(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調節された心肺蘇生誘導を表示するステップは、胸部圧迫の深さ及び前記胸部圧迫の頻度のうち少なくとも1つが徐々に低下していることに応答して、心肺蘇生を施与する者を変更する提案を表示するステップを含む、請求項3に記載の方法。
前記頭部装着型コンピューティングデバイスとワイヤレス通信するデバイスを自動的に識別するステップであって、前記デバイスの各々は、前記患者の生命兆候を監視するセンサ、及び前記患者の胸部圧迫特性を検出するさらなるセンサ、のうち少なくとも1つを備える、ステップと、
選択された、識別されたデバイスを前記頭部装着型コンピューティングデバイスにワイヤレスに接続するステップと、をさらに有する、請求項1に記載の方法。
前記識別されたデバイスのワイヤレス通信モードを可能にするように前記頭部装着型コンピューティングデバイスの着用者に通知するための通知を、前記少なくとも1つの表示モジュール上に生成するステップをさらに有する、請求項5に記載の方法。
前記頭部装着型コンピューティングデバイスとワイヤレス通信するデバイスを自動的に識別するステップであって、前記デバイスの各々は、前記患者が位置する環境を感知するセンサのうちの少なくとも1つを備える、ステップと、
選択された、識別されたデバイスを前記頭部装着型コンピューティングデバイスにワイヤレスに接続するステップと、をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0004】
世界中で、多数の人々が突然心停止(SCA:sudden cardiac arrest)事象を経験する。例えば、ヨーロッパだけでも、毎年350,000件から700,000件の院外突然心停止(SCA)事象があり、これらはしばしば(訓練を受けていない)素人によって目撃される。心肺蘇生(CPR:cardiopulmonary resuscitation)は、SCAの患者に対して国際ガイドラインによって推奨される主要な救命介入であり、必要な場合には(すべてのSCA事例のうち約1/3)自動外部除細動器(AED)を使用した除細動によって補助される。CPRは、少なくとも5cmの深さで、1分間当たり100回の圧迫の割合(cpm)で胸部圧迫(CC:chest compression)を、SCAを起こした者の体内の重要な器官に循環流と酸素供給を維持するための人工換気(すなわち人工呼吸)と組み合わせて、自発的な循環が戻るまで遂行することを伴う。
【0005】
蘇生を成功させるには、CPRが可能な限り早く行われることが必須である。現在、国際ガイドラインは、呼吸確認を行うことにより、SCA事象後5〜10秒以内に心停止の状況を認識することを推奨している。2005年以前は、呼吸確認に加えて、人手による脈拍確認が、心停止の診断のためにガイドラインによって推奨されていた。この推奨は、素人救命者が脈拍の触診を行いたがらないことと、迅速且つ正確に行うことが不可能であることから、CPRガイドラインから削除された。それでもなお、脈拍の検出は、蘇生分野では、緊急の状況でCPRの必要性を評価するための重要な(補助的)技術として今でも認識されている。
【0006】
CPRを開始するまでに1分が経過するごとに、患者の生命を救える確率は10%ずつ低下し、10分以降は、蘇生が成功する見込みはほとんどなくなる。さらに、良好でないCCの実行、すなわち素人救命者によるCCの不十分な深さ、割合、及び継続時間は、院外心停止の患者に報告される低いCPR後生存率(9.5%〜11.4%)に寄与する主要な要因の1つである。
【0007】
加えて、困難な周囲環境(例えば、木のしげみ、氷、柔らかい雪、傾斜、石が多い地面又は凸凹のある地面等)、厳しい環境条件(例えば、雪、もや、霧、雨、低照明)、及び安全上の危険(例えば、化学物質の流出、垂れ下がった電線、火災、煙、車両交通等)が、効果的なCPRの遂行に著しい障壁を呈し、部分的には、報告される低いCPR後生存率に寄与する可能性もある。例えば、CPR中に、傾斜のある、又は柔らかい背面支持表面で胸部圧迫を行うと、浅く、効果の低い圧迫となり、その結果生存結果が悪化する。さらに、現在のCPRガイドラインは、CPRを開始する前に、素人救命者は常に潜在的な危険がないか確認し、現場が安全であると判断した後にのみ患者に接近することを推奨している。これは、多くの人々は、非常にストレスのかかる緊急の状況により明確に物事を考えることが難しくなるために、衝動的に行動し、自らを危険にさらすことから、特に重要である。
【0008】
したがって、居合わせた素人救命者のCPRワークフローの管理において素人救命者を支援することができ、適時に効果的なCPRを遂行できるようにCC誘導を提供することができる解決法が大いに必要とされている。
【0009】
CPR中のCPRワークフロー管理及びCC誘導のための商業的な解決法が多く存在するが、これらの解決法は主として、専門的な一次救命処置(BLS:Basic Life Support)及び二次救命処置(ALS:Advanced Life Support)ユーザの必要性に応えることを目的としている。近年、素人救命者を目的としたいくつかの解決法が利用できるようになっているか、又は現在開発が進められている。
【0010】
例えば、EP 2 308 450 A1は、救命者が患者に対するCPR中に胸部圧迫を行うのを支援する装置を開示し、この装置は、救命者が力を加えて胸部圧迫を生じさせる場所の近く、又はその場所で胸部に付けられるように構成されたパッド又は他の構造と、パッドに接続された少なくとも1つのセンサであって、胸部の動き又は胸部に加えられる力を感知するように構成されたセンサと、センサの出力を処理して、救命者が胸部圧迫後に胸部を十分に解放しているかどうかを判定する処理回路と、胸部圧迫後に胸部が十分に解放されているかどうかについての情報を救命者に提供する、処理回路に接続された少なくとも1つのプロンプト要素とを備える。詳細には、この装置は、触覚フィードバック及び任意で可聴フィードバックを救命者に提供する双安定機械要素を備え、それにより、圧迫サイクルの開始及び終了を指示する。この装置の欠点は、装置によって提供されるフィードバックが素人救命者によって解釈するのが難しい場合があり、フィードバックが施与されるCPRの向上につながらず、患者の生存リスクを下げる可能性があることである。
【0011】
米国特許出願公開第2008/0171311(A1)号は、CPR誘導を提供するように適合されたCPR支援グローブを開示する。このグローブは、加速度計、複数の圧力センサ、及びECGセンサを含んでおり、それらはすべて処理装置に結合され、処理装置は、感知されたパラメータを処理し、処理されたパラメータに基づくCPR誘導を、グローブに付いている表示装置などのフィードバックデバイス、又はコンピュータ等の別個の表示装置に提供する。しかし、これは理想的ではない。グローブのサイズによってグローブに内蔵できる表示装置の寸法が制限されるため、救命者は、救命者の手が患者の胸部に置かれているときに表示装置上の誘導を読むのに苦労することがある。一方、別個の表示装置はそれよりも大きいが、救命者が患者から目を離すことを余儀なくし、したがってCPRワークフローを妨げる。さらに、そのような専用のCPR支援グローブを日常的に携行する素人救命者の数は、かなり限られる可能性が高い。
【0012】
米国特許出願公開第2014/342330(A1)号は、救命者がCPRを行うのを支援するデバイスと、緊急支援を必要とする人に対するCPR治療を管理する方法とを開示し、この方法は、医療支援を必要とする人が治療を受けている現場で、その現場にある1つ又は複数のカメラを使用して1つ又は複数の画像を撮影するステップと、自動的なコンピュータに基づく画像の分析を行って、医療支援を必要とする人に提供されている治療の質を特定するステップと、画像の分析を使用して、医療支援を必要とする人の現場にいる救命者が、医療支援を必要とする人に介護を行うのを導くステップとを有する。
【0013】
インターネット文献「Education & Research Feature−Physician Advocates Medical Innovation with Google Glass」(Christina Trimble,University of Arkansas for Medical Sciences,2013年7月24日)は、心停止の患者に個人がCPRを行うのを支援するためのGoogleグラスの使用を提案する。
【0014】
加えて、最近では、素人救命者のCPR誘導のためのスマートデバイスアプリケーションが普及しており、例えば、Pocket First Aid & CPR、リアルタイムCPRガイド、及びCPRメトロノームなどがあり、これらは例えばGoogle Play Storeなどの世界中のアプリストアで取得することができる。しかし、これらのアプリは主として訓練用であり、また継続的なユーザ入力と対話を必要とし、やはりCPRワークフローを妨げるため、リアルタイムのCPR誘導には適していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、これらの欠点の少なくとも一部を克服するCPR誘導方法を提供しようとするものである。
【0016】
本発明はさらに、この方法を実施するためのコンピュータプログラムコードを具現化したコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品を提供しようとするものである。
【0017】
本発明はまたさらに、このコンピュータプログラムコードを実行するためのCPR誘導システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
