特許第6564214号(P6564214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許65642144−メチル−1−ペンテン系共重合体を含む樹脂組成物およびその成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564214
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】4−メチル−1−ペンテン系共重合体を含む樹脂組成物およびその成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/20 20060101AFI20190808BHJP
   C08K 3/32 20060101ALI20190808BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20190808BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20190808BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C08L23/20
   C08K3/32
   C08K3/22
   C08K5/17
   C08J5/18CES
【請求項の数】9
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2015-62680(P2015-62680)
(22)【出願日】2015年3月25日
(65)【公開番号】特開2016-183207(P2016-183207A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】植草 貴行
(72)【発明者】
【氏名】藤村 太
(72)【発明者】
【氏名】丸子 千明
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和俊
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/055803(WO,A1)
【文献】 国際公開第2013/099876(WO,A1)
【文献】 藤村太,丸子千明,遠藤啓輔,藤原和俊,4−メチル−1−ペンテン系重合体を含む消臭性に優れた樹脂組成物およびそれらからなる成形体,公開技報公技番号2014−502803号,日本,発明推進協会,2014年10月 6日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/20
C08K 3/22
C08K 3/32
C08K 5/17
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(a)および(b)を満たす4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)と、
(B-i)4価金属リン酸塩化合物、
(B-ii)金属酸化物または複合金属酸化物、および
(B-iii)アミン系化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる消臭剤(B)とを含む樹脂組成物:
(a)4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位(i)60モル%以上99モル%以下と、4−メチル−1−ペンテン以外の、エチレンおよび炭素数3以上20以下のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位(ii)1モル%以上40モル%以下とを有する(ただし、前記構成単位(i)と前記構成単位(ii)との合計を100モル%とする);
(b)示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が、110℃以上199℃以下である。
【請求項2】
前記消臭剤(B)の含有量が0.1〜10質量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記消臭剤(B)がアルデヒド類用であることを特徴とする、請求項1または2に記載の樹脂組成物
【請求項4】
前記(B-1)4価金属リン酸塩化合物が、リン酸ジルコニウムである請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B-ii)金属酸化物または複合金属酸化物が、酸化亜鉛、または酸化亜鉛と二酸化ケイ素との混合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を製造する方法であって、前記4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)と、前記消臭剤(B)とを、230℃以下の温度で溶融混練することを特徴とする、樹脂組成物の製造方法
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形体製造方法であって、成形温度が230℃以下であることを特徴とする、成形体の製造方法
【請求項9】
前記成形体がフィルムであることを特徴とする請求項7に記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−メチル−1−ペンテン系共重合体と特定の消臭剤を含む樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量で強度が優れ、様々な形態に成形できる各種樹脂素材は、様々な用途において幅広く用いられている。それら樹脂素材には多様かつ高度な機能の付与が求められているが、なかでも消臭性能の付与は近年の清潔志向などの要因により要求が高まる傾向にあり、各種素材が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1、2では、基材の表面に消臭剤とバインダ成分を含む分散液を塗布した後に固定化することによって成形体に消臭性を付与する方法が提案されている。しかしながら、これらの方法では、成形体の使用時に表面が擦れて消臭剤が脱落したり、成形体が繊維の場合には洗濯を繰り返し行うことよって消臭剤が流出したりと、持続性に乏しく実用的でなかった。
【0004】
特許文献3には、基材からの消臭剤の脱落を防ぐ方法として、消臭剤を基材となる樹脂材料に練り込む技術が開示されている。しかしながら、消臭剤表面が材料に覆われているため、消臭性能が低下するという問題点があった。
【0005】
特許文献4には、上記消臭性能の低下を防ぐために、基材を多孔質化して基材の表面積を増加させることで、消臭対象ガスと基材樹脂中の消臭剤とを接触しやすくするという技術が開示されている。しかしながら、多孔質化による基材の機械強度が低下するという問題点があり、改善の余地があった。
【0006】
ここで、4−メチル−1−ペンテン重合体は、嵩高い官能基を有するため、他の熱可塑性オレフィンフィルムに比べて密度が低い。このため、4−メチル−1−ペンテン重合体を含む成形体は、高いガス透過性を有することから、生鮮食品等の包装材などのガス透過性フィルムや消臭剤を配合した成形体としての開発が進められている(例えば、特許文献5および非特許文献1参照)。
【0007】
一方で、4−メチル−1−ペンテン重合体は、高い融点を有し、かつ、離型性を有することから、4−メチル−1−ペンテン重合体を成形加工する際に、260℃以上の高温下での加工が求められる。しかしながら、このような高温下での成形加工の場合、消臭剤の種類によっては成形加工時に分解してしまい、本来の機能を発揮できない問題点があり、改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−238777号公報
【特許文献2】特開2002−235280号公報
【特許文献3】特公平7−12431号公報
【特許文献4】特開2012−57004号公報
【特許文献5】特開平11−301691号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】発明推進協会公開技報公技番号2014−502803号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような背景技術に鑑み、消臭性能が高く、かつ、該消臭性能の持続性に優れるとともに、低温での成形が可能な樹脂組成物および該樹脂組成物からなる成形体を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の4−メチル−1−ペンテン系共重合体と特定の消臭剤とを含む樹脂組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。本発明は、例えば以下の[1]〜[9]に関する。
【0012】
[1] 下記要件(a)および(b)を満たす4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)と、
(B-i)4価金属リン酸塩化合物、
(B-ii)金属酸化物または複合金属酸化物、および
(B-iii)アミン系化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる消臭剤(B)とを含む樹脂組成物:
(a)4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位(i)60モル%以上99モル%以下と、4−メチル−1−ペンテン以外の、エチレンおよび炭素数3以上20以下のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーに由来する構成単位(ii)1モル%以上40モル%以下とを有する(ただし、前記構成単位(i)と前記構成単位(ii)との合計を100モル%とする);
(b)示差走査熱量計(DSC)により測定される融点(Tm)が、199℃以下であるか、又は実質的に観測されない。
【0013】
[2] 前記消臭剤(B)の含有量が0.1〜10質量%である、項[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 前記消臭剤(B)がアルデヒド類用であることを特徴とする、項[1]または[2]に記載の樹脂組成物
[4] 前記(B-1)4価金属リン酸塩化合物が、リン酸ジルコニウムである項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[5] 前記(B-ii)金属酸化物または複合金属酸化物が、酸化亜鉛、または酸化亜鉛と二酸化ケイ素との混合物である、項[1]〜[3]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[6] 前記樹脂組成物を溶融混練により製造する場合の混練温度が230℃以下であることを特徴とする、項[1]〜[5]のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[7] 項[1]〜[6]のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる成形体。
[8] 前記樹脂組成物からなる成形体を製造する際の成形温度が230℃以下であることを特徴とする、項[7]に記載の成形体。
