(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両用自動変速機に駆動用のオイルを供給するコントロールバルブ装置において、オイルの流路の入力側と出力側との間に介挿される電磁弁に、パルス状の駆動電流を印加することにより、前記電磁弁を制御する電磁弁制御方法であって、
a)前記電磁弁の出力側における前記オイルの圧力値を検出する、圧力検出工程と、
b)前記工程a)の後において、前記圧力値から圧力変動幅および圧力変動周期を含む圧力データを算出し、前記圧力データに基づいて、油圧状態および前記油圧状態に基づく油振状態を判定する、油圧状態判定工程と、
c)前記工程b)の後において、前記工程b)における少なくとも最新の油振状態の判定結果を一時記憶部に記憶し、前記判定結果を不揮発性メモリ内に設けられる油圧状態記憶部に出力することで、前記判定結果を記憶する、記憶工程と、
d)前記工程c)の後において、エンジンの稼働開始時に、前記記憶部に記憶された前記油振状態の判定結果に基づき、前記電磁弁に印加する駆動電流の駆動周波数を設定する、駆動条件設定工程と、
を有する、電磁弁制御方法。
車両用自動変速機に駆動用のオイルを供給するコントロールバルブ装置において、オイルの流路の入力側と出力側との間に介挿される電磁弁に、パルス状の駆動電流を印加することにより、前記電磁弁を制御する電磁弁制御方法であって、
e)前記電磁弁の出力側における前記オイルの圧力値を検出する、圧力検出工程と、
f)前記工程e)の後において、少なくとも最新の圧力値を一時記憶部に記憶し、前記圧力値を不揮発性メモリ内に設けられる油圧状態記憶部に出力することで、前記圧力値を記憶する、記憶工程と、
g)前記工程f)の後において、前記記憶部に記憶された前記圧力値から圧力変動幅および圧力変動周期を含む圧力データを算出し、前記圧力データに基づいて、油圧状態および前記油圧状態に基づく油振状態を判定する、油圧状態判定工程と、
h)前記工程g)の後において、エンジンの稼働開始時に、前記工程g)における前記油振状態の判定結果に基づき、前記電磁弁に印加する駆動電流の駆動周波数を設定する、駆動条件設定工程と、
を有する、電磁弁制御方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
<1.第1実施形態>
<1−1.コントロールバルブ装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るコントロールバルブ装置1の概略断面図である。このコントロールバルブ装置1は、自動車などの輸送機器に搭載される車両用自動変速機10にオイル(オートマチック・トランスミッション・フルード、ATF)を供給することにより、自動変速機10の駆動を制御する装置である。
図1に示すように、コントロールバルブ装置1は、アルミダイカスト等で形成されたバルブボディ11と、電磁弁20とを有する。
【0014】
バルブボディ11の内部には、オイルの流路となる複数の油路12が形成されている。複数の油路12は、バルブボディ11の内部において、複雑に入り組んでいる。ただし、
図1では、理解を容易とするために、複数の油路12のうちの一部のみを、概念的に図示している。
図1の例では、自動変速機10の下面側に、コントロールバルブ装置1が取り付けられている。油路12は、バルブボディ11の下面に設けられたオイル導入口13と、バルブボディ11の上面に設けられたオイル受渡口14との間に、形成されている。
【0015】
本実施形態の電磁弁20は、後述するスプール42を備えた、いわゆるスプール弁である。電磁弁20は、本体部21とノズル部22とを有する。ノズル部22は、本体部21から下方へ向けて、略円筒状に突出する。ノズル部22の側面には、オイル入力ポート411およびオイル出力ポート412が設けられている。電磁弁20は、ノズル部22内に配置されたスプール42を動作させることにより、オイル入力ポート411とオイル出力ポート412との連通状態を切り替える。
【0016】
電磁弁20のノズル部22は、バルブボディ11内において、油路12の経路途中に介挿される。以下では、油路12のうち、ノズル部22よりも入力側の部分を、第1油路121と称する。また、油路12のうち、ノズル部22よりも出力側の部分を、第2油路122と称する。第1油路121は、バルブボディ11のオイル導入口13と、ノズル部22のオイル入力ポート411とを繋ぐ。第2油路122は、ノズル部22のオイル出力ポート412と、バルブボディ11のオイル受渡口14とを繋ぐ。
【0017】
コントロールバルブ装置1の使用時には、図示しないオイルポンプによって加圧されたオイルが、オイル導入口13から第1油路121内へ導入される。また、第2油路122と自動変速機10との間で、オイル受渡口14を介してオイルが流動する。
【0018】
また、このコントロールバルブ装置1は、オイルの圧力および温度を計測するセンサ15を有する。センサ15は、電磁弁20のノズル部22よりも出力側の第2油路122内において、オイルの圧力および温度を計測する。本実施形態では、オイルの圧力とオイルの温度とが、ユニット化された単一のセンサ15で計測される。すなわち、センサ15は、油圧センサ151(
図3参照)および油温センサ152(
図3参照)を含む。ただし、油圧センサ151と、油温センサ152とが、別々に設けられていてもよい。
【0019】
<1−2.電磁弁の構成>
続いて、電磁弁20の構造について、より詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜のため、電磁弁20の中心軸9と平行な方向を「軸方向」、電磁弁20の中心軸9に直交する方向を「径方向」、電磁弁20の中心軸9を中心とする円弧に沿う方向を「周方向」、とそれぞれ称する。
【0020】
図2は、電磁弁20の断面図である。この電磁弁20は、ソレノイド32に供給される駆動電流に応じて、開度を連続的に変化させることができる、いわゆる比例電磁弁である。上述の通り、本実施形態の電磁弁20は、本体部21とノズル部22とを有する。
