特許第6564130号(P6564130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564130
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年9月4日
(54)【発明の名称】冷却ファン装置
(51)【国際特許分類】
   F01P 11/10 20060101AFI20190826BHJP
【FI】
   F01P11/10 E
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-509118(P2018-509118)
(86)(22)【出願日】2017年3月22日
(86)【国際出願番号】JP2017011429
(87)【国際公開番号】WO2017170029
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年8月27日
(31)【優先権主張番号】特願2016-67288(P2016-67288)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 秀岳
(72)【発明者】
【氏名】藤井 智成
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 広紀
【審査官】 小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−129589(JP,U)
【文献】 実開昭61−043929(JP,U)
【文献】 特開平09−144540(JP,A)
【文献】 実開平03−037234(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0217907(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/04
F01P 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に取り付けられ、ファンの回転により、車両の前部に配された熱交換器を通過する強制冷却風を発生する冷却ファン装置において、
中央に前記ファンが配置される円形開口部を有すると共に、前記熱交換器の通風面の大平を覆うことで、前記ファンの周囲と前記熱交換器との間を塞ぐ覆い壁と、
前記覆い壁の外側に設けられ、該覆い壁を前記車両に固定するための取付部と、
前記ファンと前記取付部との間に位置し、前記車両の走行に伴って前方から後方へ流れる走行風の自由な通過を許容する素通しフレーム部と、
を有するファンシュラウドと、
前記ファンシュラウドの前記円形開口部の中央で、且つ前記覆い壁よりも前記車両の進行方向後方に、複数のステーを介して支持されているモータと、
を備え、
前記素通しフレーム部に、前記走行風を所定の方向に誘導する偏向ルーバーが設けられ、
前記偏向ルーバーが、走行風を誘導する向きを任意に変更可能に設けられ、
前記偏向ルーバーによって誘導された前記走行風の流れの向きは、少なくとも前記モータの周辺を含む前記ファンシュラウドの前記円形開口部の中央方向である冷却ファン装置。
【請求項3】
前記偏向ルーバーは、
板状に形成されており、
且つ前記車両の進行方向に沿う断面形状が、前記進行方向前方で前記進行方向に沿うように延出されると共に、前記進行方向途中から前記進行方向と交差する方向に沿うように屈曲延出されるように形成されている請求項1に記載の冷却ファン装置。
【請求項4】
前記偏向ルーバーは、
板状に形成されており、
且つ前記車両の進行方向に沿う断面形状において、最大肉厚が前記進行方向中央よりも前記進行方向前方に設定されており、前記最大肉厚から前記進行方向前方と後方とに向かうにしたがって漸次肉厚が薄くなるように形成されている請求項1に記載の冷却ファン装置。
【請求項5】
前記素通しフレーム部が、前記熱交換器の通風面と対向する箇所に設けられている請求項1,3,4のいずれか1項に記載の冷却ファン装置。
【請求項6】
前記素通しフレーム部が、内側に前記走行風の通過を許す開口を備える枠形に形成され、
前記開口に、該開口を横断するように補強用リブが配設され、
前記補強用リブの少なくとも一部が、前記開口を通過する前記走行風を所定の方向に誘導する前記偏向ルーバーとして構成されている請求項1,3〜5のいずれか1項に記載の冷却ファン装置。
【請求項7】
