(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の封止構造を有する携帯機では、ハウジングおよびカバーは、圧縮されたOリングから互いに反対側に離間させる方向へ向けた圧縮反力を受けている。そのため、経年によりケース開きが発生し、Oリングの圧縮の程度が弱まるおそれがある。ひいては、携帯機のシール性が低下するおそれがある。この懸念に鑑みて、Oリングの圧縮方向と、ハウジングとカバーとの組み付け方向とを異なる方向に設定することが検討されている。具体的には、Oリングの圧縮方向をハウジングとカバーとの組み付け方向に直交する方向にすることが検討されている。このとき、カバーのハウジング側の側面から円環状の突出部を設け、溝部の内部に進入させる。円環状の突出部の外周面と、溝部の内周面との間でOリングを圧縮された状態に保つように設定する。しかし、この場合、ハウジングとカバーとを組み付ける際に突出部の外周面と溝部の内周面との間でOリングの捩れが発生してしまい、封止構造のシール性が低下してしまう懸念がある。
【0005】
本発明の目的は、シール部材の捩れを抑制できる封止構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成し得る封止構造は、被圧壁と押圧壁との間をシール部材により封止する封止構造を前提としている。前記被圧壁および前記押圧壁が、それらの互いに対向する方向に対して直交する方向に沿って組み付けられることにより、前記シール部材は前記被圧壁と前記押圧壁との間に挟みこまれた状態に保たれ、前記シール部材は、前記直交する方向に対して傾斜する第1傾斜面を有し、前記第1傾斜面が前記押圧壁により前記直交する方向に沿って押圧されることにより、前記シール部材は少なくとも前記対向する方向に押圧される。
【0007】
この構成によれば、被圧壁と押圧壁とを組み付けるとき、被圧壁と押圧壁とが互いに対向する方向に直交する方向において、被圧壁と押圧壁との間にシール部材が捩じられながら進入しないように押圧壁は第1傾斜面を押さえ付ける。したがって、シール部材が押圧壁の外周面に沿って移動することによる捩れを抑制できる。また、押圧壁は、被圧壁に向けてシール部材を押圧する。これにより、シール部材は、被圧壁と押圧壁との間で圧縮された状態に保たれる。したがって、被圧壁と押圧壁との間を水、埃、および砂等の異物の侵入を抑制することができるためシール性も確保することができる。
【0008】
上記の封止構造において、前記押圧壁には、前記シール部材の前記第1傾斜面に対応する第2傾斜面が設けられ、前記被圧壁に前記押圧壁が組み付けられた状態において、前記押圧壁が前記第2傾斜面を介して前記第1傾斜面を押圧することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、押圧壁とシール部材とは、第1傾斜面および第2傾斜面により面接触する。そのため、シール部材が押圧壁の外周面に沿って捩れるように挙動しようとしても、押圧壁の第2傾斜面によりシール部材が捩れる力を受け止めることができる。したがって、シール部材の捩れをより抑制することができる。
【0010】
上記の封止構造において、前記直交する方向に対する前記第1傾斜面の傾斜角度は、前記押圧壁が前記第1傾斜面を前記対向する方向に押圧する力が、前記押圧壁が前記第1傾斜面を前記直交する方向に押圧する力よりも大きくなるように設定されることが好ましい。
【0011】
被圧壁と押圧壁とを組み付けるとき、押圧壁は、第1傾斜面に対して直交するように力を付与する。この第1傾斜面に作用する力は、被圧壁と押圧壁とが互いに対向する方向、およびその対向する方向に直交する方向に分解できる。
【0012】
この構成によれば、第1傾斜面に直交するように作用する力を被圧壁と押圧壁とが対向する方向により大きく作用させることができるため、被圧壁と押圧壁との間
のシール性をより向上させることができる。
【0013】
