【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、
ペースト状の2成分ポリメチルメタクリレート骨セメント用の収納混合システムであって、収納混合システムは、
a)筒状内部を有する管状カートリッジと、
b)管状カートリッジの一端を閉止するカートリッジヘッドと、
c)カートリッジの筒状内部に軸方向に配設される仕切り壁であって、前記仕切り壁はカートリッジの筒状内部の円周面につながっており、仕切り壁はカートリッジヘッドによって範囲が定められるカートリッジの筒状内部を分割して空間的に別々の2つの空所にし、第1の空所は第1のペースト状セメント成分を含み、別個の第2の空所は第2のペースト状セメント成分を含む、仕切り壁と、
d)カートリッジの2つの空所において軸方向に移動可能なように配設される2つの送出プランジャであって、前記送出プランジャは空所のうちのカートリッジヘッドの反対側で2つの空所を閉止する、送出プランジャと、
を備え、
e)送出プランジャはカートリッジヘッドの反対の後部側で、スリーブ形の接続手段を介して互いに接続され、送出プランジャが接続手段と共に空所内でカートリッジヘッドに向かって前進すると、少なくとも2つの切れ刃がカートリッジの筒状の内壁から仕切り壁を少なくとも1つの切り離されたストリップとして切り離すように、少なくとも2つの切れ刃はスリーブ形の接続手段のうちのカートリッジヘッドを向く前方側に配設され、
f)スリーブ形の接続手段は、接続手段の軸に対して傾斜した偏向面を備え、偏向面は、接続手段が前進すると、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップをカートリッジの内壁に向かって押圧する、
収納混合システムによって達成される。
【0020】
少なくとも2つの切れ刃は、好ましくは、カートリッジヘッドを向くスリーブ形の接続手段の前方側の縁部に配設することができるか、または少なくとも2つの切れ刃のうちの最も外側の2つの切れ刃は、カートリッジヘッドを向くスリーブ形の接続手段の前方側の縁部に配設される。こうすることで、カートリッジの内壁に残る仕切り壁の残余物の幅をできるだけ小さく維持する。
【0021】
これにより、少なくとも2つの切れ刃によってカートリッジの内壁から切り離される仕切り壁の少なくとも1つのストリップが、カートリッジから分離される。偏向面が仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップを変形することが特に好ましい。変形すると、仕切り壁の切り離された部分のうちの各部分の材料がカートリッジの内壁に向かって移される。仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップがカートリッジの内壁に対して押圧されることがとりわけ好ましい。
【0022】
仕切り壁が非常に堅くかつ/または丈夫である場合は、仕切り壁を切断して複数のストリップにするために3以上の切れ刃を設けることができ、そのときに、複数のストリップは、より簡単に偏向するかまたはカートリッジの内壁に向かって押圧することができる。
【0023】
本発明によれば、接続手段は、好ましくは、切れ刃の反対側のベースの位置で直径が少なくとも1.5mm、特に好ましくは、少なくとも3mmである。このことによって、送出装置のタペットが接続手段を、したがって送出プランジャを前進させるのに十分な接触面積を確実に備える。
【0024】
2つの空所は、好ましくは、同様に筒状であり、特に好ましくは、半円形または円形セグメント形状のベースを有する。
【0025】
セメント成分の1:1の混合物のための収納混合システムが設けられることが好ましい。
【0026】
提供され得るのは、仕切り壁がカートリッジの軸に垂直な方向の最大直径の半分の少なくとも半分の幅であることである。提供され得るのは、仕切り壁が平坦な面であることである。仕切り壁は、カートリッジの内部の軸の領域でカートリッジの筒状内部を分割して2つの空所、特に好ましくは、サイズの等しい2つの空所にすることになる。
【0027】
本発明のさらなる代替的発展形態では、送出プランジャが、互いに接続されない複数の部品、好ましくは、接続可能であるかまたは互いに隣接して配置可能である前方部分および後方部分から構成されることが提案される。その場合、前方部分は、単に、後方部分によって空所中に前進する。接続手段は、送出プランジャの後方または最も後方の部分に連結されるかまたは連結可能である。2つの送出プランジャを安定させ、空所内での2つの送出プランジャの移動を安定させるために、2つの送出プランジャは1部片になるように作製され、接続手段に堅固に取り付けられることが好ましい。
