(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
樹脂が充填されて成形されるキャビティ凹部の底面の少なくとも一部を構成し、前記キャビティ凹部内の前記樹脂を押圧する樹脂押圧面を有するキャビティ駒と、前記キャビティ凹部の側面の少なくとも一部を構成し、前記キャビティ駒が挿入される貫通孔を有するクランパと、が相対的に摺動可能に構成され、前記貫通孔内において前記キャビティ駒と前記クランパとの隙間に設けられるシール材を備える樹脂成形金型であって、
前記キャビティ駒の樹脂押圧面における外周位置により前記隙間が相違し、
前記貫通孔の内周面と対向する前記キャビティ駒の外周面に全周に渡って形成され、前記シール材となる前記樹脂が充填される周溝と、
前記周溝と連通するよう前記キャビティ駒の樹脂押圧面から外周面にかけて摺動方向と平行に延在する溝状に形成され、前記シール材となる前記樹脂が流れる複数の連通溝と、
を備えることを特徴とする樹脂成形金型。
樹脂が充填されて成形されるキャビティ凹部の底面の少なくとも一部を構成し、前記キャビティ凹部内の前記樹脂を押圧する樹脂押圧面を有するキャビティ駒と、前記キャビティ凹部の側面の少なくとも一部を構成し、前記キャビティ駒が挿入される貫通孔を有するクランパと、が相対的に摺動可能に構成され、前記貫通孔内において前記キャビティ駒と前記クランパとの隙間に設けられるシール材を備える樹脂成形金型であって、
前記キャビティ駒の樹脂押圧面における外周位置により前記隙間が相違し、
前記貫通孔の内周面と対向する前記キャビティ駒の外周面に全周に渡って形成され、前記貫通孔の内周面に向かって押し付けられるよう弾性体で構成される前記シール材が設けられる周溝を備え、
前記シール材が、同心の内リングと外リングとを含んで構成され、
前記内リングの熱膨張係数が、前記外リングの熱膨張係数よりも大きいこと
を特徴とする樹脂成形金型。
請求項5記載の樹脂成形金型において、 前記周溝の一部を構成し、前記シール材を押圧するシール材押圧面を有し、前記キャビティ駒の外周面に全周に渡って設けられる貫通筒状のブロック材と、
摺動方向において前記ブロック材を往復動させるブロック材可動部と、
を備えることを特徴とする樹脂成形金型。
樹脂が充填されて成形されるキャビティ凹部の底面の少なくとも一部を構成し、前記キャビティ凹部内の前記樹脂を押圧する樹脂押圧面を有するキャビティ駒と、前記キャビティ凹部の側面の少なくとも一部を構成し、前記キャビティ駒が挿入される貫通孔を有するクランパと、が相対的に摺動可能に構成され、前記貫通孔内において前記キャビティ駒と前記クランパとの隙間に設けられるシール材と、前記貫通孔の内周面と対向する前記キャビティ駒の外周面に全周に渡って形成され、前記シール材となる前記樹脂が充填される周溝と、前記周溝と連通するよう前記キャビティ駒の樹脂押圧面から外周面にかけて摺動方向と平行に延在する溝状に形成され、前記シール材となる前記樹脂が流れる複数の連通溝と、を備え、前記キャビティ駒の樹脂押圧面における外周位置により前記隙間が相違している樹脂成形金型を用いた樹脂成形方法であって、
(a)前記キャビティ凹部内に前記樹脂を供給する工程と、
(b)前記キャビティ凹部内の前記樹脂を前記キャビティ駒の樹脂押圧面で押圧する工程と、
を含み、
前記(b)工程では、前記連通溝を介して前記周溝を充填するよう前記樹脂を流し込むことを特徴とする樹脂成形方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0018】
(実施形態1)
本発明の実施形態1に係る圧縮成形用の樹脂成形金型10(樹脂成形機構)を備えた樹脂成形装置について
図1〜
図9を参照して説明する。
図1〜
図7は動作過程における樹脂成形金型10の模式的断面図である。
図8は樹脂成形金型10が備えるキャビティ駒24の模式的斜視図である。
図9はキャビティ凹部18の模式的平面図である。樹脂成形金型10は、平面視矩形状のキャビティ凹部18を備えるが、
図1〜
図7に示す断面図ではキャビティ凹部18の中心で対称となる樹脂成形金型10の左側を示している。なお、その他の本願における樹脂成形金型10の模式的断面図でも同様である。
