【実施例】
【0018】
(フライヤーの概略構成について)
実施例のフライヤー10は、
図1〜
図3に示すように、箱型形状をなす本体11と、調理油を貯留すると共に本体11に配設された油槽12と、油槽12の下部前側に設置された該燃焼手段としてのガスバーナ13とを備えている。油槽12は、揚げ調理用の食材(図示せず)を出し入れし得るように上方に開口した箱状に形成されている。油槽12にはインナー箱体21が配設されて、該油槽12の外側面と該インナー箱体21との間に、燃焼室20と、ガスバーナ13でのガスの燃焼により発生した燃焼ガスが移動可能な燃焼ガス通路14とが画成されている。また、油槽12の後側(本体11の後部)には、燃焼ガス通路14と空間的に連通する排気ダクト15が、立ち上がった姿勢に配設されている。このようなフライヤー10は、ガスバーナ13で発生した燃焼ガスが燃焼室20から排気ダクト15に向けて燃焼ガス通路14を移動する際に、該燃焼ガスと油槽12との間で熱交換が行われて該油槽12が設定温度Tsまで加熱され、加熱された油槽12に貯留された調理油を所定の調理温度まで昇温させ得るようになっている。そして、燃焼ガス通路14を移動した燃焼ガスは、排気ダクト15内へ移動すると共に該排気ダクト15内を上昇移動して、排気ダクト15の上部に形成された排気口16から外部へ排出されるよう構成されている。
【0019】
本体11の前部には、
図2に示すように、前面カバーパネル17が配設されている。前面カバーパネル17の前面には、フライヤー10のメインスイッチを含むスイッチ、ボタン等の操作手段(図示せず)が配設されると共に、前面カバーパネル17内には、ガスバーナ13の燃焼制御を行う制御手段であるガスコントローラ基板30や、調理油の油温や調理時間等の各種情報を表示可能な表示部を備えると共に、ガスコントローラ基板30と通信可能で該ガスコントローラ基板30へ指示信号を送信する第2の制御手段である表示基板31や、当該フライヤー10への電源供給を遮断するブレーカ32等が配設されている。
【0020】
(油槽)
油槽12は、
図1および
図2に示すように、上方へ開口すると共に下方へ凸となる箱状に形成されている。油槽12は、下方に位置する第1油貯留部12aと、この第1油貯留部12aの上側に該第1油貯留部12aに連なって設けられた第2油貯留部12bとを備え、第1油貯留部12aよりも第2油貯留部12bの開口面積が大きく設定されており、所定量の調理油が貯留可能に構成されている。油槽12は、調理油が第1油貯留部12aに充満すると共に第2油貯留部12bの深さの約1/2まで充満した状態が、該調理油の規定量とされている(
図2に一点鎖線にて表示)。油槽12の第1油貯留部12aの後板部には、該油槽12の温度(油槽温度Tb)を検知する油槽温度検知センサ(油槽温度検知手段)19を取り付けるセンサ取付部18が設けられている。
【0021】
(油槽温度検知センサ)
油槽温度検知センサ19は、細長の丸棒状に形成された温度検知部を備えたサーミスタ等であり、油槽12内へ延出した状態でセンサ取付部18に固定されて、油槽12内に貯留した調理油に浸漬され得るようになっている。そして、油槽温度検知センサ19は、調理油に浸漬した状態で油槽12の油槽温度Tbを検知すると共に、検知した検知温度データを表示基板31へ出力するよう構成されている。なお、油槽温度検知センサ19は、空気の影響を受け難いモールドタイプのものが採用されている。
【0022】
(インナー箱体)
油槽12には、
図2に示すように、第1油貯留部12aを外側から覆うインナー箱体21が配設されている。インナー箱体21は、第1油貯留部12aの外周面から離間して配設されており、該油槽12の外周面との間に、燃焼ガス排出構造を構成する燃焼室20および前述した燃焼ガス通路14が画成されている。インナー箱体21の底部には、燃焼室20に臨む位置に、ガスバーナ13を配設するバーナ設置口22が形成されている。なお、インナー箱体21の内側には断熱部材23が配設されており、ガスバーナ13で発生した高温の燃焼ガスの熱がインナー箱体21の外部へ移動することを防止し得るようになっている。
【0023】
(ガスバーナ)
ガス燃焼手段としてのガスバーナ13は、