【0028】
好ましく提供され得るのは、仕切り壁が液体不透過になるようにカートリッジの内部を分割し、そうすることで、2つの空所が液体不透過になるように互いから隔てられることである。
【0029】
このことは、2つのセメント成分をより長い期間にわたって収納混合システムまたはカートリッジの内側にそれぞれ確実に収納することができる。液体および非常に動きやすいモノマー成分が隣接する空所に浸入し、他方のセメント成分と反応することを防止すべきである。
【0030】
本発明の好ましいさらなる発展形態によれば、仕切り壁は、円周面の範囲を定める接続線に沿ってカートリッジの筒状内部の円周面につながり、これら接続線は、好ましくは、互いに反対側に配置され、カートリッジの軸が、特に好ましくは、仕切り壁中を延びる。
【0031】
これにより、空所内で送出プランジャが前進することも、安定した力で仕切り壁を切り離すことも可能になる。
【0032】
提供され得るのは、接続手段のカートリッジヘッドの反対側を向く面が送出装置のタペットのための接触面であることである。送出装置のタペットは、好ましくは、仕切り壁の表面の方向を向き、そうすることで、タペットによって切れ刃に加えられる圧力が、切れ刃が仕切り壁を切断し、接続手段を通して切り離されたストリップを押すことが可能になる。切り離されたストリップをブロックすることはできるだけ防止すべきである。
【0033】
さらに、提供され得るのは、空所が半円形または円形セグメントの断面を有し、送出プランジャが空所内の軸方向の各位置で空所を閉止するような対応する断面を送出プランジャが有することである。
【0034】
このことは、特に単純であり低コストの収納混合システムの実装を可能にする。
【0035】
本発明による収納混合システムの好ましいさらなる発展形態によれば、提供され得るのは、送出プランジャが、送出プランジャ間の隙間が仕切り壁の厚さ以下になるように、接続手段によって離間されることである。
【0036】
このことから、送出プランジャは空所の内側を確実に安定した状態で進み、少なくとも2つの切れ刃によって仕切り壁を確実に簡単に切り離しでき、接続手段を通して少なくとも1つの切り離されたストリップを確実に簡単にガイドできるようになる。
【0037】
さらに提供され得るのは、仕切り壁が、最大厚さ1.5mm、好ましくは、最大厚さ1.0mmであり、かつ/または仕切り壁は、1kNの推進力が作用する少なくとも2つの切れ刃によって仕切り壁が切断可能であるような厚さのものにできることである。
【0038】
仕切り壁は、典型的なプラスチック材から作製される場合は、セメント成分が送出プランジャによって空所の外に押圧される間に、手動操作式の送出装置を用いて確実に簡単に切り離しできる。
【0039】
さらに、提供され得るのは、収納混合システムが送出パイプを含み、その送出パイプが、送出パイプをカートリッジに締結する締結手段を備え、送出パイプが、好ましくは、カートリッジヘッドの代わりにカートリッジに固定可能であることである。
【0040】
締結手段は、好ましくは、カートリッジの雄ねじに螺合できる雌ねじである。カートリッジの雄ねじは、カートリッジヘッドをカートリッジに着脱可能なように締結するためにも使用されることが特に好ましい。
【0041】
本発明によれば、好ましくは、送出パイプにはスタティックミキサが配設される。本発明は、送出パイプにスタティックミキサが配設されること、ならびに雌ねじ、雄ねじ、差込み式継ぎ手の要素、および/または係止閉鎖具の係止要素が、接続手段として送出パイプのベースに取り付けられることも提案する。
【0042】
したがって、送出パイプは、セメント成分を混合し、それらを正確に施用するために使用することができる。PMMA骨セメントを施用する位置へのアクセスが難しい場合は特に、送出パイプが長いほど有利である。
【0043】
一般に知られているスタティックミキサはいずれもスタティックミキサとして使用されると考えることができる。雌ねじ、および/または雄ねじ、および/または差込み式継ぎ手の要素、および/または係止閉鎖具の係止要素が、接続手段として送出パイプのベースに取り付けられる。こうした接続手段は、カートリッジへの送出パイプの安定した機械的連結のために使用することができる。こうした連結は、ペースト状セメント成分が外に押圧されるときに起きる高い圧力によって送出パイプがカートリッジから離脱されないように安定していなければならない。特に有利な接続手段はねじであり、二条ねじは特に有利である。
【0044】
