特許第6564197号(P6564197)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564197
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】偽造防止帳票
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/337 20140101AFI20190808BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B42D25/337
   B41M3/14
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-26023(P2015-26023)
(22)【出願日】2015年2月13日
(65)【公開番号】特開2016-147439(P2016-147439A)
(43)【公開日】2016年8月18日
【審査請求日】2018年2月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(72)【発明者】
【氏名】夫馬 祐司
(72)【発明者】
【氏名】和田 謙吾
【審査官】 金田 理香
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−321169(JP,A)
【文献】 特開2011−097362(JP,A)
【文献】 特開2000−263912(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3030938(JP,U)
【文献】 特開2008−143117(JP,A)
【文献】 特開2002−109113(JP,A)
【文献】 特開2009−285843(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 15/02
25/00 − 25/485
B41M 1/00 − 3/18
7/00 − 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙面に、所望の情報が記載される情報記載領域を備え、少なくとも該情報記載領域に、偽造防止用の背景画像が印刷されてなるものであって、
背景画像は、情報記載領域の全域に亘って描かれているものであり、
複数の直線および/または曲線が、該線を境界とする閉じた領域を形成しないように、規則的に連続して構成される複数の非閉鎖図形要素が一筆書き状に連続されてなる複数の連続線図を備え
複数の連続線図のうち、少なくとも一の連続線図が、情報記載領域の全域に亘って描かれる再帰曲線により形成されると共に、他の少なくとも一の連続線図が、隣り合う再帰曲線と一定間隔をおいて平行となる平行連続線により形成されるものであることを特徴とする偽造防止帳票。
【請求項2】
複数の非閉鎖図形要素を、一筆書き状に連続されてなる図形に対し、直線および/または曲線を部分的に断線させた欠落線部を形成した、再帰曲線からなる連続線図を備えるものであることを特徴とする請求項1に記載の偽造防止帳票。
【請求項3】
背景画像が印刷された領域において、該背景画像の濃度が5%以上且つ50%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の偽造防止帳票。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券や証明書等に使用される偽造防止帳票に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券や証明書等には、一般的に、その背景に地紋や彩紋などが印刷されている。こうした地紋や彩紋として、例えば、所定間隔で配列した万線パターンや複数の多角形や円形を配列したパターンなどが知られている。こうした地紋や彩紋は、有価証券や証明書等の背景デザインであるだけでなく、複写機等による偽造を防止する機能も有する。すなわち、複写機により印刷した場合に、地紋や彩紋等により所謂モアレ画像が発生することから、該モアレ画像によって複写物か否かを判断でき、該複写機による偽造を防止することができる。ここで、モアレ画像は、前記した地紋や彩紋を構成する直線や曲線などの線画が、複写機で照射される光の走査方向と干渉することによって生じる干渉縞である。
【0003】
