特許第6563989号(P6563989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6563989
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】変速位置検出装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 59/04 20060101AFI20190808BHJP
   F16H 61/02 20060101ALI20190808BHJP
   F16H 61/682 20060101ALI20190808BHJP
   F02D 29/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   F16H59/04
   F16H61/02
   F16H61/682
   F02D29/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-161923(P2017-161923)
(22)【出願日】2017年8月25日
(65)【公開番号】特開2019-39497(P2019-39497A)
(43)【公開日】2019年3月14日
【審査請求日】2018年9月21日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100182028
【弁理士】
【氏名又は名称】多原 伸宜
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(74)【代理人】
【識別番号】100105887
【弁理士】
【氏名又は名称】来山 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153349
【弁理士】
【氏名又は名称】武山 茂
(72)【発明者】
【氏名】天野 良彦
【審査官】 横山 幸弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−019154(JP,A)
【文献】 実開昭58−142378(JP,U)
【文献】 特開平10−103506(JP,A)
【文献】 特開平06−048216(JP,A)
【文献】 特開2009−184579(JP,A)
【文献】 特開2008−184950(JP,A)
【文献】 特開2013−181492(JP,A)
【文献】 特開2012−077657(JP,A)
【文献】 特開2012−177392(JP,A)
【文献】 特開2014−066144(JP,A)
【文献】 特開2010−236588(JP,A)
【文献】 特開平06−123355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00−61/12
F16H 61/16−61/24
F16H 61/26−61/36
F16H 61/66−61/70
F16H 63/00−63/38
F16H 63/40−63/50
F02D 29/00−29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、前記エンジンの出力を変速する変速機及び前記変速機のシフトドラムの回転角に応じた出力信号を出力するギアポジションセンサを備えると共に、メインクラッチ及びドッグ式トランスミッションを順に介して前記エンジンの駆動力を駆動輪に伝達する車両に搭載される変速位置検出装置であって、
前記回転角に応じて線形に変化する前記出力信号の出力値に基づいて前記回転角を検出する変速位置検出部と、
前記メインクラッチの接続又は遮断を検出するクラッチ状態検出部と、
前記ドッグ式トランスミッションの変速操作を検出する変速操作検出部と、
前記変速位置検出部により検出した前記回転角に対応する前記変速機の変速位置を判定する制御部と、
を有し、
前記変速位置検出部は、
前記出力値に基づいて前記回転角として、第1の回転角と、第2の回転角と、前記第1の回転角と前記第2の回転角との間のニュートラル回転角と、を検出し、
前記制御部は、
前記クラッチ状態検出部が前記メインクラッチの接続を検出している状態において前記変速操作検出部が前記ドッグ式トランスミッションの前記変速操作を検出した場合には、前記ドッグ式トランスミッションのドッグ同士の係合を解除し又は弱めて、前記ドッグ式トランスミッションの変速が可能となるように、前記エンジンの駆動力を制御する変速制御を実行し、前記変速位置検出部により前記第1の回転角を検出した際に第1の変速位置であると判定し、前記変速位置検出部により前記第2の回転角を検出した際に第2の変速位置であると判定すると共に、前記変速位置検出部により前記ニュートラル回転角を検出した状態が所定時間継続した際にニュートラル位置であると判定し、前記ニュートラル位置であると判定した場合には前記変速制御を解除する、
