(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564141
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】合成樹脂製キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 41/34 20060101AFI20190808BHJP
【FI】
B65D41/34
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-531803(P2018-531803)
(86)(22)【出願日】2017年7月11日
(86)【国際出願番号】JP2017025227
(87)【国際公開番号】WO2018025593
(87)【国際公開日】20180208
【審査請求日】2019年4月8日
(31)【優先権主張番号】特願2016-153554(P2016-153554)
(32)【優先日】2016年8月4日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】川村 伸生
(72)【発明者】
【氏名】小野 淳史
(72)【発明者】
【氏名】梅木 慎吾
【審査官】
二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−036081(JP,A)
【文献】
特表2007−501169(JP,A)
【文献】
特開2016−016900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44 − 35/54
B65D 39/00 − 55/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結されたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、
前記タンパーエビデンスバンドの内周側に、前記容器口部の外周に設けられた環状突起に下方から係止可能なフックが周方向に間隔をおいて複数設けられ、
また、前記タンパーエビデンスバンドの内周側において、前記フックの上方には該タンパーエビデンスバンドの内側に突出する突出部が連なり、該突出部の下部には前記環状突起の外周面に当接する当接部が設けられ、該当接部は、その上下幅が該当接部を含む前記突出部全体の上下幅の3分の1〜3分の2を占め、前記突出部の内周面から前記フックの上面に向かって、20度以上の勾配で内径が小さくなるように延び、
さらに、前記突出部の内周面における前記当接部の上方には、前記環状突起の外径より大である一定の内径を保ちつつ上側に向かって延びる部位が連なっていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記タンパーエビデンスバンドの内周側において、前記突出部の上方に、該突出部よりも該タンパーエビデンスバンドの内側に突出し、前記容器口部の外周面に接触する突起が設けられている請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、飲料物等の内容物を収容する容器の口部に装着される合成樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料物等の内容物を収容する容器の口部に装着されるキャップとして、一目で開封の有無を確認可能に構成されたものが広く用いられている。このようなキャップとして、容器口部の雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁を有するキャップ本体と、スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結されたタンパーエビデンスバンドとを具備するものが知られている。
【0003】
上記従来のキャップでは、容器口部に装着された状態からの開封操作(最初の開栓操作)に伴い、タンパーエビデンスバンドの内周に設けられたフック(係止手段)が容器口部の外周に設けられた環状突起(係止あご部)に係止した後、タンパーエビデンスバンドとスカート壁とを画するミシン目状のスリット間に形成されたブリッジ(橋絡部)が破断され、キャップ本体とタンパーエビデンスバンドとが互いに分離される(特許文献1参照)。従って、環状弱化部を構成するブリッジの破断の有無を視認することにより、開封操作が行われたか否かを容易に確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5554574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されたキャップでは、タンパーエビデンスバンドの内周面におけるフックの上方に、環状突起の外径より小さい内径を有し、上下方向に0.3〜0.7mm延びる嵌合下部を設けてあるため、容器口部に装着された状態のキャップを開封する際に、キャップ本体のがたつきを防止し、ひいてはブリッジが破断せずにキャップ本体が容器口部から外れる所謂すっぽ抜けをも防ぐことができ、タンパーエビデンス性が良好となる反面、開封に必要なトルクが増大し、開封が困難化する恐れがある。