尚、このように有価証券や証明書等に適用される帳票として、例えば特許文献1が提案されている。かかる構成は、複数の波線を所定間隔をおいて配列してなる万線パターンが背景として印刷されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−321169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、地紋や彩紋などの背景画像は、注意深く観察されると、該地紋や彩紋を構成する線画の形態を視認され得る。そのため、背景画像を構成する画像バターン(構造)が比較的単純であると、該パターンを知得され易く、比較的容易に偽造される虞がある。例えば、上述した万線パターンや複数の多角形や円形を配列したパターンなどの場合には、該万線を構成する直線や波線およびその間隔、または多角形や円形の形状サイズなど、該パターンの構造を比較的容易に知得される。そして、背景画像の構造が知得されると、これに基づいて比較的容易に偽造可能となることから、該偽造を防止するという作用効果が低減する。そのため、仮に背景画像を視認された場合にあっても背景画像の構造を正確に知得し難い構成が希求されている。
【0006】
本発明は、有価証券や証明書等に適用されるものであって、背景画像の構造が正確に知得されることを可及的に抑制し、偽造防止効果を向上し得る偽造防止帳票を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、紙面に、所望の情報が記載される情報記載領域を備え、少なくとも該情報記載領域に、偽造防止用の背景画像が印刷されてなるものであって、該背景画像は、複数の直線および/または曲線が、該線を境界とする閉じた領域を形成しないように、規則的に連続されてなる複数の非閉鎖図形要素により構成され、該非閉鎖図形要素が一筆書き状に連続されてなる一又は複数の連続線図を備えたものであることを特徴とする偽造防止帳票である。
【0008】
ここで、連続線図は、背景画像を印刷する領域で、該連続線図を構成する複数の非閉鎖図形要素が略均等に連続されてなる構成が好適である。また、背景画像は、連続線図のみの構成であっても良いし、連続線図だけでなく、該連続線図と異なる一又は複数の副次線図を備えた構成であっても良い。また、複数の連続線図を備えた構成では、各連続線図が相互に非接触である構成が好適であり、連続線図と副次線図とを備えた構成では、夫々の線図が相互に非接触である構成が好適である。また、背景画像を印刷する領域が、該背景画像によって埋め尽くされるようにした構成が好適である。
【0009】
かかる構成にあって、連続線図は、閉じた領域を形成しない非閉鎖図形要素を一筆書き状に複数連続してなるものであり、比較的複雑な構造に形成される。そして、非閉鎖図形要素が直線または/曲線を規則的に連続することによって、一筆書き状の連続線図を比較的容易かつ安定して形成できる。こうした複雑な構造の連続線図を背景画像が備えることにより、仮に偽造等のために連続線図が視認された場合にあっても、該連続線図の構造を正確に知得され難い。そのため、上述した従来の、万線パターンや多角形を配列したパターンなどのように比較的単純な形態に比して、本発明の構成は、同一の背景画像を正確に複製し難い。したがって、本発明の構成によれば、連続線図の構造が知得されることを可及的に抑制でき、偽造を防止するという作用効果が向上する。
【0010】
尚、連続線図は、非閉鎖図形要素が閉じた領域を形成しないことから、該非閉鎖図形要素が、紙面の縦横方向や斜め方向など複数の直線および/または曲線により構成される。そのため、複写機による複写の際に、非閉鎖図形要素の各線方向と該複写機から照射される光の走査方向とが互いに干渉して、干渉縞(モアレ)が発生し易くなる。この干渉縞により、本発明の構成は、複写による偽造を防止する効果が高い。
【0011】
上述した本発明の偽造防止帳票にあって、一筆書き状の連続線図は、再帰曲線により形成されてなるものである構成が提案される。ここで、再帰曲線としては、例えば、ヒルベルト曲線、ゴスパー曲線、コッホ曲線、シェルピンスキー曲線、ムーア曲線、ルベーク曲線等が好適に用いられる。そして、複数の連続線図を備えた構成では、全て同一の再帰曲線を使用しても良いし、異なる種類の再帰曲線を使用することもできる。
【0012】
かかる構成にあっては、連続線図が、再帰処理を行う規則(以下、変換規則という)により形成される再帰曲線であることから、該変換規則の規則性に従って形成される。こうした連続線図は、少なくとも始点と終点以外では非接触である複雑な構造となる。そのため、本構成によれば、上述した偽造防止効果を一層向上できる。さらに、連続線図は、前記のように変換規則に従って形成されることから、背景画像が印刷される帳票の用途に合わせて比較的容易に設定可能であると共に、該変換規則に従って正確かつ安定して印刷することができるため、生産性にも優れる。
