特許第6564216号(P6564216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564216
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】ペットフード用保温庫
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20190808BHJP
   A01K 29/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   B65D81/18 E
   A01K29/00
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-64410(P2015-64410)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-182978(P2016-182978A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2018年1月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(72)【発明者】
【氏名】今泉 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】日下 浩辰
【審査官】 吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−071427(JP,A)
【文献】 特開2004−308998(JP,A)
【文献】 特開2013−240526(JP,A)
【文献】 特開2002−223955(JP,A)
【文献】 実開昭49−131098(JP,U)
【文献】 実開平05−060429(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/18
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開口してペットフードを収容する保温室と、
前記保温室の底板に立設されて室内を複数室に仕切る仕切り板と、
前記保温室の少なくとも底板の裏面に取り付けられたヒーターと、
前記保温室の底板の裏面において、仕切り板の対応位置に取り付けられた温度センサとを備えることを特徴とするペットフード用保温庫。
【請求項2】
前記ヒーターが仕切り板の取り付け位置に沿って取り付けられている請求項1に記載のペットフード用保温庫。
【請求項3】
前記仕切り板は板状本体の下端から板厚方向に突出する鍔板を有し、前記鍔板が保温室の底板に接している請求項1または2に記載のペットフード用保温庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包装されたペットフードをペットが好む温度に保温する保温庫に関する。
【背景技術】
【0002】
ペットフードはレトルトパウチ、金属缶、ホイルコンテナ等の容器に封入されたものが市販されている。これらのペットフードは常温で与えることができるが、温めた方が食いつきが良くなることが知られている。
【0003】
ペットフードを温める方法としては、容器を開封して加熱用容器に移して電子レンジで温める方法が一般的である。
【0004】
また、人用レトルトパウチ食品の加熱装置として、レトルトパウチ食品を2枚の熱板で挟み付けて加熱する装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−79430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ペットが好むフード温度は約39℃であり、人の食物の適温よりも低温である。電子レンジによるマイクロ波加熱はペットフードの適温よりも高温になりがちであり、マイクロ波加熱によって適温に温めることは難しい。しかも、缶詰やホイルコンテナは金属であり、パウチ用包装材はアルミニウム箔を含むラミネート材であるから、これらの容器に封入されたペットフードを電子レンジで加熱するには容器を開封してレンジ用容器に移し替える必要があり、大変面倒である。
【0007】
特許文献1に記載された加熱装置はレトルトパウチ食品を開封することなく加熱できるが、熱板を動かすという複雑な構造である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述した技術背景に鑑み、容器を開封することなくペットフードを簡単に温めることができるペットフード用保温庫を提供することを目的とする。
【0009】
即ち、本発明のペットフード用保温庫は下記[1]〜[4]に記載の構成を有する。
【0010】
[1]上面が開口部してペットフードを収容する保温室と、