複数の前記補強用リブに囲まれた部分の一部及び、前記素通しフレームの外周フレーム部と複数の前記補強用リブとに囲まれた部分の一部に、強度補強用板部が設けられている請求項6に記載の冷却ファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータ等の冷却ファン装置に関するものである。
本願は、2016年3月30日に、日本に出願された特願2016−067288号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
一般的な車両では、車室前方にエンジンルームが設けられている。そして、エンジンルーム内にエンジンが搭載され、エンジンの前端部に、ラジエータやコンデンサ等の車載熱交換器が配置されている。さらに、これら車載熱交換器の通風面に対向させて、車載熱交換器に強制的に冷却風を流通させる冷却ファン装置が設けられている。
【0003】
冷却ファン装置は、ファンの回転により、ラジエータ等の熱交換器を通過する強制冷却風を発生するものである。冷却ファン装置は、ファンの他に、ファンを駆動するモータと、ファンシュラウドと、を備えている。ファンシュラウドは、ラジエータ等の熱交換器を覆うような構造であり、中央にファン及びモータが配置される円形開口部を有している。また、円形開口部の周囲は、熱交換器の通風面の大半を覆う覆い壁とされており、この覆い壁で、ファンの周囲とラジエータとの間を塞いでいる。
【0004】
従来のファンシュラウドでは、車両の円形開口部に対応するラジエータ部分のほとんどを覆い壁で覆っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−106802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そのため、冷却ファン装置がONの時(以下「ファンON時」という)には問題ないが、冷却ファン装置がOFFの時(以下「ファンOFF時」という)に、走行風の通りが悪くなる部分が生じる可能性があった。
【0007】
すなわち、中高速走行中にはファンOFFとし、走行風だけでラジエータ等の熱交換器の冷却が行われるが、そのときに、ファンシュラウドが壁となり、走行風の抜けが悪くなって、冷やしたい箇所(インタークーラー等)を有効に冷やすことができず、冷却効果が悪くなる可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、走行時の風抜けを阻害せずに、風抜けによる必要箇所の冷却効果を高めることのできる冷却ファン装置のファンシュラウドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の第1の態様によれば、冷却ファン装置のファンシュラウドは、車両に取り付けられ、ファンの回転により、車両の前部に配された熱交換器を通過する強制冷却風を発生する冷却ファン装置のファンシュラウドにおいて、中央に前記ファンが配置される円形開口部を有すると共に、前記熱交換器の通風面の大半を覆うことで、前記ファンの周囲と前記熱交換器との間を塞ぐ覆い壁と、前記覆い壁の外側に設けられ、該覆い壁を前記車両に固定するための取付部と、前記ファンと前記取付部との間に位置し、前記車両の走行に伴って前方から後方へ流れる走行風の自由な通過を許容する素通しフレーム部と、を備え、前記素通しフレーム部に、前記走行風を所定の方向に誘導する偏向ルーバーが設けられている。
【0010】
この構成によれば、覆い壁の外側に、走行風の自由な流通を許容する素通しフレーム部を設けているので、ファンOFF時にも、走行風の吹き抜けにより、必要箇所へ十分な量の風を送ることができ、冷却効果を高めることができる。しかも、素通しフレーム部に偏向ルーバーを設けているので、偏向ルーバーの位置や向きの設定により、走行風の流れ方向をコントロールすることができる。
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様に係る冷却ファン装置のファンシュラウドにおいて、前記偏向ルーバーが、走行風を誘導する向きを変更可能に設けられている。
【0013】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様に係る冷却ファン装置のファンシュラウドにおいて、前記偏向ルーバーは、板状に形成されており、且つ前記車両の進行方向に沿う断面形状が、前記進行方向前方で前記進行方向に沿うように延出されると共に、前記進行方向途中から前記進行方向と交差する方向に沿うように屈曲延出されるように形成されている。
【0014】