収納混合システムが送出パイプを有する場合、提供され得るのは、カートリッジ内部の直径と送出パイプの内径の比が5対2未満であり、カートリッジ内部の直径と送出パイプの内径の比が、好ましくは、2対1以下であり、特に好ましくは、カートリッジ内部の直径と送出パイプの内径の比が8対5であることである。
【0045】
このことから、送出プランジャが前進する間は送出パイプの出口開口部においてPMMA骨セメントは確実に十分な流量がある。
【0046】
好ましいさらなる発展形態によれば、さらに提供され得るのは、カートリッジ内部の直径が25mm以下であり、カートリッジ内部の直径が、好ましくは、20mm以下であることである。
【0047】
送出パイプを有する収納混合システムにおいて、提供され得るのは、カートリッジ内部の直径が25mm以下であり、送出パイプの内径が15mm以下であり、カートリッジ内部の直径が20mm以下であり、送出パイプの内径が12mm以下であることが好ましいことである。
【0048】
本発明によるカートリッジの設計またはカートリッジおよび送出パイプの設計によって、依然として手動の力を加えることによって外に押圧でき従来の技法を用いて依然として充填できるPMMA骨セメントの両ペースト状セメント成分を単一のカートリッジに収容することが可能になる。直径がより大きい場合は、力を手動で加えることは、骨セメントの粘性のペースト状セメント成分をカートリッジの外に簡単に押圧するのには十分ではない。
【0049】
本発明によれば、カートリッジはその中に配設される仕切り壁と一体化され、好ましくは、カートリッジおよび仕切り壁は1部片の射出成形部品としてプラスチックから作製されることも提案される。
【0050】
このようにして、2つの空所は密閉シールされるようにして隔てられ、そうすることで、セメント成分をより長い収納が可能になる。
【0051】
さらに、提供され得るのは、少なくとも2つの切れ刃が、合金鋼、アルミニウム合金、スズ合金、セラミック、ポリアミド、ガラス繊維強化ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドco‐イミド、ポリエーテルケトン、またはポリスルホンから構成されることである。
【0052】
これら材料は、仕切り壁を切断するのに適しており、生産が廉価である。
【0053】
本発明のさらなる発展形態が、カートリッジ内径とカートリッジヘッドからの送出プランジャの距離の比は、1対4以下であり、カートリッジ内径とカートリッジヘッドからの送出プランジャの距離の比は、好ましくは、1対10以下であることを提案する。
【0054】
本発明による装置のさらなる発展形態によれば、提供され得るのは、2つの空所を収納混合システムの環境につなぐ2つのダクトがカートリッジヘッドに設けられ、それらダクトには着脱可能なプラグが配設されることである。
【0055】
このようにして、セメント成分は、これらダクトを通して空所中に充填することができる。本発明の変形形態では、セメント成分は、プラグが取り除かれる後にそれらダクトを通して再び押圧することができる。
【0056】
好ましい収納混合システムでは、さらに提供され得るのは、カートリッジが、カートリッジヘッドの反対側に送出装置用の締結要素を備え、カートリッジヘッドの側に少なくとも1つの締結手段を、具体的には、雄ねじ、雌ねじ、差込み式継ぎ手の少なくとも1つの要素、および/または係止閉鎖具の係止要素を締結手段として備えることである。
【0057】
このことから、後部側の押出し装置に、または前方側のカートリッジヘッドの送出パイプおよび/もしくは閉鎖具に、カートリッジを連結することがより簡単になる。
【0058】
送出プランジャは、最初にカートリッジヘッドに接して着座する場合は、空所をセメント成分で充填するために使用することができる。セメント成分は空所中に押圧され、その工程の間に、送出プランジャは締結手段またはカートリッジの後部側に向かって押圧され、空所の内部では望ましくない空気の取り込みが残らない。そうした空気は送出プランジャによる空所からのセメント成分の押出しと干渉することになる。送出プランジャを接続手段に連結する係止手段を設けることができる。
【0059】
同様に、提供され得るのは、カートリッジ、カートリッジヘッド、仕切り壁、および送出プランジャがプラスチック材から作製され、ポリエチレンco‐ビニルアルコール(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリメタクリル酸メチルエステル‐co‐アクリロニトリルが好ましいプラスチック材であることである。
【0060】
プラスチック材を用いる機構は廉価であり、簡単に実装することができる。好ましいプラスチック材は、セメント成分に含有される化学物質に対する抵抗のおかげで特に適切である。
