(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を生成するためのプロセスであって、前記セルロースエーテルアセテートが、唯一のエステル基としてアセチル基を含み、前記プロセスが、
水性液体を、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有するセルロースエーテルアセテートと混合するステップと、
前記セルロースエーテルアセテートと前記水性液体との混合物の温度を、10℃未満に設定して、前記セルロースエーテルアセテートを前記水性液体中に少なくとも部分的に溶解するステップと、を含む、前記プロセス。
10℃未満の温度での、前記セルロースエーテルアセテートの前記水性液体中への少なくとも部分的な溶解後、前記水性組成物の温度が、25℃以下に上昇される、請求項1〜2のいずれか1項に記載のプロセス。
前記生成された水性組成物が、前記水性液体中に溶解した少なくとも2.0重量パーセントのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートを含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
水性液体中に溶解した少なくとも2.0重量パーセントのセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物であって、前記セルロースエーテルアセテートが、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有し、前記水性組成物が、請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロセスによって生成されている、前記水性組成物。
水性液体中に溶解した少なくとも2.0重量パーセントのセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物であって、前記セルロースエーテルアセテートが、唯一のエステル基としてアセチル基を含み、かつ0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有し、前記水性組成物が、10℃以下の温度を有する、前記水性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0014】
驚くべきことに、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)などのセルロースエーテルアセテートは、a)セルロースエーテルアセテートが、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DS
Acを有し、かつb)セルロースエーテルアセテートと水性液体との混合物の温度が、10℃未満に、好ましくは8℃未満に、より好ましくは5℃未満に、及び特に3℃以下に設定される場合に、水性液体中に少なくとも部分的に溶解することが見出された。少なくとも2.0重量%のセルロースエーテルアセテート水溶液を生成することができる。アセチル基の置換度DS
Acが0.75よりも高い場合、セルロースエーテルアセテートは、10℃未満の温度でさえ、水性液体中で可溶性ではない。
【0015】
混合物の温度が、室温などのより高い温度を有する場合、2.0重量%のセルロースエーテルアセテート水溶液は、セルロースエーテルアセテートが0.20未満のDS
Acを有する場合にのみ、調製することができる。HPMCAなどのセルロースエーテルアセテートの室温での水への溶解の観察は、わずか0.1mg/mL以上、すなわち、0.01重量%以上の水溶性を開示する国際特許出願第WO2005/115330号の教示を考慮すると、驚くべきことである。残念ながら、HPMCAなどのセルロースエーテルアセテートのそれほど低いDS
Acは、いくつかの最終用途では所望されない。0.20未満のDS
Acはまた、国際特許出願第WO2005/115330号におけるHPMCAの好ましいDS
Ac範囲未満である。
【0016】
本発明のプロセスにおいて使用されるセルロースエーテルアセテートは、本発明の文脈において無水グルコース単位と称される、β−1,4グリコシド結合したD−グルコピラノース反復単位を有する、セルロース骨格を有する。セルロースエーテルアセテートは、好ましくはアルキルセルロースアセテート、ヒドロキシアルキルセルロースアセテート、またはヒドロキシアルキルアルキルセルロースアセテートである。これは、セルロースエーテルアセテートにおいて、無水グルコース単位のヒドロキシル基の少なくとも一部が、アルコキシル基もしくはヒドロキシアルコキシル基、またはアルコキシル基とヒドロキシアルコキシル基との組み合わせにより置換されていることを意味する。ヒドロキシアルコキシル基は典型的には、ヒドロキシメトキシル、ヒドロキシエトキシル、及び/またはヒドロキシプロポキシル基である。ヒドロキシエトキシル及び/またはヒドロキシプロポキシル基が好ましい。典型的には、一種または二種のヒドロキシアルコキシル基がセルロースエーテルアセテート中に存在する。好ましくは、単一種のヒドロキシアルコキシル基、より好ましくはヒドロキシプロポキシルが存在する。アルコキシル基は典型的には、メトキシル、エトキシル、及び/またはプロポキシル基である。メトキシル基が好ましい。上記に定義されたセルロースエーテルアセテートの例は、アルキルセルロースアセテート(メチルセルロースアセテート及びプロピルセルロースアセテートなど)、ヒドロキシアルキルセルロースアセテート(ヒドロキシエチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテート、及びヒドロキシブチルセルロースアセテートなど)、ならびにヒドロキシアルキルアルキルセルロースアセテート(ヒドロキシエチルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシメチルエチルセルロースアセテート、エチルヒドロキシエチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースアセテート、ヒドロキシブチルメチルセルロースアセテート、及びヒドロキシブチルエチルセルロースアセテートなど、ならびに2つ以上のヒドロキシアルキル基を有するもの(ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートなど)である。最も好ましくは、セルロースエーテルアセテートは、ヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテート(ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)など)である。
