特許第6564073号(P6564073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564073
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】放射量計画システム
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/10 20060101AFI20190808BHJP
   A61B 8/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   A61N5/10 P
   A61B8/14
【請求項の数】10
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-564497(P2017-564497)
(86)(22)【出願日】2016年6月10日
(65)【公表番号】特表2018-518277(P2018-518277A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】EP2016063336
(87)【国際公開番号】WO2016198626
(87)【国際公開日】20161215
【審査請求日】2018年8月15日
(31)【優先権主張番号】15171904.4
(32)【優先日】2015年6月12日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】クストラ ヤセク ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】オウトヴァスト ギョーム レオポルド テオドルス フレデリック
【審査官】 松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/080647(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0135115(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0065260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/10
A61B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の器官の病変組織の治療処置のための放射量計画システムであって、
生検部位で見出される腫瘍特性及び/又は組織特性並びに生検部位に関する対象の器官についての生検情報を受信する生検マップ作成モジュールであって、前記生検マップ作成モジュールは、さらに、前記生検部位に関する空間情報を、対応する前記生検部位で見出された腫瘍特性及び/又は組織特性にリンクさせることによって、前記器官の空間注釈付き生検マップを作成する、生検マップ作成モジュールと、
前記生検部位からの腫瘍特性及び/又は組織特性を使用することによって生検が行われなかった前記器官内の部位の腫瘍確率を計算することによって腫瘍確率マップを作成する、確率マップ計算モジュールと、
前記腫瘍確率マップに基づいて放射量計画を作成する放射量計画モジュールであって、より高い腫瘍確率を有する領域についてはより高い計画放射量が計画され、より低い腫瘍確率を有する領域についてはより低い計画放射量が計画されるような計画制約がある、放射量計画モジュールと
を含む、放射量計画システム。
【請求項2】
前記腫瘍確率マップは、腫瘍の存在の推定される可能性、予想される腫瘍細胞密度、又は腫瘍攻撃性レベルのうちの1つに対する空間分布である、請求項1に記載の放射量計画システム。
【請求項3】
前記器官内の所定の部位から生検を採取し、さらに、前記生検部位に関する少なくとも空間情報を前記生検マップ作成モジュールに提供する、画像誘導生検システムをさらに含む、請求項1又は2に記載の放射量計画システム。
【請求項4】
前記画像誘導生検システムは、フォトニック針を含み、前記フォトニック針は、前記生検部位で見出された腫瘍特性及び/又は組織特性並びに生検部位に関する前記対象の器官についての生検情報を、前記生検マップ作成モジュールに提供する、請求項3に記載の放射量計画システム。
【請求項5】
前記画像誘導生検システムは、生検中の画像誘導のための超音波システムを含む、請求項3又は4に記載の放射量計画システム。
【請求項6】
