【文献】
J. Appl. Bacteriol.,1984年,Vol. 57,pp. 499-503
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
骨セメントとして使用するための組成物であって、前記組成物は硬化可能であり、前記組成物がモノペルオキシジカルボン酸の薬理学的に許容される塩を含み、前記モノペルオキシジカルボン酸の前記塩が水の存在下で前記組成物から溶解することができ、
前記組成物が防腐性ポリメタクリル酸メチル骨セメントであることを特徴とする、組成物。
前記組成物中の前記モノペルオキシジカルボン酸の前記塩が粉体の形態で使用され、前記粉体は平均粒径が250μm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
前記モノペルオキシジカルボン酸の前記塩が、カタラーゼ酵素によって水溶液中で室温で5分以内に分解されないことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
前記組成物の総量に対して0.5重量%〜6.0重量%の前記モノペルオキシジカルボン酸の前記塩を含むことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
前記モノペルオキシジカルボン酸が、モノペルオキシフタル酸、モノペルオキシグルタル酸、モノペルオキシコハク酸及びモノペルオキシシクロヘキシルジカルボン酸の群の少なくとも1つの要素から選択されることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
前記組成物が少なくとも1種のラジカル重合用モノマー及び少なくとも1種の有機ポリマーを含み、前記ポリマーが前記モノマーに可溶であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
有機ポリマーが、1〜20個のC原子をアルキル基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリール基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリールアルキル基中に各々独立に有し、1〜10個のC原子をアルキルエステル基中に各々独立に有する、ポリ(アルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリール−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリールアルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、又は前記ポリマーの少なくとも2種を含む混合物から選択されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
前記有機ポリマーが、ポリ(メタクリル酸メチルエステル)、ポリ(メタクリル酸エチルエステル)、ポリ(メチルメタクリル酸プロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸メチル−コ−アクリル酸メチル)、ポリ(スチレン−コ−メタクリル酸メチル)、前記化合物のコポリマー、及び前記ポリマーの少なくとも2種の混合物の群から選択されることを特徴とする、請求項11又は12のいずれか一項に記載の組成物。
前記モノマーが、1〜20個のC原子をアルキル基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリール基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリールアルキル基中に各々独立に有し、1〜10個のC原子をアルキルエステル基中に各々独立に有する、少なくとも1種の2−アルキル−アクリル酸アルキルエステル、2−アリール−アクリル酸アルキルエステル、2−アリールアルキル−アクリル酸アルキルエステル、又は前記モノマーの少なくとも2種を含む混合物から選択されることを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載の組成物。
前記有機ポリマーが、少なくとも1種のポリ(メタクリル酸メチルエステル)(PMMA)又はポリ(メタクリル酸メチルエステルコポリマー)、及びモノマーとしてメタクリル酸メチルエステル(MMA)を含むことを特徴とする、請求項11から14のいずれか一項に記載の組成物。
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を重合し、又は請求項16に記載のペーストAとBを混合し、又は請求項17に記載の粉体成分Cとモノマー成分Dを混合する工程を有する、硬化性骨セメントの製造方法。
前記モノペルオキシジカルボン酸の前記塩が水の存在下で硬化中に前記組成物から溶解し、前記モノペルオキシジカルボン酸がカタラーゼ酵素によって5分以内に分解されないことを特徴とする、請求項19に記載の硬化性骨セメントの製造方法。
請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物を重合し、又は請求項16に記載のペーストAとBを混合した後で重合し、若しくは請求項17に記載の粉体成分Cとモノマー成分Dを混合した後で重合する工程を有する、成形体の製造方法。
一次全関節内部人工器官の機械的固定、修正全関節内部人工器官の機械的固定、骨粗鬆症骨組織の増強、骨空洞の充填、大腿骨形成術、スペーサの製造、関節内部人工器官の機械的固定、あるいは頭蓋骨欠損の被覆のための移植片、防腐性移植片、修正移植片として用いられる骨セメントを製造するため、又は、局所抗生物質療法用担体材料や薬学的活性物質の局所放出用担体材料の製造のために用いられる骨セメントを製造するための、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物又は請求項16若しくは17に記載のキットの使用。
【発明を実施するための形態】
【0016】
遊離モノペルオキシジカルボン酸は、通常、不安定な化合物であり、このため、本発明の範囲では、安定な薬理学的に許容される及び/又は薬理学的に認容性のある金属塩の形態で使用される。薬理学的に許容される及び/又は認容性のある塩の例としては、アルカリ金属塩、特にナトリウム、カリウム及びリチウム塩が挙げられる。さらに、それらは、アルカリ土類金属の塩、特にマグネシウム及びカルシウム塩、並びに一部の遷移金属の塩、特に鉄、亜鉛及び銅塩である。
【0017】
モノペルオキシジカルボン酸は、2個のカルボキシル基を有するジカルボン酸であると理解されるものとし、2個のカルボキシル基の一方は、ペルオキシカルボキシル基として酸化型で存在する。
【0018】
好ましくは、本発明に係るモノペルオキシジカルボン酸は、少なくとも4個の炭素原子を含む。
【0019】
モノペルオキシジカルボン酸は、特に、4〜20個の炭素原子を有する脂肪族非分枝又は分枝モノペルオキシジカルボン酸、8〜12個の炭素原子を有する脂環式モノペルオキシジカルボン酸、8〜12個の炭素原子を有する芳香族モノペルオキシジカルボン酸、又は前記モノペルオキシジカルボン酸の少なくとも2種を含む混合物である。
【0020】
脂肪族及び脂環式モノペルオキシジカルボン酸の例としては、モノペルオキシコハク酸、モノペルオキシグルタル酸、モノペルオキシアジピン酸、モノペルオキシシクロヘキシルジカルボン酸、モノペルオキシピメリン酸、モノペルオキシスベリン酸、モノペルオキシアゼライン酸、モノペルオキシセバシン酸、モノペルオキシノナンジカルボン酸、モノペルオキシデカンジカルボン酸、モノペルオキシウンデカンジカルボン酸及びモノペルオキシドデカンジカルボン酸が挙げられ、モノペルオキシグルタル酸、モノペルオキシコハク酸及びモノペルオキシシクロヘキシルジカルボン酸が特に好ましい。
