(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記構成の遊星キャリアでは、各支軸は、予め基端部が一方のキャリアに固定され、2つのキャリアを連結する際に、先端部が他方のキャリアに形成された凹部に挿入される。このため、2つのキャリアは、支軸と凹部の位置が合うように形成される必要がある。
【0008】
また、上記構成の遊星キャリアでは、2つのキャリアの固定が、一方のキャリアに取付ボスを形成し、取付ボスの先端部を他方のキャリアに固定することにより行われる。この場合、他方のキャリアにおける取付ボスに対応する位置には、取付ボスをネジにより固定する場合には、ネジを通す挿通孔が形成され、取付ボスをカシメにより固定する場合には、かしめられる取付ボスの先端部を通す挿通孔が形成される。このため、2つのキャリアは、取付ボスと挿通孔の位置が合うように形成される必要もある。
【0009】
このように、上記構成の遊星キャリアでは、支軸と凹部との位置を合わせることに加え、取付ボスと挿入孔との位置を合わせることも必要であるため、遊星キャリアの製造に高い精度が求められる。これにより、遊星歯車機構の製造が容易に行えない虞がある。
【0010】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、駆動モータの回転を、遊星歯車機構を用いてドラムに伝える構成が採られるドラム式洗濯機において、遊星歯車機構の製造の容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主たる態様に係るドラム式洗濯機は、筐体内に配置された外槽と、前記外槽内に配置され、水平軸または水平方向に対して傾く傾斜軸を中心に回転可能なドラムと、前記ドラムの後部に配置され、表面に洗濯物と接触する突状部を有する回転体と、駆動モータと遊星歯車機構とを含み、前記駆動モータの回転を前記遊星歯車機構により減速させて前記ドラムに伝えることにより、前記ドラムと前記回転体とを互いに異なる回転速度で回転させる駆動部と、を備える。ここで、前記遊星歯車機構は、太陽歯車と、当該太陽歯車を囲む環状の内歯車と、前記太陽歯車と前記内歯車との間に介在する複数の遊星歯車と、これら遊星歯車を回転可能に保持する遊星キャリアと、を含む。さらに、前記遊星キャリアは、前記複数の遊星歯車を両側から挟み込む第1キャリアおよび第2キャリアと、前記第1キャリアと前記第2キャリアとの間に渡され、前記遊星歯車が回転可能に装着される支軸と、を有する。前記支軸は、前記遊星歯車が装着される前にその基端部が前記第1キャリアに固定され、または、前記支軸は、前記第1キャリアと一体形成される。そして、前記第2キャリアは、前記遊星歯車が装着された前記支軸の先端部に固定される。
【0012】
上記の構成によれば、遊星歯車が装着された支軸の先端部に第2キャリアを固定することにより、第1キャリアと第2キャリアとの間の固定が行われる。これにより、従来のような、第1キャリアと第2キャリアとの間に、別途、これらを固定するための取付ボスを設ける構成と異なり、支軸の先端部と第2キャリアの挿通孔との位置を合わせるのみならず、取付ボスと取付ボスに対応するネジ等の挿通孔との位置を合わせるように、高い精度で第1キャリアおよび第2キャリアを製造する必要がない。よって、遊星キャリア、ひいては、遊星歯車機構の製造の容易化を図ることができる。
【0013】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記第2キャリアは、前記支軸の先端部が通る挿通孔を有する構成とされ得る。この場合、前記挿通孔を通された前記支軸の先端部がかしめられることにより、前記第2キャリアが前記支軸の先端部に固定される。
【0014】
上記の構成によれば、支軸の先端部と第2キャリアとを、カシメにより固定するようにしたので、ネジ等、両者を固定するための部品を用いることなく、第1キャリアと第2キャリアとを固定することができる。
【0015】
上記の構成とされた場合、ドラム式洗濯機は、前記第1キャリアと前記第2キャリアとの間に介在し、カシメにより前記支軸の先端部が押しつぶされるときに前記第1キャリアに加わる力を、前記支軸とともに受ける受け部を、さらに備える構成とされ得る。
【0016】
このような構成とされれば、カシメの際に支軸が受ける力を軽減できるので、カシメの際の支軸の変形等を防止できる。