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、タンパーエビデンス性を良好としつつ、開栓トルクの増大をも抑えることのできる合成樹脂製キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る合成樹脂製キャップは、容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結されたタンパーエビデンスバンドとを具備したキャップであって、前記タンパーエビデンスバンドの内周側に、前記容器口部の外周に設けられた環状突起に下方から係止可能なフックが周方向に間隔をおいて複数設けられ、また、前記タンパーエビデンスバンドの内周側において、前記フックの上方には該タンパーエビデンスバンドの内側に突出する突出部が連なり、該突出部の下部には
前記環状突起の外周面に当接する当接部が設けられ、該当接部は、
その上下幅が該当接部を含む前記突出部全体の上下幅の3分の1〜3分の2を占め、前記突出部の内周面から前記フックの上面に向かって、20度以上の勾配で内径が小さくなるように延び
、さらに、前記突出部の内周面における前記当接部の上方には、前記環状突起の外径より大である一定の内径を保ちつつ上側に向かって延びる部位が連なっている(請求項1)。
【0008】
上記合成樹脂製キャップが、前記タンパーエビデンスバンドの内周側において、前記突出部の上方に、該突出部よりも該タンパーエビデンスバンドの内側に突出し、前記容器口部の外周面に接触する突起を有していてもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0009】
本願発明では、タンパーエビデンス性を良好としつつ、開栓トルクの増大をも抑えることのできる合成樹脂製キャップが得られる。
【0010】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の合成樹脂製キャップでは、容器口部に装着されたキャップを開封する際、容器口部の環状突起の外周面に対して当接部が当接するようにしておくことにより、キャップが斜めに持ち上がることが防止され、環状弱化部が偏らずに略均一に破断するので、タンパーエビデンス性は良好となる。
【0011】
また、当接部の内周面には20度以上の勾配を設けてあり、この勾配が環状突起に対する当接部の当接度合いの調整機能を発揮し、閉栓状態における突出部と環状突起との隙間が比較的大きかったり小さかったりしても、開封時に当接部が環状突起に良好に当接するように構成するのが容易となり、すっぽ抜けや開栓トルクの増大を防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明の合成樹脂製キャップでは、開封の際に突起が環状突起に当接してキャップのがたつきや傾きが防止され、キャップのすっぽ抜けが防止されるという効果がより高まることになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る合成樹脂製キャップの構成を概略的に示す縦断面図である。
【
図2】(A)及び(B)は、開封過程の前記合成樹脂製キャップの要部の構成を概略的に示す説明図である。
【
図3】前記合成樹脂製キャップの変形例の要部の構成を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1に示す合成樹脂製キャップ(以下、キャップという)1は、例えばペットボトル等の図示しない容器の口部に装着されて使用されるものであり、コンプレッション成形又はインジェクション成形によって、ポリエチレンで一体的に成形されている。なお、キャップ1を形成する素材は、特に限定されるものではなく、本実施形態で用いたポリエチレンの他、ポリプロピレン等が好適に用いられる。
【0016】
そして、キャップ1は、平面視において略円形状の天壁2と、この天壁2の外周部から下向きに延びる略円筒状のスカート壁3を有している。ここで、スカート壁3の外周面にはローレット溝4を、内周面には雌ねじ5を設けてあり、この雌ねじ5は容器口部の外周に形成された雄ねじ(図示していない)に結合可能である。
【0017】
また、キャップ1は、未開封(開栓が一度もされていないこと)を証明する機能を有するピルファープルーフキャップであり、スカート壁3の下部には、スカート壁3の全周にわたって延びる環状弱化部6を介してタンパーエビデンスバンド(以下、単に「バンド」という)7を連結してある。
【0018】
すなわち、環状弱化部6は、スカート壁3とバンド7とを上下に画するものであり、スカート壁3及びバンド7の周方向に断続して延びる(ミシン目状の)スリットと、隣り合うスリットの間に存在するブリッジとで構成され、ブリッジは所定の力で引っ張られると破断する。
