(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記吐出通路の周壁面は、前記流入口に連なり前記流入口から前記横幅方向の一方側に延びる第1斜面と、前記流入口に連なり前記流入口から前記横幅方向の他方側に延びる第2斜面とを有し、
前記横幅方向と直交する水平方向を奥行方向としたとき、
前記第1斜面と前記第2斜面は、前記吐出口側から奥側に向かうにつれて、平面視にて前記流入口の中心位置を通る前記奥行方向と平行な仮想線に近づくように、前記奥行方向の方向線に対して傾斜している請求項1に記載の吐水装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の吐水装置は、膜状の吐水流を吐き出せるように、吐水口に水を導く吐出通路が横長に形成される。この横長な吐出通路内には、吐水動作の終了後、吐水口等から水が排出されずに滞留し易くなる。装置内に残る水(以下、残水という)の滞留量が多くなることは衛生面から好ましくない。また、滞留する残水は冷たくなり、次回の吐水動作開始時に冷水として吐き出されるため、入浴者に不快感を与える原因となる。特許文献1の吐水装置では、装置内に滞留する残水に関して何ら考慮されておらず、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、吐水装置内での残水の滞留を抑えられる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の吐水装置は、水を吐き出すための吐出口と、上流側から水が送り込まれる流入口と、吐出口と流入口とを連通する吐出通路と、が内部に形成される吐水部材を備える。流入口は吐出通路の下壁面に形成され、下壁面には勾配を有する排水領域が設けられ、排水領域の勾配は、該排水領域上の残水を流入口まで案内可能に設けられる。
この態様によると、吐水動作の終了後、排水領域上の残水を流入口から排水できる。よって、吐出通路内での残水の滞留を抑えられ、吐出通路内を衛生的に保つことができる。
【0007】
排水領域の勾配は、下壁面において吐出口から流入口にかけての範囲を含むように設けられてもよい。
この態様によると、吐出通路の広い範囲での残水の滞留を抑えられる。
【0008】
排水領域は、勾配の異なる複数の傾斜面と、隣接する傾斜面間に形成される谷部と、を有してもよい。谷部は、その一端部が流入口に繋がるように設けられ、流入口に向かって下方に傾斜する勾配が設けられてもよい。
この態様によると、谷部上で残水が止まっても、そこより高位置から流れ落ちる他の残水と当たった時の勢いにより、止まった残水が再び流れ易くなり、残水の滞留をより抑えられる。
【0009】
谷部の一端部は、流入口に対して略直交する方向に延びるように設けられてもよい。
この態様によると、谷部に沿って流れた残水が流入口に到達したとき、谷部と流入口とが繋がる位置を通る流入口の接線方向での残水の速度成分が小さくなる。この速度成分が大きくなると、残水が流入口周りに沿うように流れてから下方に流れ落ちやすくなるが、その速度成分が小さくなることで、流入口に到達した残水を下方にスムーズに落とすことができ、流入口近傍で残水を早期かつ安定して減らし易くなる。
【0010】
流入口は吐出通路の下壁面に複数形成され、排水領域には、複数の流入口のそれぞれに対応する複数の面領域が含まれ、面領域の勾配は、該面領域上の残水を対応する流入口まで案内可能に設けられてもよい。
この態様によると、排水領域に単数の流入口を設けるよりも、排水領域の外縁部から流入口までの水平距離を小さくできる。この水平距離が大きいと、排水領域の下端位置から上端位置までの高さ寸法を大きく確保する必要があり、それだけ装置全体の大型化を招く。この点、水平距離を小さくできるため、その高さ寸法を抑えられ、装置全体の小型化を図れる。
【0011】
排水領域は、吐出通路の奥側にて該吐出通路を横幅方向に分けるように設けられる複数の奥側領域と、複数の奥側領域より吐出口側に設けられる入側領域とにより形成され、複数の奥側領域は、複数の流入口のそれぞれに対応して設けられ、奥側領域の勾配は、該奥側領域上の残水を対応する流入口まで案内可能に設けられ、入側領域の勾配は、該入側領域上の残水を奥側領域まで案内可能に設けられてもよい。
この態様によると、各奥側領域では、排水し易くするための勾配を設定しつつ、入側領域では、各奥側領域の勾配の影響を抑えつつ、吐水し易くするための勾配を設定でき、設計の自由度が高くなる。