【0021】
芳香族モノペルオキシジカルボン酸の例としては、モノペルオキシフタル酸、モノペルオキシテレフタル酸、モノペルオキシイソフタル酸及びモノペルオキシナフタル酸が挙げられ、モノペルオキシフタル酸が特に好ましい。
【0022】
好ましくは、モノペルオキシジカルボン酸の薬理学的に許容される又は薬理学的に認容性のある塩は、遊離酸官能基を有し、カルボキシル基はプロトン化カルボン酸塩として存在し、ペルオキシカルボキシル基はペルオキシカルボン酸基(−COOOH)として存在する。したがって、モノペルオキシジカルボン酸は、好ましくは、アルカリ金属と一緒に、塩中に1個のモノペルオキシジカルボン酸を含む塩を形成し、アルカリ土類金属と一緒に、塩中に2個のモノペルオキシジカルボン酸を有するアルカリ土類金属塩を形成する。周期系における遷移金属の位置、並びに薬理学的に許容される及び/又は薬理学的に認容性のある遷移金属の好ましい酸化状態に応じて、同じことが遷移金属塩にも相応に当てはまる。
【0023】
モノペルオキシジカルボン酸の薬理学的に許容される又は薬理学的に認容性のある塩は、水の作用によって本発明に係る組成物から溶解することができる。この状況における「溶解することができる」とは、モノペルオキシジカルボン酸塩が組成物から部分的又は完全に溶解することができ、モノペルオキシジカルボン酸塩が好ましくは組成物から完全に溶解することができることを意味すると理解すべきである。
【0024】
本発明によれば、「水の存在下で」とは、組成物が、水溶液、部分水溶液又は純水の形態の水と接触し得ることを意味すると理解すべきである。要約すると、本明細書では水性媒体を表し、水性媒体とは、溶液が水を含むことを意味する。水溶液は、特に、塩含有溶液及び/又は緩衝溶液、好ましくはヒト又は動物の体液であると理解すべきである。
【0025】
本発明に係る実施形態2においては、組成物は実施形態1に従って設計され、組成物は防腐性骨セメントである。
【0026】
水、又は体内の水性媒体などの水溶液の作用にさらされると、モノペルオキシジカルボン酸及びその塩は、過酸化水素を平衡反応で放出し、同時に、対応するジカルボン酸を形成する。モノペルオキシジカルボン酸と過酸化水素反応生成物はどちらも、その酸化作用に基づく強い殺菌効果を有する防腐剤である。特に有利なことに、ヒト組織は、過酸化水素を分解するペルオキシダーゼ(EC1.11.1)、特にカタラーゼ(EC1.11.1.6)のクラス由来の酵素を含むので、過酸化水素は人体に蓄積しない。本発明に係る組成物又は本発明に係る骨セメントの別の利点は、抗生物質療法で起こり得る微生物による耐性の形成を防止することである。上記ペルオキシダーゼ、特にカタラーゼは、形成される過酸化水素を分解することができるので、本発明に係る使用の別の利点は局所的防腐効果である。
【0027】
本発明に係る実施形態3においては、組成物は実施形態1又は2に従って設計され、組成物は防腐性ポリメタクリル酸メチル骨セメントである。
【0028】
ポリメタクリル酸メチル骨セメントという用語は、ポリマー粉体成分と液体モノマー成分を混合して、ラジカル重合によって自己硬化セメント練粉を形成する従来のセメントを指すと理解すべきである。この用語は、2種の別々のあらかじめ膨潤したセメントペーストを混合して自己硬化セメント練粉を生成するペースト状ポリメタクリル酸メチル骨セメントも含む。適切な例は、公開された特許出願特許文献3、独国特許第10 2010 024 653(B4)号及び独国特許第10 2010 005 956(B4)号に明記されている。
【0029】
本発明に係る実施形態4においては、組成物は実施形態1〜3のいずれか一つに従って設計され、モノペルオキシジカルボン酸の塩はアルカリ土類塩又はアルカリ塩である。
【0030】
モノペルオキシジカルボン酸のアルカリ及びアルカリ土類塩は、高い溶解性及び良好な薬理学的適合性を特徴とする。さらに、アルカリ及びアルカリ土類塩は、その酸化状態を変えることができず、遷移金属の塩とは対照的である。遷移金属のイオン、例えば、Cr
3+又はCo
2+は、酸化状態の変化に起因するモノペルオキシジカルボン酸の触媒による分解を引き起こし、したがって防腐効力を損ない得る。
【0031】
さらに、驚くべきことに、ポリメタクリル酸メチル骨セメントは、モノペルオキシジカルボン酸の薬理学的に許容される塩、特にモノペルオキシジカルボン酸のアルカリ土類及びアルカリ塩を含む場合、機械的性質に関するISO5833の要件も満たすことが明らかになった。これらの塩は、驚くべきことに、ポリメタクリル酸メチル骨セメントの硬化中に進行するラジカル重合に対して妨害効果を持たない。
【0032】
本発明に係る実施形態5においては、組成物は、実施形態1〜4のいずれか一つに従って設計され、アルカリ土類塩はマグネシウム塩である。
【0033】
モノペルオキシジカルボン酸のマグネシウム塩は、特に高い溶解性及び優れた薬理学的適合性を特徴とする。
【0034】
本発明に係る実施形態6においては、組成物は実施形態1〜5のいずれか一つに従って設計され、モノペルオキシジカルボン酸の塩はメタクリル酸メチルに室温で不溶である。
【0035】
この状況で使用されるモノペルオキシジカルボン酸の塩は、メタクリル酸メチルに23℃で不溶であることが特に好ましい。低溶解性は、この状況で使用されるモノペルオキシジカルボン酸又は薬理学的に許容される塩が、重合する骨セメントのモノマー成分の成分と望ましくない反応を起こさないことを更に保証するものである。こうして、骨セメントのモノマー成分が長期間貯蔵された場合でも、モノペルオキシジカルボン酸の防腐効果が維持される。
【0036】
モノペルオキシジカルボン酸の塩は、23℃における溶解性が既製溶液1リットル当たり塩3g(3g/l)以下である場合、メタクリル酸メチルに「不溶」であるとみなすものとする。
【0037】
本発明に係る実施形態7においては、組成物は実施形態1〜6のいずれか一つに従って設計され、組成物中のモノペルオキシジカルボン酸の塩は、粉体の形態で使用され、粉体の平均粒径が250μm以下である。
【0038】
平均粒径100μm〜250μmの範囲の粉体が好ましく使用される。粒径が指定範囲の粉体においては、水性媒体との接触時、組成物、特に骨セメントからのモノペルオキシジカルボン酸塩の放出速度が最適であり、硬化セメントの機械的強度が最小限しか、又は全く、悪影響を受けない。
【0039】
驚くべきことに、粒径250μm以下のモノペルオキシジカルボン酸塩は、硬化組成物、特に骨セメントの機械的性質に対して有害作用を及ぼさないことが明らかになった。特に、曲げ強度、曲げ弾性率及び圧縮強度に関するISO5833標準の要件を満たす。
【0040】
さらに、この状況で使用される粉体の平均粒径が小さい、すなわち比表面積が大きいことは、モノマー成分に不溶であるモノペルオキシジカルボン酸塩が、水性媒体との接触によって急速に溶液に移動することを意味する。こうして、モノペルオキシジカルボン酸塩は、その防腐効果を急速に発揮することもできる。これは、骨セメントとしての使用に特に重要である。現代の衛生及び外科的手法にもかかわらず、あるレベルの感染が関節内部人工器官周囲の骨及び/又は軟部組織に依然として存在する。この状況においては、初期感染と晩期感染の区別が成されている。初期感染は、関節内部人工器官移植中にヒト組織に入った病原体に起因することが多い。したがって、防腐剤がその効果を迅速に発揮できることがこの治療段階では極めて重要である。したがって、粒径のできるだけ小さいモノペルオキシジカルボン酸塩粉末又は粒子が好ましい。
【0041】
本発明に係る実施形態8においては、組成物は実施形態1〜7のいずれか一つに従って設計され、モノペルオキシジカルボン酸の塩は、水溶液中で室温で5分以内にペルオキシダーゼによって分解されず、好ましくはカタラーゼ酵素によって分解されない。
【0042】
