(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明に係るバイオマス固体燃料原料の処理装置(以下、単に処理装置とも言う)の第1実施形態を、バイオマス固体燃料原料がパームトランクである場合を例にとって、
図1から
図16を参照しながら説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の処理装置1は、供給部10と、水洗部26と、第1電気伝導度計(検出部)31と、混合比制御部36と、搾汁部(搾り部)41と、搾り制御部46と、を備えている。
【0018】
供給部10は、添加水(水)W1及びパームトランクW2を水洗部26に供給する。供給部10は、添加水供給部11と、パーム供給部21と、を備えている。
添加水供給部11は、水洗部26に、単位時間当たりに所定の量の添加水W1を供給する。添加水W1を用いて水洗部26でパームトランクW2を洗うと、水洗部26中でパームトランクW2中のカリウム等が添加水W1に流れ出て、水洗部26から流れ出た後に浸漬水W1’(以下、単に浸漬水W1’と言う)になる。
添加水供給部11が供給する添加水W1の電気伝導度は、水洗部26から流れ出た後の浸漬水W1’の電気伝導度よりも小さい。
【0019】
添加水供給部11は、水源12と、配管13と、流量計14と、流量調節弁15と、を備えている。
水源12内には、パームトランクW2を洗うための添加水W1が収容されている。配管13の第1端部は、水源12に接続されている。配管13の第1端部とは反対の第2端部は、水洗部26に向かって延びている。
流量計14及び流量調節弁15は、配管13に設けられている。流量計14は、配管13内を流れる添加水W1の流量を検出する。流量計14は、検出結果を、定期的に混合比制御部36に送る。流量調節弁15は、配管13内を添加水W1が流れやすい全開状態から、配管13内を添加水W1が流れない全閉状態まで、弁の開度を連続的に変更できる。
添加水供給部11は、水洗部26に単位時間当たりに供給する添加水W1の量を調節できる。
【0020】
パーム供給部21内には、パームトランクW2が収容されている。パームトランクW2には、カリウム等の腐食成分が含まれている。
パーム供給部21は、パームトランクW2を水洗部26に供給する。パーム供給部21は、添加水供給部11と同様の構成により、水洗部26に単位時間当たりに供給するパームトランクW2の量を調節できる。
【0021】
図2に示すように、本実施形態では、水洗部26はスクリューコンベヤ27を備えている。スクリューコンベヤ27は、パームトランクW2を搬送する搬送方向において、上流側に対して下流側が斜め上方になるように配置されている。
配管13の第2端部、及びパーム供給部21よりも下流側のパームトランクW2の搬送路には、ホッパー28が接続されている。ホッパー28は、スクリューコンベヤ27における上流側の部分に、パームトランクW2及び添加水W1を供給する。スクリューコンベヤ27により、搬送方向の上流側から下流側に向かって搬送されるパームトランクW2は、添加水W1に浸すこと等により洗われる。水洗部26は、添加水供給部11から供給された添加水W1を用いてパームトランクW2を洗う。
なお、パームトランクW2を洗った浸漬水W1’は、パームトランクW2よりも上方を流れたときに、水洗部26から流れ出ている。
【0022】
第1電気伝導度計31は、センサ部32を備えている。センサ部32は、水洗部26から流れ出た後の添加水W1の流路上に配置されている。第1電気伝導度計31は、センサ部32が接触している浸漬水W1’の電気伝導度(浸漬水W1’の状態)を検出する。第1電気伝導度計31は、検出結果を、定期的に混合比制御部36及び搾り制御部46に送る。
なお、水洗部26から流れ出た浸漬水W1’は、例えば、一時的に浸漬水ピット101内に蓄えられ、浸漬水ポンプ102により排水される。
水洗部26で洗われたパームトランクW2は、スクリューコンベヤ27の下流側の端部からコンベヤ等を備える搬送部29に供給される。搬送部29は、洗ったパームトランクW2を下流側に向かって搬送する。
【0023】
混合比制御部36は、図示はしないがCPU(Central Processing Unit)等の処理部と、RAM(Random Access Memory)等の記憶部と、を備えている。