【0012】
排水領域から流入口まで案内された残水を装置外部に排出可能に構成されてもよい。
この態様によると、装置内での残水の滞留をより抑えられる。
【0013】
本発明の別の態様は、吐水装置の取付構造である。この吐水装置の取付構造は、吐水装置と、吐水装置が取り付けられる基体と、を備える。吐水装置は、水を吐き出すための吐出口と、上流側から水が送り込まれる流入口と、吐出口と流入口とを連通する吐出通路と、が内部に形成される吐水部材を有する。流入口は吐出通路の下壁面に形成され、吐水部材は、下壁面上の残水が流入口まで案内されるように、下壁面の少なくとも一部が水平面に対して傾斜した状態で基体に取り付けられる。
この態様によると、吐水動作の終了後、下壁面上の残水を流入口から排水できる。よって、吐出通路内での残水の滞留を抑えられ、吐出通路内を衛生的に保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、吐出通路内での残水の滞留を抑えられる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は本実施形態に係る吐水装置10の使用状態を示す斜視図である。
吐水装置10は浴槽装置200に用いられる。浴槽装置200は、吐水装置10の他に、吐水装置10が取り付けられる基体としての浴槽210を備える。浴槽210のリム部215には取付面217が設けられる。吐水装置10は、取付面217に取り付けられる装置本体11を備える。装置本体11は横長扁平に形成され、膜状の横長な吐水流Wが吐出口13から前方に吐き出される。
【0017】
図2は吐水装置10に用いられる吐水システム220を示す構成図である。
吐水システム220は、浴槽水211をポンプ221により汲み上げ、吐水装置10及び吐水口223から吐水流を吐き出し、浴槽水211を循環して用いる。ポンプ221は、浴槽210の内部に位置する吸水口225に吸水路227を介して接続され、吸水口225から吸水路227を経由して浴槽水211を汲み上げる。ポンプ221には共通導水路235が接続され、共通導水路235には汲み上げた水が圧送される。
【0018】
共通導水路235からは上部導水路237と下部導水路239が分岐して設けられる。上部導水路237は吐水装置10の後述する導水部15の給水口16に接続され、下部導水路239は浴槽210の内部に位置する吐水口223に接続される。給水口16は共通導水路235の分岐点241より高位置にあり、吐水口223は分岐点241より低位置にある。
【0019】
給水口16には共通導水路235から上部導水路237を通して水が圧送され、吐水装置10の装置本体11から膜状の吐水流Wが吐き出される。吐水口223には共通導水路235から下部導水路239を通して水が圧送され、気泡入りの吐水流が吐き出される。装置本体11の吐水流Wは、入浴者の肩や首にかけることにより打たせ湯に似たリラックス感を入浴者に与えられる。吐水口223の吐水流は、入浴者の腰や背中に勢いよく当たることでマッサージ効果を与えられる。
【0020】
図3は吐水装置10の正面図である。
装置本体11の前部には、横長なスリット状の吐出口13が設けられる。導水部15は、吐出口13の横幅方向に間隔を空けて装置本体11から下方に突き出るように複数設けられる。以下、吐出口13の横幅方向を方向X、これに直交する水平方向を奥行方向Y、鉛直方向を上下方向Zという。方向Xは後述する吐出通路33の横幅方向とも一致する。
【0021】
図4は吐水装置10の側面断面図である。本図は
図3のA−A線断面図でもある。
導水部15は、取付面217に形成される貫通孔229に挿通される。導水部15の取付面217と反対側に突き出た部位にはナット等の固定部材231がねじ込み等により取り付けられる。装置本体11は、固定部材231との間で浴槽210を挟み込むことにより浴槽210に固定される。なお、固定部材231と浴槽210の間にはOリング等のシールリング233が介装される。
【0022】
導水部15には下流側に給水するための給水路17が内部に形成され、その先端部には上部導水路237が接続される。給水路17は、その上流側に上部導水路237から送られる水を受け入れる給水口16が形成され、その下流側に給水路17と吐出通路33(後述する)を連通する流入口35が形成される。給水路17は給水口16が流入口35より低位置にあり、上下方向Zに延びるように形成される。また、給水路17は上部導水路237と同軸上に並ぶように配置される。給水路17や流入口35は断面円形状に形成される。
