって製造されたセリア粒子を含む従来の研磨液組成物よりも、ポリシリコン膜表面における研磨傷の発生が抑制されている。また、通常、研磨粒子の粒子形状が球状になると、被研磨面との摩擦抵抗の減少により、高い研磨速度を発現することはできないが、本発明の研磨液組成物に含まれるセリアコートシリカ粒子では、シリカ粒子上に微細な粒状セリアを被覆することにより、粒子表面上に微細な凹凸を有する構造となっているので、例えば、シリカ粒子形状が略球状であっても、この特殊な粒子構造により被研磨面に対する研磨粒子の摩擦力が略球状シリカ粒子のそれより向上し、高い研磨速度を発現するものと推定している。
【0019】
故に、本発明の研磨液組成物では、水溶性高分子(成分A)とセリアコートシリカ粒子(成分B)の併用により、ポリシリコン膜の研磨を極力抑制しながら、酸化珪素膜の研磨を高速で進行させることができるという高い研磨選択性が呈され、更に、露出したポリシリコン膜への研磨傷の発生を抑制することもできる。この高い研磨選択性と研磨傷発生の抑制効果とにより、本発明では、酸化珪素膜とポリシリコン膜とを含み、高度に平滑な面を得ることができる。但し、これらは推定であって、本発明は、これらメカニズムに限定されるものではない。
【0020】
本発明は、一つの態様において、半導体基板の製造過程のシャロートレンチ素子分離構造の形成工程で行われる酸化珪素膜の研磨の際に用いられ、PEG鎖を含む水溶性高分子(成分A)、セリアコートシリカ粒子(成分B)、及び水系媒体(成分C)を含有する酸化珪素膜研磨用研磨液組成物に関する。本発明の研磨液組成物を用いれば、素子分離構造を形成する工程で行われる酸化珪素膜の研磨において、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保でき、且つ、ポリシリコンの過剰な研磨を抑制でき、優れた研磨選択性の達成が可能となる。また、研磨傷の低減も可能となる。
【0021】
本明細書において「研磨選択性」が高いと、ポリシリコン膜の研磨速度に対する酸化珪素膜の研磨速度比(酸化珪素膜の研磨速度/ポリシリコン膜の研磨速度)が大きくなる。
【0022】
[成分A:水溶性高分子]
本発明の研磨液組成物は、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、−(CH
2CH
2O)
n−(ここで、nは、エチレンオキサイド基(EO)の平均付加モル数であり、整数を表わす。)で表わされるPEG鎖を含む水溶性高分子(成分A)を含む。PEG鎖を含む水溶性高分子は、ポリエチレングリコール、PEG鎖を構造内に持つホモポリマー、及びPEG鎖を構造内に持つコポリマーから選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子である。当該水溶性高分子は、主鎖にPEG鎖を含む高分子、側鎖にPEG鎖を含む高分子のいずれであってもよく、研磨選択性向上の観点から、好ましくは側鎖にPEG鎖を含む水溶性高分子である。また、当該水溶性高分子は、未中和の状態、アルカリにより中和された状態のどちらでもよい。中和に用いるアルカリはK、Naの水酸化物又はアンモニアが好ましい。ここで、「水溶性」とは、水(20℃)に対して2g/100mL以上の溶解度を有することをいう。
【0023】
成分Aが有するPEG鎖の重量平均分子量は、研磨選択性向上及び研磨傷低減の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは200000以下、より好ましくは180000以下、更に好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下である。前記PEG鎖における平均付加モル数は、研磨選択性向上及び研磨傷低減の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは13以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは45以上、更に好ましくは65以上、更に好ましくは90以上であり、そして、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。
【0024】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子(成分A)において、例えば、主鎖にPEG鎖を含む高分子では、そのPEG鎖の重量平均分子量は、ポリシリコン膜の研磨抑制の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは200000以下、より好ましくは180000以下、更に好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下である。主鎖にPEG鎖を含む高分子のPEG鎖における平均付加モル数は、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、好ましくは5以上、より好ましくは13以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは45以上、更に好ましくは65以上、更に好ましくは90以上であり、そして、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。
【0025】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子(成分A)において、例えば、側鎖にPEG鎖を含む高分子では、そのPEG鎖の重量平均分子量は、ポリシリコン膜の研磨抑制の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは10000以下、より好ましくは6500以下、更に好ましくは5500以下である。側鎖にPEG鎖を含む高分子のPEG鎖における平均付加モル数は、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、好ましくは4以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは45以上、更に好ましくは65以上、更に好ましくは90以上であり、そして、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である。
【0026】
尚、水溶性高分子(成分A)におけるPEG鎖の重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した値である。
【0027】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子(成分A)は、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、好ましくは、ポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの単独重合体、(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子である。(メタ)アクリレートとしては、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、好ましくは、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、より好ましくは8〜16);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2―メトキシエチル、(メタ)アククリル酸2―エトキシエチル;リン酸モノ‐(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸,リン酸モノ‐(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16)等のリン酸基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子(成分A)は、これらの中でも、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、アニオン性基を含んでいると好ましい。水溶性高分子(成分A)がアニオン性基を含んでいると、電荷反発により、酸化珪素膜への水溶性高分子(成分A)の吸着及びポリシリコン膜に吸着した成分Aへのセリアコートシリカ粒子の吸着が抑制されるので、研磨選択性が向上し、且つ研磨傷が低減されると推定される。成分Aは、同様の観点から、より好ましくはアニオン性基を含み側鎖にPEG鎖を含む水溶性高分子である。アニオン性基としては、酸解離定数(pKa)の観点から、好ましくはカルボン酸基、硫酸基、及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種であり、より好ましくは、カルボン酸基、及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種であり、さらに好ましくはカルボン酸基である。