この構成によれば、走行風が素通しフレーム部を通り抜ける際、素通しフレーム部の進行方向前方において、素通しフレーム部内に走行風をスムーズに取り込むことができる。
ここで、偏向ルーバーを単なる平坦な板状とし、進行方向に対して交差する方向に沿って配置したとする。このような場合、素通しフレーム部の進行方向前方において、偏向ルーバーに走行風が衝突し、乱流(渦流)が発生してしまう。乱流が発生すると、素通しフレーム部内での走行風の通り抜け性が悪化してしまう。
【0015】
しかしながら、上記のように偏向ルーバーを屈曲形成することにより、素通しフレーム部の進行方向前方での乱流の発生を抑制できる。このため、素通しフレーム部内での走行風の通り抜け性が向上され、素通しフレーム部を通りぬける走行風の風量も増大させることができる。この結果、冷却ファン装置の冷却効果を高めることができる。
【0016】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第1の態様に係る冷却ファン装置のファンシュラウドにおいて、前記偏向ルーバーは、板状に形成されており、且つ前記車両の進行方向に沿う断面形状において、最大肉厚が前記進行方向中央よりも前記進行方向前方に設定されており、前記最大肉厚から前記進行方向前方と後方とに向かうにしたがって漸次肉厚が薄くなるように形成されている。
【0017】
ここで、偏向ルーバーを、肉厚が均一な単に平坦な板状とした場合、走行風が偏向ルーバーを通り抜ける際、偏向ルーバーの進行方向後方において、乱流が発生し易くなってしまう。
しかしながら、上記のように偏向ルーバーに肉厚を変化させることにより、偏向ルーバーの進行方向後方において、走行風の通り抜けによる乱流の発生を抑制できる。このため、素通しフレーム部内での走行風の通り抜け性が向上され、素通しフレーム部を通りぬける走行風の風量も増大させることができる。
【0018】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1の態様から第4の態様の何れか一の態様に係る冷却ファン装置のファンシュラウドにおいて、前記素通しフレーム部が、前記熱交換器の通風面と対向する箇所に設けられている。
【0019】
この構成によれば、素通しフレーム部が熱交換器の通風面に対向する箇所に設けられているので、ファンOFF時の風抜けにより、熱交換器の冷却性能の向上が図れる。
【0020】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第1の態様から第5の態様の何れか一の態様に係る冷却ファン装置のファンシュラウドにおいて、前記素通しフレーム部が、内側に前記走行風の通過を許す開口を備える枠形に形成され、前記開口に、該開口を横断するように補強用リブが配設され、前記補強用リブの少なくとも一部が、前記開口を通過する前記走行風を所定の方向に誘導する前記偏向ルーバーとして構成されている。
【0021】
この構成によれば、枠形に形成された素通しフレーム部の強度アップを図りながら、ファンOFF時の風抜けの向上が図れる。
【0022】
本発明の第7の態様によれば、本発明の第6の態様に係る冷却ファン装置のファンシュラウドにおいて、複数の前記補強用リブに囲まれた部分の一部及び、前記素通しフレームの外周フレーム部と複数の前記補強用リブとに囲まれた部分の一部に、強度補強用板部が設けられている。
【0023】
この構成によれば、強度補強用板部によって、ファンシュラウドの剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0024】
上記の冷却ファン装置のファンシュラウドによれば、ファンOFF時にも、走行風の吹き抜けにより、必要箇所へ十分な量の風を送ることができ、冷却効果を高めることができる。しかも、偏向ルーバーの位置や向きの設定により、走行風の流れ方向をコントロールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態におけるファンシュラウドを備えた冷却ファン装置の正面図である。
図2】本発明の実施形態における冷却ファン装置の風抜け作用の説明図である。
図3】本発明の実施形態における冷却ファン装置の偏向ルーバーの構成及び作用説明図である。
図4】本発明の実施形態における冷却ファン装置のファンシュラウドの内側から見た斜視図である。
図5】本発明の実施形態における冷却ファン装置を備える車両のエンジンルームの構造を例示する斜視図である。
図6】従来のルーバーを示す図である。
