(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564127
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】自動車用視覚システム及び視覚システムを制御する方法
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20190808BHJP
G01C 3/00 20060101ALI20190808BHJP
G06T 7/80 20170101ALI20190808BHJP
G08G 1/16 20060101ALN20190808BHJP
【FI】
G01C3/06 110V
G01C3/00 120
G01C3/06 140
G06T7/80
!G08G1/16 C
【請求項の数】14
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-506610(P2018-506610)
(86)(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公表番号】特表2019-504986(P2019-504986A)
(43)【公表日】2019年2月21日
(86)【国際出願番号】EP2016070120
(87)【国際公開番号】WO2017036927
(87)【国際公開日】20170309
【審査請求日】2018年3月16日
(31)【優先権主張番号】15183321.7
(32)【優先日】2015年9月1日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518238850
【氏名又は名称】ヴィオニア スウェーデン エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】リンドグレン、レイフ
【審査官】
齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/110207(WO,A1)
【文献】
特開2012−027035(JP,A)
【文献】
特開2013−093013(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0105585(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0210274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/06
G01C 3/00
G06T 7/80
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステレオ撮像手段(11)を形成する一対の撮像装置(12a、12b)と、該撮像手段(11)によって取り込まれた画像から自動車の周囲の物体を検出するように適合された物体検出器(15)と、該物体検出器(15)によって検出された前記物体を経時的に追跡するように適合された追跡器(16)を確立するデータ処理装置(14)とを備え、該データ処理装置(14)は、前記検出され追跡された物体のサイズ関連値及び視差関連値を計算するように適合されている、前記自動車用視覚システム(10)であって、
前記データ処理装置(14)は、異なる時点に対応する前記追跡された物体の少なくとも5つのデータ点のグループに対して分析を行うように適合された分析部(20)を備え、
各データ点は、前記検出された物体のサイズ関連値及び対応する視差関連値を含み、
前記分析は、少なくとも1つの変数を有する所定の回帰関数を用いる回帰分析であり、該回帰分析は、前記データ点のグループに対する前記回帰関数の最良一致に対応する変数ごとに最良値をもたらし、
前記分析部(20)は、前記少なくとも1つの最良値から、前記視差関連値における及び/又は前記サイズ関連値における系統誤差を計算するように適合され、
前記データ処理装置(14)は、前記視差関連値及び/又は前記サイズ関連値における前記系統誤差をスクイント角誤差に変換するように適合されていることを特徴とする、視覚システム。
【請求項2】
前記視差関連値は、視差値であることを特徴とする、請求項1に記載の視覚システム。
【請求項3】
前記視差関連値は、距離値であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の視覚システム。
【請求項4】
前記サイズ関連値は、物体サイズ、特に物体幅であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項5】