混合比制御部36は、流量計14、流量調節弁15、パーム供給部21、及び第1電気伝導度計31に接続されている。混合比制御部36は、流量計14及び第1電気伝導度計31の検出結果に基づいて、流量調節弁15及びパーム供給部21を制御する。混合比制御部36は、第1電気伝導度計31の検出結果に基づいて、供給部10の添加水供給部11及びパーム供給部21の少なくとも一方を制御して、水洗部26に単位時間当たりに供給する添加水W1の量及び水洗部26に単位時間当たりに供給するパームトランクW2の量の少なくとも一方を調節する。より具体的には、混合比制御部36は、第1電気伝導度計31が検出した浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなるのに従い、添加水供給部11が水洗部26に単位時間当たりに供給する添加水W1の量を増加する。
なお、混合比制御部36が水洗部26に供給するパームトランクW2の量を減少して、相対的に水洗部26に供給する添加水W1の量を増加してもよい。
【0024】
搾汁部41は、水洗部26で洗った後のパームトランクW2を搾る。
搾汁部41の構成は、特に限定されない。本実施形態では、搾汁部41は、
図3から
図7に示すように、いわゆる2ロール内接式の搾汁装置である。搾汁部41は、フレーム42と、リングロール43と、内接ロール44と、押圧ロール45と、を備えている。
また、搾汁部41は、内接ロール44と押圧ロール45とを、互いが接近又は離間する方向に相対的に移動させ、内接ロール44の回転中心と押圧ロール45の回転中心との中心間距離を調整する調整手段77Aをさらに備えている。
【0025】
上記リングロール43、内接ロール44、押圧ロール45は、互いの回転軸線が平行となるように配置されている。しかも、リングロール43、内接ロール44、及び押圧ロール45は、
図3に示すようにそれぞれの回転軸線方向から見た際、リングロール43の回転中心と、内接ロール44の回転中心と、押圧ロール45の回転中心とが、同一の線L1上に位置するように配置されている。なお、この線L1は、リングロール43、内接ロール44、及び押圧ロール45における各回転軸線に対して直交する方向に延びている。すなわち、搾汁部41は、互いの回転軸線が平行になるとともに、回転可能に支持された複数のロール43,44,45を備えている。
なお、本実施形態では、
図3及び
図4を基準にして搾汁部41の前後左右を定義する。
図3及び
図4におけるXa方向を左方、Xb方向を右方、Ya方向を前方、Yb方向を後方と規定する。
【0026】
フレーム42は、底板部49と、底板部49上に立設された柱部50と、を備えている。底板部49の
図3における左右方向の一方の下部には、枕部材51が介在されている。これによって、フレーム42の上下方向に延びる左右方向の中心線(前記各ロール43,44,45の回転中心を結ぶ線L1と一致する)が、上方に向かうに従い、鉛直方向(鉛直軸)に対して、
図3における左方への偏倚量が大きくなるように、搾汁部41が斜めに傾斜して配置されている。
【0027】
リングロール43は、フレーム42によって上下動可能かつ第1の回転軸線回りに回転可能に支持されている。
リングロール43は、
図5に示すようにフレーム42の上部に配置されたロール支持部54からそれぞれ左右に延びる支持ロール55によって側面が押圧支持されている。これにより、リングロール43は、前後方向の移動が規制されつつ、自転可能に配置されている。
なお、
図5では前方のロール支持部54及び支持ロール55だけを図示しているが、リングロール43の後方にも、同様な構成のロール支持部54及び支持ロール55が配置されている。つまり、リングロール43は、前後に配置された支持ロール55によって前後から挟まれることで、前後方向の移動が規制される。
【0028】
また、リングロール43は、
図5及び
図6に示すように左方下部を固定ロール57によって支持されるとともに、右方下部を上下方向へ移動可能な可動ロール58によって支持されている。これにより、リングロール43は、左右方向の移動が規制されつつ上下方向への移動が可能となるように支持されている。
内接ロール44は、リングロール43の内側に形成された円柱状の空間部43Aに配置され、第1の回転軸線に対して平行に配置された第2の回転軸線回りに回転する。
内接ロール44が固定位置に取り付けられる関係上、内接ロール44とリングロール43とは、ロール中心間距離が可変となるように配置されている。