【0013】
上述した本発明の偽造防止帳票にあって、背景画像が、一筆書き状の複数の連続線図を備えたものであって、複数の連続線図のうち、少なくとも一の連続線図が再帰曲線により形成されると共に、他の少なくとも一の連続線図が、前記再帰曲線に所定間隔をおいて連続する平行連続線により形成されてなるものである構成が提案される。ここで、再帰曲線としては、上記構成と同様に、例えば、ヒルベルト曲線、ゴスパー曲線、コッホ曲線、シェルピンスキー曲線、ムーア曲線、ルベーク曲線等が好適に用いられる。
【0014】
かかる構成にあっては、上述したように、変換規則に従う再帰曲線が、少なくとも始点と終点以外では非接触である複雑な構造となることから、偽造防止効果を向上できる。さらに、平行連続線が、再帰曲線と所定間隔をおいて並んで形成されていることから、擬似的な再帰曲線を構成する。そのため、平行連続線も、再帰曲線と同様に、複雑な構造であり、偽造防止効果を発揮する。したがって、本構成によれば、上述した本発明にかかる偽造防止効果を一層向上できる。さらに、再帰曲線は、上述したように容易に設定可能であると共に、正確かつ安定して印刷できる。そして、再帰曲線に平行な平行連続線も同様に設定と印刷とが可能である。そのため、本構成にあっても、生産性に優れる。
【0015】
上述した本発明の偽造防止帳票にあって、一筆書き状の連続線図は、その所定部位に、該連続線図を構成する直線および/または曲線を部分的に断線させた欠落線部が形成されたものである構成が提案される。
【0016】
かかる構成によれば、欠落線部を備えていることによって、連続線図の構造を正確に知得することが一層難しい。したがって、上述した本発明の偽造防止効果をさらに向上できる。
【0017】
上述した本発明の偽造防止帳票にあって、背景画像が印刷された領域において、該背景画像の濃度が5%以上且つ50%以下である構成が提案される。
【0018】
かかる構成にあっては、背景画像の濃度が5%以上であれば、その連続線図の構造が知得され難い作用効果が十分に発揮される一方、背景画像の濃度が50%以下であれば、連続線図の構造を十分に識別できる。したがって、本構成によれば、偽造防止効果を向上するという上述した本発明の作用効果が適正に発揮され得る。
【0019】
尚、背景画像の濃度は、10%以上とすることが好適であり、これによって、上述した連続線図の構造が知得され難いという作用効果が一層十分に発揮され得る。また、背景画像の濃度は、30%以下とすることが好適であり、これによって、連続線図の構造を一層明瞭に識別できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の偽造防止帳票は、上述したように、紙面に印刷される背景画像が、直線および/または曲線が規則的に連続されてなる非閉鎖図形要素を、一筆書き状に複数連続してなる連続線図を備えたものであるから、偽造等のために該背景画像の連続線図を視認されたとしても、該連続線図の構造を正確に知得され難い。したがって、本発明の構成によれば、偽造防止効果を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施例1の偽造防止帳票1の平面図である。
図2図1中のX部拡大図である。
図3】背景画像11における再帰曲線12のみを示す説明図である。
図4】背景画像11を分解して表す説明図である。
図5】実施例2の偽造防止帳票31の平面図である。
図6図5中のY部拡大図である。
図7】背景画像32における再帰曲線33のみを示す説明図である。
図8】背景画像32を分解して表す説明図である。
図9】実施例3の偽造防止帳票51の平面図である。
図10図9中のZ部拡大図である。
図11】背景画像52における再帰曲線53のみを示す説明図である。
図12】背景画像52を分解して表す説明図である。
図13】実施例4の偽造防止帳票81の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明にかかる実施形態を、以下の実施例1〜4に従って説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本実施例1の偽造防止帳票1の概略を示す平面図であり、図2は、該偽造防止帳票1に印刷された背景画像11を示す説明図である。ここで、偽造防止帳票1は、有価証券や証明書等に好適に用いられるものであり、表面に、所望の情報が記載される情報記載欄5を備えている。尚、情報記載欄5により、本発明にかかる情報記載領域が構成されている。
【0024】