上記の封止構造において、前記対向する方向に沿って設けられるとともに前記押圧壁との間に前記シール部材が介在されるように載置部が形成され、前記押圧壁と前記載置部との間に前記シール部材が圧縮された状態で保持されているとき、前記直交する方向に対する前記第1傾斜面の傾斜角度は、前記押圧壁が前記シール部材の圧縮反力により前記直交する方向に対して位置ずれしないように設定されることが好ましい。
【0014】
押圧壁と載置部との間にシール部材が圧縮された状態で保持されるとき、シール部材には、被圧壁と押圧壁とが互いに対向する方向に直交する方向に沿って押圧壁を押し返す圧縮反力が発生する。この圧縮反力により押圧壁が押し返されることにより、押圧壁がシール部材を被圧壁と押圧壁とが対向する方向へ押圧する力が低下してしまい、押圧壁と被圧壁との間のシール性が低下してしまうおそれがある。
【0015】
その点、第1傾斜面は押圧壁がシール部材の圧縮反力により押し返されないように、すなわち、シール部材が被圧壁と押圧壁とが対向する方向に直交する方向に対して位置ずれしないように設定されている。そのため、押圧壁がシール部材を被圧壁と押圧壁とが対向する方向へ押圧する力が低下することを抑制できる。ひいては、被圧壁と押圧壁との間のシール性を維持することができる。
【0016】
上記の封止構造において、有底筒状の穴部を有する筐体と、前記穴部を覆うように組み付けられる蓋体との間に前記シール部材が圧縮された状態で保たれる封止構造であって、前記穴部は、前記直交する方向としての前記筐体と前記蓋体との組み付け方向に沿って設けられる前記被圧壁に囲まれることにより形成され、前記蓋体の前記筐体側の表面には、前記穴部の内部に進入する前記押圧壁としての環状の突出部が設けられ、前記シール部材は、前記穴部の内部に収容されるとともに、その内周に環状の前記第1傾斜面が設けられる環状部位を有し、前記筐体に前記蓋体が組み付けられた状態において、前記突出部が前記第1傾斜面を全周に亘って押圧することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、筐体と蓋体とを組み付けるとき、突出部は、筐体と蓋体との組み付け方向において、蓋体側に戻らないようにシール部材の環状部位の第1傾斜面を全周に亘って押さえ付ける。したがって、シール部材が突出部の外周面に沿って移動することによる捩れを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の封止構造によれば、シール部材の捩れを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、封止構造の一実施形態を携帯機に具体化して説明する。
図1に示すように、携帯機1は、筐体としてのハウジング10と、円板状の電池20と、円形のシール部材30と、蓋体としてのカバー40と、を備えている。
【0021】
ハウジング10は、直方体状をなしている。ハウジング10は、アッパーケース11と、ロアケース12と、メカニカルキー70とを有している。メカニカルキー70は、アッパーケース11と、ロアケース12とにより挟み込まれるかたちで支持されている。また、ハウジング10のロアケース12側の表面には、有底円筒状の穴部15が設けられている。
【0022】
穴部15は、その周縁を壁15aに囲まれることにより形成されている。壁15aは、ハウジング10とカバー40との組み付け方向に沿って設けられている。尚、壁15aは、被圧壁の一例である。穴部15は、ハウジング10のロアケース12側の表面に開口している。穴部15の底部には、ハウジング10の内部まで貫通する円形の貫通孔16が設けられている。より詳細には、ハウジング10の内部において、穴部15の底部を挟んで反対側には、制御基板(図示略)が収容される基板収容部(図示略)が設けられている。貫通孔16は、穴部15の底部から基板収容部まで貫通している。貫通孔16には、上記の制御基板の表面に設けられた円板状の第1ターミナル72が挿通されている。穴部15の内周面には、円弧状の一対の載置部17が設けられている。
【0023】