固定ロール57は、ロール支持部57Aを介してフレーム42に対して固定位置に取り付けられている。可動ロール58は、フレーム42との間に弾性部材59を介在させた状態でフレーム42に取り付けられたロール支持部60に支持されている。ロール支持部60は、フレーム42の柱部50にロール支持部60を固定するボルト61とロール支持部60に形成されたボルト挿通孔60aとの間に形成される隙間分だけ、フレーム42に対し移動可能とされている。
なお、
図6に示すように、ボルト61とボルト挿通孔60aの内周面との間には、スリーブ62が介在されている。
【0029】
図4及び
図7に示すように、内接ロール44では、前後方向に延びる各小径軸部44aが、軸受け65を介して軸受けブロック66に支持されている。軸受けブロック66は、フレーム42の柱部50に取り付けられている。すなわち、内接ロール44は予め定められた位置に、回転可能に配設されている。
図7に示すように、内接ロール44の後方にはカップリング68を介して回転軸69が連結されている。回転軸69にはさらにカップリング70を介してモータ等の駆動部71が連結されている。
【0030】
押圧ロール45は、リングロール43の下方に配置されて該リングロール43の外周面を押圧すると共に、第1の回転軸線に対して平行に配置された第3の回転軸線回りに回転する。
押圧ロール45では、前後方向に延びる各小径軸部45aが軸受け74を介して軸受けブロック75に支持されている。軸受けブロック75は、フレーム42を構成する柱部50に上下動可能に支持される。
また、軸受けブロック75は、フレーム42の底板部49との間に介在された押圧シリンダ77によって上方へ押圧される。つまり、押圧シリンダ77は、軸受けブロック75を介して押圧ロール45を、上方すなわちリングロール43のリング壁部を介して内接ロール44側へ押圧する押圧ロール押圧手段を構成する。
【0031】
この押圧シリンダ77が押圧ロール45を内接ロール44側へ所定の押圧力(圧下力)で押圧することで、内接ロール44と押圧ロール45とが互いに接近し、内接ロール44の回転中心と押圧ロール45の回転中心との中心間距離が小さくなる。従って、リングロール43の内周面と内接ロール44の外周面との間に生じる圧搾面圧を高めることができる。このように、押圧シリンダ77を利用することで、内接ロール44の回転中心と押圧ロール45の回転中心との中心間距離を任意に調整でき、圧搾面圧を所望する値に設定することが可能である。
従って、押圧シリンダ77は、内接ロール44の回転中心と押圧ロール45の回転中心との中心間距離を調整する調整手段77Aを構成する。
【0032】
また、押圧ロール45の後方にはカップリング80を介して回転軸81が連結され、この回転軸81にはモータ等の駆動部82が連結されている。そして、駆動部82の回転が、回転軸81を介して押圧ロール45に伝わり、さらに押圧ロール45の回転がリングロール43に伝わる。つまり、押圧ロール45を回転させる押圧ロール回転手段である駆動部82等は、リングロール43を回転させるリングロール回転手段82Aを構成する。
【0033】
図6に示すように、リングロール43の内側に形成された空間部43Aの下部は、内接ロール44によって2分される。そして、内接ロール44の左方が、パームトランクW2が投入される圧搾対象物投入部85となり、内接ロール44の右方が、パームトランクW2がロール43,44等により圧搾された後の固体分である搾汁残渣が貯留される残渣貯留部86となる。
リングロール43の内側の左右には、下端が内接ロール44の外周面に沿うように湾曲しながら先細り形状となる側板部88,89が設けられている。これら側板部88,89と、内接ロール44の外周面と、リングロール43の内周面と、によって、前述の圧搾対象物投入部85と残渣貯留部86がそれぞれ区画されている。
圧搾対象物投入部85には搬送部29が接続されており、この搬送部29によってパームトランクW2が圧搾対象物投入部85に供給される。
【0034】
図6に示すように、残渣貯留部86には、搬送部91が接続されている。搬送部91には、例えば公知の気流搬送手段が用いられる。この搬送部91によって残渣貯留部86に貯留された搾汁残渣W4が搾汁部41の外部へ排出される。
なお、パームトランクW2がロール43,44等により圧搾された後の液体分である搾汁液W5は、圧搾対象物投入部85から下方へ流れ出て回収される。
