(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6564102
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】コンバータ及び双方向コンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20190808BHJP
H02M 3/335 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02M3/335 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-67421(P2018-67421)
(22)【出願日】2018年3月30日
【審査請求日】2018年10月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000103976
【氏名又は名称】株式会社オリジン
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】人見 基久
(72)【発明者】
【氏名】峰 陽介
【審査官】
東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−075943(JP,A)
【文献】
特開2011−166949(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/104304(WO,A1)
【文献】
特開2015−159711(JP,A)
【文献】
特開2017−205001(JP,A)
【文献】
特開2013−090505(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0299301(US,A1)
【文献】
米国特許第07869237(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00−7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
逆並列ダイオードと並列コンデンサとがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子を有するスイッチング素子を上下アームとして第1端子と第2端子との間にそれぞれ並列に接続された第1レグと第2レグを有し、前記一次巻線側に接続される第1回路と、
一方向性素子のブリッジ接続で構成されるブリッジ接続回路を有し、前記ブリッジ接続回路の整流出力側が第3端子及び第4端子に接続され、交流入力側が前記二次巻線側に接続される第2回路と、
前記第1レグの上下アームの接続点側と前記第2レグの上下アームの接続点側との間に前記一次巻線を介して又は前記ブリッジ接続回路内で前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される接続点側と前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される他方の接続点側との間に前記二次巻線を介して接続されるインダクタンス手段と、
前記第1又は第2レグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチング素子とを組にして交互にオンオフさせて前記第1、第2端子側から入力される直流を交流に変換させて前記第1回路から出力させ、前記組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第1又は第2レグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチング素子のうち一方の前記スイッチング素子を他方の前記スイッチング素子より先にオフさせる制御回路と、を備えたことを特徴とするコンバータであって、
前記ブリッジ接続回路の一方向性素子の2つ又は全ては、スイッチ素子と並列コンデンサを並列接続して構成されるスイッチング素子がそれぞれ並列に接続され、
前記制御回路は、
前記第3及び第4端子間側から出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は前記第1及び第2端子間側から入力される電圧、電流又は電力の検出値が目標値に近づくように、前記組となる前記第1回路のスイッチング素子がオン状態にある期間に前記第1及び第2端子側から入力されるエネルギーを前記インダクタンス手段に蓄積させるように前記第2回路の一方のスイッチング素子を順方向に導通させ、前記先にオフさせる前記第1回路のスイッチング素子をオフする前に前記順方向に導通させていた前記第2回路のスイッチング素子をオフさせる昇圧動作を行っているときに、
前記昇圧動作で前記先にオフさせる前記第1回路のスイッチング素子をオフするタイミングを前記トランスの前記二次巻線に流れる電流がゼロになる前であって、前記先にオフさせる前記第1回路のスイッチング素子より後にオフさせる前記第1回路のスイッチング素子をオンとしてから前記第1回路のスイッチング素子及び前記第2回路のスイッチング素子をオンオフ制御するタイミングから計算した時間t1後とすることを特徴とするコンバータ。