【0017】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記第2キャリアは、ネジが通る挿通孔を有する構成とされ得る。この場合、前記挿通孔を通された前記ネジが前記支軸の先端部に止められることにより、前記第2キャリアが前記先端部に固定される。
【0018】
上記の構成によれば、ネジを取り外すことで、容易に遊星キャリアを分解できる。
【0019】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記内歯車は、前記ドラムの回転軸に固定される構成とされ得る。この場合、前記遊星歯車機構は、前記遊星歯車による、前記太陽歯車から前記内歯車へのトルクの伝達経路が3ないし5の何れかの個数に設定される。
【0020】
上記の構成によれば、太陽歯車のトルクを適度な大きさに分散して伝達できるとともに、遊星歯車の大きさや歯数を適度な強度が保持できる大きさや歯数にできるので、遊星歯車の破損等が起こりにくくなり、遊星歯車機構の信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ドラム式洗濯機が、駆動モータの回転を、遊星歯車機構により減速させてドラムに伝える構成を採る場合に、遊星歯車機構の製造の容易化を図ることができる。
【0022】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態である乾燥機能を有さないドラム式洗濯機について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0026】
ドラム式洗濯機1は、外観を構成する筐体10を備える。筐体10の前面10aは、中央部から上部にかけて傾斜し、傾斜した面に洗濯物の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0027】
筐体10内には、外槽20が、複数のダンパー21により弾性的に支持される。外槽20内には、ドラム22が回転自在に配される。外槽20およびドラム22は、水平方向に対し、後面側が低くなるよう傾斜する。これにより、ドラム22は、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。外槽20およびドラム22の傾斜角度は、10〜20度程度とされ得る。外槽20の前面の開口部20aおよびドラム22の前面の開口部22aは、投入口11に対向し、投入口11ともにドア12により閉鎖される。ドラム22の内周壁には、多数の脱水孔22bが形成される。さらに、ドラム22の内周面には、3つのバッフル23が周方向にほぼ等しい間隔で設けられる。
【0028】
ドラム22の後部には、回転体24が回転自在に配される。回転体24は、ほぼ円盤形状を有する。回転体24の表面には、中央部から放射状に延びる複数の突状部24aが形成される。回転体24は、ドラム22と同軸に回転する。
【0029】
外槽20の後方には、ドラム22および回転体24を駆動するトルクを発生させる駆動部30が配される。駆動部30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム22および回転体24を同一方向に異なる回転速度で回転させる。具体的には、駆動部30は、ドラム22を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転させ、回転体24を、ドラム22の回転速度よりも速い回転速度で回転させる。一方、駆動部30は、脱水工程時には、ドラム22および回転体24を、ドラム22内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転させる。駆動部30の詳細な構成は、追って説明される。
【0030】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、排水バルブ40が設けられる。排水バルブ40は、排水ホース41に接続される。排水バルブ40が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水ホース41を通じて機外へ排出される。
【0031】