【0019】
まず、樹脂成形金型10へ成形対象(処理対象)として供給されるワークWは、複数の実装部品P(例えば、半導体チップなどの能動部品や受動部品であってこれらが混在してもよい)が主面(表面)に実装された基板S(例えば、配線を有する有機基板やセラミック基板)である(
図1参照)。ワークW(被成形品)に対して成形処理を行うことで、複数の実装部品Pを樹脂封止する樹脂成形部が基板Sの主面上に成形されたワークW(成形品)となる(
図5参照)。この樹脂成形部を構成する樹脂Rは、例えば、顆粒状、液状、粉状、シート状などの熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ系樹脂)が用いられ、樹脂成形金型10に供給される。なお、ワークWとしては、配線構造が表面に配置されたキャリア(基板)であってもよい。
【0020】
次に、樹脂成形金型10の構造について説明する。樹脂成形金型10は、対向して配置され、型開閉可能な上型12および下型14(一対の金型)を備える。樹脂成形金型10は、型開閉のために公知のプレス部(図示せず)を備える。プレス部は、対向して配置される一対のプラテンと、一方または他方の少なくともいずれかのプラテンを可動させる可動部(モータおよびこの駆動をプラテンへ伝達するトグルリンクやボールネジによる可動機構)とを備える。一対のプラテンの間でそれぞれに上型12および下型14が組み付けられ、上型12および下型14が離隔(型開き)したり、近接(型閉じ)したりする。
【0021】
樹脂成形金型10は、ワークWがセットされるセット部16を備える。セット部16は、上型12のクランプ面12a(パーティング面、金型面ともいう)から突き出るチャック爪20(
図1参照、その他の図面では図示せず)と、型閉じの際にチャック爪20を収納する下型14のクランプ面14aから窪む逃げ部(図示せず)とを備え、チャック爪20によってワークWの外周部を把持して、ワークWをクランプ面12aで保持する。また、セット部16は、図示しないクランプ面12aで開口するエア回路およびこれと接続される吸引装置(例えば、真空ポンプ)を備え、エア回路によってワークWを吸引吸着して、ワークWをクランプ面12aで保持してもよい。
【0022】
また、樹脂成形金型10は、樹脂Rが充填されて成形されるキャビティ凹部18を備える。キャビティ凹部18は、クランプ面14aから窪むように奥まった位置にある底面(奥面)およびクランプ面14aから底面までの側面を備え、開口側(クランプ面14a側)で広く、底面側で狭くなるような四角錐台状であって、平面視(クランプ面視)矩形状に構成される。すなわち、四角錐台状のキャビティ凹部18は、この内部が開口側で広く、底面側で狭くなるテーパ状の側面(テーパ面)を有する。このようなテーパ面によって、樹脂成形後のワークW(基板Sの主面上の樹脂成形部)をキャビティ凹部18から取り出し易くなる。
【0023】
下型14は、ベース22(ベースブロック)と、キャビティ駒24(キャビティブロック)と、クランパ26(クランパブロック)とを備え、これらが組み付けられて構成される。ベース22の上面(上型12側の面)には、キャビティ駒24が組み付けられる。また、ベース22の上面には、キャビティ駒24が挿入される平面視矩形状の貫通孔28(駒挿入部)を有するクランパ26が組み付けられる。本実施形態では、下型14に四角錐台状のキャビティ凹部18が設けられるが、キャビティ凹部18の底面がキャビティ駒24で構成され、キャビティ凹部18の側面がクランパ26で構成される。具体的には、平面視矩形状の貫通孔28に挿入された平面視矩形状のキャビティ駒24の平坦状の端面24a(すなわち、樹脂Rを押圧する押圧面24a)がキャビティ凹部18の底面となる。このため、貫通孔28内においてキャビティ駒24とクランパ26との隙間G(
図9参照)が、押圧面24aにおける外周位置(角部と辺部)によっては相違している。また、クランパ26の開口側内周面28aがキャビティ凹部18の側面(テーパ面)となる。
【0024】