【請求項2】
前記制御回路は、前記時間t1を計算したときに前記時間t1が予め設定されている下限値より小さくなった場合、前記時間t1を前記下限値とすることを特徴とする請求項1に記載のコンバータ。
【請求項3】
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
逆並列ダイオードと並列コンデンサとがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子を有するスイッチング素子を上下アームとして第1端子と第2端子との間にそれぞれ並列に接続された第1レグと第2レグを有し、前記一次巻線側に接続される第1回路と、
一方向性素子のブリッジ接続で構成されるブリッジ接続回路を有し、前記ブリッジ接続回路の整流出力側が第3端子及び第4端子に接続され、交流入力側が前記二次巻線側に接続される第2回路と、
前記第1レグの上下アームの接続点側と前記第2レグの上下アームの接続点側との間に前記一次巻線を介して又は前記ブリッジ接続回路内で前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される接続点側と前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される他方の接続点側との間に前記二次巻線を介して接続されるインダクタンス手段と、
前記第1又は第2レグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチング素子とを組にして交互にオンオフさせて前記第1、第2端子側から入力される直流を交流に変換させて前記第1回路から出力させ、前記組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第1又は第2レグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチング素子のうち一方の前記スイッチング素子を他方の前記スイッチング素子より先にオフさせる制御回路と、を備えたことを特徴とするコンバータであって、
前記ブリッジ接続回路の一方向性素子の2つ又は全ては、スイッチ素子と並列コンデンサを並列接続して構成されるスイッチング素子がそれぞれ並列に接続され、
前記制御回路は、
前記二次巻線に流れる電流について、ゼロ以上且つ前記二次巻線に流れる電流の最大値以下のしきい値を有しており、前記二次巻線に流れる電流をモニタしており、
前記第3及び第4端子間側から出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は前記第1及び第2端子間側から入力される電圧、電流又は電力の検出値が目標値に近づくように、前記組となる前記第1回路のスイッチング素子がオン状態にある期間に前記第1及び第2端子側から入力されるエネルギーを前記インダクタンス手段に蓄積させるように前記第2回路の一方のスイッチング素子を順方向に導通させ、前記先にオフさせる前記第1回路のスイッチング素子をオフする前に前記順方向に導通させていた前記第2回路のスイッチング素子をオフさせる昇圧動作を行っているときに、
前記昇圧動作で前記先にオフさせる前記第1回路のスイッチング素子をオフするタイミングを前記トランスの前記二次巻線に流れる電流がゼロになる前であって、前記順方向に導通させていた前記第2回路のスイッチング素子をオフした後、前記二次巻線に流れる電流が減少して前記しきい値に達した時とすることを特徴とするコンバータ。
【請求項4】
前記制御回路は、前記しきい値の値を変更する切り替え機能を有することを特徴とする請求項3に記載のコンバータ。
【請求項5】
前記第2回路の前記ブリッジ接続回路は、前記一方向性素子の全てに前記スイッチング素子がそれぞれ並列に接続され、前記第2回路のスイッチング素子を上下アームとして前記第3端子と前記第4端子との間にそれぞれ並列に接続された第3レグと第4レグで構成され、
前記制御回路は、前記第3又は第4レグの上アームの前記第2回路のスイッチング素子と前記第4又は第3レグの下アームの前記第2回路のスイッチング素子とを組にして交互にオンオフさせて前記第3、第4端子側から入力される直流を交流に変換させて前記第2回路から出力させ、前記組となる前記第2回路のスイッチング素子を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第3又は第4レグの上アームの前記第2回路のスイッチング素子と前記第4又は第3レグの下アームの前記第2回路のスイッチング素子とのうち一方の前記第2回路のスイッチング素子を他方の前記第2回路のスイッチング素子より先にオフさせることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のコンバータを備えた双方向コンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンバータ及び双方向コンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び2は、広範囲の入出力条件で有効なコンバータ及び双方向コンバータの回路を開示している。これらの特許文献のコンバータは、広範囲な入出力電圧電流範囲においてスイッチング損失を削減するために、スイッチオン時にゼロボルトスイッチング(ZVS)を行うように各スイッチの動作が制御されている。例えば、各スイッチの動作は、特許文献3に記載される三角波状信号と誤差増幅信号を利用して制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−075943号公報