図3に示すように、一対の載置部17は、穴部15の内周に略鏡面対称に設けられている。載置部17は、穴部15の周方向に沿って第1端部から第2端部に向かうにつれて穴部15の内周面からの突出量が徐々に増加している。
【0024】
図1に示すように、これら載置部17の上面(
図1中の上面)は、後述するシール部材30の一部分を載置する載置面19として機能する。
図2に示すように、ロアケース12の穴部15の内周面には、所定範囲に亘って切り欠き孔18が設けられている。切り欠き孔18は、ハウジング10の内部に貫通している。切り欠き孔18には、上記の制御基板に突設された第2ターミナル73が、その開口部分を塞ぐように配置されている。尚、第2ターミナル73は、第1ターミナル72の周方向に沿って湾曲している。尚、第1ターミナル72は、マイナス端子であり電池20の裏面に当接する。第2ターミナル73は、プラス端子であり、電池20の外周面を挟みこむように当接する。
【0025】
図3に示すように、穴部15の周方向において、一対の載置部17の内周曲面と、第2ターミナル73の内周曲面とは、略同一円周上に設けられている。また、一対の載置部17の内周曲面と、第2ターミナル73の内周曲面とにより形成される仮想円の中心は、第1ターミナル72の中心である。すなわち、穴部15は、載置面19を基準として、同軸上に存在しない2つの穴部に区画される。具体的に、穴部15は、第1穴部51と、第2穴部52とに区画される。尚、第1穴部51の中心軸を軸線m1、第2穴部52の中心軸を軸線m2とする。
【0026】
図1および
図2に示すように、第1穴部51は、載置面19を底部とする有底円筒状をなしている。第2穴部52は、第1穴部51の底部に連通している。第2穴部52は、周方向において一対の載置部17の内周曲面と、第2ターミナル73の内周曲面と、穴部15の底部とにより囲まれた有底円筒状をなしている。第2穴部52には、電池20が収容される。第2穴部52の内径は、電池20の外径よりも若干大きく設定されている。第2穴部52の底部からの長さL(載置部17の高さ)は、電池20の厚みTと同じに設定されている。第2穴部52に電池20が収容された状態で、第1穴部51には、シール部材30が収容される。この状態で、カバー40は、ハウジング10の穴部15の開口部を覆うように設けられる。尚、カバー40とハウジング10とは、互いに組み付けられた状態で、図示しないスナップフィットの構成により固定されている。
【0027】
次に、携帯機1の封止構造について詳細に説明する。
図5に示すように、シール部材30は、円板状の板状シール部31と、環状部位としての円環状の環状シール部32と、つまみ部33とを有している。つまみ部33は、板状シール部31の中央に設けられている。環状シール部32は、板状シール部31の外周に一体的に設けられている。
【0028】
図6に示すように、環状シール部32は、板状シール部31の外周縁における上面からカバー40側に突出している。環状シール部32の外径は、板状シール部31の外径よりも大きく、且つ第1穴部51の内径よりも若干大きく設定されている。環状シール部32の内周には、ハウジング10とカバー40との組み付け方向に対して傾斜する円環状の第1傾斜面34が形成されている。第1傾斜面34は、ハウジング10とカバー40との組み付け方向において、カバー40側からハウジング10側へ向かうにつれて徐々に縮径する円錐面である。シール部材30が第1穴部51に収容された状態において、板状シール部31は、第2穴部52を覆っている。板状シール部31の下面(カバー40と反対側の表面)は、電池20の上面および載置面19に接触している。また、板状シール部31および環状シール部32は、それぞれ第1穴部51の軸線m1と同軸上に位置している。尚、電池20の上面は、シール部材30を載置する載置部の一例である。
【0029】
図4に示すように、カバー40の裏面(ロアケース12側の表面)には、押圧壁としての円環状の第1突出部41と、3つの第2突出部42とが設けられている。第1突出部41および第2突出部42は、ハウジング10とカバー40との組み付け方向に沿って設けられている。3つの第2突出部42は、第1突出部41の内周側に設けられている。3つの第2突出部42は、それぞれ略同一の円周に沿った円弧状をなしている。