【0021】
図2に示すように、本体部21は、ケーシング31、ソレノイド32、コア33、プランジャ34、およびロッド35を有する。ケーシング31は、略円筒形状の外壁部311を有する。ソレノイド32、コア33、プランジャ34およびロッド35は、当該外壁部311の内側に収容される。
【0022】
ソレノイド32は、中心軸9の周囲に巻き回された導線により構成される。コア33の少なくとも一部分、プランジャ34、およびロッド35は、ソレノイド32の径方向内側に位置する。プランジャ34は、コア33の上方に配置されている。コア33の上面とプランジャ34の下面とは、軸方向に対向する。また、コア33およびプランジャ34の材料には、鉄などの磁性体が用いられる。
【0023】
ロッド35は、中心軸9に沿って延びる略円柱状の部材である。プランジャ34とロッド35とは、互いに固定されている。また、ロッド35は、プランジャ34の上下に配置された一対の軸受36に支持されている。このため、プランジャ34およびロッド35は、一体として、軸方向に移動可能となっている。
【0024】
ノズル部22は、スリーブ41、スプール42、およびスプリング43を有する。スリーブ41は、中心軸9に沿って延びる略円筒状の部材である。スリーブ41の下端部は、円板状の底部材410により閉塞されている。スリーブ41には、オイル入力ポート411、オイル出力ポート412、2つのフィードバックポート413、および排出ポート414が設けられている。これら各ポート411〜414は、スリーブ41の内部空間と、スリーブ41の外部の油路とを連通する。
【0025】
スプール42は、スリーブ41の内部に収容されている。本実施形態のスプール42は、スプール軸420、第1弁体421、第2弁体422、および第3弁体423を有する。スプール軸420は、中心軸9に沿って延びる円柱状の部材である。各弁体421〜423は、それぞれ、スプール軸420の周囲に固定されるとともに、スリーブ41の内周面に接触する。
【0026】
ロッド35の下端部と、スプール42の上端部とは、互いに接触する。また、スプール42の下端部と、底部材410との間には、弾性体であるスプリング43が、軸方向に圧縮された状態で、介挿されている。したがって、スプール42およびロッド35は、スプリング43から、常に上向きの圧力を受ける。
【0027】
ソレノイド32に駆動電流が供給されていないときには、プランジャ34、ロッド35、およびスプール42は、スプリング43からの圧力によって、上側へ移動する。一方、ソレノイド32に駆動電流を供給すると、コア33が励磁されて、プランジャ34がコア33に引き付けられる。その結果、プランジャ34、ロッド35、およびスプール42が、下側へ移動する。また、ロッド35が上下に移動すると、ロッド35に固定された3つの弁体421〜423の位置も、上下に移動する。これにより、オイル入力ポート411からオイル出力ポート412へと流れるオイルの流量が変化する。
【0028】
<1−3.電磁弁制御装置の構成>
続いて、上記の電磁弁20を動作制御する電磁弁制御装置50について、説明する。電磁弁制御装置50は、例えば、複数の電子部品が搭載された回路基板によって、実現される。ただし、電磁弁制御装置50の機能の一部または全部を、マイクロコントローラや、汎用のコンピュータによって、実現してもよい。
【0029】
図3は、電磁弁制御装置50の構成を示したブロック図である。
図3に示すように、本実施形態の電磁弁制御装置50は、稼働状態入力部51、駆動条件設定部52、電磁弁駆動回路53、圧力データ算出部54、判定条件設定部55、油圧状態判定部56、および一時記憶部57を有する。また、電磁弁制御装置50は、不揮発性メモリ60を有する。不揮発性メモリ60は、油圧状態記憶部61と、判定マップ記憶部62とを有する。
【0030】
稼働状態入力部51は、エンジンの稼働状態が入力される入力ポートである。稼働状態入力部51には、コントロールバルブ装置1および自動変速機10が搭載される自動車等の車両から、CAN(Controller Area Network)等の車内通信手段を介して、車両情報Cが入力される。車両情報Cには、エンジンの稼働開始情報、エンジンの稼働停止情報、およびエンジンの回転数等のエンジンの稼働状態の情報が含まれる。また、車両情報Cには、例えば、車両の種類および自動変速機10の種類等の情報が含まれる。
【0031】
稼働状態入力部51は、車両情報Cとしてエンジンの稼働開始情報が入力されると、駆動条件設定部52に対してエンジン稼働開始信号S511を出力する。すなわち、稼働状態入力部51は、入力された車両情報Cに基づいて、エンジンに対して稼働指令信号が入力されたと判断すると、駆動条件設定部52に対してエンジン稼働開始信号S511を出力する。一方、稼働状態入力部51は、車両情報Cとしてエンジンの稼働停止情報が入力されると、一時記憶部57に対してエンジン稼働停止信号S512を出力する。
【0032】
稼働状態入力部51は、車両の種類および自動変速機10の種類を示す種類情報S513を、判定条件設定部55に対して出力する。また、エンジンの稼働期間中、稼働状態入力部51は、車両情報Cに基づいて、判定条件設定部55に対してエンジンの回転数S514を出力する。
【0033】
駆動条件設定部52は、エンジンに対して稼働指令信号が入力されたと判断すると、油圧状態記憶部61に記憶された過去情報S61に基づいて、電磁弁20の駆動条件を設定する。具体的には、稼働状態入力部51からエンジン稼働開始信号S511が入力されると、過去情報S61に含まれる過去の判定結果に基づいて、電磁弁駆動回路53が電磁弁20へ供給する駆動電流S53の駆動周波数fを設定する。そして、駆動条件設定部52は、設定した駆動周波数fの情報を含む駆動条件指令信号S52を、電磁弁駆動回路53へ出力する。駆動周波数fの設定方法の詳細な説明については、後述する。
【0034】