なお、搾汁部41は、2ロール内接式の搾汁装置に限定されず、2ロール以上のいわゆる外接式の搾汁装置等でもよい。
【0035】
搾り制御部46は、混合比制御部36と同様に、図示しない処理部と、記憶部と、を備えている。記憶部には、後述する浸漬水W1’の電気伝導度と、搾汁部41の押圧力と、の関係を表す式等が記憶されている。
図1に示すように、搾り制御部46は第1電気伝導度計31及び搾汁部41にそれぞれ接続されている。搾り制御部46は、第1電気伝導度計31の検出結果に基づいて、搾汁部41に指示する搾汁部41によるパームトランクW2の圧縮量を調節する。より具体的には、搾り制御部46は、第1電気伝導度計31が検出した浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなるのに従い、搾汁部41を駆動して、添加水W1で洗った後のパームトランクW2の圧縮量を増加する(パームトランクW2を搾る力を増加させる)。
【0036】
ここで、浸漬水の電気伝導度と、搾汁残渣中の腐食成分の濃度との関係について説明する。
図8に、浸漬水中のカリウム濃度と、浸漬水の電気伝導度との関係を示す。
図8において、横軸は浸漬水中のカリウム濃度(mg/L:ミリグラム毎リットル)を表し、縦軸は浸漬水の電気伝導度(mS/m:ミリジーメンス毎メートル)を表す。浸漬水中のカリウム濃度をxとし、浸漬水の電気伝導度をyとすると、浸漬水中のカリウム濃度xと浸漬水の電気伝導度yとの関係は、(1)式による直線の式で近似できる。
y=0.2633x+157.56 ・・(1)
この場合、重相関係数Rの二乗の値R
2は0.945になり、浸漬水中のカリウム濃度と浸漬水の電気伝導度との間に強い相関があることが分かった。
【0037】
図9に、浸漬水中のカリウム濃度と、パームトランクの液分中のカリウム濃度と、の関係を示す。
図9において、横軸は浸漬水中のカリウム濃度(mg/L)を表し、縦軸はパームトランクの液分中のカリウム濃度(mg/L)を表す。
浸漬水中のカリウム濃度とパームトランクの液分中のカリウム濃度との関係は、直線の式で近似でき、浸漬水中のカリウム濃度とパームトランクの液分中のカリウム濃度との間に強い相関があることが分かった。
【0038】
また、パームトランクの液分中のカリウム濃度と、搾汁残渣中のカリウム濃度と、の間にも、強い相関があると考えらえる。以上により、浸漬水の電気伝導度は、浸漬水中のカリウム濃度及びパームトランクの液分中のカリウム濃度を介して、搾汁残渣中のカリウム濃度と、強い相関があると考えられる。
【0039】
図10に、浸漬水の電気伝導度と、搾汁残渣の液分中のカリウム濃度との関係を示す。
図10において、横軸は搾汁残渣の液分中のカリウム濃度(mg/L)を表し、縦軸は浸漬水の電気伝導度(mS/m)を表す。
搾汁残渣の液分中のカリウム濃度をxとし、浸漬水の電気伝導度をyとすると、搾汁残渣の液分中のカリウム濃度xと浸漬水の電気伝導度yとの関係は、(2)式による直線の式で近似できる。
y=0.183x−44.798 ・・(2)
重相関係数Rの二乗の値R
2は0.821になり、浸漬水の電気伝導度と搾汁残渣の液分中のカリウム濃度との間に強い相関があることが分かった。
【0040】
図11では、カリウム以外の腐食成分である塩素(Cl)に対して、
図10に示すカリウムと同様の検討を行った結果を示す。
図11において、横軸は搾汁残渣の液分中の塩素濃度(mg/L)を表し、縦軸は浸漬水の電気伝導度(mS/m)を表す。
搾汁残渣の液分中の塩素濃度をxとし、浸漬水の電気伝導度をyとすると、搾汁残渣の液分中の塩素濃度xと浸漬水の電気伝導度yとの関係は、(3)式による直線の式で近似できる。
y=0.461x+232.703 ・・(3)
重相関係数Rの二乗の値R
2は0.717になり、浸漬水の電気伝導度と搾汁残渣の液分中の塩素濃度との間に強い相関があることが分かった。
【0041】
以上の腐食成分であるカリウム及び塩素の例から、浸漬水の電気伝導度は、搾汁残渣中の腐食成分の濃度と、強い相関(一定の相関関係)があると考えられる。
【0042】
なお、
図12に、搾汁部41の押圧力と、搾汁残渣の液分中の濃度と相関がある搾汁残渣中のカリウム濃度と、の関係を示す。
図12において、横軸は搾汁部41の押圧力(MPa:メガパスカル)を表し、縦軸は搾汁残渣中のカリウム濃度(dry%)を表す。