【0030】
図6に示すように、カバー40をハウジング10に組み付けた状態で、3つの第2突出部42のなす仮想円の中心を通る軸線は、電池20、第2穴部52、および第1ターミナル72の軸線m2に一致している。第2突出部42は、第1穴部51の内部に進入している。第2突出部42の先端部は、シール部材30の板状シール部31を介して電池20の上面を押圧している。すなわち、3つの第2突出部42により電池20は、軸方向において、より適切に位置決めされる。また、第2突出部42のカバー40からの突出量は、第2穴部52の長さLにおける寸法公差を考慮して設定されている。具体的には、第2穴部52の長さLがロアケース12の成形時に電池20の厚みTよりも若干大きく設定されてしまうことが考えられる。このとき、第2穴部52に電池20を、第1穴部51にシール部材30を収容すると、電池20の上面とシール部材30の板状シール部31の下面との間に、第2穴部52の寸法公差分の隙間が形成されるおそれがある。その点、本実施形態の第2突出部42は、第2穴部52の長さLに寸法公差分の誤差が生じたとしても、その誤差を考慮して第2突出部42の長さが設定されている。このため、第2突出部42は、板状シール部31を介して適切に電池20を押圧すること、ひいては電池20を軸方向に対して位置決めすることができる。
【0031】
同様に、カバー40をハウジング10に組み付けた状態で、第1突出部41の軸線は、シール部材30および第1穴部51の軸線m1に一致している。第1突出部41は、第1穴部51の内部に進入している。第1突出部41の外周面と、第1穴部51(壁15a)の内周面とは互いに対向している。第1突出部41の先端部における外周縁には、円環状の第2傾斜面43が形成されている。第2傾斜面43は、ハウジング10とカバー40との組み付け方向に対して第1傾斜面34と同じ傾きを有する円錐面である。また、第1突出部41の先端部には、ハウジング10とカバー40との組み付け方向に対して直交する平面44が設けられている。平面44は、第2傾斜面43と交わるかたちに設けられている。第1突出部41の第2傾斜面43は、第1傾斜面34を介して環状シール部32を全周に亘って押圧する。このとき、第1傾斜面34と第2傾斜面43とは互いに面接触している。そのため、第1突出部41の第2傾斜面43は、第1傾斜面34をその面に垂直をなす方向に向けて押圧する。仮に、この押圧する力を押圧力Fとすると、押圧力Fは、第1傾斜面34および第2傾斜面43の傾斜により第1穴部51の内周面(壁15a)側に向かう(ハウジング10とカバー40との組み付け方向に対して直交する方向に向かう)力F1と、ハウジング10とカバー40との組み付け方向に沿った力F2とに分解することができる。この力F1により環状シール部32が第1穴部51の内周面(壁15a)に向けて押圧されるため、環状シール部32は、第1突出部41の第2傾斜面43と、第1穴部51の内周面との間で圧縮された状態に保持される。また、第1突出部41の平面44は、板状シール部31の上面に当接している。
【0032】
尚、第1傾斜面34および第2傾斜面43のハウジング10とカバー40との組み付け方向に対する傾斜角度θは、押圧力Fを力F1と力F2とに分解したときに、力F1が力F2よりも大きくなり、且つ力F2が可能な限り微小な大きさになる観点で設定されている。ただし、力F2が可能な限り微小な大きさになる観点とは、シール部材30を力F2で押圧することによる圧縮反力により、第1突出部41がハウジング10とカバー40との組み付け方向において押し返され、第1突出部41がカバー40側に位置ずれしない観点と換言できる。また、力F2が可能な限り微小な大きさになる観点とは、少なくともシール部材30が第1突出部41の外周面に沿って捩れない程度に、第1傾斜面34を第1突出部41が押圧できる程度の大きさに力F2を設定する観点とも換言できる。