本実施形態では、油圧状態記憶部61には、前回のエンジンの連続した稼働時間のうち、最後に判定された判定結果である終期判定結果が記憶される。すなわち、駆動条件設定部52は、前回の終期判定結果に基づいて、駆動周波数fを設定する。
【0035】
電磁弁駆動回路53は、駆動条件指令信号S52に基づいて、駆動電流S53を生成する。電磁弁駆動回路53は、駆動条件指令信号S52により指定される駆動周波数fと、別途指定される駆動電流値とに基づいて、パルス状の駆動電流(PWM信号)を生成する。そして、電磁弁駆動回路53は、生成した駆動電流S53を、電磁弁20に印加する。電磁弁20のソレノイド32に駆動電流S53が供給されると、その駆動電流値に応じて電磁弁20のスプール42が移動する。これにより、自動変速機10へ供給されるオイルの量が制御される。
【0036】
圧力データ算出部54は、センサ15の油圧センサ151から取得したオイルの圧力値S151を解析し、圧力値S151の変動幅ΔPと、圧力値S151の変動周期Tとを算出する。そして、当該変動幅ΔPおよび変動周期Tを含む圧力データS54を、油圧状態判定部56へ出力する。
【0037】
判定マップ記憶部62には、複数の判定マップMが記憶されている。判定マップMはそれぞれ、エンジンの回転数とオイルの温度とに対応する複数の閾値の情報を有している。具体的には、判定マップMは、エンジンの回転数およびオイルの温度の組み合わせに対して、基準圧力変動幅ΔPo、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、および基準変動周期Toの組み合わせを、対応付けて保持している。第1圧力閾値ΔP1は、基準圧力変動幅ΔPoよりも大きい値を有する。また、第2圧力閾値ΔP2は、第1圧力閾値ΔP1よりも大きい値を有する。
【0038】
本実施形態では、このような判定マップMが、車両の種類および自動変速機10の種類に応じて、複数用意されている。判定条件設定部55は、稼働状態入力部51から入力された種類情報S513に基づいて、当該種類情報S513に適合する判定マップMを、判定マップ記憶部62から読み出す。
【0039】
また、判定条件設定部55は、油温センサ152からオイルの温度を示す油温情報S152を取得する。判定条件設定部55は、判定マップ記憶部62から読み出した判定マップMを参照し、稼働状態入力部51から取得したエンジンの回転数S514と、油温センサ152から取得した油温情報S152とに対応する、基準圧力変動幅ΔPo、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、および基準変動周期Toを決定する。そして、判定条件設定部55は、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、第3圧力閾値ΔP3、および基準変動周期T0を含む判定条件S55を、油圧状態判定部56へ出力する。
【0040】
油圧状態判定部56は、圧力データ算出部54から入力される圧力データS54と、判定条件設定部55から入力される判定条件S55とに基づいて、油圧状態を判定する。すなわち、油圧状態判定部56は、電磁弁20の出力側におけるオイルの圧力値S151から、油圧状態を判定する。本実施形態では、油圧状態の一例として、オイルの脈動である油振の発生状態が判定される。なお、油圧状態判定部56は、エンジンの稼働期間中、所定の間隔で油圧状態の判定を行う。これにより、油圧状態判定部56は、1回のエンジンの連続した稼働期間において、油圧状態を複数回判定する。
【0041】
本実施形態では、油圧状態判定部56は、油圧状態を2[msec]ごとに、許容状態、油振レベルL=1、油振レベルL=2、および油振レベルL=3の4種類のいずれかに振り分ける。
【0042】
具体的には、油圧状態判定部56は、圧力値S151の変動幅ΔPがΔP≦ΔP1である、または、圧力値S151の変動周期TがT≧T0である場合に、油圧状態が許容状態(油振レベルL=0)であると判定する。また、油圧状態判定部56は、変動幅ΔPがΔP>ΔP1、かつ、変動周期TがT<T0である場合に、油圧状態が油振状態であると判定する。
【0043】
油振状態について、油圧状態判定部56は、変動幅ΔPがΔPo<ΔP≦ΔP2である場合に、油圧状態が油振レベルL=1(第1レベル)であると判断する。油圧状態判定部56は、変動幅ΔPがΔP2<ΔP≦ΔP3である場合に、油圧状態が油振レベルL=2(第2レベル)であると判断する。また、油圧状態判定部56は、変動幅ΔPがΔP>ΔP3である場合に、油圧状態が油振レベルL=3(第3レベル)であると判断する。
【0044】
そして、油圧状態判定部56は、油圧状態の判定結果S56を、一時記憶部57へと出力する。
【0045】
一時記憶部57は、油圧状態判定部56から入力された判定結果S56を一時的に記憶する。また、一時記憶部57は、稼働状態入力部51からエンジン稼働停止信号S512が入力されると、一時記憶部57内に記憶された記憶データS57を、油圧状態記憶部61へと出力する。
【0046】
本実施形態では、一時記憶部57は、最新の判定結果S56のみを記憶する。すなわち、油圧状態判定部56から新たな判定結果S56が入力されると、一時記憶部57は、その内部に記憶される判定結果を、新たに入力された判定結果S56に更新する。これにより、油圧状態記憶部61に出力される記憶データS57は、前回のエンジンの連続した稼働期間のうち、最後に判定された判定結果である終期判定結果となる。
【0047】
なお、本実施形態では、油圧状態記憶部61に記憶される過去情報S61は、前回の終期判定結果のみであるが、本発明はこれに限られない。油圧状態記憶部61に記憶される過去情報S61は、前回のみでなく、過去のエンジンの連続した稼働期間のうち最新の複数回(例えば3回)について、それぞれの終期判定結果を時系列に記憶したものであってもよい。このように、過去情報S61に複数回の終期判定結果を含めれば、駆動条件設定部52において、より適切に駆動条件を設定できる。
【0048】