モノペルオキシジカルボン酸及びその塩は、カタラーゼ酵素でも他のペルオキシダーゼでも少なくとも5分間分解しない。好ましくは、分解は10分以内に起こらず、特に好ましくは20分以内に起こらない。この状況においては、「分解しない」とは、最初に使用された[量の]モノペルオキシジカルボン酸化合物の少なくとも80%が、水溶液、含水溶液又は水性媒体、特に体液と最初に接触してから指定時間後に依然として検出可能であることを意味すると理解すべきである。
【0043】
本発明によれば、「室温」という用語は、温度23℃を意味すると理解すべきである。したがって、モノペルオキシジカルボン酸塩は、23℃で5分間、ペルオキシダーゼによって分解されず、好ましくはカタラーゼ酵素によって分解されない。当業者は、酵素が、通常、高温ほど高い活性を有し、同様に低温ほど低い活性を有することを知っている。したがって、水性媒体との接触後の組成物中のモノペルオキシジカルボン酸塩の分解は、室温より高い温度でより速くなり、同様に室温より低い温度でより遅くなり得る。
【0044】
過酸化水素、過酸化水素付加体又は類似の防腐性過酸化水素化合物とは対照的に、ペルオキシダーゼ、特にカタラーゼの作用による組織中のモノペルオキシジカルボン酸又はその塩の分解は、驚くべきことに、かなり遅れて生じる。恐らく、モノペルオキシジカルボン酸は、対応する酵素の活性中心と直接相互作用する対応する基質構造を含まないので、カタラーゼ又は他のペルオキシダーゼによって直接分解されない。さらに、モノペルオキシジカルボン酸は、水性媒体と接触すると、遅い加水分解反応の中で分解して、過酸化水素及び対応するジカルボン酸を形成することも推定される。加水分解生成物、すなわち過酸化水素のみが、カタラーゼによる分解反応を受ける。したがって、恐らく、上記過酸化水素化合物よりも長期の、したがって改善された防腐効力が、本発明に係るモノペルオキシジカルボン酸又はその薬理学的に許容される塩によって得られる。この状況においては、有効な防腐剤は、恐らく、使用されるモノペルオキシジカルボン酸化合物と加水分解生成物、すなわち過酸化水素の両方である。
【0045】
本発明に係る実施形態9においては、組成物は実施形態1〜8のいずれか一つに従って設計され、組成物の総量に対して0.5重量%〜6.0重量%のモノペルオキシジカルボン酸の塩を含む。
【0046】
過酸化水素の放出量を所望のとおりに調節するために、組成物、特に骨セメントは、組成物の総量に対して0.5〜6.0重量%、特に1.5〜5重量%、好ましくは2〜4.5重量%、より好ましくは3.0〜4.0重量%のモノペルオキシジカルボン酸塩部分を含むことができる。この状況においては、組成物は、2種以上のペースト、又はペーストと粉体成分を混合することによっても製造することができ、モノペルオキシジカルボン酸塩は、一方又は両方のペースト中に、また、粉体組成物中に、存在することができる。この状況においては、組成物中に存在するモノペルオキシジカルボン酸塩の含有量は、硬化後の0.5〜6重量%の含有量に対応することが好ましい。
【0047】
本発明に係る実施形態10においては、組成物は、実施形態1〜9のいずれか一つに従って設計され、モノペルオキシジカルボン酸は、モノペルオキシフタル酸、モノペルオキシグルタル酸、モノペルオキシコハク酸及びモノペルオキシシクロヘキシルジカルボン酸の群の少なくとも1つの要素から選択される。
【0048】
好ましくは、モノペルオキシジカルボン酸は、モノペルオキシフタル酸、モノペルオキシグルタル酸、モノペルオキシコハク酸、及びモノペルオキシシクロヘキシルジカルボン酸、又は上記モノペルオキシジカルボン酸の少なくとも2種の混合物の群から選択される。
【0049】
本発明に係る実施形態11においては、組成物は実施形態10に従って設計され、モノペルオキシジカルボン酸はモノペルオキシフタル酸である。
【0050】
本発明に係る実施形態12においては、組成物は実施形態10又は11の一方に従って設計され、組成物はモノペルオキシフタル酸のマグネシウム塩を含む。
【0051】
組成物のフタル酸をモノペルオキシジカルボン酸として選択することが好ましく、そのマグネシウム塩を選択することが特に好ましい。「フタル酸」とは、オルトフタル酸、すなわち1,2−ベンゼンジカルボン酸を意味すると理解すべきである。
【0052】
芳香族モノペルオキシジカルボン酸の塩は、脂肪族又は脂環式モノペルオキシジカルボン酸の塩よりも安定である。さらに、非置換芳香族ペルオキシカルボン酸の塩はフタル酸よりも不安定である。それは、後者が、ペルオキシカルボキシル官能基を安定化する電子吸引性置換基を含むからである。こうして、モノペルオキシフタル酸は、酸素を放出しながらフタル酸に分解するのがさほど容易ではない。モノペルオキシフタル酸のマグネシウム塩は、貯蔵時に安定であり、技術的に妥当な量で安価に市販されている。
【0053】
本発明に係る実施形態13においては、組成物は実施形態1〜12のいずれか一つに従って設計され、組成物は少なくとも1種のラジカル重合用モノマー及び少なくとも1種の有機ポリマーを含み、ポリマーは前記モノマーに可溶である。
【0054】
少なくとも1種のラジカル重合用モノマーに可溶であるポリマーは、少なくとも10g/l、好ましくは少なくとも25g/l、特に好ましくは少なくとも50g/l、更に特に好ましくは少なくとも100g/lが前記ラジカル重合用モノマーに溶解するポリマーであると理解すべきである。重合性モノマーに可溶であるポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーとすることができる。前記可溶性ポリマーは、好ましくは、平均(重量)モル質量(Mw)が少なくとも150,000g/mol、特に少なくとも200,000g/mol、最高500,000g/mol以下のポリマーである。
【0055】
本発明に係る組成物中に存在する前記ラジカル重合用モノマーに可溶であるポリマーの量は、通常、本発明に係る組成物の総重量に対して1〜85重量%の範囲である。したがって、以下のペーストA及び/又はB並びに粉体成分C及び/又はモノマー成分Dのポリマー含有量は、互いに無関係に、ペースト、粉体成分又はモノマー成分のそれぞれの全組成物に対して1〜85重量%とすることができる。
【0056】
本発明に係る実施形態14においては、組成物は実施形態1〜13のいずれか一つに従って設計され、有機ポリマーは、1〜20個のC原子をアルキル基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリール基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリールアルキル基中に各々独立に有し、1〜10個のC原子をアルキルエステル基中に各々独立に有する、ポリ(アルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリール−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリールアルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、又は前記ポリマーの少なくとも2種を含む混合物から選択される。
【0057】
本発明に係る組成物は、モノマーに可溶である少なくとも1種の有機ポリマー、又はモノマーに可溶である有機ポリマーの混合物を含む骨セメントであり、ポリマーはポリアクリラートである。有機ポリマーは、特に、アルキル基中に1〜20個のC原子、好ましくは1〜18個のC原子を各々独立に有する、特に1〜4個のC原子を有する、アリール基中に6〜13個のC原子を各々独立に有する、特に6、10、12又は13個のC原子を有する、アリールアルキル基中に6〜14個のC原子を各々独立に有する、特に8〜12個のC原子を有する、及びアルキルエステル基中に1〜10個のC原子を各々独立に有する、特に1〜4個のC原子を有する、ポリ(アルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリール−2−アクリル酸アルキルエステル)、ポリ(アリールアルキル−2−アクリル酸アルキルエステル)、又は前記ポリマーの少なくとも2種を含む混合物から選択される。