[9] 前記成形体がフィルムである、項[7]または[8]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、消臭性能が高く、かつ、該消臭性能の持続性に優れるとともに、低温で成形可能な樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0017】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、特定の物性を有する4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)(以下単に「共重合体(A)」ともいう。)と、特定の構造を有する消臭剤(B)とを含有する。
【0018】
本発明の樹脂組成物において、上記消臭剤(B)の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.3〜5質量%である。
<4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)>
本発明の樹脂組成物を構成する4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)は、下記要件(a)および(b)を満たし、さらに下記要件(c)、(d)および(e)から選ばれる1以上の要件を満たすことが好ましい。
【0019】
要件(a);
共重合体(A)は、4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位(i)と、エチレン及び炭素数3以上20以下のα−オレフィン(ただし、4−メチル−1−ペンテンを除く。)から選ばれる少なくとも1種のモノマーから導かれる構成単位(ii)との合計を100モル%として、当該構成単位(i)60〜99モル%と、当該構成単位(ii)40〜1モル%と有する。
【0020】
すなわち、構成単位(i)の割合の下限値は、60モル%であるが、65モル%であることが好ましく、70モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(i)の割合の上限値は、99モル%であるが、97モル%であることがより好ましい。このように、本発明では共重合体(A)における前記構成単位(i)の割合が前記下限値以上であることで、得られるフィルムの機械物性に優れ、また、前記上限値以下にあることで適度な低温で成形可能な融点を有することとなる。
【0021】
また、構成単位(ii)の割合の上限値は、40モル%であるが、35モル%であることが好ましく、30モル%であることがより好ましい。一方、構成単位(ii)の割合の下限値は、1モル%であるが、3モル%であることがより好ましい。
【0022】
前記構成単位(ii)を導くモノマーは、1種類からなるものであってもよく、あるいは2種以上からなっていてもよく、2種以上からなる場合、その割合は特に限定されるものではない。
【0023】
炭素数3以上20以下のα−オレフィンとしては、例えば直鎖状または分岐状のα−オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物等が挙げられる。
【0024】
直鎖状のα−オレフィンとしては、炭素原子数3〜20、好ましくは3〜15、より好ましくは3〜10であり、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられ、さらに好ましくは、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0025】
また、分岐状のα−オレフィンとしては、炭素原子数5〜20、好ましくは5〜15であり、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセンなどが挙げられる。
【0026】
環状オレフィンとしては、炭素原子数3〜20、好ましくは5〜15であり、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0027】
前記構成単位(ii)を導くモノマーとしては、特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、5−ビニリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好適である。
【0028】
また、共重合体(A)は、発明の目的を損なわない限り、構成単位(i)と構成単位(ii)のいずれにも該当しない構成単位を含んでいても構わない。含有量としては少量が好ましく、例えば5モル%以下である。
【0029】
要件(b);
共重合体(A)の融点(Tm)は、199℃以下であるか、又は実質的に観測されない。共重合体(A)の融点(Tm)が199℃以下であるか、又は実質的に観測されないことにより、低温での成形を実施することができる。共重合体(A)の融点(Tm)は、好ましくは110℃〜180℃であるか、又は実質的に観測されない。
【0030】
なお、「融点(Tm)が実質的に観測されない」とは、−150℃〜250℃の範囲において、結晶融解熱量が1J/g以上である結晶融解ピークが観測されないことをいう。
融点(Tm)は、共重合体の組成によって適宜調節される。より具体的には、前記構成単位(ii)を導くモノマーの割合が多くなると融点(Tm)が低くなる傾向となる。
【0031】
要件(c);
共重合体(A)の、デカリン中135℃で測定した極限粘度[η]は、好ましくは0.1〜5.0dL/g、より好ましくは0.5〜4.0dL/g、さらに好ましくは0.5〜3.5dL/gの範囲にある。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0032】
後述するように重合中に水素を併用すると分子量を制御でき、低分子量体から高分子量体まで自在に得て極限粘度[η]を調整することが出来る。前記極限粘度[η]が0.1dL/gよりも過小、または5.0dL/gよりも過大であると、フィルム、射出成形体等に加工する際の成形加工性が損なわれる場合がある。
【0033】
要件(d);
共重合体(A)の、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との割合(分子量分布;Mw/Mn)は、好ましくは1.0〜3.5、より好ましくは1.2〜3.0、さらに好ましくは1.5〜2.8の範囲にある。前記Mw/Mnが3.5よりも過大であると、組成分布に由来する低分子量、低立体規則性ポリマーの影響が懸念されて、得られる成形体の表面がべとつく。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
【0034】
ここで、本発明においては、後述する触媒を用いれば極限粘度[η]の範囲内において、前記Mw/Mnを満たす前記共重合体(A)を得ることができる。なお、前記Mw/Mnおよび以下のMwの値は、後述する実施例において採用された方法で測定した場合の値である。
【0035】
また、共重合体(A)の、GPCにより測定されるMwは、ポリスチレン換算で、好ましくは500〜10,000,000、より好ましくは1,000〜5,000,000、さらに好ましくは1,000〜2,500,000である。
【0036】
要件(e);
共重合体(A)の密度(ASTM D 1505にて測定)は、好ましくは870〜830kg/m3、より好ましくは865〜830kg/m3、さらに好ましくは855〜830kg/m3である。なお、測定条件等の詳細は、後述する実施例の欄に記載のとおりである。
密度は共重合体(A)の構成単位の組成によって適宜変えることができる。
【0037】
<4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)の製造方法>
共重合体(A)の製造方法は、特に限定されないが、例えば4−メチル−1−ペンテンと上述した「構成単位(ii)を導くモノマー」とを適当な重合触媒存在下で重合することにより得ることができる。ここで、本発明で用いることのできる重合触媒として、従来公知の触媒、例えばマグネシウム担持型チタン触媒、国際公開第01/53369号パンフレット、国際公開第01/27124号パンフレット、特開平3−193796号公報あるいは特開平02−41303号公報中に記載のメタロセン触媒などが好適に用いられ、さらに好ましくは、下記一般式(1)または(2)で表されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒が好適に用いられる。
【0038】
【化1】
【0039】
【化2】
【0040】
上記式(1)、(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R1からR4までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、R5からR12までの隣接した置換基は互いに結合して環を形成してもよく、Aは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基であり、AはYと共に形成する環を含めて2つ以上の環構造を含んでいてもよく、
Mは周期表第4族から選ばれた金属であり、
Yは炭素またはケイ素であり、
Qはハロゲン、炭化水素基、およびアニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組合せで選ばれ、
jは1〜4の整数である。
【0041】
上記一般式(1)または(2)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13およびR14は、水素、炭化水素基およびケイ素含有炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0042】
炭化水素基は、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数7〜20のアリールアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基、または炭素原子数7〜20のアルキルアリール基であり、1つ以上の環構造を含んでいてもよい。また、炭化水素基の水素の一部または全部が水酸基、アミノ基、ハロゲン基、フッ素含有炭化水素基などの官能基で置換されていてもよい。炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルプロピル、2,2−ジメチルプロピル、1,1−ジエチルプロピル、1−エチル−1−メチルプロピル、1,1,2,2−テトラメチルプロピル、sec−ブチル、tert−ブチル、1,1−ジメチルブチル、1,1,3−トリメチルブチル、ネオペンチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘキシル、1−メチル−1−シクロヘキシル、1−アダマンチル、2−アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル、メンチル、ノルボルニル、ベンジル、2−フェニルエチル、1−テトラヒドロナフチル、1−メチル−1−テトラヒドロナフチル、フェニル、ビフェニル、ナフチル、トリル、クロロフェニル、クロロビフェニル、クロロナフチル等が挙げられる。