ことを特徴とする変速位置検出装置。
【請求項2】
前記所定時間は、
前記車両の運転者により前記第1の変速位置から前記第2の変速位置に変速されるまでの時間、又は前記第2の変速位置から前記第1の変速位置に変速されるまでの時間よりも長い時間に設定される、
ことを特徴とする請求項1記載の変速位置検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機の変速段を検出するギアポジションセンサを備えた車両に搭載される変速位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車等の車両の中には、運転者のシフト操作によりシフトする変速段を検出するギアポジションセンサを備えるものがある。かかるギアポジションセンサは、エンジン等の内燃機関の出力を変速する変速機のシフトドラムの回転角に応じた電気信号を出力する。このようなギアポジションセンサを設けた車両では、ギアポジションセンサからの電気信号に基づき変速段を検出した際に、その変速段に応じてエンジンの出力制御を実行又は終了する構成を採用するものがある。
【0003】
かかる状況下で、特許文献1は、内燃機関用制御装置に関し、ギアシフトスイッチ1の出力端子Pと可動接点Mとの間の電圧をギア位置検出電圧発生回路2に入力して得られたギア位置検出電圧Vgを、マイクロコンピュータ4に入力して判定用電圧と比較することにより、ギアシフトスイッチ1の可動接点Mが変速機のいずれかのシフト位置に対応する位置にあるのか、またはギアシフトスイッチが開放状態にあるのかを判別する構成を開示している。特許文献1の内燃機関用制御装置は、ギアシフトスイッチ1の開放状態の継続時間を計測して、開放状態の継続時間を設定値と比較し、開放状態の継続時間が設定値以上になったときに、変速機がニュートラル位置にあると判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−103460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の検討によれば、自動二輪車等の車両に搭載される例えばリターン式の変速機では、1速から2速又は2速から1速に変速される間に、一時的にニュートラル位置となるため、車両の運転者が1速から2速に又は2速から1速にシフト操作をした場合に、1速から2速又は2速から1速に直接変速したいという運転者の意思に反して、車両では、1速からニュートラル位置を経て2速に又は2速からニュートラル位置を経て1速にシフト操作されたものと判定して制御を行う。従って、1速から2速又は2速から1速に変速する途中でニュートラル位置であると判定された際に、例えば所定の制御が解除されることにより、車両の挙動が急変したり、運転者に違和感を与える恐れがあると共に、車両のインジケータ等にニュートラル位置であることを示すランプが不用意に点灯する恐れがある。
【0006】
本発明者の更なる検討によれば、特許文献1に開示されている装置は、2つの変速位置の間にニュートラル位置がなく、シフト操作の途中で必然的にニュートラル位置になる構成を有していない。従って、2つの変速位置の間にニュートラル位置を有する変速機については改良の余地がある。
【0007】
本発明は、以上の検討を経てなされたものであり、2つの変速位置の間にニュートラル位置が存在している構成を有する変速機を備える内燃機関を搭載する車両において、運転者の意思に反してニュートラル位置であると判定されることを防ぐことができ、所定の制御を正しく実行することができる変速位置検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するべく、本発明は、第1の局面において、エンジン、前記エンジンの出力を変速する変速機及び前記変速機のシフトドラムの回転角に応じた出力信号を出力するギアポジションセンサを備えると共に、メインクラッチ及びドッグ式トランスミッションを順に介して前記エンジンの駆動力を駆動輪に伝達する車両に搭載される変速位置検出装置であって、前記回転角に応じて線形に変化する前記出力信号の出力値に基づいて前記回転角を検出する変速位置検出部と、前記メインクラッチの接続又は遮断を検出するクラッチ状態検出部と、前記ドッグ式トランスミッションの変速操作を検出する変速操作検出部と、前記変速位置検出部により検出した前記回転角に対応する前記変速機の変速位置を判定する制御部と、を有し、前記変速位置検出部は、前記出力値に基づいて前記回転角として、第1の回転角と、第2の回転角と、前記第1の回転角と前記第2の回転角との間のニュートラル回転角と、を検出し、前記制御部は、前記クラッチ状態検出部が前記メインクラッチの接続を検出している状態において前記変速操作検出部が前記ドッグ式トランスミッションの前記変速操作を検出した場合には、前記ドッグ式トランスミッションのドッグ同士の係合を解除し又は弱めて、前記ドッグ式トランスミッションの変速が可能となるように、前記エンジンの駆動力を制御する変速制御を実行し、前記変速位置検出部により前記第1の回転角を検出した際に第1の変速位置であると判定し、前記変速位置検出部により前記第2の回転角を検出した際に第2の変速位置であると判定すると共に、前記変速位置検出部により前記ニュートラル回転角を検出した状態が所定時間継続した際にニュートラル位置であると判定し、前記ニュートラル位置であると判定した場合には前記変速制御を解除する変速位置検出装置である