【0058】
本発明に係る実施形態15においては、組成物は実施形態1〜14のいずれか一つに従って設計され、有機ポリマーは、ポリ(メタクリル酸メチルエステル)、ポリ(メタクリル酸エチルエステル)、ポリ(メチルメタクリル酸プロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸イソプロピルエステル)、ポリ(メタクリル酸メチル−コ−アクリル酸メチル)、ポリ(スチレン−コ−メタクリル酸メチル)、前記化合物のコポリマー、及び前記ポリマーの少なくとも2種を含む混合物の群から選択され、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)が特に好ましく使用される。
【0059】
本発明に係る組成物中に存在する前記ラジカル重合用モノマーに可溶であるポリマーの量は、通常、本発明に係る組成物の総重量に対して1〜85重量%の範囲である。したがって、以下のペーストA及び/又はB並びに粉体成分C及び/又はモノマー成分Dのポリマー含有量は、互いに無関係に、ペースト、粉体成分又はモノマー成分のそれぞれの全組成物に対して1〜85重量%とすることができる。
【0060】
少なくとも1種のポリ(メタクリル酸メチルエステル)(PMMA)及びメタクリル酸メチルエステル(MMA)は、それぞれ、特に好ましい有機ポリマー及びモノマーとして使用され、更なるモノマー又はPMMAのコポリマーを含むそれらの混合物も使用することができる。
【0061】
分子量(MW:molecular weight)が好ましくは200,000g/mol以上のポリマー、特にポリアクリラートは、粉体成分を製造するためのモノマーに可溶であるポリマーとして使用され、500,000g/mol以上の分子量が好ましい。分子量が500,000g/mol以下のポリマーをペースト中で使用することもできる。この状況においては、適切な分子量は、一方で、ペースト又は粉体成分が製造されるかどうかによって、ペースト中に存在する更なる成分によって、また、ポリマーが使用モノマーに可溶でなければならないことによって、決定される。
【0062】
本発明に係る実施形態16においては、組成物は実施形態1〜15のいずれか一つに従って設計され、モノマーは、1〜20個のC原子をアルキル基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリール基中に各々独立に有し、6〜14個のC原子をアリールアルキル基中に各々独立に有し、1〜10個のC原子をアルキルエステル基中に各々独立に有する、少なくとも1種の2−アルキル−アクリル酸アルキルエステル、2−アリール−アクリル酸アルキルエステル、2−アリールアルキル−アクリル酸アルキルエステル、又は前記モノマーの少なくとも2種を含む混合物から選択される。
【0063】
この状況においては、アルキルエステル基は、特に1〜4個のC原子を有する、線状、分枝又は環式アルキル基を含むことができる。
【0064】
メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エステル又はアルキルアクリル酸メチルエステルがこの状況においては好ましい。メタクリル酸メチルエステルなどのメタクリラートモノマー、特に温度25℃及び圧力1,013hPaで液体であるメタクリラートモノマーが特に好ましい。好ましくは、ラジカル重合用モノマーは、ビスフェノールA由来のメタクリル酸エステルではない。
【0065】
好ましくは、メタクリラートモノマーは、メタクリル酸エステルである。好ましくは、メタクリル酸エステルは、単官能性メタクリル酸エステルである。好ましくは、前記物質は疎水性である。疎水性単官能性メタクリル酸エステルを使用すると、水の吸収のために骨セメント体積が後で増加して骨に損傷を与えるのを防止することができる。好ましい一実施形態によれば、単官能性メタクリル酸エステルは、エステル基以外に更なる極性基を含まない場合、疎水性である。単官能性疎水性メタクリル酸エステルは、好ましくは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミド基、スルホン酸基、硫酸基、リン酸基及びホスホン酸基を含まない。
【0066】
本発明に従って使用されるラジカル重合用モノマーは、好ましくは、モル質量が1,000g/mol未満である。これは、モノマーの混合物の成分であるラジカル重合用モノマーも含み、モノマーの混合物のラジカル重合用モノマーの少なくとも1種は、モル質量が1,000g/mol未満の明確な構造を有する。
【0067】
ラジカル重合用モノマーは、好ましくは、水溶液、好ましくはラジカル重合用モノマーを1:1で添加した水溶液のpHが5〜9の範囲、好ましくは5.5〜8.5の範囲、更により好ましくは6〜8の範囲、特に好ましくは6.5〜7.5の範囲であることを特徴とする。
【0068】
特に好ましい一実施形態によれば、メタクリラートモノマーは、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、又は前記2種のモノマーの混合物である。
【0069】
本発明に係る実施形態17においては、組成物は実施形態1〜16のいずれか一つに従って設計され、有機ポリマーは、少なくとも1種のポリ(メタクリル酸メチルエステル)(PMMA)又はポリ(メタクリル酸メチルエステルコポリマー)、及びモノマーとしてメタクリル酸メチルエステル(MMA)を含む。これら及び更なるモノマーの混合物をこの状況において使用することもできる。
【0070】
本発明の一主題は、無機添加剤粒子、特にBET表面積(BET surface)が少なくとも40m
2/gであるものを含む組成物でもあり、添加剤は、好ましくは、共有結合したヒドロキシル基を含む。本発明に係る適切な無機添加剤粒子は、粒子に共有結合したHO−Si基(シラノール基)を含む。粒子表面に並んだ前記ヒドロキシル基によって充填剤粒子間の水素結合が形成され、それは機械又は熱エネルギーの作用によって可逆的に遊離することができる。
【0071】
無機添加剤粒子は、好ましくは、焼成二酸化ケイ素、焼成混合金属−酸化ケイ素、ベントナイト、モンモリロナイト、及び前記添加剤の少なくとも2種を含む混合物の群から選択される。
【0072】
さらに、疎水性にした焼成二酸化ケイ素を使用することも可能である。疎水性二酸化ケイ素は、焼成二酸化ケイ素をジアルキルジクロロシラン(例えば、ジメチルジクロロシラン)で処理することによって先行技術に従って製造することができる。
【0073】
BET表面積(BET surface)が少なくとも40m
2/g、特に好ましくは200m
2/g、最も好ましくは300m
2/gの焼成二酸化ケイ素は、特に好ましい無機充填剤粒子である。前記焼成二酸化ケイ素は、BET比表面積(specific BET surfaces)が50m
2/g、90m
2/g、200m
2/g及び380m
2/gのAerosil(登録商標)の商品名で市販されている。
【0074】
BET表面積(BET surface)が少なくとも200m
2/gの焼成酸化ケイ素が無機添加剤粒子として特に好ましい。BET表面積(BET surface)が少なくとも300m
2/gの焼成酸化ケイ素を無機添加剤粒子として使用することも好ましい。本発明に係る適切な無機添加剤粒子は、好ましくは、比表面積(specific surface)が270〜330m
2/gである約7nmの一次粒子を含む。
【0075】
BET測定は、ガス吸着によって固体表面の特性を調べる分析手順である。前記測定方法は、DIN ISO9277:2003−05(BET法に従うガス吸着による固体の比表面積(specific surface)の測定)に記載されている。