【0043】
ケイ素含有炭化水素基は、好ましくはケイ素数1〜4かつ炭素原子数3〜20のアルキルシリル基またはアリールシリル基であり、その具体例としては、トリメチルシリル、tert−ブチルジメチルシリル、トリフェニルシリル等が挙げられる。
【0044】
フルオレン環上のR5からR12までの隣接した置換基は、互いに結合して環を形成してもよい。そのような置換フルオレニル基としては、ベンゾフルオレニル、ジベンゾフルオレニル、オクタヒドロジベンゾフルオレニル、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル等を挙げることができる。
【0045】
また、フルオレン環上のR5からR12の置換基は、合成上の容易さから左右対称、すなわちR5=R12、R6=R11、R7=R10、かつR8=R9であることが好ましく、フルオレン環が無置換フルオレン、3,6−二置換フルオレン、2,7−二置換フルオレンまたは2,3,6,7−四置換フルオレンであることがより好ましい。ここでフルオレン環上の3位、6位、2位、7位はそれぞれR7、R10、R6、R11に対応する。
【0046】
上記一般式(1)のR13およびR14は、水素および炭化水素基から選ばれ、それぞれ同一でも異なっていてもよい。好ましい炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。
【0047】
Yは炭素またはケイ素である。一般式(1)の場合は、R13およびR14はYと結合し、架橋部として置換メチレン基または置換シリレン基を構成する。好ましい具体例としては、メチレン、ジメチルメチレン、ジイソプロピルメチレン、メチル−tert−ブチルメチレン、ジシクロヘキシルメチレン、メチルシクロヘキシルメチレン、メチルフェニルメチレン、フルオロメチルフェニルメチレン、クロロメチルフェニルメチレン、ジフェニルメチレン、ジクロロフェニルメチレン、ジフルオロフェニルメチレン、メチルナフチルメチレン、ジビフェニルメチレン、ジ−p−メチルフェニルメチレン、メチル−p−メチルフェニルメチレン、エチル−p−メチルフェニルメチレン、ジナフチルメチレン、ジメチルシリレン、ジイソプロピルシリレン、メチル−tert−ブチルシリレン、ジシクロヘキシルシリレン、メチルシクロヘキシルシリレン、メチルフェニルシリレン、フルオロメチルフェニルシリレン、クロロメチルフェニルシリレン、ジフェニルシリレン、ジ−p−メチルフェニルシリレン、メチル−p−メチルフェニルシリレン、エチル−p−メチルフェニルシリレン、メチルナフチルシリレン、ジナフチルシリレン等を挙げることができる。
【0048】
一般式(2)の場合は、Yは一部不飽和結合および/または芳香族環を含んでいてもよい炭素原子数2〜20の2価の炭化水素基Aと結合し、シクロアルキリデン基またはシクロメチレンシリレン基等を構成する。好ましい具体例としては、シクロプロピリデン、シクロブチリデン、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、シクロヘプチリデン、ビシクロ[3.3.1]ノニリデン、ノルボルニリデン、アダマンチリデン、テトラヒドロナフチリデン、ジヒドロインダニリデン、シクロジメチレンシリレン、シクロトリメチレンシリレン、シクロテトラメチレンシリレン、シクロペンタメチレンシリレン、シクロヘキサメチレンシリレン、シクロヘプタメチレンシリレン等を挙げることができる。
【0049】
一般式(1)および(2)のMは、周期表第4族から選ばれる金属であり、Mとしてはチタニウム、ジルコニウム、ハフニウムが挙げられる。
Qはハロゲン、炭素原子数1〜20の炭化水素基、およびアニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子から同一のまたは異なる組み合わせで選ばれる。ハロゲンの具体例としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられ、炭化水素基の具体例としては、上記と同様のものを挙げることができる。アニオン配位子の具体例としては、メトキシ、tert−ブトキシ、フェノキシ等のアルコキシ基、アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基、およびメシレート、トシレート等のスルホネート基等が挙げられる。孤立電子対で配位可能な中性配位子の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィンなどの有機リン化合物、およびテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられる。これらのうち、Qは同一でも異なった組み合わせでもよいが、少なくとも一つはハロゲンまたはアルキル基であることが好ましい。
また、上記一般式(1)および(2)において、jは、好ましくは2である。
【0050】
本発明で用いうるオレフィン重合触媒を構成するメタロセン化合物として、上記一般式(1)または(2)で表されるメタロセン化合物が特に好適に挙げられるが、これに限られるものではない。例えば、本発明で用いうるメタロセン化合物の他の好適な例として、下記一般式[I]で表されるメタロセン化合物も挙げることができる。
【0051】
【化3】
【0052】
式[I]中、R1、R3、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R2は炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であり、R4は水素原子であり、R4を除くR1からR16までの置換基のうち、任意の2つの置換基は互いに結合して環を形成していてもよく、Mは第4族遷移金属であり、Qはハロゲン原子、炭化水素基、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子であり、jは1〜4の整数であり、jが2以上の整数であるとき、Qは同一または異なる組合せで選んでもよい。
【0053】
一般式[I]において、R1およびR3が水素原子であることが好ましく;R2が炭素数1〜20の炭化水素基であることが好ましく、シクロペンタジエニル環に結合する炭素が3級炭素である置換基であることが好ましく;R5およびR7が互いに結合して環を形成していることが好ましく;R9、R12、R13およびR16が水素原子であることが好ましく;R10、R11、R14およびR15が炭化水素基であるか、またはR10とR11が互いに結合して環を形成し、かつR14とR15が互いに結合して環を形成していることが好ましい。
【0054】
上記一般式[I]において、R1からR16(ただし、R4を除く。)となりうる炭化水素基としては、例えば、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基、環状飽和炭化水素基、環状不飽和炭化水素基、飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基が挙げられる。炭化水素基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは1〜15、より好ましくは1〜10である。
【0055】
直鎖状炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基等の直鎖状アルキル基;アリル基等の直鎖状アルケニル基が挙げられる。
【0056】
分岐状炭化水素基としては、例えば、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基等の分岐状アルキル基が挙げられる。
【0057】
環状飽和炭化水素基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、メチルシクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、メチルアダマンチル基等の多環式基が挙げられる。
【0058】
環状不飽和炭化水素基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基等のアリール基;シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基;5−ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エニル基等の多環の不飽和脂環式基が挙げられる。
【0059】
飽和炭化水素基が有する1または2以上の水素原子を環状不飽和炭化水素基に置換してなる基としては、例えば、ベンジル基、クミル基、1,1−ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基等のアルキル基が有する1または2以上の水素原子をアリール基に置換してなる基が挙げられる。
【0060】
1からR16(ただし、R4を除く。)におけるヘテロ原子含有炭化水素基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フリル基などの酸素原子含有炭化水素基;N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N−フェニルアミノ基等のアミノ基、ピリル基などの窒素原子含有炭化水素基;チエニル基などの硫黄原子含有炭化水素基が挙げられる。ヘテロ原子含有炭化水素基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜18、より好ましくは2〜15である。ただし、ヘテロ原子含有炭化水素基からはケイ素含有基を除く。
【0061】
1からR16(ただし、R4を除く。)におけるケイ素含有基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の式−SiR3(式中、複数あるRはそれぞれ独立に炭素数1〜15のアルキル基またはフェニル基である。)で表される基が挙げられる。
【0062】
4を除くR1からR16までの置換基のうち、隣接した2つの置換基(例:R1とR2、R2とR3、R5とR7、R6とR8、R7とR8、R9とR10、R10とR11、R11とR12、R13とR14、R14とR15、R15とR16)が互いに結合して環を形成していてもよく、R6およびR7が互いに結合して環を形成していてもよく、R1およびR8が互いに結合して環を形成していてもよく、R3およびR5が互いに結合して環を形成していてもよい。前記環形成は、分子中に2箇所以上存在してもよい。
【0063】
本明細書において、2つの置換基が互いに結合して形成された環(付加的な環)としては、例えば、脂環、芳香環、ヘテロ環が挙げられる。具体的には、シクロヘキサン環;ベンゼン環;水素化ベンゼン環;シクロペンテン環;フラン環、チオフェン環等のヘテロ環およびこれに対応する水素化ヘテロ環が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン環;ベンゼン環および水素化ベンゼン環である。また、このような環構造は、環上にアルキル基等の置換基をさらに有していてもよい。
【0064】
1およびR3は、立体規則性の観点から、水素原子であることが好ましい。