【0029】
アニオン性基を含む水溶性高分子(成分A)としては、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、好ましくは、(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アニオン基を有する(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子であり、より好ましくは、(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、リン酸基を有する(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子であり、更に好ましくは、メタクリル酸/モノメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、そのアルカリ金属塩、及びそのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子である。
【0030】
成分Aの重量平均分子量は、研磨選択性向上及び研磨傷低減の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは300000以下、より好ましくは270000以下、更により好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下である。
【0031】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子(成分A)の重量平均分子量(Mw)は、主鎖にPEG鎖を含む高分子では、研磨選択性及び研磨傷低減の観点から、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、そして、研磨傷の低減の観点及び高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは200000以下、より好ましくは180000以下、更に好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下である。また、側鎖にPEG鎖を含む高分子では、研磨選択性の観点から、好ましくは10000以上、より好ましくは12000以上、更に好ましくは15000以上、更に好ましくは16000以上、更に好ましくは45000以上であり、研磨傷の低減の観点及び高い生産性のために必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは300000以下、より好ましくは290000以下、更に好ましくは280000以下、更に好ましくは270000以下であり、そして、更なる研磨選択性の向上及び配合容易性の観点から、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは70000以下である。
【0032】
尚、水溶性高分子の重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて測定した値である。
【0033】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子(成分A)が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上のモノマーAとポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールのエステルから選ばれる1種以上のモノマーBとの共重合体である場合、共重合体中に含まれるモノマーAに由来の構成単位とモノマーBに由来の構成単位のモル比(モノマーAに由来の構成単位/モノマーBに由来の構成単位)は、好ましくは(5/95)以上、より好ましくは(25/75)以上、更に好ましくは(40/60)以上、更により好ましくは(55/45)以上であり、好ましくは(99/1)以下、より好ましくは(95/5)以下、更に好ましくは(90/10)以下、更により好ましくは(85/15)以下である。
【0034】
本発明の研磨液組成物中の水溶性高分子(成分A)の含有量は、水溶性高分子(成分A)とセリアコートシリカ粒子(成分B)と水系媒体(成分C)の質量の合計を100質量%とすると、研磨選択性向上、及び研磨傷の低減の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更により好ましくは0.25質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、更により好ましくは0.75質量%以下である。
【0035】
[成分B:セリアコートシリカ粒子]
本発明の研磨液組成物に含まれる前記研磨粒子は、高い生産性の為に必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保し、研磨傷を低減させる観点から、シリカ粒子の表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆されたセリアコートシリカ粒子(成分B)を含む。
【0036】
動的光散乱法(DLS)により測定される前記セリアコートシリカ粒子の平均二次粒子径は、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上であり、そして、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下である。セリアコートシリカ粒子の平均二次粒子径が大きいと酸化珪素膜の研磨速度は高まり、逆に小さいと研磨傷は少なくなる。前記セリアコートシリカ粒子の平均二次粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。尚、動的光散乱法により測定される前記セリアコートシリカ粒子の平均二次粒子径は、動的光散乱法により測定される平均粒子径ともいい、複数の粒状セリアの一次又は二次粒子が付着(結合)したシリカ粒子の一次又は二次粒子を含む、広い概念である。
【0037】
本発明の研磨液組成物に含まれる前記研磨粒子は、酸化珪素膜の研磨速度の向上と研磨傷の低減の観点から、シリカ粒子を被覆するセリアは結晶性を有し、更にその形状は、粒状であり、好ましくは略球状である。また、粒状セリアの透過型電子顕微観察により測定される平均一次粒子径は、研磨速度の観点から好ましくは5nm以上、より好ましくは7.5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、そして、好ましくは40nm以下、より好ましくは30nm以下、更に好ましくは25nm以下である。シリカ粒子を被覆する粒状セリアの平均一次粒子径が好ましくは5nm以上では粒状セリアの合成が容易となり、好ましくは40nm以下ではシリカ粒子上に粒状セリアが均一に被覆されて研磨傷の発生を効果的に抑制することができる。尚、粒状セリアの平均一次粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0038】
セリアコートシリカ粒子のpH6におけるζ電位は、セリアコートシリカ粒子の分散性の観点から、好ましくは0mV未満、より好ましくは−25mV以下、更に好ましくは−40mV以下であり、そして、研磨剤組成物の製造容易性の観点から、好ましくは−60mV以上である。ζ電位は、実施例に記載の方法により測定できる。pH4におけるζ電位は、セリアコートシリカ粒子の分散性の観点から、好ましくは0mV未満、より好ましくは−20mV以下、更に好ましくは−28mV以下であり、そして、研磨剤組成物の製造容易性の観点から、好ましくは−60mV以上である。pH8におけるζ電位の好適範囲は、前記pH6におけるζ電位と同様である。
【0039】
粒状セリアによって被覆されたシリカ粒子は、酸化珪素膜の研磨速度の向上と研磨傷の低減の観点から、コロイダルシリカであると好ましく、その形状は略球状であると好ましい。また、セリアシリカコート粒子の調製に使用するシリカ粒子の透過型電子顕微観察により測定される平均一次粒子径は、研磨速度の観点から好ましくは15nm以上、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは40nm以上であり、そして、好ましくは300nm以下、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が好ましくは15nm以上では酸化珪素膜の研磨速度を効果的に向上でき、好ましくは300nm以下では研磨傷の発生を効果的に抑制できる。尚、シリカ粒子の平均一次粒子径は、後述する実施例に記載の方法により測定できる。