そして、下型14は、可動部材としてキャビティ駒24とクランパ26とが相対的に摺動可能に構成され、キャビティ駒24の外周面と貫通孔28の内周面が摺動面となる。本実施形態では、下型14は、ベース22の上面とクランパ26の下面(クランプ面14aとは反対側の面)との間に挟まれ、クランパ26を支持する弾性部材30(例えば、バネ)を備え、ベース22に対してクランパ26が弾性部材30の伸縮によって型開閉方向に往復動可能に組み付けられる。他方、ベース22に対してキャビティ駒24が固定して組み付けられる。また、弾性部材30の伸縮は、型開閉動作に伴って型開きする際に伸び、型閉じする際(より具体的にはワークWをクランプしてキャビティ凹部18内の樹脂Rをキャビティ駒24で押圧する際)に縮む。すなわち、型開閉動作に伴ってキャビティ駒24とクランパ26とが相対的に摺動可能に構成される。
【0025】
また、樹脂成形金型10は、摺動箇所となる貫通孔28内においてキャビティ駒24とクランパ26との隙間Gに設けられるシール材32(
図4参照)を備える。本実施形態では、シール材32として、樹脂成形の過程(樹脂成形金型10の動作過程)によって成形される樹脂リングを用いる。そこで、樹脂リングを成形するために、樹脂成形金型10は、貫通孔28の内周面と対向するキャビティ駒24の外周面に全周に渡って形成される周溝34(全周溝)と、周溝34と連通するようキャビティ駒24の押圧面24aから外周面にかけて摺動方向(型開閉方向)と平行に延在する溝状に形成される連通溝36(連通路となる縦溝)とを備える。本実施形態では、
図8に示すように、連通溝36は、一定の幅(ストレート)の溝状で型開閉方向に延在しており、平面視矩形状の押圧面24aの外周に沿って複数設けられている。
【0026】
そして、キャビティ駒24とクランパ26とを相対的に摺動させて、キャビティ凹部18内の樹脂Rをキャビティ駒24で押圧することで、連通溝36を介して周溝34を充填するよう樹脂Rを流し込み、その後熱硬化させることでシール材32としての樹脂リングを成形することができる。これによれば、
図9に示す平面視矩形状のキャビティ凹部18の角部の隙間G1と辺部の隙間G2のようにキャビティ駒24とクランパ26との隙間Gが相違している不均一な状態(隙間G1>隙間G2)であっても、クランパ26(貫通孔28の内周面の全周)に対して均一にシールするよう樹脂Rが周溝34に充填されたシール材32を形成することができる。したがって、可動部材となるキャビティ駒24とクランパ26の摺動箇所において、シール材32によって樹脂漏れを防止することができ、摺動性を確保することができる。また、連通溝36が摺動方向と平行に延在する溝状であるため、樹脂成形後のワークWをキャビティ凹部18から取り出す際に、キャビティ凹部18と連通溝36との境界の応力集中により成形樹脂が分離される。したがって、成形品(樹脂成形部)の周縁部において樹脂突出部が形成されるのを防止することができる。
【0027】
また、樹脂成形金型10は、キャビティ駒24の押圧面24aから周溝34よりも離れたキャビティ駒24の外周面において、摺動方向(型開閉方向)に対して交差する方向に延在する交差溝38を備える(
図1参照)。本実施形態では、交差溝38は、キャビティ駒24の外周面に周溝34と平行して形成された周溝である。この交差溝38によれば、樹脂成形後の型開きした際に、貫通孔28の内周面に不要樹脂が付着していた場合であっても掻き落とすことができる。また、周溝34と平行する交差溝38を摺動方向に多重に設けることで、貫通孔28の内周面に付着する不要樹脂をより掻き落とすことができる。貫通孔28の内周面に不要樹脂を付着させないことで、可動部材となるキャビティ駒24とクランパ26の摺動箇所において、摺動性を確保することができる。
【0028】