筐体10内の前方上部には、洗剤ボックス50が配される。洗剤ボックス50には、洗剤が収容される洗剤容器50aが前方から引き出し自在に収容される。洗剤ボックス50は、筐体10内の後方上部に配された給水バルブ51に、給水ホース52によって接続される。また、洗剤ボックス50は、外槽20の上部に、注水管53により接続される。給水バルブ51が開放されると、水道栓から水道水が、給水ホース52、洗剤ボックス50および注水管53を通じて外槽20内に供給される。この際、洗剤容器50aに収容された洗剤が、水に押し流れて外槽20内に供給される。
【0032】
次に、駆動部30の構成について詳細に説明する。
【0033】
図2および
図3は、駆動部30の構成を示す断面図である。
図2は、駆動部30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられた状態を示し、
図3は、駆動部30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられた状態を示す。
【0034】
駆動部30は、駆動モータ100と、翼軸200と、ドラム軸300と、遊星歯車機構400と、軸受ユニット500と、クラッチ機構部600とを含む。駆動モータ100は、回転体24およびドラム22を駆動するためのトルクを発生する。翼軸200は、駆動モータ100のトルクにより回転し、当該回転を回転体24に伝達する。遊星歯車機構400は、翼軸200の回転、即ち駆動モータ100のロータ110の回転を減速してドラム軸300に伝達する。ドラム軸300は、遊星歯車機構400により減速された回転速度で翼軸200と同軸に回転し、当該回転をドラム22に伝達する。軸受ユニット500は、翼軸200およびドラム軸300を回転自在に支持する。クラッチ機構部600は、回転体24、即ち翼軸200を、駆動モータ100の回転速度と等しい回転速度で回転させ、ドラム22、即ちドラム軸300を、遊星歯車機構400により減速された回転速度で回転させることが可能な二軸駆動形態と、回転体24およびドラム22、即ち、翼軸200、ドラム軸300および遊星歯車機構400を、駆動モータ100と等しい回転速度で一体的に回転させることが可能な一軸駆動形態との間で、駆動部30の駆動形態を切り替える。
【0035】
駆動モータ100は、アウターロータ型のDCブラシレスモータであり、ロータ110とステータ120とを含む。ロータ110は、有底の円筒状に形成され、その内周面には、全周に亘って永久磁石111が配列される。
【0036】
図4は、駆動モータ100のロータ110の構成を示す、ロータ110の正面図である。
【0037】
図4に示すように、ロータ110の中央部には、円形のボス部112が形成される。ボス部112には、翼軸200を固定するためのボス孔113が形成されるとともに、ボス孔113の外周に環状の被係合凹部114が形成される。被係合凹部114の外周部は、全周に亘って凹凸部114aを有する。
【0038】
図2および
図3に戻り、ステータ120は、外周部に巻線121を有する。図示しないモータ駆動部からステータ120の巻線121に駆動電流が供給されると、ロータ110が回転する。
【0039】
ドラム軸300は、中空形状を有し、翼軸200と遊星歯車機構400とを内包する。ドラム軸300は、中央部が外側に膨出し、この膨出した部位が、遊星歯車機構400の収容部300aとなる。
【0040】
遊星歯車機構400は、太陽歯車410と、太陽歯車410を囲む環状の内歯車420と、太陽歯車410と内歯車420との間に介在する4組の遊星歯車430と、これら遊星歯車430を回転可能に保持する遊星キャリア440とを含む。
【0041】
図5は、遊星歯車機構400の構成を示す図である。
図5は、
図2のA−A´断面図であるが、便宜上、ドラム軸300および遊星歯車機構400以外の構成の図示が省略されている。
図6は、遊星キャリア440を構成するフロントキャリア441の構成を示す図である。
図6(a)および(b)は、それぞれ、正面図および背面図であり、
図6(c)は、
図6(a)のB−B´断面図である。
図7は、遊星キャリア440を構成するリアキャリア442、支軸443およびキャリア軸444の構成を示す図である。
図7(a)および(b)は、それぞれ、正面図および背面図であり、
図7(c)は、
図7(a)のC−C´断面図である。
【0042】
太陽歯車410は、金属により形成され、翼軸200の中間の部位に固定される。内歯車420は、樹脂により形成される。