【0017】
ヒドロキシアルコキシル基による無水グルコース単位のヒドロキシル基の置換度は、ヒドロキシアルコキシル基のモル置換、すなわち、MS(ヒドロキシアルコキシル)によって表示される。MS(ヒドロキシアルコキシル)は、セルロースエーテルアセテートにおける無水グルコース単位当たりのヒドロキシアルコキシル基の平均モル数である。ヒドロキシアルキル化反応中、セルロース骨格に結合したヒドロキシアルコキシル基のヒドロキシル基は、アルキル化剤、例えば、メチル化剤、及び/またはヒドロキシアルキル化剤によって更にエーテル化され得ることを理解されたい。無水グルコース単位の同じ炭素原子位置に対する複数のその後のヒドロキシアルキル化エーテル化反応は、側鎖を生み出し、その場合、複数のヒドロキシアルコキシル基が、エーテル結合によって互いに共有結合しており、各側鎖は全体として、セルロース骨格にヒドロキシアルコキシル置換基を形成する。
【0018】
故に、「ヒドロキシアルコキシル基」という用語は、ヒドロキシアルコキシル置換基の構成単位としてのヒドロキシアルコキシル基を指すものとして、MS(ヒドロキシアルコキシル)の文脈において解釈されるべきであり、これは、上記に概説されるように、単一のヒドロキシアルコキシル基または側鎖のいずれかを含み、2つ以上のヒドロキシアルコキシル単位は、エーテル結合によって互いに共有結合している。この定義において、ヒドロキシアルコキシル置換基の末端ヒドロキシル基が更にアルキル化、例えば、メチル化されているかどうかは重要ではなく、アルキル化及び非アルキル化の両方のヒドロキシアルコキシル置換基が、MS(ヒドロキシアルコキシル)の決定に含まれる。セルロースエーテルアセテートは一般に、0.05〜1.00、好ましくは0.08〜0.70、より好ましくは0.15〜0.60、最も好ましくは0.15〜0.40、及び特に0.20〜0.40の範囲内のヒドロキシアルコキシル基のモル置換を有する。
【0019】
無水グルコース1単位当たりでアルコキシル基(メトキシル基など)によって置換されたヒドロキシル基の平均数は、アルコキシル基の置換度、すなわち、DS(アルコキシル)と称される。上記のDSの定義において、「アルコキシル基によって置換されたヒドロキシル基」という用語は、本発明において、セルロース骨格の炭素原子に直接的に結合したアルキル化ヒドロキシル基だけでなく、セルロース骨格に結合したヒドロキシアルコキシル置換基のアルキル化ヒドロキシル基も含むものとして解釈されるべきである。セルロースエーテルアセテートは一般に、1.0〜2.5、好ましくは1.2〜2.2、より好ましく1.6〜2.05、及び最も好ましくは1.7〜2.05の範囲内のDS(アルコキシル)を有する。
【0020】
最も好ましくは、セルロースエーテルアセテートは、MS(ヒドロキシアルコキシル)について上記に示された範囲内のDS(アルコキシル)及びMS(ヒドロキシプロポキシル)について上記に示された範囲内のDS(メトキシル)を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)などのヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテートである。
【0021】
セルロースエーテルアセテートは、唯一のエステル基としてアセチル基を含み、すなわち、本発明において利用されるセルロースエーテルアセテートは、アセチルとは異なるいかなるエステル基も含まない。セルロースエーテルアセテートは、少なくとも0.05、一般に少なくとも0.10、好ましくは少なくとも0.20、より好ましくは少なくとも0.25、最も好ましくは少なくとも0.30、及び本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも0.40さえ、または少なくとも0.45さえのアセチル基の置換度DS
Acを有する。驚くべきことに、セルロースエーテルアセテートが0.20未満のDS
Acを有する場合、室温でさえ、2.0重量%のセルロースエーテルアセテート水溶液を調製することができることが見出されたが、それにも関わらず、好ましいセルロースエーテルアセテートは、少なくとも0.20、より好ましくは少なくとも0.25、最も好ましくは少なくとも0.30、及び本発明のいくつかの実施形態において、少なくとも0.40さえ、または少なくとも0.45さえのDS
Acを有する。そのような好ましいセルロースエーテルアセテートは、実施例の節に記載されるように、それらの水中濃度に応じて、上昇した温度でゲル化することが見出されている。HPMCAは、最大で0.75、好ましくは最大で0.70、より好ましくは最大で0.69、及びいくつかの実施形態において、最大で0.67のアセチル基の置換度を有する。
【0022】
アセチル基(−CO−CH
3)でのエステル置換は、1.0NのNaOH中での撹拌が4時間の代わりに12時間実行されることを除いて、Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF29,pp.1548−1550”に記載されるように決定される。エステル置換について報告される値は、揮発性物質について補正される(上記のHPMCAS研究書の「loss on drying」節に記載されるように決定される)。
【0023】