背景画像11は、一の再帰曲線12と複数の平行連続線13とから構成されている。再帰曲線12は、図3(a)のように、下記の変換規則(1)に従って形成されるものであり、所謂ヒルベルト曲線である。
L=−RF+LFL+FR−,R=+LF−RFR−FL+ ・・・(1)
ここで、傾ける角度が「90度」、初期値が「R」である。
【0025】
ここで、再帰曲線12のヒルベルト曲線としては、縦方向と横方向との直線が連続された非閉鎖図形要素21を、一筆書き状に複数連続してなるものである。そして、背景画像11が印刷される領域7で、該領域7の全域に亘って略均等に描かれる。さらに詳述すると、本実施例のヒルベルト曲線は、縦方向(又は横方向)に直線が描かれ、その末端から90度傾けた横方向(又は縦方向)に直線が描かれ、その末端から90度傾けた縦方向(又は横方向)に直線が描かれるように、縦方向の直線と横方向の直線とが繰り返し描かれることによって形成される。そして、各直線が夫々の始端と末端とで連続する以外で相互に交わらないように、前記した90度傾ける方向が設定される。このようにヒルベルト曲線では、これを構成する非閉鎖図形要素21が、その直線を境界とする閉じた領域を形成しない形状(コ字形)をなす。そして、ヒルベルト曲線は、その始点から終点に至るまで交差せずに、その直線を境界とする閉じた領域が形成されないように描かれる。
【0026】
また、平行連続線13は、上記の再帰曲線12と一定間隔をおいて描かれた縦方向の直線と横方向の直線とを連続してなるものであり、これら各直線が、隣合う該再帰曲線12の直線と夫々平行となっている。本実施例1では、こうした平行連続線13が、再帰曲線12の内外両側に夫々二個づつ描かれており、背景画像11は、一個の再帰曲線12と四個の平行連続線13とにより構成されている。そして、再帰曲線12と四個の平行連続線13とは、相互に隣合う線同士の間隔が全て略等しく、かつ相互に非接触である。これにより、背景画像11が印刷された領域7では、該領域7の全域に亘って該背景画像11が描かれており、且つ該背景画像11の濃度が略平準化されている。具体的には、背景画像11の濃度が約20%となるように、再帰曲線12および平行連続線13の各直線の幅とと間隔とが設定されている。
【0027】
再帰曲線12のヒルベルト曲線は、上述したように、変換規則(1)に従って描かれるものであり、換言すれば、縦方向および横方向の直線を規則的に連続させたものである。また、平行連続線13は、再帰曲線12と平行に描かれたものであることから、再帰曲線12の非閉鎖図形要素21と平行に描かれたコ字形の非閉鎖図形要素26を、一筆書き状に複数連続してなるものであり、換言すれば、縦方向および横方向の直線を、再帰曲線12と平行となるように規則的に連続してなるものである。
【0028】
こうした背景画像11が印刷された領域7は、略長方形状をなし、上記した情報記載欄5を含む。すなわち、背景画像11が、情報記載欄5の全域を埋めるように印刷されている。尚、本実施例1にあって、再帰曲線12と複数の平行連続線13により、本発明の連続線図が構成されている。
【0029】
また、本実施例1では、再帰曲線12の所定部位に、該再帰曲線12を構成する直線を部分的に断線させた欠落線部15が形成されている。この欠落線部15は、複数設けられており、その位置が予め設定されている。本実施例1では、上記の情報記載欄5内で、右上の位置と、左下の位置とに、夫々欠落線部15,15が形成されている。
【0030】
上述した本実施例1の構成にあっては、背景画像11を構成する再帰曲線12が、一筆書き状のヒルベルト曲線であり、その始点から終点に至るまで交差せず且つ比較的複雑な形態である。そして、背景画像11を構成する複数の平行連続線13は、再帰曲線12と平行であることから、該再帰曲線12と同様に比較的複雑な形態である。こうしたことから、背景画像11は、再帰曲線12と平行連続線13とによって比較的複雑な構造をなすため、偽造等のために視認された場合にあっても該構造を正確に知得され難い。さらに、背景画像11の領域7の濃度が上記のように設定されていることも、前記した構造を知得され難いという作用効果を高めている。このような背景画像11が印刷されていることによって、偽造などのために背景画像11を視認された場合にも、該背景画像11の構造を正確に知得されることを可及的に抑制できるため、偽造防止という作用効果が飛躍的に向上する。また、再帰曲線12には上記の欠落線部15,15が形成されており、これを正確に知得することが難しいことから、前記した偽造防止の作用効果が一層向上する。尚、こうした構成によれば、例えば、上記した情報記載欄5に本来と異なる情報を切り貼りする偽造が行われた場合にあっても、該情報記載欄5の背景画像11を正確に複製することが極めて困難であることから、当該偽造を比較的容易かつ確実に見つけることができる。