【0076】
本発明に係る組成物は、可溶性有機ポリマー、特にポリメタクリル酸メチル(PMMA)、及びラジカル重合用モノマー、特にメタクリル酸メチルエステルとは別に、無機添加剤粒子を、全組成物に対して好ましくは濃度0.01〜0.5重量%、特に0.01〜0.25重量%、好ましくは0.02〜0.14重量%で含む。本発明によれば、粉体成分と液体モノマー成分を混合することによって製造されるセメント練粉は、無機添加剤粒子を濃度0.01〜0.14重量%で含む。
【0077】
上記成分に加えて、本発明に係る組成物は、放射線不透過性物質、重合開始剤及び/又は重合促進剤、任意に、さらに、添加剤とは異なり単に濃化効果を示す充填剤、例えば、BET表面積(BET surface)が明らかに35m
2/g未満である二酸化ケイ素を含む。
【0078】
本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への寄与は、ペーストA及びペーストBを含むキット1によって提供され、
(a)ペーストAは、各々ペーストAの総重量に対して、
(a1)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、特にその15〜85重量%、好ましくはその20〜70重量%、より好ましくはその25〜60重量%、特に好ましくはその25〜50重量%、
(a2)(a1)に可溶である少なくとも1種の有機ポリマー、特にその5〜50重量%、好ましくはその10〜40重量%、特に好ましくはその20〜30重量%、及び
(a3)任意に、少なくとも1種の重合阻害剤、特にその0.05〜1.0重量%、及び
(a4)レドックス開始剤系の少なくとも1種の成分、特にその0.1〜10重量%、好ましくはその0.01〜8重量%、特に好ましくはその0.01〜5重量%、
並びに、任意に、(a1)に不溶である放射線不透過性物質及び/又は充填剤などの更なる成分
を含み、
(b)ペーストBは、各々ペーストBの総重量に対して、
(b1)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、特にその15〜85重量%、好ましくはその20〜70重量%、より好ましくはその25〜60重量%、特に好ましくはその25〜50重量%、
(b2)(b1)に可溶である少なくとも1種の有機ポリマー、特にその5〜50重量%、好ましくはその10〜40重量%、特に好ましくはその20〜30重量%、及び
(b3)少なくとも1種の重合促進剤、特にその0.0005〜0.5重量%、
並びに、任意に、更なる成分、(b1)に不溶である放射線不透過性物質及び/又は充填剤
を含み、
ペーストA又はBの少なくとも一方は、成分(a5)若しくは(b4)として、又はペーストAとBの両方は、成分(a5)及び(b4)として、少なくともある含有量のモノペルオキシジカルボン酸の薬理学的に許容される塩、特に組成物の総量に対してその0.5〜6.0重量%、好ましくはその1.5〜5重量%、特に好ましくはその2〜4.5重量%、より好ましくはその3.0〜4.0重量%を含む。
【0079】
この状況においては、ペーストの各々は、全組成物に対して0.01〜0.5重量%、特に0.01〜0.25重量%、好ましくは0.02〜0.14重量%の添加剤が、ペーストAとBを特に約1〜1プラス/マイナス0.5のどちらかの値の比で混合することによって得ることができる組成物中に存在するように、無機添加剤粒子を0.001〜2重量%、特に0.001〜1重量%の濃度で含むことができる。
【0080】
以下の粉体成分C及びペーストDにも同じことが同様に当てはまる。
【0081】
上で定義したモノマー及びポリマーをペーストA及びBにおけるモノマー及びポリマーとして使用する。以下の粉体成分C及びペーストDにも同じことが同様に当てはまる。
【0082】
本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への寄与は、粉体成分C及び液体モノマー成分Dを含むキット2によって成され、
(c)粉体成分Cは、各々粉体成分Cの総重量に対して、
(c1)少なくとも1種の粉末ポリ(メタ)アクリラート、特にその1〜95重量%、好ましくは最高85重量%、特に好ましくは50〜80重量%、
(c2)少なくとも1種の粉末放射線不透過性物質、特にその3〜60重量%、好ましくはその3〜30重量%、特に好ましくはその5〜15重量%、及び
(c3)少なくとも1種の重合開始剤、特にその0.01〜10重量%、好ましくはその0.01〜8重量%、特に好ましくはその0.01〜5重量%、更なる好ましくはその0.4〜3.0重量%、並びに、任意に、粉末充填剤などの更なる成分
を含み、
(d)モノマー成分Dは、各々モノマー成分Dの総重量に対して、
(d1)少なくとも1種のラジカル重合用モノマー、特にその80〜99.9995重量パーセント、好ましくはその80〜99重量%、
(d2)任意に、少なくとも1種の重合阻害剤、特にその0.1〜1.5重量%、
(d3)任意に、(d1)に可溶である少なくとも1種の有機ポリマー、特にその最高19重量%、
(d4)少なくとも1種の重合促進剤、特にその0.0005〜1.5重量%、好ましくはその0.1〜1.5重量%、
並びに、任意に、(d1)に不溶である放射線不透過性物質及び/又は充填剤、及び/又は添加剤などの更なる成分
を含み、
粉体成分Cは、成分(c4)として、ある含有量のモノペルオキシジカルボン酸の薬理学的に許容される塩、特に組成物の総量に対してその0.5〜6.0重量%、好ましくはその1.5〜5重量%、特に好ましくはその2〜4.5重量%、より好ましくはその3.0〜4.0重量%を含む。
【0083】
本発明によれば、キットは、少なくとも2成分で構成される系であると理解すべきである。以下では2成分(例えば、ペーストA及びペーストB)に言及するが、キットは、必要に応じて、2成分を超える、例えば、3、4、5又は5成分を超える成分を含むこともできる。個々のキット成分は、好ましくは、1キット成分の成分要素が別のキット成分の成分要素に接触しないように、互いに分離してパッケージされるように提供される。したがって、例えば、それぞれのキット成分を互いに分離してパッケージすることができ、それらを1個の貯蔵容器に一緒に貯蔵することができる。
【0084】
好ましくは、キットは、骨セメントとして使用するための組成物を製造する装置として適切に設計され、第1の容器及び第2の容器、並びにペーストAとBの混合のための混合ユニットを含み、第1の容器は、例えば、ペーストAを含み、第2の容器はペーストBを含み、容器の少なくとも一方は、開口後にペーストAとペーストBが混合されるように開口することができる。
【0085】
キット1を参照すると、この目的のために、少なくとも2種のペーストAとBが混合され、本発明に係る組成物が得られる。混合比は、好ましくは、ペーストA0.5〜1.5重量部及びペーストB0.5〜1.5重量部である。特に好ましい一実施形態によれば、各々ペーストAとBの総重量に対して、それぞれ、ペーストAの割合は30〜70重量%であり、ペーストBの割合は30〜70重量%である。
【0086】
キット1のペーストを混合した後、最終的に得られる組成物は、1〜2分以下の後に、ISO5833標準によれば不粘着である。
【0087】
キット2の場合、粉体成分Cとモノマー成分Dの混合比は、好ましくは3:1〜1:2、特に2:1重量部である。混合プロセスは、一般的な混合装置、例えば、静的ミキサー又は動的ミキサーを含むことができる。したがって、本発明に係る組成物を製造する装置としてのキット2は、粉体成分Cの第1の容器、及びモノマー成分Dの第2の容器を備えることができる。
【0088】
ペーストA及び/又はB、あるいは粉体成分Cの一方において、各々全組成物100重量%に対して指定量で上記化合物を薬理学的に許容されるモノペルオキシ(monopreoxy)ジカルボン酸塩として使用することが好ましい。