前記保温室の底板に立設されて室内を複数室に仕切る仕切り板と、
前記保温室の少なくとも底板の裏面に取り付けられたヒーターとを備えることを特徴とするペットフード用保温庫。
【0011】
[2]前記保温室の底板の裏面において、仕切り板の対応位置に温度センサが取り付けられている前項1に記載のペットフード用保温庫。
【0012】
[3]前記ヒーターが仕切り板の取り付け位置に沿って取り付けられている前項1または2に記載のペットフード用保温庫。
【0013】
[4]前記仕切り板は板状本体の下端から板厚方向に突出する鍔板を有し、前記鍔板が保温室の底板に接している前項1〜3のうちのいずれか1項に記載のペットフード用保温庫。
【発明の効果】
【0014】
上記[1]に記載のペットフード用保温庫によれば、保温室の底板の裏面に取り付けたヒーターの熱が仕切り板に伝わり仕切り板から保温室に放熱されるので、熱伝熱効率が良くペットフードを効率良く温めることができる。ペットフードは容器に封入したままで保温室に収容するので保温作業が簡単である。
【0015】
上記[2]に記載のペットフード用保温庫によれば、放熱板として機能する仕切り板の近くで温度を検知するので保温室内の温度を正確に管理できる。
【0016】
上記[3]に記載のペットフード保温庫によれば、ヒーターから仕切り板までの伝熱距離を短くして伝熱効率を高めることができる。
【0017】
上記[4]に記載のペットフード保温庫によれば、ヒーターによって温められた底板と鍔板とが広い面積で接触するので伝熱効率が良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態にかかるペットフード用保温庫の全体斜視図である。
図2図1のペットフード保温庫の分解斜視図である。
図3A図1の3A−3A線断面図である。
図3B図1の3B−3B線断面図である。
図4A】大仕切り板の斜視図である。
図4B】小仕切り板の斜視図である。
図5】内容器の底面図である。
図6図1のペットフード保温庫の組み立て状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1〜7に本発明の一実施形態にかかるペットフード用保温庫を示す。
【0020】
ペットフード用保温庫1は、包装されたペットフードを収容する保温室10を形成する内容器20、保温室10を複数室に仕切る仕切り板50、54、保温室10を加熱するヒーター90、側面カバー60、底部カバー70およびこれらに付設された部材によって構成されている。また、前記内容器20、仕切り板50、54、側面カバー60、底部カバー70は樹脂成形品である。
[ペットフード用保温庫を構成する部材]
図1図3Bに示すように、保温室10は、長方形の底板21とこの底板21から立ち上がる短辺用壁22および長辺側壁23とを有し上面が開口する有底の内容器20と、この内容器20の上面開口部を閉塞する蓋板40とにより囲まれた空間である。なお、図1は蓋板40を開いた状態を示しているが、図1の断面図である図3Aおよび図3Bは蓋板40を閉じた状態を示している。
【0021】
前記内容器20の開口縁には、開口縁から続く平坦部31とこの平坦部31の外縁から垂下する垂下部32で構成される断面逆L字形のフランジ30が形成されている。前記垂下部32の下端部は板厚方向の外側が減肉されて突縁33を形成している。前記フランジ30の一方の長辺および一方の短辺のそれぞれに、レール35aとこのレール35a上を移動するスライダー35bらなるインジゲータ35が設けられている。また、前記内容器20の底板21の裏面の四隅に円筒形の雌ねじとなされた支持脚24が突設されている。
【0022】
前記蓋板40はフランジ30の一方の短辺に回動自在に取り付けられ、対向する短辺に蓋板40のフック41に係合する係止部34が形成されている。
【0023】
前記フランジ30の垂下部32は、後述する側面カバー60および底部カバー70とともに保温庫1のハウジングを構成する。
【0024】
図4Aおよび図4Bに示すように、前記仕切り板50、53は本体板51、54の下端から板厚方向の両側に突出する鍔板52、55を有する逆T字形である。一方、図3Aおよび図3Bに示すように、前記内容器20の側壁22、23には仕切り板50、53の本体板51、54の両端を差し込むガイドレール25が設けられている。図示例の保温庫1は、保温室10の長辺に平行に取り付ける2個の大仕切り板50と短辺に平行に取り付ける1個の小仕切り板53とを備え、短辺側壁22に2組のガイドレール25が設けられ、長辺側壁23に1組のガイドレール25が設けられている。
【0025】