【0061】
さらに、提供され得るのは、カートリッジヘッドが、スリーブキャップを用いてカートリッジに締結されるゴム弾性プレートによって実装され、前記スリーブキャップが、突出するリムによって、カートリッジから離れる方へのゴム弾性プレートの移動をブロックし、前記ゴム弾性プレートが、送出プランジャを向く面に、仕切り壁の縦方向の側部を受容するくぼみを有し、ゴム弾性プレートの前記受容部が、好ましくは、2つの領域を画定し、プラグによって閉止されるダクトが各領域に配設されることである。
【0062】
その結果、収納混合システムのシーリング効果が良好になる。ゴム弾性プレートを2つの領域に分割することは、ゴム弾性プレートが別々の2つの部分を備えなければならないことを意味すると考えるべきではない。それら2つの領域は、隣接し、一体のゴム弾性プレートによって形成することもできる。
【0063】
さらに、本明細書によって提供され得るのは、カートリッジヘッドが追加のプラスチックプレートを備え、前記プラスチックプレートがカートリッジヘッドのゴム弾性プレート上または下に配設されることである。プラスチックプレートは、余剰のシーリングのために用いられ、セメント成分の範囲を定める空所の化学的抵抗を強化する。余剰のプラスチックプレートを配置すると、セメント成分に含有されるメチルメタクリレートに対する拡散バリアが改善される。
【0064】
さらに、提供され得るのは、カートリッジヘッドとカートリッジとを連結する連結要素としてスリーブキャップが設けられ、前記スリーブキャップが、雌ねじ、または雄ねじ、または差込み式継ぎ手、または係止要素を含むことである。
【0065】
スリーブキャップは、好ましくは、スリーブナットであり、カートリッジに螺合することができる。スリーブキャップはカートリッジヘッドの一部分であると考えることができる。このことから、カートリッジへのカートリッジヘッドの安定した連結が可能になる。連結要素は、スリーブキャップをカートリッジに安定して連結するために使用することができる。こうした安全性は、収納および輸送の間にカートリッジからカートリッジヘッドが離脱することを防止する。
【0066】
本発明によれば、提供され得るのは、カートリッジヘッドがゴム弾性プレートによって形成され、スリーブキャップがプラスチック材から作製され、スリーブキャップが突出するリムによってゴム弾性プレートが上方向に移動するのをブロックし、ゴム弾性プレートが、仕切り壁の縦方向の側部を受容するくぼみをその底部側に有し、前記受容部がゴム弾性プレートを分割して2つの半円形の領域にし、各半円形領域ダクトが配設され、前記ダクトがプラグによって閉止されることである。2つのダクトは、2つの空所をペースト状セメント成分で充填するために必要である。スリーブキャップは、カートリッジヘッドの一部分であると考えることもできる。
【0067】
一構成の変形形態では、カートリッジの前面はカートリッジヘッドとして形成され、底部側は、前記前面を分割して2つの半円形の領域にする、仕切り壁の細い側部を受容するくぼみを有し、各半円形領域にダクトが配設され、前記ダクトはプラグによって閉止される。これらダクトは筒状、半円形、円形セグメント、または腎臓形とすることができる。それらダクトの形状に合うように、プラグも筒状、半円形、円形セグメント、または腎臓形である。プラグは底部側に、カートリッジシステムの収納または輸送の間にカートリッジヘッドからプラグが緩むことを効率的に防止する係止要素を有することが特に有利である。
【0068】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、提供され得るのは、スリーブ形の接続手段がカートリッジヘッドの反対側を向く後部側に横向きの開口部を備え、そうすることで、カートリッジの内壁から切り離された仕切り壁の少なくとも1つのストリップが、前記開口部を通って接続手段から横向きに出ることである。
【0069】
その結果、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップは、開口部を通してガイドされるかまたは送られ、したがって、前記ストリップが送出プランジャおよび接続手段を押しやる送出装置のタペットの移動に悪影響を及ぼさず、移動を制限しないように、カートリッジの内壁に向かって安全に進められることが実現される。さらに、接続手段の開口部によって形成されるダクトは、接続手段内で仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップを形成し直すこともできる。
【0070】