一態様によれば、プロセッサと、頭部装着型コンピューティングデバイスを着用したときにデバイスの着用者によって見られるようになされた少なくとも1つの表示モジュールとを備える頭部装着型コンピューティングデバイスを含むシステムのための心肺蘇生(CPR)誘導方法が提供され、この方法は、患者の生命兆候を監視する少なくとも1つのセンサからの生命兆候情報を伝達する第1の信号をプロセッサで受信するステップであって、少なくとも1つのセンサのうちの或るセンサが頭部装着型コンピューティングデバイスに組み込まれている、ステップと、第1の信号をプロセッサで処理して生命兆候情報を抽出するステップと、処理された生命兆候情報に応じて少なくとも1つの表示モジュールに心肺蘇生誘導を表示するステップと、を含む。頭部装着型コンピューティングデバイスの少なくとも1つの表示モジュール上でCPR誘導を提供することにより、治療対象の患者から目を離す必要なく、明瞭に読みやすいCPR誘導が救命者に提示されることが保証される。さらに、装着型のスマートデバイスへと向かう明らかな動向が社会にあることから、かなりの数の素人がそのような頭部装着型コンピューティングデバイスを所有していると想定することが妥当であり、それにより、生命を救うCPR、すなわち、本発明の方法によって提供される誘導により正しく施与されるCPRが、SCAを起こした者に提供される可能性が増大する。
【0019】
生命兆候情報は、例えば、CPRを開始すべきかを評価するため、及び/又は患者の自発脈拍及び/又は呼吸リズムが回復した場合にCPRを終了すべきかを評価するための、呼吸情報及び脈拍情報のうち少なくとも1つを含む。
【0020】
好ましくは、方法は、患者の胸部圧迫特性を検出するさらなるセンサからの患者の胸部圧迫特性をプロセッサで受信するステップと、胸部圧迫特性をプロセッサで処理するステップと、処理された患者の胸部圧迫特性に応じて、調節された心肺蘇生誘導を表示するステップと、をさらに有する。このようにして、例えば、さらなるセンサが、正しくない深さ及び/又は頻度の胸部圧迫が提供されていることを検出した場合、どのように正しく胸部圧迫を施与するかについて、素人救命者を直ちにその場で訓練することができ、その場合、プロセッサは、正しい胸部圧迫のやり方についての命令を素人救命者に提供するように適合される。
【0021】
一実施形態では、調節された心肺蘇生誘導を表示するステップは、胸部圧迫の深さ及び胸部圧迫の頻度のうち少なくとも1つが徐々に低下していることに応答して、心肺蘇生を施与する者を変更する提案を表示するステップを含む。これにより、救命者を変更することによって長時間にわたるCPR施与中の救命者の疲労に対処することができ、それにより、疲労によって引き起こされる標準以下のCPR施与のリスクを回避する。
【0022】
いくつかの実施形態では、方法は、患者が位置する環境を感知する少なくとも1つのセンサからの環境情報を伝達する第2の信号をプロセッサで受信するステップと、第2の信号をプロセッサで処理して環境情報を抽出するステップと、処理された環境情報に応じて、調節された心肺蘇生誘導を少なくとも1つの表示モジュールに表示するステップと、をさらに有する。患者が位置する環境についての情報に基づいてユーザにCPR誘導を提供することにより、SCA事象又は他の緊急状況時に素人救命者が危険及び困難な条件を評価し、それに対処するのを支援して、効果的なCPRを適時に遂行できるようにする。CPR誘導は、SCA事象又は緊急状況時の周辺環境を考慮に入れ、それにより、素人救命者が、環境条件、危険及び地形の問題を鑑みて適切な行動を取れるようにする。
【0023】
これらの実施形態のいくつかは、例えば傾斜した地形や凹凸のある地形、柔らかい/不安定な地面(例えば、雪、氷)、又は低照明条件など、効果的なCPRの遂行に悪影響を与えうる条件を加味したCPR誘導を提供する。さらに、これらの実施形態のいくつかは、携帯型であり、SCA事象又は緊急状況時にあらゆる場所からアクセスするのに好適である。
【0024】
環境情報は、例えば、予備的な行動又は準備のための行動を始めるべきかを評価するため、及び/又はCPRを開始すべきかどうかを評価するための、場所情報、交通情報、天候情報、及び危険情報、のうちの少なくとも1つを含む。また、環境情報は、効果的なCPRの遂行に悪影響を与えうる環境条件及び地形の問題を評価し、識別することを可能にする。したがって、これらの実施形態のいくつかは、SCA事象又は緊急状況のコンテキストを加味したCPR誘導を提供する。
【0025】
環境情報を、例えば処理して、素人救命者又は患者の安全に対して脅威を呈する可能性のある、SCAの患者又は事故の被害者の近傍にある危険を評価し、識別することができる。例として、SCAの患者又は事故の被害者の近傍にある危険又は脅威(火災、煙、車両交通、ガス又は化学物質の漏洩、垂れ下がった電線、又は電流が通っている電気的物品、落下物等)を、被害者/患者の方に向けられたカメラ及びマイクロフォンを使用して識別することができる。そして、顔、物体、及び音声認識を内蔵した画像及び音声分類アルゴリズムを介して、危険及び脅威の識別が達成される。この処理は、「クラウド」で行われてもよい(例えば、分散処理環境を介して)。
【0026】
加えて、環境情報は、他の情報源又はサービスによって提供されてもよい。例えば、データベースから得られる交通情報、局地的な天候条件、場所特有の危険を使用することができる。
【0027】
好ましくは、調節された心肺蘇生誘導を表示するステップは、処理された環境情報に応じて、患者の場所を変更する提案を表示するステップを含む。例えば、危険が検出又は推測される場合、潜在的な脅威をユーザに知らせ、視覚的及び/又は音声プロンプトを介して、患者を移動することにより、危険によって呈されるリスクを緩和するように誘導する(例えば、近くの火災や、AEDショック中に感電を引き起こし得る水溜りが患者の近くにある場合)。ユーザ(例えば、素人救命者)には、介入を許可するには状況が危険過ぎることを知らせてもよい。そのような事例では、ユーザはさらに、救急サービスの到着を待つために近くの安全な場所に誘導される(例えば、システムのGPSトラッカーにより取得された場所情報を使用する)。
【0028】
これらの実施形態のいくつかでは、調節された心肺蘇生誘導を表示するステップは、呼吸情報が患者が呼吸していることを示すのに応答して、患者の体位を変更する提案を表示するステップを含む。例えば、患者が呼吸している場合、ユーザは、視覚的及び/又は音声プロンプトを介して、患者を回復体位に配置してから救急サービスの到着を待つように命令される。
【0029】
これらの実施形態のいくつかでは、調節された心肺蘇生誘導を表示するステップは、呼吸情報が患者が呼吸していないことを示すのに応答して、処理された環境情報にさらに基づいて、患者の場所を変更する提案を表示するステップを含む。例えば、患者が呼吸していない場合、患者が位置している環境条件及び地形を、カメラからの画像及び画像処理アルゴリズムを使用して評価して、照明条件、地面の傾斜及びCPR中の圧迫に対する地表面の適性を評価する。それに代えて、これは、センサ又は携帯型コンピューティングデバイス(例えば、スマートフォンやスマートウォッチ)を直接患者の胸部に配置してから、内蔵加速度計からの信号を使用して地面の傾斜及び凹凸を評価し、運動分類アルゴリズムを使用して地表面の不安定性及び柔らかさを評価することによって達成することもできる。患者が効果的なCPRを行うのに環境条件及び/又は地形が適さないエリアに位置すると判定される場合、例えば、氷、もや、雪、不十分な照明、又は傾斜した、不安定な若しくは凹凸のある地表面等がある場合には、頭部装着型コンピューティングデバイスのGPSトラッカーを使用して、オーディオプロンプト及び視覚的プロンプトを介して、CPRに好適な近くの安全な場所に素人救命者を誘導する。次いで、調節された心肺蘇生誘導により、CPRを開始して救急サービスが到着するまでそれを継続するようにユーザに知らせる。
【0030】
特に有利な実施形態では、方法は、頭部装着型コンピューティングデバイスとワイヤレス通信するデバイスを自動的に識別するステップであって、デバイスの各々は、患者の生命兆候を監視するセンサ、患者/患者が位置する環境を感知するセンサ、並びに患者の胸部圧迫特性及び呼吸特性の少なくとも一方を検出するさらなるセンサ、のうち少なくとも1つを備える、ステップと、選択された、識別されたデバイスを頭部装着型コンピューティングデバイスにワイヤレスに接続するステップと、をさらに有する。この実施形態は、救命者又は居合わせた者が、生命兆候の感知及び/又は胸部圧迫特性の感知を行うことが可能な(スマート)デバイスを携行している可能性があるという洞察を利用し、救命者の近傍にあるデバイスを、例えば自動的に、又はユーザによって制御された形でCPR誘導システムに組み込むことにより、CPR誘導システムをその場で作成することができる。
【0031】
方法は、識別されたデバイスのワイヤレス通信モードを可能にするように頭部装着型コンピューティングデバイスの着用者に通知するための通知を、少なくとも1つの表示モジュール上に生成するステップをさらに有する。このようにして、所望される感知能力を有するデバイスを手動で設定して、CPR誘導システムに含めることができるようにする。
【0032】
方法は、CPR誘導システムに追加されたデバイスが患者に正しく位置付けられることを保証するために、選択された、識別されたデバイスを患者/患者に位置付けるための位置付け情報を、少なくとも1つの表示モジュールに表示するステップをさらに有する。
【0033】
一実施形態では、方法は、患者/患者の近傍にある除細動デバイスを自動的に識別するステップと、除細動デバイスに関するユーザ命令を少なくとも1つの表示装置上に提供するステップとをさらに有する。そのような除細動デバイスを検出することにより、CPRワークフローに除細動を追加することができ、それにより、特に除細動で生存の見込みが大幅に向上するときに、患者の生存の見込みをさらに向上させることができる。
【0034】
さらなる実施形態において、方法は、自動的に遠隔救急サービスをシステムに接続するステップと、システムを用いてそのサービスに救難信号を送信するステップであって、前記信号は場所情報(例えば、全地球測位情報)などの環境情報を含んでいる、ステップとをさらに有する。これにより、患者が可能な限り早く専門的な医療援助を受けることを保証する。