【0009】
本発明は、第1の面に加えて、前記所定時間は、前記車両の運転者により前記第1の変速位置から前記第2の変速位置に変速されるまでの時間、又は前記第2の変速位置から前記第1の変速位置に変速されるまでの時間よりも長い時間に設定されることを第の局面とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の局面にかかる変速位置検出装置においては、エンジン、前記エンジンの出力を変速する変速機及び前記変速機のシフトドラムの回転角に応じた出力信号を出力するギアポジションセンサを備えると共に、メインクラッチ及びドッグ式トランスミッションを順に介して前記エンジンの駆動力を駆動輪に伝達する車両に搭載される変速位置検出装置であって、前記回転角に応じて線形に変化する前記出力信号の出力値に基づいて前記回転角を検出する変速位置検出部と、前記メインクラッチの接続又は遮断を検出するクラッチ状態検出部と、前記ドッグ式トランスミッションの変速操作を検出する変速操作検出部と、前記変速位置検出部により検出した前記回転角に対応する前記変速機の変速位置を判定する制御部と、を有し、前記変速位置検出部は、前記出力値に基づいて前記回転角として、第1の回転角と、第2の回転角と、前記第1の回転角と前記第2の回転角との間のニュートラル回転角と、を検出し、前記制御部は、前記クラッチ状態検出部が前記メインクラッチの接続を検出している状態において前記変速操作検出部が前記ドッグ式トランスミッションの前記変速操作を検出した場合には、前記ドッグ式トランスミッションのドッグ同士の係合を解除し又は弱めて、前記ドッグ式トランスミッションの変速が可能となるように、前記エンジンの駆動力を制御する変速制御を実行し、前記変速位置検出部により前記第1の回転角を検出した際に第1の変速位置であると判定し、前記変速位置検出部により前記第2の回転角を検出した際に第2の変速位置であると判定すると共に、前記変速位置検出部により前記ニュートラル回転角を検出した状態が所定時間継続した際にニュートラル位置であると判定し、前記ニュートラル位置であると判定した場合には前記変速制御を解除するものであるため、2つの変速位置の間にニュートラル位置が存在している構成を有する変速機を備える内燃機関を搭載する車両において、運転者の意思に反してニュートラル位置であると判定されることを防ぐことができ、所定の制御を正しく実行することができる。
【0011】
また、本発明の第2の局面にかかる変速位置検出装置によれば、所定時間は、車両の運転者により第1の変速位置から第2の変速位置に変速されるまでの時間、又は第2の変速位置から第1の変速位置に変速されるまでの時間よりも長い時間に設定されるものであるため、変速中に運転者の意思とは関係なくニュートラル位置と判定されることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の実施形態における変速位置検出装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態におけるギア判断処理の流れを示すフロー図である。
図3図3は、本発明の実施形態におけるシフト操作時のギアポジションセンサの出力電圧の推移を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態における変速位置検出装置につき、詳細に説明する。
【0014】
<変速位置検出装置の構成>
まず、図1を参照して、本実施形態における変速位置検出装置の構成について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における変速位置検出装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態における変速位置検出装置1は、ECU(Electronic Control Unit)等の電子制御装置によって構成され、図示を省略するメインクラッチ及びドッグ式トランスミッションを介してエンジンの駆動力を駆動輪に伝達する典型的には自動二輪車等の鞍乗型車両に搭載されている。
【0017】