不揮発性メモリ60は、フラッシュメモリ、磁気ディスクまたは光ディスク等の、電源を供給しなくても記憶を保持する記憶装置である。油圧状態記憶部61および判定マップ記憶部62を不揮発性メモリ60内に設けることにより、エンジンの稼働期間外に電磁弁制御装置50に対する電源の供給が絶たれても、過去情報S61や複数の判定マップMなどのデータを保持し続けることができる。
【0049】
<1−4.駆動条件設定処理の流れ>
続いて、上記の電磁弁制御装置50において、駆動条件を設定する処理の流れについて説明する。
図4は、コントロールバルブ装置1の駆動時に行われる電磁弁制御装置50の駆動条件設定処理の全体の流れを示したフローチャートである。
図5は、電磁弁20の駆動中に行われる電磁弁制御装置50の定時処理の流れを示したフローチャートである。
図6は、電磁弁制御装置50の定時処理において行われる油振レベル判定処理の流れを示したフローチャートである。
【0050】
本実施形態の電磁弁制御装置50は、コントロールバルブ装置1の駆動開始時に、まず、
図4のステップST101〜ST103に示す駆動条件設定処理を行う。その後、電磁弁制御装置50は、コントロールバルブ装置1の駆動中に、
図4のステップST104および
図5に示す定時処理を、所定の間隔で繰り返し行う。定時処理の間隔は、例えば、2[msec]とする。そして、電磁弁制御装置50は、コントロールバルブ装置1の駆動終了時に、
図4のステップST106に示す不揮発性メモリ60への記憶処理を行う。
【0051】
図4に示すように、本実施形態の電磁弁制御装置50は、まず、稼働状態入力部51へ入力される車両情報Cから、エンジンに対して稼働開始指令信号が入力されたと判断する(ステップST101)。そうすると、稼働状態入力部51は、駆動条件設定部52に対してエンジン稼働開始信号S511を出力する。
【0052】
駆動条件設定部52は、エンジン稼働開始信号S511が入力されると、油圧状態記憶部61から過去の判定結果を含む過去情報S61を読み込む(ステップST102)。これにより、駆動条件設定部52は、前回のエンジンの稼働期間における終期判定結果を取得する。
【0053】
次に、駆動条件設定部52は、前回のエンジンの稼働期間における終期判定結果から、駆動周波数fを設定する(ステップST103)。本実施形態では、終期判定結果における油振レベルに応じて、予め設定された複数の周波数f0〜f3の中から駆動周波数を選択する。
【0054】
具体的には、前回の終期判定結果が許容状態(油振レベル0)である場合、駆動条件設定部52は、複数の周波数f0〜f3の中から、最も低い周波数f0を選択する。前回の終期判定結果が油振レベル1である場合、駆動条件設定部52は、周波数f0より高く、周波数f2,f3よりも低い周波数f1を選択する。前回の終期判定結果が油振レベル2である場合、駆動条件設定部52は、周波数f0,f1より高く、周波数f3よりも低い周波数f2を選択する。また、前回の終期判定結果が油振レベル3である場合、駆動条件設定部52は、周波数f0〜f3の中から、最も高い周波数f3を選択する。
【0055】
このように、駆動条件設定部52は、前回のエンジンの稼働期間において、油振レベルが高いほど、駆動周波数fを高い周波数とし、油振の発生を抑制する。一方、駆動条件設定部52は、前回のエンジンの稼働期間において、油振レベルが低いほど、駆動周波数fを低い周波数とし、電磁弁20の耐久信頼性の低下を抑制する。
【0056】
すなわち、駆動条件設定部52は、過去の油振発生状況を考慮して、これから開始されるエンジンの稼働期間における油振の発生状況を予測して、駆動周波数fを設定する。これにより、油振を許容範囲内に収めつつ、電磁弁20の耐久信頼性の低下を抑制できる。
【0057】
駆動周波数fが設定された後で、電磁弁20の駆動が開始されると、電磁弁20駆動時の定期処理が行われる(ステップST104)。ステップST104の定期処理が終了するごとに、電磁弁制御装置50は、車両情報Cにエンジンの稼働停止情報が含まれているか否かを判断する(ステップST105)。
【0058】
ステップST105において、電磁弁制御装置50は、車両情報Cにエンジンの稼働停止情報が含まれていない判断すると、ステップST104に戻り、定期処理を再度行う。
【0059】
また、ステップST105において、電磁弁制御装置50は、車両情報Cにエンジンの稼働停止情報が含まれていると判断すると、次の定期処理を行わずに、記録された油振レベルLを一時記憶部57から出力し、不揮発性メモリ60の油圧状態記憶部61に記録する。
【0060】
続いて、ステップST104で行われる定期処理について、
図5を参照しつつ説明する。定期処理の開始時には、まず、電磁弁制御装置50は、各信号の読み込みを行う(ステップST201)。
【0061】
具体的には、圧力データ算出部54が、油圧センサ151から出力される圧力値S151を読み込むとともに、判定条件設定部55が、油温センサ152から出力される油温情報S152を読み込む。また、電磁弁制御装置50の稼働状態入力部51が、車両情報Cからエンジンの回転数S514および種類情報S513を判定条件設定部55へと出力する。
【0062】
そして、圧力データ算出部54は、ステップS201において入力された圧力値S151を解析して、圧力値S151の変動幅ΔPを算出する(ステップST202)。このステップST202では、例えば、圧力値S151の微分値がゼロとなる時点間における圧力値S151の差分を、圧力値S151の変動幅ΔPとすればよい。ただし、他の計算方法で、圧力値S151の変動幅ΔPを算出してもよい。
【0063】
一方、判定条件設定部55は、判定条件である第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、第3圧力閾値ΔP3、および基準変動周期T0を設定する(ステップST203)。ステップST203では、まず、種類情報S513に含まれる車両の種類および自動変速機10の種類を参照し、それらに適合する判定マップMを、判定マップ記憶部62から読み出す。そして、判定条件設定部55は、判定マップMを参照し、油温情報S152およびエンジンの回転数S153に対応する第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、第3圧力閾値ΔP3、および基準変動周期T0を決定する。