【0035】
別の態様によれば、頭部装着型コンピューティングデバイスのプロセッサで実行されたときに、上記実施形態のいずれかの方法を実施するコンピュータプログラムコードを具現化したコンピュータ可読媒体が提供され、頭部装着型コンピューティングデバイスは、頭部装着型コンピューティングデバイスを着用したときにデバイスの着用者によって見られるようになされた少なくとも1つの表示モジュールをさらに備える。そのようなコンピュータプログラム製品は、本発明のCPR誘導システムで実行されると、上記でより詳細に説明したように特に効果的なCPRの施与を助ける。
【0036】
さらに別の態様によれば、上記のコンピュータプログラム製品と頭部装着型コンピューティングデバイスとを含む心肺蘇生(CPR)誘導システムが提供され、頭部装着型コンピューティングデバイスは、患者(10)の生命兆候を監視するセンサと、頭部装着型コンピューティングデバイスを着用したときにデバイスの着用者によって見られるようになされた少なくとも1つの表示モジュールと、前記コンピュータプログラム製品のコンピュータプログラムコードを実行するように適合されたプロセッサとを備える。そのようなCPR誘導システムは、救命者にCPR誘導を提示するのを助け、それにより任意で、SCA事象又は他の緊急状況時に素人救命者が危険及び困難な条件を評価し、対処するのを支援して、効果的なCPRを適時に遂行できるようにし、一方で、救命者が治療対象の患者に集中できるようにし、一方でさらに、上記で説明したように外部デバイスをCPR誘導システムのセンサとして使用することを可能にする。
【0037】
CPR誘導システムは、頭部装着型コンピューティングデバイスの外部にある、患者の生命兆候を監視する少なくとも1つのセンサのうち1つ又は複数をさらに備える。
【0038】
CPR誘導システムは、さらなるセンサをさらに備える。
【0039】
CPR誘導システムはモジュール式のシステムであり、頭部装着型コンピューティングデバイス、頭部装着型コンピューティングデバイスの外部にある少なくとも1つのセンサ、及び/又はさらなるセンサの1つ又は複数は、別々のモジュールであり、例えば互いと通信する、例えばワイヤレス通信する、別々のデバイスである。
【0040】
例えば、さらなるセンサは、スマートフォンやスマートウォッチなどの携帯型又は装着型デバイスに組み込まれている。これには、あらゆる場所にあるデバイスを例えばその場で組み合わせて本発明のCPR誘導システムを形成することができ、それにより、院外SCA事象の発生時にそのようなCPR誘導システムを利用できる見込みを増大させるという利点がある。
【0041】
本発明の実施形態について、添付図面を参照して、より詳細に、非限定的な例として説明する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図は概略的なものに過ぎず、一定の縮尺で描かれていないことを理解すべきである。また、すべての図面を通じて、同じ参照符号を使用して同じ又は同様の部分を示すことも理解すべきである。
【0044】
本願のコンテキストでは、頭部装着型コンピューティングデバイスは、そのユーザの頭部に着用することができ、ユーザにコンピューティング機能を提供するデバイスである。頭部装着型コンピューティングデバイスは、インターネット又は別のコンピュータ可読媒体から取得されるソフトウェアアプリケーション(アプリ)内で指定される特定のコンピューティングタスクを行うように構成される。そのような頭部装着型コンピューティングデバイスの非限定的な例には、スマートヘッドギア、例えば眼鏡、ゴーグル、ヘルメット、帽子、バイザー、ヘッドバンド、又は着用者の頭部に、若しくは頭部から支持することができる任意の他のデバイス等が含まれる。
【0045】
図1は、本発明の一実施形態によるCPR誘導システムを使用して患者又は患者10にCPRを加えている救命者20を概略的に描いている。CPR誘導システムは、通例、救命者20によって着用される頭部装着型コンピューティングデバイス100を含み、これにより、頭部装着型コンピューティングデバイス100の表示モジュール106に表示される命令の形態で救命者20にCPR誘導を提供する。非限定的な例として、頭部装着型コンピューティングデバイス100はスマートグラスとして描かれているが、頭部装着型コンピューティングデバイス100は先に説明したように任意の好適な形状を取ってよいことを理解すべきである。頭部装着型コンピューティングデバイス100は通例、少なくとも1つの表示モジュール106を備え、これはシースルー又は透明の表示モジュール106である。
【0046】
図2は、そのような頭部装着型コンピューティングデバイス100の例示的実施形態をより詳細に概略的に描いている。いくつかの実施形態では、頭部装着型コンピューティングデバイス100は、下記でより詳細に説明するように、CPR誘導システムの遠隔コンポーネントとワイヤレス通信するように適合される。その目的のために、頭部装着型コンピューティングデバイス100は、そのような遠隔の対象とワイヤレス通信するためのワイヤレス通信インターフェース102を含む。頭部装着型コンピューティングデバイス100とそのような遠隔コンポーネントとの間のワイヤレス通信のいずれにも、任意の適切なワイヤレス通信プロトコル、例えば、赤外線リンク、Zigbee(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、IEEE 802.11標準、2G、3G、又は4G遠隔通信プロトコル等に準拠したワイヤレスローカルエリアネットワークプロトコルを使用することができる。
【0047】
頭部装着型コンピューティングデバイス100は任意で、例えばワイヤレスLANなどのさらなる遠隔システムとワイヤレス通信するためのさらなるワイヤレス通信インターフェース104を備えてもよく、それを通じて頭部装着型コンピューティングデバイス100は、インターネットなどの遠隔のデータ源にアクセスして、例えば、下記でより詳細に説明するように遠隔データベースからデータを取得する。それに代えて、頭部装着型コンピューティングデバイス100は、様々な遠隔の対象と通信することができる1つのワイヤレス通信インターフェースを備えてもよい。データプロセッサ110はさらに、ワイヤレス通信インターフェース102、及び存在する場合にはワイヤレス通信インターフェース104を制御するように適合される。
【0048】
少なくとも1つの表示モジュール106は、別個のディスプレイプロセッサ108の制御下にあり、この別個のディスプレイプロセッサ108は、データプロセッサ110によって制御されて、例えば、少なくとも1つの表示モジュール106にCPR誘導を表示するためにデータプロセッサ110から命令を受け取る。それに代えて、ディスプレイプロセッサ108及びデータプロセッサ110は、単一のプロセッサ、例えば汎用プロセッサ又は特定用途集積回路(ASIC)によって実施されてもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、頭部装着型コンピューティングデバイス100は、例えば、ユーザ命令が頭部の運動である場合にはジャイロスコープなどの運動センサを含む少なくとも1つのさらなるセンサ118を使用して、又は、着用者によって行われるジェスチャに基づく命令の画像を撮影する外向きの画像センサ若しくはカメラを含むことにより、ユーザ命令を検出し、検出された命令に応答して動作をトリガするようになされる。そのようなジェスチャ又は運動を取り込むための他の好適なセンサが当業者には明らかであろう。
【0050】
データプロセッサ110は、取り込まれたセンサデータから、着用者によって行われたジェスチャ又は運動を認識し、認識されたジェスチャ又は運動を命令として解釈するようになされる。そのような運動の非限定的な例には、例えば着用者の頭部の回転やうなずきが含まれる。そのようなジェスチャの非限定的な例には、例えば頭部装着型コンピューティングデバイス100を通した視野内での手又は指のジェスチャが含まれ、そのジェスチャが、外側を向いた画像センサ120によって取り込まれた画像の中で検出される。
【0051】
それに代えて、又はそれに加えて、少なくとも1つのさらなるセンサ118は音声センサを含んでもよく、例えば音声命令を検出するためのマイクロフォンが存在し、その場合、プロセッサ110は、センサデータを処理して音声命令を検出するために、さらなるセンサに通信的に結合される。
【0052】
少なくとも1つのさらなるセンサ118は、それに加えて、又はそれに代えて、入力センサ、例えば、頭部装着型コンピューティングデバイス100の着用者が選択肢のリストからユーザ命令を選択するのを助けるボタン等を含んでもよい。そのような選択肢のリストは、例えば、頭部装着型コンピューティングデバイス100の表示モジュール106に表示される。そのような入力センサは、ユーザからの入力を受け取るユーザインターフェースの一部を形成する。そのようなユーザインターフェースは、例えば、タッチパッド、キーパッド、ボタン、マイクロフォン、及び/又は他の入力装置を含む。データプロセッサ110は、ユーザインターフェースを通じて受け取られた入力に基づいて、頭部装着型コンピューティングデバイス100の機能の少なくとも一部を制御する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのさらなるセンサ118のいずれかが、ユーザインターフェースを画定するか、又はその一部を形成する。
【0053】
いくつかの実施形態では、頭部装着型コンピューティングデバイス100はさらに、頭部装着型コンピューティングデバイス100の着用者にオーディオ命令、例えば、少なくとも1つの表示モジュール106に表示されるCPR誘導を補助する音声命令を提供するためのスピーカなどのオーディオ出力装置114を備える。この目的のために任意の好適なオーディオ出力装置が使用されてよい。