提供され得るのは、スリーブ形の接続手段が、カートリッジヘッドを向く側ではカートリッジの内部の内壁に接して円周に沿って着座することであり、特に好ましい。その結果、設けられる横向きの開口部はいずれも、前方に向かって(カートリッジヘッドに向かって)スリーブ形の接続手段の円周面で範囲が定められる。切り離された仕切り壁は、好ましくは、スリーブ形の接続手段の内部を通って延びる。
【0071】
こうした対策の結果、スリーブ形の接続手段は、内部でカートリッジが移動する間に傾くことなく、様々な範囲にカートリッジヘッドに向かって前方に不均一に送出プランジャが推進されることなく、カートリッジの内部を通って安定的に摺動することができる。
【0072】
さらに、本発明による収納混合システムは、接続手段を通って進む仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップが、少なくとも1つの切り離されたストリップの縦軸の周りで、傾斜した偏向面を囲む接続手段のスリーブ壁によって湾曲されるように、スリーブ形の接続手段のスリーブ壁によって、ある一定の領域において傾斜した偏向面によって区別することができる。
【0073】
したがって、スリーブ壁はストリップがその形状によってカートリッジの内壁により簡単に接触できるようになるか、または送出装置のタペットによる推進に対する意図しない悪影響のリスクが形状によって低減されるように、少なくとも1つの仕切り壁のストリップを形成し直すために使用することができる。
【0074】
本発明が取り組む目的は、このような収納混合システムを用いて、ペースト状のセメント目標物のペースト状セメント成分を、具体的には、ポリメチルメタクリレート骨セメントを混合する方法であって、連続するステップである、
a)カートリッジからカートリッジヘッドを取り除くかまたはカートリッジヘッドの少なくとも2つのダクトから少なくとも2つのプラグを取り除くステップであって、そうすることで、カートリッジが開口される、ステップと、
b)送出パイプを開口されたカートリッジに配置および連結するステップであって、前記送出パイプはミキサを含む、ステップと、
c)カートリッジを手動操作式の送出装置に挿入するステップであって、前記送出装置は、カートリッジの空所内で送出プランジャを前進させるために軸方向に押しやることができるタペットを備える、ステップと、
d)タペットを用いて送出プランジャを軸方向に前進させ、その結果、セメント成分が送出パイプ中に押圧されることによって、送出装置によってペースト状セメント成分を押し出すステップであって、2つのセメント成分は送出パイプのミキサによって混合されてペースト状のセメントドウになり、混合されたセメントドウは送出パイプの出口開口部から流出し、仕切り壁は、送出プランジャの移動と同期的に、少なくとも2つの切れ刃によって、カートリッジの縦方向に切り離され、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップは、送出装置のタペットのさらなる移動がいずれも少なくとも1つのストリップによって防止も妨害もされない程度に、偏向面によってカートリッジの内壁に向かって外向きに押圧される、ステップと、
を特徴とする、方法によっても達成される。
【0075】
これらステップは、好ましくは、時間順に次々に行われる。送出装置は、好ましくは、手動操作式である。
【0076】
セメント成分が格納されるカートリッジまたはカートリッジの空所は、カートリッジからカートリッジヘッドを取り除く前またはカートリッジヘッドの少なくとも2つのダクトから少なくとも2つのプラグを取り除く前には閉止される。
【0077】
本発明による方法の場合、提供され得るのは、仕切り壁の少なくとも1つのストリップが、少なくとも1つの切り離されたストリップの縦軸の周りで、傾斜した偏向面を囲む接続手段のスリーブ壁によって湾曲されることである。
【0078】
このことから、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップがこのようにカートリッジの内壁とより簡単に接触できるので、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップがタペットのどのようなさらなる移動も確実に妨害しない。
【0079】
さらに、提供され得るのは、ステップa)でカートリッジからカートリッジヘッドを取り除くために、カートリッジヘッドとカートリッジとを連結する連結要素が緩められることである。
【0080】
これは、カートリッジヘッドとカートリッジとの間のより安定した連結を確実にする。さらに、カートリッジ上の対応部品、すなわち、カートリッジ上の連結要素も、送出パイプを連結するために使用することができる。