【0064】
ステップST203において、エンジンの回転数S153および油温情報S154が判定マップM内に対応する値を有していない場合(ステップST204においてNoの場合)、ステップST210へと進む。そして、判定条件外として、油振レベルの判定を行うことなく定期処理を終了する(ステップST210)。
【0065】
本実施形態では、判定マップMには、エンジンの回転数S153が600[rpm]以上の場合の各判定条件が記載されている。そのため、エンジンの回転数S153が600[rpm]未満の場合に、判定対象外となる。なお、エンジンの回転数S153が一定以上の場合を判定対象外としてもよいし、油温情報S154に基づいて判定対象を定めてもよい。
【0066】
一方、ステップST203において、エンジンの回転数S153および油温情報S154が判定マップM内に対応する値を有しており、各判定条件を設定できた場合(ステップST204においてYesの場合)、ステップST205へと進む。
【0067】
なお、本実施形態では、ステップST203〜ST204はステップST202の後で行われているが、本発明はこの限りではない。ステップST203〜ST204は、ステップST202よりも前に行われてもよいし、ステップST202と並行して行われてもよい。
【0068】
ステップST205では、油圧状態判定部56は、圧力値S151の変動幅ΔPが、第1圧力閾値ΔP1よりも大きいか否かを判定する。変動幅ΔPが、第1圧力閾値ΔP1以下である場合、油振はほとんど生じていない。このため、ΔP≦ΔP1の場合(ステップST205においてNoの場合)には、油振の有無に関する他の判断処理(ステップST206〜ST208)を行わずに、ステップST211へと進む。そして、ステップST211において、許容状態を示す油振レベルL=0と判定される。
【0069】
一方、ΔP>ΔP1の場合(ステップST205においてYesの場合)には、次に、圧力データ算出部54が、ステップST201において受信した圧力値S151を解析して、圧力値S151の変動周期Tを算出する(ステップST206)。このステップST206では、例えば、圧力値S151の微分値がゼロとなる時点の時間間隔を、圧力値S151の変動周期Tとすればよい。ただし、他の計算方法で、圧力値S151の変動周期8Tを算出してもよい。
【0070】
続いて、油圧状態判定部56は、圧力値S151の変動周期Tが基準変動周期T0よりも小さいか否かを判定する(ステップST207)。圧力値S151の変動周期Tが基準変動周期T0以上の場合は、オイルの圧力変化が緩やかであるため、油振による弊害が起きにくい。このため、T≧T0の場合(ステップST207においてNoの場合)には、ステップST211へと進む。そして、ステップST211において、許容状態を示す油振レベルL=0と判定される。
【0071】
一方、T<T0の場合(ステップST207においてYesの場合)には、次に、油圧状態判定部56が、油振レベルの判定を行う(ステップST208)。ここで、ステップST208における油振レベルの判定工程の詳細について、
図6を参照しつつ説明する。
【0072】
ステップST208における油振レベルの判定工程では、まず、油圧状態判定部56は、圧力値S151の変動幅ΔPが第2圧力閾値ΔP2以下であるか否かを判定する(ステップST301)。ΔP≦ΔP2の場合(ステップST301においてYesの場合)、ステップST302へ進み、油振が比較的小さい油振レベルL=1と判定される。また、ΔP>ΔP2の場合(ステップST301においてNoの場合)、ステップST303へと進む。
【0073】
ステップST303では、油圧状態判定部56は、圧力値S151の変動幅ΔPが第3圧力閾値ΔP3以下であるか否かを判定する。ΔP≦ΔP3の場合(ステップST303においてYesの場合)、すなわち、ΔP2<ΔP≦ΔP3の場合、ステップST304へ進み、油振レベルL=2と判定される。また、ΔP>ΔP3の場合、ステップST305へと進み、油振が比較的大きい油振レベルL=3と判定される。
【0074】
このように、ステップST208における油振レベルの判定工程では、圧力値S151の変動幅ΔPの値に応じて、油振レベルLが判定される。
【0075】
ステップST208またはステップST211において油振レベルLが判定されると、その後、油振レベルLが一時記憶部57に記憶される(ステップST209)。なお、本実施形態では、油圧状態判定部56から一時記憶部57へ新たな油振レベルLが入力されると、一時記憶部57は、記憶された油振レベルLを、新たな油振レベルLに更新する。すなわち、一時記憶部57内には、最新の油振レベルLのみが記憶されている。なお、一時記憶部57内には、時系列で複数の油振レベルLを記憶させてもよい。
【0076】
1回の連続したエンジンの駆動期間において、通常、時間の経過とともに油振が大きくなる。そのため、少なくとも最新の油振レベルLを一時記憶部57に記憶させることにより、油圧状態記憶部61に対して、当該駆動期間のうち最後に判定された判定結果である終期判定結果を出力できる。
【0077】
このように、油圧状態判定部56が判定した油振レベルLを油圧状態記憶部61に記憶させておくことにより、次回のエンジン稼働開始時に、当該駆動期間における油振状態を考慮して駆動周波数fを設定することができる。これにより、過去の油振発生状況を考慮して駆動周波数fを設定することで、次回のエンジンの駆動期間における油振の発生状況を予測して、駆動周波数fを設定することができる。その結果、油振を許容範囲内に収めつつ、電磁弁の耐久信頼性の低下を抑制できる。
【0078】
<2.第2実施形態>