【0054】
頭部装着型コンピューティングデバイス100はさらに、例えば表示されるCPR誘導データを記憶するデータ記憶デバイス112を備える。例えば、不揮発性又はフラッシュメモリ、PROM、EEPROM等、任意の好適な種類のデータ記憶装置が使用されてよい。
【0055】
頭部装着型コンピューティングデバイス100の様々なコンポーネントは、デバイス中に任意の好適な形で組み込まれてよく、例えば、非限定的な例として、頭部装着型コンピューティングデバイス100の装着フレームの一部135の中に組み込まれる。
図2は、頭部装着型コンピューティングデバイス100の例示的な実施形態を概略的に描き、ここでは、デバイスは単一の表示モジュール106のみを備え、この単一の表示モジュール106は、頭部装着型コンピューティングデバイス100の着用者の片方の目で観察できるようになされる。これは非限定的な例に過ぎず、透視型の表示モジュール106が救命者20のそれぞれの目に対して設けられる頭部装着型コンピューティングデバイス100を提供することも、等しく実現可能であることを理解すべきである。少なくとも1つの表示モジュール106は、通例、頭部装着型コンピューティングデバイス100の着用者、すなわち救命者が、少なくとも1つの表示モジュール106に表示された画像を観察できるようになされる。好ましくは、少なくとも1つの表示モジュール106は、シースルー又は透明の表示モジュールであり、それにより、着用者は表示モジュール106を通して視野の少なくとも一部を観察することができ、着用者は頭部装着型コンピューティングデバイス100を着用したままで患者10にCPRを行うことができる。
【0056】
少なくとも1つの表示モジュール106は、透明レンズ部分など、任意の好適な形態で提供される。それに代えて、頭部装着型コンピューティングデバイス100は、そのようなレンズ部分のペアを備えてもよく、すなわち上記で説明したようにそれぞれの目に1つ備えてもよい。1つ又は複数の透明レンズ部分は、1つ又は複数の透明レンズ部分を通して着用者のほぼ全視野が得られるような寸法とされる。例えば、少なくとも1つの表示モジュール106は、頭部装着型コンピューティングデバイス100のフレーム125の中に装着されるレンズの形状とされる。フレーム125は任意の好適な形状を有し、任意の好適な材料、例えば、金属、合金、プラスチック材料、又はそれらの組み合わせから作られることが理解されよう。頭部装着型コンピューティングデバイス100のいくつかのコンポーネントは、フレーム125内に装着され、例えば、フレーム125の一部を形成するコンポーネント筐体135の中に装着される。コンポーネント筐体135は、任意の好適な形状を有し、好ましくは、頭部装着型コンピューティングデバイス100を着用者が快適に着用できるようにする人間工学的形状を有する。
【0057】
これも
図1に示すように、CPR誘導システムはさらに、呼吸及び/又は脈拍などの患者10の生命兆候を検出するための、頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にあるセンサ200を備える。加えて、CPR誘導システムは、これも患者10の生命兆候を検出するための、頭部装着型コンピューティングデバイス100に組み込まれたセンサ210を備える。例えば、頭部装着型コンピューティングデバイス100は、患者10(の顔)の画像を撮影するための前方を向いたカメラ120を備え、この画像(又は画像の連続)は、画像(又は画像の連続)から生命兆候情報を抽出するために、それ自体よく知られているように、例えば撮影画像から生命兆候情報を抽出するためのメモリ112にあるアプリケーションを使用して、データプロセッサ110によって処理される。それに代えて、頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にある1つ又は複数のセンサ200が、頭部装着型コンピューティングデバイス100に組み込まれたセンサ210と組み合わせて使用されてもよい。そのような外部センサは、救命者20が持ち運ぶ専用のセンサデバイスであるか、又はスマートウォッチやスマートフォンなどのスマートデバイスに内蔵された生命兆候センサである。例えば、そのような外部センサは、スマートデバイスの内部に収容されており、スマートデバイスのカバー等を取り外すことによって露出させることができ、外部センサ200を患者10に取り付けることができる。外部センサ200の表面は、そのような取り付けを助ける粘着層を備える。取り付け命令は、下記でより詳細に説明するように、頭部装着型コンピューティングデバイス100の少なくとも1つの表示モジュール106に表示される。
【0058】
一実施形態では、頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にある複数個の生命兆候センサ200は、患者の身体の種々の部分、例えば患者の額、患者の首の動脈等に配置されて、患者10の生命兆候の正確な監視を可能にする。本願のコンテキストでは、生命兆候には、呼吸パターン又はリズム及び脈拍リズムの少なくとも1つが含まれる。疑念を避けるために、脈拍リズムは患者10の脈で検出されるとは限らず、それ自体よく知られているように患者10の身体の任意の好適な部分で検出され得ることを理解すべきである。生命兆候センサ200が頭部装着型デバイス100の外部にある場合、生命兆候センサ200は好ましくは、ワイヤレスインターフェース102又は104の1つを使用して、先に説明したような任意の好適なワイヤレスプロトコルを使用して、ワイヤレス方式で頭部装着型デバイス100に接続される。下記でより詳細に説明するように、1つ又は複数のセンサ200によって取り込まれたデータは、通例、データプロセッサ110によって処理され、この処理されたデータを使用してCPR誘導を生成して少なくとも1つの表示モジュール106に表示し、それにより、どのようにCPRを施与するかについての誘導を救命者20に提供する。
【0059】
一実施形態では、CPR誘導システムはさらに、胸部圧迫特性、すなわち、救命者20により患者10に施与される胸部圧迫の質に関係するデータを監視するためのさらなるセンサ300を備える。そのようなさらなるセンサ300は、例えば、救命者20によって施与されている圧迫の深さ、すなわち、患者10の胸部に対して垂直な変位距離、及び圧迫の頻度などのパラメータを決定するための、ジャイロスコープや加速度計などの運動センサを備える。一実施形態では、さらなるセンサ300は、頭部装着型コンピューティングデバイス100に組み込まれる。しかし、さらなるセンサ300によって収集されたデータと、救命者20によって施与されている胸部圧迫との間のより直接的な相関を得るために、さらなるセンサ300は頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にあることが好ましい。
【0060】
さらなるセンサ300は、
図1に示すように、救命者20が着用することができる。例えば、さらなるセンサ300は、スマートウォッチなど、救命者20の手首に着用されるデバイスに組み込まれるか、又は、さらなるセンサ300を含むグローブなど、救命者20の手に着用されるデバイスに組み込まれる。さらなるセンサ300を救命者20の手の近くに着用することにより、胸部圧迫の施与によって生じる手の運動をさらなるセンサ300によって正確に取り込むことができる。先と同様に、さらなるセンサ300が頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にある場合、さらなるセンサ300は、好ましくは、ワイヤレスインターフェース102又は104の1つを使用して、先に説明したような任意の好適なワイヤレスプロトコルを使用して、ワイヤレス方式で頭部装着型デバイス100に接続される。下記でより詳細に説明するように、さらなるセンサ300によって取り込まれたデータは通例データプロセッサ110によって処理され、この処理されたデータを使用して、救命者20が胸部圧迫を正しい方式で施与しているか、すなわち、十分な深さまで患者10の胸部を圧迫することにより、及び/又は適切な頻度、例えば1分当たり約100回の胸部圧迫で胸部圧迫を加えることにより、施与しているかどうかを確認する。データプロセッサ110が、胸部圧迫が救命者20によって正しく施与されていないと判定した場合、データプロセッサ110は、少なくとも1つの表示モジュール106での胸部圧迫誘導情報の表示をトリガし、それにより、どのように正しく胸部圧迫を施与するかについての誘導を救命者20に提供するか、又は、例えばデータプロセッサ110が施与されている胸部圧迫の質が徐々に低下しているのを検出し、そのことは救命者20の疲労を示す可能性があるため、CPRを施与する作業を別の救命者に交替するように指示する命令を救命者20に提供する。
【0061】
さらなるセンサ300が救命者20によって着用されることは必要ではない。
図3は、さらなるセンサ300の代替実施形態を概略的に描いており、ここでは、さらなるセンサ300は、救命者20の両手と患者10の胸部との間に配置され、さらなるセンサ300を通して患者10に胸部圧迫が加えられる。先と同様に、さらなるセンサ300は、スマートデバイス、例えばスマートウォッチなどのスマート装着型デバイスに組み込まれ、下記でより詳細に説明するように、スマートウォッチを救命者20の手首から、若しくは居合わせた者の手首から取り外して、さらなるセンサ300を提供するか、又はスマートフォンなどの非装着型のスマートデバイスに組み込まれ、下記でより詳細に説明するように、それが救命者20又は居合わせた者から提供されてもよい。
【0062】
一実施形態では、CPR誘導システムはさらに、患者が位置する環境、すなわち、救命者20又は患者10の周辺環境の特性及び/又は属性に関するデータを感知するセンサ310を備える。環境を感知するそのようなセンサ310は、例えば、救命者20のいる場所、すなわちセンサ310の場所を判定するための全地球測位システム(GPS)ユニットを備える。