5、R6およびR7から選ばれる少なくとも1つは、炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基またはケイ素含有基であることが好ましく、R5が炭化水素基であることがより好ましく、R5が直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等の炭素数2以上のアルキル基、シクロアルキル基またはシクロアルケニル基であることがさらに好ましく、R5が炭素数2以上のアルキル基であることがとりわけ好ましい。また、合成上の観点からは、R6およびR7は水素原子であることも好ましい。また、R5およびR7が互いに結合して環を形成していることがより好ましく、当該環がシクロヘキサン環等の6員環であることが特に好ましい。
【0065】
8は、炭化水素基であることが好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
2は、立体規則性の観点から、炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜20の炭化水素基であることがより好ましく、アリール基ではないことがさらに好ましく、直鎖状炭化水素基、分岐状炭化水素基または環状飽和炭化水素基であることがとりわけ好ましく、遊離原子価を有する炭素(シクロペンタジエニル環に結合する炭素)が3級炭素である置換基であることが特に好ましい。
【0066】
2としては、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、tert−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基が例示でき、より好ましくはtert−ブチル基、tert−ペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−アダマンチル基等の遊離原子価を有する炭素が3級炭素である置換基であり、特に好ましくはtert−ブチル基、1−アダマンチル基である。
【0067】
一般式[I]において、フルオレン環部分は公知のフルオレン誘導体から得られる構造であれば特に制限されないが、R9、R12、R13およびR16は、立体規則性、分子量の観点から、好ましくは水素原子である。
【0068】
10、R11、R14およびR15は、好ましくは水素原子、炭化水素基、酸素原子含有炭化水素基または窒素原子含有炭化水素基であり、より好ましくは炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0069】
10とR11が互いに結合して環を形成し、かつR14とR15が互いに結合して環を形成していてもよい。このような置換フルオレニル基としては、例えば、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、オクタヒドロジベンゾフルオレニル基、1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基、1,1,3,3,6,6,8,8-オクタメチル-2,3,6,7,8,10-ヘキサヒドロ-1H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基、1',1',3',6',8',8'-ヘキサメチル-1'H,8'H-ジシクロペンタ[b,h]フルオレニル基が挙げられ、特に好ましくは1,1,4,4,7,7,10,10-オクタメチル-2,3,4,7,8,9,10,12-オクタヒドロ-1H-ジベンゾ[b,h]フルオレニル基である。
【0070】
一般式[I]において、Mは、第4族遷移金属であり、好ましくはTi、ZrまたはHfであり、より好ましくはZrまたはHfであり、特に好ましくはZrである。
一般式[I]において、Qとなりうるハロゲン原子としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0071】
Qとなりうる炭化水素基としては、R1〜R16(ただし、R4を除く。)における炭化水素基と同様の基が挙げられ、好ましくは直鎖状アルキル基、分岐状アルキル基等のアルキル基である。
【0072】
Qにおけるアニオン配位子としては、例えば、メトキシ、tert−ブトキシ等のアルコキシ基;フェノキシ等のアリールオキシ基;アセテート、ベンゾエート等のカルボキシレート基;メシレート、トシレート等のスルホネート基;ジメチルアミド、ジイソプロピルアミド、メチルアニリド、ジフェニルアミド等のアミド基が挙げられる。
【0073】
Qにおける孤立電子対で配位可能な中性配位子としては、例えば、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン等の有機リン化合物;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテルが挙げられる。
【0074】
Qは、少なくとも1つがハロゲン原子またはアルキル基であることが好ましい。
また、上記一般式[I]において、jは、好ましくは2である。
なお、上記化合物[I]の命名に用いた位置番号を、[1-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレン-12'-イル)(5-tert-ブチル-1-メチル-3-iso-プロピル-1,2,3,4-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロライド、および[8-(1',1',4',4',7',7',10',10'-オクタメチルオクタヒドロジベンゾ[b,h]フルオレン-12'-イル)(2-tert-ブチル-8-メチル-3,3b,4,5,6,7,7a,8-オクタヒドロシクロペンタ[a]インデン)]ジルコニウムジクロライドを例にとり、鏡像異性体の一つについてそれぞれ式[I−1]、式[I−2]に示す。
【0075】
【化4】
【0076】
上記メタロセン化合物の具体例として、国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第2006/025540号パンフレットまたは国際公開第2014/050817号中に例示される化合物が好適に挙げられるが、特にこれによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0077】
共重合体(A)の製造にメタロセン化合物を用いる場合、触媒成分は、
(a)メタロセン化合物(たとえば、上記一般式(1),(2)または[I]で表されるメタロセン化合物)と、
(b)(b−1)有機アルミニウムオキシ化合物、(b−2)メタロセン化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物、および(b−3)有機アルミニウム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物と、
さらに必要に応じて、
(c)微粒子状担体と
から構成される。製造方法としては、たとえば国際公開第01/27124号パンフレットに記載の方法を採用することが出来る。
【0078】
また、有機アルミニウムオキシ化合物(b−1)(以下「成分(b−1)」ともいう。)、メタロセン化合物(a)(以下「成分(a)」ともいう。)と反応してイオン対を形成する化合物(以下「成分(b−2)」ともいう。)、有機アルミニウム化合物(b−3)(以下「成分(b−3)」ともいう。)、および微粒子状担体(c)の具体例としては、これらの化合物または担体としてオレフィン重合の分野において従来公知のもの、たとえば国際公開第01/27124号パンフレットに記載された具体例が挙げられる。
【0079】
ここで、本発明の好適な態様において、共重合体(A)は、4−メチル−1−ペンテンと上述した「構成単位(ii)を導くモノマー」とを上記重合触媒存在下で重合することにより得ることができるところ、共重合体(A)の製造において、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法いずれによっても実施できる。
【0080】
液相重合法においては、液相を構成する溶媒として不活性炭化水素溶媒を用いることができる。このような不活性炭化水素の具体例としては、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;およびエチレンクロリド、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素、ならびにこれらの混合物などを挙げることができる。
【0081】
また、4−メチル−1−ペンテンおよび上記「構成単位(ii)を導くモノマー」自身を溶媒とする塊状重合を実施することもできる。
また、4−メチル−1−ペンテンの単独重合と4−メチル−1−ペンテンと上記「構成単位(ii)を導くモノマー」との共重合を段階的に行うことにより、組成分布が制御された共重合体(A)を得ることも可能である。
【0082】
重合を行うに際して、成分(a)は、反応容積1リットル当り、周期律表第4族金属原子換算で通常10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モルとなるような量で用いられる。成分(b−1)は、成分(b−1)と、成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−1)/M]が、通常0.01〜5000、好ましくは0.05〜2000となるような量で用いられる。成分(b−2)は、成分(b−2)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。成分(b−3)は、成分(b−3)と成分(a)中の遷移金属原子(M)とのモル比[(b−2)/M]が、通常10〜5000、好ましくは20〜2000となるような量で用いられる。
【0083】
重合温度は、通常−50〜200℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは20〜100℃の範囲である。
重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0084】
重合に際して生成ポリマーの分子量や重合活性を制御する目的で水素を添加してもよく、その量は4−メチル−1−ペンテンおよび上記「構成単位(ii)を導くモノマー」の合計1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0085】
<消臭剤(B)>
本発明に用いられる消臭剤(B)は、下記(B-i)〜(B-iii)から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる。
(B-i)4価金属リン酸塩化合物
(B-ii)金属酸化物または複合金属酸化物
(B-iii)アミン系化合物
以下、上記(B-i)、(B-ii)および(B-iii)を、それぞれ単に成分(B-i)、成分(B-ii)および成分(B-iii)と称することがある。なお、成分(B-i)、(B-ii)および(B-iii)は、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
(B-i)4価金属リン酸塩化合物