【0031】
また、再帰曲線12および平行連続線13が、上記のように縦方向と横方向との直線により構成されていることから、複写機で複写した際に、該複写機の光の走査方向との干渉によって干渉縞(モアレ)が発生し易くなっている。そのため、複写機による偽造を防止する効果も向上する。
【0032】
さらにまた、再帰曲線12が上記の変換規則(1)に従うヒルベルト曲線であることから、帳票の用途に応じて様々に設定変更することが可能である。例えば、縦方向と横方向との直線の寸法を適宜設定することにより、背景画像11の領域7のサイズを変更したり、該領域7の濃度を変えることができる。尚、こうしたサイズ変更や濃度変更は、平行連続線13との間隔を変更することによっても、実施可能である。
【実施例2】
【0033】
実施例2は、背景画像32が、シェルピンスキー曲線からなる再帰曲線33と、該再帰曲線33に平行な複数の平行連続線34とを備えた偽造防止帳票31である。尚、本実施例2にあって、背景画像32が異なる以外は上述の実施例1と同様の構成であることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を適宜省略する。
【0034】
背景画像32が印刷された領域47は、略菱形状をなし、情報記載欄5の全域を埋めるように該背景画像32が印刷されている。
【0035】
背景画像32を構成する再帰曲線33は、下記の変換規則(2)に従って形成されるシェルピンスキー曲線である。
L=+R−F−R+,R=−L+F+L− ・・・(2)
ここで、傾ける角度が「45度」、初期値が「L−−F−−L−−F」である。
【0036】
ここで、シェルピンスキー曲線としては、縦方向、横方向、および斜め方向の直線が連続された非閉鎖図形要素41を、一筆書き状に複数連続してなるものである。詳述すると、本実施例2のシェルピンスキー曲線は、縦方向(又は横方向)の直線と、その末端から90度傾けた横方向(又は縦方向)の直線と、縦方向(又は横方向)の直線の末端から+45度又は−45度傾けた斜め方向の直線とが、繰り返し描かれることによって形成される。これにより、シェルピンスキー曲線は、その始点と終点でのみ交わり、該始点と終点との間で交差しない。すなわち、このシェルピンスキー曲線を構成する非閉鎖図形要素41では、その直線を境界とする閉じた領域が形成されない。
【0037】
一方、平行連続線34は、上記の再帰曲線33と一定間隔をおいて描かれた縦方向の直線と横方向の直線と斜め方向の直線とを連続してなるものであり、これら各直線が、隣合う該再帰曲線33の直線と夫々平行となっている。本実施例2では、こうした平行連続線34が、再帰曲線33の外側に一個と内側に二個描かれている。さらに、外側の平行連続線34のさらに外側には、当該平行連続線34と平行な部分を有する副次連続線35が複数(例えば、四個)描かれていると共に、内側の平行連続線34のさらに内側には、閉じた領域を形成する多角形状の副次閉鎖線36が複数(例えば、描かれる場所に応じて三個や四個)描かれている。ここで、副次連続線35と副次閉鎖線36とは、背景画像32の領域47で、再帰曲線33と複数の平行連続線34とが描かれない領域を埋めるように描かれており、相互に非接触であり且つ該再帰曲線33と平行連続線34とも非接触である。
【0038】
再帰曲線33のシェルピンスキー曲線は、変換規則(2)に従って、縦方向、横方向、および斜め方向の直線を規則的に連続させたものであり、上記の非閉鎖図形要素41を一筆書き状に複数連続してなるものである。また、平行連続線34は、再帰曲線33を構成する非閉鎖図形要素41と平行に描かれた非閉鎖図形要素42を、一筆書き状に複数連続してなるものであり、換言すれば、縦方向、横方向、および斜め方向の直線を、再帰曲線33と平行となるように規則的に連続してなるものである。
【0039】
本実施例2にあっても、背景画像32が印刷された領域47では、該領域47の全域に亘って該背景画像32が描かれており、且つ該背景画像32の濃度が略平準化されている。そして、背景画像32の濃度が約20%となるように、再帰曲線33、平行連続線34、副次連続線35、および副次閉鎖線36とを描いている。尚、本実施例2にあって、再帰曲線33および平行連続線34とにより、本発明にかかる連続線図が構成されており、また、副次連続線35および副次閉鎖線36とにより所謂副次線図が構成されている。
【0040】