【0023】
給水路17には、流入口35側から給水口16側にかけて、第1大径部17aと、テーパー部17bと、小径部17cと、第2大径部17dとが形成される。第1大径部17aと第2大径部17dは同じ内径に形成され、小径部17cはこれらより内径が小さくなるように形成される。テーパー部17bは流入口35側から給水口16側に向かうにつれて連続的に内径が小さくなるように形成される。小径部17cと第2大径部17dの間には段部17eが形成される。
【0024】
装置本体11は、吐水部材19と、外装カバー21を備え、これらを組み付けて構成される。吐水部材19は、吐出口13が前部に形成される通路部23と、通路部23上に設けられる天面部25と、通路部23の前部上面に設けられる照明取付部27と、を有する。照明取付部27には照明装置31が取り付けられる。照明装置31は所定の波長の有色光や白色光を前方に投光する。外装カバー21は吐水部材19の前部に脱着可能に取り付けられる。外装カバー21は、照明装置31を上方から覆うとともに、吐水部材19の横幅方向X両端部19a(
図3参照)を前方から覆うように設けられる。
【0025】
通路部23には、吐出口13の他、流入口35と、これらを連通する吐出通路33とが内部に形成される。吐出通路33は、吐出口13の延びる方向に横長な形状を有し、後述する貯溜室37と絞り流路39とにより形成される。流入口35は吐出通路33の下壁面71に形成され、これを通して上流側である給水路17から貯溜室37内に水が送り込まれる。
【0026】
貯溜室37では流入口35から流入する水が貯溜水として一時的に溜められる。貯溜室37の上流側には、その貯溜室37の一部を画定する誘導面81が設けられる。誘導面81は、吐出通路33の上下に対向する一対の下壁面71と上壁面73の両方に設けられる。誘導面81は、貯溜室37の奥側から絞り流路39の入口39aに向かうにつれて、その下壁面71と上壁面73同士の間隔を連続的に狭めるように設けられる。
【0027】
絞り流路39は貯溜室37の下流側に設けられ、貯溜室37と吐出口13を連通する。絞り流路39は、一対の下壁面71と上壁面73との間隔である通路高さが貯溜室37より小さくなるように形成される。絞り流路39は、その入口39aから吐出口13までの範囲にかけて、略一定の通路高さに形成される。貯溜室37内の貯溜水は絞り流路39を通して吐出口13に送り出される。貯溜水は絞り流路39を通るときに絞られることで流速が高まり、吐出口13から勢いよく吐水流Wが吐き出される。このとき、貯溜室37内の貯溜水は誘導面81に沿ってスムーズに流れ、乱れや圧力損失の発生を抑えられる。
【0028】
図5は吐水装置10の分解斜視図である。
吐水部材19は、第1分割部材としての下側分割部材51と、第2分割部材としての上側分割部材53をねじ等の固定具(図示せず)により組み付けて構成される。各分割部材51、53は樹脂成形品であり、吐水部材19を上下に分割した形状を有する。吐出通路33は各分割部材51、53により画定される。下側分割部材51の下壁面71からは柱状体としての間隔保持部69が立ち上がる。間隔保持部69は横幅方向Xに間隔を空けて複数配置される。間隔保持部69は、図示しないが、その上面が吐出通路33の上壁面73に接触し、吐出通路33の上壁面73と下壁面71の間隔を保持する。これにより、吐出通路33の通路高さを狭めるような荷重が吐水部材19に加わる場合でも、その間隔を保持でき、吐水流Wの形状の乱れを抑え易くなる。
【0029】
図6は吐出通路33を示す平面図である。本図は下側分割部材51の平面図でもある。
吐出通路33の横幅方向X、奥行方向Yの寸法を通路幅、奥行寸法とすると、吐出通路33は、平面視において、通路幅より奥行寸法が小さくなるように形成される。また、吐出通路33は、その横断面(図示しない)が通路高さより通路幅が大きくなるように横長に形成される。吐出通路33の横幅方向X両側の側壁面33aは、貯溜室37の奥側から吐出口13側に近づくにつれて、吐出通路33の通路幅が広がるように形成される。流入口35は吐出通路33の横幅方向Yに間隔を空けて形成される。
【0030】
図7(a)は吐出通路33の下壁面71に設けられる勾配を示す図であり、
図7(b)は下壁面71に設けられる排水領域90を示す図である。
図7(a)では高位置から低位置に向かう勾配を矢印により示す。