<2−1.電磁弁制御装置の構成>
続いて、第2実施形態に係る電磁弁制御装置50Aについて、
図7を参照しつつ説明する。この電磁弁制御装置50Aでは、油振レベルの判定を、コントロールバルブ装置の駆動期間中に行われる定期処理で行わず、コントロールバルブ装置の駆動前に行う。なお、第2実施形態の構成のうち、第1実施形態と共通する部分については、説明を省略する。
図7は、電磁弁制御装置50Aの構成を示したブロック図である。
【0079】
図7に示すように、電磁弁制御装置50Aは、稼働状態入力部51A、駆動条件設定部52A、電磁弁駆動回路53A、圧力データ算出部54A、判定条件設定部55A、油圧状態判定部56A、および一時記憶部57Aを有する。また、電磁弁制御装置50Aは、不揮発性メモリ60Aを有する。不揮発性メモリ60Aは、油圧状態記憶部61Aと、判定マップ記憶部62Aとを有する。
【0080】
稼働状態入力部51Aは、エンジンの稼働状態が入力される入力ポートである。具体的には、稼働状態入力部51Aには、エンジンの稼働開始情報、エンジンの稼働停止情報、およびエンジンの回転数等のエンジンの稼働状態や、車両の種類および自動変速機10の種類等の情報が含まれる車両情報Cが入力される。稼働状態入力部51Aは、車両情報Cに基づいて、駆動条件設定部52Aおよび油圧状態判定部56Aに対してエンジンの稼働開始信号S511Aを出力する。また、稼働状態入力部51Aは、エンジン稼働停止信号S512A、車両の種類および自動変速機10の種類を示す種類情報S513A、および、エンジンの回転数S514Aを一時記憶部57Aへ出力する。
【0081】
駆動条件設定部52Aは、エンジンに対して稼働指令信号が入力され、油圧状態判定部56Aから前回のエンジン駆動期間における油圧状態の判定結果S56Aが入力されると、当該判定結果S56Aに基づいて、電磁弁20Aの駆動条件を設定する。具体的には、駆動条件設定部52Aは、判定結果S56Aに基づいて、電磁弁駆動回路53が電磁弁20Aへ供給する駆動電流S53の駆動周波数fを設定する。
【0082】
本実施形態では、油圧状態判定部56Aから駆動条件設定部52Aに、前回のエンジンの連続した稼働時間のうち、最も油圧状態が悪いと判定された判定結果であるワースト判定結果が入力される。すなわち、駆動条件設定部52Aは、前回の稼働期間のワースト判定結果に基づいて、駆動周波数fを設定する。
【0083】
電磁弁駆動回路53Aは、第1実施形態に係る電磁弁駆動回路53Aと同様である。
【0084】
圧力データ算出部54Aは、センサ15Aの油圧センサ151Aから取得したオイルの圧力値S151Aを解析し、圧力値S151Aの変動幅ΔPと、圧力値S151Aの変動周期Tとを算出する。そして、当該変動幅ΔPおよび変動周期Tを含む圧力データS54Aを、一時記憶部57Aへ出力する。なお、圧力データ算出部54Aは、エンジンの稼働期間中、所定の間隔でこれらのデータの算出を行う。
【0085】
判定条件設定部55Aは、種類情報S513Aに基づいて判定マップ記憶部62Aから読み出した判定マップMを参照し、各時刻における油温情報S152Aおよびエンジンの回転数S514Aに対応する、基準圧力変動幅ΔPo、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、および基準変動周期Toを決定する。そして、判定条件設定部55Aは、基準圧力変動幅ΔPo、第1圧力閾値ΔP1、第2圧力閾値ΔP2、および基準変動周期Toを含む判定条件S55Aを、油圧状態判定部56Aへ出力する。
【0086】
判定条件設定部55Aには、油圧状態判定部56Aから、前回のエンジン稼働期間における種類情報S513Aが入力される。また、判定条件設定部55Aには、油圧状態判定部56Aから、前回稼働時の各時刻における油温情報S152Aおよびエンジンの回転数S514Aが入力される。
【0087】
油圧状態判定部56Aは、稼働状態入力部51Aからエンジンの稼働開始信号S511Aが入力されると、油圧状態記憶部61A内に記憶された過去情報S61Aを読み出して、前回のエンジンの稼働期間における油圧状態を判定する。具体的には、過去情報S61Aに含まれる圧力データS54Aと、当該圧力データS54Aに対応する判定条件S55Aとに基づいて、各時刻における油圧状態を判定する。すなわち、油圧状態判定部56Aは、圧力データS54Aを介して、電磁弁20の出力側におけるオイルの圧力値S151Aから、油圧状態を判定する。
【0088】
本実施形態の油圧状態判定部56Aは、前回のエンジンの稼働期間全体に亘って記憶された圧力データS54Aの全てについて、油圧状態の判定を行う。その後、判定した油圧状態のうち、最も油圧状態が悪いと判定された判定結果であるワースト判定結果S56Aを駆動条件設定部52Aに出力する。
【0089】
一時記憶部57Aは、圧力データ算出部54Aから入力された圧力データS54Aを時系列で記憶する。一時記憶部57Aは、同時に、稼働状態入力部51Aから入力されたエンジンの回転数S514Aについても、時系列で記憶する。また、一時記憶部Aは、稼働状態入力部51Aから入力された種類情報S513Aを記憶する。
【0090】
一時記憶部57Aは、稼働状態入力部からエンジン稼働停止信号S512Aが入力されると、当該稼働期間における時系列の圧力データS54Aおよびエンジンの回転数S514Aと、種類情報S513Aとを、油圧状態記憶部61Aへと出力する。
【0091】
<2−2.駆動条件設定処理の流れ>
続いて、上記の電磁弁制御装置50Aにおいて、駆動条件を設定する処理の流れについて説明する。
図8は、コントロールバルブ装置の駆動時に行われる電磁弁制御装置50Aの駆動条件設定処理の全体の流れを示したフローチャートである。
図9は、電磁弁制御装置50Aの過去データ解析処理の流れを示したフローチャートである。
図10は、電磁弁制御装置の定期処理の流れを示したフローチャートである。
【0092】
本実施形態の電磁弁制御装置50Aは、コントロールバルブ装置の駆動開始時に、まず、