前記仕切り板50、53は着脱自在であり、1個の大仕切り板50を取り付けると保温室10は大小の長方形の2室に仕切られ、2個の大仕切り板50を取り付けると細長い長方形の3室に仕切られる。また、小仕切り板53を取り付けると略正方形の2室に仕切られる。これらの仕切り態様はペットフードの容器の形状に応じて適宜変更する。図3Aは2個の大仕切り板50を取り付けて細長い3室に仕切った状態を例示している。このような細長い収容空間は扁平なレトルトパウチのペットフードPの保温に適しており、パウチ表面を仕切り板50に沿わせる方向に収容する。また、缶詰やホイルコンテナのように底面積の大きい容器のペットフードは小仕切り板54を取り付け、保温室10を略正方形に仕切ることで収容空間を確保することができる。
【0026】
図2図3Bに示すように、側面カバー60は、下方に向かって断面積が拡大された周体であり、上端部に前記内容器20のフランジ30の突縁33が係合する溝61が形成され、下端部に板厚方向の外側が減肉されて突縁62が形成されている。
【0027】
図2図3Bに示すように、底部カバー70はトレイ型であり、底板71からカーブしながら立ち上がる側壁72の上端部に、前記側面カバー60の突縁62に係合する溝73が形成されている。また、前記底板71の中央部に四角形の内壁体80が立設されている。前記内壁体80の2組の対向する第1側壁81,第2側壁83のうち、底板71の短辺に平行な第1側壁81は内容器20の底板21および長辺側壁23に沿う大きなU字形の切欠部82を有している。前記内壁体80の底板84は底部カバー70の底板71の一部がせり上がることにより形成されている。また、前記内壁体80外の第1側壁81の傍らに、内容器20の支持脚24を受ける脚受74が立設されている。この脚受74の中心にはポルト76を通すための貫通孔75が穿たれている。前記脚受74は2つの第1側壁81の傍らに各2個、合計4個が設けられている。
【0028】
図2および図5に示すように、ヒーター90は柔軟性のあるラインヒーターである。前記ヒーター90はつづら折れにしてシート94に貼り付け、前記シート94を内容器20の底板21の裏面から両側の長辺側壁23に貼付することにより、底板21および長辺側壁23に取り付けられている。前記ヒーター90が底板21および長辺側壁23を加熱して保温室10に放熱し、さらに底板21から仕切り板50、53に伝熱して本体板51、54が放熱板として機能して保温室10を温める。しかも、前記仕切り板50、53は鍔板52、55によって広い面積で底板21と接触しているので伝熱効率が良く、高い温度保持効果が得られる。前記ヒーター90は仕切り板50、53に沿って設置することが好ましく、かかる配置によりヒーター90から仕切り板50、53までの伝熱距離を可及的に短くして伝熱効率を高めることができる。図示例の保温庫1においては、大仕切り板50の対応位置に沿ってヒーター90が取り付けられている。なお、前記ヒーター90は小仕切り板53の対応位置を横断する態様で取り付けられているが、ヒーター90はつづら折れにされたヒーター90の間隔は狭く小仕切り板53までの伝熱距離も短いので、相応に伝熱効率は良好である。
【0029】
図5に示すように、温度センサとして、サーミスタ91およびサーモスタット92が、ヒーター90と同様に、前記シート94に貼り付けた上で内容器20の底板21の裏面に取り付けられている。前記サーミスタ91およびサーモスタット92は、ヒーター90によって加熱された底板21の温度を検知し、検知された温度に基づいて保温室10内の温度が所定の温度範囲内となるようにヒーター90が制御される。前記サーミスタ91は高精度の温度検知が可能であり正確な温度管理が可能である。一方、サーモスタット92は温度上昇時にヒーター90への通電を遮断する。このように特性の異なる2種類の温度センサを併用することにより、正確な温度管理と高い安全性を実現できる。
【0030】
前記サーミスタ91およびサーモスタット92は、仕切り板50、53の対応位置、即ち仕切り板50、53の直下またはその近傍に取り付けることが好ましい。仕切り板50、53は伝熱路となり放熱板として機能するので、仕切り板50、53に近い部分で温度を検知することでより正確な温度管理が可能である。図示例の保温庫1においては、サーミスタ91およびサーモスタット92は小仕切り板53の直下であり大仕切り板50の近傍に取り付けられている。
【0031】
前記ヒーター90、サーミスタ91およびサーモスタット92は、図3Bに参照されるように制御基板93に接続されている。
【0032】
なお、前記ヒーター90および温度センサを内容器20への取り付け方法はシート94を介して貼り付ける方法に限定されず、内容器20に直接取り付けても良い。シート94を用いると、フラットなシート94上でヒーター90および温度センサの貼付作業を行え、かつ内容器20の支持脚24が作業の邪魔をすることがないので作業性が良く、立体である内容器20への取り付けはシート94の貼付という簡単な作業で済む。
【0033】