【特許文献2】特開2014−075944号公報
【特許文献3】特開2016−005323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1及び
図2は、それぞれコンバータ及び双方向コンバータの回路を説明する図である。特許文献1や2に記載されるコンバータ及び双方向コンバータもそれぞれ
図1及び
図2の回路を有する。
図3は、本発明の課題を説明する図である。なお、
図1及び
図2のコンバータにおいて、コンデンサ(Ca〜Cd)の接続は任意である。
【0005】
図1のコンバータ及び
図2の双方向コンバータは、昇圧動作時において2次側のスイッチ素子(Q5,Q6)のオンオフ動作タイミングを制御する。
図3で具体的に説明する。時刻taで二次側スイッチ素子(Q5,Q6)がオフした後、トランス2次側電流(2次側ダイオード電流)は減少する。そして、トランス2次側電流がゼロになった後にダイオード(D7,D8)に逆電流が流れる逆回復時間中や、その後の寄生容量(C7,C8)の充放電中(
図3において、トランス2次側電流がゼロ以下になった以降)に、時刻tbで一次側スイッチ素子(Q3,Q4)がオフすると、逆回復電流や寄生容量の充放電電流の傾きが変化する(
図3(A)(B)の符号51部分)。
図3(C)では一次側スイッチ素子(Q3,Q4)のオフ前に寄生容量の充放電が完了するので傾き変化部分はない。
【0006】
ここで、特許文献3で説明されるように、2次側のスイッチ素子(Q5,Q6)のオンオフ動作タイミングは、誤差増幅信号と三角波信号との交点で定まる(
図4参照)。誤差増幅信号は負荷等の外乱によって変動する(
図4の時間ti以降)。三角波信号は変動しないため、誤差増幅信号が変動すると2次側のスイッチ素子(Q5,Q6)のオンオフ動作タイミングが変動する。
図3(A)は、
図3(B)の状態から誤差増幅信号が低下し、2次側のスイッチ素子(Q5,Q6)のオフタイミングtaが早まった状態である。
図3(C)は、
図3(B)の状態から誤差増幅信号が上昇し、2次側のスイッチ素子(Q5,Q6)のオフタイミングtaが遅くなった状態である。
【0007】
昇圧動作の場合、一次側スイッチ素子(Q3,Q4)のオフタイミングtbは変化しないので、誤差増幅信号の状態によって逆回復時間と寄生容量充放電終了後(時刻tb)の電流値52が変動することになる。この電流値52は、スイッチ制御の次の半周期におけるトランス2次側電流の初期値である。このため、トランス2次側電流のピーク値はこの初期値に応じて高くなる(
図3(A))、あるいは低くなる(
図3(C))。つまり、微小な誤差増幅信号の変動によるスイッチ素子駆動信号のパルス幅の変化によって、一次側スイッチ素子(Q3,Q4)がオフする時のダイオード(D7,D8)の逆回復電流や寄生容量の充放電の状態が変化し、トランス2次側電流の初期値が増加あるいは減少することでトランス2次側電流のピーク値が一方向へ(
図3(C)から(A)へ、あるいは
図3(A)から(C)へ)ドリフトしていく現象が発生することになる。
【0008】
このように、特許文献1や2のコンバータには、定常状態であってもトランス2次側電流のピーク値が大きくなる方向あるいは小さくなる方向へドリフトし、出力が不安定になりやすいという課題があった。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決するために、トランス2次側電流のピーク値のドリフトを防止し、安定した出力が得られるコンバータ及び双方向コンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るコンバータは、逆回復時間前に一次側スイッチ(Q3,Q4)を強制的にオフすることとした。
【0011】
具体的には、本発明に係るコンバータは、
一次巻線と二次巻線とを有するトランスと、
逆並列ダイオードと並列コンデンサとがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子を有するスイッチング素子を上下アームとして第1端子と第2端子との間にそれぞれ並列に接続された第1レグと第2レグを有し、前記一次巻線側に接続される第1回路と、
ブリッジ接続される一方向性素子のうち少なくとも2つの前記一方向性素子は並列コンデンサがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子を含むスイッチング素子がそれぞれ並列に接続されるブリッジ接続回路を有し、前記ブリッジ接続回路の整流出力側が第3端子及び第4端子に接続され、交流入力側が前記二次巻線側に接続される第2回路と、