変速位置検出装置1は、クラッチ状態検出部2、変速操作検出部3、変速段検出部4、制御部5、モータ駆動回路6、点火栓駆動回路7、燃料噴射弁駆動回路8及びカウンタ9を備えている。なお、これらのクラッチ状態検出部2、変速操作検出部3、変速段検出部4、及び制御部5は各々機能ブロックとして示している。また、変速位置検出装置1は、図示を省略するメモリ等を備えており、メモリには、変速位置検出装置1に必要な制御プログラム及び制御データ等が格納されている。
【0018】
具体的には、クラッチ状態検出部2は、運転者がメインクラッチを接続又は遮断する際のその操作に関する情報を坦持するクラッチスイッチ11からの入力信号に基づいて、メインクラッチの接続又は遮断を検出する。クラッチ状態検出部2は、このように検出したメインクラッチの断続操作に応じた電気信号を制御部5に入力する。
【0019】
変速操作検出部3は、運転者がドッグ式トランスミッションの変速操作を行う際のその変速操作に関する情報を坦持する変速操作スイッチ12からの入力信号に基づいて、ドッグ式トランスミッションの変速操作を検出する。変速操作検出部3は、このように検出したドッグ式トランスミッションの変速操作の有無に応じた電気信号を制御部5に入力する。
【0020】
変速段検出部4は、ギアポジションセンサ13が出力するドッグ式トランスミッションのシフトドラムの回転角に応じた出力信号の出力値に基づいて、ドッグ式トランスミッションで選択されている変速段(ギアポジション)に対応するシフトドラムの回転角を検出する。この際に、変速段検出部4は、ギアポジションセンサ13が出力する出力信号の出力値に基づいて、1速に対応する回転角と2速に対応する回転角との間のニュートラル位置に対応するニュートラル回転角を検出する。かかる出力信号の出力値は、シフトドラムの回転角に応じて線形に変化し、典型的には電圧値である。変速段検出部4は、このように検出したシフトドラムの回転角を示す電気信号を制御部5に入力する。
【0021】
制御部5は、クラッチ状態検出部2、変速操作検出部3及び変速段検出部4からの電気信号と、大気圧センサ15、スロットルポジションセンサ16、アクセル開度センサ17、及びクランク角センサ18からの入力信号と、を用いて、モータ駆動回路6、点火栓駆動回路7、燃料噴射弁駆動回路8又はインジケータ駆動回路22を制御する。
【0022】
ここで、大気圧センサ15は、大気圧に応じた電気信号を入力する。スロットルポジションセンサ16は、エンジンのスロットル開度に応じた電気信号を入力する。アクセル開度センサ17は、鞍乗型車両のアクセルグリップ等のアクセル操作部材の操作量(アクセル開度)に応じた電気信号を入力する。また、クランク角センサ18は、エンジンのクランク角(クランク軸の回転角度)に応じた電気信号を入力する。
【0023】
制御部5は、後述のギア判断処理を実行することにより、変速段検出部4からの電気信号及びカウンタ9でカウントするカウント値に基づいて、変速段検出部4により検出したシフトドラムの回転角に対応する変速段を判定する。制御部5は、所定の制御を実行している場合において変速段がニュートラル位置であると判定した場合には所定の制御を解除し、又は変速段がニュートラル位置であると判定した場合には所定の制御を実行する。
【0024】
ここで、変速段がニュートラル位置であると判定された場合に解除される所定の制御は、スロットル開度の制限制御、燃料カット制御、点火カット制御、エンジンの出力制御(トラクションコントロール)、アクセル操作よりもブレーキ操作を優先する制御(ブレーキオーバーライド)、エンジンの過回転防止制御、車両の速度制御(クルーズコントロール)又はドッグ式変速機のドッグ同士の係合を解除し又は弱める変速制御(変速アシスト制御)等である。また、上記のエンジンの出力制御は、スロットル開度制御、燃料噴射量制御、燃料カット制御、点火時期制御又は点火カット制御等である。変速段がニュートラル位置であると判定された場合に実行される所定の制御は、インジケータ23に対するニュートラル位置を示す点灯制御、エンジンのアイドル回転数制御(アイドルスピードコントロール)における吸気量制御又はエンジンの始動制御等である。
【0025】
制御部5は、上記の変速制御時において、クラッチ状態検出部2がメインクラッチの接続を検出している状態において変速操作検出部3がドッグ式トランスミッションの変速操作を検出した場合には、ドッグ式トランスミッションのドッグ同士の係合を解除し又は弱めて、ドッグ式トランスミッションの変速が可能となるようにエンジンの駆動力を制御する。具体的には、制御部5は、上記のエンジンの駆動力の制御を行うために、点火の停止及び/又は燃料の噴射の停止を実行するように点火栓駆動回路7及び/又は燃料噴射弁駆動回路8を制御すると共に、エンジンのスロットルバルブの開度(スロットル開度)、つまり実際のスロットル開度である実スロットル開度を調整するようにモータ駆動回路6を制御する。そして、制御部5は、このような、点火の停止、燃料の噴射の停止及びスロットル開度の調整のための各々の制御信号を、点火栓駆動回路7、燃料噴射弁駆動回路8及びモータ駆動回路6に入力する。