図5に示すように、内歯車420の外周面には、複数の箇所に前後方向に延びるキー部421が形成され、ドラム軸300の内周面には、キー部421に対応するキー溝部301が形成される。キー部421とキー溝部301とが係合することにより、ドラム軸300と内歯車420が周方向に固定される。
【0043】
図5に示すように、一組の遊星歯車430は、第1歯車431と第2歯車432とを有する。第1歯車431および第2歯車432は、樹脂により形成される。第1歯車431と第2歯車432の2つの歯車同士が噛み合うとともに、第1歯車431は太陽歯車410に噛み合い、第2歯車432は内歯車420に噛み合う。太陽歯車410が発生するトルクは、4組の遊星歯車430からなる4つの伝達経路により内歯車420に伝達される。
【0044】
遊星キャリア440は、フロントキャリア441と、リアキャリア442と、8つの支軸443と、キャリア軸444とを含む。フロントキャリア441およびリアキャリア442は、4組の遊星歯車430を両側から挟み込む。フロントキャリア441とリアキャリア442との間に8つの支軸443が渡され、各支軸443に各遊星歯車430、即ち各第1歯車431または各第2歯車432が回転自在に装着される。リアキャリア442は、本発明の第1キャリアに相当し、フロントキャリア441は、本発明の第2キャリアに相当する。
【0045】
図6に示すように、フロントキャリア441は、円盤形状を有し、金属により形成される。フロントキャリア441には、中央に、翼軸200が通される軸孔441aが形成される。また、フロントキャリア441には、8つの支軸443の先端部443aが通される8つの挿通孔441bが形成される。さらに、フロントキャリア441には、正面側における各挿通孔441bの位置に、挿通孔441bより径の大きな円形の窪み部441cが形成される。
【0046】
図7に示すように、リアキャリア442は、円盤形状を有し、金属により形成される。リアキャリア442には、中央に、翼軸200が通される軸孔442aが形成される。また、リアキャリア442には、8つの支軸443の基端部443bが通される8つの挿入凹部442bが形成される。さらに、リアキャリア442には、正面側に、前方へ突出する4つの突起部442cが形成される。突起部442cは、上面が平坦面となっており、
図7(c)に一点鎖線で示す如くフロントキャリア441が支軸443の先端部443aに装着されたとき、上面がフロントキャリア441の背面に接触する。収容部300a内には、各歯車410、420、430を円滑に回転させるために潤滑油が封入されるが、突起部442cにより埋められたスペース分だけ、潤滑油の量を削減することができる。
【0047】
支軸443は、金属により形成される。支軸443の基端部443bの径は、挿入凹部442bの径より僅かに大きくされている。基端部443bは挿入凹部442bに圧入され、これにより、支軸443がリアキャリア442に固定される。支軸443の先端部443aは、他の部位より径が小さくされ、さらに、カシメの際に潰れやすいよう筒状に形成される。
【0048】
キャリア軸444は、リアキャリア442と一体形成され、リアキャリア442の背面から後方へ延びる。キャリア軸444は、ドラム軸300と同軸であり、翼軸200が挿入される軸孔444aが、リアキャリア442の軸孔442aから連続するように形成される。キャリア軸444の後部には、外周面に、スプライン444bが形成される。
【0049】
図8は、遊星キャリア440の組み立てについて説明するための図である。
【0050】
まず、左図のように、支軸443に遊星歯車430が装着される。続いて、中央図のように、挿通孔441bを支軸443の先端部443aに通すようにして、フロントキャリア441が支軸443の先端部443aに装着される。その後、右図のように、窪み部441c内で、先端部443aが、カシメ機によって前方から押しつ潰されるようにしてかしめられ、フロントキャリア441が支軸443の先端部443aに固定される。かしめられた先端部443aは、窪み部441c内に収容され、窪み部441cの外には張り出さない。
【0051】
このようにして、遊星歯車430が支軸443に装着された後に、フロントキャリア441とリアキャリア442とが支軸443の部位にて固定され、遊星キャリア440が完成する。
【0052】