【0033】
また、本実施の形態におけるハウジング10とカバー40との組み付け方向は、第1突出部41(押圧壁)の外周面と、第1穴部51(被圧壁)の内周面とが互いに対向する方向に直交する方向と換言でき、ハウジング10とカバー40との組み付け方向に直交する方向は、第1突出部41(押圧壁)の外周面と、第1穴部51(被圧壁)の内周面とが互いに対向する方向と換言できる。
【0034】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、以下に示すよう効果が得られる。
(1)ハウジング10とカバー40とを組み付けるとき、第1突出部41は、ハウジング10とカバー40との組み付け方向においてカバー40側に戻らないように力F2によりシール部材30を押さえ付ける。したがって、シール部材30が第1突出部41の外周面に沿って移動することによる捩れを抑制できる。
【0035】
(2)また、シール部材30の捩れが抑制されるため、ハウジング10とカバー40との組み付け時に、シール部材30の捩れを気にすることなく、ハウジング10にカバー40を円滑に組み付けることができる。このため、ハウジング10とカバー40との組み付け性も向上させることができる。
【0036】
(3)また、第1突出部41は、第1穴部51の内周面に向けて環状シール部32を押圧する。これにより、シール部材30は、第1穴部51の内周面に押し付けられて圧縮された状態に保持される。したがって、ハウジング10とカバー40との境界部分からの水、塵、および砂等の異物の浸入を抑制できるためシール性も確保することができる。
【0037】
(4)第1突出部41の第2傾斜面43と環状シール部32の第1傾斜面34とは、互いに面接触する。そのため、シール部材30が第1突出部41の外周面に沿って捩れるように挙動しようとしても、第1突出部41の第2傾斜面43によりシール部材30が捩れようとする力を受け止めることができる。したがって、シール部材30の捩れをより抑制することができる。
【0038】
(5)第1突出部41の第2傾斜面43が環状シール部32の第1傾斜面34をハウジング10とカバー40との組み付け方向において押圧すると同時に、板状シール部31の上面が第1突出部41の平面44に当接する。そのため、シール部材30が第1突出部41の外周面に沿って捩れるように挙動しようとしてもシール部材30の捩れをより抑制することができる。
【0039】
(6)ハウジング10とカバー40とを組み付けた状態において、電池20は、板状シール部31の下面に面接触する。そのため、電池20がハウジング10とカバー40との組み付け方向において移動しようとしても、板状シール部31により電池20が軸方向に移動することが抑制される。したがって、電池20は、その軸方向において適切に位置決めされる。
【0040】
(7)シール部材30の第1傾斜面34に作用する押圧力Fは、力F1と力F2とに分解できる。力F1は力F2より大きく設定される。したがって、第1傾斜面34に作用する押圧力Fをハウジング10とカバー40との組み付け方向に直交する方向により大きく作用させることができるため、第1突出部41と第1穴部51との間のシール性をより向上させることができる。
【0041】
(8)第1突出部41の先端部がハウジング10とカバー40との組み付け方向に対して直交する平面で構成され、環状シール部32がハウジング10とカバー40との組み付け方向においてのみ圧縮される場合、カバー40には、第1突出部41を介して環状シール部32から押圧力Fと同じ大きさの圧縮反力が作用する。
【0042】