【0026】
モータ駆動回路6は、制御部5からの制御信号に従って、スロットルモータ14を駆動することによってスロットル開度を制御する。
【0027】
点火栓駆動回路7は、制御部5からの制御信号に従って、エンジンの点火栓19によるエンジンへの点火動作、つまり点火の開始、停止及び再開といった一連の点火動作を制御する。
【0028】
燃料噴射弁駆動回路8は、制御部5からの制御信号に従って、エンジンに燃料を噴射する燃料噴射弁20の、つまり燃料噴射の開始、停止及び再開といった一連の燃料噴射動作を制御する。
【0029】
カウンタ9は、制御部5の制御により、所定の値を設定可能であり、所定の値からのカウントを開始すると共にカウントを停止する。
【0030】
表示装置21は、車両の図示しないメータ装置に備えられ、インジケータ駆動回路22及びインジケータ23を備えている。
【0031】
インジケータ駆動回路22は、制御部5からの制御信号に従って、インジケータ23に車速、燃料の残量及び変速段等を表示させるための表示動作を制御する。
【0032】
インジケータ23は、車両の操作者によって視認され、インジケータ駆動回路22の表示動作により、車速、燃料の残量及び変速段等を表示する。
【0033】
<ギア判断処理>
上記構成を有する変速位置検出装置1では、変速段を判断するギア判断処理を実行する。以下、図2及び図3を参照して、本実施形態におけるギア判断処理の具体的な流れについて詳しく説明する。
【0034】
図2は、本発明の実施形態におけるギア判断処理の流れを示すフロー図である。
【0035】
図2に示すギア判断処理は、車両のイグニッションスイッチが最初にオンされて変速位置検出装置1が起動されたタイミングで開始となり、ギア判断処理はステップS1の処理に進む。かかるギア判断処理は、所定の制御周期毎に繰り返し実行される。
【0036】
ステップS1の処理では、制御部5が、変速段検出部4から入力される電気信号の示すシフトドラムの回転角に基づいて、ギアポジション(変速段)は1速であるか否かを判定する。判定の結果、ギアポジションが1速である場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS9に進める。一方、ギアポジションが1速ではない場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS2に進める。
【0037】
ステップS2の処理では、制御部5が、変速段検出部4から入力される電気信号の示すシフトドラムの回転角に基づいて、ギアポジションは2速であるか否かを判定する。判定の結果、ギアポジションが2速である場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS12に進める。一方、ギアポジションが2速ではない場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS3に進める。
【0038】
ステップS3の処理では、制御部5が、変速段検出部4から入力された電気信号の示すシフトドラムの回転角に基づいて、ギアポジションは3速であるか否かを判定する。判定の結果、ギアポジションが3速である場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS15に進める。一方、ギアポジションが3速ではない場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS4に進める。
【0039】
ステップS4の処理では、制御部5が、変速段検出部4から入力される電気信号の示すシフトドラムの回転角に基づいて、ギアポジションとしてニュートラル位置を検出したか否かを判定する。判定の結果、ギアポジションとしてニュートラル位置を検出した場合には、制御部5は、カウンタ9でカウントしていない場合にはカウンタ9でのカウントを開始させてギア判断処理をステップS5に進め、カウンタ9でカウントしている場合にはカウントを継続させてギア判断処理をステップS5に進める。一方、ギアポジションとしてニュートラル位置を検出しない場合には、制御部5は、ギア判断処理を終了する。
【0040】
ステップS5の処理では、制御部5が、カウンタ9でカウントするカウント値が0になったか否かを判定する。判定の結果、カウント値が0になった場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS6に進める。カウンタ9がカウントを開始してからカウント値が0になるまでの所定時間は、1速から2速又は2速から1速に変速操作する運転者のうちの最も変速操作が遅いと想定される運転者の変速操作に要する時間よりも長く設定されており、例えば30msecである。一方、カウント値が0になっていない場合には、制御部5は、ギア判断処理をステップS8に進める。なお、カウンタ9がカウントを開始してからカウント値が0になるまでの所定時間は、上記に限らず、1速から2速又は2速から1速に変速操作する各運転者の変速操作に要する時間の平均時間でもよい。