なお、上述したように、突起部442cの上面は、フロントキャリア441の背面に接触している。このため、支軸443の先端部443aが前方から押しつぶされるときに前方からフロントキャリア441に加わる力が、支軸443のみならず突起部442cによっても受けられる。これにより、カシメの際に支軸443が受ける力を軽減できるので、カシメの際の支軸443の変形等を防止できる。なお、突起部442cは、本発明の受け部に相当する。
【0053】
図2および
図3に戻り、軸受ユニット500には、中央部に円筒状の軸受部510が設けられる。軸受部510の内部には、前部および後部に転がり軸受511、512が設けられ、前端部に、メカニカルシール513が設けられる。ドラム軸300は、外周面が転がり軸受511、512により受けられ、軸受部510内において円滑に回転する。また、メカニカルシール513により、軸受部510とドラム軸300との間への水の侵入が防止される。
【0054】
図9は、軸受ユニット500の後部の拡大斜視図である。
図9に示すように、軸受部510の後端部には、内面に、全周に亘ってスプライン514が形成される。
【0055】
軸受ユニット500には、軸受部510の周囲に固定フランジ部520が形成される。固定フランジ部520の下端部に取付ボス521が形成される。
【0056】
軸受ユニット500は、固定フランジ部520において、ネジ止等の固定方法により、外槽20の後面に固定される。駆動部30が外槽20に装着された状態において、翼軸200およびドラム軸300が外槽20の内部に臨む。ドラム22がドラム軸300に固定され、回転体24が翼軸200に固定される。翼軸200の後端部は、キャリア軸444から後方に突出し、ロータ110のボス孔113に固定される。
【0057】
クラッチ機構部600は、クラッチ体610と、クラッチスプリング620と、クラッチレバー630と、レバー支持部640と、クラッチ駆動装置650と、中継棒660と、取付プレート670とを含む。
【0058】
図10は、クラッチ体610の構成を示す図である。
図10(a)、(b)および(c)は、それぞれ、クラッチ体610の正面図、右側面図および背面図である。
【0059】
図10に示すように、クラッチ体610はほぼ円盤形状を有する。クラッチ体610の前端部には、外周面に、環状のスプライン611が形成される。スプライン611は、軸受ユニット500のスプライン514と係合するように形成される。また、クラッチ体610の外周面には、スプライン611の後方に、フランジ部612が形成される。さらに、クラッチ体610には後端部に、環状の係合フランジ部613が形成される。係合フランジ部613は、ロータ110の被係合凹部114と同じ形状を有し、外周部に全周に亘って凹凸部613aを有する。係合フランジ部613が、被係合凹部114に挿入されると、凹凸部613a、114a同士が係合する。
【0060】
クラッチ体610の軸孔614にキャリア軸444が挿入される。軸孔614の内周面に形成されたスプライン614aとキャリア軸444の外周面に形成されたスプライン444bとが係合する。これにより、クラッチ体610が、キャリア軸444に対して、前後方向への移動が許容され、且つ、周方向への回動が規制される状態となる。
【0061】
クラッチ体610には、軸孔614の外側に環状の収容溝615が形成され、この収容溝615に、クラッチスプリング620が収容される。クラッチスプリング620は、一端が軸受部510の後端部に接し、他端が収容溝615の底面に接する。
【0062】
図2および
図3に戻り、クラッチレバー630の上端部には、クラッチ体610のフランジ部612の後面に接触し、フランジ部612を前方へ押す押圧部631が形成される。クラッチレバー630は、レバー支持部640に設けられた支軸641に回動自在に支持される。クラッチレバー630の下端部には、取付軸632が形成される。
【0063】
クラッチ駆動装置650は、クラッチレバー630の下方に配置される。クラッチ駆動装置650は、トルクモータ651と、トルクモータ651のトルクにより水平軸周りに回転する円盤状のカム652とを含む。カム652の上面には、外周部にカム軸653が設けられる。カム652の回転中心とクラッチレバー630の取付軸632の中心とが前後方向において一致する。
【0064】
中継棒660は、上下方向に延び、クラッチレバー630とカム652とを連結する。中継棒660は、上端部がクラッチレバー630の取付軸632に取り付けられ、下端部が、カム652のカム軸653に取り付けられる。中継棒660には、中間位置にスプリング661が一体形成される。スプリング661は、引張スプリングである。