前記第1レグの上下アームの接続点側と前記第2レグの上下アームの接続点側との間に前記一次巻線を介して又は前記ブリッジ接続回路内で前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される接続点側と前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される他方の接続点側との間に前記二次巻線を介して接続されるインダクタンス手段と、
前記第1又は第2レグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチング素子とを組にして交互にオンオフさせて前記第1、第2端子側から入力される直流を交流に変換させて前記第1回路から出力させ、前記組となるスイッチング素子を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第1又は第2レグの上アームのスイッチング素子と前記第2又は第1レグの下アームのスイッチング素子のうち一方の前記スイッチング素子を他方の前記スイッチング素子より先にオフさせる制御回路と、を備えたことを特徴とするコンバータであって、
前記制御回路は、
前記第3及び第4端子間側から出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は前記第1及び第2端子間側から入力される電圧、電流又は電力の検出値が目標値に近づくように、前記組となる第1回路のスイッチング素子がオン状態にある期間に前記第1及び第2端子側から入力されるエネルギーを前記インダクタンス手段に蓄積させるように第2回路の一方のスイッチング素子を順方向に導通させ、前記先にオフさせる第1回路のスイッチング素子をオフする前に前記順方向に導通させていた第2回路のスイッチング素子をオフさせる昇圧動作を行っているときに、
前記昇圧動作で前記先にオフさせる第1回路のスイッチング素子をオフするタイミングを前記トランスの前記二次巻線に流れる電流がゼロになる前とすることを特徴とする。
【0012】
逆回復時間前に一次側スイッチ(Q3,Q4)を強制的にオフすることでトランス2次側電流の初期値が一定になり、トランス2次側電流のピークが大きくなる方向あるいは小さくなる方向へ変動していくドリフトを防止することができる。従って、本発明は、トランス2次側電流のピーク値のドリフトを防止し、安定した出力が得られるコンバータ及び双方向コンバータを提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、トランス2次側電流のピーク値のドリフトを防止し、安定した出力が得られるコンバータ及び双方向コンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】双方向コンバータの回路を説明する図である。
【
図4】コンバータの各スイッチをオンオフ制御する原理を説明する図である。
【
図5】本発明に係るコンバータの効果を説明する図である。
【
図6】本発明に係るコンバータの一次側スイッチをオフするタイミングを説明する図である。
【
図7】本発明に係るコンバータの一次側スイッチをオフするタイミングを説明する図である。
【
図8】コンバータのトランスとインダクタンス手段のリアクトル値を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0016】
(実施形態1)
図1は、本実施形態のコンバータを説明する回路である。なお、コンデンサ(Ca〜Cd)の接続は任意である。
本コンバータは、
一次巻線と二次巻線とを有するトランス(11)と、
逆並列ダイオード(D1−D4)と並列コンデンサ(C1−C4)とがそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子(Q1−Q4)を有するスイッチング素子(S1−S4)を上下アームとして第1端子(T1)と第2端子(T2)との間にそれぞれ並列に接続された第1レグ(12)と第2レグ(13)を有し、前記一次巻線側に接続される第1回路(1)と、
一方向性素子(D5−D8)のブリッジ接続で構成されるブリッジ接続回路を有し、前記ブリッジ接続回路の整流出力側が第3端子及び第4端子(T3,T4)に接続され、交流入力側が前記二次巻線側に接続される第2回路(2)と、
前記第1レグ(12)の上下アームの接続点側と前記第2レグ(13)の上下アームの接続点側との間に前記一次巻線を介して又は前記ブリッジ接続回路内で前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される接続点側と前記一方向性素子同士が同じ極性で直列に接続される他方の接続点側との間に前記二次巻線を介して接続されるインダクタンス手段(L)と、