図7】本発明の実施形態の変形例における偏向ルーバーを示す進行方向及び鉛直方向に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明に係るファンシュラウド10を備えた冷却ファン装置110の正面図、図2は、冷却ファン装置110における風抜け作用の説明図、図3は、冷却ファン装置110における偏向ルーバー20の構成及び作用説明図、図4は、ファンシュラウド10の内側から見た斜視図、図5は、冷却ファン装置110を備える車両100のエンジンルーム101の構造を例示する斜視図である。
ここで、冷却ファン装置110は、車両のラジエータやコンデンサ等の車載熱交換器102を冷却するために用いられる。
【0028】
(車両における冷却ファン装置の配置)
まず、図5を用いて、冷却ファン装置1A、1Bが搭載された車両100について述べる。
この車両100では、車室前方のエンジンルーム101内にエンジン105が搭載され、エンジン105の前方に、車載熱交換器102が搭載されている。そして、車載熱交換器102の通風面に対向して、車載熱交換器102に対し強制冷却風を流通させる冷却ファン装置110(1A、1B)が設けられている。
【0029】
なお、以下の説明において、車両100の進行方向前方を単に進行方向前方、車両100の進行方向後方を単に進行方向後方、と称して説明する場合がある。また、以下の説明において、走行風F(図5も併せて参照)とは、車両100が進行方向前方に向かって走行する際に発生する風をいい、走行風Fの風向きは進行方向前方から進行方向後方に向かう方向になる。
【0030】
(冷却ファン装置)
図1に示す例では、ラジエータやコンデンサ等の熱交換器(不図示)が2つ横に並んでいる場合に対応して、2つの冷却ファン装置1A、1Bが横並びで配置されている。これら2つの冷却ファン装置1A、1Bは、一部を除いて構成がほぼ同じものである。これら冷却ファン装置1A、1Bは、ファン30の回転により、ラジエータ等の熱交換器を通過する強制冷却風を発生するものである。冷却ファン装置1A、1Bは、ファン30の他に、ファン30を駆動するモータ40と、ファンシュラウド10と、を備えている。
【0031】
(ファンシュラウド)
ファンシュラウド10は、ラジエータ等の熱交換器を覆うような構造の樹脂成形品であり、中央にファン30及びモータ40が配置される円形開口部13を有している。また、円形開口部13の周囲は、熱交換器の通風面の大半を覆う大きさの覆い壁12とされており、この覆い壁12で、ファン30の周囲と熱交換器との間を塞ぐ。
【0032】
図3を主に参照してファンシュラウド10の構成について詳しく述べる。
このファンシュラウド10は、外周輪郭に沿った帯板状の外枠部11を有している。外枠部11は、軸線方向から見た形状が略四角形状をなしており、下辺だけが下側に凸の円弧状に形成されている。その外枠部11の内側に、中央に円形開口部13を有した覆い壁12が設けられている。つまり、覆い壁12の外周縁に軸線方向への帯板状の折り曲げ片を連設することで、下辺だけが円弧状になった略四角形状の外枠部11が構成されている。詳細には、上辺部11aと、左右側辺部11b、11cと、円弧状に下方に凸に湾曲した下辺部11dとにより、外枠部11が構成されている。
【0033】
また、覆い壁12の円形開口部13の中央には、環状のモータ取付枠14が設けられている。この環状のモータ取付枠14は、複数のステー14aを介して、覆い壁12の円形開口部13の中央に支持されている。複数のステー14aは、モータ取付枠14の外周から放射状に延び、覆い壁12の円形開口部13の周縁部に先端が結合されている。このようなモータ取付枠14に、モータ40が取り付けられる。
【0034】
(覆い壁及び素通しフレーム部)
覆い壁12は、熱交換器の通風面の大半を覆うことで、ファン30の周囲と熱交換器との間を塞ぐ壁板に相当する部分である。覆い壁12は、その覆い壁12の下側に、車両の走行に伴って前方から後方へ流れる走行風Fの自由な通過を許容する素通しフレーム部15が設けられている。素通しフレーム部15は、覆い壁12の外周縁に位置する外枠部11の外側に配置されている。
【0035】
素通しフレーム部15は、走行風Fの通過を許容する開口17を内側に画成する矩形枠形の外周フレーム16と、外周フレーム16の開口17に該開口17を横断するように設けられた縦横桟状の補強用リブ19と、を備えている。外枠部11の上端部と外周フレーム16の下端部には、ファンシュラウド10を車両に固定するための複数の取付部18a、18bが設けられている。これにより、素通しフレーム部15は、ファン30と、取付部18bとの間に位置した状態になる。また、この素通しフレーム部15は、車両前部の開口に対応する位置、特に熱交換器の通風面と対向する位置に設けられている。