前記回帰分析は、線形回帰分析であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項6】
前記回帰関数は、直線(21)であることを特徴とする、請求項5に記載の視覚システム。
【請求項7】
前記回帰分析は、前記直線(21)回帰関数の最良の傾きを得る第1の回帰ステップと、該傾きを該第1の回帰ステップで確立された前記最良の傾きに固定されたままにしながら、前記直線(21)回帰関数の最良のオフセットbを得る第2の回帰ステップとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の視覚システム。
【請求項8】
前記視差関連値における前記誤差は、前記回帰関数の視差オフセットbとして計算されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項9】
前記回帰分析において、異なる時点における前記同じ追跡された物体の少なくとも10個のデータ点が使用されることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項10】
前記回帰分析において使用される前記追跡された物体は、別の車両であることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項11】
前記回帰分析で使用される前記データ点は、少なくとも30mの距離範囲にわたり、及び/又は20m〜100mの距離範囲における少なくとも10個の値を含むことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項12】
前記回帰分析において、所定値未満の物体距離に対応するデータ点は破棄されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項13】
幾つかの追跡された車両からの前記回帰分析結果は、結合されて、より正確な系統誤差をもたらすことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の視覚システム。
【請求項14】
一対の撮像装置(12a、12b)を有するステレオ撮像手段(11)によって取り込まれた画像から、自動車の周囲の物体を検出することと、該検出された物体を経時的に追跡することと、該検出され追跡された物体のサイズ関連値及び視差関連値を計算することとを含む、前記自動車用視覚システム(10)を制御する方法であって、
異なる時点に対応する前記追跡された物体の少なくとも5つのデータ点のグループに対して分析を行うことであって、
各データ点は、前記検出された物体のサイズ関連値及び対応する視差関連値を含み、
前記分析は、少なくとも1つの変数を有する所定の回帰関数を用いる回帰分析であり、
前記回帰分析は、前記データ点のグループに対する前記回帰関数の最良一致に対応する変数ごとに最良値をもたらすことと、前記少なくとも1つの最良値から、前記視差関連値及び/又は前記サイズ関連値における系統誤差を計算し、
前記データ処理装置(14)は、前記視差関連値及び/又は前記サイズ関連値における前記系統誤差をスクイント角誤差に変換することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用視覚システムに関し、この視覚システムは、ステレオ撮像手段を形成する一対の撮像装置と、この撮像手段によって取り込まれた画像において物体を検出するように適合された物体検出器、この物体検出器によって検出された物体を経時的に追跡するように適合された追跡器を確立するデータ処理装置とを備え、このデータ処理装置は、検出され追跡された物体のサイズ関連値及び視差関連値を計算するように適合されている。本発明はまた、視覚システムを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ステレオカメラシステムの左カメラと右カメラとの間の、ヨー角としても知られるスクイント角は、高精度で求められなければならず、それは、この角度の誤差により、ステレオ計算において大きい距離推定誤差がもたらされるためである。距離の誤差は、距離の二乗に比例して増大する。例えば、160mm基線長ステレオカメラの場合、0.01度程度に低いスクイント角誤差により、100mの距離で約10mの距離推定誤差が生じる。自動車用ステレオカメラの場合、自動車システムの熱的変化及び長い寿命により、車両寿命にわたってスクイント角が一定とはならない。したがって、スクイント角誤差を推定するオンライン解決法が必要である。
【0003】