その点、本実施の形態においては、カバー40が環状シール部32から受ける組み付け方向における圧縮反力は、第1突出部41が環状シール部32を軸方向に沿って押圧する力F2と同じ大きさであり、第1傾斜面34が傾斜している分だけ押圧力Fよりも小さくなる。また、本実施の形態においては、力F2が可能な限り微小な大きさとなるように、すなわち、シール部材30を力F2で押圧することによる圧縮反力により、第1突出部41がハウジング10とカバー40との組み付け方向において押し返され、第1突出部41がカバー40側に位置ずれしないように第1傾斜面34および第2傾斜面43の傾斜角度θが設定されている。そのため、第1突出部41がシール部材30をハウジング10とカバー40との組み付け方向に対して直交する方向へ押圧する力F1が低下することを抑制できる。ひいては、第1突出部41と第1穴部51との間のシール性を維持することができる。また同時に、経年によってシール部材30の圧縮反力によりカバー40がハウジング10に対して浮き上がる、いわゆるケース開きの発生も抑制できる。
【0043】
尚、本実施の形態は、技術的に矛盾が生じない範囲で以下のように変更してもよい。
・本実施の形態において、第1突出部41における先端部には、平面44が設けられていたが、例えば、平面44でなくシール部材30の板状シール部31に向けて突出する円弧面であってもよい。また、平面44は、板状シール部31の上面に当接していたが、板状シール部31の上面に当接していなくてもよい。ただし、この場合であれ、第2傾斜面43により第1傾斜面34が押圧されていることが必要である。
【0044】
・本実施の形態において、シール部材30は、円形をなしていたが、例えば、略正方形状をなしていてもよい。この場合、板状シール部31は、正方形状をなし、環状シール部32は、四角環状をなしている。これに伴い、ハウジング10側の構成も、シール部材30の形状に合わせて変更する。また、シール部材30と、第1穴部51の内周面と、カバー40の第1突出部41が互いに対応した位置に配置されていれば、どのような形状であってもよい。また、シール部材30のつまみ部33も割愛してもよい。
【0045】
・本実施の形態において、第1穴部51の軸線m1と第2穴部52の軸線m2とは、互いに一致していなかったが、一致させてもよい。
図7に示すように、軸線m1と軸線m2とを一致させるにあたり、ハウジング10とカバー40との組み付け方向において、第1穴部51と第2穴部52との境界部分に載置部17(載置面19)を穴部15の全周に亘って設けるようにしてもよい。さらに、このとき、第1突出部41の軸線および3つの第2突出部42のなす仮想円の中心を通る軸線も互いに一致させてもよい。
【0046】
・また、
図7に示すように、ハウジング10とカバー40との組み付け方向において、第1突出部41を穴部15の全周に亘って設けられた載置面19に対向するように設けるとともに、第1突出部41の平面44と、載置面19との間でシール部材30の板状シール部31を圧縮した状態に保持してもよい。このようにすることで、ハウジング10とカバー40との間のシール性をより向上させることができる。
【0047】
・また、
図8に示すように、シール部材30の板状シール部31を割愛してもよい。このとき、第1突出部41の第2傾斜面43と、第1穴部51の内周面と、載置面19との間で環状シール部32を圧縮された状態に保つように構成する。このようにしても、ハウジング10とカバー40との間のシール性を保持しながら、シール部材30の捩れを抑制することができる。ただし、電池20の軸方向への位置ずれを抑制するために、第2突出部42の先端部を電池20の上面に当接させてもよい。
【0048】
・本実施の形態の封止構造を、携帯機1に具体化して説明したが、これに限らない。例えば、穴部15の内部に電池20あるいは電池20以外の電子部品を収容するような電子機器に使用してもよい。このとき、シール部材30に板状シール部31が設けられている場合、板状シール部31の下面に電池20以外の電子部品を当接させることにより、電子部品の軸方向への位置決めを実施してもよい。
【0049】
・本実施の形態において、シール部材30の第1傾斜面34を第1突出部41の第2傾斜面43で押圧していたが、これに限らない。例えば、第2傾斜面43を第1突出部41の径方向外側に突出する円弧面に代替する、または第2傾斜面43を割愛し、第1突出部41の外周面を円筒面としてもよい。第1突出部41により第1傾斜面34を押圧することができれば、第1突出部41はどのように構成されていてもよい。