【0040】
セリアコートシリカ粒子の製造過程で、シリカ粒子の被覆に使用されるセリアの量をシリカに対する質量比(シリカ/セリア)で表わすと、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.67以上、更に好ましくは0.8以上であり、そして、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下である。セリアの被覆量を多くすると酸化珪素膜の研磨速度を大きくすることができ、セリアの被覆量を少なくすると、シリカ粒子上に被覆できずに遊離状態となったセリアの凝集体の生成を抑制して研磨傷の発生を抑制できる。尚、この被覆量については、被覆する粒状セリアの粒子径の関係で変動はあるものの、おおむね記載した質量比で被覆すると、良好な研磨特性を得ることができる。また、「シリカ粒子の被覆に使用されるセリアの量」とは、セリアの供給源の使用量から換算されるセリアの質量を意味する。
【0041】
セリアコートシリカ粒子の製造方法としては、シリカ粒子にセリアを沈着させることで行うことができる。例えば、硝酸セリウムを溶解させた水溶液をシリカ粒子の分散液に滴下してシリカ粒子上にセリアを沈着させる方法や、硝酸アンモニウムセリウムの熱加水分解による方法やアルコキシドを用いた方法等、シリカ粒子上に水酸化セリウム又は酸化セリウムを生成できる方法であれば、従来から公知のいずれの方法でもよい。シリカ粒子上に水酸化セリウムを生成する場合は、水熱処理や焼成により水酸化セリウムを酸化セリウムにすればよい。これらの方法で生成されたセリアコートシリカ粒子は、焼成によって相互にくっついた粒子同士が分離するようにほぐされてから用いてもよい。
【0042】
本発明の研磨液組成物中の前記セリアコートシリカ粒子(成分B)の含有量は、前記水溶性高分子(成分A)とセリアコートシリカ粒子(成分B)と前記水系媒体(成分C)の質量の合計を100質量%とすると、研磨選択性向上、及び高い生産性の担保に必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上、更により好ましくは0.5質量%以上であり、そして、同様の観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以下である。
【0043】
本発明の研磨液組成物中の水溶性高分子(成分A)と前記セリアコートシリカ粒子(成分B)の質量比(水溶性高分子の質量/セリアコートシリカ粒子の質量)は、研磨選択性向上及び研磨傷の低減の観点から、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、そして、高い生産性の担保に必要な酸化珪素膜の研磨速度を確保する観点から、好ましくは25以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは1以下である。
【0044】
[水系媒体:成分C]
本発明の研磨液組成物は、水系媒体を含有する。水系媒体としては、水、及び水と水に可溶な溶媒との混合物が挙げられる。前記水に可溶な溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールが挙げられ、研磨工程での安全性の観点からエタノールが好ましい。また、前記水系媒体としては、半導体基板の品質向上の観点からイオン交換水、蒸留水、超純水等の水からなるとより好ましい。
【0045】
本発明の研磨液組成物中の水系媒体(成分C)の含有量は、水溶性高分子(成分A)とセリアコートシリカ粒子(成分B)と水系媒体(成分C)の質量の合計を100質量%とすると、共重合体(成分A)とセリアコートシリカ粒子(成分B)とを除いた残余であればよい。
【0046】
[その他の成分]
本発明の研磨液組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、pH調整剤、成分A以外の研磨助剤、研磨粒子として成分B以外の無機粒子等を含有してもよい。これらの任意成分の含有量は、酸化珪素膜の研磨速度確保の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.0025質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上であり、そして、研磨選択性の向上の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下である。本発明の研磨液組成物は、研磨後の基板表面の濡れ性向上の観点から、フッ素化合物を含まない方が好ましい。
【0047】
本発明の研磨液組成物は、本発明の効果が損なわれない範囲で、そのpHを調整して用いることができる。低く調整する場合に用いられる前記pH調整剤としては、酸性化合物であれば特に限定されないが、例えば、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、及びリンゴ酸等の有機酸が挙げられる。なかでも、汎用性の観点から、塩酸、硝酸及び酢酸が好ましく、塩酸及び酢酸がより好ましい。
【0048】
研磨液組成物のpHを高く調整する場合に用いられるpH調整剤としては、アルカリ性化合物であれば特に限定されないが、例えば、アンモニア、及び水酸化カリウム等の無機アルカリ化合物、アルキルアミン、及びアルカノールアミン等の有機アルカリ化合物が挙げられる。なかでも、半導体基板の品質向上の観点から、アンモニア及びアルキルアミンが好ましく、アンモニアがより好ましい。
【0049】
成分A以外の研磨助剤としては、セリアコートシリカ粒子の分散性向上の観点から、アニオン性化合物及びノニオン性化合物が好ましく、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤等がより好ましい。アニオン性界面活性剤としては、ポリアクリル酸等のアニオン性ポリマー、アルキルエーテル酢酸塩、アルキルエーテルリン酸塩、及びアルキルエーテル硫酸塩が挙げられる。ノニオン性界面活性剤としては、ポリアクリルアミド等のノニオン性ポリマー、及びポリオキシアルキレンアルキルエーテルが挙げられる。
【0050】
成分B以外の無機粒子としては、好ましくはシリカ粒子、セリア粒子、より好ましくはシリカ粒子である。本発明の研磨液組成物における成分B 100質量部に対する成分B以外の無機粒子の量は、研磨速度及び研磨選択性の観点から、好ましくは10質量部以下、より好ましくは1質量部以下、更に好ましくは0質量部である。
【0051】
[研磨液組成物]
本発明の研磨液組成物は、PEG鎖を含む水溶性高分子(成分A)、セリアコートシリカ粒子(成分B)及び水系媒体(成分C)を含有する。本発明の研磨液組成物は、例えば、前記水溶性高分子(成分A)、前記水系媒体(成分C)、及び前記セリアコートシリカ粒子(成分B)の水分散液を混合する工程を含む製造方法によって製造できる。好ましくは、研磨助剤としてのPEG鎖を含む水溶性高分子を水系媒体に溶解して得られる研磨助剤水溶液と、セリアコートシリカ粒子を水系媒体に分散して得られるセリアコートシリカ粒子分散液とを用意し、研磨助剤水溶液を攪拌しながら、前記セリアコートシリカ粒子分散液と、必要に応じて前記pH調整剤等のその他の成分を、研磨助剤水溶液に添加(滴下)して研磨液組成物を得ることができる。
【0052】
セリアコートシリカ粒子の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。セリアコートシリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去すると好ましい。セリアコートシリカ粒子の水系媒体への分散は、前記PEG鎖を含む水溶性高分子の存在下で行うと好ましい。
【0053】
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、研磨装置の保護、酸化珪素膜の研磨速度向上、研磨選択性向上、及びセリアコートシリカ粒子の分散性向上の観点から、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、更により好ましくは5.5以上であり、そして、研磨条件の制御容易性の向上、研磨選択性の向上、ポリシリコン膜の研磨抑制及びセリアコートシリカ粒子の分散性向上の観点から、好ましくは9以下、より好ましくは8.5以下、更に好ましくは7.5以下、更により好ましくは6.5以下である。尚、pHの測定条件の詳細は実施例に示す通りである。