基準値としてレーダー又はライダー距離情報を用いてスクイント角誤差を推定することが知られているが、それには、レーダー又はライダー基準システムが必要である。
【0004】
特許文献1は、走行距離計データから求められる基準走行距離を画像処理によって求められる立体走行距離と比較することから、自動車における2つのステレオカメラの間のスクイント角を較正する方法について記載している。しかしながら、基準走行距離を計算するために必要な外部走行距離計データは、スクイント角誤差を求めるための更なる系統的な不確実性の原因となる。
【0005】
特許文献2は、車載物体検出システムのステレオカメラのアライメントを行う方法を開示しており、そこでは、2つの異なる時点における各カメラからの画像を用いて、車両に対する、交通標識のような静止物体の観測される変位が求められる。車両に対する物体の予測された変位もまた、例えば、2つの異なる時点で撮影された画像における物体のサイズの差を用いて求められる。観測された変位及び予測された変位の差に基づいて三角測量補正を求めることを用いて、カメラのミスアライメントが補正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102012009577号
【特許文献2】米国特許出願公開第2014/0168377号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、自動車の運転中にステレオカメラ間のスクイント角誤差を正確に求めることを可能にする、視覚システム及び視覚システムを制御する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、この問題を、独立請求項の特徴によって解決する。本発明によれば、異なる時点に対応する追跡された物体の少なくとも5つのデータ点のグループに対して、少なくとも1つの変数を有する所定の回帰関数を用いる回帰分析が行われる。本明細書では、各データ点は、検出された物体のサイズ関連値と、対応する、すなわち同時点の、視差関連値とを含む。回帰分析は、データ点のグループに対する回帰関数の最良一致又は最良適合に対応する変数ごとに最良値をもたらす。上記視差関連値における及び/又は上記サイズ関連値における系統誤差は、少なくとも1つの最良値から計算される。この系統誤差は、外部走行距離計データ、自車速度又はレーダー若しくはライダー情報のような外部情報に対するいかなる参照もなしに、撮像手段によって撮影された画像データのみから導出される、スクイント角誤差のための基準を提供することができる。
【0009】
本発明は、経時的に追跡される画像における物体からのサイズ情報を使用する。物体のサイズ情報を対応する物体の計算されたステレオ情報(視差又は視差関連情報)とともに用いて、スクイント角誤差、又は明白にそれに関連する系統誤差を推定する。
【0010】
スクイント角誤差の値が明確に必要とされる場合、スクイント角誤差への、視差関連値及び/又はサイズ関連値における求められた系統誤差は、撮像システムの既知の光学パラメーターを用いてスクイント角誤差に容易に変換することができる。
【0011】
例えば、米国特許出願公開第2010/0168377号に記載されている従来技術と比較すると、本発明は、スクイント又はヨー角誤差のはるかにより正確な基準をもたらし、それは、本発明は、2つのデータ点のみではなく、少なくとも5つのデータ点、好ましくは少なくとも10個のデータ点に基づくためである。
【0012】
さらに、本発明は、静止物体の調査に限定されない。好ましくは、上記回帰分析に使用される追跡された物体は、走行中の車両、特に対向車とすることができる別の車両である。回帰分析では、車両以外の物体を使用することができる。
【0013】
好ましくは、回帰分析は、線形回帰分析である。好ましい実施形態では、回帰関数は直線である。本明細書では、以下の要素が有利に使用される。1)完全スクイント角(ゼロスクイント角誤差)では、物体の幅及び視差は無限の距離でともにゼロである。2)完全スクイント角では、距離が半分になると幅は2倍になる。特に、視差関連値が視差値であり、サイズ関連値がサイズ値である場合、理想的な関係は直線である。この場合、視差関連値及び/又はサイズ関連値における系統誤差は、原点、すなわちゼロ視差及びゼロサイズに対する回帰関数のオフセットとして容易に求めることができる。
【0014】
好ましくは、回帰分析は、段階的に行われ、すなわち、回帰関数の第1の変数の最良値を得て、次いで、回帰関数の第2の変数の最良値を得て、以下同様に続く。これは、自動車における限られた処理能力を考慮すると計算的に要求が厳し過ぎる可能性がある、多変量回帰において全ての変数に対する回帰分析を同時に行うより、効果的である可能性がある。