【0063】
下記でより詳細に説明するように、環境を感知するセンサ310によって取り込まれたデータは、通例、データプロセッサ110によって処理され、その処理されたデータを使用してSCA事象又は緊急状況時の周囲環境を考慮し、それにより、環境条件、危険、及び地形の問題を鑑みて素人救命者が適切な行動を取れるようにする。
【0064】
データプロセッサ110が、患者が位置する環境に環境条件、危険及び/又は地形の問題があると判定した場合、データプロセッサ110は、少なくとも1つの表示モジュール106への誘導情報の表示をトリガし、それにより、環境条件、危険、及び地形の問題を鑑みてどのように適切な行動を取るかについての誘導を救命者20に提供する。
【0065】
例えば、センサ310の近傍にある危険又は脅威(火災、煙、車両交通、ガス又は化学物質の漏洩、垂れ下がった電線又は電流が通っている電気的物品、落下物等)が、センサ310からの場所情報を使用して識別される。場所情報は、例えば、データベースから得られる交通情報、天候情報、場所特有の危険等と関連して処理することができる。
【0066】
それに加えて及び/又はそれに代えて、環境情報は、頭部装着型コンピューティングデバイス100に組み込まれたカメラ及びマイクロフォンを使用して取得することもできる。そして、顔、物体、及び音声認識を内蔵した画像及び音声分類アルゴリズムを介して、危険及び脅威の識別が達成される。この処理は、「クラウド」で行われてもよい(例えば、分散処理環境を介して)。
【0067】
それに加えて、又はそれに代えて、環境情報は、他の情報源又はサービスによって提供されてもよい。
【0068】
データプロセッサ110が、患者/患者が位置する環境にCPRの安全な施与を妨げる環境条件、危険、及び/又は地形の問題があると判定した場合、データプロセッサ110は、潜在的な脅威を救命者20に知らせる誘導情報の通信をトリガし、音声又は視覚的プロンプトを介して、患者を移動することで危険によって呈されるリスクをどのように軽減するかを誘導する。データプロセッサ110は、さらには、介入を許可するには状況が危険過ぎることを通信してもよい。そのような事例では、救命者20はさらに、救急サービスの到着を待つために近くの安全な場所に誘導される(例えば、センサ310によって取得された場所情報を使用する)。
【0069】
さらなるセンサ300の場合と同様に、環境を感知するセンサ310が救命者20によって着用されることは必要ではない。
図3は、環境を感知するセンサ310の代替実施形態を概略的に描いており、ここではセンサ310がスマートフォン310によって提供される。例えば、センサ310は携帯電話に組み込まれ、下記でより詳細に説明するように、その携帯電話を患者10の近くに位置付けることにより、さらに他のセンサ310を提供する。
【0070】
実施形態は、SCA事象又は緊急状況中の環境条件、危険、及び地形の問題を素人救命者が評価するのを助けるために、1つ又は複数の携帯型コンピューティングデバイス(スマートウォッチ、スマートフォン、又は他の装着型センサプラットフォームなど)にある既存センサを使用するようになされてもよい。
【0071】
さらに、従来の広く入手できるスマートデバイスは通例、環境条件、危険及び地形の問題を評価するのに適した、多くの種々のセンサを内蔵している。これらには、GPSトラッカー、視覚的及び可聴の誘導が可能な高度ユーザインターフェース(例えば、LCDディスプレイ、AMOLED等)、並びに救急サービスへの通知を可能にする遠隔通信システムが含まれる。加えて、多くのスマートデバイスは追加的なセンサも備え、それらには、加速度計、ビデオカメラ、及び生命兆候の存在に関するリアルタイムのフィードバックなどのCPRワークフローの実行時に有用な光プレチスモグラフィ(PPG)センサが含まれる。したがって、そのような携帯型又は装着型コンピューティングデバイスを活用してCPR誘導システムを支援することができ、緊急状況が発生したときには、どのようなとき又は場所でも、CPR誘導システムを使用して素人救命者による介入を支援することができる。
【0072】
よって、素人救命者又は患者の安全に対して脅威を呈する可能性のある、SCA又は事故の被害者の近傍にある危険を評価し、識別する方法が提供される。実施形態は、効果的なCPRの遂行に悪影響を与えうる環境条件及び地形の問題も評価し、識別する。そのような評価を使用して、危険を緩和若しくは回避するように、及び/又はすべての環境条件及び地形の問題に対処するように、素人救命者を誘導して、安全で効果的なCPRの実行を保証する。
【0073】
環境情報は、例えば、予備的な行動又は準備のための行動を始めるべきかを評価するため、及び/又はCPRを開始すべきかどうかを評価するための、場所情報、交通情報、天候情報、及び危険情報、の少なくとも1つを含む。場所情報は、例えば、絶対位置、相対位置、地形特性、エンティティ存在情報等、環境又は地域の性質及び/又は特性に関係する情報を含む。天候情報は、例えば、気温、湿度、大気圧、風条件等、環境又は地域における局地的な天候条件の性質及び/又は特性に関係する情報を含む。交通情報は、例えば、車両の混雑、平均車両速度、車両通路の場所及び方向、車両通路特性、交通事象又は事故の発生等、環境又は地域における交通の性質及び/又は特性に関係する情報を含む。危険情報は、例えば、危険な事象の発生/場所、火災の存在、煙の存在、ガスの存在、化学物質漏洩の存在、垂れ下がった電線、電流が通っている電気的物品、落下物、洪水、地震、又は火山噴火のリスク等の、環境又は地域における危険の性質及び/又は特性に関係する情報を含む。
【0074】
そのように、実施形態は、困難な条件及び/又は危険な条件に直面したときに素人救命者が混乱したり、途方に暮れることがないようにするのを助ける。また、遭遇している環境条件に関係なく、効果的なCPRを遂行するように素人救命者を誘導することができる。
【0075】
ここで、CPR誘導システムは、救命者20や居合わせた者が所有している、例えば着用又は携行している、あらゆる場所にあるスマートデバイスを使用して、その場で作り出せることに留意されたい。そのようなスマートデバイスが日常生活で急速に普及していることを考えると、これは、したがって、SCA事象の現場でスマートデバイスの好適なコンポーネントを識別して、例えば、識別されたデバイスと頭部装着型コンピューティングデバイス100との間にワイヤレスリンクを確立することにより、識別されたコンポーネントをCPR誘導システムに取り込み、そして必要な場合は識別されたデバイスを患者10に配置することにより、そのようなCPR誘導システムをその場で作り出せる優れた見込みがあることを意味する。
【0076】
これを
図4の助けを借りてより詳細に説明する。
図4は、本発明のCPR誘導システムを使用してCPR誘導を提供する方法40の例示的実施形態のフローチャートを示す。好ましい実施形態では、方法40は、救命者20の近傍にあるセンサデバイスが検出されて、CPR誘導システムに追加される第1の分岐41と、CPR誘導システムを使用して救命者20が患者10にCPRを施与するのを誘導する第2の分岐42とを含む。疑念を避けるために、分岐41は、頭部装着型コンピューティングデバイス100が、患者10の生命兆候を監視するセンサ210と、救命者20による患者10への胸部圧迫の施与によって生じる胸部圧迫特性を監視するさらなるセンサ300とを備え、CPR誘導システムが、頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にある患者10の生命兆候を監視するセンサ200を備えない場合には、方法40から省略されてよいことに留意されたい。
【0077】
方法40は、頭部装着型コンピューティングデバイス100を着用した救命者20がSCA事象の疑われる患者を発見することにより、ステップ402で開始する。救命者20は、例えば、上記で説明したように、CPR施与モードを起動する命令としてデバイス100によって認識できるコマンドをデバイス100に提供することにより、頭部装着型コンピューティングデバイス100のCPR施与モードを起動し、それにより、ステップ404で、患者10の場所に救急サービスを導くために救急サービスへの第一応答者呼び出しを生成するように頭部装着型コンピューティングデバイス100を促す。この目的のために、第一応答者呼び出しは、全地球測位情報を含む自動化された呼び出しであってよく、この情報は、頭部装着型デバイス100内部の全地球測位ユニット、又は、例えば全地球測位ユニットを備えたスマートフォンやスマートウォッチなどのスマートデバイス等の、頭部装着型デバイス100と通信する全地球測位ユニットから取得され、そのようなスマートデバイスは、頭部装着型デバイス100にワイヤレスにリンクされる。それに代えて、第一応答者呼び出しは、例えば、呼び出しを生成する命令を頭部装着型コンピューティングデバイス100に発行することにより、救命者20によって生成される。
【0078】
次に、方法40はステップ406に進み、頭部装着型コンピューティングデバイス100が、患者の生命兆候(呼吸及び/又は脈拍など)を検出するセンサ200、又は患者が位置する環境を感知するさらなるセンサ300若しくはセンサ310を含んでいるデバイスを、患者10の近傍で検索する。そのようなデバイスは、例えば、それらのデバイスによって生成されるワイヤレス信号を識別することにより、又は全地球測位追跡信号、例えばGPSトラッカー信号、GRS信号、GLONASS信号等を識別することにより検出される。これらのセンサは、患者10、救命者20又は居合わせた者によって着用されている、スマートデバイス、例えばスマートウォッチ、又はスマートフォンに内蔵されている場合がある。利用可能なデバイスは、任意の好適な形で認識され、例えば、救命者20の近傍にあるデバイスへの問い合わせからデバイスの種類及びメーカー(製造番号)を認識し、識別されたデバイスを、所望されるセンサ機能を持つ既知のデバイスについての記憶されたデータベースと比較すること、又は、どのセンサがリンク可能であるかを知らせるように救命者20の近傍にあるスマートデバイスに要求してから、該当するセンサにリンクすることにより、認識される。