また、本実施例2にあっても、再帰曲線33の所定部位に欠落線部45が構成されている。具体的には、情報記載欄5内で、中央の上部位置と、中央の下部位置との二箇所に、夫々欠落線部45,45が形成されている。
【0041】
上述した本実施例2の構成にあっては、再帰曲線33が一筆書き状のシェルピンスキー曲線であり、始点と終点以外で交差せず且つ比較的複雑な形態をなす。そして、背景画像32は、再帰曲線33に加えて、平行連続線34、副次連続線35、および副次閉鎖線36を備えていることから、一層複雑な構造をなしており、偽造等のために視認された場合にあっても該構造を正確に知得され難い。また、背景画像32の濃度設定によって、該背景画像32の構造を知得され難くする作用効果が高まる。こうしたことから、本実施例2の構成は、背景画像32の構造が正確に知得されることを可及的に抑制でき、偽造防止という作用効果が飛躍的に向上する。また、上述した実施例1と同様に、欠落線部45,45によって、偽造防止の作用効果が一層向上する。
【0042】
また、再帰曲線33,平行連続線34、副次連続線35、および副次閉鎖線36が、縦方向と横方向と斜め方向との直線により構成されていることから、複写機での複写によって干渉縞(モアレ)が一層発生し易い。
【0043】
このように本実施例2の構成にあっても、上述した実施例1と同様の作用効果を奏し得る。
【実施例3】
【0044】
実施例3は、背景画像52が、ゴスパー曲線からなる再帰曲線53と、該再帰曲線53に平行な複数の平行連続線54とを備えた偽造防止帳票51である。背景画像52が印刷された領域67は、六角形に似た形状をなし、情報記載欄5の全域を埋めるように該背景画像52が印刷されている。尚、本実施例3にあって、背景画像52が異なる以外は上述の実施例1と同様の構成であることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を適宜省略する。
【0045】
再帰曲線53は、下記の変換規則(3)に従って形成されるゴスパー曲線である。
L=L+R++R−L−−LL−R+,R=−L+RR++R+L−−L−R
・・・(3)
ここで、傾ける角度が「60度」、初期値が「R」である。
【0046】
ここで、ゴスパー曲線としては、横方向と斜め方向との直線が連続する非閉鎖図形要素61を、一筆書き状に複数連続してなるものである。詳述すると、本実施例3のゴスパー曲線は、横方向の直線と+60度又は−60度傾けた斜め方向の直線とが繰り返し描かれることによって形成される。これにより、ゴスパー曲線は、その始点から終点に至るまでの間で交差しない。すなわち、非閉鎖図形要素61は、その直線を境界とする閉じた領域を形成しない形状をなし、総じて、再帰曲線53は、その直線を境界とする閉じた領域が形成しないように描かれる。
【0047】
一方、平行連続線54は、上記の再帰曲線53と一定間隔をおいて描かれた横方向の直線と斜め方向の直線とを連続してなるものであり、これら各直線が、隣合う該再帰曲線53の直線と夫々平行となっている。本実施例3では、こうした平行連続線54が、再帰曲線53の内外両側に各一個づつ描かれている。さらに、外側の平行連続線54のさらに外側には、当該平行連続線54と平行な部分を有する副次連続線55が複数(例えば、二個)描かれていると共に、内側の平行連続線54のさらに内側には、閉じた領域を形成する副次閉鎖線56が複数描かれている。ここで、副次連続線55と副次閉鎖線56とは、背景画像52の領域67で、再帰曲線53と複数の平行連続線54とが描かれない領域を埋めるように描かれており、相互に非接触であり且つ該再帰曲線53と平行連続線54とも非接触である。
【0048】
再帰曲線53のゴスパー曲線は、変換規則(3)に従って、横方向および斜め方向の直線を規則的に連続させたものであり、上記の非閉鎖図形要素61を一筆書き状に複数連続してなるものである。また、平行連続線54は、再帰曲線53を構成する非閉鎖図形要素61と平行に描かれた非閉鎖図形要素62を、一筆書き状に複数連続してなるものであり、換言すれば、横方向および斜め方向の直線を、再帰曲線53と平行になるように規則的に連続してなるものである。
【0049】
本実施例3にあっても、背景画像52が印刷された領域67では、該領域67の全域に亘って該背景画像52が描かれており、且つ該背景画像52の濃度が略平準化されている。そして、背景画像52の濃度が約20%となるように、再帰曲線53、平行連続線54、副次連続線55、および副次閉鎖線56とを描いている。尚、本実施例3にあって、再帰曲線53および平行連続線54とにより、本発明にかかる連続線図が構成されており、また、副次連続線55および副次閉鎖線56とにより所謂副次線図が構成されている。