【0089】
前述の定義に従う粉体の形態の有機ポリマーを粉末ポリ(メタ)アクリラートとして使用する。粉末PMMAが好ましい。一般に、添加剤内容物は、粉体成分とペーストの両方に存在し得る。
【0090】
2成分系の2種のペーストAとB又は粉体成分Cとモノマー成分Dを組み合わせることによって得られた本発明に係る組成物の場合、前記組成物は、好ましくは、(2成分系の一方のペースト/成分中に存在する)少なくとも1種の重合開始剤及び(2成分系の他方のペースト/成分中に存在する)少なくとも1種の重合促進剤を含む。
【0091】
通常、ペーストA及び/又はB並びに粉体成分C及び/又はモノマー成分Dは、各々互いに無関係に、放射線不透過性物質を含む。
【0092】
上記ペーストAとBは、互いに任意の比で混合することができ、ペーストAとBを本質的に1:1の比で混合に使用することが好ましいことが判明し、その比は、互いに無関係にプラス/マイナス50%変動し得る。
【0093】
本発明に係る組成物、ペースト及び/又は粉体成分は、妥当であれば、(好ましくはラジカル重合用モノマーに可溶である)少なくとも1種の重合開始剤、(好ましくはラジカル重合用モノマーに可溶である)少なくとも1種の重合促進剤、少なくとも1種の共重合促進剤、又は、妥当であれば、少なくとも1種の共重合開始剤を含むことができる。
【0094】
1成分系が本発明に係る組成物である場合、重合開始剤は、好ましくは、活性化可能な重合開始剤、例えば、ペーストとして存在する組成物中に溶解若しくは懸濁した光開始剤、又はペースト中に溶解若しくは懸濁した光開始剤系である。開始剤(単数又は複数)を用意し、例えば、容器部、投与設備又は輸送カニューレ中で、開始剤をペーストと一時的に接触させることも可能である。
【0095】
さらに、1成分系においては、本発明に係る組成物又はペーストは、活性化可能な重合開始剤とは別に導電性放射線不透過性物質を含むこともできる。粒径が0.5〜500μmであるコバルト、鉄、NdFeB、SmCo、コバルト−クロム鋼、ジルコニウム、ハフニウム、チタン、チタン−アルミニウム−ケイ素合金、及びチタン−ニオブ合金でできた粒子は、この状況において特に適している。不透過性物質を加熱する500Hz〜50kHzの範囲の周波数の交流磁場によって前記導電性放射線不透過性物質における渦電流を誘導することが可能である。伝熱のため、開始剤も加熱され、熱的に分解するように誘導される。
【0096】
本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への寄与は、硬化性骨セメントの実施形態1によって成され、骨セメントは、実施形態1〜17のいずれか一つによる本発明に係る組成物の重合によって得ることができる。本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への別の寄与は、硬化性骨セメントの実施形態2によって成され、骨セメントは、キット1のペーストAとBを混合することによって得ることができる。本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への別の寄与は、硬化性骨セメントの実施形態3によって成され、骨セメントは、キット2の粉体成分Cとモノマー成分Dを混合し、重合することによって得ることができる。
【0097】
この状況においては、硬化性骨セメントは、薬理学的に許容されるモノペルオキシジカルボン酸塩の含有量が、全組成物に対して、特に0.5〜6.0重量%、好ましくは1.5〜5重量%、特に好ましくは2〜4.5重量%、より好ましくは3.0〜4.0重量%である。
【0098】
本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への寄与は、実施形態1〜17のいずれか一つに係る組成物の重合によって得ることができる硬化性骨セメントの実施形態1によって成される。本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への別の寄与は、キット1のペーストAとBを混合し、重合することによって得ることができる硬化性骨セメントの実施形態2によって成される。本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への別の寄与は、キット2の粉体成分Cとモノマー成分Dを混合し、重合することによって得ることができる硬化性骨セメントの実施形態3によって成される。
【0099】
この状況においては、硬化骨セメントは、薬理学的に許容されるモノペルオキシジカルボン酸塩の含有量が、全組成物に対して、特に0.5〜6.0重量%、好ましくは1.5〜5重量%、特に好ましくは2〜4.5重量%、より好ましくは3.0〜4.0重量%である。
【0100】
好ましくは、薬理学的に許容されるモノペルオキシジカルボン酸塩は、水、湿潤条件又は水溶液条件の存在下でのみ、特に好ましくは硬化後にのみ、硬化性又は硬化組成物から遊離し、又はその時初めて遊離可能である。
【0101】
したがって、本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への寄与は、実施形態1〜3のいずれか一つに係る硬化骨セメントの実施形態4によっても成され、モノペルオキシジカルボン酸の塩は、硬化中に水の存在下で組成物から溶解し、モノペルオキシジカルボン酸はペルオキシダーゼによって5分以内に分解されず、好ましくはカタラーゼ酵素によって分解されない。
【0102】
本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への寄与は、実施形態1〜17のいずれか一つに係る組成物の重合によって得ることができる成形体の実施形態1によっても成される。本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への別の寄与は、キット1のペーストAとBを混合し、続いて重合することによって得ることができる成形体の実施形態2によっても成される。本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への別の寄与は、キット2の粉体成分Cとモノマー成分Dを混合し、続いて重合することによって得ることができる成形体の実施形態3によっても成される。
【0103】
この状況においては、成形体は、薬理学的に許容されるモノペルオキシジカルボン酸塩の含有量が、全成形体に対して、特に0.5〜6.0重量%、好ましくは1.5〜5重量%、特に好ましくは2〜4.5重量%、より好ましくは3.0〜4.0重量%である。
【0104】
本発明に係る目的の少なくとも1つの達成への寄与は、一次全関節内部人工器官(primary total articular endoprostheses)の機械的固定のための、修正全関節内部人工器官(revision total articular endoprostheses)の機械的固定のための、骨粗鬆症骨組織の増強のための、特に好ましくは、椎体形成術、椎骨形成術、及び骨粗鬆症骨組織における穿孔の増強のための、骨空洞を充填するための、大腿骨形成術のための、スペーサの製造のための、関節内部人工器官の機械的固定のための、頭蓋骨欠損を被覆するための、若しくは局所抗生物質療法用担体材料の製造のための、移植片、防腐性移植片、修正移植片としての、又は薬学的活性物質の局所放出用担体材料としての、実施形態1〜17のいずれか一つに係る組成物の使用、又はキット1の使用2若しくはキット2の使用3によっても成される。
【0105】