【0081】
好ましいさらなる発展形態によれば、提供され得るのは、送出パイプが、送出パイプの連結要素をカートリッジの連結要素に連結することによって、カートリッジに連結されることである。
【0082】
このことは、セメントドウが外に押圧されるときに送出パイプがカートリッジから離脱しないことを確実にすることができる。
【0083】
さらに提供され得るのは、送出装置のタペットが、接続手段のうちの送出プランジャの反対側を向く面に圧力を加え、送出プランジャが接続手段を介して押しやられることである。
【0084】
その結果、タペットから利用できる力のほとんどが、セメント成分を押しやるため、および仕切り壁を切断および偏向するために使用され得る。このことは、力の一部が過度に大きくなって、カートリッジが望ましくない状態で変形することまたは送出プランジャが乱れた状態で傾くことを防止する。
【0085】
さらに、提供され得るのは、接続手段のうちの送出プランジャの反対側を向く面が、タペットまたはタペットに取り付けられたトレイの前方側と接触するための接触面を備え、前記接触面が、タペットの断面またはトレイの支持面以上のサイズのものであり、前記接触面が、タペットが前進するときに、タペットの断面もしくはトレイの支持面を完全に被覆するか、または好ましくは、前記接触面が、タペットの断面もしくはトレイの支持面を越えて広がることである。
【0086】
本明細書で、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップがタペットの移動を妨害しないことが実現される。
【0087】
さらに提供され得るのは、少なくとも2つの切れ刃が、カートリッジの内壁から直接的にまたはその近くで仕切り壁を切り離し、好ましくは、仕切り壁が、カートリッジの内壁から2mm以下の距離の位置でカートリッジの内壁から、特に好ましくは、カートリッジの内壁から1mm以下の距離の位置でカートリッジの内壁から切り離されることである。
【0088】
このことは、カートリッジの内壁に残る仕切り壁の残余物が、接続手段を押しやるためのタペットのさらなる移動を妨害しないことを確実にする。
【0089】
最後に、本発明は、アプリケータは手動で駆動可能であるか、または圧縮空気によって駆動可能であるか、または電気によって駆動可能であることも提案する。
【0090】
本発明によれば、圧縮空気源にも電源にも接続する必要がなく、こうした供給源を含む必要がないので、手動で駆動可能なアプリケータが好ましい。
【0091】
したがって、本発明は、セメント成分がカートリッジの内側空間に配設される仕切り壁によってカートリッジ内で互いから隔てられ、仕切り壁からストリップを切り取る共通の接続手段によって両方の送出プランジャを押しやることができ、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップが横方向外側に押され、そうすることで、送出装置の推進タペットのどのようなさらなる移動も妨害しない場合は、筒状の内側空間の単一の共通カートリッジにセメント成分を収納できるという驚くべき発見に基づく。このことから、本発明による設計のおかげで、必要な力は、セメント成分を押しやって混合し、仕切り壁を切り離して変形し、かつ/もしくはカートリッジの内壁に押しのけるのに十分であるか、または必要な力はこれら4つの工程に完全に利用できるので、タペットを1つだけ有する手動操作式の送出装置を用いることが可能になる。セメント成分を前進させ、セメント成分を混合し、仕切り壁を切り離して曲げるために必要な力は全体でも、本発明による設計のおかげで、送出装置の移動が過度に難しくなるほど大きくはない。
【0092】
別の驚くべき発見は、このようにして、2つのセメント成分を前進させるために送出プランジャを1つだけ有する細いカートリッジを使用できることである。このことは、セメント成分を混合して押し出すのに必要な力を最小限に抑え、そうすることで、セメント成分をカートリッジから押し出してそれらを混合するために収納混合システムと一緒に、手動で操作できるアプリケータを使用できるようにする。
【0093】