【0079】
救命者20は、その後ステップ408で、少なくとも1つの表示モジュール106に表示される配置命令を介して、識別されたデバイスを患者10の身体の適切な部分に位置付けるように誘導される。例えば、救命者20は、患者10の生命兆候、例えば脈拍及び呼吸パターンを検出できるように、頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にあるセンサ200の1つを含んでいるデバイスを患者10の首又は額に配置し、そして、頭部装着型コンピューティングデバイス100にセンサ信号を提供するために、さらなるセンサ300を含んでいるデバイスを患者10の胸部又は救命者20の手若しくは手首に配置するように誘導され、それにより、CPR誘導システム、特にデータプロセッサ110は、受信されたセンサ信号に応じてCPR誘導を生成することができる。
【0080】
ステップ410で、頭部装着型コンピューティングデバイス100は、先に説明したような好適なワイヤレス通信プロトコルを使用して、CPR誘導システムに取り込もうとする識別されたデバイスへのワイヤレス接続の確立を試みる。ステップ412で、識別されたデバイスと頭部装着型コンピューティングデバイス100との間のワイヤレス接続が確立されたかどうかが検査される。何らかの理由でワイヤレス接続の一部が確立されていない場合、方法40はステップ414に進み、ワイヤレス接続の一部が確立できなかった旨が救命者20に通知され、救命者20は、例えば影響を受けるデバイスのワイヤレス通信モードを可能にすることにより、それらのデバイスを調節することを試みることができる。これは、そのデバイスが居合わせた者から提供されたものであった場合は、ワイヤレス通信モードを起動するように居合わせた者に求めることを伴うこともある。通知は、頭部装着型コンピューティングデバイス100の少なくとも1つの表示モジュール106に表示される。方法40は次いでステップ412に戻り、すべてのデバイスが頭部装着型コンピューティングデバイス100とのワイヤレス通信リンクを確立したかどうかを検査する。
【0081】
すべてのデバイスが頭部装着型コンピューティングデバイス100にワイヤレスに接続されると、方法40はステップ416に進み、すべてのデバイスが患者10に対して正しく位置付けられているか、例えば、患者10の身体上の正しい位置に位置付けられているかどうかが検査される。この検査は、例えば、デバイスから提供されたセンサデータをサンプリングし、センサデータ、例えば生命兆候データが十分な品質であるかどうかを検査することにより、又は、頭部装着型コンピューティングデバイス100のカメラ120を使用して、例えばカメラ120によって撮影された画像をデータプロセッサ110で処理して、それらの画像内で識別されるデバイスが事前定義された場所に配置されているかどうかを判定することによって、デバイスが正しく位置付けられているかどうかを評価することにより、行われる。デバイスの少なくともいくつかが正しく位置付けされていないと判定された場合、方法はステップ418に進み、位置付けが正しくないデバイスについての再位置付け情報が救命者20に提示される。そのような再位置付け情報は、例えば、頭部装着型コンピューティングデバイス100の少なくとも1つの表示モジュール106に表示される。救命者20がデバイスを再位置付けすると、方法40はステップ416に戻り、デバイスの位置付けが再度検査される。
【0082】
所望されるセンサデータを提供するためのすべてのデバイスが正しく位置付けられると、方法40は、第2の分岐42、具体的にはステップ420に進み、患者10の生命兆候を監視するセンサを備えた1つ又は複数のデバイスから提供されたデータがデータプロセッサ110によって分析されて、患者10がCPRを必要とするかどうかを判定し、すなわち患者10に脈拍があり、呼吸しているかどうかを判定する。例えば、呼吸検査は、国際ガイドラインに従って、少なくとも10秒の期間にわたって行われる。上述したように、呼吸検査及び/又は脈拍検査は、1つ又は複数のセンサ200、210によって行われ、それらのセンサの少なくとも一部は、頭部装着型コンピューティングデバイス100に組み込まれ、及び/又は少なくとも一部は患者10に取り付けられる。一実施形態では、データプロセッサ110は、ステップ420で行われる評価の信頼性を向上させるために、1つ又は複数のセンサ200、210から受信される生命兆候データに、重み付け因子、例えば信号品質指標を適用する。
【0083】
検出される脈拍及び/又は呼吸パターンがない場合、方法40はステップ422に進み、少なくとも1つの表示モジュール406で救命者にCPR誘導が提示され、この誘導は、通例、胸部圧迫及び人工呼吸を施与する手法に関する誘導、例えば胸部圧迫の深さ及び頻度についての情報、いつ何回の人工呼吸を施与するかについての情報等を含む。
【0084】
救命者20が患者10にCPRの施与を開始すると、方法40はステップ426に進み、さらなるセンサ300、例えば、好ましくは頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にあり、患者10の胸部に配置されている、又は救命者20の手若しくは手首に着用されているさらなるセンサ300、例えば、上記でより詳細に説明したように、スマートウォッチ、感知グローブ又はスマートフォンなどのスマートデバイスに組み込まれたさらなるセンサ300から提供されるセンサデータを使用して、胸部圧迫の質がデータプロセッサ110によって監視される。ステップ426で胸部圧迫が正しく施与されていると判定された場合、方法40はステップ420に戻り、患者10が自力で呼吸しているか、及び/又は脈拍を回復したかどうかが検査される。これが該当しない場合、方法は再度ステップ424を照会する(任意で、CPR命令がまだ少なくとも1つの表示モジュール106に表示されている場合、又はもう表示する必要がない場合は、ステップ422を省略する)。
【0085】
ステップ424で、例えば、胸部圧迫が不十分な深さで加えられている、及び/又は正しくない頻度、例えば1分当たり約100回の圧迫の推奨頻度を(はるかに)下回る頻度で加えられているために、胸部圧迫が救命者20によって正しく施与されていないと判定された場合、方法はステップ426に進み、胸部圧迫の質が徐々に低下しているかどうかが検査される。これが該当する場合、これは、救命者20が胸部圧迫を正しく加えるための知識を持っているが、典型的には疲労のために、必要とされる胸部圧迫形式に身体的に準拠できなくなっていることを示すものである。
【0086】
これが該当する場合、方法40はステップ430に進み、少なくとも1つの表示モジュール106にメッセージが表示されて、CPR施与を別の救命者、例えばSCA事象の場に居合わせた者に引き継ぐべきことを救命者20に通知する。そのような居合わせた者は、例えば、頭部装着型コンピューティングデバイス100が、遠隔データベース、例えばクラウドデータベースに接触することによって識別され、ステップ406で識別されたデバイスは特定の所有者に関連付けられている場合があり、その所有者がCPRを施与する能力の点から分類される。救命者20には、CPRを施与することが可能な所有者の身元又は場所が提示され、救命者20はCPRの役目を引き継ぐためにそのような所有者に相談することができる。それに代えて、救命者20は無論、単にそのようなCPRの役目を引き継ぐ志願者がいないか居合わせた者に尋ねることもでき、その後方法40はステップ420に戻る。詳細には、新たな救命者は、疲労した救命者20から頭部装着型コンピューティングデバイス100も引き継ぐことができ、その場合、新たな救命者には、新たな救命者がCPRを再開する前に、先に説明したようなステップ422のCPR命令が提示される。
【0087】
ステップ426で、必要とされる胸部圧迫施与形式への不遵守が救命者20の疲労によって生じていないと判定される場合、方法40はステップ428に進み、救命者20が自身の胸部圧迫技術を向上できるように、より詳細な胸部圧迫技術の誘導が、例えばそのような誘導を頭部装着型コンピューティングデバイス100の少なくとも1つの表示モジュール106に表示することにより、救命者20に提示される。救命者20にそのような誘導が提示されると、方法40はステップ424に戻って、救命者20が現在正しい胸部圧迫技術を加えているかどうかを検査する。
【0088】
このようにして、方法40は、患者10が自発循環への復帰を示す、例えば、ステップ420における検出で自発呼吸及び脈拍を示すまで、又は救急サービスが現場に到着して引き継ぐまで継続し、その後、救命者20がCPRを終了し、患者10を回復体位に配置することにより、方法40はステップ432で終了する。これは、どのようにして患者10を回復体位に配置するかについての情報を、頭部装着型コンピューティングデバイス100の少なくとも1つの表示モジュール106に提示することを含む。一実施形態では、方法40は、救急サービスが現場に到着するまで継続される。これは、例えば、患者10を回復体位に配置した後も、例えば新たなSCA事象を検出するために患者10の生命兆候を監視し続けることを含む。
【0089】
ここで、上記の方法40の実施形態はこの方法の例示的実施形態に過ぎず、当業者には、それら実施形態へのいくつかの拡張及び/又は実施形態における変形例が直ちに明らかになることに留意されたい。
【0090】
例えば、方法40は、患者10の近傍にある、例えば居合わせた者の一人が所有している携帯型除細動デバイスの検出によって拡張されてもよく、この検出は例えば非限定的な例として方法40のステップ406で行われ、その場合、CPR施与モジュール42は、除細動デバイスの使用法についての救命者20への命令をCPRワークフローに含めることによって拡張される。例えば、除細動デバイスを使用するためのユーザ命令が、少なくとも1つの表示モジュール106に表示するために、除細動デバイスから頭部装着型コンピューティングデバイス100に直接転送される。