図4に概略的に示すように、ガスの流れにより無加圧の一次空気を吸引させる構造をなす所謂ブンゼンバーナが採用されている。ガスバーナ13は、上方に開口すると共に左右方向が長手となる矩形箱状に形成されたケース体40内に、該ケース体40の長手方向へ延在するガス分配管41が配設されると共に、該ガス分配管41の上面に複数のバーナ部42が列をなして設けられており、ガス分配管41から供給されたガスとケース体40内に取り込まれた一次空気とが混合することで連続燃焼が可能となっている。なお、バーナ設置口22に配設されたガスバーナ13は、油槽12の第1油貯留部12aから前側へ適宜間隔をおいて配置され、バーナ部42から発生するガス炎が第1油貯留部12aの前外面に当たることで不完全燃焼が発生するのを防止するようになっている。
【0024】
(ガス供給管)
ガスバーナ13には、
図2〜
図4に示すように、外部のガス供給源(図示せず)に接続されるガス供給管25が接続され、該ガス供給管25を介して燃焼用のガス(都市ガスやプロパンガス等)が供給されるようになっている。ガス供給管25の中途にはバルブユニット45が配設されており、当該ガス供給管25は、図示省略したガス供給源に接続されるガス取込み部46およびバルブユニット45の流入側に接続される1次ガス供給管25aと、バルブユニット45の流出側およびガスバーナ13のガス分配管41に接続される2次ガス供給管25bとから構成されている。
【0025】
(バルブユニット)
バルブユニット45は、1次ガス供給管25aの出口側に接続される前述の第1電磁弁26と、該第1電磁弁26の出口側に接続される第2電磁弁27とを備えている。第1電磁弁26および第2電磁弁27は、ガスコントローラ基板30により開閉制御される。また、実施例のバルブユニット45は、第2電磁弁27の出口側に、ガスコントローラ基板30により開閉制御される比例弁35を備えている。これら、第1電磁弁26、第2電磁弁27および比例弁35は、ユニット本体45aに配設されてユニット化されている。1次ガス供給管25aからのガスは、第1電磁弁26→第2電磁弁27→比例弁35の順で移動して、2次ガス供給管25bへ移動するようになっている。第1電磁弁26および第2電磁弁27は、ユニット本体45a内に形成されたガス通路を開閉する2位置の遮断弁であり、これら第1電磁弁26および第2電磁弁27を同期的に閉状態に制御することで1次ガス供給管25aからのガスの供給を遮断し、第1電磁弁26および第2電磁弁27を同期的に開状態に制御することで、1次ガス供給管25aからのガスの供給を許容するようになっている。
【0026】
(比例弁)
比例弁35は、ガスコントローラ基板30による開閉制御に基づいて弁開度が調整可能となっており、ガスバーナ13へのガス供給量(流量)を増減調整可能なガス供給量調整手段である。比例弁35は、ガスコントローラ基板30によるPWM制御および表示基板31のPD制御に基づいて、該比例弁35に印加される電流値を可変制御することで弁の開閉が行われる。そして、比例弁35は、ガスコントローラ基板30から印加される電流値に比例して弁開度を無段階に調整可能となっており、ガスバーナ13へのガス供給量を無段階で調整し得るよう構成されている。すなわち比例弁35は、印加される電流値が大きくなるほど弁開度が大きくなり、ガスバーナ13へのガス供給量を増加させるよう構成されている。そして、比例弁35の弁開度に比例して、2次ガス供給管25b内の2次圧が増減変化するようになっている。
【0027】
(油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御(油槽加熱燃焼制御)について)