セルロースエーテルアセテート中のエーテル基の含有量は、「Hypromellose」,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP35,pp3467−3469に記載されるものと同じ手法で決定される。
【0024】
上記の分析によって得られるエーテル基及びアセテート基の含有量は、以下の式に従って個々の置換基のDS及びMS値に変換される。この式は、他のセルロースエーテルエステルの置換基のDS及びMSを決定するために類似の手法で使用されてもよい。
【0026】
慣例により、重量パーセントは、全ての置換基を含むセルロース反復単位の総重量に基づく平均重量百分率である。メトキシル基の含有量は、メトキシル基(すなわち、−OCH
3)の質量に基づいて報告される。ヒドロキシアルコキシル基の含有量は、ヒドロキシプロポキシル(すなわち、−O−CH
2CH(CH
3)−OH)などのヒドロキシアルコキシル基(すなわち、−O−アルキレン−OH)の質量に基づいて報告される。アセチル基の含有量は、アセチル(−C(O)−CH
3)の質量に基づいて報告される。
【0027】
本発明において利用されるセルロースエーテルアセテートは一般に、20℃で、0.43重量%の水性NaOH中2.0重量%のセルロースエーテルアセテート溶液として測定される、最大で200mPa・s、好ましくは最大で100mPa・s、より好ましくは最大で50mPa・s、及び最も好ましくは最大で5.0mPa・sの粘度を有する。一般に、粘度は、20℃で、0.43重量%の水性NaOH中2.0重量%のセルロースエーテルアセテート溶液として測定される、少なくとも1.2mPa・s、より典型的には少なくとも1.8mPa・s、更により典型的には少なくとも2.4mPa・s、及び最も典型的には少なくとも2.8mPa・sである。
【0028】
本発明において利用されるセルロースエーテルアセテートは一般に、最大で500,000ダルトン、好ましくは最大で200,000ダルトン、より好ましくは最大で150,000ダルトン、及び最も好ましくは最大で100,000ダルトン、または最大で50,000ダルトンの重量平均分子量M
wを有する。一般に、それは、少なくとも10,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトン、より好ましくは少なくとも20,000ダルトンの重量平均分子量M
wを有する。セルロースエーテルアセテートは一般に、少なくとも1.2、典型的には少なくとも1.3の多分散性M
w/M
n、すなわち、重量平均分子量M
w対数平均分子量M
nの比率を有する。更に、セルロースエーテルアセテートは一般に、最大で2.6、好ましくは最大で2.3、より好ましくは最大で1.9、及び最も好ましくは最大で1.6の多分散性を有する。M
w及びM
nは、移動相として、40体積部のアセトニトリルと、50mMのNaH
2PO
4及び0.1MのNaNO
3を含有する60体積部の水性緩衝液との混合物を使用して、Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis56(2011)743に従って測定される。移動相は、8.0のpHに調整される。
【0029】
上述のセルロースエーテルアセテートが混合される水性液体の温度は、好ましくは0℃以上、典型的には0.5℃以上である。水性液体の温度は、典型的には最大で20℃、好ましくは10℃未満、より好ましくは8℃未満、更により好ましくは5℃未満、及び最も好ましくは最大で3℃である。一般に、セルロースエーテルアセテートは、1重量部のセルロースエーテルアセテート当たり、少なくとも5重量部、好ましくは少なくとも10重量部、より好ましくは少なくとも20重量部、及び一般に最大で100重量部、好ましくは最大で60重量部、より好ましくは最大で40重量部の水性液体とブレンドされる。
【0030】
本発明のプロセスにおいて、セルロースエーテルアセテートと水性液体との結果として得られる混合物の温度は、10℃未満、好ましくは8℃未満、より好ましくは5℃未満、及び最も好ましくは3℃未満に設定されることが重要である。結果として得られる混合物の温度は一般に、少なくともマイナス2℃、典型的には0℃以上、及びより典型的には0.5℃以上に設定される。水性液体の温度が、セルロースエーテルアセテートとの混合の前または後に設定されるかどうかは重要ではない。好ましくは、混合物は、前述の温度で少なくとも10分間、好ましくは少なくとも30分間、及びより好ましくは少なくとも2時間の期間維持される。セルロースエーテルアセテートの種類によって、水性液体中での溶解プロセスは、かなり長時間を要し得る。一般に、セルロースエーテルアセテートと水性液体との混合物は、前述の温度で最大で1週間、好ましくは最大で72時間、及びより好ましくは最大で24時間の期間維持される。
【0031】
水性液体は、少量の有機液体希釈剤を追加で含んでもよいが、水性液体は一般に、水性液体の総重量に基づいて、少なくとも80、好ましくは少なくとも85、より好ましくは少なくとも90、及び特に少なくとも95重量パーセントの水を含むべきである。本明細書で使用される場合、「有機液体希釈剤」という用語は、有機溶媒、または2つ以上の有機溶媒の混合物を意味する。好ましい有機液体希釈剤は、酸素、窒素、またはハロゲン(塩素など)などの1つ以上のヘテロ原子を有する極性有機溶媒である。より好ましい有機液体希釈剤は、アルコール、例えば多官能アルコール(グリセロールなど)または好ましくは単官能アルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノール、もしくはn−プロパノールなど)、エーテル(テトラヒドロフランなど)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、もしくはメチルイソブチルケトンなど)、アセテート(エチルアセテートなど)、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレンなど)、あるいはニトリル(アセトニトリルなど)である。より好ましくは、有機液体希釈剤は、1〜6個、最も好ましくは1〜4個の炭素原子を有する。最も好ましくは、水性液体は、水性液体の総重量に基づいて、80〜100パーセント、好ましくは、85〜100パーセント、より好ましくは90〜100パーセント、及び最も好ましくは95〜100パーセントの水、ならびに0〜20パーセント、好ましくは0〜15パーセント、より好ましくは0〜10パーセント、及び最も好ましくは0〜5パーセントの有機液体希釈剤を含む。最も好ましくは、水性液体は、水、例えば、脱イオン水または蒸留水からなる。