【0015】
特に、回帰関数が直線である場合、回帰分析は、好ましくは、直線回帰関数の最良の傾きを得る第1の回帰ステップと、傾きを第1の回帰ステップで確立された最良の傾きに固定されたままにしながら、直線回帰関数の最良のオフセットを得る第2の回帰ステップとを含む。
【0016】
直線の傾きは追跡された物体の絶対サイズによって決まるため、追跡された物体の絶対サイズが、他の情報源から、例えば、車間通信を通して又は画像処理から既知である場合、有利には、直線回帰関数の最良の傾きを得るステップを不要にすることができる。その場合、回帰分析は、好ましくは、直線回帰関数の最良のオフセットを得るコスト削減の単変量回帰分析になる。
【0017】
回帰分析で使用されるデータ点は、好ましくは、少なくとも30m、より好ましくは少なくとも50m、更により好ましくは少なくとも70mの距離範囲に対応する範囲にわたる。概して、系統誤差を求める際の精度は、回帰分析に考慮されたデータ点の距離範囲が広いほど高くなる可能性がある。それにも関わらず、好ましくは、有利には、5m〜35m、好ましくは10m〜30m、より好ましくは15m〜25mの範囲、例えば20mである可能性がある、所定値未満の物体距離に対応するデータ点は、上記回帰分析では破棄することができ、それは、追跡された物体に対して相対的に近い距離に対応するデータ点は、スクイント角誤差による偏差より優勢である他の原因の偏差の増大を示すためである。
【0018】
好ましい実施形態では、視差関連値は視差値である。別の実施形態では、視差関連値は、例えば、距離値とすることができる。好ましくは、サイズ関連値は、物体サイズ、特に物体幅である。別の実施形態では、サイズ関連値は、例えば、物体高さとすることができる。
【0019】
好ましくは、幾つかの追跡車両からの回帰結果は結合され、より安定しかつ正確な系統誤差値をもたらす。
【0020】
以下、本発明について、添付図面を参照して好ましい実施形態に基づいて例示する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】自動車における視覚システムの概略図である。
【
図2】発明の第1の実施形態における回帰分析を例示する幅に対する視差の図である。
【
図3】発明の第2の実施形態における回帰分析を例示する幅に対する距離の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
視覚システム10は、自動車に搭載され、自動車を包囲する領域、例えば、自動車の正面の領域の画像を収集する撮像手段11を備える。撮像手段11は、ステレオ撮像手段11を形成しかつ可視光線及び/又は赤外線波長範囲で動作する2つの光学撮像装置12a、12b、特にカメラを備え、赤外線は、5ミクロン未満の波長の近赤外線及び/又は5ミクロンを超える波長の遠赤外線を包含する。
【0023】
撮像手段11は、撮像手段11から受け取られる画像データをデータ処理するデータ処理装置14に結合されている。データ処理装置14は、有利には、本技術分野において本質的に既知である前処理部13を備え、前処理部13は、撮像手段11による画像の取込みを制御し、撮像手段11から画像情報を含む電気信号を受け取り、左/右画像の対をゆがめてアライメントを行い、及び/又は視差画像を作成するように適合される。画像前処理部13は、専用ハードウェア回路、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)によって具現化することができる。代替的に、前処理部13又はその機能の一部は、マイクロプロセッサにおいて具現化することができる。
【0024】
データ処理装置14では、対応するソフトウェアにより、更なる画像及びデータ処理が実行される。特に、データ処理装置14は、歩行者、他の車両、自転車に乗る人及び/又は大型動物等、自動車の正面におけるあり得る物体を特定し好ましくは分類も行うように適合された物体検出部15と、物体検出部15によって特定された記録画像における物体候補の位置を経時的に追跡するように適合された追跡部16と、追跡された物体の衝突可能性を推定し、かつ推定された衝突可能性に応じて、少なくとも1つの運転者支援装置18、19を作動させるか又は制御するように適合された推定及び判断部17とを備える。運転者支援装置18は、特に、検出された物体に関する情報を表示する表示装置18を備えることができる。しかしながら、本発明は、表示装置18に限定されない。運転者支援装置18、19は、さらに又は代替的に、好適な光学的、音響的及び/又は触覚的な警告信号によって運転者に衝突警告を提供するように適合された警告手段、乗員エアバッグ又は安全ベルトテンショナー、歩行者エアバッグ、フードリフター等の1つ以上の拘束システム、及び/又はブレーキ若しくはステアリング手段等の力学的車両制御システムを含むことができる。データ処理装置14は、メモリデバイス25にアクセスすることができる。