ペットフードの適温は38〜42℃であり、上述したペットフード用保温庫1はヒーター、サーミスタ91およびサーモスタット92により保温室10に収容したペットフードを前記範囲の温度に温めるように制御されている。
[ペットフード用保温庫の組み立て]
上述した各構成部材は以下のようにして組み立てられる。
【0034】
先ず、底部カバー70の側壁72の溝73に側面カバー60の突縁62を差し込む。次に、図6に示すように、内壁体80の切欠部82に内容器20を嵌め込み、内容器20の支持脚24を底部カバー70の脚受74に差し込むとともに、側面カバー60上端の溝61に内容器のフランジ30の突縁33を差し込み、内容器20を底部カバー70の脚受74および内壁体80の第1側壁81に支持させる。また、前記ヒーター90、サーミスタ91およびサーモスタット92と制御基板93とを繋ぐコードは一方の切欠部82に設けられた逃がし部82a(図2参照)から内壁体80の外に引き出しておく。さらに、図3Bに示すように、底部カバー70の外面側から脚受74の貫通孔75もボルト76を挿入して内容器20の支持脚(雌ねじ)74に螺合させる。これにより、内容器20と底部カバー70とで側面カバー60を挟み付ける態様でこれらが一体に結合される。
【0035】
上記の組み立て状態において、内壁体80の切欠部82に内容器20が嵌め込まれ、第1側壁81および第2側壁83が内容器20と側面カバー60との間に差し込まれている。前記切欠部82は第1側壁81の大部分の面積を占めているが、切欠部82の左右両側と下方に欠き残った部分がスペーサとなって内壁体80と内容器20の底板21および長辺側壁23との間に断面U字形の空間100を形成する。前記内壁体80が内容器20の底板21および長辺側壁23に取り付けられたヒーター90を覆い、前記空間100がヒーター室となる。前記ヒーター90は内壁体80で覆われて熱の放散が防がれるので、ヒーター90が発する熱は効率良く保温室10の加熱に用いられる。また、前記内容器20のフランジ30の垂下部32、側面カバー60、底部カバー70が保温庫1のハウジングを形成し、ハウジングと内容器20の短辺側壁22および内壁体80との間に空間101が形成され、この空間101はヒーター室100とは内壁体80で仕切られた断熱室として機能する。前記断熱室101は保温室10を庫外の空気から遮断して室内温度を保持するとともに、制御基板93の取り付け場所として用いられる。前記断熱室101はヒーター室100と内壁体80で仕切られているので室内温度の上昇は殆ど無く、制御基板93はヒーター90による熱影響を受けない。
【0036】
以上の次第で、上述したペットフード用保温庫1は、放熱板として機能する仕切り板50、53で保温室10内を複数室に仕切ることで保温室10に収容したペットフードPを効率良く適温に温めることができる。しかも、ペットフードPは開封せずに包装容器のままで保温室10に収容するので温め作業が簡単である。また、保温室10内を複数室に仕切ることで複数個のペットフードPを収容でき、随時適温のフードをペットに与えることができる。これらの効果は、保温室の底板にヒーターを取り付けて仕切り板を装着する、という簡単の保温構造によって実現できる。
【0037】
なお、収容した複数個のペットフードPはインジゲータ35を利用して目印を付けておくことで先入れ先出しを実行できるので、特定のペットフードが使われずに長時間保温状態におかれるという不都合を防ぐことができる。
【0038】
本発明のペットフード用保温庫は上述した形態に限定されない。
【0039】
仕切り板の数は限定されず、少なくとも1個有していれば本発明の技術的範囲に含まれる。また、仕切り板が着脱自在か固定であるかも任意に設定することができる。また、仕切り板は本体板の一方から鍔板が突出する断面L字形であってもよい。
【0040】
ヒーターは、仕切り板を放熱板として機能させるために、少なくとも内容器の底板に取り付けられていることが条件であり、側壁のヒーターは任意である。また、ヒーターを取り付ける側壁も任意に設定するができる。
【0041】
保温室を形成する内容器および仕切り板は伝熱路となるので、樹脂の他、熱伝導性の高い金属で形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明はペットフードを開封することなく温める保温庫として利用できる。
【符号の説明】
【0043】
1…ペットフード用保温庫
10…保温室
20…内容器
21…底板
25…ガイドレール
30…フランジ
40…蓋板
50…大仕切り板
53…小仕切り板
60…側面カバー
70…底部カバー
80…内壁体
81…第1側壁
82…切欠部
83…第2側壁
90…ヒーター
91…サーミスタ
92…サーモスタット
93…制御基板
100…ヒーター室
101…断熱室
P…ペットフード
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6