【0019】
そして、このバンド7の内周側には、内向きに突出し、内側への突出量が上側ほど増大するように構成されたフック8を、周方向に間隔をおいて複数(例えば5個)設けてある。各フック8は、キャップ1が容器口部に装着された状態で、容器口部の外周において雄ねじよりも下方に形成された環状突起(ビード部)9(
図2(A)及び(B)参照)の略下側へ位置し、開封操作によって当該環状突起9に係止する。すなわち、フック8は、環状突起9に下方から係止可能に構成されている。
【0020】
図2(A)に示すように、バンド7の内周側において、フック8の上方には、バンド7の内側に突出する突出部10が連なり、突出部10の下部には環状突起9の外周面に当接する当接部11が設けられている。なお、当接部11の上下幅L11は、この当接部11を含む突出部10全体の上下幅L10の3分の1〜3分の2とするのが好ましく、本例では約半分(L10を1.17mm、L11を0.58mm)としてある。
【0021】
また、当接部11は、突出部10の内周面からフック8の上面に向かって、20度以上(好ましくは20度〜30度)の勾配θで内径が小さくなるように延びている。勾配θを20度未満とすると、当接部11が持つ環状突起9に対する当接部11の当接度合いの調整機能が低下し、閉栓状態における突出部10と環状突起9との隙間が比較的大きい場合には、開封時に当接部11が環状突起9に良好に当接せずにがたつき、キャップ1が傾いてすっぽ抜けが生じる恐れがあり、逆に閉栓状態における突出部10と環状突起9との隙間が比較的小さい場合には、当接部11が環状突起9に強く当接してキャップ1の開封に必要なトルクが過大となる恐れがある。
【0022】
上記構成からなるキャップ1は、容器口部に装着され未開封の状態では、環状突起9が突出部10の内側またはそれより上方に位置し(
図2(A)に示す位置かそれよりも上方の位置)、この状態からキャップ1を開封方向に回転させると、容器口部に対してキャップ1が相対的に上昇し、
図2(B)に示すように、やがて当接部11が環状突起9に当接し、フック8が環状突起9に下方から係止する状態となる。そして、さらにキャップ1を開封方向に回転させることにより容器口部に装着されたキャップ1を開封する際、容器口部の環状突起9の外周面に対して各フック8に設けられた当接部10が当接し、これにより、キャップ1が斜めに持ち上がることが防止され、環状弱化部6が偏らずに略均一に破断するので、タンパーエビデンス性は良好となる。なお、
図2(B)には、環状突起9に係止したフック8を環状突起9に重ねて描いてあるが、実際には実体を持つ両者がこのように重なることはなく、主としてキャップ1側が容器口部に付勢されて外側に弾性変形するが、その弾性変形後の図示は省略している。
【0023】
また、上述したように、当接部11の内周面には20度以上の勾配θを設けてあり、この勾配が環状突起9に対する当接部11の当接度合いの調整機能を発揮し、閉栓状態における突出部10と環状突起9との隙間が比較的大きかったり小さかったりしても、開封時に当接部11が環状突起9に良好に当接するように構成するのが容易となり、すっぽ抜けや開栓トルクの増大を防止することができる。
【0024】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0025】
上記実施の形態では、各フック8に対応させて突出部10及び当接部11を設けているが、これに限らず、例えば突出部10、当接部11の少なくとも一方を、バンド7の周方向に連続して一周設けるようにしてもよい。
【0026】
各当接部11の勾配θは、画一化されていてもよいし、ばらつきをもたせてあってもよく、例えば勾配θが20度の当接部11を三つ、勾配θが30度の当接部11を二つ設ける、といったようなことも可能である。
【0027】
図3に示すように、バンド7の内周側において、突出部10の上方で環状弱化部6よりも下方に、突出部10よりもバンド7の内側に突出し、キャップ1を容器口部に装着した状態で容器口部(環状突起9)の外周面に接触する突起12を設けてあってもよい。この突起12は、バンド7の周方向に全周にわたって設けてもよいし、バンド7の周方向に間隔をあけて複数設けてもよく、後者の場合、例えばフック8に対応させて各フック8の真上に一つ又は複数ずつ設けることが考えられる。そして、このような突起12を設けておくことにより、開封の際に突起12が環状突起9に当接してキャップ1のがたつきや傾きが防止され、キャップ1のすっぽ抜けが防止されるという効果がより高まることになる。
【0028】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0029】
1 キャップ
2 天壁
3 スカート壁
4 ローレット溝
5 雌ねじ
6 環状弱化部
7 バンド
8 フック
9 環状突起
10 突出部
11 当接部
12 突起
θ 勾配