【0036】
また、補強用リブ19の少なくとも一部には、図4に示すように、素通しフレーム部15の開口17を通過する走行風Fを所定の方向に誘導する偏向ルーバー20として構成されている。
【0037】
偏向ルーバー20は、板状に形成されている。また、偏向ルーバー20は、進行方向及び鉛直方向に沿う断面において、以下のように形成されている。すなわち、偏向ルーバー20は、進行方向略中央よりも前方側が、進行方向に沿うように延出された第1ルーバー部20aとされている。また、偏向ルーバー20は、進行方向略中央よりも後方が、進行方向と交差する方向に沿うように屈曲延出された第2ルーバー部20bとされている。そして、偏向ルーバー20は、第1ルーバー部20aと第2ルーバー部20bとが一体成形されてなる。
【0038】
また、図1に示すように、素通しフレーム部15には、補強用リブ19に囲まれた部分のうち、鉛直方向下部に位置する箇所に、強度補強用板部21が一体成形されている。さらに、素通しフレーム部15には、外周フレーム16と補強用リブ19とに囲まれた部分の任意の箇所に、強度補強用板部22が一体成形されている。より具体的には、強度補強用板部22は、外周フレーム16と補強用リブ19とに囲まれた部分のうち、鉛直方向下部と、この下部よりもやや上側と、に配置されている。
【0039】
このように、上述の実施形態におけるファンシュラウド10は、覆い壁12の外側に、走行風Fの自由な流通を許す素通しフレーム部15を設けている。このため、ファンOFF時にも、走行風Fの吹き抜けにより、必要箇所(例えば、インタークーラー等)へ多量の風を送ることができる。そのため、冷却効果を高めることができる。しかも、素通しフレーム部15に偏向ルーバー20の機能を持たせた補強用リブ19を設けているので、偏向ルーバー20として機能する補強用リブ19の位置や向きを変えることにより、走行風Fの流れ方向をコントロールすることができ、冷やしたい箇所(例えば、バッテリー周辺やモータ周辺等)を効果的に冷却することができる。
【0040】
また、偏向ルーバー20は、板状に形成されている。さらに、偏向ルーバー20は、進行方向及び鉛直方向に沿う断面において、進行方向略中央よりも前方側が、進行方向に沿うように延出された第1ルーバー部20aとされている。また、偏向ルーバー20は、進行方向略中央よりも後方が、進行方向と交差する方向に沿うように屈曲延出された第2ルーバー部20bとされている。
このため、走行風Fが素通しフレーム部15を通り抜ける際、素通しフレーム部15の進行方向前方において、素通しフレーム部15内に走行風Fをスムーズに取り込むことができる。このことについて、以下、詳述する。
【0041】
図6は、偏向ルーバー20の効果を説明するための従来の一例のルーバー200を示す図であって、前述の図4に対応している。
同図に示すように、従来のように単なる平坦な板状のルーバー200を進行方向に対して交差する方向に沿って配置したとする。このような場合、ルーバー200の進行方向前方において、このルーバー200に走行風Fが衝突し、さらに、走行風Fのルーバー200からの剥離も促進されてしまう。この結果、乱流(渦流)Wが発生してしまう。乱流Wが発生すると、素通しフレーム部15内での走行風Fの通り抜け性が悪化してしまう。
【0042】
これに対し、図4に示すように、上述の実施形態の偏向ルーバー20は、第1ルーバー部20aと第2ルーバー部20bとにより屈曲形成されている。しかも、第1ルーバー部20aは、進行方向に沿うように延出されているので、第1ルーバー部20aに走行風Fが衝突することがない。このため、第1ルーバー部20aの進行方向前方での乱流Wの発生を抑制できる。この結果、素通しフレーム部15内に走行風Fをスムーズに取り込むことができ、素通しフレーム部15内での走行風Fの通り抜け性を向上できる。また、素通しフレーム部15を通りぬける走行風Fの風量も増大させることができる。よって、冷やしたい箇所(例えば、バッテリー周辺やモータ周辺等)を効果的に冷却することができる。
【0043】
また、上述の実施形態のように、素通しフレーム部15が、ラジエータ等の熱交換器の通風面と対向する箇所に設けられている場合には、ファンOFF時の風抜けにより、熱交換器自体の冷却性能の向上も図れる。
【0044】
さらに、補強用リブ19を素通しフレーム部15の開口17に設けていることにより、素通しフレーム部15の強度アップを図りながら、ファンOFF時の開口17を通した風抜けの向上が図れる。