前記超音波システムによって取得された前記器官の画像を、第2の画像化モダリティを用いて取得された前記器官の過去の画像と位置合わせする、位置合わせモジュールを含み、前記生検部位は、前記過去の画像に基づいて少なくとも部分的に決定される、請求項5に記載の放射量計画システム。
【請求項7】
近接照射治療、陽子線治療、凍結治療、高周波アブレーション、レーザーアブレーション、及び高強度集束超音波処置を含む、処置のグループのうちの少なくとも1つに対する放射量計画を作成する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の放射量計画システム。
【請求項8】
前記確率マップ計算モジュールは、前記生検部位の間の前記腫瘍特性及び/又は組織特性の補間に基づいて、又は、前記腫瘍及び/又は組織の特徴を入力として使用する腫瘍形状モデルに基づいて、前記腫瘍確率マップを作成する、請求項1乃至7の何れか一項に記載の放射量計画システム。
【請求項9】
前記腫瘍特性は、細胞密度、生検試料内の腫瘍のサイズ、生検試料あたりの腫瘍の割合、又は腫瘍の攻撃性に関連する尺度、を含む特性のグループのうちの少なくとも1つである、請求項1乃至8の何れか一項に記載の放射量計画システム。
【請求項10】
前記放射量計画モジュールは、処置される前記器官の近くに位置する、リスクを有する器官に対する放射量制約をさらに使用する、請求項1乃至9の何れか一項に記載の放射量計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器官の病変組織の治療処置のための放射量計画システムに関し、特に、腫瘍学の分野における処置のための放射量計画システムに関する。
【背景技術】
【0002】
癌患者における腫瘍の処置は、近接照射治療等の低侵襲的アプローチから、腫瘍を含む全器官が除去される外科的アプローチに至るまで、いくつかのアプローチを使用して行われ得る。早期発見及びスクリーニングの改善、及び副作用の潜在的な減少により、侵襲性の低い局所治療が人気を集めている。
【0003】
癌診断から処置までのワークフローは、いくつかの段階から構成される。生検は、通常、腫瘍の種類を評価し、癌の進行度のスコアを提供するために、診断段階中に行われる。生検は、通常、複数の部位で行われ、全体的なスコアが生成される。この全体的なスコアを作成するために、下記のいくつかのアプローチが使用される。
1.コアあたりの癌のミリメートル
2.全てのコアの中での癌の総ミリメートル
3.コアあたりの癌の割合
4.試料全体における癌の総割合
5.陽性コアの数
6.陽性コアの割合(陽性コア及び総コアの数)
【0004】
米国特許第7831293号B2明細書は、処置のための生物学的標的を規定する方法を記載する。この文献は、検出可能なマーカが生検部位に残される方法を記載する。このマーカは、組織病理学的データを機能的画像化と相関するために使用される。腫瘍処置計画を作成するために使用されるデータセットは、標的組織の異なる領域の特定の病理及び腫瘍進行又は攻撃性を識別し区別し得るので、異なる強度で個別の生物学的標的体積組織の異なる領域に治療を導くために、処置計画が使用され得る。病理学的に規定された腫瘍の点は、機能的画像に関する陽性所見が既知の疾患部位の既知のマーカとして役立ち得るように、機能的研究(例えば、MRSI、SPECT、PET又は光学的生検)と相関される。機能的研究が、これまでの潜在的な腫瘍病巣のこれらの領域を検出し得る場合、このとき、機能的研究に関する活性を示す他の領域は、追加の潜在的な腫瘍病巣を示すものとして扱われ得、それによって処置のための生物学的標的ボリュームを規定するために使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、処置計画を改善することである。この目的は、
生検部位で見出される組織の組織特性及び生検部位に関する対象の器官についての生検情報を受信する生検マップ作成モジュールであって、生検マップ作成モジュールは、さらに、生検部位に関する空間情報を、対応する生検部位で見出された組織の組織特性にリンクさせることによって、器官の空間注釈付き生検マップを作成する、生検マップ作成モジュールと、
‐ 生検部位からの腫瘍及び/又は組織特性を使用することによって生検が行われなかった器官内の部位の腫瘍確率を計算することによって腫瘍確率マップを作成する、確率マップ計算モジュールと、
‐ 腫瘍確率マップに基づいて放射量計画を作成する放射量計画モジュールであって、平均より高い腫瘍確率を有する領域についてはより高い計画放射量が計画され、平均より低い腫瘍確率を有する領域についてはより低い計画放射量が計画されるような計画制約がある、放射量計画モジュールと