【0054】
本願の研磨液組成物の実施形態は、全ての成分が予め混合された状態で市場に供給される、いわゆる1液型に限定されず、使用時混合されるいわゆる2液型であってもよい。2液型の研磨液組成物では、上記水系媒体が、第1水系媒体と第2水系媒体とに分かれており、研磨液組成物は、例えば、セリアコートシリカ粒子とPEG鎖を含む水溶性高分子の一部を第1水系媒体に分散して得られるセリアコートシリカ粒子分散液と、残余のPEG鎖を含む水溶性高分子を第2水系媒体に溶解して得られる研磨助剤水溶液とから構成してもよい。
【0055】
セリアコートシリカ粒子分散液と研磨助剤水溶液の混合は、研磨対象の表面への供給前に行われてもよいし、これらは別々に供給されて被研磨基板の表面上で混合されてもよい。
【0056】
尚、上記において説明した各成分の含有量は、研磨工程での使用時における含有量であるが、本実施形態の研磨液組成物は、その安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存および供給されてもよい。この場合、製造・輸送コストを低くできる点で好ましい。そしてこの濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して研磨工程で使用することができる。希釈割合としては5〜100倍が好ましい。
【0057】
[半導体基板の製造方法及び半導体基板の研磨方法]
本発明の研磨液組成物は、半導体基板の素子分離構造を形成する工程で行われる研磨に好適に使用できる。本発明の半導体基板の製造方法の具体例としては、まず、シリコン基板を酸化炉内で酸素に晒すことよりその表面に二酸化シリコン層を成長させ、次いで、当該二酸化シリコン層上にポリシリコン膜(研磨停止膜)を、例えばCVD法(化学気相成長法)にて形成する。次に、シリコン基板と前記シリコン基板の一方の主面側に配置された研磨停止膜とを含む基板、例えば、シリコン基板の二酸化シリコン層上にポリシリコン膜が形成された基板に、フォトリソグラフィー技術を用いてトレンチを形成する。次いで、例えば、シランガスと酸素ガスを用いたCVD法により、トレンチ埋め込み用の酸化珪素(SiO
2)膜を形成し、ポリシリコン膜が酸化珪素膜で覆われた被研磨基板を得る。酸化珪素膜の形成により、前記トレンチは酸化珪素膜の酸化珪素で満たされ、研磨停止膜のシリコン基板側の面の反対面は酸化珪素膜によって被覆される。
【0058】
このようにして形成された酸化珪素膜のシリコン基板側の面の反対面は、下層の凸凹に対応して形成された段差を有する。次いで、CMP法により、酸化珪素膜を、少なくとも研磨停止膜(ポリシリコン膜)のシリコン基板側の面の反対面が露出するまで研磨し、より好ましくは、酸化珪素膜の表面と研磨停止膜の表面とが面一になるまで酸化珪素膜を研磨する。本発明の研磨液組成物は、このCMP法による研磨を行う工程に用いられる。CMP法による研磨では、被研磨基板の表面と研磨パッドとを接触させた状態で、研磨液組成物をこれらの接触部位に供給しつつ被研磨基板及び研磨パッドを相対的に移動させることにより、被研磨基板の表面の凹凸部分を平坦化させる。尚、本発明の半導体基板の製造方法及び半導体基板の研磨方法において、シリコン基板の二酸化シリコン層と研磨停止膜(ポリシリコン膜)の間に他の絶縁膜が形成されていてもよい。
【0059】
研磨パッドの回転数は、研磨液組成物が1液型、2液型のいずれであっても、30r/min以上200r/min以下が好ましく、45r/min以上150r/min以下がより好ましく、60r/min以上100r/min以下が更に好ましい。被研磨基板の回転数は、130r/min以上200r/min以下が好ましく、45r/min以上150r/min以下がより好ましく、60r/min以上100r/min以下が更に好ましい。
【0060】
研磨パッドを備えた研磨装置に設定される研磨荷重は、研磨液組成物が1液型、2液型のいずれであっても、荷重が大きすぎることに起因して生じる平坦化への悪影響および傷の発生を抑制する観点から、500g重/cm
2以下が好ましく、400g重/cm
2以下がより好ましく、350g重/cm
2以下が更に好ましい。一方、研磨時間の短縮化の観点から、20g重/cm
2以上が好ましく、50g重/cm
2以上がより好ましく、100g重/cm
2以上が更に好ましい。
【0061】
研磨液組成物の供給速度は、研磨の効率性の観点から、500mL/min以下が好ましく、400mL/min以下がより好ましく、300mL/min以下が更に好ましい。一方、研磨液組成物の供給速度は、酸化珪素膜の研磨速度向上の観点から、10mL/min以上が好ましく、30mL/min以上がより好ましい。
【0062】
本開示の半導体基板の製造方法及び被研磨基板の研磨方法において、酸化珪素膜とポリシリコン膜の研磨速度比(酸化珪素膜の研磨速度/ポリシリコン膜の研磨速度)は大きいほど好ましいが、好ましくは50以上、より好ましくは52以上、更に好ましくは54以上、更により好ましくは55以上である。
【0063】
本開示はさらに以下の一又は複数の実施形態に関する。
【0064】
<1> ポリシリコン膜上の酸化珪素膜を研磨する酸化珪素膜研磨用研磨液組成物であって、下記成分A〜Cを含む、酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
成分A:PEG鎖を含む水溶性高分子
成分B:シリカ粒子の表面の少なくとも一部が粒状セリアで被覆されたセリアコートシリカ粒子
成分C:水系媒体
<2> 前記成分Aが含むポリエチレングリコール鎖の重量平均分子量が、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、好ましくは200000以下、より好ましくは180000以下、更に好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下である、前記<1>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<3> 前記PEG鎖におけるエチレンオキサイド基の平均付加モル数は、好ましくは5以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは13以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは45以上、更に好ましくは65以上、更に好ましくは90以上であり、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である、前記<2>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<4> 前記水溶性高分子が主鎖にPEG鎖を含む高分子であり、前記PEG鎖の重量平均分子量が、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、好ましくは200000以下、より好ましくは180000以下、更に好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下である、前記<1>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<5> 前記PEG鎖におけるエチレンオキサイド基の平均付加モル数は、好ましくは5以上、より好ましくは13以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは45以上、更に好ましくは65以上、更により好ましくは90以上であり、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である、前記<4>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<6> 前記水溶性高分子が側鎖にPEG鎖を含む高分子であり、前記PEG鎖の重量平均分子量が、好ましくは200以上、より好ましくは400以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは4000以上であり、好ましくは10000以下、より好ましくは6500以下、更に好ましくは5500以下である、前記<1>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<7> 