吐出通路33の下壁面71には勾配を有する排水領域90が設けられる。排水領域90は、本例では、下壁面71の全域に亘り設けられる。排水領域90の勾配は、吐出口13から各流入口35にかけての範囲を少なくとも含むように設けられることになる。ここでの勾配とは、浴槽210の取付面217に取り付けられたときの水平面に対する勾配をいう。排水領域90の勾配は、詳述するように、排水領域90上の残水を流入口35まで案内可能に設けられる。
【0031】
排水領域90は、吐出通路33の奥側にて吐出通路33を横幅方向Xに分けるように設けられる複数の奥側領域91と、各奥側領域91より吐出口13側に設けられる入側領域93とにより形成される。各領域91、93は、詳述するように、複数の傾斜面を組み合わせて構成される。
【0032】
入側領域93は、下壁面71の横幅方向Y一端側の端辺部71aから他端側の端辺部71bに亘る範囲に設けられる。入側領域93は、勾配の異なる第1入側傾斜面95と、第2入側傾斜面97を組み合わせて構成される。第1入側傾斜面95は、吐出口13側に設けられ、第2入側傾斜面97は、第1入側傾斜面95より吐出通路33の奥側に設けられる。
図4に示すように、第1入側傾斜面95は絞り流路39及び吐出口13の一部を形成し、第2入側傾斜面97は誘導面81を形成する。第1入側傾斜面95は第2入側傾斜面97より勾配が小さくなるように形成されるが、その勾配の大小関係はこれに限られない。
【0033】
第1入側傾斜面95には、奥行方向Yの吐出口13側の前辺部95aが高位置となり、奥行方向Yの奥端側の奥辺部95bが低位置となる勾配P1が設けられる。第2入側傾斜面97にも、吐出口13側の前辺部97aが高位置となり、奥端側の奥辺部97bが低位置となる勾配P2が設けられる。第1入側傾斜面95上の残水は、その勾配P1に従い自重により第2入側傾斜面97まで案内され、第2入側傾斜面97上の残水も、その勾配P2に従い自重により奥側の各奥側領域91まで案内される。このように入側領域93には、その上の残水を奥側の各奥側領域91まで案内可能な勾配P1、P2が設けられる。
【0034】
各奥側領域91は、複数の流入口35のそれぞれに対応する面領域として設けられ、その対応する流入口35を囲むように設けられる。各奥側領域91の境界部分には、間隔保持部69と、横幅方向Yに隣接する第3傾斜面105(後述する)により形成される山部99とが設けられる。各奥側領域91は、その構成の大半が共通するため、以下では一の奥側領域91のみを主に説明し、他の奥側領域91は共通する構成要素に符号を付して説明を省略する。
【0035】
図8は奥側領域91の拡大図である。
奥側領域91は、勾配の異なる第1傾斜面101、第2傾斜面103、第3傾斜面105を組み合わせて構成される。第1傾斜面101は、対応する流入口35を横幅方向Yに跨ぐ範囲であって、流入口35に対して吐出口13寄りの範囲に設けられる。第1傾斜面101は、奥行方向Yの前端側の前辺部101aが入側領域93との境界部分となり、奥端側の奥辺部101bが他の傾斜面103、105や流入口35との境界部分となる。第1傾斜面101は、前辺部101aが高位置となり、奥辺部101bが低位置となる勾配P3が設けられる。
【0036】
第2傾斜面103は、第1傾斜面101と、下壁面71の奥端側の端辺部71cとに挟まれる範囲であって、流入口35に対して横幅方向Y一端寄り(
図7中左端寄り)の範囲に設けられる。第2傾斜面103は、奥行方向Yの奥端側の奥辺部103aが高位置となり、その奥辺部103aから吐出口13に向かって下り傾斜となる勾配P4が設けられる。
【0037】
第3傾斜面105は、第1傾斜面101と、下壁面71の奥端側の端辺部71cとに挟まれる範囲であって、流入口35に対して横幅方向Y他端寄り(
図7中右端寄り)の範囲に設けられる。第3傾斜面105は、その横幅方向Y他端側の横辺部105aが高位置となり、その横辺部105aから流入口35に向かって下り傾斜となる勾配P5が設けられる。この横辺部105aは他の奥側領域91との境界部分となる。
【0038】
隣接する第1傾斜面101と第2傾斜面103の間には第1谷部107が形成される。第1谷部107は、その一端部107aが流入口35に繋がるように設けられ、他端部107bが横幅方向Yの一端側の端辺部71aに繋がるように設けられる。また、隣接する第1傾斜面101と第3傾斜面105の間には第2谷部109が形成される。第2谷部109は、その一端部109aが流入口35に繋がるように設けられ、他端部109bが他の奥側領域91との境界部分に繋がるように設けられる。各谷部107、109は、流入口35に向かって下方に傾斜する勾配P6が設けられる。