【0041】
ステップS6の処理では、制御部5が、図示しないバッファに0を格納する。これにより、ステップS6の処理は完了し、ギア判断処理をステップS7に進める。
【0042】
ステップS7の処理では、制御部5が、ステップS4においてギアポジションとしてニュートラル位置を検出していると共に、ステップS5においてカウント値が0であると判定したため、ニュートラル位置であると判定する。これにより、ステップS7の処理は完了し、ギア判断処理を終了する。
【0043】
ステップS8の処理では、制御部5が、カウンタ9でカウントするカウント値をデクリメントしてカウンタ9を減算する。これにより、ステップS8の処理は完了し、ギア判断処理を終了する。
【0044】
ステップS9の処理では、制御部5が、バッファに1を格納する。これにより、ステップS9の処理は完了し、ギア判断処理をステップS10に進める。
【0045】
ステップS10の処理では、制御部5が、カウンタ9に所定の値をセットする。これにより、ステップS10の処理は完了し、ギア判断処理をステップS11に進める。
【0046】
ステップS11の処理では、制御部5が、ギアポジションは1速と判定する。これにより、ステップS11の処理は完了し、ギア判断処理を終了する。
【0047】
ステップS12の処理では、制御部5が、バッファに2を格納する。これにより、ステップS12の処理は完了し、ギア判断処理をステップS13に進める。
【0048】
ステップS13の処理では、制御部5が、カウンタ9に所定の値をセットする。これにより、ステップS13の処理は完了し、ギア判断処理をステップS14に進める。
【0049】
ステップS14の処理では、制御部5が、ギアポジションは2速と判定する。これにより、ステップS14の処理は完了し、ギア判断処理を終了する。
【0050】
ステップS15の処理では、制御部5が、バッファに3を格納する。これにより、ステップS15の処理は完了し、ギア判断処理をステップS16に進める。
【0051】
ステップS16の処理では、制御部5が、カウンタ9に所定の値をセットする。これにより、ステップS16の処理は完了し、ギア判断処理をステップS17に進める。
【0052】
ステップS17の処理では、制御部5が、ギアポジションは3速と判定する。これにより、ステップS17の処理は完了し、ギア判断処理を終了する。
【0053】
続いて、図3を参照して、本実施形態における変速位置検出装置1が実行するギア判断処理について、具体例を用いて説明する。図3では、ギアポジションセンサ13の出力信号の出力値として電圧値を用いる場合について説明する。
【0054】
図3は、本発明の実施形態におけるシフト操作時のギアポジションセンサの出力電圧の推移を示す図である。図3は、1速に対応するシフトドラムの回転角と、2速に対応するシフトドラムの回転角と、の間にニュートラル位置に対応するニュートラル回転角が存在する変速機において、運転者により1速から2速に変速操作される場合を示している。
【0055】
時刻t=t1までにおいて、制御部5は、図2に示すステップS1及びステップS9からステップS11までの処理を繰り返すことにより、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値が1速の下限閾値TH1L以上且つ1速の上限閾値TH1H以下であるため、ギアポジションは1速であると判定する。
【0056】
時刻t=t1において、運転者がドッグ式トランスミッションを1速から2速に変速させる変速操作を開始する。
【0057】
時刻t=t2において、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値は、1速の上限閾値TH1H以上となる。
【0058】
時刻t=t3において、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値はニュートラルの下限閾値THNL以上となり、制御部5は、図2に示すステップS1からステップS4までの処理を実行して、カウンタ9にカウントを開始させる。カウンタ9は、ステップS1からステップS5まで及びステップS8の処理を繰り返す毎に、設定されたカウント値n(nは正の整数)を順次デクリメントする。
【0059】
時刻t=t4において、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値はニュートラル上限閾値THNH以上となる。