【0032】
驚くべきことに、上述のセルロースエーテルアセテートの少なくとも一部は、前述の温度条件下で、すなわち、10℃未満、好ましくは8℃未満、より好ましくは5℃未満、及び最も好ましくは3℃未満の温度で、上述の水性液体中に溶解することができる。一般に、少なくとも2.0重量%、典型的には少なくとも5.0重量%、より典型的には少なくとも10重量%、及び場合によっては少なくとも15重量%のセルロースエーテルアセテートさえ、そのような温度で水性液体中に溶解することができる。一般に、最大で20重量%、または好ましい実施形態において、最大で30重量%のセルロースエーテルアセテートさえ、そのような温度で水性液体中に溶解することができる。百分率は、セルロースエーテルアセテート及び水性液体の総重量に基づく。水性液体中へのセルロースエーテルアセテートの完全または部分的な溶解後、溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物の温度は、溶解したセルロースエーテルアセテートが沈殿することなく、例えば、25℃以下、典型的には20℃以下の温度までわずかに上昇させることができる。更なる温度の上昇時にのみ、溶解したセルロースエーテルアセテートがゲル化し始める。本発明の水性セルロースエーテルアセテート溶液は、セルロースエーテルアセテートの水中濃度及びセルロースエーテルアセテートのDS
Acに応じて、上昇した温度で、典型的には25〜70℃で、より典型的には30〜60℃でゲル化する。水性液体中に溶解するセルロースエーテルアセテートの、この温度依存性のゲル化能力により、溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物は、カプセルシェルの調製に高度に有用になる。
【0033】
本発明の別の態様は、水性液体中に溶解した少なくとも2.0重量パーセントのセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物であって、セルロースエーテルアセテートが、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DS
Acを有し、水性組成物が、10℃以下の温度を有する、水性組成物である。好ましいセルロースエーテルアセテート及び好ましい水性液体は、上記に更に記載される。水性組成物の温度は、好ましくは10℃未満、より好ましくは8℃未満、更により好ましくは5℃未満、及び最も好ましくは3℃以下である。水性組成物の温度は一般に、少なくともマイナス2℃、典型的には少なくとも0℃、及びより典型的には少なくとも0.5℃である。水性組成物は典型的には、水性液体中に溶解した、少なくとも3.0重量%、好ましくは少なくとも5.0重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、及び場合によっては少なくとも15重量%のセルロースエーテルアセテートさえ含む。水性液体中に溶解した、最大で20重量%、または好ましい実施形態において、最大で30重量%のセルロースエーテルアセテートさえ含む水性組成物は一般に、前述の温度で調製することができる。本明細書で使用される場合、「水性液体中に溶解したx重量%のセルロースエーテルアセテート」という用語は、xgのセルロースエーテルアセテートが(100−x)gの水性液体(水など)に溶解されることを意味する。組成物は、1つ以上の活性成分(成長促進剤、除草剤、もしくは殺虫剤など)または生物学的活性成分(ビタミン、草本、及び無機質補助剤もしくは薬物など)を含んでもよい。「薬物」という用語は、慣用的であり、動物、特にヒトに投与した場合に有益な予防的及び/または治療的特性を有する化合物を意味する。水性組成物は、着色剤、顔料、乳白剤、風味及び味改善剤、酸化防止剤、ならびにこれらの任意の組み合わせなどの任意の添加剤を更に含んでもよい。任意の添加剤は、好ましくは薬学的に許容される。
【0034】
本発明の別の態様は、カプセルシェルを製造するためのプロセスであって、水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を、上述のように生成し、浸漬ピンを、セルロースエーテルアセテートが溶解した水性組成物または水性組成物の一部と接触させる、プロセスである。浸漬ピンは、水性組成物よりも高い温度を有するべきである。上述のように10℃未満の温度で調製された水性組成物を、浸漬ピンと直接接触させてもよい。あるいは、溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を、それを浸漬ピンに接触させる前に、溶解したセルロースエーテルアセテートがゲル化することなく、例えば、25℃以下、典型的には20℃以下の温度まで温めてもよい。典型的には、浸漬ピンは、少なくとも30℃、好ましくは少なくとも40℃、より好ましくは少なくとも45℃、及び最大で95℃、好ましくは最大で70℃、及びより好ましくは最大で60℃の温度を有する。本発明のプロセスに従うと、セルロースエーテルアセテートが水性液体中に完全またはほぼ完全に溶解した場合、浸漬ピンを、水性液体中に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物と接触させる。本発明のプロセスに従うと、セルロースエーテルアセテートが水性液体中に部分的にしか溶解しない場合、浸漬ピンを、セルロースエーテルアセテートが溶解した水性組成物の一部と接触させる。一実施形態において、水性組成物を浸漬ピンに接触させる前に、セルロースエーテルアセテートが溶解していない部分を、セルロースエーテルアセテートが溶解した水性組成物の部分から分離する。好ましい一実施形態において、セルロースエーテルアセテートが溶解していない部分は分離されないが、沈降物として水性組成物中に残される。浸漬ピンを、セルロースエーテルアセテートが溶解した水性組成物の上澄み液体部分へと単に浸漬してもよい。この手順は、セルロースエーテルアセテートが部分的にしか溶解していない水性組成物からカプセルを生成するための、非常に効率的なプロセスを可能にする。