【0039】
各傾斜面101、103、105上の残水は、各傾斜面101、103、105の勾配P3〜P5に従い自重により低位置に流れ、低位置にある流入口35か各谷部107、109まで案内される。各谷部107、109まで案内された残水は、谷部107、109の勾配P6に従い自重により低位置に流れ、流入口35まで案内される。このように第1奥側領域91Aには、その上の残水を対応する流入口35まで案内可能な勾配P3〜P6が設けられる。
【0040】
図9は各谷部107、109と流入口35の近傍を示す図である。
各谷部107、109の一端部107a、109aは、流入口35に対して略直交する方向に延びるように設けられる。ここでの「略直交」とは、平面視において、各谷部107、109と流入口35とが繋がる位置を通る流入口35の接線L1に対して、その一端部107a、109aがなす鋭角での角度θが80°〜90°であることをいう。
【0041】
この角度θが小さくなると、谷部107、109に沿って流れた残水が流入口35に到達したときに、接線方向Q1の速度成分が大きくなる。この速度成分が大きくなると、残水が流入口35から下方にスムーズに流れ落ちず、流入口35周りに沿うように流れてから下方に流れ落ち易くなる。また、この勢いが大きいと流入口35からはみ出るように動き、その周縁部で勢いを失って止まる恐れもある。この点、本形態では谷部107、109が接線L1と略直交するように設けられるため、その接線方向Q1の速度成分が小さくなることで、流入口35に到達した残水を下方にスムーズに落とすことができ、流入口35近傍で残水を早期かつ安定して減らし易くなる。
【0042】
図4に示すように、下壁面71の奥側の端辺部71cは、その下壁面71から立ち上がり、吐出通路33の貯溜室37を画定する側壁面33aに滑らかに繋がるように断面円弧状に形成される。下壁面71の横幅方向Y両側の端辺部71a、bも、図示ししないが、同様に断面円弧状に形成される。この断面円弧状の形状は、
図7に示すように、下壁面71の横幅方向Y一端側の端辺部71aの途中位置R1から、他端側の端辺部71bの途中位置R2にかけて連続する範囲に形成される。これにより、下壁面71の端辺部71a、〜71c上の残水が低位置に案内され易くなり、その端辺部71c上での残水の滞留を抑えられる。
【0043】
以上の実施形態に係る吐水装置10の動作を説明する。
吐水部材19では、
図4に示すように、予め定められた流量の水がポンプ221(
図2参照)から圧送され、その水が給水路17を通して流入口35から貯溜室37内に流入し、貯溜室37内に一時的に貯溜水として溜められる。貯溜室37内に貯溜水が溜められた状態で流入口35から水が送り込まれることにより、貯溜室37内の貯溜水が加圧され、その水圧により絞り流路39を通して貯溜水が吐出口13に送り出され、吐出口13から吐水流Wが吐き出される。
【0044】
吐水動作の終了後、吐出通路33の下壁面71には残水が付着する。入側領域93上の残水は、その勾配P1、P2に従い自重により各奥側領域91まで案内される。各奥側領域91上の残水は、その勾配P3〜P6に従い自重により対応する流入口35まで案内される。このように排水領域90上の残水は流入口35まで案内される。
【0045】
排水領域90から流入口35まで案内された残水は、
図4に示すように、流入口35から給水路17内を通して低位置にある給水口16まで自重により流れ、その給水口16から装置外部である上部導水路237に排出される。このとき、第1大径部17aと小径部17cの間にテーパー部17bがあるので、給水路17内を通して給水口16まで残水が流れ易くなる。このように、吐水装置10は、排水領域90から流入口35まで案内された残水を装置外部に排出可能に構成される。
【0046】
上部導水路237内の残水は、
図2に示すように、給水口16より低位置にある分岐点241を通して下部導水路239まで自重により流れる。また、下部導水路239内の残水は、分岐点241から低位置にある吐水口223まで自重により流れ、その吐水口223から浴槽210内に吐き出される。なお、このとき、ポンプ221の駆動を止め、浴槽210の排水栓243を抜いて浴槽水211を排水口から排水する。