【0065】
レバー支持部640およびクラッチ駆動装置650は、ネジ止等の固定方法により、取付プレート670に固定される。取付プレート670は、軸受ユニット500の取付ボス521にネジにより固定される。
【0066】
駆動部30の駆動形態が、一軸駆動形態から二軸駆動形態に切り替えられる場合、
図2に示すように、トルクモータ651により、カム軸653が最も下方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転するに従い、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660によって下方に引かれる。クラッチレバー630が支軸641を中心に前方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610を前方へ押す。クラッチスプリング620の弾性力に逆らって、クラッチ体610が前方へ移動し、クラッチ体610のスプライン611と軸受ユニット500のスプライン514とが係合する。
【0067】
クラッチ体610は、カム軸653が中間の所定位置まで移動すると、スプライン611がスプライン514と係合する位置に到達する。このときは、中継棒660のスプリング661が自然長の状態にある。クラッチ体610は、この係合位置より前には移動しないため、カム軸653が所定位置から最も下方の位置に移動すると、
図2の通り、スプリング661が下方に伸びる。こうなると、クラッチレバー630が、スプリング661によって、前方へ回動するように引かれるので、係合位置にあるクラッチ体610には、押圧部631から押圧力が加えられる。これにより、スプライン611をスプライン514にしっかりと係合させることができる。
【0068】
スプライン611とスプライン514とが係合すると、クラッチ体610が、軸受ユニット500に対して周方向への回動が規制され、回動できない状態となるので、遊星歯車機構400のキャリア軸444、即ち遊星キャリア440が、回転できないよう固定された状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転し、翼軸200に連結されている回転体24もロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。翼軸200の回転に伴い、遊星歯車機構400では、太陽歯車410が回転する。上述の通り、遊星キャリア440は固定された状態にあるので、遊星歯車430は、公転ができず、太陽歯車410の回転に伴って自転のみを行う。遊星歯車430の第1歯車431および第2歯車432が、それぞれ、太陽歯車410と逆方向および同方向に回転し、内歯車420が太陽歯車410と同方向に回転する(
図5参照)。これにより、内歯車420に固定されたドラム軸300が翼軸200と同方向に、翼軸200よりも遅い回転速度で回転し、ドラム軸300に固定されたドラム22が、回転体24よりも遅い回転速度で回転体24と同方向に回転する。言い換えれば、回転体24がドラム22よりも速い回転速度でドラム22と同方向に回転する。
【0069】
一方、駆動部30の形態が、二軸駆動形態から一軸駆動形態に切り替えられる場合、
図3に示すように、トルクモータ651により、カム軸653が最も上方に位置するようにカム652が回転される。カム652が回転し、カム軸653が上方へ移動すると、まず、スプリング661が縮んでいく。スプリング661が自然長に戻ると、その後は、カム軸653が移動するに従い、中継棒660が上方へ移動し、クラッチレバー630の下端部が、中継棒660に押されて、上方へ移動する。クラッチレバー630が支軸641を中心に後方へ回転し、押圧部631がクラッチ体610のフランジ部612から離れる。クラッチ体610が、クラッチスプリング620の弾性力によって後方へ移動し、クラッチ体610の係合フランジ部613とロータ110の被係合凹部114とが係合する。
【0070】