【0035】
本発明の別の態様は、錠剤、顆粒、ペレット、カプレット、薬用飴、坐剤、ペッサリー、または埋め込み可能な剤形などの剤形をコーティングするためのプロセスであって、水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を、上述のように生成し、剤形を、セルロースエーテルアセテートが溶解した水性組成物または水性組成物の一部と接触させる、プロセスである。本発明のプロセスに従うと、セルロースエーテルアセテートが水性液体中に部分的にしか溶解しない場合、剤形を、セルロースエーテルアセテートが溶解した水性組成物の一部と、例えば、この水性組成物の一部を剤形に噴霧することによって接触させる。
【0036】
本発明の別の態様は、コーティングされた剤形であって、コーティングが、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DS
Acを有する少なくとも1つのセルロースエーテルアセテートを含む、コーティングされた剤形である。本発明の更に別の態様は、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DS
Acを有する少なくとも1つのセルロースエーテルアセテートを含む、ポリマーカプセルシェルである。本発明の更に別の態様は、前述のカプセルシェルを含み、薬物または栄養もしくは食品補助剤、あるいはこれらの組み合わせを更に含む、カプセルである。コーティングまたはカプセルシェルにおける使用に好ましいセルロースエーテルアセテート、及び好ましい剤形の種類は、上述される。剤形のカプセルシェルまたはコーティングにおけるセルロースエーテルアセテートの量は典型的には、コーティングまたはカプセルシェルの総重量に基づいて、少なくとも60パーセント、より典型的には少なくとも70パーセント、及び最も典型的には少なくとも80パーセントである。剤形のカプセルシェルまたはコーティングにおけるセルロースエーテルアセテートの量は、コーティングまたはカプセルシェルの総重量に基づいて、最大で100パーセントであってもよいが、それは典型的には、最大で95パーセントまたは最大で90パーセントである。
【0037】
カプセルまたはコーティングなどの本発明の水性組成物から調製されるフィルムは、ヒトの胃、腸、または結腸内に存在する液体中では分解されない。そのようなフィルム、例えば、カプセルまたはコーティングは、セルロースエーテルアセテートフィルムを通した薬物などの活性成分の拡散徐放のために、薬学的技術分野において使用することができる。したがって、本発明は、水性セルロースエーテルアセテート溶液に由来する特有の徐放性カプセルまたはコーティングを提供する。セルロースエーテルアセテートフィルムを通した活性成分の拡散は、フィルムの厚さによって、または本発明の水性組成物中で細孔形成剤として作用し得る1つ以上の可塑剤の包含によって制御することができる。典型的な水溶性可塑剤は、最大で10,000の重量平均分子量を有するモノマー化合物またはポリマー化合物、好ましくはクエン酸トリエチル、トリアセチン、ポリエチレングリコール、特に2000〜6000の重量平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG4000など)、Tweenの商標で商業的に入手可能なポリエチレンソルビタンモノオレエート(Tween20またはTween80など)である。可塑剤の量は、セルロースエーテルアセテートの重量に基づいて、典型的には最大で50パーセント、好ましくは最大で40パーセント、より好ましくは最大で30パーセント、及び最も好ましくは最大で25パーセントのみである。存在する場合、可塑剤の量は、セルロースエーテルアセテートの重量に基づいて、典型的には少なくとも2パーセント、より典型的には少なくとも5パーセント、及び最も典型的には少なくとも10パーセントである。あるいは、セルロースエーテルアセテートフィルムを通した活性成分の拡散は、1つ以上の開口、空洞、孔、脆弱領域、または侵食性要素など(1つ以上の穿孔通路など)の、セルロースエーテルアセテートフィルムを通した1つ以上の通路によって制御することができる。
【0038】
カプセルまたはコーティングなどの本発明の水性組成物から調製されるフィルムは、1つ以上のゲル化剤、着色剤、顔料、乳白剤、風味及び味改善剤、酸化防止剤、ならびにこれらの任意の組み合わせなどの任意のアジュバントを含んでもよい。任意の添加剤は、好ましくは薬学的に許容される。任意の添加剤の量は、カプセルシェルの総重量に基づいて、典型的には最大で40パーセント、より典型的には最大で20パーセント、及び最も典型的には最大で10パーセントである。
【0039】
本発明の別の態様は、セルロースエーテルアセテート中の、活性成分(薬物など)の固体分散剤を調製するためのプロセスであって、水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を、上述のように生成し、活性成分を、セルロースエーテルアセテートが溶解した水性組成物中または水性組成物の一部中に溶解し、セルロースエーテルアセテート及び活性成分が溶解した、結果として得られる水性組成物または結果として得られる水性組成物の一部を乾燥させて、ヒドロキシアルキルメチルセルロースアセテート中の、活性成分の固体分散剤を生成する、プロセスである。好ましい乾燥方法は、噴霧乾燥による。「噴霧乾燥」という用語は、液体混合物を小さな液滴に分解(微粒化)し、液滴から溶媒を蒸発させる強い駆動力が存在する噴霧乾燥装置内で、混合物から溶媒を迅速に取り除くことを伴うプロセスを指す。噴霧乾燥プロセス及び噴霧乾燥機器は、Perry’s Chemical Engineers’ Handbook、20−54頁〜20−57頁(Sixth Edition1984)に一般的に記載される。噴霧乾燥プロセス及び機器についての更なる詳細は、Marshallによって「Atomization and Spray−Drying,」50Chem.Eng.Prog.Monogr.Series2(1954)、及びMasters,Spray Drying Handbook(Fourth Edition1985)に概説される。有用な噴霧乾燥プロセスは、国際特許出願第WO2005/115330号の34頁7行目〜35頁25行目に記載される。