例えば、曲線L3は、第1電気伝導度計31が検出した浸漬水の電気伝導度が449mS/mの場合の式である。曲線L4は、第1電気伝導度計31が検出した浸漬水の電気伝導度が643mS/mの場合の式である。
例えば、第1電気伝導度計31が検出した浸漬水の電気伝導度が449mS/mの場合に、搾汁残渣中のカリウム濃度を0.2dry%にしたい場合には、搾汁部41の押圧力を450MPaにすればよいことが分かる。
【0043】
浸漬水の電気伝導度は、搾汁残渣中の腐食成分の濃度と、強い相関があり、カリウムは腐食成分の一部である。さらに、
図12に示すように搾汁残渣中のカリウム濃度と、搾汁部41の押圧力と、の間には所定の関係があるため、浸漬水W1’の電気伝導度と、搾汁部41の押圧力と、の関係は、所定の式で表される。この所定の式が、搾り制御部46の記憶部に記憶されている。
なお、搾り制御部46が搾汁部41に指示するのは、押圧力に限定されず、リングロール43と、内接ロール44との距離(通過最小断面積)でもよい。
【0044】
次に、本実施形態のパームトランクの処理方法(以下、単に処理方法とも言う)について説明する。
図13は、本発明の第1実施形態における処理方法S11を示すフローチャートである。
まず、水洗工程(
図13に示すステップS12)において、供給部10の添加水供給部11及びパーム供給部21により添加水W1及びパームトランクW2を水洗部26に供給して、添加水W1を用いて水洗部26でパームトランクW2を洗う。
水洗工程S12では、混合比制御部36は、水洗部26から流れ出た後の浸漬水W1’の電気伝導度に基づいて、水洗部26に単位時間当たりに供給する添加水W1の量を調節する。より具体的には、混合比制御部36は、浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなるのに従い、水洗部26に単位時間当たりに供給する添加水W1の量を増加する。
【0045】
添加水W1の量の調節は、混合比制御部36が流量調節弁15の開度を調節することで行われる。なお、水洗部26に供給するパームトランクW2の量を減少して、相対的に水洗部26に供給する添加水W1の量を増加してもよい。さらに、水洗部26に供給する添加水W1の量を増加するとともに、水洗部26に供給するパームトランクW2の量を減少してもよい。
水洗工程S12が終了すると、ステップS14に移行する。
【0046】
次に、搾り工程S14において、搾汁部41によりパームトランクW2を搾る。搾り工程S14は、水洗工程S12の後で行われる。
搾り制御部46は、搾汁部41により添加水W1で洗った後のパームトランクW2の圧縮量を調節する。より具体的には、搾り制御部46は、浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなるのに従い、添加水W1で洗った後のパームトランクW2の圧縮量を増加する。
【0047】
以上の工程により、処理方法S11の全工程が終了し、所望の搾汁残渣W4及び搾汁液W5が製造される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態の処理装置1及び処理方法S11によれば、添加水W1を用いて水洗部26でパームトランクW2を洗うことにより、パームトランクW2中の腐食成分の濃度を調節できる。このため、パームトランクW2を搾った後の固体分である搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を調節できる。発明者等は、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度と、水洗部26から流れ出た後の浸漬水W1’の電気伝導度と、の間に一定の相関関係があることを見出した。従って、浸漬水W1’の電気伝導度に基づいて、水洗部26に供給する添加水W1の量を調節することにより、添加水W1により洗われるパームトランクW2中の腐食成分の濃度を調節し、さらにこのパームトランクW2が搾られたときに生じる搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を調節することができる。
原料であるパームトランクW2中の腐食成分の濃度が高い場合でも、搾汁残渣W4から製造される固体燃料の品質を維持することができる。また、原料であるパームトランクW2中の腐食成分の濃度が低い場合には、添加水W1の使用量を抑えることができる。