【0025】
データ処理装置14は、好ましくは、プログラムされるか又はプログラム可能であり、好都合には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラー又はデジタル信号プロセッサ(DSP)を備える、デジタルデバイスである。データ処理装置14及びメモリデバイス25は、好ましくは、車載電子制御ユニット(ECU)として具現化され、別個のケーブル又は車両データバスを介して撮像手段11に接続することができる。別の実施形態では、ECU及び撮像装置12のうちの1つ以上は、単一ユニットに一体化することができ、そこでは、ECU及び全ての撮像装置12を含むワンボックス型ソリューションが好ましい可能性がある。撮像、画像前処理、画像処理から、運転者支援装置18のあり得る作動又は制御、及び/又は回帰分析までの全てのステップは、運転中リアルタイムに、自動的にかつ連続的に行われる。
【0026】
本発明によれば、データ処理装置14は、分析部20を備える。以下では、分析部20で実行される回帰分析について詳細に説明する。
【0027】
回帰分析を実行するために、分析部20は、少なくとも5つ、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも20個、更により好ましくは少なくとも30個のデータ点を必要とする。本明細書では、各データ点は、物体検出部15によって検出されかつ追跡部16によって追跡される全く同一の物体の異なる画像、又は画像フレームから抽出されている。回帰分析に使用される物体は、好ましくは、他の(対向及び/又は先行)自動車である。各データ点は、好ましくは、2つの関連する値(2つ又は二つ組)、すなわち、視差関連値及び対応するサイズ関連値からなり、データ点の両方の値は、全く同一の画像フレームから計算される。検出され追跡される物体のデータ点は、分析部20によって後に使用するためにメモリ25に格納することができる。
【0028】
好ましい実施形態における回帰分析の実際的な例を
図2に示す。ここでは、撮像手段によって撮影された画像において物体検出部15によって検出された5つの異なる車両(ID67、ID178、ID190、ID198、ID216)の複数のデータ点を示す。この実施形態では、視差関連値は、検出された他の車両の視差であり、サイズ関連値は、検出された他の車両の幅である。検出された他の車両の幅(一般に、サイズ)及び視差を求める画像処理方法は、当業者には既知であり、本明細書では記載しない。概して、例えば物体検出部15において、各画像に対し、ピクセルでの物体幅が求められ、例えば前処理部13において、ステレオ計算から対応する視差値が得られる。この応用では、視差は、通常通り、ピクセルでの焦点距離とステレオ撮像手段の基線長とを乗算して物体までの距離で除算した値として定義される。
【0029】
図2に示す図では、x軸は、他の車両の幅wをピクセルで示し、y軸は、他の車両の視差dをピクセルで示す。
図2に示すデータ点及び線のグラフ表現は、単によりよく理解されるためのものであり、車両の車載視覚システム10では、データ点自体のみが格納され処理される、ということが理解されるべきである。
【0030】
図2では、5つの異なる検出され追跡された他の車両に対するデータ点が示されている。ID178の車両では、約100mの距離に対応する20ピクセルの車両幅の周囲の数個のデータ点のみが入手可能である。ID67、ID198、ID216の車両では、約35m〜100mの車両距離に対応する、20ピクセル〜50ピクセルの幅範囲で、複数のデータ点が入手可能である。以下の回帰分析では、ID67、ID178、ID198、ID216の車両のデータ点は破棄される。
【0031】
ID190の他の車両のデータ点は、20m〜100mの距離範囲に少なくとも10個の値を含み、約15m〜約100m、すなわち、70mを超える車両距離に対応する、20ピクセル〜130ピクセルの幅範囲にわたる。上記基準及び/又は他の適した基準のうちの1つ以上に基づいて、分析部20は、ID190の車両のデータセットを回帰分析に適しているものとして判断する。
【0032】