【0040】
これより本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳細に記載する。特に明記しない限り、全ての部及び百分率は重量による。実施例において、以下の試験手順が使用される。
【実施例】
【0041】
エーテル基及びエステル基の含有量
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)中のエーテル基の含有量は、「Hypromellose」,United States Pharmacopeia and National Formulary,USP35,pp3467−3469に記載されるものと同じ手法で決定される。
【0042】
アセチル基(−CO−CH
3)でのエステル置換は、1.0NのNaOH中での撹拌が4時間の代わりに12時間実行されることを除いて、Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF29,pp.1548−1550”に記載されるように決定される。エステル置換について報告される値は、揮発性物質について補正される(上記のHPMCAS研究書の「loss on drying」節に記載されるように決定される)。
【0043】
2℃での水溶性
その乾燥重量に基づいて2.5重量部のHPMCAを、2℃の温度を有する97.5重量部の脱イオン水に添加し、その後、2℃で6時間撹拌し、2℃で16時間保管した。
【0044】
秤量した量の混合物を秤量した遠心分離バイアルに移動させ、移動させた重量の混合物をgでのM1として付記した。移動させた重量のHPMCA[M2]を、(gでの移動させた重量の混合物/100g×2.5g)として計算した。混合物を、2℃、5000rpmで60分間遠心分離した(2823×g、Thermo ScientificからのBiofuge Stratos遠心分離機)。遠心分離後、液体相からアリコートを取り除いて、秤量した乾燥バイアルに移動させた。移動させたアリコートの重量を、gでのM3として記録した。アリコートを、105℃で12時間乾燥させた。乾燥後、残存するgのHPMCAを重み付けし、gでのM4として記録した。
【0045】
「水溶性%(濃度=2.5%、温度=2℃)という用語は、2℃の温度を有する、2.5重量部のHPMCAと97.5重量部の脱イオン水との混合物中に実際に溶解されるHPMCAの百分率を表示する。それは、(M4/M2)×(M1/M3)×100として計算され、これは、(液体アリコート中のgでのHPMCA/遠心分離バイアルに移動させたgでのHPMCA)×(遠心分離バイアルに移動させたgでの混合物/遠心分離後のgでの液体アリコート)×100に対応する。上記の式において、「×」は、乗算演算子の略語である。
【0046】
21℃での水溶性
比較目的で、その乾燥重量に基づいて2.5重量部のHPMCAを、室温(21℃)を有する97.5重量部の脱イオン水に添加し、その後、室温で6時間撹拌し、室温で16時間保管した。2.5%、21℃での水溶性%の決定を、混合物を21℃で遠心分離することを除いて、上述のように実行した。「水溶性%(濃度=2.5%、温度=21℃)という用語は、21℃の温度を有する、2.5重量部のHPMCAと97.5重量部の脱イオン水との混合物中に実際に溶解されるHPMCAの百分率を表示する。
【0047】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテート(HPMCA)の粘度
「Hypromellose Acetate Succinate,United States Pharmacopia and National Formulary,NF29,pp.1548−1550」に記載されるように、0.43重量%の水性NaOH中2.0重量%のHPMCA溶液を調製した。DIN51562−1:1999−01(1999年1月)に従って、ウベローデ粘度測定を実行した。測定は、20℃で行われた。0.43重量%の水性NaOH中2.0重量%のHPMCA溶液を、以下の表2に「0.43%のNaOH中2.0%の粘度」として列挙する。
【0048】
HPMCAの水溶液のゲル化温度及びゲル強度
3翼(翼=2cm)の撹拌刃を有するオーバーヘッド研究室撹拌機で750rpmで撹拌しながら、対応する量の粉末化、粉砕、及び乾燥HPMCA(HPMCAの水含有量を考慮)を水(温度20〜25℃)に室温で添加することによって、2重量%、5重量%、または10重量%のHPMCA水溶液を生成した。その後、溶液を約1.5℃まで冷却した。1.5℃の温度に達した後、溶液を500rpmsで120分間撹拌した。各溶液を特性評価の前に冷蔵庫内で保管した。
【0049】
カップ及びボブ固定具(CC−25)を有するHaake RS600(Thermo Fisher Scientific)レオメーターを使用して、HPMCA水溶液のレオロジー測定を実行した。2%の一定歪み(変形)及び2Hzの一定角振動数で、5〜85℃の温度範囲にわたって、試料を1分当たり1℃の速度で加熱した。測定収集速度は4データ点/分となるように選択された。レオロジー測定から得られた貯蔵弾性率G’は、溶液の弾性特性を表し、貯蔵弾性率G’が損失弾性率G’’より高い場合、高温領域におけるゲル強度を表す。
【0050】