成分(B-i)としては、リン酸ジルコニウム、リン酸チタン、リン酸スズなどが挙げられる。これらの中では、リン酸ジルコニウムが好ましい。成分(B-i)としては、非晶質および結晶質のいずれの化合物も用いることができる。成分(B-i)は、アンモニア、トリメチルアミンなどの塩基性ガスの吸着・消臭力が高く、体臭などの消臭効果が認められている。
成分(B-i)からなる消臭剤としては、例えばケスモン(登録商標)NS−10(東亞合成株式会社製)などが挙げられる。
【0087】
(B-ii)金属酸化物または複合金属酸化物
成分(B-ii)における金属酸化物としては、例えば、亜鉛、ケイ素、銅、ニッケル、鉄、アルミニウム及びマグネシウムから選ばれる金属元素を含む金属酸化物などが挙げられる。成分(B-ii)における複合金属酸化物としては、例えば、上記の金属元素を2種以上含む酸化物、あるいは、上記の金属元素とその他の金属元素とを含む酸化物などが挙げられる。成分(B-ii)は、好ましくは酸化亜鉛および酸化亜鉛と二酸化ケイ素との混合物である。成分(B-ii)は、酢酸・イソ吉草酸等の酸性ガスの消臭効果が高く、体臭などの消臭効果が認められている。
【0088】
酸化亜鉛からなる消臭剤として、ケスモン(登録商標)NS−10K(東亞合成株式会社製)が挙げられ、二酸化ケイ素と酸化亜鉛の混合物からなる消臭剤として、シュークレンズ(登録商標)KD−211G、KD−211GF(ラサ工業株式会社製)が挙げられる。
【0089】
(B-iii)アミン系化合物
成分(B-iii)は、分子内に−NH2で表されるアミノ基を少なくとも1個有し、かつ水溶性であれば、脂肪族アミンでも芳香族アミンでもよい。脂肪族アミンとしては、例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、アリルアミン、モノエタノールアミン、イソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。また、芳香族アミンとしては、例えばアニリン、ベンジルアミン、m−フェニレンジアミンなどが挙げられる。
【0090】
また、成分(B-iii)は、熱安定性を向上するために、活性炭やケイ酸ナトリウム中和物等の空孔、または層状構造を有する難溶性リン酸塩などの層間などにインターカレートすることもできる。
【0091】
成分(B-iii)は、ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドなどのアルデヒド類に対する消臭力が高く、タバコ臭などの消臭効果が認められている。
成分(B-iii)からなる消臭剤として、シュークレンズ(登録商標)KD−311(ラサ工業株式会社製)が挙げられる。
【0092】
成分(B-iii)は、一般的には、高温下にて分解しやすいが、本発明の樹脂組成物は比較的低温にて成形加工が可能であることから、当該化合物の消臭性能を失うことなく消臭性能の高い樹脂組成物および成形体を得ることができる。
消臭剤(B)としては、市販の消臭剤製品を1種単独で用いてもよいし、複数種の消臭剤製品を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
<その他の樹脂(C)>
本発明の樹脂組成物には、共重合体(A)の優れた特性を損なわない範囲で、その他の樹脂(C)を添加してもよい。添加量は、一般的には50重量%以下、好ましくは40重量%以下である。その他の樹脂(C)の例としては、オレフィン系重合体、ポリエステル、ポリアミド、変性オレフィン系重合体等が挙げられる。
【0094】
上記オレフィン系重合体としては、炭素原子数2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンを重合して得られるものが挙げられる。炭素原子数2〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらの中では、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0095】
上記オレフィン系重合体は、上述したα−オレフィンの他、本発明の目的を損なわない範囲で、環状オレフィン、官能化ビニル化合物、極性基(例えばカルボニル基、水酸基、エーテル結合基など)および重合性の炭素−炭素二重結合を分子中に有するモノマー(以下、極性基含有モノマーとも記す。)、共役ジエン、非共役ポリエンなどをコモノマーとして含んでもよい。
【0096】
環状オレフィンとしては、炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、テトラシクロドデセン、2−メチル1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレンなどが挙げられる。
【0097】
官能化ビニル化合物としては、芳香族ビニル化合物や脂環族ビニル化合物が挙げられる。芳香族ビニル化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノもしくはポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、などの官能基含有スチレン誘導体;および3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、α−メチルスチレンなどが挙げられる。脂環族ビニル化合物としては、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタンなどが挙げられる。
【0098】
官能化ビニル化合物は、官能化ビニル化合物の単独重合体であっても、共重合成分との共重合体であってもよい。共重合成分の具体例として、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウムなどの不飽和カルボン酸塩、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノエチルエステルなどの不飽和カルボン酸エステル、アクリルアミド、マレイン酸モノアミドなどの不飽和カルボン酸アミドなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの共重合成分は1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
上記ポリエステルとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサメチレングリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式グリコール、ビスフェノール等の芳香族ジヒドロキシ化合物と、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ウンデカジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸等の脂環式ジカルボン酸、あるいはこれらから選ばれる2種以上のジカルボン酸とから形成される結晶性の熱可塑性樹脂である。このポリエステルは、熱可塑性を示す限り、少量のトリオールやトリカルボン酸等の3価以上のポリヒドロキシ化合物やポリカルボン酸などで変性されていてもよい。このポリエステルの具体例として、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート共重合体等が挙げられる。
【0100】
上記ポリアミドとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,3−または1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ビス(p−アミノシクロヘキシルメタン)、m−またはp−キシリレンジアミン等の脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンまたは芳香族ジアミンなどのジアミン類と、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の脂肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸などのジカルボン酸類との重縮合によって得られるポリアミド、ε−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸等のアミノカルボン酸の縮合によって得られるポリアミド、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタム等のラクタムから得られるポリアミド、あるいはこれらの成分からなる共重合ポリアミド、さらにはこれらのポリアミドの混合物などが挙げられる。このポリアミドの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6110、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロン6/11、芳香族ナイロン等が挙げられる。
【0101】
<その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物には、その用途に応じて、本発明の効果を阻害しない範囲で他の樹脂用添加剤を任意に添加することができる。かかる樹脂用添加剤としては、例えば、顔料、染料、充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、発泡剤、発泡助剤、結晶化助剤、防曇剤、(透明)核剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、衝撃改良剤、架橋剤、共架橋剤、架橋助剤、粘着剤、軟化剤、加工助剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種単独でも、適宜2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0102】
顔料としては、無機含量(酸化チタン、酸化鉄、酸化クロム、硫化カドミウム等)、有機顔料(アゾレーキ系、チオインジゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系)が挙げられる。染料としてはアゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系等が挙げられる。これら顔料および染料の添加量は、特に限定されないが、前記共重合体(A)100質量部に対して、合計で、通常5質量部以下、好ましくは0.1〜3質量部である。
【0103】
充填剤としてはガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、金属(ステンレス、アルミニウム、チタン、銅等)繊維、カーボンブラック、シリカ、ガラスビーズ、珪酸塩(珪酸カルシウム、タルク、クレー等)、金属酸化物(酸化鉄、酸化チタン、アルミナ等)、金属の炭酸塩(硫酸カルシウム、硫酸バリウム)および各種金属(マグネシウム、珪素、アルミニウム、チタン、銅等)粉末、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。これらの充填剤は1種単独または2種以上の併用いずれでもよい。