ガスバーナ13を備えたフライヤーでは、ガスバーナ13を点火して、該ガスバーナ13の燃焼により発生した燃焼ガスで油槽12を加熱すると共に該油槽12の温度上昇に伴って調理油の油温を食材の調理に適した調理温度まで昇温させる場合に、該ガスバーナ13の燃焼開始直後ではドラフト効果が発現し難くなっている。このため、比例弁35の弁開度を全開にしてガスを供給した場合に、ガスの燃焼に充分な空気が供給されないことにより不完全燃焼が起きて、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が極端に増加してしまう。そこで、実施例のフライヤー10では、油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御(油槽加熱燃焼制御)において、ガスバーナ13の燃焼開始から所定の時間(予備加熱燃焼時間S)が経過するまでは比例弁35の弁開度を全開より小さくして、通常加熱燃焼時に必要とされるガス供給量よりも少量のガスが供給されるようにしたもとで該ガスバーナ13の燃焼を行うようになっている(以降「予備加熱燃焼制御」と云う)。そして、ガスバーナ13の燃焼開始から予備加熱燃焼時間Sが経過した以降は、少なくとも油槽12の油槽温度Tbが設定温度Tsに到達するまで、比例弁35を全開として、通常加熱燃焼に必要とされるガス供給量を確保したもとで該ガスバーナ13の燃焼を行うようになっている(以降「通常加熱燃焼制御」と云う)。このようなガスバーナ燃焼制御により、ガスバーナ13の燃焼開始直後に不完全燃焼が起き難くすることで、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度のピーク値を、予め設定した規定値(例えば1000ppm)以下に抑えることを可能にしている。
【0028】
そして、油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御においては、ガスコントローラ基板30によるPWM(Pulse Width Modulation)制御に基づき、比例弁35の弁開度を調整してガスバーナ13に対するガス供給量を制御することで、該ガスバーナ13の燃焼を強弱調整するようになっている。ここで、PWM制御とは、パルス制御の一種であって、一定周期でパルスを発生させて、オンパルス時だけ比例弁35に電流を印加するようにするもので、入力信号(DCレベル)の大きさに応じてパルス幅のデューティ比を変えるようになっている。すなわち、PWM制御は、パルス幅を変えることで比例弁35に印加される電流値を変化させ、該比例弁35の弁開閉を行う制御方法である。なお、PWM制御では、パルス幅を連続的に変えることで、比例弁35に印加される電流値を連続的に変化させ、該比例弁35のスムーズな弁開閉を可能とする。
【0029】
また、ガスバーナ13の燃焼により油槽12を加熱する際には、当該フライヤー10を長時間(例えば10時間程度)停止させた後に加熱する場合と、食材の調理中に当該フライヤー10を短時間(例えば1時間程度)だけ一時停止させた後に再加熱する場合とで、該ガスバーナ13の燃焼開始時における油槽12の温度が異なっている。例えば、フライヤー10を長時間停止させた場合には、油槽12の油槽温度Tbおよび調理油の温度は室温(例えば20℃)程度まで低下しているため、ガスバーナ13の燃焼開始直後から所定時間が経過するまではドラフト効果が発現し難くなっている。一方、フライヤー10を短時間停止させた場合には、油槽12および調理油の温度は室温よりもかなり高温に維持されているため(例えば90℃以上)、ガスバーナ13の燃焼開始直後のみドラフト効果が発現し難くなっている(油槽12の油槽温度Tbが室温まで低下している場合よりもドラフト効果は発現し易くなっている)。
【0030】
そこで、実施例の油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御における予備加熱燃焼制御では、ドラフト効果の発現の難易に応じて、ガスコントローラ基板30のPWM制御に基づく比例弁35の弁開度を異ならせて、ガスバーナ13へのガス供給量を異ならせるようになっている。具体的には、判定温度Tj(閾値)を90℃に設定したもとで、油槽温度Tbが90℃以下の場合および90℃を超える場合で、比例弁35の弁開度を異ならせる。また、予備加熱燃焼制御においては、予備加熱燃焼時間Sも異ならせている。ここで、以降の説明において、油槽温度Tbが90℃以下の場合における予備加熱燃焼制御を「第1予備加熱燃焼制御」、油槽温度Tbが90℃を超える場合における予備加熱燃焼制御を「第2予備加熱燃焼制御」とする。
【0031】
(第1予備加熱燃焼制御)
油槽12の油槽温度Tbが90℃以下の場合での油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御における第1予備加熱燃焼制御は、