【0050】
また、本実施例3にあっても、再帰曲線53の所定部位に欠落線部65が構成されている。具体的には、情報記載欄5内での左右位置に、夫々欠落線部65,65が形成されている。
【0051】
上述した実施例3の構成にあっては、再帰曲線53が一筆書き状のゴスパー曲線であり、その始点から終点に至るまで交差せず且つ比較的複雑な形態をなす。そして、背景画像52は、再帰曲線53に加えて、平行連続線54、副次連続線55、および副次閉鎖線56を備えていることから、一層複雑な構造をなしており、偽造のために視認された場合にあっても該構造を正確に知得され難い。また、背景画像52の濃度設定により、該背景画像52の構造を知得され難くする作用効果が高まる。こうしたことから、本実施例3の構成は、背景画像52の構造が正確に知得されることを可及的に抑制でき、偽造防止という作用効果が飛躍的に向上する。また、上述した実施例1と同様に、欠落線部65,65によって、偽造防止の作用効果が一層向上する。
【0052】
また、再帰曲線53,平行連続線54、副次連続線55、および副次閉鎖線56が、横方向と斜め方向との直線により構成されていることから、複写機での複写によって干渉縞(モアレ)が一層発生し易い。
【0053】
このように本実施例3の構成にあっても、上述した実施例1と同様の作用効果を奏し得る。
【実施例4】
【0054】
実施例4は、背景画像82を構成する再帰曲線83と複数の平行連続線84とに潜像91が形成された偽造防止帳票81である。ここで、再帰曲線83は、上述した実施例1と同様に、上記の変換規則(1)に従うヒルベルト曲線であり、平行連続線84は、上述した実施例1と同様に、再帰曲線83の内外両側で該再帰曲線83と平行に描かれている。すなわち、実施例4の再帰曲線83は、実施例1の再帰曲線12と同じ非閉鎖図形要素21(図2,3参照)を一筆書き状に連続したものであり、実施例4の平行連続線84は、実施例1の平行連続線13と同じ非閉鎖図形要素26(図2参照)を一筆書き状に連続したものである。
【0055】
背景画像82は、その再帰曲線83と平行連続線84との所定部位で、夫々を構成する直線の幅を、他の部位に比して約二倍とし、かつ該直線の濃さを、他の部位に比して約半分に薄くする。こうして、背景画像82に、「複」という文字を示す潜像91を形成している。この潜像91は、直線の幅を約二倍としているものの、該直線の濃さを約半分としていることから、目視では気付き難い。一方、複写機で複写した場合には、直線の濃さが明確となることから、複写した紙には、「複」という潜像91が明瞭に表れる。
【0056】
尚、本実施例4の構成は、潜像91を形成した以外は上述の実施例1と同様の構成であることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を適宜省略する。
【0057】
実施例4の構成にあっては、上述した実施例1と同様の作用効果を奏することに加え、複写機で複写した場合に表れる潜像91によって、オリジナルと複写した物とを明確に差別化することができるため、複写による偽造防止効果が一層向上する。
【0058】
上述した実施例1〜4の構成にあっては、背景画像が一個の再帰曲線を備えた構成であるが、その他の構成として、複数の再帰曲線を備えた構成とすることもできる。同様に、平行連続線の個数を適宜変えて設定することも可能である。また、実施例1,4の構成に、実施例2,3と同様に、副次連続線や副次閉鎖線などを加えることも可能である。
【0059】
上述した実施例1〜4の構成にあって、背景画像の濃度は、5〜50%の範囲内で適宜設定することが可能である。また、欠落線部の個数を変えることも可能であり、該欠落線部を、平行連続線に形成するようにしても良い。
【0060】
上述した実施例1〜4の構成にあっては、紙面の一部分に背景画像を印刷するようにした構成であるが、紙面全体に背景画像を印刷することもできる。
【0061】
また、実施例2,3の構成にあっても、実施例4と同様に、潜像を形成することもできる。
【0062】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,31,51,81 偽造防止帳票
5 情報記載欄(情報記載領域)
11,32,52,82 背景画像
12,33,53,83 再帰曲線(連続線図)
13,34,54,84 平行連続線(連続線図)
15,45,65 欠落線部
21,26,41,42,61,62 非閉鎖図形要素
図1
図2
図3
図4
図5
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図13