重合開始剤として考えられるのは、特に、過酸化物及びバルビツール酸誘導体であり、好ましくは少なくとも1g/l、より好ましくは少なくとも3g/l、更により好ましくは少なくとも5g/l、特に好ましくは少なくとも10g/lの過酸化物及びバルビツール酸誘導体が重合性モノマーに25℃の温度で溶解することができる。重合開始剤は、通常、水素ラジカルを形成し酸素を切り離している間に、ラジカル反応によって分解する。開始剤は、水の存在下で過酸化水素を形成しない。クメンヒドロペルオキシドは、水の存在下で再配列して、ケトン及びフェノールを形成することができる。H−O−O・、R−O−O・(R=有機残基)などのラジカルは、過酸化水素とはみなされない。
【0106】
重合開始剤に関して、過酸化物は、少なくとも1個のペルオキソ基(−O−O−)を含む化合物を意味すると理解される。過酸化物は、好ましくは遊離酸基を含まない。過酸化物は、無機過酸化物又は有機過酸化物、例えば、毒物学的に許容されるヒドロペルオキシドとすることができる。しかし、ヒドロペルオキシドは、過酸化水素ではない。特に好ましい一実施形態によれば、過酸化物は、クメン−ヒドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチル−ヒドロペルオキシド、t−ブチル−ヒドロペルオキシド、t−アミル−ヒドロペルオキシド、ジ−イソプロピルベンゼン−モノ−ヒドロペルオキシド及び少なくともそれらの混合物からなる群から選択される。
【0107】
バルビツール酸誘導体は、好ましくは、1−一置換バルビツラート、5−一置換バルビツラート、1,5−二置換バルビツラート及び1,3,5−三置換バルビツラートからなる群から選択されるバルビツール酸誘導体である。本発明に係るペーストの特別な一改良によれば、バルビツール酸誘導体は、1,5−二置換バルビツラート及び1,3,5−三置換バルビツラートからなる群から選択される。
【0108】
バルビツール酸の置換基のタイプに関して制限はない。置換基は、例えば、脂肪族又は芳香族置換基とすることができる。この状況においては、アルキル、シクロアルキル、アリル又はアリール置換基が好ましい可能性がある。置換基はヘテロ原子を有することもできる。特に、置換基をチオール置換基とすることができる。したがって、1,5−二置換チオバルビツラート又は1,3,5−三置換チオバルビツラートが好ましい可能性がある。好ましい一実施形態によれば、置換基は各々、1から10個の炭素原子の長さ、より好ましくは1から8個の炭素原子の長さ、特に好ましくは2から7個の炭素原子の範囲の長さである。
【0109】
本発明によれば、1位及び5位に各々1個の置換基を有するバルビツラート、又は1、3及び5位に各々1個の置換基を有するバルビツラートが好ましい。別の好ましい一実施形態によれば、バルビツール酸誘導体は、1,5−二置換バルビツラート又は1,3,5−三置換バルビツラートである。特に好ましい一実施形態によれば、バルビツール酸誘導体は、1−シクロヘキシル−5−エチル−バルビツール酸、1−フェニル−5−エチル−バルビツール酸及び1,3,5−トリメチル−バルビツール酸からなる群から選択される。
【0110】
重金属塩及び重金属錯体からなる群から選択される重金属化合物は、重合促進剤として好ましい。本発明によれば好ましい重金属化合物は、水酸化銅(II)、メタクリル酸銅(II)、銅(II)アセチルアセトナート、2−エチル−ヘキサン酸銅(II)、水酸化コバルト(II)、2−エチル−ヘキサン酸コバルト(II)、塩基性炭酸銅(II)、2−エチル−ヘキサン酸鉄(II)、2−エチル−ヘキサン酸鉄(III)、及びそれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。
【0111】
本発明に係る組成物又はペーストの別の一改良によれば、重合促進剤は、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−アニリン、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、塩化リチウム、サッカリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、及び1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ−5−エン、フタルイミド、マレイミド、スクシンイミド、ピロメリット酸ジイミド、及びそれらの少なくとも2種の混合物からなる群から選択される。
【0112】
本発明の別の有利な一改良は、重合促進剤として、重金属塩と、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−アニリン、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムクロリド、塩化リチウム、サッカリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、及び1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ−5−エン、フタルイミド、マレイミド、スクシンイミド及びピロメリット酸ジイミドを含む群の少なくとも1員との組合せの使用を含む。この状況においては、2種の重合促進剤の組合せ及び3種の重合促進剤の組合せが本発明の範囲において開示される。
【0113】
本発明の有利な一改良は、本発明に係る組成物、又はペーストA、B若しくはモノマー成分Dのいずれかは、妥当であれば、少なくとも1種の共重合促進剤を含み、第三級アミン及びアミジンが共重合促進剤として好ましく、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス−ヒドロキシエチル−p−トルイジン、N,N−ジメチル−アニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0−]ウンデカ−7−エン及び1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)−ノナ−5−エンが共重合促進剤(co−accelerators)として特に好ましいことである。
【0114】
本発明に係る組成物、特にペースト又はモノマー成分においては、本発明に係る組成物の総重量に対して、又は各々互いに無関係に、ペーストA、B若しくはモノマー成分Dのいずれかの総重量に対して、最高10重量%の(全)量の重合開始剤、重合促進剤、共重合促進剤又は重合開始剤、重合促進剤及び共重合促進剤を含むことができる。
【0115】
本発明に係る組成物、特に、ペーストA及びB並びにモノマー成分D及び粉体成分Cは、上記成分とは別に更なる成分を含むことができる。
【0116】
本発明に係る組成物、又はペーストA、B及びモノマー成分Dのいずれか若しくは粉体成分Cの好ましい実施形態によれば、これらは、各々互いに無関係に、少なくとも1種の放射線不透過性物質を含むことができる。放射線不透過性物質は、この分野における一般的な放射線不透過性物質とすることができる。適切な放射線不透過性物質は、ラジカル重合用モノマーに可溶でも不溶でもよい。放射線不透過性物質は、好ましくは、金属酸化物(例えば、二酸化ジルコニウムなど)、硫酸バリウム、毒物学的に許容される重金属粒子(例えば、タンタルなど)、フェライト、マグネタイト(妥当であれば、超常磁性マグネタイトも)、及び生体適合性カルシウム塩からなる群から選択される。前記放射線不透過性物質は、好ましくは、平均粒径が10nmから500μmの範囲である。さらに、考えられる放射線不透過性物質としては、3,5−ビス(アセトアミド)−2,4,6−トリヨード安息香酸のエステル、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)のエステルを含むガドリニウムキレートなどのガドリニウム化合物も挙げられる。本発明に係る組成物、又はペーストA若しくはB並びに粉体成分C若しくはモノマー成分Dのいずれかにおける放射線不透過性物質濃度、特に二酸化ジルコニウム濃度は、各々互いに無関係に、対応する全組成物に対して、例えば、3〜30重量%の範囲とすることができる。放射線不透過性物質を本明細書では充填剤とみなさない。