また、樹脂成形金型10は、型閉じして密閉空間(チャンバ)とされた金型内部の圧力を調節する圧調節部40(圧調節機構)を備える。圧調節部40は、対向して配置されるチャンバブロック42、44(一対の環状筒状のブロック)と、チャンバブロック42、44の間をシールするシール材46(例えば、Oリング)と、一端が密閉空間に開口し、他端が図示しない圧調節装置(例えば、真空ポンプ)と接続されるエア回路48とを備える。チャンバブロック42は上型12の外壁として設けられ、またチャンバブロック44は下型14の外壁として設けられる。また、シール材46は、下型14のチャンバブロック44の端面(チャンバブロック42側)に設けられる。また、エア回路48は、下型14のチャンバブロック44に穿孔されて設けられる。このような圧調節部40によれば、例えば、密閉空間が形成された状態で減圧(陰圧)することで、成形品の樹脂成形部にボイドや未充填が発生するのを防止して、成形品の品質を向上させることができる。特に、樹脂Rとして顆粒状のものを用いた場合には、各粒間のエアを排出するのに有効である。なお、圧調節部40は、圧調節装置として例えばコンプレッサを備えて、エア回路48を介して密閉空間内を加圧(陽圧)とすることもできる。
【0029】
次に、樹脂成形金型10を用いた樹脂成形方法(樹脂成形金型10を備える樹脂成形装置の動作方法)について説明する。まず、
図1に示すように、型開きした状態(シール材32のない状態)において、ワークWおよび樹脂Rを金型内部にセットする。具体的には、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部にワークWが搬送され、上型12のクランプ面12aにワークWがセット(供給)される。このとき、ワークWはチャック爪20によって外周部が把持され、クランプ面12aに保持される。また、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部に樹脂Rが搬送され、下型14のキャビティ凹部18内に樹脂Rがセット(供給)される。樹脂成形金型10は、上型12および下型14に設けられたヒータを備え、このヒータによって金型内部が加熱されているため、樹脂Rはキャビティ凹部18にセットされると溶融し始める。また、型閉じしてすぐに金型内部(密閉空間)を減圧するよう圧調節部40はエア回路48を介して吸引を開始する。
【0030】
続いて、型閉じ動作によって上型12と下型14とを近接させていき、
図2に示すように、チャンバブロック42の下端面と、チャンバブロック44の上端面に設けられているシール材46とを当接(シーリングタッチ)させる。これにより、キャビティ凹部18を含む金型内部が密閉空間となる。この密閉空間はエア回路48を介して吸引されるため、減圧チャンバ(減圧空間)となる。
【0031】
続いて、更に上型12と下型14とを近接させていき、
図3に示すように、上型12のクランプ面12aにセットされているワークWと、クランパ26の上端面(下型14のクランプ面14a)とを当接させる。すなわち、上型12と下型14とでワークWをクランプする(型閉じする)。これにより、キャビティ凹部18は、ワークWによって閉塞されて実装部品Pを収容するキャビティとなる。なお、クランパ26の上端面に図示しないエア溝を設けておくことで、圧調節部40は、エア溝を介して閉塞されたキャビティ凹部18内のエアを吸引することができる。
【0032】
続いて、更に上型12と下型14(ベース22)とを近接させていき、
図4に示すように、キャビティ凹部18内を樹脂Rで充填する。具体的には、型閉じ動作によって、上型12にセットされたワークWに対してキャビティ駒24の距離が縮められる一方、ワークWに対してクランパ26が当接したまま(距離が変わらず)、クランパ26を支持する弾性部材30が縮められる。これにより、キャビティ駒24とクランパ26とが相対的に摺動し、キャビティ凹部18内の樹脂Rをキャビティ駒24の押圧面24aで押圧することになる。また、押圧面24aから周溝34へ連通する連通溝36を介して周溝34を充填するよう樹脂Rを流し込むことになる。その後、樹脂Rに一定の圧力を加えた状態(圧縮させた状態)でキャビティ凹部18内の樹脂Rを熱硬化させてワークWに樹脂成形部(成形品)を成形する。また、周溝34内の樹脂Rも熱硬化させてシール材32としての樹脂リングを成形する。このとき、連通溝36内の樹脂Rも熱硬化され、キャビティ凹部18、連通溝36および周溝34内の樹脂Rが一体に成形されることとなる。
【0033】
続いて、