本発明は、2つのペースト状セメント成分を別々に収納するために、複数の並列型のカートリッジまたは共軸のカートリッジではなく、送出する間の流動抵抗を最小限に抑えるために筒状のカートリッジを1つだけ使用するという考えに基づく。2つの送出プランジャを押しやるために2つのプッシュロッドおよび2つのトレイを使用する必要を避けるために、筒状のカートリッジは軸方向に切断可能な軸方向の仕切り壁を備え、その仕切り壁は、2つの送出プランジャおよび1つのカートリッジヘッドによって画定されるカートリッジの内側空間を分割して、ペースト状セメント成分を別々に収納できる2つの中空本体にする。仕切り壁のストリップを切り離して曲げることで、PMMA骨セメントの使用量をより小さくすることも可能にでき、内側空間の内径がより小さい細いカートリッジをやはり使用することができる。
【0094】
第1の実施形態では、カートリッジヘッドは取り除かれ、スタティックミキサを収容する送出パイプは連結要素を用いて直接的にカートリッジに連結される。そのすぐ後に、カートリッジおよび連結された送出パイプは、手動操作式の送出装置または手動操作式のアプリケータに連結され、セメント成分またはセメントドウの送出が開始される。これらのステップは実行するのに約3から8秒を必要とする。押出し装置またはアプリケータの連続動作の約30秒後に、セメントドウの送出、すなわち、混合されたペースト状の2成分PMMA骨セメントの送出が、最大60ml、好ましくは、約40mlである2つのペースト状セメント成分の全体積に関して終了する。
【0095】
第2の実施形態では、仕切り壁を取り除いた後に、カートリッジヘッドでは2つのプラグが取り除かれ、スタティックミキサを有する送出パイプが連結要素を用いてカートリッジに連結される。
【0096】
本発明はさらに、軸方向に移動できる第1の送出プランジャは第1の空所に配設され、軸方向に移動できる第2の送出プランジャは第2の空所に配設されるという考えに基づく。仕切り壁は送出プランジャ間に配置される。送出プランジャは接続手段によって後部側に連結される。接続手段の前方側は、仕切り壁に対して垂直に向いた少なくとも2つの切れ刃として設計される。送出装置のタペット用の接触面が接続手段の後部側に構成される。タペットの作用によって接続手段が前方にカートリッジヘッドに向かって移動されるときは、送出プランジャの後ろの少なくとも2つの切れ刃が仕切り壁に2本の縦方向の切れ目を作り、仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップは中空シリンダの内壁から外れる。仕切り壁の少なくとも1つの切り離されたストリップは、カートリッジの軸または閉鎖手段の移動方向に対して約45°の角度で傾斜した偏向面によって外向きにカートリッジの内壁に向かって押圧される。同時に、仕切り壁の分離されたストリップは、湾曲がカートリッジの内面の湾曲に平行になるように、スリーブ形の接続手段の内面で湾曲される。次いで、仕切り壁の切り離されたストリップは、湾曲したストリップとして、カートリッジの内面に平行な接続手段の後部側において横向きの開口部を通って出る。送出装置のタペットは、このようにして、接続手段の接触面と接触し、中空本体の全体にわたって送出プランジャを外に押圧してペースト状セメント成分を押し出すことができる。
【0097】
本発明はさらに、送出プランジャの最大直径がその前方側で25mmである場合は、粘性の高いセメントドウは、許容できる時間内で、市販の手動操作式の押出し装置またはアプリケータを用いた手動で加えられる力の許容できる利用によって、筒状のカートリッジからスタティックミキサを有する送出パイプを通して送出できるという考察に基づく。本発明による設計は、粘性の高いセメント成分のためにこのような小さい直径を利用できるカートリッジシステムを提供する。やはり、カートリッジまたは空所は、あまり苦労することなくセメント成分で充填することができる。
【0098】
ペースト状の2成分ポリメチルメタクリレート骨セメント用の本発明による例示的な収納混合システムは、
a)カートリッジとしての管状の中空本体と、
b)管状の中空本体の一端を閉止するカートリッジヘッドと、
c)管状の中空本体に軸方向に配設される仕切り壁であって、前記仕切り壁は中空本体の内側空間を分割して第1の空所および第2の空所にする、仕切り壁と、
d)第1の空所に配設され軸方向に移動可能な半円形の第1の送出プランジャと、
e)第2の空所に配設され軸方向に移動可能な半円形の第2の送出プランジャと、
f)第1の送出プランジャの後部側を第2の送出プランジャの後部側と接続するスリーブ形の接続手段であって、前記接続手段は、送出プランジャ間の隙間が仕切り壁の厚さ以下になるように送出プランジャを離間し、接続手段の前方外側に少なくとも2つの切れ刃が配設され、送出装置のタペット用の接触面が接続手段の後部側に構成される、接続手段と、
から構成され、
g)仕切り壁の厚さは1.5mm以下であり、