係合フランジ部613と被係合凹部114とが係合すると、ロータ110に対するクラッチ体610の周方向への回動が規制され、クラッチ体610は、ロータ110とともに回転可能な状態となる。このような状態において、ロータ110が回転すると、翼軸200およびクラッチ体610がロータ110の回転速度と等しい回転速度で回転する。このとき、遊星歯車機構400では、太陽歯車410と遊星キャリア440とがロータ110と等しい回転速度で回転する。これにより、内歯車420が、太陽歯車410および遊星キャリア440と等しい回転速度で回転し、内歯車420に固定されたドラム軸300がロータ110と等しい回転速度で回転する。即ち、駆動部30では、翼軸200、遊星歯車機構400およびドラム軸300が一体となって回転する。これにより、ドラム22と回転体24が一体的に回転する。
【0071】
ドラム式洗濯機1は、各種運転コースの洗濯運転を行う。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に実行される。なお、運転コースによっては、中間脱水工程とすすぎ工程とが2回以上行われる場合がある。
【0072】
洗い工程およびすすぎ工程では、駆動部30の駆動形態が、二軸駆動形態に切り替えられる。ドラム22内の洗濯物が水に浸かるよう、投入口11の下縁に至らない所定の水位まで外槽20内に水が溜められ、この状態で、駆動モータ100が、交互に、正転および逆転する。これにより、ドラム22と回転体24とが、回転体24の回転速度がドラム22の回転速度より速い状態で、交互に正転および逆転する。このとき、ドラム22は、洗濯物に作用する遠心力が重力より小さくなる回転速度で回転する。
【0073】
ドラム22内の洗濯物が、バッフル23で掻き上げられては落とされることにより、ドラム22の内周面に叩き付けられる。加えて、ドラム22の後部では、回転する回転体24の突状部24aに洗濯物が接触し、突状部24aによって洗濯物が擦られたり撹拌されたりする。これにより、洗濯物が洗われる、あるいは、すすがれる。
【0074】
このように、洗いおよびすすぎ時には、ドラム22の回転による機械力のみならず回転体24による機械力が洗濯物に付与されるので、洗浄性能の向上が期待できる。 中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動部30の駆動形態が、一軸駆動形態に切り替えられる。駆動モータ100、即ち、ドラム22および回転体24は、ドラム22内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転速度で一体的に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム22の内周面に押し付けられ、脱水される。
【0075】
このように、脱水時には、ドラム22と回転体24とが一体的に回転するので、ドラム22に張り付いた洗濯物が回転体24により撹拌されるようなことがなく、洗濯物を良好に脱水できる。
【0076】
<実施の形態の効果>
以上、本実施の形態によれば、
図5ないし
図8にて説明した通り、遊星歯車機構400の遊星キャリア440において、遊星歯車430が装着された支軸443の先端部443aにフロントキャリア441を固定することにより、リアキャリア442とフロントキャリア441との間の固定が行われる。これにより、従来のような、リアキャリア442とフロントキャリア441との間に、別途、これらを固定するため取付ボスを設ける構成と異なり、支軸443の先端部443aとフロントキャリア441の挿通孔441bとの位置を合わせるのみならず、取付ボスと取付ボスに対応するネジ等の挿通孔との位置を合わせるように、高い精度でリアキャリア442およびフロントキャリア441を製造する必要がない。よって、遊星キャリア440、ひいては、遊星歯車機構400の製造の容易化を図ることができる。また、取付ボスが削減できることにより、遊星歯車機構400のコストを低減できる。
【0077】
さらに、本実施の形態によれば、支軸443の先端部443aとフロントキャリア441とを、カシメにより固定するようにしたので、ネジ等、両者を固定するための部品を用いることなく、リアキャリア442とフロントキャリア441とを固定することができる。
【0078】
さらに、本実施の形態によれば、太陽歯車410が発生するトルクが、4組の遊星歯車430からなる4つの伝達経路により内歯車420に伝達される。これにより、太陽歯車410のトルクを適度な大きさに分散して伝達できるとともに、遊星歯車430の大きさや歯数を適度な強度が保持できる大きさや歯数にできるので、遊星歯車430の破損等が起こりにくくなり、遊星歯車機構400の信頼性を高めることができる。
【0079】