【0117】
更に好ましい一実施形態によれば、本発明に係る組成物、又は上記ペーストのいずれかは、少なくとも1種の着色剤を含むことができる。着色剤は、この分野における一般的な着色剤とすることができ、好ましくは食品着色剤とすることができる。さらに、着色剤は、少なくとも1種のラジカル重合用モノマーに可溶でも不溶でもよい。特に好ましい一実施形態によれば、着色剤は、E101、E104、E132、E141(クロロフィリン)、E142、リボフラビン及びリサミングリーンからなる群から選択される。本発明によれば、着色剤という用語は、例えば、着色ワニスグリーンなどの着色ワニス、E104とE132の混合物のアルミニウム塩も含むものとする。
【0118】
更に好ましい一実施形態によれば、本発明に係る組成物は、少なくとも1種の生体適合性エラストマーを含むことができる。好ましくは、生体適合性エラストマーは粒子である。好ましくは、生体適合性エラストマーは、少なくとも1種のラジカル重合用モノマーに可溶である。生体適合性エラストマーとしてのポリブタジエンの使用は、特に適していることが判明した。
【0119】
更に好ましい一実施形態によれば、本発明に係る組成物は、吸着基を有する少なくとも1種のモノマーを含むことができる。吸着基は、例えば、アミド基とすることができる。したがって、吸着基を有するモノマーは、例えば、メタクリル酸アミドとすることができる。吸着基を有する少なくとも1種のモノマーを使用すると、骨セメントと関節内部人工器官の結合に特に影響を及ぼすことができる。
【0120】
更に好ましい一実施形態によれば、本発明に係る組成物、又はペーストA、Bの少なくとも一方若しくはモノマー成分Dは、安定剤とも呼ばれる少なくとも1種の重合阻害剤を含むことができる。重合阻害剤は、ペーストに含まれるラジカル重合用モノマーの自発的な重合を防止するのに適しているべきである。さらに、重合阻害剤は、本発明に係るペーストに含まれる他の成分と妨害相互作用すべきではない。前記タイプの重合阻害剤は、先行技術から公知である。好ましい一実施形態によれば、安定剤は、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール及び/又は2,6−ジ−tert−ブチル−フェノールである。
【0121】
本発明を以下に示す実施例によってより詳細に説明するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0122】
実施例1〜5
ISO5833による機械的パラメータの測定
75%過酸化ジベンゾイルを重合開始剤として(アクゾノーベルから入手した、25重量%水で減感されたBPO、バッチ番号2612211601)、マグネシウムモノペルオキシ−o−フタラート六水和物をモノペルオキシジカルボン酸塩として(工業純度、含有量約80%、シグマアルドリッチから入手、製品番号69868、粒径<250μm)、二酸化ジルコニウムを放射線不透過性物質として(S.Goldmannから入手、バッチ番号FB100856)、ポリ(メタクリル酸メチル−コ−アクリル酸メチル)(Evonikから入手したPMMA−コ−MA、バッチ番号310HDF129)をコポリマー成分として使用して、下表に示すセメント粉体を製造する。
【0123】
【表1】
【0124】
実施例1は、モノペルオキシジカルボン酸塩を含まない基準実施例である。実施例2〜5は、本発明に係る実施例である。
【0125】
上記組成によれば、40gの粉体成分を実施例1(基準実施例)に使用し、40.63gの粉体成分を実施例2に使用し、41.5g(41 point to 5 g)の粉体成分を実施例3に使用し、43.38gの粉体成分を実施例4に使用し、44.5gの粉体成分を実施例5に使用した。
【0126】
以下の組成の液体モノマー成分(Heraeus Medical、バッチ番号5271)を機械的性質及び抗菌効果の測定のための骨セメントの製造に使用した:ラジカル重合用モノマーとして98.0重量%メタクリル酸メチル、重合促進剤として2.0重量%N,N−ジメチル−p−トルイジン、及び重合阻害剤として20ppm p−ヒドロキノン。
【0127】
試験体の製造
ISO5833は、50MPa以上の曲げ強度、1,800MPa以上の曲げ弾性率、及び70MPa以上の圧縮強度を必要とする。試験体を機械的性質の試験のためにISO5833に従って製造した。
【0128】
この目的のために、実施例1〜5の上記組成によるセメント粉体を各々20ml液体モノマー成分と混合した。この結果、約60秒後に、数分後に硬化した不粘着で可塑的に変形可能な粘稠性セメント練粉を得た。基準実施例1及び発明実施例2〜5のセメント練粉を使用して、ISO5833による曲げ強度及び曲げ弾性率の試験のためのサイズが75mm×10mm×3.3mmの帯状試験体を作製した。さらに、円柱状試験体(直径6mm、高さ12mm)を圧縮強度試験用に作製した。
【0129】
試験体を23℃、相対湿度50%で24時間貯蔵後、曲げ強度、曲げ弾性率及び圧縮強度をISO5833に従ってZwick万能試験機を用いて測定した。結果を下表に要約する。
【0130】
【表2】
【0131】
この結果によれば、曲げ強度、曲げ弾性率及び圧縮強度に関するISO5833の機械的要件を基準実施例1及び発明実施例2〜5のセメントが満たした。さらに、モノペルオキシジカルボン酸塩の添加がラジカル重合に悪影響を及ぼさず、機械的性質の類似した試験体が実施例2〜5で得られることが示された。
【0132】
脱線維素ヒツジ血液の存在下における抗菌効果の測定
抗菌効果をJIS Z2801(日本工業規格)に沿ったフィルム接触法によって試験した。基準実施例1及び発明実施例2〜5のセメントを使用して、サイズ50mm×50mm×3mmの帯状セメント試験体を各実施例から3試験体作製した。試験体の表面を70重量%エタノール水溶液で消毒した。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)ATCC6538を試験菌として使用した。試験菌を5重量%血液溶液(0.9%塩化ナトリウム水溶液中の5重量%脱線維素ヒツジ血液)に接種した。各例において、濃度0.5〜2.0×10
6cfu/mlの試験菌の懸濁液0.2mlを試験体表面に塗布した。この結果、菌添加量は1.0〜4.0×10
5cfu/mlになった。試験体表面とプラスチックフィルムの距離が約100μmになるようにプラスチックフィルムを菌懸濁液上に置いた。接種した試験体を飽和蒸気雰囲気で36±1℃で24時間インキュベートした。次いで、菌を各々10ml生理食塩水を用いてPEバッグ中で剥離した。菌懸濁液をTSAプレート(トリプチケース(tripticase)ソイ寒天)上にまいた。次いで、TSAプレートを36±1℃で40〜48時間インキュベートした。次いで、生成したコロニーの数をコロニー計数器で数えた。1試験体当たりの菌数を希釈を考慮して求めた。各実施例の3個の試験体の菌数の平均を求め、減少率を基準試料を考慮して計算した。
【0133】
減少率(RF:Reduction factor)=c−d
ここで、
c:インキュベート試験体表面のlog
10菌数の算術平均
d:インキュベート基準試料体表面のlog
10菌数の算術平均
【0134】
【表3】
【0135】
実施例2〜5のセメントは、菌数が4log単位だけ大きく減少する。これは、試験菌の少なくとも99.99%が死滅したことを意味する。
【0136】
本発明に係る1カテゴリの成分の好ましい改良は、本発明に係るそれぞれの別のカテゴリの同様の又は対応する成分に対しても好ましいものとする。「有する」、「含む(comprising又はincluding)」などの用語は、任意に含まれる更なる要素、成分要素などを排除しないものとする。不定冠詞「1つ(a)」は、複数存在し得ることを排除しないものとする。