【0049】
また、浸漬水W1’の状態を浸漬水W1’の電気伝導度とし、浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなるのに従い、水洗部26に供給する前記添加水W1の量を増加する。
浸漬水W1’の電気伝導度の測定は、連続的、かつリアルタイム(水洗部26に添加水W1が滞留する時間に対して10分の1以下の測定時間である十分に短い時間)で行うことができる。このため、浸漬水W1’の電気伝導度に関連付けて、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を連続的かつ比較的短時間で算出することができる。
そして、例えば、浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなったときに、搾汁残渣W4中の腐食成分の含有量が増加したと判断して水洗部26に供給する添加水W1の量を増加し、より多くの添加水W1を用いてパームトランクW2を洗う。これにより、パームトランクW2中の腐食成分の濃度を減少させ、さらにこのパームトランクW2が搾られたときに生じる搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を減少させることができる。従って、浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなることに基づいて、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度をフィードフォワード制御することができる。
【0050】
一方で、浸漬水W1’の電気伝導度が小さくなったときに、搾汁残渣W4中の腐食成分の含有量が減少したと判断して水洗部26に供給する添加水W1の量を減少し、より少ない添加水W1を用いてパームトランクW2を洗ってもよい。これにより、パームトランクW2を洗うのに用いる添加水W1の量を低減させることができる。また、水洗部26に供給するパームトランクW2の量を増加して、相対的に水洗部26に供給する添加水W1の量を減少してもよい。
なお、処理装置1が搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を検出するセンサを備えて、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度をフィードバック制御してもよい。
【0051】
処理装置1が搾汁部41を備えることで、添加水W1を用いて洗った後のパームトランクW2を搾ることができる。
浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなるのに従い、添加水W1で洗った後のパームトランクW2の圧縮量を増加する。浸漬水W1’の電気伝導度の測定は、連続的かつ比較的短時間で行うことができる。このため、浸漬水W1’の電気伝導度に関連付けて、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を連続的かつ比較的短時間で算出することができる。
そして、例えば、浸漬水W1’の電気伝導度が大きくなったときに、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度が増加したと判断してパームトランクW2の圧縮量を増加し、搾汁残渣W4の水分含有量を少なくする。これにより、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を減少させることができる。
【0052】
本実施形態の処理装置及び処理方法は、以下に説明するようにその構成を様々に変形させることができる。
図14に示すように、処理装置1Aの水洗部121として、いわゆる垂直スクリューコンベヤを用いてもよい。水洗部121は、管状のケース122と、ケース122内に配置されたスクリューコンベヤ123と、を備えている。
ケース122の軸線方向の両端部は、封止されている。ケース122は、軸線が上下方向に沿うように配置されている。