を含む、対象の器官の病変組織の治療処置のための放射量計画システムによって達成される。
【0006】
現在、放射線処置において2つの重要な課題が存在する。第1に、腫瘍組織の正確な描写が困難であり得ることである。医用画像に基づいて異なる観察者によって作られた描写には、多くのバリエーションが存在する。さらに、正確な放射量の決定が困難なことである。腫瘍制御確率を増大し、副作用を低減するために、腫瘍の攻撃性に基づいて腫瘍内の放射量を変えることが提案されている。しかし、数値アプローチによるこのいわゆる放射量ペインティングは、組織の(機能的)画像化(例えば、PET、拡散強調MRI、動的コントラスト強調MRI)に常に依存する。これらの画像化技術は腫瘍確率及び腫瘍の攻撃性の間接的な尺度を提供するだけであることが、本発明者らの洞察である。したがって、腫瘍確率マップを計算するために生検結果を直接使用することによって、結局放射量計画モジュールの入力となって、処置計画が改善される。腫瘍確率マップは、腫瘍の存在が推定される可能性の空間分布を提供するマップであり得る。また、予想される腫瘍細胞密度又は攻撃性レベルに空間分布(例えば、前立腺癌の場合のグリーソンスコア)を提供し得る。
【0007】
本発明の実施形態によれば、放射量計画システムは、器官内の所定の部位から生検を採取し、さらに、生検部位に関する少なくとも空間情報を生検マップ作成モジュールに提供する、画像誘導生検システムをさらに含む。腫瘍処置のワークフローを改善することに役立つので、この実施形態は有利である。標的化された生検が行われ得、生検の組織病理学的分析に基づいて、生検マップが直接作成され得、これは、確率マップ及び放射量計画の計算に使用され得る。このとき、この計画は処置のために直接使用され得る。画像ガイダンスは、例えば、超音波又は磁気共鳴画像化を用いて提供され得る。
【0008】
本発明のさらなる実施形態によれば、画像誘導生検システムは、フォトニック針を含む。フォトニック針によって取り出されたスペクトルの自動分析は、診断から処置までのプロセスをさらに迅速化する。
【0009】
本発明のさらなる実施形態によれば、画像誘導生検システムは、超音波システムによって取得された器官の画像を、第2の医用画像システムによって取得された器官の画像と位置合わせする、位置合わせモジュールを含み、生検部位は、第2の医用画像システムによって取得された画像に基づいて少なくとも部分的に決定される。超音波は画像ガイダンスに非常に良好であるが、例えば、前立腺癌等の特定の状況において、超音波は疑わしい部組織を含む部位を決定するために選択される画像化モダリティではないので、この実施形態は有利である。これらの状況において、疑わしい部組織の部位は、例えば、MRI、PET、SPECT、(コントラスト増強)CT等の、異なる画像化モダリティで取得された画像に基づいて決定される。画像位置合わせ後、第2の医用画像システムによって取得された画像によって見出された疑わしい部位は、超音波座標系に変換され得る。
【0010】
放射量計画システムは、放射線治療、陽子線治療、凍結治療、高周波アブレーション、レーザーアブレーション又は高強度集束超音波処置のうちの1つに対する放射量計画を作成し得る。
【0011】
本発明のこれらの態様及び他の態様は、以下に記載される実施形態を参照して明白になり、解明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明による放射量計画システムを示す。
図2】腫瘍確率マップの一例を示す。
図3図2の腫瘍確率マップに対応する線量計画を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明による放射量計画システム10を示す。放射量計画システムは、生検マップ作成モジュール13と、確率マップ計算モジュール14と、放射量計画モジュール15とを含む。本発明を使用する放射量計画ワークフローは、対象器官の画像の取得11から始められ、対象器官の画像に基づいて器官内の疑わしい部位が識別され得る。また、疑わしくない部位も識別され得る。これらの画像は、例えば、磁気共鳴(MR)画像であり得る。MR画像は、位置合わせモジュール12に提供され得る。生検手順中に、画像誘導生検システム102は、超音波システム101を用いて生検誘導のための超音波画像を取得し得る。少なくとも1つの超音波画像は、位置合わせモジュール12に提供される。次いで、位置合わせモジュールは、超音波画像をMR画像に位置合わせし、器官の識別された疑わしい部位及び非疑わしい部位が超音波システム101の画像化座標系に変換され得る。次いで、システムのオペレータは、組織17に関する組織病理学的分析を行うために、フォトニック針100を識別された部位に誘導し得る。