図5(a)に示すように、ガスバーナ13の燃焼開始から所定の予備加熱燃焼時間S(以降「第1予備加熱燃焼時間S1」と云う)に亘り、ガスコントローラ基板30によるPWM制御により、比例弁35の弁開度を全開の1/2とするようになっている。そして、第1予備加熱燃焼制御における第1予備加熱燃焼時間S1は、実施例では「120秒」に設定されている。すなわち、第1予備加熱燃焼制御では、120秒間に亘り、比例弁35の弁開度を全開の1/2として、ガスバーナ13へのガス供給量を通常加熱燃焼時よりも減らしたもとで該ガスバーナ13の燃焼を行わせるようになる。
【0032】
(第2予備加熱燃焼制御)
油槽12の油槽温度Tbが90℃を超える場合での油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御における第2予備加熱燃焼制御は、
図5(b)に示すように、ガスバーナ13の燃焼開始から所定の予備加熱燃焼時間S(以降「第2予備加熱燃焼時間S2」と云う)に亘り、ガスコントローラ基板30によるPWM制御により、比例弁35の弁開度を3/4とするようになっている。そして、第2予備加熱燃焼制御における第2予備加熱燃焼時間S2は、実施例では「10秒」に設定されている。すなわち、第2予備加熱燃焼制御では、10秒間に亘り、比例弁35の弁開度を全開の3/4として、ガスバーナ13へのガス供給量を、第1予備加熱燃焼制御時よりも増やすと共に通常加熱燃焼時よりも減らしたもとで該ガスバーナ13の燃焼を行わせるようになる。
【0033】
図5(a)は、油槽温度Tbが20℃(90℃以下)において、油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御で第1予備加熱燃焼制御を行った場合の燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を示したグラフである。このように、油槽温度Tbが90℃以下の場合に第1予備加熱燃焼制御を行うことで、該第1予備加熱燃焼制御時には、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度は比例弁35の弁開放から約60秒後に最大になるものの、該一酸化炭素の濃度のピーク値は150ppm程度であって1000ppmを大きく下回ることが確認された。そして、第1予備加熱燃焼制御から通常加熱燃焼制御に移行した際には、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の量が100ppm以下の範囲で増減するだけであることも確認された。
【0034】
図5(a)は、油槽温度Tbが100℃(90℃超)において、油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御で第2予備加熱燃焼制御を行った場合の燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を示したグラフである。このように、油槽温度Tbが90℃を超えている場合に第2予備加熱燃焼制御を行うことで、該第2予備加熱燃焼制御時には、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度はごく小さいことが確認された。そして、第2予備加熱燃焼制御から通常加熱燃焼制御に移行した際には、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が当該移行時から約60秒後に最大になるものの、該一酸化炭素の濃度のピーク値は210ppm程度であって1000ppmを大きく下回ることが確認された。
【0035】
図6は、油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御において、油槽温度Tbが20〜180℃の範囲において、前述した第1予備加熱燃焼制御を行った場合、第2予備加熱燃焼制御を行った場合、予備加熱燃焼制御を行わない場合(燃焼開始から通常加熱運転状態とする場合)での燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を測定したデータを纏めて表わしている。