【0104】
滑剤としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、講習脂肪酸塩(ステアリン酸カルシウム等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0105】
可塑剤としては、芳香族カルボン酸エステル(フタル酸ジブチル等)、脂肪族カルボン酸エステル(メチルアセチルリシノレート等)、脂肪族ジアルボン酸エステル(アジピン酸−プロピレングリコール系ポリエステル等)、脂肪族トリカルボン酸エステル(クエン酸トリエチル等)、リン酸トリエステル(リン酸トリフェニル等)、エポキシ脂肪酸エステル(ステアリン酸エポキシブチル等)、石油樹脂等が挙げられる。
【0106】
離型剤としては、高級脂肪酸の低級(C1〜4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4〜30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィン等が挙げられる。
【0107】
酸化防止剤としては、フェノール系(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等)、多環フェノール系(2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等)、リン系(テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレンジホスフォネート等)、アミン系(N,N−ジイソプロピル−p−フェニレンジアミン等)の酸化防止剤が挙げられる。
【0108】
難燃剤としては、有機系難燃剤(含窒素系、含硫黄系、含珪素系、含リン系等)、無機系難燃剤(三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、赤リン等)が挙げられる。
【0109】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系、アクリレート系等が挙げられる。
抗菌剤としては、4級アンモニウム塩、ピリジン系化合物、有機酸、有機酸エステル、ハロゲン化フェノール、有機ヨウ素等が挙げられる。
【0110】
界面活性剤としては非イオン性、アニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を挙げることができる。非イオン性界面活性剤としては、高級アルコールエチレンオキシド付加物、脂肪酸エチレンオキシド付加物、高級アルキルアミンエチレンオキシド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキシド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン界面活性剤、ポリエチレンオキシド、グリセリンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステル、ソルビットもしくはソルビタンの脂肪酸エステル、多価アルコールのアルキルエーテル、アルカノールアミンの脂肪族アミド等の多価アルコール型非イオン性界面活性剤などが挙げられ、アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸のアルカリ金属塩等の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、パラフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコールリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩などが挙げられ、カチオン性界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウム塩等の第4級アンモニウム塩などが挙げられる。両性界面活性剤としては、高級アルキルアミノプロピオン酸塩等のアミノ酸型両面界面活性剤、高級アルキルジメチルベタイン、高級アルキル時ヒドロキシエチルベタイン等のベタイン型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0111】
帯電防止剤としては、上記の界面活性剤、脂肪酸エステル、高分子型帯電防止剤が挙げられる。脂肪酸エステルとしてはステアリン酸やオレイン酸のエステルなどが挙げられ、高分子型帯電防止剤としてはポリエーテルエステルアミドが挙げられる。
【0112】
上記充填剤、滑剤、可塑剤、離型剤、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、界面活性剤、帯電防止剤などの各種添加剤の添加量は、本発明の目的を損なわない範囲内で用途に応じて、特に限定されないが、前記4−メチル−1−ペンテン系重合体に対して、それぞれ、0.01〜30重量%であることが好ましい。
【0113】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、上記の4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A)と、(i)〜(i i i)から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる消臭剤(B)、および、必要により、上記「その他の樹脂」「その他の添加剤」の項で挙げられた各種樹脂および添加剤を配合し、種々公知の方法で混合して製造できる。
【0114】
混合する方法としては例えば、ロール、プラストミル、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダー、タンブラブレンダー、ニーダールーダー等で混合する方法、あるいは一軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練して製造することができる。また、消臭剤をマスターバッチ状で添加しドライブレンドまたは溶融混合することもできる。
【0115】
溶融混練を行う場合の温度は、通常300℃以下、好ましくは160〜230℃である。300℃以下であることで熱分解が抑制できるが、高温で分解する消臭剤を分解させずに混錬することができることから、230℃以下が好ましい。混練時間は、通常0.1〜30分間、好ましくは0.5〜5分間の範囲であることで、十分に溶融混練されかつ熱分解を抑えることができる。
【0116】
[成形体]
本発明の樹脂組成物は、共重合体(A)が本来持つ成形性を維持しているため種々の成形体に成形加工して用いることができる。得られる成形体は、消臭性能に優れるとともに、共重合体(A)が本来持つ機械強度、透明性および衛生性などの特性を維持しているため、消臭性能が要求される各種成形体、例えば、射出成形体、フィルム、シート、繊維、中空成形体などに幅広く適用することができる。また、繊維としては極細繊維の製造も可能であるため不織布の形態にすることや、モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーンの形態で用いることもできる。
【0117】
これら成形体は、本発明の樹脂組成物単独で成形されてもよいし、その他の各種樹脂や非樹脂材料と多層構造や複合構造をなしていてもよい。
フィルムおよびシートの用途例としては、食品などの各種包装用フィルム、ごみ袋、汚物袋、手袋などの各種日用品、壁紙や床材などの建材、自動車用品など挙げられる。
【0118】
射出成形体の例としては、ゴミ箱、トイレ用品、浴用品、台所用品などの日用品、弁当容器などの各種食品容器や調理用の器具、床材などの建材、冷蔵庫用部材、下駄箱用部材、衣装ケース、スノコ、タンスなどの家具・家庭用品、ペット飼育用品、自動車の内装材、などが挙げられる。
【0119】
繊維および不織布の用途例としては、マスク、紙おむつ、生理用品、カツラなどの衛生用品や医療用品;中空糸フィルター、浄水フィルター、バグフィルター、集塵用フィルターなどの各種フィルター;鞄、靴、ベルト、ジャケット、下着などの衣類・装飾品類;テーブルクロス、カーテン、カーペット、自動車用マットなどの日用品;布団用中綿、布団用側地、布団カバー、毛布、毛布用側地、毛布カバー、シーツ、枕用中綿、枕カバー、ぬいぐるみ用中綿、ダウンジャケットなどの寝具・中綿類などが挙げられる。
【0120】
また、モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーンの用途としては、紐、ロープ、養生ネット、漁網、釣り糸、ライフジャケット、防虫網、婦人服、紳士服、裏地、アンダーウエア、ダウン、ベスト、ウインドブレーカー、靴下、靴の中敷き、マスク、マスク紐、手術用ガウン、離型布、吸油布、防水布、アウトドアウエア、サポーター、包帯、寝袋用生地、テント用生地、スポーツウエア(例えば、スキーウエア、ゴルフウエア、水着)、人工芝、ベルトコンベア基布、光ファイバー、吸音材、断熱材などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
[成形体の製造方法]
本発明の成形体は、上述した本発明の樹脂組成物を用いて製造され、その際の成形温度は、通常300℃以下、好ましくは230℃以下である。本発明の成形体は、例えば以下に示す方法により製造することができる。
【0122】
(1)押出成形フィルム、押出成形シート
押出成形フィルムおよび押出成形シートは、一般的なTダイ押出成形機で成形することにより得られる。例えば一軸押出機にてシリンダ温度170〜230℃およびキャストロール温度0〜70℃で成形を行って押出フィルムやシートを形成する。
【0123】
フィルムまたはシートの厚さは、その使用用途にもよるが、通常5〜1000μm、好ましくは30〜200μmであると、フィルムまたはシートの生産性に優れ、フィルムまたはシートの成形時にピンホールが生じることがなく、十分な強度も得られることから好ましい。
【0124】
また、本発明の効果を阻害しない限り、他の樹脂と多層フィルムとする、または、紙と積層してラミ紙としてもよく、共押出成形法、押出ラミネート法、熱ラミネート法、ドライラミネート法等を用いることができる。また、フィルム表面にはエンボス加工を施してもよく、フィルム成形時または成形後に延伸してもよい。さらに、成形して得られたフィルムは樹脂の融点未満の温度でのアニーリング処理を行ってもよい。
【0125】
(2)延伸フィルム
本発明のフィルムは延伸してもよい。延伸フィルムは、原反シートを製造し、それを延伸すればよい。原反シートの製造方法に特に制限はなく、たとえばプレス成形、押出成形、インフレーション成形などの方法、または溶液流延法などの公知の方法で成形することができる。生産効率性の向上という観点では、押出成形法、インフレーション成形法、溶液流延法等を用いてもよい。さらに延伸成形体の生産の効率と安定化という観点では、溶融押し出し成形法によって形成された原反シートを延伸配向させることによって、延伸成形体を得ることが好ましい。
【0126】
溶融押出し成形を行う場合、具体的には、一軸押出機にて、所定のシリンダ温度および所定のキャストロール温度で成形を行って原反シートを形成する。溶融押出し成形により原反シートを得る場合に、押出機のロール間で加圧圧縮すると、得られるシートの透明性をより高くすることができる。予め溶融押出し成形により製造しておいた原反シートを、延伸成形装置に供給してもよいし、溶融押出し成形と延伸成形とを連続的に行ってもよい。