【0045】
また、素通しフレーム部15には、補強用リブ19に囲まれた部分のうち、鉛直方向下部に位置する箇所に、強度補強用板部21が一体成形されている。さらに、素通しフレーム部15には、外周フレーム16と補強用リブ19とに囲まれた部分の任意の箇所に、強度補強用板部22が一体成形されている。このため、強度補強用板部21,22によって、ファンシュラウド10の剛性を高めることができる。また、強度補強用板部21,22には、モータ40への給電及び制御用の配線(不図示)を配策するための配策部としての機能を持たせてもよい。
【0046】
(変形例)
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、偏向ルーバー20の向きを軸線方向にストレートに設定することも可能である。
【0047】
また、上述の実施形態の偏向ルーバー20を、補強用リブ19とは別に設けてもよいし、偏向ルーバー20の向きを変更できるように設けてもよい。偏向ルーバー20の向きを変えられるようにした場合は、偏向ルーバー20の向きの調整により、素通しフレーム部15を通り抜ける走行風を例えば、エンジンルーム内の温度を下げるために車両下部へ誘導する等、必要な方向へ効率よく誘導することができる。
【0048】
さらに、上述の実施形態では、素通しフレーム部15には、補強用リブ19に囲まれた部分のうち、鉛直方向下部に位置する箇所に、強度補強用板部21が一体成形されている。また、素通しフレーム部15には、外周フレーム16と補強用リブ19とに囲まれた部分のうち、鉛直方向下部と、この下部よりもやや上側と、に強度補強用板部22が形成されている場合について説明した。しかしながら、2つの強度補強用板部21,22のうち、少なくとも一方が形成されていればよい。また、補強用リブ19に囲まれた部分の任意の箇所に、強度補強用板部21を形成することが可能である。さらに、外周フレーム16と補強用リブ19とに囲まれた部分の任意の箇所に、強度補強用板部22を形成することが可能である。また、2つの強度補強用板部21,22には、モータ40への給電及び制御用の配線(不図示)を配策するための配策部としての機能を持たせてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、偏向ルーバー20は板状に形成されており、第1ルーバー部20aと第2ルーバー部20bとにより屈曲形成されている場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、偏向ルーバー20を以下のように構成してもよい。
【0050】
図7は、偏向ルーバー20の変形例を示す、進行方向及び鉛直方向に沿う断面図である。
同図に示すように、偏向ルーバー20の肉厚を変化させてもよい。すなわち、偏向ルーバー20を、進行方向に沿う断面形状において、最大肉厚Tmaxが進行方向中央よりも進行方向前方に設定してもよい。この場合、偏向ルーバー20は、進行方向に沿う断面形状において、最大肉厚Tmaxから進行方向前方と後方とに向かうにしたがって漸次肉厚が薄くなるように形成される。
【0051】
このように構成した場合、走行風Fが偏向ルーバー20を通過する際、翼上面20cや翼下面20d上を走行風Fが滑らかに通過する。そして、翼上面20cや翼下面20dの進行方向の途中で走行風Fが剥離して乱流が発生してしまうことが抑制される。つまり、偏向ルーバー20の進行方向後方での乱流の発生を抑制できる。この結果、素通しフレーム部15内での走行風Fの通り抜け性を向上でき、素通しフレーム部15を通りぬける走行風Fの風量も増大させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上記の冷却ファン装置のファンシュラウドによれば、ファンOFF時にも、走行風の吹き抜けにより、必要箇所へ十分な量の風を送ることができ、冷却効果を高めることができる。しかも、偏向ルーバーの位置や向きの設定により、走行風の流れ方向をコントロールすることができる。
【符号の説明】
【0053】
1A,1B…冷却ファン装置
10…ファンシュラウド
12…覆い壁
13…円形開口部
15…素通しフレーム部
17…開口
18a,18b…取付部
19…補強用リブ(偏向ルーバー)
20…偏向ルーバー
20a…第1ルーバー部
20b…第2ルーバー部
21,22…強度補強用板部
100…車両
102…熱交換器
110…冷却ファン装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7