図6から明らかなように、予備加熱燃焼制御を行わない場合には、油槽12の油槽温度Tbが低いほど、ドラフト効果が発現し難いことに起因して、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が高く、油槽温度Tbが20℃の場合には、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が3000ppmに達している。また、油槽温度Tbが20〜180℃の全域において、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が1000ppmを超えている。
【0036】
また、
図6から明らかなように、第1予備加熱燃焼制御を行った場合には、油槽温度Tbが90℃以下では、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が、規定値である1000ppm以下に抑えられることが確認できる。なお、油槽温度Tbが90℃を超える場合では、油槽温度Tbが高くなるほど、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が増加するが、最大でも1400ppm程度であり、予備加熱燃焼制御を行わない場合よりも一酸化炭素の低減効果があることが確認できる。
【0037】
一方、
図6から明らかなように、第2予備加熱燃焼制御を行った場合には、油槽温度Tbが90℃を超えていれば、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が、規定値である1000ppm以下に抑えられることが確認されると共に、油槽温度Tbが高くなるほど、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が低くなることが確認できる。なお、油槽温度Tbが90℃以下の場合でも、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度が規定値である1000ppmより僅かに増加する程度であり、第2予備加熱燃焼制御による一酸化炭素の低減効果があることが確認できる。
【0038】
(油槽温度維持時のガスバーナ燃焼制御(油槽温度維持燃焼制御)について)
実施例のフライヤー10は、ガスバーナ13による前述の油槽加熱時のガスバーナ燃焼制御(油槽加熱燃焼制御)により油槽12の油槽温度Tbが所定の設定温度Tsに達した場合に、該油槽12の油槽温度Tbを該設定温度Tsに維持するための油槽温度維持時のガスバーナ燃焼制御(油槽温度維持燃焼制御)を行うようになっている。この油槽温度維持時のガスバーナ燃焼制御においては、油槽温度検知センサ19により検知した油槽12の油槽温度Tbを表示基板31にフィードバックして、ガスコントローラ基板30に対して、フィードバックされた検知温度データに基づく比例弁35の弁開度を通信により指示して、ガスバーナ13に対するガス供給量を調整しながら該ガスバーナ13の燃焼を強弱調整するようになっている。すなわち、実施例の油槽温度維持時のガスバーナ燃焼制御は、第1電磁弁26または第2電磁弁27の開閉制御に基づいてガスバーナ13を点火・消火する制御方法とは異なっている。
【0039】
ここで、油槽12は、ガスバーナ13の燃焼を弱めても、該ガスバーナ13のバーナ部42からの輻射熱により温度が上昇する。また、前述したモールドタイプの油槽温度検知センサ19は、熱容量が大きく、油槽12の急峻な温度変化に迅速に追従し難くなっている。そこで、実施例の油槽温度維持時のガスバーナ燃焼制御では、油槽温度検知センサ19からフィードバックされる検知温度データを得た表示基板31が、PD制御に基づいてガスコントローラ基板30に対し比例弁35の開閉を行うように指示信号を送信することで、該ガスコントローラ基板30は、ガスバーナ13に対するガス供給量を調整して該ガスバーナ13の燃焼を制御するようになっている。
【0040】