前記PEG鎖におけるエチレンオキサイド基の平均付加モル数は、好ましくは4以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは20以上、更に好ましくは45以上、更に好ましくは65以上、更により好ましくは90以上であり、好ましくは250以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは150以下である、前記<6>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<8> 前記水溶性高分子は、好ましくはアニオン性基を有し、より好ましくはカルボン酸基、硫酸基、及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有し、更に好ましくはカルボン酸基、及びリン酸基から選ばれる少なくとも1種のアニオン性基を有し、更により好ましくはカルボン酸基を有する、前記<1>〜<7>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<9> 前記成分Aが、好ましくはポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの単独重合体、(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子であり、より好ましくはポリエチレングリコール、モノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートの単独重合体、(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アニオン基を有する(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキル(メタ)アクリレートと(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子であり、更により好ましくは(メタ)アクリル酸とモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、リン酸基を有する(メタ)アクリレートとモノメトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートとの共重合体、これらのアルカリ金属塩、及びこれらのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子であり、更により好ましくは、メタクリル酸/モノメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、そのアルカリ金属塩、及びそのアンモニウム塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性高分子である、前記<1>〜<8>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<10>前記(メタ)アクリレートは、好ましくは(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、より好ましくは8〜16);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸2―メトキシエチル、(メタ)アククリル酸2―エトキシエチル;リン酸モノ‐(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸,及びリン酸モノ‐(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜18、より好ましくは1〜16)等のリン酸基を有する(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種である、前記<9>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<11>前記水溶性高分子(成分A)が、(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリレートから選ばれる1種以上のモノマーAとポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールのエステルから選ばれる1種以上のモノマーBとの共重合体である場合、共重合体1分子中に含まれるモノマーAに由来の構成単位とモノマーBに由来の構成単位のモル比(モノマーAに由来の構成単位/モノマーBに由来の構成単位)は、好ましくは(5/95)以上、より好ましくは(25/75)以上、更に好ましくは(40/60)以上、更により好ましくは(55/45)以上であり、好ましくは(99/1)以下、より好ましくは(95/5)以下、更に好ましくは(90/10)以下、更により好ましくは(85/15)以下である、前記<1>〜<10>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<12> 前記水溶性高分子(成分A)の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更に好ましくは4000以上であり、好ましくは300000以下、より好ましくは270000以下、更により好ましくは150000以下、更に好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下である、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<13> 前記水溶性高分子(成分A)の重量平均分子量(Mw)は、主鎖にPEG鎖を含む高分子では、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは600以上、更に好ましくは1000以上、更に好ましくは2000以上、更に好ましくは3000以上、更により好ましくは4000以上であり、好ましくは200000以下、より好ましくは180000以下、更に好ましくは150000以下、更により好ましくは130000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは25000以下、更に好ましくは18000以下、更に好ましくは10000以下、更に好ましくは6500以下であり、側鎖にPEG鎖を含む高分子では、好ましくは10000以上、より好ましくは12000以上、更に好ましくは15000以上、更により好ましくは16000以上、更に好ましくは45000以上であり、好ましくは300000以下、より好ましくは290000以下、更に好ましくは280000以下、更に好ましくは270000以下、更に好ましくは90000以下、更に好ましくは70000以下である、前記<1>〜<11>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<14> 前記水溶性高分子(成分A)の含有量は、前記水溶性高分子(成分A)と前記セリアコートシリカ粒子(成分B)と前記水系媒体(成分C)の質量の合計を100質量%とすると、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上、更により好ましくは0.25質量%以上であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは1.0質量%以下、更により好ましくは0.75質量%以下である、前記<1>〜<13>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<15> 前記成分Bが、透過型電子顕微観察により測定される平均一次粒子径が好ましくは15nm以上300nm以下のシリカ粒子が、透過型電子顕微観察により測定される平均一次粒子径が好ましくは5nm以上40nm以下の粒状セリアで被覆され、且つセリアとシリカの質量比(シリカ/セリア)が好ましくは0.5以上4.0以下のセリアコートシリカ粒子である、前記<1>〜<14>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<16> 前記粒状セリアの前記平均一次粒子径が、より好ましくは7.5nm以上、更に好ましくは10nm以上であり、より好ましくは30nm以下、更に好ましくは25nm以下である、前記<15>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<17> 前記シリカ粒子の前記平均一次粒子径は、より好ましくは20nm以上、更に好ましくは40nm以上であり、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは150nm以下である、前記<15>又は<16>に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<18> 