【0050】
・本実施の形態において、第1傾斜面34および第2傾斜面43のハウジング10とカバー40との組み付け方向に対する傾斜角度θは、力F1が力F2よりも大きくなり、且つ力F2が可能な限り微小な大きさとなる観点で設定されているが、例えば、力F1により第1傾斜面34を介して環状シール部32が第1穴部51の内周面に十分に押し付けられ、ハウジング10とカバー40との間のシール性を十分に確保することができる程度の大きさに設定されていれば、第1傾斜面34および第2傾斜面43の傾斜角度θはどのように設定してもよい。また、このようにしても、力F2が押圧力Fを上回ることはないため、ケース開きを抑制できる。
【0051】
・上記の変形例において、本実施の形態の封止構造を携帯機1に限らない電子機器に適用した場合、第1突出部41は、第1突出部41は、シール部材30の第1傾斜面34を全周に亘って押圧しなくてもよい。例えば、電子機器の製品仕様によっては、穴部15の内部の全周に亘ってシール性を確保する必要がない場合が考えられる。この場合、シール部材30の形状を電子機器の製品仕様によって変更しつつ、シール部材30の第1傾斜面34を設ける箇所については、電子機器のシール性を確保しなければならない箇所に対応して設けるようにしてもよい。ただし、この場合であっても押圧壁の一例である第1突出部41のような構成で第1傾斜面34を押圧するようにする。
【0052】
・また、本実施の形態および上記した変形例において、シール部材30は、穴部15(正確には、第1穴部51)に収容されるように設定されているが、この限りではない。例えば、有底円筒状の穴部を有するハウジングの外周側にシール部材を設けることによりハウジングとカバーとのシール性を確保してもよい。例えば、この場合、カバーも有底円筒状に設定し、ハウジングの開口部およびカバーの開口部を互いに突きあわせるかたちを採用する。より具体的には、ハウジングの外周面に円環状の載置部を設ける。載置部には、円環状のシール部材が載置される。載置部をハウジングの外周面に設けることにより、ハウジングの側壁における開口部付近が被圧壁となる。すなわち、載置部と被圧壁とは直交する態様を有する。シール部材の外周側には、ハウジングとカバーとの組み付け方向に対して傾斜する第1傾斜面が設けられる。この第1傾斜面は、ハウジングの開口部から載置部に向かうほどシール部材の外径が拡径されるように設定される円錐面である。カバーにおける円環状の側壁は押圧壁となる。カバーの側壁の先端部における内周縁には、シール部材の第1傾斜面に対応する第2傾斜面が設けられる。ハウジングとカバーとを組み付けた状態で、カバーの側壁における第2傾斜面は、第1傾斜面を介してシール部材をハウジングの側壁に向けて押圧する。そのため、ハウジングの側壁と、カバーの側壁との間にシール部材が圧縮された状態で保持される。このようにしてもハウジングとカバーとのシール性を確保することができる。また、本実施の形態と同様のメカニズムによりシール部材の捩じれも抑制することができる。
【0053】
・本実施の形態において、シール部材30は一対の載置部17および電池20の上面(載置部の一例)に載置され、上記の変形例において、シール部材30は穴部15の全周に亘って設けられている載置部17(載置面19)に載置され、もしくはシール部材はハウジングの外周面に設けられた載置部に載置されていたが、これに限らない。例えば、本実施の形態の封止構造を携帯機1に限らない電子機器に適用した場合、シール部材は、載置部に載置されていなくてもよい。この場合、被圧壁となる部位と押圧壁となる部位とが互いに対向する部分にシール部材が挟み込まれるように設定され、押圧壁となる部位が適切にシール部材の第1傾斜面を、被圧壁となる部位と押圧壁となる部位とが互いに対向する方向に向けて押圧できていればよい。このようにすれば、押圧壁となる部位の外周面をシール部材が移動することによる捩じれが抑制できるとともに、押圧壁となる部位と被圧壁となる部位との間のシール性を確保することができる。