図8のステップST401〜ST404に示す駆動条件設定処理を行う。その後、電磁弁制御装置50Aは、コントロールバルブ装置の駆動中に、
図8のステップST405および
図10に示す定時処理を、所定の間隔で繰り返し行う。定時処理の間隔は、例えば、2[msec]とする。そして、電磁弁制御装置50Aは、コントロールバルブ装置の駆動終了時に、
図8のステップST407に示す不揮発性メモリ60Aへの記憶処理を行う。
【0093】
図8に示すように、本実施形態の電磁弁制御装置50Aは、まず、稼働状態入力部51Aへ入力される車両情報Cから、エンジンに対して稼働開始指令信号が入力されたと判断する(ステップST401)。そうすると、稼働状態入力部51は、駆動条件設定部52Aおよび油圧状態判定部56Aに対してエンジン稼働開始信号S511Aを出力する。
【0094】
油圧状態判定部56Aは、エンジン稼働開始信号S511Aが入力されると、油圧状態記憶部61Aから過去の圧力データS54Aを含む過去情報S61Aを読み込む(ステップST402)。ここで、過去情報S61Aには、種類情報S513Aと、時刻n=1〜n=ndまでのnd組の圧力データS54A、油温情報S152A、およびエンジンの回転数S514Aとが含まれている。
【0095】
次に、油圧状態判定部56Aは、ステップST402で取得した過去の圧力データ54A(以後、「過去データ」と称する)の解析を行う(ステップST403)。ここで、ステップST403における過去データ解析処理の流れについて、
図9を参照しつつ説明する。
【0096】
ステップST403における過去データ解析処理では、まず、油圧状態判定部56Aは、過去情報S61Aに含まれる種類情報S513Aと、解析対象の時刻nにおけるエンジンの回転数S514Aおよび油温情報S152とを、判定条件設定部55Aへ出力する。そして、判定条件設定部55Aは、判定条件である第1圧力閾値ΔP1n、第2圧力閾値ΔP2n、第3圧力閾値ΔP3n、および基準変動周期T0nを設定する(ステップST501)。
【0097】
なお、ステップST403の開始前において、解析対象の時刻nは、n=1に設定されている。そのため、ステップST403のうち、初回のステップST501〜ST509においては、時刻n=1における油振レベルLnの判定が行われる。
【0098】
ステップST501では、まず、種類情報S513Aに含まれる車両の種類および自動変速機の種類を参照し、それらに適合する判定マップMを、判定マップ記憶部62Aから読み出す。そして、判定条件設定部55Aは、判定マップMを参照し、時刻nにおける油温情報S152Aおよびエンジンの回転数S153Aに対応する第1圧力閾値ΔP1n、第2圧力閾値ΔP2n、第3圧力閾値ΔP3n、および基準変動周期T0nを決定する。
【0099】
ステップST501において、エンジンの回転数S153Aおよび油温情報S152Aが判定マップM内に対応する値を有していない場合(ステップST502においてNoの場合)、ステップST506へと進む。そして、判定条件外として、油振レベルの判定を行うことなく定期処理を終了する(ステップST506)。
【0100】
一方、ステップST501において、エンジンの回転数S153Aおよび油温情報S152Aが判定マップM内に対応する値を有しており、各判定条件を設定できた場合(ステップST502においてYesの場合)、ステップST503へと進む。
【0101】
ステップST503では、油圧状態判定部56Aが、時刻nにおける圧力値S151Aの変動幅ΔPnが、第1圧力閾値ΔP1nよりも大きいか否かを判定する。変動幅ΔPnが、第1圧力閾値ΔP1n以下である場合、油振はほとんど生じていない。このため、ΔPn≦ΔP1nの場合(ステップST503においてNoの場合)には、油振の有無に関する他の判断処理(ステップST504〜ST505)を行わずに、ステップST507へと進む。そして、ステップST507において、許容状態を示す油振レベルLn=0と判定される。なお、油振レベルLnは、時刻nにおける油振レベルを表す。
【0102】
一方、ΔPn>ΔP1nの場合(ステップST502においてYesの場合)には、次に、油圧状態判定部56Aが、時刻nにおける圧力値S151Aの変動周期Tnが基準変動周期T0nよりも小さいか否かを判定する(ステップST504)。圧力値S151Aの変動周期Tnが基準変動周期T0n以上の場合は、オイルの圧力変化が緩やかであるため、油振による弊害が起きにくい。このため、Tn≧T0nの場合(ステップST504においてNoの場合)には、ステップST507へと進む。そして、ステップST507において、許容状態を示す油振レベルLn=0と判定される。
【0103】
一方、Tn<T0nの場合(ステップST504においてYesの場合)には、次に、油圧状態判定部56が、時刻nにおける油振レベルLnの判定を行う(ステップST505)。ここで、ステップST505における油振レベルの判定工程の詳細については、
図6に示す第1実施形態の油振レベルの判定工程と同様であるため、説明を省略する。
【0104】
ステップST505またはステップST507において油振レベルLnが判定されると、その後、判定対象となる時刻nをインクリメントされる(ステップST508)。そして、次の判定対象となる新たな時刻nがndよりも大きいか否かが判断される(ステップST509)。なお、前述の通り、過去情報S61Aには、時刻n=1〜ndまでのnd組の圧力データS54等のデータが含まれている。そのため、時刻n=ndにおける各データは、前回のエンジン停止直前におけるデータである。
【0105】
ステップST509において、次の判定対象となる新たな時刻nがnd以下である場合(ステップST509においてNoの場合)、ステップST501へと戻り、新たな時刻nについての解析処理が開始される。
【0106】
ステップST509において、次の判定対象となる新たな時刻nがndよりも大きい場合(ステップST509においてYesの場合)、過去情報S61Aに含まれる全ての時刻n=1〜ndについての過去データの解析が終了しているため、