【0127】
形成した原反シートを、延伸機にて所定の延伸速度にて該原反シートの延伸成形を行う。延伸は、一軸延伸、二軸延伸、逐次延伸などのいずれで行ってもよい。
延伸温度は、通常、樹脂の融点(Tm)またはガラス転移点(Tg)〜200℃、好ましくはTmまたはTg〜180℃、より好ましくはTmまたはTg〜150℃の温度範囲で行われる。また、延伸性を改善するために、延伸前に原反シートを予熱しておくことが好ましい。延伸前の予熱は、好ましくはTmまたはTg〜180℃、より好ましくはTmまたはTg〜150℃の温度範囲で、通常5分間程度行えば十分である。
【0128】
延伸速度は、通常0.1mm/sec〜500mm/sec、より好ましくは0.5mm/sec〜100mm/secとする。延伸倍率は、通常1.5〜6倍、好ましくは2〜5倍とする。結晶化度・結晶サイズを増加させないためには、延伸倍率を小さくし、延伸速度を大きくすると好ましい場合がある。延伸の方向は、原反シートの押し出し方向に行うことが好ましい。このような条件のもとで延伸すると、延伸ムラや延伸切れを発生させることなく、効率的に延伸成形体を製造することができる。
【0129】
フィルムを延伸することにより、機械的強度を有するフィルムを得ることが可能となる。また、延伸フィルムの厚みは、原反シートの厚み、延伸倍率等を変えることによって調節することができる。延伸フィルムの厚さに特に上限は無く、従来の本技術分野において「シート」と呼ばれていたものも含む。また、延伸フィルムを光学フィルムとして用いる場合には、光学用途に使用可能な程度の厚さとする。延伸フィルムの厚みは、通常は5〜200μmであり、好ましくは10〜200μmである。このような範囲であれば、フィルムの生産性がより向上し、充分な機械強度が得られるとともに、フィルム成形時にピンホールなどを生じることもない。
【0130】
(3)インフレーションフィルム
本発明のフィルムはインフレーション成形法で作製してもよい。具体的には、一軸押出機にて、所定のシリンダ温度で、インフレーション用ダイから重力方向とは逆方向の上向方向に押出してインフレーションを行い、インフレーションフィルムを得ることができる。
【0131】
インフレーションフィルムの引取速度は通常2〜40m/分、好ましくは4〜30m/分である。フィルムの厚さは特に限定されないが、通常は10〜300μm、好ましくは20〜250μm、より好ましくは30〜60μmである。
【0132】
(4)射出成形体
射出成形体は、成形温度が通常180〜230℃、成形サイクルが通常20〜120秒の条件で射出成形することにより得ることができる。
【0133】
(5)繊維
本発明における樹脂組成物からなる繊維は、例えば、樹脂組成物を溶融したものを紡糸口金に通して押出すことにより、モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーン、カットファイバー、不織布として製造することにより得ることができる。
【0134】
モノフィラメント、マルチフィラメント、フラットヤーンを製造する際の溶融紡糸加工における溶融温度は、共重合体(A)の融点に応じて、適宜選択することができるが、180〜280℃の範囲であることが好ましく、より好ましい範囲は、180〜230℃である。溶融温度が上記の範囲内にあると、共重合体(A)の過度な熱分解を抑制でき、口金から吐出された繊維状ストランドの伸長粘度が十分に低下するため、機械的強度に優れ、紡糸加工性が良好な繊維を得ることができる。
【0135】
このようにして得られた繊維は、さらに延伸してもよい。この延伸の程度は、例えば共重合体(A)に少なくとも一軸方向の分子配向が有効に付与される程度に行えば、弾性率や強度を向上させることができる。延伸倍率は、通常1.05〜10.0倍、好ましくは1.1〜7.0倍、より好ましくは1.2〜6.0倍である。
【0136】
上記延伸操作を行う場合の延伸温度は、共重合体(A)のガラス転移温度および融点、あるいは延伸後に得られる繊維の強度および伸度に応じて適宜選択することができるが、好ましくは35〜200℃、より好ましくは40〜180℃である。延伸温度が上記の範囲にあると糸切れが抑制され、安定して繊維を得ることができる。
【0137】
上記延伸操作を行う場合は、1段延伸法または2段以上の多段延伸法のいずれの方法であってもよい。
上記方法で得られた繊維を使用して、湿式抄造法、シンタリング法、ニードルパンチ法、カード法、クロスレイヤー法、ランダムウエーバー法、エアーフォーミング法等で不織布を製造することができる。
また、単層繊維からなる不織布を製造する場合には、スパンボンド法、メルトブローン法、カード法等の方法に従って行うことができる。
【0138】
本発明の樹脂組成物からなる繊維は、繊維の断面形状に関して特に制限はなく、真円断面であってもよく、非円形、いわゆる異形断面であってもよい。異形断面としては、多角型形状、楕円型形状、扁平型形状、繊維表面に多数の枝状部を有する多葉型形状(具体的には3葉から32葉の多葉型形状)、星型形状、C字型形状、H字型形状、S字型形状、T字型形状、Y字型形状、W字型形状、及び井型形状が挙げられる。
【0139】
さらに、本発明の樹脂組成物からなる繊維は、繊維断面に長さ方向に連続する空洞部分を有さない中実繊維であってよく、あるいは長さ方向に連続する1箇所以上の空洞部分を有する中空繊維であってもよい。
【実施例】
【0140】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例における共重合体、樹脂組成物および成形体の各種物性は、以下の方法により測定または評価した。
【0141】
〔組成〕
共重合体中の4−メチル−1−ペンテン及びプロピレン(炭素数3のα−オレフィン)の含有率(モル%)は、13C−NMRにより測定した。測定条件は、下記のとおりである。
測定装置:核磁気共鳴装置(ECP500型、日本電子(株)製)
観測核:13C(125MHz)
シーケンス:シングルパルスプロトンデカップリング
パルス幅:4.7μ秒(45°パルス)
繰り返し時間:5.5秒
積算回数:1万回以上
溶媒:オルトジクロロベンゼン/重水素化ベンゼン(容量比:80/20)混合溶媒
試料濃度:55mg/0.6mL
測定温度:120℃
ケミカルシフトの基準値:27.50ppm
【0142】
〔極限粘度[η]〕
共重合体の極限粘度[η]は、測定装置としてウベローデ粘度計を用い、デカリン溶媒中、135℃で測定した。具体的には、約20mgの粉末状の共重合体をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン5mlを加えて希釈した後、上記と同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式(1)参照)。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)・・・式(1)
【0143】
〔重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)〕
共重合体の重量平均分子量(Mw)、及び重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。測定条件は、下記のとおりである。
測定装置:GPC(ALC/GPC 150−C plus型、示差屈折計検出器一体型、Waters製)
カラム:GMH6−HT(東ソー(株)製)2本、及びGMH6−HTL(東ソー(株)製)2本を直列に接続
溶離液:o−ジクロロベンゼン
カラム温度:140℃
流量:1.0mL/min
【0144】
〔メルトフローレート(MFR)〕
共重合体のメルトフローレート(MFR:Melt Flow Rate)は、ASTM D1238に準拠し、230℃で2.16kgの荷重にて測定した。また、共重合体A−4は260℃で5kgの荷重にて測定した。単位は、g/10minである。
【0145】
〔密度〕
共重合体の密度は、JIS K7112(密度勾配管法)に準拠して測定した。
【0146】
〔融点(Tm)〕
共重合体の融点(Tm)は、測定装置として示差走査熱量計(DSC220C型、セイコーインスツル(株)製)を用いて測定した。
約5mgの共重合体を測定用アルミニウムパン中に密封し、室温から10℃/minで200℃まで加熱した。共重合体を完全融解させるために、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/minで−50℃まで冷却した。−50℃で5分間置いた後、10℃/minで200℃まで2度目の加熱を行なった。この2度目の加熱でのピーク温度(℃)を共重合体の融点(Tm)とした。
【0147】
〔機械特性(引張弾性率及び引張破断伸び)〕
厚みが500μmのシートを、幅25mm×長さ100mmのダンベル状に切断したものを試験片として用いた。JIS K7127(1999)に準拠し、引張試験機(万能引張試験機3380、インストロン製)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度200mm/min、及び温度23℃の条件で、試験片の引張弾性率(YM)(単位:MPa)、及び引張破断伸び(EL)(単位:%)を測定した。
【0148】
〔成形性(成形温度230℃での樹脂組成物の混練成形性)〕
二軸押出機を用いて設定温度230℃で混練した時の樹脂組成物のストランドおよびペレットを目視にて観察し、下記の評価基準に従って評価した。
A:消臭剤の分解に伴う臭気、分解ガスの発生による発泡が起こらずストランドおよびペレットが採取できた。
B:消臭剤の分解に伴う臭気があり、押出機から出てきたときに分解ガス発生による発泡が起こった。
【0149】
〔消臭性能の評価方法〕
厚みが1mmのシートを1g分切り出して5LのPVA系ポリマー製バッグ(ジーエルサイエンス社製、スマートバッグPA)に入れた後、下記に示す初期ガス濃度になるように試験ガスを3L封入し、24時間後にバッグ内の残存ガス濃度を、検知管を用いて測定した。下記の式(2)に従って消臭率を算出し、消臭性能評価の指標とした。
消臭率(%)={初期ガス濃度(ppm)−24時間後のガス濃度(ppm)/初期ガス濃度(ppm)}×100 ・・・式(2)
<初期ガス濃度>
アンモニア:100ppm、メチルメルカプタン:8ppm、硫化水素:4ppm、ホルムアルデヒド:20ppm
【0150】
[合成例1]共重合体A−1の合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
【0151】
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.19MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
【0152】
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
【0153】
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、44.0gの粉末状の共重合体A−1を得た。得られた共重合体A−1の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0154】