前記第1又は第2レグ(12又は13)の上アームのスイッチング素子(S1又はS3)と前記第2又は第1レグ(13又は12)の下アームのスイッチング素子(S4又はS2)とを組にして交互にオンオフさせて前記第1、第2端子(T1とT2)側から入力される直流を交流に変換させて前記第1回路(1)から出力させ、前記組となるスイッチング素子(S1とS4又はS3とS2)を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第1又は第2レグ(12又は13)の上アームのスイッチング素子(S1又はS3)と前記第2又は第1レグ(13又は12)の下アームのスイッチング素子(S4又はS2)のうち一方の前記スイッチング素子(S3又はS4)を他方の前記スイッチング素子(S2又はS1)より先にオフさせる制御回路(3)と、を備えたことを特徴とするコンバータであって、
前記ブリッジ接続回路の一方向性素子の2つ(D5、D6)は、スイッチ素子(Q5,Q6)と並列コンデンサ(C5,C6)を並列接続して構成されるスイッチング素子(S5,S6)がそれぞれ並列に接続され、
前記制御回路は、
前記第3及び第4端子(T3とT4)間側から出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は前記第1及び第2端子(T1とT2)間側から入力される電圧、電流又は電力の検出値が目標値に近づくように、前記組となる第1回路のスイッチング素子(S1とS4又はS3とS2)がオン状態にある期間に前記第1及び第2端子(T1とT2)側から入力されるエネルギーを前記インダクタンス手段(L)に蓄積させるように第2回路の一方のスイッチング素子(S5又はS6)を順方向に導通させ、前記先にオフさせる第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフする前に前記順方向に導通させていた第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)をオフさせる昇圧動作を行っているときに、
前記昇圧動作で前記先にオフさせる第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフするタイミングを前記トランスの前記二次巻線に流れる電流がゼロになる前とすることを特徴とする。
【0017】
なお、本実施形態では、前記検出値を出力電圧検出手段18で検出する場合を説明する。出力電圧検出手段18は、第3端子T3及び第4端子T4間に出力される第2回路2の出力電圧を検出する。この出力電圧検出値は制御回路3に入力される。他の検出値を検出する場合は、対象の検出値を検出できる検出手段を然るべきところに配置する。
【0018】
本コンバータの基本的動作は、コンデンサ(Ca〜Cd)がある場合は特許文献1の記載通りであり、コンデンサ(Ca〜Cd)が無い場合は特許文献2の記載通りである。また、制御回路3は、3つの三角波信号と前記検出値から作成した誤差増幅信号(AVR)とを用いて特許文献3のようにスイッチング素子(S1−S4)及び第2回路(2)のスイッチング素子(S5−S8)のオンとオフを制御するパルス信号生成し、前記検出値が目標値に近づくように制御する。
【0019】
例えば、第1端子T1と第2端子T2から入力される電圧より第3端子T3と第4端子T4から出力される電圧を高くする昇圧動作時には、
図4のように誤差増幅信号AVRとスイッチ素子(Q5,Q6)用の三角波が交差する。このため、制御回路3は、当該交差によるパルス信号のパルス幅で、組となる第1回路のスイッチング素子(S1とS4又はS3とS2)がオン状態にある期間に第1及び第2端子(T1とT2)側から入力されるエネルギーをインダクタンス手段Lに蓄積させるようにスイッチング素子(S5又はS6)を順方向に導通させ、先にオフさせる第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフする前に順方向に導通させていた第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)をオフさせる。
【0020】
一方、第1端子T1と第2端子T2から入力される電圧より第3端子T3と第4端子T4から出力される電圧を低くする降圧動作時には、
図4のように誤差増幅信号AVRとスイッチ素子(Q3,Q4)用の三角波が交差する。このため、制御回路3は、当該交差によるパルス信号のパルス幅で、組となる第1回路のスイッチング素子(S1とS4又はS3とS2)がオン状態にある期間に第1及び第2端子(T1とT2)側から入力されるエネルギーをインダクタンス手段Lを介して第3及び第4端子(T3とT4)側に供給させるように第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)を順方向に導通させないように制御する。
【0021】
このように、本実施形態のコンバータは、トランスの一次巻線又は二次巻線側に接続されるインダクタンス手段を用いて、入力側の第1回路のスイッチング素子をオンオフさせる動作と出力側の第2回路を整流回路として機能させる動作とを実現させることで広範囲な入出力電圧電流に対応させることができる。また、電流が流れている状態でスイッチング素子をオフさせたときに発生するスイッチング損失を低減することができ、組となる第1回路のスイッチング素子のうちの一方を後からオフさせたときに発生するスイッチング損失を低減することができる。さらに、ゼロ電圧スイッチングを実現させることでスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0022】