【0060】
時刻t=t3からt4までの間において、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値がニュートラル下限閾値THNL以上且つニュートラル上限閾値THNH以下となり、従来ではニュートラル位置であると判定されていたが、本実施形態においては、制御部5は、ステップS4においてギアポジションとしてニュートラル位置を検出するものの、カウンタ9のカウント値が0でないためニュートラル位置であるとは判定しない。
【0061】
時刻t=t5において、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値は2速の下限閾値TH2L以上となり、制御部5は、図2に示すステップS1、ステップS2及びステップS12からステップS14までの処理を実行して、ギアポジションは2速であると判定し、カウンタ9のカウント値をnに戻す。このように、カウンタ9でカウントするカウント値が0になる前に、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値が2速の下限閾値TH2L以上となるため、制御部5は、ニュートラル位置と判定することなく1速から2速に変速操作されたものと判定する。これにより、2つの変速位置の間にニュートラル位置が存在している構成を有する変速機を備える内燃機関を搭載する車両において、1速から2速に直接変速したいという運転者の意思に反してニュートラル位置であると判定されることを防ぐことができる。
【0062】
時刻t=t5以降において、図2に示すステップS1、ステップS2及びステップS12からステップS14までの処理を繰り返すことにより、ギアポジションセンサ13の出力信号の電圧値は2速の下限閾値TH2L以上且つ2速上限閾値TH2H以下であるため、ギアポジションは2速であると判定する。
【0063】
そして、制御部5は、上記のギア判断処理を実行して判定したギアポジションに基づいて、所定の制御を実行又は解除する。これにより、2つの変速位置の間にニュートラル位置が存在している構成を有する変速機を備える内燃機関を搭載する車両において、所定の制御を正しく実行することができる。
【0064】
以上の本実施形態における変速位置検出装置では、第1の回転角を検出した際に1速であると判定し、第2の回転角を検出した際に2速であると判定すると共に、第1の回転角と第2の回転角との間のニュートラル回転角を検出した状態が所定時間継続した際にニュートラル位置であると判定し、1速又は2速であると判定した場合と、ニュートラル位置であると判定した場合と、で車両に対して所定の制御を実行するか否かを異ならせることにより、2つの変速位置の間にニュートラル位置が存在している構成を有する変速機を備える内燃機関を搭載する車両において、運転者の意思に反してニュートラル位置であると判定されることを防ぐことができ、所定の制御を正しく実行することができる
【0065】
また、本実施形態における変速位置検出装置では、所定時間は、車両の運転者により1速から2速に変速されるまでの時間、又は2速から1速に変速されるまでの時間よりも長い時間に設定されることにより、変速中に運転者の意思とは関係なくニュートラル位置と判定されることを防ぐことができる。
【0066】
本発明は、部材の種類、形状、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。
【0067】
具体的には、上記実施形態において、1速と2速との間にニュートラル位置を有する構成の変速機について説明したが、1速と2速との間以外の例えば1速と3速との間にニュートラル位置を有する構成のロータリー式等の変速機にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のように、本発明においては、2つの変速位置の間にニュートラル位置が存在している構成を有する変速機を備える内燃機関を搭載する車両において、運転者の意思に反してニュートラル位置であると判定されることを防ぐことができ、所定の制御を正しく実行することができる変速位置検出装置を提供することができ、その汎用普遍的な性格から自動二輪車等の車両の変速位置検出装置に広範に適用され得るものと期待される。
【符号の説明】
【0069】
1…変速位置検出装置
2…クラッチ状態検出部
3…変速操作検出部
4…変速段検出部
5…制御部
6…モータ駆動回路
7…点火栓駆動回路
8…燃料噴射弁駆動回路
9…カウンタ
11…クラッチスイッチ
12…変速操作スイッチ
13…ギアポジションセンサ
14…スロットルモータ
15…大気圧センサ
16…スロットルポジションセンサ
17…アクセル開度センサ
18…クランク角センサ
19…点火栓
20…燃料噴射弁
21…表示装置
22…インジケータ駆動回路
23…インジケータ
図1
図2
図3