なお、伝達経路は、4つに限らず、3つ、あるいは、5つとすることができる。即ち、上記効果が得るために、遊星歯車430による伝達経路が3ないし5の範囲に設定される。伝達経路が2つ以下である場合には、トルクを適度に分散できず遊星歯車430に加わるルクが大きくなり、遊星歯車430が破損しやすくなる。また、伝達経路が6つ以上である場合には、遊星歯車430が小さくなったり歯数が細かくなったりすることで適度な強度が確保できず、やはり、遊星歯車430が破損しやすくなる。
【0080】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0081】
<変更例>
図11は、変更例に係る、遊星キャリア440の構成について説明するための図である。
【0082】
上記実施の形態では、カシメによって、フロントキャリア441が支軸443の先端部443aに固定される。これに対し、本変更例では、ネジ447によって、フロントキャリア445が支軸446の先端部446aに固定される。
【0083】
支軸446の先端部446aには、ネジ孔446bが形成される。一方、フロントキャリア445には、ネジ447が通される挿通孔445aと、ネジ447の頭部を収容する窪み部445bと、支軸446の先端部446aが挿入される挿入凹部445cが形成される。フロントキャリア445のその他の構成は、上記実施の形態のフロントキャリア441と同様である。
【0084】
支軸446の先端部446aがフロントキャリア445の挿入凹部445cに挿入されると、フロントキャリア445の挿通孔445aと支軸446のネジ孔446bとが整合する。ネジ447が、挿通孔445aに通されてネジ孔446bに止められる。これにより、フロントキャリア445が支軸446の先端部446aに固定される。
【0085】
本変更例によれば、フロントキャリア445と支軸446の先端部446aとがネジ447にて固定されているので、ネジ447を取り外すことで、容易に遊星キャリア440を分解できる。これにより、たとえば、遊星歯車430が破損した際、新たな遊星歯車430に容易に交換できる。
【0086】
<その他の変更例>
上記実施の形態では、リアキャリア442に、別部材である支軸443の基端部443bが固定される。しかしながら、
図12に示すように、リアキャリア448に一体形成された支軸449の先端部449aが、カシメによってフロントキャリア441に固定されても良い。同様に、変更例の支軸446も、リアキャリア442に一体形成されて良い。
【0087】
さらに、上記実施の形態では、リアキャリア442に、予め支軸443が圧入固定され、支軸443に遊星歯車430が装着された後、支軸443の先端部443aがカシメによりフロントキャリア441に固定される。しかしながら、遊星キャリア440は、フロントキャリア441に、予め支軸443が圧入固定され、支軸443に遊星歯車430が装着された後、支軸443の先端部443aがカシメによりリアキャリア442に固定されるような構成とされても良い。この場合も、変更例と同様、リアキャリア442と支軸443の先端部443aとがネジにより固定されても良い。この場合は、フロントキャリア441が本発明の第1キャリアに相当し、リアキャリア442が本発明の第2キャリアに相当することとなる。
【0088】
さらに、上記実施の形態では、リアキャリア442の正面に突起部442cが形成され、フロントキャリア441が支軸443の先端部443aに装着されたとき、突起部442cの上面がフロントキャリア441の背面に接触する。しかしながら、遊星キャリア440は、フロントキャリア441の背面に突起部が形成され、フロントキャリア441が支軸443の先端部443aに装着されたとき、突起部の下面がリアキャリア442の正面に接触するような構成とされても良い。
【0089】
さらに、上記実施の形態では、ドラム22が、水平方向に対して傾斜した傾斜軸を中心に回転する。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、ドラム22が、水平軸を中心に回転するような構成とされても良い。
【0090】
さらに、上記実施の形態のドラム式洗濯機1は、乾燥機能を備えていないが、本発明は、乾燥機能を備えたドラム式洗濯機、即ち、ドラム式洗濯乾燥機に適用することもできる。
【0091】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。