図9に示す過去データ解析処理を終了し、
図8のステップST404へと進む。
【0107】
図8のステップST403および
図9に示す過去データ解析処理が終了すると、油圧状態判定部56Aは、過去情報S61Aに含まれる全ての時刻n=1〜ndについてのそれぞれの油振レベルLnのうち最も大きい油振レベルであるワースト油振レベルLwを駆動条件設定部52Aへと出力する。ワースト油振レベルLwは、すなわち、前回のエンジンの連続した稼働期間において最も油圧状態が悪いと判定された判定結果であるワースト判定結果である。
【0108】
そして、駆動条件設定部52Aは、前回のエンジンの稼働期間におけるワースト油振レベルLwに基づいて、駆動周波数fを設定する(ステップST404)。ステップST404における駆動周波数fの設定方法については、第1実施形態における
図4のステップST103と同様であるため、説明を省略する。
【0109】
このように、本実施形態では、エンジン稼働開始時に、過去のワースト油振レベルLwを考慮して駆動周波数fを設定する。このため、過去の油振発生状況を考慮して駆動周波数fを設定することで、次回のエンジンの駆動期間における油振の発生状況を予測して、駆動周波数fを設定することができる。その結果、油振を許容範囲内に収めつつ、電磁弁の耐久信頼性の低下を抑制できる。
【0110】
駆動周波数fが設定された後で、電磁弁20の駆動が開始されると、電磁弁20駆動時の定期処理が行われる(ステップST405)。ステップST405の定期処理が終了するごとに、電磁弁制御装置50Aは、車両情報Cにエンジンの稼働停止情報が含まれているか否かを判断する(ステップST406)。
【0111】
ステップST406において、電磁弁制御装置50Aは、車両情報Cにエンジンの稼働停止情報が含まれていないと判断すると、ステップST405に戻り、定期処理を再度行う。
【0112】
また、ステップST406において、電磁弁制御装置50Aは、車両情報Cにエンジンの稼働停止情報が含まれていると判断すると、次の定期処理を行わずに、一時記憶部57A内に記録された各データを不揮発性メモリ60Aへと出力し、不揮発性メモリ60Aの油圧状態記憶部61Aに記録する。
【0113】
続いて、ステップST405で行われる定期処理について、
図10を参照しつつ説明する。なお、ステップST405の開始前において、時刻nは、n=1とするように設定されている。
【0114】
定期処理の開始時には、まず、電磁弁制御装置50Aは、各信号の読み込みを行う(ステップST601)。具体的には、圧力データ算出部54Aが、油圧センサ151Aから出力される圧力値S151Aを読み込む。電磁弁制御装置50Aは、この圧力データ算出部54Aによる圧力値S151Aの読み込みが行われた時刻をnとする。
【0115】
また、圧力データ算出部54Aの読み込みと同時に、この時刻nにおける油温情報S152Aと、時刻nにおけるエンジンの回転数S514Aとが、油温センサ152Aおよび稼働状態入力部51Aから一時記憶部57Aへと入力される。そして、一時記憶部57Aは、時刻n、時刻nにおける油温情報S152A、時刻nにおけるエンジンの回転数S514Aを記憶する。
【0116】
そして、圧力データ算出部54Aは、ステップS601Aにおいて入力された圧力値S151Aを解析して、圧力値S151Aの変動幅ΔPnおよび圧力変動周期Tnを算出する(ステップST602)。
【0117】
続いて、圧力データ算出部54Aから入力される時刻n、変動幅ΔPnおよび圧力変動周期Tnが一時記憶部57Aへと出力される。一時記憶部57Aは、ステップST601において記憶した時刻nにおける油温情報S152Aおよびエンジンの回転数S514Aとともに、変動幅ΔPnおよび圧力変動周期Tnを記憶する(ステップST603)。
【0118】
その後、時刻nがインクリメントされる(ステップST604)。これにより、既に一時記憶部57A内に記憶される各データと、次回以降の定期処理において一時記憶部57A内に記憶される各データとの時系列関係を判別できる。
【0119】
この第2実施形態のように、油振レベルの判定を、コントロールバルブ装置の駆動期間中に行われる定期処理で行わず、コントロールバルブ装置の駆動前に行ってもよい。なお、本実施形態では、定期処理中に圧力変動幅ΔPnおよび圧力変動周期Tnを算出し、これらの値を油圧状態記憶部61Aに記憶しているが、本発明はこの限りではない。油圧センサ151Aから出力された圧力値S151Aの時系列データを油圧状態記憶部61Aに記憶させ、コントロールバルブ装置の駆動前に圧力変動幅ΔPnおよび圧力変動周期Tnの算出を行ってもよい。
【0120】
また、本実施形態では、油圧レベルの判定を、コントロールバルブ装置の駆動前に行ったが、エンジンの稼働停止後にも電磁弁制御装置50Aへの電源の供給を一定時間確保できる場合、エンジンの稼働停止後に油圧レベルの判定を行ってもよい。
【0121】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態には限定されない。
【0122】
上記の実施形態では、エンジンの駆動条件を設定する基準となる油圧状態として、油振レベル、すなわち、油振の状態を用いていた。しかしながら、駆動電流値の上昇時および下降時における圧力値の差である圧力ヒステリシス量などの、他の油圧状態を示す指標を、エンジンの駆動条件を設定する基準として用いてもよい。
【0123】
また、上記の実施形態では、駆動条件設定部が設定する駆動条件は駆動周波数であった。しかしながら、駆動条件設定部は、パルス状の駆動電流の基準電流値などの、他の条件を設定してもよい。
【0124】
また、電磁弁の細部の形状については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。
【0125】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。