以下、特許文献1−3とは異なる動作について説明する。
本実施形態のコンバータの制御回路3は、トランス11の二次巻線11bに流れる電流がゼロになる前に、前記昇圧動作で先にオフさせる第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)を強制的にオフする強制オフ制御を行う。当該強制オフ制御はデジタル的に行う手法とアナログ的に行う手法がある。
【0023】
まず、デジタル的に行う強制オフ制御を説明する。デジタル的に行う強制オフ制御では、制御回路3は、各スイッチ素子をオンオフするタイミングから計算した時間を使う。前記制御回路は、前記先にオフさせる第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)より後にオフさせる第1回路のスイッチング素子(S2又はS1)をオンとしてから前記第1回路のスイッチング素子(S1−S4)及び前記第2回路のスイッチング素子(S5,S6)をオンオフ制御するタイミングから計算した時間t1後に
、第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフとすることを特徴とする。
【0024】
デジタル的に行う強制オフ制御を、第1端子T1及び第2端子T2側から電力が入力され、第3端子T3及び第4端子T4側から出力する場合で説明する。
図5は、デジタル的に行う強制オフ制御の一例を説明する図である。
図5には、各スイッチを切り換えるタイミングとトランス2次側電流50を記載している。t0は第1回路のスイッチング素子(S1又はS2)をオンする時刻(固定値)である。なお、スイッチング素子(S3又はS4)をオンするタイミングは逆並列ダイオード(D3又はD4)が導通している間であり、スイッチング素子(S1又はS2)がオンする前である。第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフする時刻t1(t0からの時間)は次式で計算する。
(数1)
t1=t2+t3+tx−tz (1)
ここで、t2はt0から第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)をオフする時刻までの時間である。t2の値は、第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)の位相シフト量を決定するAVRの値から求める(
図4参照)。t3の値は、次式より求める。
【数2】
また、txの値は、次式より求める。
【数3】
【0025】
ここで、Einは第1端子T1及び第2端子T2に入力される入力電圧、Eoは第3端子T3及び第4端子T4側から出力される出力電圧、n1とn2はトランス11の一次側巻き数と二次側巻き数、Laは第1回路1側に配置されたインダクタンス手段のリアクトル値、Lbは第2回路2側に配置されたインダクタンス手段のリアクトル値、L1はトランス11の一次側励磁リアクトルである(
図8参照)。
図1や
図2のようにインダクタンス手段L(リアクトル値L)がトランス11の一次側のみに配置される場合、La=L、Lb=0となる。
【0026】
なお、電流値ixは、
図3で説明した電流値52であるが、演算することが困難であるため任意の定数とする。また、tzは、トランス2次側電流がゼロになる前に一次側スイッチング素子(S3又はS4)を確実にオフするための余裕である。
【0027】
なお、前記制御回路は、時間t1を計算したときに
前記時間t1が予め設定されている下限値より小さくなった場合、
前記時間t1を前記下限値とすることを特徴とする。計算した結果、t1がマイナスとならないようにするためである。また、t1に上限値(例えば、
図3のQ3,Q4用三角波で定まる時間)を定めておき、数2や数3の分母がゼロになる場合、負になる場合(スイッチング素子(S3,S4)がオンしている間に2次側電流がゼロにならない)、あるいは正であっても非常に小さい値の場合(t1が上限値を超える)に当該上限値で一次側スイッチング素子(S3又はS4)をオフすることが望ましい。
【0028】
制御回路3は、上述のようにt1を計算し、時刻t0からt1が経過した時点で第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフする。
【0029】
次に、アナログ的に行う強制オフ制御を説明する。アナログ的に行う強制オフ制御では、制御回路3は、トランス2次側電流としきい値とを比較することで第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフする。前記制御回路は、前記二次巻線に流れる電流について、ゼロ以上且つ前記二次巻線に流れる電流の最大値以下のしきい値を有しており、前記二次巻線に流れる電流をモニタし、前記順方向に導通させていた第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)をオフした後、前記二次巻線に流れる電流が減少して前記しきい値に達した時に前記先にオフさせる第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフとすることを特徴とする。