【0047】
以上の実施形態に係る吐水装置10の作用効果を説明する。
吐出通路33の下壁面71には排水領域90が設けられるため、吐水動作の終了後、その排水領域90上の残水を流入口35から排水できる。よって、吐出通路33内での残水の滞留を抑えられ、吐出通路33内を衛生的に保つことができる。特に、本形態では、流入口35まで案内された残水を装置外部に排出可能なため、装置内での残水の滞留をより抑えられる。また、本形態では、排水領域90の勾配が吐出口13から流入口35にかけての範囲を含むように設けられるため、吐出通路33の広い範囲での残水の滞留を抑えられる。
【0048】
また、吐水装置10からは、通常、温かい浴槽水211が吐き出される。しかし、吐水動作の終了後、吐出通路33内に残水が滞留すると冷たくなり、次回の吐水動作の開始時に冷水が吐き出されてしまう。この点、本形態では、吐出通路33内での残水滞留を抑えられるため、次回の吐水動作の開始時に吐き出される冷水量を抑えられ、入浴者への不快感の発生を抑えられる。特に、本形態では、流入口35から上部導水路237に排出される残水が分岐点241を通して下部導水路239まで流れるため、次回の吐水動作の開始時に吐き出される冷水量を更に抑えられる。
【0049】
また、傾斜面101、103、105上の残水の一部を谷部107、109に案内してから流入口35まで流している。よって、谷部107、109上で残水が止まっても、そこより高位置から流れ落ちる他の残水と当たったときの勢いにより、止まった残水が再び流れ易くなり、残水の滞留をより抑えられる。
【0050】
また、排水領域90には、複数の流入口35に対応する複数の奥側領域91が設けられ、その奥側領域91には残水を対応する流入口35まで案内可能な勾配が設けられる。よって、排水領域90に単数の流入口35を設けるよりも、排水領域90の外縁部から流入口35までの水平距離を小さくできる。この水平距離が大きいと、排水領域90の下端位置から上端位置までの高さ寸法を大きく確保する必要があり、それだけ装置全体の大型化を招く。この点、本形態では、この水平距離を小さくできるため、その高さ寸法を小さく抑えられ、装置全体の小型化を図れる。
【0051】
また、かりに、排水領域90に入側領域93が設けられていないと、各奥側領域91が吐出口13まで連なるように設けられることになる。この場合、奥側領域91の勾配の付け方によっては、吐出口13の近傍にて横幅方向Y位置により通路高さが変化してしまい、吐水流Wの形状に乱れが生じ易くなる。一方、本形態では、各奥側領域91より吐出口13側に入側領域93が形成されるため、奥側領域91の勾配の付け方によらず、入側領域93で横幅方向Y位置により通路高さが一定となるように設計でき、吐水流Wの形状の乱れを抑え易くなる。つまり、各奥側領域91では、排水し易くするための勾配を設定しつつ、入側領域93では、各奥側領域91の勾配の影響を抑えつつ、吐水し易くするための勾配を設定でき、設計の自由度が高くなる。
【0052】
[第2の実施の形態]
図10は本実施形態に係る吐水装置10を用いた取付構造110を示す側面断面図である。第2実施形態では、第1実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
第1実施形態では吐出通路33の下壁面71に勾配を有する排水領域90が設けられた。本形態では下壁面71に排水領域90がなく、下壁面71は、誘導面81を画定する箇所を除き、全域に亘り平坦面により形成される。
【0053】
また、第1実施形態では浴槽210の取付面217が水平面に対して平行に設けられたが、本形態では取付面217が水平面に対して傾斜して設けられる。取付面217は浴槽210の内側部分が高位置となり、外側部分が低位置となるように傾斜する。取付構造110では、吐水装置10の装置本体11は、吐出通路33の下壁面71が水平面に対して傾斜した状態で取付面217に取り付けられる。下壁面71は、吐出口13側が高位置となり、奥側が低位置となるように傾斜する。
【0054】
図11(a)は吐出通路33の周壁面33bに設けられる勾配を示す図であり、
図11(b)は周壁面33bに設けられる案内領域111を示す図である。
図11(a)では高位置から低位置に向かう勾配を矢印により示す。