ここで、PD(Proportional-Derivative)制御とは、油槽温度検知センサ19で検知された油槽12の油槽温度(検知温度データ)Tbと設定温度Tsとの偏差に比例した出力を出す比例制御(Proportional Action:P制御)と、偏差の微分に比例した出力を出す微分制御(Derivative Action:D制御)の和を出力して、油槽12の油槽温度Tbが目標値である設定温度Tsとなるように制御する方法である。すなわち、P制御では、油槽温度検知センサ19による検知温度データと設定温度Tsとの偏差により、ガスコントローラ基板30は、PWM制御に基づいて比例弁35に所定の電流値を印加することで比例弁35を所定の弁開度に制御して、所定量のガスがガスバーナ13に供給されるようにして該ガスバーナ13の燃焼を制御する。そして、検知温度データと設定温度Tsとの偏差が連続的に変化する場合には、比例弁35に印加される電流量も連続的に変化することで、ガスバーナ13の燃焼が連続的に強弱調整される。従って、
図8(a)に示すように、油槽12の油槽温度Tbを、設定温度Tsから大きく逸脱することなく維持することが可能であり、第1電磁弁26および第2電磁弁27を開閉させてガスバーナ13を点灯・消火させる場合と比べて、油槽温度Tbの変動幅を小さくかつ緩やかにすることができる。
【0041】
また、D制御は、調理油に冷えた食材を投入して該調理油の油温が急峻に低下して、これに伴って油槽12の油槽温度Tbが急峻に低下した場合に、比例弁35に印加する電流値を最大にして該比例弁35の弁開度を全開にし、ガス供給量を油槽加熱燃焼制御時と同じくすることで、ガスバーナ13の燃焼を一時的に最大にして調理油の油温が大きく低下するのを防ぐ動作である。従って、
図8(b)に示すように、油槽12の油槽温度Tbは、一時的に低下するものの、短時間にて油槽温度Tbを設定温度Tsまで上昇させることが可能である。
【0042】
(比例弁調整モード)
前述した比例弁35は、個体差が非常に大きく、製造組立時の状態で弁開度を調整しても弁開度が正確にならず、ガスバーナ13の点火不良になるおそれがある。また、比例弁35は、ヒステリシスがあり、徐々に弁を開く場合の特性および徐々に閉める場合の特性が異なり、同じ電流値でも2次圧が異なる。そこで、実施例のフライヤー10では、比例弁35の最適化を図るための比例弁調整モード(比例弁調整手段)を備えている。ここで、実施例の比例弁35は、弁開度を小→大に変化させるように制御されるので、比例弁調整モードは最小開度→全開で行うようになっている。そして、ガスコントローラ基板30は、比例弁35の最小電流値を調整する最小電流値調整手段および最大電流値を調整する最大電流値調整手段を備えている。
【0043】
図9は、比例弁調整モードによる比例弁35の調整態様を示すクラブである。
図9において、最小電流値調整手段による最小電流値の調整および最大電流値調整手段による最大電流値の調整により、縦軸と横軸とが交差した2点を結んだ直線(A,B,C)が、グラフ内の右上および左下に矩形状に図示された比例弁仕様範囲内に入るようにすることが、比例弁35を最適化することである。
【0044】
次に、比例弁調整モードによる比例弁35の調整手順について具体的に説明する。
図10に示すように、先ず、表示基板31に配設されている設定スイッチ(図示せず)を押した状態で電源を投入することで(ステップS20)、比例弁調整モードに入るようになっている。比例弁調整モードに入ったら、先ず、ガスコントローラ基板30に配設された最小電流値調整手段を操作して、PWM制御におけるパルス幅が1%の時に規定の2次圧となるように最小電流値を調整する(ステップS21)。最小電流値の調整が終了したら、設定スイッチを押す(ステップS22)。
【0045】
設定スイッチを押した後、ガスコントローラ基板30に配設された最大電流値調整手段を操作して、PWM制御におけるパルス幅が100%の時に規定の2次圧となるように最大電流値を調整する(ステップS23)。そして、最大電流値の調整が終了したら、前述の設定スイッチを押すことで(ステップS24)、当該比例弁調整モードが終了する(ステップS25)。
【0046】
(実施例の作用)
次に、前述のように構成された実施例のフライヤー10の作用について説明する。
【0047】
実施例のフライヤー10は、油槽12内に規定量の調理油を貯留させたもとで、電源スイッチの操作により電源が投入されることで起動した表示基板31は、