回帰関数の当てはめを開始する前に、検出され追跡された物体の入手可能なデータ点全てのサブセットを選択することができ、それにより、所定閾値未満の物体距離、又は所定閾値を超える物体幅に対応するデータ点が破棄される。本場合では、80ピクセルを超える物体幅又は20m未満の物体距離に対応するデータ点が破棄され、それは、幅の広い領域におけるデータ点は、スクイント角誤差以外の理由で大きい変動を示すことが示されているためである。
【0033】
回帰分析は、ID190の車両のデータ点に直線を当てはめることを含む。直線は、2つの変数、すなわち、傾き及びオフセットによって求められるため、これは、2つの変数に対する最良値を同時にもたらす2変量回帰分析によって行うことができる。しかしながら、好ましくは、回帰分析は、幾つかの単変量回帰ステップで行われ、そこでは、各回帰ステップが変数に対する1つの最良値をもたらし、すなわち、パラメーターに対する最良値は、交互に得られる。
【0034】
本場合では、特に、回帰分析は、好ましくは、直線回帰関数の最良の傾きを得る第1の回帰ステップと、傾きを第1の回帰ステップで確立された最良の傾きに固定されたままにしながら、上記直線回帰関数の最良のオフセットを得る第2の回帰ステップとを含む。
【0035】
直線回帰関数の最良の傾きを得る第1の回帰ステップは、任意の適した方法で行うことができる。好ましい実施形態では、データ点の対を直線によって接続し、これらの直線の個々の傾きの平均値又は中央値を、回帰直線の傾きに対する最良の値として取得する。
【0036】
第2のステップでは、傾きが第1のステップからの最良の値に固定された直線を、費用関数、例えば、二乗誤差が最小になるまで、データ点に沿ってシフトさせる。第2のステップに対して、好ましくは、第1のステップで使用されたデータ点のサブセットを選択することができ、それにより、所定閾値を超える幅を有するデータ点が好ましくは破棄される。本場合では、第2のステップで、35m未満の距離に対応する50ピクセルを超える幅を有するデータ点が破棄される。
【0037】
結果としての最良適合直線回帰関数21を、
図2の図に示す。最良適合直線回帰関数21が、y=a・x+bとして表される場合、最良適合回帰関数のyオフセットbは、最良適合直線回帰関数21のy軸との交点の原点(0,0)までの距離に対応する。車載視覚システム10では、オフセットbは、上述したようにグラフによって求められず、回帰分析から直接取得されることが理解されるべきである。
【0038】
求められたオフセットbは、スクイント角誤差の基準である。分析部20は、系統視差誤差bを度、光点又は他の任意の適した単位でスクイント角誤差に変換することができるが、これは必須ではなく、それは、視差誤差bを直接処理することが可能であるためである。
【0039】
好ましくは、1つの車両(ここでは、ID190)のみの回帰分析からの系統誤差値bが使用されるのではなく、誤差判断の安定性及び精度を上昇させるために、好ましくは、いくつかの追跡車両からの回帰結果が経時的に、例えばフィルターを用いて結合される。
【0040】
求められた視差誤差bに基づいて、データ処理装置14によって、適した動作を行うことができる。特に、求められた視差誤差b、又はそこから導出されるスクイント角誤差は、前処理部13において、スクイント角誤差に対して撮像手段11からの画像データを補正するために使用することができる。求められた視差誤差bの他の応用が可能である。
【0041】
視差誤差b以外の値もまた、スクイント角誤差の基準を提供する。例えば、
図2に示す例では、最良適合直線回帰関数21のx軸との交差点の絶対距離により、幅誤差b/aがもたらされ、bの代わりにそれを考慮することができる。概して、スクイント角誤差に明白に関連する任意の誤差値を使用することができる。
【0042】
物体幅の代わりに、他の物体サイズ関連値、例えば、物体高さ、物体面積又は物体面積の累乗根を用いることができる。
【0043】
図3に示す図では、x軸は、他の車両の幅wをピクセルで示し、y軸は、他の車両の距離Dをメートルで示す。これは、本発明の視差関連値が視差でなくてもよく、例えば距離Dのように、検出された物体の視差に明白に関連する任意の大きさとすることができることを例証している。
図3から、距離対幅の関数関係は直線ではないことが明らかである。したがって、
図3の実施形態では、回帰分析において、双曲線関数y=1/(a・x+b)のような適切な回帰関数22が使用され、ここで、bはスクイント角誤差の基準である。
【0044】
スクイント角誤差に加えて、回帰分析は、使用されるデータ点の数、平均車両幅等のような1つ以上の異なる重み関数に基づいて、スクイント角誤差に対する信頼値ももたらすことができる。