前記質量比(シリカ/セリア)が、より好ましくは0.67以上、更に好ましくは0.8以上であり、より好ましくは3.0以下、更に好ましくは2.5以下である、前記<15>〜<17>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<19> 動的光散乱法により測定される前記セリアコートシリカ粒子の平均二次粒子径は、好ましくは100nm以上、より好ましくは150nm以上であり、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下である、前記<1>〜<18>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<20> 前記セリアコートシリカ粒子のpH6におけるζ電位が、好ましくは0mV未満、より好ましくは−25mV以下、更に好ましくは−40mV以下であり、好ましくは−60mV以上である、前記<1>〜<19>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<21> 前記セリアコートシリカ粒子のpH4におけるζ電位が、好ましくは0mV未満、より好ましくは−25mV以下、更に好ましくは−28mV以下であり、好ましくは−60mV以上である、前記<1>〜<20>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<22> 前記セリアコートシリカ粒子のpH8におけるζ電位が、好ましくは0mV未満、より好ましくは−25mV以下、更に好ましくは−40mV以下であり、好ましくは−60mV以上である、前記<1>〜<21>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<23> 前記セリアコートシリカ粒子(成分B)の含有量は、前記水溶性高分子(成分A)とセリアコートシリカ粒子(成分B)と前記水系媒体(成分C)の質量の合計を100質量%とすると、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、更に好ましくは0.25質量%以上、更により好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、更により好ましくは1.5質量%以下である、前記<1>〜<22>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<24>前記水溶性高分子(成分A)と前記セリアコートシリカ粒子(成分B)の質量比(水溶性高分子の質量/セリアコートシリカ粒子の質量)は、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上であり、好ましくは25以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは1以下である、前記<1>〜<23>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<25>前記酸化珪素膜研磨用研磨液組成物の25℃におけるpHは、好ましくは3以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは5以上、更により好ましくは5.5以上であり、好ましくは9以下、より好ましくは8.5以下、更に好ましくは7.5以下、更により好ましくは6.5以下である、前記<1>〜<24>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<26> 酸化珪素膜とポリシリコン膜の研磨速度比(酸化珪素膜の研磨速度/ポリシリコン膜の研磨速度)が、好ましくは50以上、より好ましくは52以上、更に好ましくは54以上、更により好ましくは55以上である、前記<1>〜<25>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<27> 前記酸化珪素膜研磨用研磨液組成物は、使用時混合されるいわゆる2液型であり、上記水系媒体(成分C)が、第1水系媒体と第2水系媒体とに分かれており、前記酸化珪素膜研磨用研磨液組成物は、前記セリアコートシリカ粒子とPEG鎖を含む水溶性高分子の一部を第1水系媒体に分散して得られるセリアコートシリカ粒子分散液と、残余のPEG鎖を含む水溶性高分子を第2水系媒体に溶解して得られる研磨助剤水溶液とから構成されている、前記<1>〜<26>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物。
<28> 酸化珪素膜と前記酸化珪素膜の下に前記酸化珪素膜に接して配置されたポリシリコン膜を有する被研磨基板の、前記酸化珪素膜を、研磨液組成物を用いて前記ポリシリコン膜上の前記酸化珪素膜が除去されるまで研磨する工程を含み、前記研磨液組成物として、前記<1>〜<27>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物を用いる、半導体基板の製造方法。
<29> 酸化珪素膜と前記酸化珪素膜の下に前記酸化珪素膜に接して配置されたポリシリコン膜を有する被研磨基板の、前記酸化珪素膜を、研磨液組成物を用いて前記ポリシリコン膜上の前記酸化珪素膜が除去されるまで研磨する工程を含み、前記研磨液組成物として、前記<1>〜<27>のいずれかの項に記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物を用いる、半導体基板の研磨方法。
<30> ポリシリコン膜上の酸化珪素膜を研磨するための、<1>〜<27>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物の使用。
<31> 半導体基板の製造工程において、酸化珪素膜と前記酸化珪素膜の下に前記酸化珪素膜に接して配置されたポリシリコン膜とを有する被研磨基板の、前記ポリシリコン膜上の前記酸化珪素膜が除去されるまで、前記酸化珪素膜を研磨するための、<1>〜<27>のいずれかに記載の酸化珪素膜研磨用研磨液組成物の使用。
【実施例】
【0065】
1.研磨液組成物の調製
〔研磨液組成物の調製例1〕
水溶性高分子(成分A)としてポリエチレングリコールと、イオン交換水とを均一に混合し、研磨助剤水溶液を得た。前記研磨助剤水溶液を攪拌しながら、当該水溶液中に、セリアコートシリカ粒子分散液(分散媒:イオン交換水)と、pH調整剤としての1N塩酸水溶液を加え、更にイオン交換水を加えて濃度調整を行い、
参考例1の研磨液組成物を得た。各成分の質量比は、表1に記載した研磨液組成物の組成及びpHとなるように、調整した。尚、表2〜4に記載の水溶性高分子と研磨粒子の各含有量は、水溶性高分子と研磨粒子と水系媒体(イオン交換水)の質量の合計を100質量%とした場合の値である。
【0066】
〔研磨液組成物の調製例2〕
表2〜4に記載した研磨液組成物の組成及びpHとなるように、各成分の量を調整した他は、〔研磨液組成物の調製例1〕と同様の方法で、
参考例2〜
19、実施例20〜31及び比較例1〜6の研磨液組成物を得た。pH調整剤としては、pHを低く調整する場合は1mol/L塩酸を用い、pHを高く調整する場合は1質量%アンモニア水を用いた。
【0067】
[セリアコートシリカ粒子の製造方法]
<セリアコートシリカ粒子の製造方法1>
参考例1〜7、
参考例14〜
19、実施例20〜24、27〜31、比較例6の研磨液組成物の調製に用いたセリアコートシリカ粒子の製造方法は下記の通りである。まず、平均一次粒子径が80nmの球状シリカ粒子(日揮触媒化成工業製、カタロイドSI−80PW)の20質量%水分散液を調製し、当該球状シリカ水分散液に、CeO
2原料として硝酸セリウムを溶解させた水溶液を滴下し、同時に3質量%のアンモニア水溶液を別途滴下して、pHを約8に維持しながらセリウムを球状シリカ粒子上に沈着させた。この滴下の間、球状シリカ水分散液は50℃に維持するために加温した。滴下終了後、反応液を100℃に4時間の加熱することにより熟成して、沈着させたセリアを結晶化させた。その後、得られた粒子を濾別、水での洗浄を十分に実施したのち、乾燥機にて100℃で乾燥させた。この状態で得られた乾燥粉を研磨液組成物の調製に使用してもよいが、ここでは更に乾燥粉について1000℃で2時間焼成を行った後、焼成によって相互にくっついた粒子同士を分離するために得られた焼成粉末をほぐして平均一次粒子径が110nmのセリアコートシリカ粒子B1を得た。当該セリアコートシリカ粒子B1をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、シリカ粒子表面が粒状セリアで被覆されていた。
【0068】