ケース122の下端部には、ケース122内にパームトランクW2を供給するためのパーム供給口125が形成されている。ケース122の上端部には、ケース122内からパームトランクW2を排出するためのパーム排出口126が形成されている。ケース122における軸線方向の中間部には、添加水W1を供給するための添加水供給口127が形成されている。ケース122の下端には、図示しない排水口が形成されている。
スクリューコンベヤ123は、ケース122内に、軸線が上下方向に沿うように配置されている。スクリューコンベヤ123は、図示しない駆動部により、軸線回りの所定の向きに回転する。
【0053】
パーム供給口125からケース122内に供給されたパームトランクW2は、スクリューコンベヤ123により下方から上方に向かって搬送され、パーム排出口126からケース122の外部に排出される。添加水供給口127からケース122内に供給された添加水W1は、パームトランクW2を洗いながら、ケース122内で上方から下方に向かって流れ、排水口からケース122の外部に排水される。
このように、ケース122内において、パームトランクW2が搬送される向きと、添加水W1が流れる向きとは、互いに対向する。
【0054】
図15に示すように、処理装置1Bの水洗部131として、いわゆるバケットエレベータを用いてもよい。水洗部131は、ケース122と、ケース122内に配置されたスプロケット(もしくは、プーリー)132,133と、を備えている。スプロケット132はケース122の上端部内で、スプロケット133はケース122の下端部内で、それぞれ回転可能に支持されている。スプロケット133は、図示しない駆動部により回転する。チェーン(もしくは、ベルト)135は、ケース122内で、上下方向を長軸とする楕円状に配置されている。チェーン135の上端部には、スプロケット132が噛み合っている。チェーン135の下端部には、スプロケット133が噛み合っている。チェーン135の外周面には、複数のバケット136が固定されている。各バケット136内には、パームトランクW2が収容される。
【0055】
駆動部を駆動すると、スプロケット132,133、及びチェーン135が回転する。チェーン135に対する第1の側のバケット136は、下方から上方に向かって搬送される(以下、このように搬送されるバケット136をバケット136Aと言う)。チェーン135に対する第1の側とは反対の第2の側のバケット136は、上方から下方に向かって搬送される。
パームトランクW2は、バケット136Aにより下方から上方に向かって搬送される。添加水供給口127からケース122内に供給された添加水W1は、このバケット136Aにより搬送されるパームトランクW2を洗う。パームトランクW2を洗った浸漬水W1’は、バケット136の底部に開けられた水抜き穴を通り、ケース122内で上方から下方に向かって流れ、排水口からケース122の外部に排水される。
【0056】
図16に示す処理装置1Cのように、本実施形態の処理装置1の各構成に加えて、分離機141を備えてもよい。分離機141は、液中から固体分を分離する。
処理装置1Cでは、浸漬水ポンプ102により排水された浸漬水W1’は、分離機141に供給される。分離機141は、浸漬水W1’中のパームトランクW2等の固体分をホッパー28に供給する。分離機141は、固体分を分離した浸漬水W1’(液体分)を排水する。
変形例の処理装置1Cのように構成することにより、パームトランクW2の回収効率を高めることができる。
【0057】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図17を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図17に示すように、本実施形態の処理装置2は、第1実施形態の処理装置1の水洗部26に代えて、水洗部146及び第2電気伝導度計(検出部)147を備えている。
水洗部146は、第1水洗部146A及び第2水洗部146Bを備えている。
第1水洗部146A及び第2水洗部146Bは、それぞれ水洗部26と同様に構成されている。第2水洗部146Bは、パームトランクW2を添加水W1を用いて洗う。
パームトランクW2は、パーム供給部21により、まず第1水洗部146Aに供給される。
【0058】
第1水洗部146Aは、パームトランクW2を、第2水洗部146BでパームトランクW2を洗った浸漬水W1’を用いて洗う。なお、第1水洗部146AでパームトランクW2を洗う水は、第2水洗部146BでパームトランクW2を洗った後の浸漬水W1’ではない新しい浸漬水であってもよい。第1水洗部146Aで洗われたパームトランクW2は、第2水洗部146Bに搬送され、第2水洗部146Bで洗われる。