図5に示すように、型開き動作によって上型12と下型14とを離隔させる。このとき、上型12ではセット部16でワークW(樹脂成形部)が保持され、下型14ではシール材32(樹脂リング)が周溝34で保持されている(埋め込まれている)ため、樹脂成形部と樹脂リングとが分断される。より具体的には、キャビティ凹部18と連通溝36との境界で成形された樹脂部分での応力集中により分離される。そして、連通溝36が摺動方向と平行に延在する溝状であるため、成形品(樹脂成形部)の周縁部において樹脂突出部が形成されるのを防止することができる。また、周溝34においては、連通溝36を介して流れ込んだ樹脂Rが熱硬化されたシール材32としての樹脂リングを成形することができる。このように、シール材32として専用部材(例えば、Oリング)を用いなくとも成形品の樹脂成形部を構成する樹脂Rを用いることで、シール材32を容易に設けることができる。また、連通溝36がキャビティ駒24の外周面で周溝34のように全周に設けられていないため、周溝34が連通溝36の樹脂Rに引っ張られて抜けてしまうようなこともなく、シール材32としての樹脂リングを周溝34内に確実に保持することができる。また、連通溝36を介して周溝34に樹脂Rを流入させる構成であるため、連通溝36分だけ連通路(樹脂路)を厚くする(拡げる)ことができ、樹脂R内のフィラーの堆積などによって周溝34までの連通路が塞がれてしまうこともなく、確実にシール材32としての樹脂リングを成形することができる。
【0034】
次いで、シール材32としての樹脂リングを残したまま、成形後のワークWを金型内部から取り出した後、
図6に示すように、型開きした状態(シール材32がある状態)において、
図1を参照して説明したように、成形前のワークWおよび樹脂Rを金型内部へセットする。その後、
図2、
図3を参照して説明した工程を経て、
図7に示すように、キャビティ凹部18内を樹脂Rで充填する。すなわち、キャビティ駒24とクランパ26とが相対的に摺動し、キャビティ凹部18内の樹脂Rをキャビティ駒24の押圧面24aで押圧する。このとき、平面視矩形状のキャビティ凹部18の角部と辺部のようにキャビティ駒24とクランパ26との隙間Gが相違している場合であっても(
図9参照)、その隙間Gに対応したシール材32としての樹脂リングが成形されているため、隙間Gにおいての樹脂漏れを防止することができる。したがって、可動部材であるキャビティ駒24とクランパ26の摺動性を確保することができる。
【0035】
その後、樹脂Rに一定の圧力を加えた状態(圧縮させた状態)でキャビティ凹部18内の樹脂Rを熱硬化させてワークWに樹脂成形部(成形品)を成形し、シール材32としての樹脂リングを残したまま、成形後のワークWを金型内部から取り出す。連続成形する場合には、
図6を参照して説明した工程に戻り、同様の工程が繰り返される。
【0036】
(実施形態2)
前記実施形態1では、連通溝36が一定幅(ストレート)の場合について説明した。本発明の実施形態2では、
図10に示すように、キャビティ駒24の上端面の外周端辺が面取りされ、キャビティ駒24の外周面における連通溝36が、キャビティ駒24の押圧面24a側で狭く、周溝34側で広い幅の末広がり状(アンダーカット状)の場合について説明する。
図10は本実施形態に係るキャビティ駒24の模式的斜視図である。これによれば、樹脂成形後の型開きした際に、キャビティ駒24の押圧面24aにおいて、キャビティ凹部18に充填された樹脂Rと連通溝36に充填されたアンダーカット状の樹脂Rとに分断させることができる。また、キャビティ駒24の上端面の外周端辺が面取りされ、キャビティ駒24の安定的な昇降を容易としている。
【0037】
(実施形態3)
前記実施形態1では、交差溝38が周溝34と平行する周溝の場合について説明した。本発明の実施形態3では、
図11に示すように、交差溝38が、摺動方向(キャビティ駒24の厚み方向)に対して斜めに延在している場合について説明する。
図11は本実施形態に係るキャビティ駒24の模式的斜視図である。これによれば、交差溝38によって掻き落とされた樹脂Rが交差溝38内で付着しようとしても、摺動の動きによって交差溝38の延在方向に樹脂Rを排出させることができる。すなわち、交差溝38が斜めに設けられているため、掻き出された樹脂Rを下方に落下させることで排出して交差溝38の中に残ってしまうようなことを防止することができる。