流入口35は吐出通路33の奥側にて横幅方向Yに間隔を空けて形成される。吐出通路33の横幅方向Y両側と奥側を囲む周壁面33bには、吐出通路33の奥行方向Yの方向線に対して傾斜する勾配を有する案内領域111が設けられる。案内領域111は、吐出通路33の周壁面33bを横幅方向Xに分けるように設けられる第1面領域113及び第2面領域115により形成される。各面領域113、115は流入口35に対応して設けられる。
【0055】
第1面領域113は、吐出口13の開口縁13aから流入口35まで連なる第1斜面117と、吐出通路33の横幅方向X中心部33cから流入口35まで連なる第2斜面119とを有する。平面視にて流入口35の中心位置を通る奥行方向Yと平行な仮想線を線L2としたとき、第1斜面117、第2斜面119は、それぞれ、吐出口13側から流入口35に近づくにつれて、各面領域113、115に対応する流入口35を通る仮想線L2に近づくように傾斜する勾配P7が設けられる。
【0056】
下壁面71上の残水は、下壁面71の傾斜に従い自重により低位置に流れ、低位置にある流入口35から吐出通路33の周壁面33bまで案内される。吐出通路33の周壁面33bまで案内された水は、周壁面33bの勾配P7に従い自重により周壁面33bに沿って低位置に流れ、流入口35まで案内される。このように、下壁面71の一部が水平面に対して傾斜した状態で浴槽210の取付面217に取り付けられることにより、下壁面71上の残水が流入口35まで案内される。
【0057】
本実施形態に係る吐水装置10の取付構造110でも、第1実施形態と同様に、吐出通路33内での残水の滞留を抑えられ、吐出通路33内を衛生的に保つことができる。
【0058】
なお、第1実施形態に係る吐水装置10についても、吐水部材19は、下壁面71上の残水が流入口35まで案内されるように、その下壁面71の一部である排水領域90が水平面に対して傾斜した状態で浴槽210に取り付けられているといえる。つまり、このような吐水装置10と浴槽210を備える取付構造110が開示されていると理解できる。
【0059】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【0060】
吐水装置10は、その取付対象となる基体が浴槽210である例を説明したが、基体の具体的構成はこれに限られない。吐水装置10は、この他にも洗面所の洗面台や、キッチンの流し台等を基体として取り付けられてもよい。いずれの場合でも、基体に取付面217を設け、その取付面217に吐水装置10を取り付けてよい。
【0061】
吐出口13は横長なスリット状に形成され、吐出通路33は吐出口13の延びる方向に横長に形成された。これらの形状はこれに限られず、たとえば、円形状等に形成されてもよい。給水路17や流入口35は断面円形状に形成されたが、これに限られず、断面矩形状等に形成されてもよい。
【0062】
上側分割部材53と下側分割部材51は樹脂成形品である例を説明したが、他の金属鋳造品等でもよい。上側分割部材53と下側分割部材51は、吐水部材19を上下に分割した形状を有する第1分割部材、第2分割部材として説明した。これらは、この他にも、横幅方向Xに分割した形状を有していてもよい。また、吐水部材19は、複数の分割部材により構成されずに、一体成形品により構成されてもよい。下側分割部材51と上側分割部材53は固定具により脱着可能に組み付けられたが、これに限られず、スナップフィット等により組み付けられてもよい。
【0063】
排水領域90は下壁面71の全域に設けられたが、下壁面71の一部にのみ設けられてもよい。この場合、排水領域90は、下壁面71の奥端側の端辺部71cから吐出口13に向かう途中位置にかけての範囲に設られてもよい。このとき、その途中位置から吐出口13にかけての範囲では吐出口13に向けて下り傾斜するような勾配を設け、その途中位置より奥側では流入口35に残水が案内され、その途中位置より前方では吐出口13に残水が案内されるようにしてもよい。
【0064】
排水領域90の各奥側領域91は、複数の傾斜面101、103、105の間に各谷部107、109が形成されたが、これら傾斜面を円錐状に形成して谷部107、109が形成されないようにしてもよい。また、排水領域90は複数の奥側領域91と入側領域93とにより形成されたが、単数または複数の奥側領域91のみにより形成されてもよい。この場合、奥側領域91は、下壁面71の奥端側の端辺部71cから吐出口13にかけての全範囲に形成されてもよい。また、入側領域93は複数の入側傾斜面95、97により形成されたが、単数の入側傾斜面により形成されてもよい。