図7に示す油槽加熱燃焼制御を実施する。すなわち、表示基板31は、先ず、油槽温度検知センサ19から検出温度データを取得して、油槽温度Tbが90℃以下となっているか90℃を超えているかを判定する(ステップS10)。ここで、油槽温度Tbが90℃以下である判定した場合には、第1予備加熱燃焼制御を行う。すなわち、表示基板31は、ガスコントローラ基板30に対し、比例弁35の弁開度を1/2に調整するよう指示信号を送信する(ステップS11)。これにより、ガスコントローラ基板30の制御に基づき、第1電磁弁26および第2電磁弁27が開放してガスバーナ13へガスが供給され、該ガスバーナ13が点火して燃焼を開始する。そして、ガスコントローラ基板30は、比例弁35の弁開度が1/2の状態で、第1予備加熱燃焼時間S1(120秒)に亘り、ガスバーナ13を燃焼させる(ステップS12)。そして、ガスコントローラ基板30は、第1予備加熱燃焼時間S1が経過したら(ステップS12)、第1予備加熱燃焼制御を終了して、比例弁35の弁開度を全開に設定して通常加熱燃焼制御に移行する(ステップS15)。
【0048】
一方、表示基板31は、ステップS10において油槽温度Tbが90℃を超えていると判定した場合には、第2予備加熱燃焼制御を行う。すなわち、表示基板31は、ガスコントローラ基板30に対し、比例弁35の弁開度を3/4に調整するよう指示信号を送信する(ステップS13)。これにより、ガスコントローラ基板30の制御に基づき、第1電磁弁26および第2電磁弁27が開放してガスバーナ13へガスが供給され、該ガスバーナ13が点火して燃焼を開始する。そして、ガスコントローラ基板30は、比例弁35の弁開度が3/4の状態で、第2予備加熱燃焼時間S2(10秒)に亘り、ガスバーナ13を燃焼させる(ステップS14)。そして、ガスコントローラ基板30は、第2予備加熱燃焼時間S2が経過したら(ステップS14)、第2予備加熱燃焼制御を終了して、比例弁35の弁開度を全開に開放設定して通常加熱燃焼制御に移行する(ステップS15)。
【0049】
比例弁35の弁開度を全開に調整したもとでガスバーナ13を燃焼させる通常加熱燃焼制御において、表示基板31は、油槽温度検知センサ19からの検出温度データを逐次取得して、油槽温度Tbが設定温度Tsに達したかを判定する(ステップS16)。表示基板31が、ステップS16において、油槽温度Tbが設定温度Tsに達したと判定した場合には、油槽温度維持燃焼制御へ移行する(ステップS17)。
【0050】
従って、実施例のフライヤー10では、ガスバーナ13にガスを供給するガス供給管25に、ガスコントローラ基板30によるPWM制御に基づいて弁開度を調整可能な比例弁35を設けて、油槽12の加熱時においてはガスバーナ13の燃焼開始直後において比例弁35の弁開度を全開よりも小さくして、通常加熱燃焼時よりもガスの供給量を少なくしてガスバーナ13を燃焼させる予備加熱燃焼制御を行うようにした。これにより、ガスバーナ13の燃焼開始直後のドラフト効果が発現していない状態であっても不完全燃焼が起こり難くなり、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を抑えることができる。また、予備加熱燃焼制御は、ガスバーナ13の燃焼開始から所定の予備加熱燃焼時間Sだけ行われ、当該予備加熱燃焼制御が行われた後には通常加熱燃焼制御に移行するので、燃焼ガスに含まれる一酸化炭素の濃度を規定値以下に抑えつつ、油槽12の油槽温度Tbを設定温度Tsまで上昇するのに要する加熱時間が長くなるのを最小限に抑えることができ、食材の調理作業に支障を来たすことを防止し得る。
【0051】