【0014】
代替的に、生検が行われて分析のために病理部門に送られ得る。組織分析は、腫瘍細胞密度、腫瘍細胞の割合、腫瘍の攻撃性等の、組織特性をもたらす。生検組織17及び生検部位16から決定された組織特性は、生検マップ作成モジュール13に提供され、生検部位を対応する組織特性にリンクすることによって生検マップを作成する。
【0015】
生検マップは、確率マップ計算モジュール14の入力として機能し、それを使用して腫瘍確率マップ18を計算する。ここで、線103は、腫瘍確率が特定の閾値を超える領域を囲む。確率マップ計算モジュール14は、補間又は腫瘍形状モデルに基づいて腫瘍確率マップ18を作成し得る。この方法は腫瘍形状に関する事前の知識を必要としないので、補間は有利であり得る。
【0016】
腫瘍形状モデルは、例えば、腫瘍細胞密度、腫瘍の攻撃性、DNA変異、DNA発現レベル、生検材料内に見出されるタンパク質レベルに関連して、腫瘍の広がりに関する利用可能な統計的情報を利用し得る。腫瘍形状モデルは、例えば、Shenらの、癌の空間分布の統計的アトラスを介した最適化された前立腺生検、Medical Image Analysis 8(2004)139‐150から既知である。彼らのアプローチにおいて、陽性生検所見を見出すために彼らは実験的に全体的な確率クラウドを生成し、最適な針配置のためにそれを使用する。本発明で使用される重要な項目は、確率分布であり、腫瘍確率マップをモデル化するために使用され得る。
【0017】
腫瘍確率マップを生成するための入力として使用され得る腫瘍分布を説明する参考文献の他の例は、Menzeらの、神経膠腫患者の腫瘍成長の画像に基づくモデリング、Optimal control in image processing,Springer,Heidelberg/Germany,2011.hal‐00825866、及び、Gevertzらの、限られた異種環境での腫瘍成長のシミュレーション、Phys.Biol.5(2008)036010である。また、別の部位で陽性又は陰性の生検試料が与えられた場合、特定の位置に腫瘍が存在する可能性に関するさらなるデータが収集され得る。
【0018】
図2は、腫瘍確率マップの一例を示す。図2は、前立腺204の超音波画像を示す。生検が行われたが腫瘍が見出されなかった部位は、“−”記号202を用いて示される。生検が行われて生検試料内に腫瘍が見出された部位は、“+”記号203で示される。腫瘍確率は、位置203から線204に向かって減少し、線204は腫瘍確率の特定の値、例えば95%を示す、等線である。
【0019】
腫瘍確率マップは、腫瘍確率マップに基づいて放射量計画19を作成する、放射量計画モジュール15に提供される。図3は、図2の腫瘍確率マップに対応する放射量計画を示す。等線204で囲まれた領域は、肉眼的腫瘍ボリューム(GTV)と考えられ、処置はそのように計画される。
【0020】
代替的に、放射量計画モジュールは、例えば、放射線生物学モデルを用いて腫瘍確率マップに基づいて放射量計画を作成し得る。これらのモデルは、典型的に腫瘍細胞密度を考慮に入れるが、腫瘍の攻撃性又は低酸素症のレベルも考慮に入れ得、少なくとも放射線治療出力に影響を及ぼし、例えば、HIF‐1レベルに基づいて決定される。これらの値は、生検試料から得られ、腫瘍確率マップで使用され得る。また、放射線放射量は、補間に基づいて決定され得る。代替的に、また、高い(例えば>95%)腫瘍確率を有する領域にブースト放射量を適用すること、及び、低い〜中間の腫瘍確率(例えば5‐95%)の領域に標準放射量を適用することを、選択し得る。放射量計画モジュールは、また、処置される器官の近くに位置する、リスクを有する器官の放射量制約を使用し得る。しかし、他の例も可能であり、本発明は開示された例に限定されない。
【0021】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示され説明されているが、そのような図示及び説明は、例示的又は代表的であって限定的ではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に限定されず、疾患処置の分野における放射量計画に使用することができる。
図1
図2
図3