<セリアコートシリカ粒子の製造方法2>
参考例8、9の研磨液組成物の調製に用いたセリアコートシリカ粒子の製造方法は下記の通りである。
CeO
2原料として使用する硝酸セリウム量を<セリアコートシリカ粒子の製造方法1>の場合の1/3量としたこと以外は、<セリアコートシリカ粒子の製造方法1>と同様の方法にて平均一次粒子径が110nmのセリアコートシリカ粒子B2を得た。当該セリアコートシリカ粒子B2をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、シリカ粒子表面が粒状セリアで被覆されていた。
【0069】
<セリアコートシリカ粒子の製造方法3>
参考例10、11、
実施例25の研磨液組成物の調製に用いたセリアコートシリカ粒子の製造方法は下記の通りである。平均一次粒子径が80nmの球状シリカ粒子(日揮触媒化成工業製、カタロイドSI−80PW)の20質量%水分散液に代えて、平均一次粒子径が45nmの球状シリカ粒子(日揮触媒化成工業製、カタロイドSI−45P)の20質量%水分散液を用いたこと以外は、<セリアコートシリカ粒子の製造方法1>と同様の方法にて平均一次粒子径が65nmのセリアコートシリカ粒子B3を得た。当該セリアコートシリカ粒子B3をTEM(透過型電子顕微鏡)にて観察したところ、シリカ粒子表面が粒状セリアで被覆されていた。
【0070】
<セリアコートシリカ粒子の製造方法4>
参考例12、13、
実施例26の研磨液組成物の調製に用いたセリアコートシリカ粒子の製造方法は下記の通りである。平均一次粒子径が80nmの球状シリカ粒子(日揮触媒化成工業製、カタロイドSI−80PW)の20質量%水分散液に代えて、平均一次粒子径が120nmの球状シリカ粒子(日揮触媒化成工業製、カタロイドSI−120P)の20質量%水分散液を用いたこと以外は、<セリアコートシリカ粒子の製造方法1>と同様の方法にて平均一次粒子径が160nmのセリアコートシリカ粒子B4を得た。
【0071】
前記セリアコートシリカ粒子の製造方法1〜4では、仕込んだセリア源が全て沈殿する条件でセリアコートシリカ粒子の製造を行った。そのため、仕込みの質量比(シリカ/セリカ)と、セリアコートシリカ粒子の溶解物中のシリカ分とセリア分の質量から算出される質量比(シリカ/セリア)とは、ほぼ一致していると推察される。
【0072】
比較例1〜5の研磨液組成物の調製では、セリア粒子分散液として、昭和電工製「GPL−C1010」(セリア粒子濃度10質量%)を用いた。前記分散液に含まれるセリア粒子をセリア粒子B51とした。
【0073】
セリアコートシリカ粒子B1〜B4及びセリア粒子B51のゼータ電位を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
[モノメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)]
後述の[水溶性高分子の合成方法又はその詳細]において、PEGMA(EO平均付加モル数120)は、特許第3874917号に記載の方法に準じて、エステル化反応により合成し、未反応物として残留するメタクリル酸を留去により、1重量%未満にしたものを用いた。尚、EO平均付加モル数9及び23のPEGMAについては、市販品(共栄社化学製)を用いた。
【0076】
[水溶性高分子の合成方法又はその詳細]
<水溶性高分子(1)〜(6)の詳細>
重量平均分子量300、600、2000、6000、20000、又は100000のポリエチレングリコール(1)〜(6)として、市販品(和光純薬工業製)を用いた。
【0077】
<水溶性高分子(7)と(8)の合成方法>
水溶性高分子(7)及び水溶性高分子(8)は、各々、特開2012-167053号公報の記載を参考にして合成した。重量平均分子量の調整は、重合開始剤の濃度を調整することで実施した。
【0078】
<水溶性高分子(9)の合成方法>
温度計、攪拌機、滴下装置、窒素導入菅、及び冷却菅を備えた反応器に、蒸留水281.4gを仕込み、蒸留水を撹拌しながら反応器内を窒素置換をし、窒素雰囲気中で蒸留水を80℃に昇温した。続いて、PEGMA(EO平均付加モル数120) 336.5gとメタクリル酸22.2gと2 -メルカプトエタノール1.89gを水238.2gに溶解したものと、過硫酸アンモニウム3.68gを水45gに溶解したものの二者をそれぞれ1.5時間かけて前記反応器内に滴下した。引き続き、過硫酸アンモニウム1.47gを水1 5gに溶解したものを30分かけて前記反応器内に滴下し、その後1時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に48%水酸化ナトリウム18.7gで中和して、重量平均分子量56000のメタクリル酸(MAA)/モノメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(PEGMA)(モル比:80/20)共重合体を得た。その後、水にて調整して、固形分濃度10質量%のポリマー溶液を得た。
【0079】
<水溶性高分子(10)の合成方法>
各モノマーの使用量を、PEGMA(EO平均付加モル数120) 3588.3g、メタクリル酸17.2gとしたこと以外は、<水溶性高分子(9)の合成方法>と同様にして、MAA/PEGMA共重合体(重量平均分子量62000、モル比65/35)を得、同様に水にて調整して、固形分濃度10質量%のポリマー溶液を得た。
【0080】
<水溶性高分子(11)の合成方法>
各モノマーの使用量を、PEGMA(EO平均付加モル数120) 165.8g、メタクリル酸24.0gとしたこと以外は、<水溶性高分子(9)の合成方法>と同様にして、MAA/PEGMA共重合体(重量平均分子量46000、モル比90/10)を得、同様に水にて調整して、固形分濃度10質量%のポリマー溶液を得た。
【0081】
<水溶性高分子(12)の合成方法>
各モノマーの使用量を、PEGMA(EO平均付加モル数23) 117.2gとメタクリル酸17.2gとしたこと以外は、[水溶性高分子(9)の合成方法]と同様にして、MAA/PEGMA共重合体(重量平均分子量40000、モル比65/35)を得、同様に水にて調整して、固形分濃度10質量%のポリマー溶液を得た。
【0082】
<水溶性高分子(13)の合成方法>
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に、PEGMA(EO平均付加モル数120)157.4g及びラウリルメタクリレート0.39gを仕込み、これにアゾビスイソブチロニトリル0.075gを加え、重合溶媒としての酢酸エチル180.0g中で80℃、20時間の条件で重合反応を行った。重合反応終了後、得られた反応液をメタノールに滴下し沈殿させ、生成物を単離した。生成物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、これをメタノールに滴下し、生成物を単離するという操作を更に二回行い、生成物を精製した。得られた精製物を一昼夜60℃にて減圧乾燥してポリマー(重量平均分子量76000、モル比5/95)を得た。このポリマーを水に溶解させて、固形分濃度2質量%のポリマー溶液を調製した。
【0083】
<水溶性高分子(14)の合成方法>
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水366gを仕込み、水を撹拌しながら容器内を窒素置換し、窒素雰囲気中で水を80℃まで昇温した。PEGMA(EO平均付加モル数23)270gとメタクリル酸2−ヒドロキシエチル32.5gと3−メルカプトプロピオン酸4.5gを混合したものと過硫酸アンモニウム8.4gを水48gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて、前記反応容器内に滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.8gを水10gに溶解したものを、前記反応容器内に30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32質量%水酸化ナトリウム水溶液44.4gで中和し、重量平均分子量(Mw)が58000、モル比50/50のポリマーを得、水にて調整して、固形分濃度10質量%のポリマー溶液を得た。
【0084】
<水溶性高分子(15)の合成方法>