【0091】
方法40はまた、例えば、ステップ406で居合わせた者のCPR技量を識別することによって拡張されてもよく、例えば、救命者20の近傍にあるスマートデバイスを識別すると、そのスマートデバイスが登録されている遠隔データベースに接触し、そのデータベースはさらに、スマートデバイスの所有者のCPR施与能力に関する情報を含む、所有者についての情報を備えている。このようにして、居合わせた者を、CPRが可能な第1の群の居合わせた者と、CPRが可能でない第2の群の居合わせた者とに分けることができ、居合わせた者には、各自のCPRを施与する(無)能力に基づいて特定の作業が割り当てられる。そのような作業には、例えば、群集の統制、救急サービスへの連絡、携帯型除細動器の取得等が含まれる。そのような作業は、データプロセッサ110がそれらの所有者に作業を割り当てる場合には、頭部装着型コンピューティングデバイス100によってそれら所有者のデバイスに通信され、又は、例えば遠隔データベースに関連付けられた遠隔の管理センターによってそれらの所有者に通信される。
【0092】
図5は、本発明のCPR誘導システムを使用してCPR誘導を提供する方法50の例示的実施形態のフローチャートを描く。好ましい実施形態では、方法50は、救命者20の近傍にあるセンサデバイスが検出されて、CPR誘導システムに追加される第1の分岐51と、CPR誘導システムを使用して、心肺蘇生誘導を生成し、それを救命者20に提示する第2の分岐とを含む。
図4のコンテキストで説明した方法40と同様に、疑念を避けるために、第1の分岐51は、頭部装着型コンピューティングデバイス100が、患者10の生命兆候を監視するセンサ210と、患者が位置する環境を感知するセンサ310と、救命者20による患者10への胸部圧迫の施与によって生じる胸部圧迫特性を監視するさらなるセンサ300とを備え、CPR誘導システムが、頭部装着型コンピューティングデバイス100の外部にある患者10の生命兆候を監視するセンサ200を備えない場合には、方法50から省略されてよいことに留意されたい。
【0093】
方法50は、頭部装着型コンピューティングデバイス100を着用した救命者20がSCA事象の疑われる患者を発見することにより、ステップ402で開始する。ステップ404で、救急サービスを患者10の場所に導くために、救急サービスへの第一応答者呼び出しを生成するように頭部装着型コンピューティングデバイス100を促す。
【0094】
次に、方法50はステップ406に進み、頭部装着型コンピューティングデバイス100が、患者の生命兆候(呼吸特性など)を検出するセンサ200、又は患者が位置する環境を感知するセンサ310を含んでいるデバイスを、患者10の近傍で検索する。
【0095】
ステップ412で、識別されたデバイスと頭部装着型コンピューティングデバイス100との間のワイヤレス接続が確立されたかどうかが検査される。何らかの理由でワイヤレス接続の一部が確立されていない場合、方法50はステップ414に進み、ワイヤレス接続の一部が確立できなかった旨が救命者20に通知され、救命者20は、その影響を受けるデバイスを、例えばそれらのデバイスのワイヤレス通信モードを可能にすることにより、調節することを試みることができる。
【0096】
すべてのデバイスが頭部装着型コンピューティングデバイス100にワイヤレスに接続されると、方法50はステップ516に進み、環境情報を抽出して患者10又は救命者20の近傍にある危険又は脅威の存在(火災、煙、車両交通、ガス又は化学物質の漏洩、垂れ下がった電線又は電流が通っている電気的物品、落下物等)を判定するために、少なくとも1つのセンサからの環境情報を伝達する第2の信号がデータプロセッサ110によって処理される。例えば、スマートフォンのカメラ及びマイクロフォンからのデータが、顔、物体、及び音声認識を内蔵した画像及び音声分類アルゴリズムに従って処理される。この処理は、分散処理環境(例えば、「クラウド」など)を介して行われる処理で支援されてもよい。また、例えば交通情報、局地的な天候条件、データベースに記憶された場所特有の危険など、追加的な環境情報が他のサービスから提供され、処理によって考慮されてもよい。よって、ステップ516で、場所情報、交通情報、天候情報、及び危険情報を含む各種の環境情報がデータプロセッサ110によって処理されて、患者10又は救命者20の近傍に危険又は脅威があるかどうかを判定する。
【0097】
救命者20が患者10に接近することが安全であると判定される場合、すなわち、許容できない危険又は脅威が存在しない場合、方法はステップ523に進み、少なくとも1つの表示モジュール106に表示される配置命令を介して、救命者20が、識別されたデバイスを患者10の身体の適切な部分又はその近くに位置付けるように誘導される(下記でより詳細に説明されるように)。
【0098】
救命者20が患者10に接近することが安全でないと判定される場合、すなわち、許容できない危険又は脅威が存在する場合、方法はステップ518に進み、データプロセッサ110は、その危険又は脅威を安全に対処、緩和、又は回避できるかどうかを判定する。
【0099】
データプロセッサ110が、患者10が位置する環境に、CPRの安全な施与を完全に妨げる環境的危険及び/又は脅威がある(例えば、介入を許可するには状況が危険過ぎる)と判定した場合、方法はステップ520に進み、データプロセッサ110が、潜在的な危険/脅威を救命者20に知らせ、近くの安全な場所に移動して救急サービスの到着を待つように救命者20に命令する誘導情報の通信をトリガする(例えば、システムのセンサによって取得された場所情報を使用する)。
【0100】
データプロセッサ110が、患者10が位置する環境に、CPRの安全な施与を可能にするために回避、対処、又は緩和できる環境的危険及び/又は脅威があると判定した場合、方法はステップ522に進み、データプロセッサ110は、音声又は視覚的プロンプトを介して、例えば患者を移動することで、危険によって呈されるリスクをどのように軽減するかを知らせる誘導情報の通信をトリガする。方法50は次いでステップ516に戻って、危険又は脅威がまだ存在するかどうかを検査する。
【0101】
上記で詳細に説明したように、ステップ516で、救命者20が患者10に接近することが安全であると判定される場合、すなわち、許容できない危険又は脅威が存在しない場合、方法はステップ423に進み、救命者20は続いて、少なくとも1つの表示モジュール106に表示される配置命令を介して、識別されたデバイス又はセンサを患者10の身体の適切な部分又はその近くに位置付けるように誘導される。
【0102】
例えば、ステップ523で、救命者20は、患者10の生命兆候、例えば脈拍及び呼吸パターンを検出できるように、センサ200を含んでいるデバイスを患者10の首又は額に配置し、そして、頭部装着型コンピューティングデバイス100にセンサ信号を提供するために、別のセンサ300を含んでいるデバイスを患者10の胸部又は救命者20の手若しくは手首に配置するように誘導され、それにより、CPR誘導システム、特にデータプロセッサ110は、受信されたセンサ信号に応じてCPR誘導を生成することができる。
【0103】
方法は次いでステップ416に進み、すべてのデバイスが患者10に対して正しく位置付けられているか、例えば患者10の身体上の正しい位置に位置付けられているかどうかが検査される。1つ又は複数のセンサ又はデバイスが正しく位置付けされていないと判定された場合、方法はステップ418に進み、位置付けが正しくないセンサ又はデバイスについての位置付け情報が救命者20に提示される。
【0104】
所望されるセンサデータを提供するためのすべてのデバイスが正しく位置付けられると、方法50はステップ420に進み、患者10の生命兆候を監視するセンサを備えた1つ又は複数のデバイスによって提供されたデータがデータプロセッサ110によって分析されて、患者10がCPRを必要とするかどうかを判定し、すなわち患者10に脈拍があり、呼吸しているかどうかを判定する。
【0105】
データプロセッサ110が、患者に脈拍がある、且つ/又は呼吸しており、CPRを必要としないと判定した場合、方法はステップ530に進み、データプロセッサ110は、潜在的な危険/脅威を救命者20に知らせ、患者の体位を変更して(例えば患者10を回復体位に配置する)、救急サービスの到着を待つように救命者20に命令する誘導情報の表示をトリガする(例えば、システムのセンサによって取得された場所情報を使用する)。これは、どのようにして患者10を回復体位に配置するかについての情報を、頭部装着型コンピューティングデバイス100の少なくとも1つの表示モジュール106に提示することを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、方法50は次いでループしてステップ516又は420に戻り、患者及び救命者の近傍にある潜在的な危険の反復的な監視、及び患者の生命兆候の反復的な監視を行う。よって、方法50は、救急サービスが現場に到着するまで継続される。これは、例えば、患者10を回復体位に配置した後も、潜在的な危険、及び/又は例えば新たなSCA事象を検出するための患者10の生命兆候を監視し続けることを含む。
【0107】
データプロセッサ110が、患者10に脈拍がなく、且つ/又は呼吸しておらず、CPRを必要とすると判定した場合、方法50はステップ532に進み、環境情報を抽出して効果的なCPRを行うのに環境条件及び/又は地形が好適であるかどうかを判定するために、少なくとも1つのセンサからの環境情報を伝達する第2の信号がデータプロセッサ110によって処理される。
【0108】