h)切れ刃は、接続手段がカートリッジヘッドに向かって前方に移動する間に、第1の送出プランジャおよび第2の送出プランジャの後ろの中空本体の内面から仕切り壁を切り離し、切り離された仕切り壁は、中空本体の縦軸に対して垂直に配置される接続手段の偏向壁によって、切れ刃の後ろのストリップとして側方に送られ、ストリップ形の切り離された仕切り壁は、カートリッジヘッドに向かう前方への送出装置のタペット移動が妨害されないように、スリーブ形の接続手段の内面によって湾曲され、接続手段の後部側で横向きの開口部を通って、湾曲したストリップとして出る。
【0099】
中空シリンダが仕切り壁と一体化される場合が有利である。一体になると、別個の仕切り壁を中空シリンダに挿入するための複雑な組立てステップがなくなる。適切なプラスチック材を使用することで、液体不透過になるように2つの空所を確実に隔てる。ただし、別々に生産された仕切り壁を中空シリンダに挿入することも一般的に可能である。挿入された仕切り壁は、機械的な締付けまたは溶接または接着によって中空シリンダに連結することができる。
【0100】
ペースト状のポリメチルメタクリレート骨セメントの粘性の高いセメント成分は、揮発性の高いフリーラジカル重合性モノマーであるメチルメタクリレートを含有する。したがって、セメント成分を収納するには、カートリッジの内壁、カートリッジヘッド、送出プランジャ、および仕切り壁が、メチルメタクリレートに対して良好な拡散バリアを形成するプラスチック材から作製されることが不可欠である。好ましいプラスチック材は、ポリエチレンco‐ビニルアルコール(EVOH)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリメタクリル酸メチルエステルco‐アクリロニトリルである。さらに、セメント成分と接触していない部分に、耐拡散性金属層、金属もしくは半金属の酸化物層、またはプラスチック層を堆積させることができる。金属層としてはアルミニウム層が特に適している。半金属酸化物層としては二酸化ケイ素層が特に適している。
【0101】
送出プランジャは、またはその代わりに接続手段は、有利には、適位置でカートリッジの中空シリンダの内面に上の嵌め合い係止要素とロックできる係止要素を有する。これら係止要素は、送出プランジャがカートリッジヘッドから反対の方向に移動するのを防止する。このような後部への移動の防止は、セメント成分が充填されたカートリッジシステムを外側でエチレンオキシドを用いて殺菌する場合に必要である。エチレンオキシドを用いて殺菌するときは、空気を取り除くために殺菌チャンバに真空が印加される。その結果生じる陰圧によって、セメント成分のメチルメタクリレートの蒸発によって空所に過度の圧力が生じ、したがって、カートリッジヘッドから反対方向への送出プランジャの望ましくない移動が起こる場合がある。
【0102】
セメント成分を押圧して混合するために必要な押出し圧力が高くなり過ぎないようにカートリッジの内径が25mm以下であることが特に重要である。
【0103】
カートリッジシステムを用いてペースト状のポリメチルメタクリレート骨セメントのペースト状セメント成分を混合する、本発明による例示的な方法を、例えば以下のように、実行することができる。
a)カートリッジからカートリッジヘッドを取り除くかまたはカートリッジヘッドのダクトからプラグを取り除く、
b)スタティックミキサを収容する送出パイプを開口されたカートリッジに連結する、
c)カートリッジをそれぞれ手動操作式の押出し装置または送出装置に連結する、
d)押出し装置または送出装置それぞれの手動操作し、タペットは接続手段の接触面を押圧し、ペースト状の第1のセメント成分は第1の空所から第1の送出プランジャを通して、ペースト状の第2のセメント成分は第2の空所から第2の送出プランジャを通して、送出パイプおよびスタティックミキサ中に押圧され、混合されたセメントドウは送出パイプの開口部から出る、
e)切れ刃は、送出プランジャの前方への移動と同期的に、カートリッジの内壁の両側で縦方向に送出プランジャの後ろで仕切り壁を切断し、仕切り壁の切り離されたストリップは、縦カートリッジの軸に垂直に配置された偏向壁によって側方に送られ、仕切り壁の切り離されたストリップは、送出装置のタペットが前方にカートリッジヘッドに向かって移動することが妨害されないように、スリーブ形の接続手段の内面によって湾曲され、湾曲したストリップとして接続手段の後部側にある横向きの開口部を通って出る。
【0104】
本方法の一変形形態では、手動操作式の押出し装置の代わりに圧縮空気または電気によって動作する押出し装置がステップd)およびe)で用いられる。
【0105】
本発明を決して限定することなく、以下に12の概略図を参照しながら本発明の他の実施形態の例を説明する。