撹拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水366gを仕込み、水を撹拌しながら容器内を窒素置換をし、窒素雰囲気中で水を80℃まで昇温した。PEGMA(EO平均付加モル数23)270gとリン酸モノ−(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル52.4gと3−メルカプトプロピオン酸4.5gを混合したものと過硫酸アンモニウム8.4gを水48gに溶解したものの2者を、それぞれ1.5時間かけて、前記反応容器内に滴下した。1時間の熟成後、過硫酸アンモニウム1.8gを水10gに溶解したものを、前記反応容器内に30分かけて滴下し、その後1.5時間同温度(80℃)で熟成した。熟成終了後に32質量%水酸化ナトリウム水溶液44.4gで中和し、重量平均分子量(Mw)が64000、モル比50/50のポリマーを得、水にて調整して、固形分濃度10質量%のポリマー溶液を得た。
【0085】
<水溶性高分子(16)>
水溶性高分子(16)として、ポリビニルアルコールとポリエチレングリコールの共重合体(商品名コリコート、BASF社製)を用いた。
【0086】
<水溶性高分子(17)>
各モノマーの使用量を、PEGMA(EO平均付加モル数9) 30.2gとメタクリル酸22.2gとしたこと以外は、[水溶性高分子(9)の合成方法]と同様にして、MAA/PEGMA共重合体(重量平均分子量40000、モル比80/20)を得、同様に水にて調整して、固形分濃度10質量%のポリマー溶液を得た。
【0087】
2.各種測定方法
(a)研磨液組成物のpH測定
研磨液組成物の25℃におけるpH値は、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定した値であり、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0088】
(b−1)動的光散乱法(DLS)により測定される研磨粒子の平均二次粒子径
研磨粒子の平均二次粒子径は、固形分濃度が0.1質量%の研磨粒子スラリーを準備し、これをマルバーン社製、ゼータサイザーナノZS(動的光散乱法)にて測定し、得られた体積平均粒子径を前記平均二次粒子径とし、表2〜4においてDLS粒径として示した。
【0089】
(b−2)シリカ粒子の平均一次粒子径
セリアコート前後のシリカ粒子の平均一次粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)より得られる画像を用い、シリカ粒子50個の大きさを計測しこれらを平均して得、表2〜4に示した。シリカ粒子の平均一次粒子径は、セリアコート前後で変動はなかった。
【0090】
(b−3)粒状セリアの平均一次粒子径
シリカ粒子上の粒状セリアの平均一次粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)より得られる画像を用い、シリカ粒子上の粒状セリア100個の粒子径を計測し、これらを平均して得、表2〜4に示した。別法として、セリアコートシリカ粒子の粉体を粉末X線回折測定にかけ、29〜30°付近に出現するセリアの(1,1,1)面のピークの半値幅、回折角度を用い、シェラー式より得られる結晶子径を平均一次粒子径としてもよい。
シェラー式:結晶子径(Å)=K×λ/(β×cosθ)
K:シェラー定数、λ:X線の波長=1.54056Å、β:半値幅、θ:回折角2θ/θ
【0091】
(b−4)研磨粒子の平均一次粒子径
研磨粒子の平均一次粒子径は、TEM(透過型電子顕微鏡)より得られる画像を用い、研磨粒子50個の大きさを計測しこれらを平均して得た。
参考例1〜
19、実施例20〜31及び比較例6の研磨液組成物の調製に用いたセリアコートシリカ粒子B1〜B4の平均一次粒子径は、上記のとおりであり、比較例1〜5の研磨液組成物の調製に用いたセリア粒子B51の平均一次粒子径は、120nmであった。
【0092】
(b−5)研磨粒子のζ電位
研磨粒子を1質量%含有するイオン交換水懸濁液を100g調製し、10分間超音波処理して分散液を得た。前記分散液1gと、イオン交換水40g以上と、pH調整剤として塩酸水溶液及びアンモニア水とを混合し、研磨粒子濃度が0.02質量%であって、pHがそれぞれ4.0、6.0、8.0の測定試料を得た。得られた測定試料を用い、マルバーン社製「ゼータサイザーナノZS型」により、ζ電位を測定した。
【0093】
(c)ポリマーの重量平均分子量の測定方法
実施例
、参考例及び比較例の研磨液組成物の調製に用いた水溶性高分子(1)〜(17)の重量平均分子量及びPEG鎖の重量平均分子量の測定方法は下記の通りである。
水溶性高分子(1)〜(17)の重量平均分子量及びPEG鎖の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって下記条件で測定した。
[GPC条件]
検出器:ショーデックスRI SE−61示差屈折率検出器
カラム:東ソー株式会社製のG4000PWXLとG2500PWXLを直列につないだものを使用した。
溶離液:0.2Mリン酸緩衝液/アセトニトリル=90/10(容量比)で0.5g/100mLの濃度に調整し、20μLを用いた。
カラム温度:40℃
流速:1.0mL/min
標準ポリマー:分子量が既知の単分散ポリエチレングリコール
【0094】
3.研磨液組成物の評価
[試験片の作成]
シリコンウェーハの片面に、TEOS−プラズマCVD法で厚さ2000nmの酸化珪素膜(酸化膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、酸化膜試験片を得た。同様に、シリコンウェーハの片面に、まず熱酸化膜を100nm形成させたのち、CVD法で厚さ500nmのポリシリコン膜(Poly-Si膜)を形成したものから、40mm×40mmの正方形片を切り出し、ポリシリコン膜試験片を得た。
【0095】
[酸化膜の研磨速度の測定]
研磨装置として、定盤径300mmのムサシノ電子社製「MA−300」を用いた。また、研磨パッドとしては、ニッタ・ハース社製の硬質ウレタンパッド「IC−1000/Sub400」を用いた。前記研磨装置の定盤に、前記研磨パッドを貼り付けた。前記試験片を直径120mmの装置のホルダーにセットし、試験片の酸化珪素膜を形成した面が下になるように(酸化膜が研磨パッドに面するように)ホルダーを研磨パッドに載せた。さらに、試験片にかかる荷重が300g重/cm
2となるように、錘をホルダーに載せた。研磨パッドを貼り付けた定盤の中心に、研磨液組成物を50mL/minの速度で滴下しながら、定盤及びホルダーのそれぞれを同じ回転方向に90r/minで2分間回転させて、酸化膜試験片の研磨を行った。研磨後、超純水を用いて洗浄し、乾燥して、酸化膜試験片を後述の光干渉式膜厚測定装置による測定対象とした。
【0096】
研磨前及び研磨後において、光干渉式膜厚測定装置(大日本スクリーン社製「ラムダエースVM−1000」)を用いて、酸化膜の膜厚を測定した。酸化膜の研磨速度は下記式により算出した。酸化膜(SiO
2)の研磨速度を下記表2〜4に示す。
酸化膜(SiO
2)の研磨速度(nm/min)
=[研磨前の酸化膜厚さ(nm)−研磨後の酸化膜厚さ(nm)]/研磨時間(min)
【0097】
[ポリシリコン膜の研磨速度の測定]
試験片として酸化膜試験片の代わりにポリシリコン膜試験片を用いること以外は、前記[酸化膜の研磨速度の測定]と同様に、ポリシリコン膜の研磨、膜厚の測定及び研磨速度の算出を行った。ポリシリコン膜(Poly−Si)の研磨速度を下記表2〜4に示す。
【0098】
[研磨速度比]
酸化珪素膜の研磨速度に対するポリシリコン膜の研磨速度の比(SiO
2/Poly−Si)を研磨速度比とし、下記式により算出した。研磨速度比の値が大きいほど、研磨選択性が良好であるため、段差解消に対する能力が高い。結果を下記表2〜4に示す。
研磨速度比(SiO
2/Poly−Si)
=酸化珪素膜の研磨速度(nm/min)/ポリシリコン膜の研磨速度(nm/min)
【0099】
[研磨傷(スクラッチ数)の測定方法]
測定機器:光学顕微鏡(ビジョンテック社製、VMX-3100)
評価:研磨後、洗浄及び乾燥した、ポリシリコン膜試験片を平坦基板に貼り付け、光源を照射後、暗視野条件で観察して、研磨傷を計測した。尚、本開示において「研磨傷」とは、光学顕微鏡により検出される長さが1μm以上の傷である。
【0100】
【表2】
【0101】
【表3】
【0102】
【表4】
【0103】
参考例1の研磨液組成物と比較例1の研磨液組成物についての研磨傷の測定結果から分かるように、研磨粒子としてセリアコートシリカ粒子を含む研磨液組成物を用いた場合、セリア粒子を含む比較例の研磨液組成物を用いるより、研磨傷の発生が顕著に抑制されている。故に、表2〜4に示されるように、研磨粒子としてセリアコートシリカ粒子(成分B)を用い、研磨助剤としてPEG鎖を含む水溶性高分子(成分A)を含む、
参考例1〜
19、実施例20〜31の研磨液組成物を用いた場合は、比較例の研磨液組成物を用いるよりも、研磨選択性が優れ、且つ、ポリシリコン膜表面の研磨傷の数が少ない。