例として、これは、内蔵カメラからの画像及び画像処理アルゴリズムを使用して、照明条件、地面の傾斜及びCPR中の圧迫に対する地表面の適性、すなわち、表面が柔らか過ぎる、石が多い、凸凹がある、傾斜している、又は不安定であるかどうかを評価することによって達成される。それに代えて、これは、センサ又はスマートデバイス(例えば、スマートフォンやスマートウォッチ)を直接患者の胸部に位置付けてから、内蔵加速度計の向きを使用して地面の傾斜又は凹凸を評価し、運動分類アルゴリズムを使用して地表面の不安定性及び柔らかさを評価することによって達成することもできる。
【0109】
ステップ532で、患者が効果的なCPRを行うのに環境条件及び/又は地形が適さないエリアに位置すると判定される場合、例えば、氷、もや、雪、不十分な照明、又は傾斜した、不安定な若しくは凹凸のある地表面等がある場合、方法はステップ534に進み、データプロセッサ110は、不適当な環境条件を救命者20に知らせ、視覚的及び/又はオーディオプロンプトを介して、患者10をCPRに好適な近くの場所に移動するように救命者20に命令する誘導情報の表示をトリガする。方法は次いでステップ416に進み、すべてのデバイスが患者10に対して正しく位置付けられているかどうか、例えば、患者10の身体上の正しい位置に位置付けられているかどうかが再度検査される。
【0110】
ステップ532で、患者が効果的なCPRを行うのに環境条件及び/又は地形が好適であるエリアに位置すると判定される場合、方法はステップ422に進み、データプロセッサ110は、CPRを開始して継続するように救命者20に知らせる誘導情報の提示をトリガし、
図4の方法40のコンテキストですでに説明した第2の分岐42の以後のステップ424、426、428、430、及び432に進む。
【0111】
いくつかの実施形態では、方法50は次いでループしてステップ420に戻り、患者の生命兆候の反復的な監視を行う。このようにして、方法50は、患者10が自発循環への復帰を示す、例えば、ステップ420における検出で自発呼吸及び生命を維持できる脈拍を示すまで、又は救急サービスが現場に到着して引き継ぐまで継続し、その後、救命者20がCPRを終了し、患者10を回復体位に配置することにより、方法50は終了する。
【0112】
上記で開示した実施形態に対する他の好適な拡張及び変形が当業者には明らかであろう。
【0113】
本発明の態様は、頭部装着型コンピューティングデバイスによって少なくとも一部が具現化される、又は頭部装着型コンピューティングデバイスを含む別々のエンティティに分散された、心肺蘇生誘導方法又はシステムとして具現化される。本発明の態様は、コンピュータ可読プログラムコードが具現化された1つ又は複数のコンピュータ可読媒体において具現化されたコンピュータプログラム製品の形態を取ることができる。
【0114】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせを利用することができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体である。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、これらに限定されないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線、又は半導体システム、装置、若しくはデバイス、又はこれらの任意の好適な組み合わせである。そのようなシステム、装置、又はデバイスは、任意の好適なネットワーク接続を通じてアクセスすることができ、例えば、システム、装置、又はデバイスは、ネットワークを通じてコンピュータ可読プログラムコードを取得するためにネットワークを通じてアクセスすることができる。そのようなネットワークは、例えば、インターネット、モバイル通信ネットワーク等である。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非網羅的なリスト)には、1つ又は複数の配線を有する電気接続、携帯型コンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM若しくはフラッシュメモリ)、光ファイバ、携帯型コンパクトディスク読み取り専用メモリ(CD−ROM)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、又はそれらの任意の好適な組み合わせが含まれる。本願のコンテキストでは、コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行システム、装置、若しくはデバイスによる使用のために、又はそれらに関連して、プログラムを保持又は記憶することが可能な任意の有形媒体とすることができる。
【0115】
コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読プログラムコードが、例えばベースバンド中に、又は搬送波の一部としてなど、その中に具現化された伝搬データ信号を含む。そのような伝搬信号は、これらに限定されないが、電磁気、光学、又はそれらの任意の好適な組み合わせを含む各種形態のいずれを取ってもよい。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、且つ命令実行システム、装置、デバイスによる使用のために、又はそれらに関連して、プログラムを通信、伝搬、又は移送することができる任意のコンピュータ可読媒体であってよい。
【0116】
コンピュータ可読媒体に具現化されたプログラムコードは、これらに限定されないが、ワイヤレス、ワイヤライン、光ファイバケーブル、RF等、又はそれらの任意の好適な組み合わせを含む任意の適切な媒体を使用して伝送することができる。
【0117】
プロセッサ110で実行することによって本発明の方法を実行するためのコンピュータプログラムコードは、1つ又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書くことができ、それらには、Java(登録商標)、Smalltalk、C++等のオブジェクト指向プログラミング言語、及び「C」プログラミング言語や同様のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語が含まれる。プログラムコードは、例えばアプリなどの独立型ソフトウェアパッケージとして全体がプロセッサ110上で実行されることも、又は一部がプロセッサ110で実行され、一部が遠隔サーバで実行されることも可能である。後者のシナリオでは、遠隔サーバは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又はワイドエリアネットワーク(WAN)を含む任意の種類のネットワークを通じて頭部装着型コンピューティングデバイス100に接続されるか、又は、例えばインターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを通じて外部コンピュータへの接続が行われる。
【0118】
本発明の態様について、上記では本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して説明した。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、及びフローチャート図及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせは、頭部装着型コンピューティングデバイス100を含む心肺蘇生誘導システムのディスプレイプロセッサ108及び/又はデータプロセッサ110で全体又は一部が実行されるコンピュータプログラム命令によって実施することができ、その命令により、フローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックに規定された機能/動作を実施する手段を作り出すことが理解されよう。これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読媒体に記憶されて、それが、頭部装着型コンピューティングデバイス100を含む心肺蘇生誘導システムが特定の形で機能するように導くことができる。
【0119】
コンピュータプログラム命令は、ディスプレイプロセッサ108及び/又はデータプロセッサ110にロードされて、一連の動作ステップをディスプレイプロセッサ108及び/又はデータプロセッサ110で行わせ、コンピュータによって実施されるプロセスを生成させて、ディスプレイプロセッサ108及び/又はデータプロセッサ110で実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1つ又は複数のブロックに規定された機能/動作を実施するプロセスを提供する。コンピュータプログラム製品は、頭部装着型コンピューティングデバイス100を含む心肺蘇生誘導システムの一部を形成することができ、例えば心肺蘇生誘導システムにインストールされる。
【0120】
上述の実施形態は、本発明を制限するのではなく、本発明を説明するものであり、当業者は、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多くの代替実施形態を設計できることに留意すべきである。請求項中、括弧に入れられた参照符号は、請求項を制限するものと解釈すべきでない。「を含む」という単語は、請求項に列挙される以外の要素又はステップの存在を排除しない。要素の前にある「a」又は「an」という単語は、複数個のそのような要素の存在を排除しない。本発明は、いくつかの別個の要素からなるハードウェアを利用して実施することができる。いくつかの手段を列挙する装置クレームにおいて、それらの手段のいくつかを、1つの同じハードウェア物品によって具現化することができる。特定の措置が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、それらの措置の組み合わせを有利に使用できないことを意味しない。