この例では、第1電気伝導度計31のセンサ部32は、第1水洗部146Aから流れ出た後の浸漬水W1’(以下、第2浸漬水W1’’と言う)の流路上に配置されている。第1電気伝導度計31は、センサ部32が接触している第1水洗部146Aから流れ出た後の第2浸漬水W1’’の電気伝導度を検出し、検出結果を定期的に混合比制御部36に送る。
【0059】
第2電気伝導度計147は、第1電気伝導度計31と同様に構成されている。第2電気伝導度計147のセンサ部148は、第2水洗部146BでパームトランクW2を洗った後の浸漬水W1’であって、第1水洗部146Aに供給される前の浸漬水W1’の電気伝導度を検出する。第2電気伝導度計147は、検出結果を定期的に搾り制御部46に送る。
搾汁部41は、第1水洗部146A及び第2水洗部146Bで洗った後のパームトランクW2を搾る。
なお、本実施形態の水洗方法では、複数回の水洗工程、及び1回又は複数回の搾り工程S14を組み合わせて行ってもよい。
【0060】
以上説明したように、本実施形態の処理装置2及び処理方法によれば、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を調節することができる。
さらに、パームトランクW2を複数回洗うことにより、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度をより確実に減少させることができる。
なお、処理装置が3つ以上の水洗部を備えてもよい。また、水洗部を用いた工程と、搾汁部41を用いた工程と、を2回以上繰り返してもよい。
【0061】
以上、本発明の第1実施形態及び第2実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。さらに、各実施形態で示した構成のそれぞれを適宜組み合わせて利用できることは、言うまでもない。
例えば、前記第1実施形態及び第2実施形態では、浸漬水W1’の状態は、浸漬水W1’の電気伝導度に限定されず、浸漬水W1’の濁度、浸漬水W1’に対する光の透過度等でもよい。濁度は、例えば、JIS K 0101:1998に規定される。例えば、浸漬水W1’の状態が浸漬水W1’の濁度である場合には、浸漬水W1’の濁度が大きくなるのに従い、水洗部26に供給する添加水W1の量を増加する。
【0062】
ただし、浸漬水W1’の状態が浸漬水W1’のCOD(Chemical Oxygen Demand:化学的酸素要求量)であるとすると、浸漬水W1’のCODを連続的に測定できない。このため、浸漬水W1’の状態は、浸漬水W1’の電気伝導度、浸漬水W1’の濁度、浸漬水W1’に対する光の透過度であることが好ましい。
【0063】
また、処理装置1は、混合比制御部36を備えなくてもよい。この場合、添加水W1を用いて水洗部26でパームトランクW2を洗い、添加水W1で洗った後のパームトランクW2を搾ることにより、パームトランクW2中の腐食成分の濃度を調節できる。前述のように発明者等は、搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度と、水洗部26から流れ出た後の浸漬水W1’の電気伝導度と、の間に一定の相関関係があることを見出した。従って、浸漬水W1’の電気伝導度に基づいて、添加水W1で洗った後のパームトランクW2の圧縮量を調節することにより、パームトランクW2が搾られたときに生じる搾汁残渣W4中の腐食成分の濃度を調節することができる。
【0064】
処理装置は、搾汁部41及び搾り制御部46を備えなくてもよい。この場合、処理方法では搾り工程S14を行わなくてもよい。
バイオマス固体燃料原料がパームトランクW2であるとしたが、バイオマス固体燃料原料はこれに限定されず、トランク部位以外のオイルパーム、サゴパーム、サトウキビ、ネピアグラス、稲、竹、バナナ等でもよい。
【解決手段】添加水及びバイオマス固体燃料原料を水洗部に供給して、添加水を用いて水洗部でバイオマス固体燃料原料を洗う水洗工程S12を行うバイオマス固体燃料原料の処理方法S11であって、水洗工程では、水洗部から流れ出た後の浸漬水の状態に基づいて、水洗部に供給する添加水の量及び水洗部に供給するバイオマス固体燃料原料の量の少なくとも一方を調節する。