【0038】
(実施形態4)
前記実施形態1では、シール材32として樹脂成形された樹脂リングを用いた場合について説明した。本発明の実施形態4では、
図12〜
図16に示すように、シール材32としてリング状の弾性体(弾性を有するもの)を用いる場合について説明する。
図12は本実施形態に係る樹脂成形金型10の模式的断面図である。
図13および
図14は動作過程における
図12に示す樹脂成形金型10の拡大模式的断面図であり、
図13に貫通孔28の内周面にシール材32が非接触の状態、
図14に貫通孔28の内周面にシール材32が接触した状態を示す。
図15および
図16はシール材32を構成する外リング52の模式的斜視図である。
【0039】
樹脂成形金型10は、周溝34を備えるが、この周溝34に内リング50および外リング52で構成されたシール材32が設けられる。本実施形態に係るシール材32は、周溝34において同心の内リング50と外リング52とを含んで構成されている。本実施形態では、シール材32は、内リング50の熱膨張係数が外リング52の熱膨張係数よりも大きい弾性体(弾性を有するもの)として構成されている。また、周溝34にシール材32を設けるために、キャビティ駒24は、周溝34の一部を構成し、シール材32と接する端面54aを有し、キャビティ駒24の外周面に全周に渡って設けられる貫通筒状のブロック材54を備える。すなわち、ブロック材54を取り外した状態では押圧面24aとは反対側でキャビティ駒24は細くなる(断面視T字状となる)ため、その反対側から挿入するようにして内リング50および外リング52を周溝34に組み付けることができる。
【0040】
内リング50として、金型温度において所定の強度を有し、樹脂成形金型10を構成する金型ブロックの材質に比べてより大きな熱膨張係数を有する弾性体(例えば、フッ素系樹脂などの可撓性部材)が用いられる。また、外リング52には、クランパ26の貫通孔28内で摺動しても摩耗量の少ない硬質な材質として、鋼材(例えば、ステンレス鋼やバネ鋼)などの金属が用いられる。このような外リング52は、
図15に示すように、周方向の一部が切り欠かれた切欠部56を有する。すなわち、外リング52は、切欠部56の幅を狭めることで小さくなり、切欠部56の幅を拡げることで大きくなるような弾性を有することとなる。本実施形態では、同じ外リング52を複数(2つ)組み合わせて用い、上下の外リング52を重ねたときに、一方の外リング52の内周段部(凹部)に他方の外リング52の内周段部(凸部)を差し込むようにして、互いに外れてしまうのを防止している。なお、外リング52における内周段部(凸部)を金型側の溝部などに差し込むことで、固定可能とすることもできる。
【0041】
これによれば、型閉じした際の金型温度によって内リング50を熱膨張(拡大)させることで外リング52を拡大させてクランパ26(貫通孔28の内周面)に押し付けることができる。金型温度において熱膨張係数が異なる内リング50と外リング52を用いて、クランパ26の貫通孔28の内周面に向かって押し付けられるよう弾性体で構成されるシール材32を周溝34に設けている。また、外リング52は、摺動方向に複数重なって周溝34に設けられ、重なった互いの外リング52の切欠部56が非連続である。これによれば、切欠部56が拡がっても重なる外リング52では非連続であるため、仮に、キャビティ駒24の押圧面24a側の外リング52(上リング)の切欠部56に樹脂Rが進入しても、キャビティ駒24の押圧面24aから遠い外リング52(下リング)の切欠部56まで樹脂Rが進入するのを防止することができる。
【0042】
このような内リング50と外リング52から構成されるシール材32を用いることで、例えば平面視矩形状のキャビティ凹部18の角部と辺部のようにキャビティ駒24とクランパ26との隙間Gが相違している場合であっても(
図9参照)、クランパ26に対して均一にシールすることができる。したがって、可動部材となるキャビティ駒24とクランパ26の摺動箇所において、シール材32によって樹脂漏れを防止することができ、摺動性を確保することができる。