【0030】
アナログ的に行う強制オフ制御を、第1端子T1及び第2端子T2側から電力が入力され、第3端子T3及び第4端子T4側から出力する場合で説明する。
図6は、アナログ的に行う強制オフ制御の一例を説明する図である。
図6には、各スイッチを切り換えるタイミングとトランス2次側電流50としきい値54を記載している。トランス2次側電流50は、一次側スイッチング素子(S1又はS2)のオンと同時に増加し始め、第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)のオフに伴い減少し始める。なお、スイッチング素子(S3又はS4)をオンするタイミングは逆並列ダイオード(D3又はD4)が導通している間であり、スイッチング素子(S1又はS2)がオンする前である。減少し続けるトランス2次側電流50は、ある時点でしきい値54を下回ることになる。制御回路3は、この時点で第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)を強制的にオフする。なお、制御回路3がオフの指示を出しても第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)が実際にオフするまでタイムラグtdがある。このため、しきい値54の値はこのタイムラグtdを考慮し、トランス2次側電流50がゼロになる前に第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)が実際にオフできる値としておく。
【0031】
また、コンバータの入出力電圧によってトランス2次側電流50の減少する傾きが変わるため、トランス2次側電流50がゼロになる前に第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフできない場合もある。このような状況に対応するために、前記制御回路が、前記しきい値の値を変更する切り替え機能を有することが望ましい。
【0032】
図7は、強制オフ制御を行った場合の効果を説明する図である。
図7(A)はトランス2次側電流50のピークが大きい場合、
図7(B)はトランス2次側電流50のピークが小さい場合を説明している。第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオンする時間は同じであるが、トランス2次側電流50の状況に応じて第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフするタイミングが変化しており、トランス2次側電流の値52が一定となっている。このため、トランス2次側電流50のピークのドリフトを防止することができ、出力が安定する。
【0033】
(実施形態2)
図2は、本実施形態の双方向コンバータを説明する回路である。なお、コンデンサ(Ca〜Cd)の接続は任意である。本実施形態では、主に第1の実施形態に係るコンバータと異なる構成及び動作について説明する。
【0034】
本双方向コンバータは、前記第2回路の前記ブリッジ接続回路は、前記一方向性素子の全て(D5−D8)について並列コンデンサ(C5−C8)がそれぞれ並列に接続されたスイッチ素子(Q5−Q8)を含むスイッチング素子(S5−S8)がそれぞれ並列に接続され、前記第2回路のスイッチング素子(S5−S8)を上下アームとして第3端子(T3)と第4端子(T4)との間にそれぞれ並列に接続された第3レグ(24)と第4レグ(25)で構成されている。
前記制御回路は、前記第3又は第4レグの上アームの第2回路のスイッチング素子(S5,S7)と前記第4又は第3レグの下アームの第2回路のスイッチング素子(S8,S6)とを組にして交互にオンオフさせて前記第3、第4端子側から入力される直流を交流に変換させて前記第2回路から出力させ、前記組となる第2回路のスイッチング素子(S5&S8,S7&S6)を交互にオンオフ制御するにあたり、オン状態にある前記組となる前記第3又は第4レグの上アームの第2回路のスイッチング素子(S5又はS7)と前記第4又は第3レグの下アームの第2回路のスイッチング素子(S8又はS6)とのうち一方の前記第2回路のスイッチング素子(S5又はS6)を他方の前記第2回路のスイッチング素子(S8又はS7)より先にオフさせることを特徴とする。
【0035】
第2の実施形態に係る双方向コンバータでは、双方向で動作させるため、第2回路は、第1回路と同様の構成になるようにする。このため、
図2では、第2回路22は、スイッチング素子を2つのレグの上下アームとした回路構造にする。また、第2回路22のスイッチング素子S7,S8にも駆動信号を与えることからも、ここでは、制御回路23とする。なお、第1回路1の第1レグ12、第2レグ13及び第2回路22の第3レグ24については、第1の実施形態で述べた
図1に示す構成と同様である。また、
図1と同様に、