共重合体A−1中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は84.1mol%であり、プロピレンの含有率は15.9mol%であった。また、共重合体A−1の密度は838kg/m3であった。共重合体A−1の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は340,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体A−1の融点(Tm)は132℃であった。
【0155】
[合成例2]共重合体A−2の合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、300mlのn−ヘキサン(乾燥窒素雰囲気下、活性アルミナ上で乾燥したもの)、及び450mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
【0156】
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.40MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.01mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
【0157】
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
【0158】
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、100℃で12時間乾燥させて、36.9gの粉末状の共重合体A−2を得た。得られた共重合体A−2の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0159】
共重合体A−2中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は72.5mol%であり、プロピレンの含有率は27.5mol%であった。また、共重合体A−2の密度は839kg/m3であった。共重合体A−2の極限粘度[η]は1.5dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は337,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は11g/10minであった。共重合体A−2の融点(Tm)は観測されなかった。
【0160】
[合成例3]共重合体A−3の合成
充分に窒素置換した容量1.5Lの攪拌翼付のSUS製オートクレーブに、750mlの4−メチル−1−ペンテンを23℃で装入した。このオートクレーブに、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)の1.0mmol/mlトルエン溶液を0.75ml装入し、攪拌機を回した。
【0161】
次に、オートクレーブを内温が60℃になるまで加熱し、全圧(ゲージ圧)が0.17MPaとなるようにプロピレンで加圧した。
続いて、予め調製しておいた、Al換算で1mmolのメチルアルミノキサン、及び0.005mmolのジフェニルメチレン(1−エチル−3−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(2,7−ジ−t−ブチル−フルオレニル)ジルコニウムジクロリドを含むトルエン溶液0.34mlを、オートクレーブに窒素で圧入し、重合反応を開始させた。重合反応中は、オートクレーブの内温が60℃になるように温度調整した。
【0162】
重合開始から60分後、オートクレーブにメタノール5mlを窒素で圧入し、重合反応を停止させた後、オートクレーブ内を大気圧まで脱圧した。脱圧後、反応溶液に、該反応溶液を攪拌しながらアセトンを添加し、溶媒を含む重合反応生成物を得た。
【0163】
次いで、得られた溶媒を含む重合反応生成物を減圧下、130℃で12時間乾燥させて、35.2gの粉末状の共重合体A−3を得た。得られた共重合体A−3の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0164】
共重合体A−3中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は93.0mol%であり、プロピレンの含有率は7.0mol%であった。また、共重合体A−3の密度は832kg/m3であった。共重合体A−3の極限粘度[η]は1.6dl/gであり、重量平均分子量(Mw)は370,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は2.1であり、メルトフローレート(MFR)は4g/10minであった。共重合体A−3の融点(Tm)は178℃であった。
【0165】
[合成例4]共重合体A−4の合成
国際公開第2006/054613号パンフレットの比較例7において、4−メチル−1−ペンテンと1−デセンとの割合を変更することによって、共重合体A−4を得た。得られた共重合体A−4の各種物性の測定結果を表1に示す。
【0166】
共重合体A−4中の4−メチル−1−ペンテンの含有率は98.0mol%であり、1−デセンの含有率は2.0mol%であった。また、共重合体A−4の密度は833kg/m3であった。共重合体A−4の極限粘度[η]は2.4dl/gであり、メルトフローレート(MFR)は4g/10minであった。共重合体A−4の融点(Tm)は238℃であった。
【0167】
【表1】
【0168】
表1において、4MP1単位は4−メチル−1−ペンテン単位を意味し、AO単位はα−オレフィン単位を意味する。
以下の実施例および比較例において用いた、合成例1〜4で得られた共重合体以外の成分を以下に示す。
・消臭剤(B)
(B−1)ラサ工業株式会社製シュークレンズ(登録商標)、銘柄名:KD−311
(B−2)東亞合成株式会社製ケスモン(登録商標)、銘柄名:NS−10
(B−3)ラサ工業株式会社製シュークレンズ(登録商標)、銘柄名:KD−211GF
・その他の樹脂(C)
(C−1)ポリプロピレン[株式会社プライムポリマー製プライムポリプロ(登録商標)、銘柄名:F227(融点:150℃、MFR(230℃、2.16kgf):7.0g/10min)]
【0169】
[実施例1]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−1)100質量部に対して、150℃、14時間の条件で減圧乾燥させた消臭剤(B−1)を1.0重量部添加し、2軸押出機(プラスチック工業株式会社製、φ=30mm、L/D=27、シリンダ温度:230℃)で溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。
【0170】
得られた樹脂組成物を120℃、12時間減圧乾燥させた後、200℃に設定した神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaの圧力でシート成形した。500μmおよび1mm厚のシート(スペーサー形状;240×240×2mm厚の板に80×80×1mm厚4個取り)の場合、余熱を5〜7分程度とし、10MPaで1〜2分間加圧した後、20℃に設定した別の神藤金属工業社製油圧式熱プレス機を用い、10MPaで圧縮し、5分程度冷却して測定用試料を作成した。熱板として5mm厚の真鍮板を用いた。上記方法により作製したサンプルの各種物性を測定または評価した。結果を表2に示す。
【0171】
[実施例2]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−1)100質量部に対する消臭剤(B−1)の添加量を3.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表2に示す。
【0172】
[実施例3]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−1)60質量部とその他の樹脂(C)としてポリプロピレン(C−1)(プライムポリプロ(登録商標)F227、(株)プライムポリマー製)40質量部に対して、消臭剤(B−1)の添加量を3.0質量部にしたこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表2に示す。
【0173】
[比較例1]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−1)100質量部のみを用いたこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表2に示す。
【0174】
[比較例2]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−4)100質量部に対する消臭剤(B−1)の添加量を3.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表2に示す。
【0175】
[比較例3]
ポリプロピレン(C−1)(プライムポリプロ(登録商標)F227、(株)プライムポリマー製)100質量部に対して、消臭剤(B−1)の添加量を3.0質量部にしたこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表2に示す。
【0176】
【表2】
【0177】
[実施例4]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−1)100質量部に対する消臭剤(B−2)の添加量を1.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表3に示す。
【0178】
[実施例5]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−2)100質量部に対する消臭剤(B−2)の添加量を1.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表3に示す。
【0179】
[実施例6]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−3)60重量部とその他の樹脂(C)としてポリプロピレン(C−1)(プライムポリプロ(登録商標)F227、(株)プライムポリマー製)40質量部に対して、消臭剤(B−3)の添加量を1.0質量部にしたこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表3に示す。
【0180】
[比較例4]
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(A−4)100質量部に対する消臭剤(B−2)の添加量を1.0質量部に変更したこと以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物およびシートを得て各種物性の測定または評価を行った。結果を表3に示す。
【0181】
【表3】