得られた貯蔵弾性率G’のデータ(振動測定から得た)を、まず対数化し、G’(最小)をゼロに及びG’(最大)を100に正規化した。直線回帰曲線を、これらの貯蔵弾性率データのサブセットにフィットさせた(5データ点の増分)。接線を、回帰曲線の最急の勾配にフィットさせた。この接線とx軸との交差を、ゲル化温度として報告する。ゲル化温度をいかに決定するかの詳細は、国際特許出願第WO2015/009796号の18及び19頁、「Determination of the gelation temperature of aqueous compositions comprising methyl cellulose」の段落に記載される。
【0051】
70℃での貯蔵弾性率G’に従うゲル強度もまた、このレオロジー測定によって得られた。
【0052】
比較実施例A及び実施例1〜11のHPMCAの生成
700.0gの酢酸を反応器内に充填し、撹拌した。その後、230.0gの酢酸ナトリウム(水を含まない)及び230.0gのHPMC(水を含まない)を添加した。HPMCは、20℃で、ASTM D2363−79(2006年再承認)に従って、2%水溶液として測定される、1.96のメトキシル置換(DS
M)、0.25のヒドロキシプロポキシル置換(MS
HP)、及び3.0mPa・sの粘度を有した。HPMCの重量平均分子量は、約20,000ダルトンであった。HPMCは、The Dow Chemical CompanyからMethocel E3 LV Premiumセルロースエーテルとして商業的に入手可能である。窒素での不活性化を実行した。混合物を、撹拌しながら85℃まで加熱した。85℃の温度に達した後、反応混合物を10分間撹拌させた。その後、以下の表1に列挙される無水酢酸を添加し、反応混合物を4時間反応させた。エステル化反応後、50℃の温度を有する19.4gの脱イオン水で、混合物の反応を停止させた。その後、2Lの脱イオン水(温度50℃)を、撹拌しながら反応器に添加して、HPMCAを沈殿させた。沈殿したHPMCAを約50℃まで冷却し、反応器から取り除いた。5000rpmで動作するUltra−Turrax撹拌機S50−G45を使用して、高剪断混合を60秒間適用することによって、HPMCAを1.7Lのお湯(温度約95°)で2回洗浄した。濾過後、濾過ケーキを1.7Lのお湯で数回洗浄した。洗浄したHPMCAを真空濾過によって単離し、55℃で一晩乾燥させた。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例1〜11及び比較実施例AのHPMCAの特性を、以下の表2に列挙する。表2において、略語は以下の意味を有する。
DS
M=DS(メトキシル):メトキシル基の置換度、
MS
HP=MS(ヒドロキシプロポキシル):ヒドロキシプロポキシル基のモル置換、
DS
Ac:アセチル基の置換度。
【0055】
【表2】
【0056】
上記の表2の結果は、本発明のプロセスによって、最大で0.75のアセチル基の置換度DS
Acを有する、HPMCAなどのセルロースエーテルアセテートを、セルロースエーテルアセテートと水性液体との混合物の温度を10℃未満に設定することによって、溶液にすることができることを示す。先行技術において行われるように、HPMCAを室温で溶解しようとすると、それぞれ0.19、0.16、及び0.12のDS
Acしか有さない実施例3〜5を除いて、いかなる十分な溶解性も達成されない。これは、国際特許出願第WO2005/115330号において好ましいものと教示されるDOS
Ac未満である。
【0057】
水性HPMCA溶液の温め
氷浴中、激しい撹拌下、2.0重量部のHPMCA及び98.0重量部の水を混合することによって、本発明の水性HPMCA溶液をした。その後、生成された混合物を視覚的に検査した。その後、まずそれらを冷蔵庫内に、その後室温に1時間、その後40℃で1時間、その後50℃で1時間、その後60℃で1時間保管し、混合物を徐々に温めた。溶液に対する温度上昇の影響を視覚的に検査した。
【0058】
【表3】
【0059】
ゲル化
本発明の水性HPMCA溶液は、HPMCAの水中濃度及びHPMCAのDS
Acに応じて、上昇した温度で、典型的には25〜70℃、より典型的には30〜60℃でゲル化する。典型的には、HPMCAは、2.0重量%ほど低い濃度でさえゲル化する。HPMCA試料が、それらの低いアセチル基の置換度にも関わらずゲル化することは、驚くべきことである。HPMCAを調製するための出発材料として使用されるHPMCは、2.0重量%の濃度ではゲル化しない。70℃まで加熱した後、2.0重量%のMethocel E3 LV Premiumセルロースエーテル水溶液は、ゲルは形成しないが、凝結するのみである。
【0060】
レオロジー測定を実行して、上記に更に記載される実施例1〜6の2.0重量%、5.0重量%、及び10.0重量%のHPMCA水溶液の、70℃での貯蔵弾性率G’に従うゲル化温度及びゲル強度を測定した。結果を以下の表4に列挙する。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例1及び2のHPMCAからのカプセルの調製
実施例1及び2の8.5重量%のHPMCAの水溶液を、HPMCAを脱イオン水中で4℃の温度で溶解することによって調製した。その後、HPMCAの重量に基づいて22重量%のクエン酸トリエチル(TEC)を4℃で水溶液に添加し、溶液を一晩保管した。その後、溶液を16℃まで温め、55℃の温度を有するピンを溶液中に浸して、カプセルシェルを調製した。その後、ピンをHPMCA水溶液から引き抜き、フィルムが成形ピン上に形成された。カプセルシェルを80℃で3時間乾燥させた。
【0063】
全てのフィルムは、良好な機械的特性を有し、柔軟であった。カプセルを1cm×1cmの小片へと切断し、フィルムを様々な緩衝液及びHCl中、37℃、振盪下で溶解について試験した。
【0064】
実施例1及び2のHPMCAから調製したカプセルシェルの、胃の酸性環境での溶解性を試験するために、カプセルシェルを0.1NのHCl中に浸した。そこに、カプセル小片を37℃の温度で2時間放置して、胃液を模倣した。実施例1及び2のHPMCAから調製したカプセル小片は、この2時間の間に、0.1NのHCl中に溶解しなかった。