図2では、インダクタンス手段Lは、一次巻線11a側に接続されているが、二次巻線11b側に接続させてもよい。
【0036】
第1回路1から第2回路22側へ電力を供給する場合、制御回路23は、上記の実施形態1で述べた動作と同様に各スイッチ素子を動作させる。ただし、スイッチ素子(Q7,Q8)は常にオフとしておく。一方、第2回路22から第1回路1側へ電力を供給する場合、制御回路23は、上記の実施形態1で述べた動作に対してミラー的に各スイッチ素子を動作させる。具体的には、第2回路22から第1回路1側へ電力を供給する場合、制御回路23は、スイッチング素子(S7,S8)を実施形態1で述べたスイッチング素子(S1,S2)として、スイッチング素子(S5,S6)を実施形態1で述べたスイッチング素子(S3,S4)として、スイッチング素子(S3,S4)を実施形態1で述べたスイッチング素子(S5,S6)として動作させる。この場合、スイッチ素子(Q1,Q2)は常にオフとしておく。
【0037】
本実施形態の双方向コンバータの制御回路23は、第1回路1から第2回路22側へ電力を供給する場合であればトランス11の二次巻線11bに流れる電流がゼロになる前に第1回路1のスイッチング素子(S3又はS4)を強制的にオフし、第2回路22から第1回路1側へ電力を供給する場合であればトランス11の一次巻線11aに流れる電流がゼロになる前に第2回路22のスイッチング素子(S5又はS6)を強制的にオフする。
【0038】
デジタル的に制御する場合、制御回路23は、スイッチング素子(S3,S4,S5,S6)を切り替えるタイミングから、第1回路1から第2回路22側へ電力を供給する場合であれば第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフする時刻を数1で計算し、第2回路22から第1回路1側へ電力を供給する場合であれば第2回路22のスイッチング素子(S5又はS6)をオフする時刻を数1で計算する。
【0039】
アナログ的に制御する場合、制御回路23は、第1回路1から第2回路22側へ電力を供給する場合であればトランス11の二次巻線11bを流れる電流と閾値とを比較して第1回路のスイッチング素子(S3又はS4)をオフする指令を出し、第2回路22から第1回路1側へ電力を供給する場合であればトランス11の一次巻線11aを流れる電流と閾値とを比較して第2回路22のスイッチング素子(S5又はS6)をオフする指令を出す。
【0040】
本実施形態の双方向コンバータも、実施形態1で説明したスイッチの強制オフ制御を行うことで、逆回復時間と寄生容量充放電終了後の電流値52を常に一定とすることができる。このため、トランス11の出力側の巻線に流れる電流のピークのドリフトを防止することができ、出力が安定する。
【0041】
(他の実施形態)
上記の第1、第2の実施形態では、制御回路3、23は、第2回路の出力電圧検出手段18、第1回路の出力電圧検出手段19によって検出された電圧値が目標値に近づくようにしているが、用いる検出値は出力電流値や出力電力の他にこれらの組み合わせであってもよい。同様に入力側の電圧、電流又は電力の検出値が目標値に近づくようにしてもよい。なお、一般的に、電力の検出値としては、検出された電圧及び電流を乗算した演算値を用いる。上述の出力される電圧、電流もしくは電力の検出値又は入力される電圧、電流又は電力の検出値には、これらの値にある係数を乗除算したり、ある値を加減算等したりといった演算をして得られた値も含まれる。
【符号の説明】
【0042】
T1・・・第1端子、T2・・・第2端子、T3・・・第3端子、T4・・・第4端子、
1・・・第1回路、2、22・・・第2回路、3、23・・・制御回路、11・・・トラ
ンス、12・・・第1レグ、13・・・第2レグ、24・・・第3レグ、25・・・第4
レグ、16、17・・・コンデンサ、18・・・第2回路の出力電圧検出手段、19・・
・第1回路の出力電圧検出手段、S1〜S4・・・第1回路のスイッチング素子、Q1〜
Q4・・・スイッチ素子、D1〜D4・・・逆並列ダイオード、C1〜C4・・・並列コ
ンデンサ、D5〜D8・・・一方向性素子(逆並列ダイオード)、S5〜S8・・・第2
回路のスイッチング素子、Q5〜Q8・・・スイッチ素子、C5〜C8・・・並列コンデ
ンサ、Ca〜Cd・・・第1〜第4コンデンサ、L・・・インダクタンス手段
【要約】 (修正有)
【課題】トランス2次側電流のピーク値のドリフトを防止し、安定した出力が得られるコンバータ及び双方向コンバータを提供する。
【解決手段】コンバータ及び双方向コンバータは、昇圧動作でスイッチング素子(S3又はS4)をオフするタイミングをトランス11の二次巻線11bに流れる電流がゼロになる前とする。デジタル制御の場合、制御回路3は、スイッチング素子(S3又はS4)より後にオフさせるスイッチング素子(S2又はS1)をオンとしてからスイッチング素子(S1−S6)をオンオフ制御するタイミングから計算した時間後にオフとする。アナログ制御の場合、制御回路3は、二次巻線11bに流れる電流をモニタし、順方向に導通させていたスイッチング素子(S5又はS6)をオフした後、当該電流が減少して閾値に達した時にスイッチング素子(S3又はS4)をオフとする。
【選択図】
図1