そして、実施例のフライヤー10では、ガスバーナ13の燃焼開始時点での油槽12の油槽温度Tbに基づいて、該油槽温度Tbが90℃以下の場合および90℃を超える場合で、予備加熱燃焼制御における比例弁35の弁開度および予備加熱燃焼時間Sを異ならせるようにした。すなわち、油槽温度Tbが90℃以下でドラフト効果がより発現し難い場合には、比例弁35の弁開度を1/2としたもとでに、第1予備加熱燃焼時間S1に亘って第1予備加熱燃焼制御を行う一方、油槽温度Tbが90℃を超えていて、90℃以下の場合よりもドラフト効果が発現し易い場合には、比例弁35の弁開度を3/4としたもとで、第2予備加熱燃焼時間S2に亘って第2予備加熱燃焼制御を行うようにした。換言すると、油槽12が90℃より高くドラフト効果が短時間で発現し易い場合には、通常燃焼時よりもやや弱い燃焼状態を短時間だけ行うようにし、また油槽12が90℃以下になっていてドラフト効果が短時間で発現し難い場合には、通常燃焼時の半分程度の燃焼状態を長めに行うようにした。従って、特に油槽12が90℃を超えている場合には、予備加熱燃焼制御が短時間(10秒)で終了するため、食材の調理作業開始が遅れることを回避し得る。また、油槽12が90℃以下の場合であっても、予備加熱燃焼制御が比較的短時間(120秒)で終了するため、食材の調理作業開始が遅れることを最小限に抑え得る。
【0052】
また、実施例のフライヤー10は、油槽12の油槽温度Tbを設定温度Tsに維持する油槽温度維持燃焼制御では、ガスコントローラ基板30のPWM制御および表示基板31のPD制御に基づいて比例弁35の弁開度を連続的に調整しながらガス供給量を調整して、ガスバーナ13の燃焼を強弱調整するようにしたので、設定温度Tsに対して油槽温度Tbが大きく変化するのを防止し得る。すなわち、ガスバーナ13の点火・消火による油槽温度Tbの調整とは異なり、比例弁35の弁開度を細かく調整し得るので、ガスバーナ13の燃焼を連続的に強弱制御することができ、油槽温度Tbを細かく調整することが可能である。また、冷えた食材を調理油に投入することにより油槽温度Tbが急峻に低下した場合であっても、表示基板31のPD制御に基づいて比例弁35を全開にしてガス供給量を油槽加熱燃焼制御時と同じにして、ガスバーナ13の燃焼を強めるようにすることで、油槽温度Tbを設定温度Tsまで短時間で上昇させ得る。
【0053】
また、ガスコントローラ基板30のPWM制御に基づく比例弁35の制御においては、一定周期で出力されるパルスのデューティ比を変更することで該比例弁35に印加される電流値を変化させ得るので、比例弁35の弁開度を容易かつ適切に制御可能である。
【0054】
更に、実施例のフライヤー10では、比例弁調整モードを備えているので、比例弁35が有するヒステリシス特性等の個体差の影響を無くす最適化することができる。これにより、予備加熱燃焼制御おいては、ガスコントローラ基板30のPWM制御に基づいて比例弁35の弁開度を正確に調整することが可能となり、ガスバーナ13の点火不良や不完全燃焼が起きることを防止し得る。
【0055】
(変更例)
本発明は、前述の実施例の構成に限定されず、以下のようにも変更することも可能である。
(1)ガス供給量調整手段は、実施例で例示した比例弁に限定されるものではなく、制御手段の制御に基づき、ガス燃焼手段へのガス供給量を適切に調整し得るものであれば様々な装置に代替可能である。
(2)制御手段による比例弁の電流値制御は、PWM制御以外の制御方法であってもよい。
(3)2次ガス供給管におけるガスの2次圧を制御手段にフィードバックすることで、ガス供給量調整手段によるガス供給量を調整するようにしてもよい。
(4)油槽加熱時のガスバーナ加熱燃焼制御において、第1予備加熱燃焼制御を実行するか第2予備加熱燃焼制御を実行するかの判定基準となる判定温度は、実施例で例示した90℃に限定されるものではなく、フライヤーの構造(燃焼ガス通路や排気ダクトの流路形状やサイズ等)、ガス燃焼手段の燃焼能力等により適宜温度に設定可能である。
(5)第1予備加熱燃焼制御および第2予備加熱燃焼制御における比例弁の弁開度および予備加熱燃焼時間は、実施例で例示したものに限るものではなく、フライヤーの構造(燃焼ガス通路や排気ダクトの流路形状やサイズ等)、ガス燃焼手段の燃焼能力等により適宜温度に設定可能である。
(6)油槽温度維持時のガスバーナ燃焼制御においては、制御手段によるPID制御に基づいて比例弁を制御するようにしてもよい。
(7)実施例では、制御手段であるガスコントローラ基板と第2の制御手段である表示基板とを個別に備えた構成を例示したが、ガスコントローラ基板および表示基板を単一の制御手段として構成して、ガスコントローラ基板の機能および表示基板の機能を該単一の制御手段が備えるようにしてもよい。