【0065】
カプセルシェルの腸または結腸での溶解性を試験するために、カプセル小片を、37℃の温度、及びそれぞれ5.0、5.5、6.0、または6.8のpHを有する、マッキルベイン緩衝液(一リン酸二ナトリウム及びクエン酸を含有)中に2時間浸した。実施例1及び2のHPMCAから調製したカプセル小片は、マッキルベイン緩衝液中に溶解しなかった。他のカプセル小片を、37℃の温度、及びそれぞれ5.5、5.8、6.0、6.5、または6.8のpHを有する、0.2Mの三塩基リン酸ナトリウムの水性リン酸緩衝液中に2時間浸した。実施例1及び2のHPMCAから調製した全てのカプセル小片は、水性リン酸緩衝液中にも溶解しなかった。
(態様)
(態様1)
水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を生成するためのプロセスであって、前記プロセスが、
水性液体を、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有するセルロースエーテルアセテートと混合するステップと、
前記セルロースエーテルアセテートと前記水性液体との前記混合物の温度を、10℃未満に設定して、前記セルロースエーテルアセテートを前記水性液体中に少なくとも部分的に溶解するステップと、を含む、前記プロセス。
(態様2)
前記セルロースエーテルアセテートが、1.60〜2.05のメチル基の置換度DSMを有する、態様1に記載のプロセス。
(態様3)
前記セルロースエーテルアセテートと前記水性液体との前記混合物の温度が、5℃未満に設定される、態様1または態様2に記載のプロセス。
(態様4)
前記セルロースエーテルアセテートが、0.25〜0.70のアセチル基の置換度DSAcを有する、態様1〜3のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様5)
10℃未満の温度での、前記セルロースエーテルアセテートの前記水性液体中への少なくとも部分的な溶解後、前記水性組成物の温度が、25℃以下に上昇される、態様1〜4のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様6)
前記セルロースエーテルアセテートが、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートである、態様1〜5のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様7)
前記生成された水性組成物が、前記水性液体中に溶解した少なくとも2.0重量パーセントのヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートを含む、態様1〜6のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様8)
カプセルシェルを製造するためのプロセスであって、
−態様1〜7のいずれか1項に記載のプロセスに従って、水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を生成するステップと、
−前記水性組成物よりも高い温度を有する浸漬ピンを、セルロースエーテルアセテートが溶解した前記水性組成物または前記水性組成物の一部と接触させるステップと、を含む、前記プロセス。
(態様9)
剤形をコーティングするためのプロセスであって、
−態様1〜7のいずれか1項に記載のプロセスに従って、水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を生成するステップと、
−剤形を、セルロースエーテルアセテートが溶解した前記水性組成物または前記水性組成物の一部と接触させるステップと、を含む、前記プロセス。
(態様10)
セルロースエーテルアセテート中の、活性成分の固体分散剤を調製するためのプロセスであって、
−態様1〜7のいずれか1項に記載のプロセスに従って、水性液体中に少なくとも部分的に溶解したセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物を生成するステップと、
−活性成分を、セルロースエーテルアセテートが溶解した前記水性組成物中または前記水性組成物の一部中に溶解するステップと、
−セルロースエーテルアセテート及び活性成分が溶解した前記水性組成物または前記水性組成物の一部を乾燥させて、セルロースエーテルアセテート中の、活性成分の前記固体分散剤を生成するステップと、を含む、前記プロセス。
(態様11)
水性液体中に溶解した少なくとも2.0重量パーセントのセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物であって、前記セルロースエーテルアセテートが、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有し、前記水性組成物が、態様1〜7のいずれか1項に記載のプロセスによって生成可能である、前記水性組成物。
(態様12)
水性液体中に溶解した少なくとも2.0重量パーセントのセルロースエーテルアセテートを含む水性組成物であって、前記セルロースエーテルアセテートが、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有し、前記水性組成物が、10℃以下の温度を有する、前記水性組成物。
(態様13)
コーティングされた剤形であって、前記コーティングが、0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有する少なくとも1つのセルロースエーテルアセテートを含む、前記コーティングされた剤形。
(態様14)
0.05〜0.75のアセチル基の置換度DSAcを有する少なくとも1つのセルロースエーテルアセテートを含む、ポリマーカプセルシェル。
(態様15)
態様14に記載のカプセルシェルを含み、薬物または栄養もしくは食品補助剤、あるいはこれらの組み合わせを更に含む、カプセル。