【0043】
なお、外リング52は、切欠部56に限らず、
図16に示すように、また、外リング52が、波形状の肉薄部58を有してもよい。この場合でも、内リング50の拡大によって波形状の肉薄部58が延びて外リング52を拡大させることができる。
【0044】
(実施形態5)
前記実施形態4では、弾性体のシール材32として、熱膨張係数の異なる同心の内リング50および外リング52を含んで構成される場合について説明した。本発明の実施形態5では、
図17〜
図20に示すように、1つのシール材32としてリング状の可撓性部材(例えば、フッ素系樹脂)を用いる場合について説明する。
図17は本実施形態に係る樹脂成形金型10の模式的断面図である。
図18および
図19は動作過程における
図17に示す樹脂成形金型10の拡大模式的断面図であり、
図18に貫通孔28の内周面にシール材32が非接触の状態(シール材32が加圧される前の状態)、
図19に貫通孔28の内周面にシール材32が接触した状態(シール材32が加圧された状態)を示す。
図20は樹脂成形金型10の変形例の模式的断面図である。
【0045】
樹脂成形金型10は、周溝34の一部を構成し、シール材32と接する端面54aを有し、キャビティ駒24の外周面に全周に渡って設けられる貫通筒状のブロック材54を備える。このブロック材54の端面54aは、シール材32を潰すようにシール材32を押圧するシール材押圧面である。本実施形態では、ブロック材54の端面54aやこれと接するシール材32の端面はキャビティ駒24の押圧面24aや下型14のクランプ面14aと平行な面であるが、後述の実施形態6と同様にテーパ面であってもよい。また、樹脂成形金型10は、シール材32の潰し量を調節するため、キャビティ駒24とクランパ26の摺動方向(キャビティ駒24の厚み方向)においてブロック材54を往復動させるブロック材可動部60を備える。ブロック材可動部60は、キャビティ駒24とクランパ26の摺動方向から調節可能に設けられ、例えば、ベース22の厚み方向に延在してブロック材54に当接して設けられた調節部62(例えば、ボルト)を備える。このようなブロック材可動部60によれば、樹脂成形金型10を簡易に組み立てることができる。なお、調節部62としては、ボルトのような人力による締め込み構成のみならず、機械的な駆動を用いてもよい。
【0046】
本実施形態では、樹脂成形金型10を組み立て後にシール材32を押し潰すために、適宜のトルクで調節部62(ボルト)を締めることで、シール材32のクランパ26への密着が完了する。このようなシール材32のクランパ26への押し付けにより、キャビティ駒24とクランパ26との間に均一な隙間Gを構成することができることとなり、隙間Gの幅の偏りを防止することができる。また、貫通筒状のブロック材54が例えば矩形状の場合、ブロック材可動部60としての調節部62を一辺に2個ずつ配置して、シール材32を均一に押し潰せるようにしている。
【0047】
このように、ブロック材可動部60によってブロック材54の端面54aでシール材32を押圧することで、シール材32が潰され(押し付けられ)、周溝34からシール材32がクランパ26(貫通孔28の内周面)側へはみ出し、シール材32をクランパ26に押し付けることができる。したがって、可動部材となるキャビティ駒24とクランパ26の摺動箇所において、シール材32によって樹脂漏れを防止することができ、摺動性を確保することができる。また、シール材32が消耗したときに追い締めすることで、シール材32を適切な押し付け状態に保つことができる。
【0048】
なお、ブロック材可動部60として複数の調節部62をそれぞれ調節してもよいが、
図20に示すように、例えば無端ベルトなどの連動部材63を各調節部に掛けて一斉に調節するようにしてもよい。
【0049】
(実施形態6)
前記実施形態5では、ブロック材可動部60が、調節部62を備え、キャビティ駒24とクランパ26の摺動方向から調節可能に設けられた場合について説明した。本発明の実施形態6では、
図21および
図22に示すように、ブロック材可動部60が、調節部62と方向変換機構部64とを備え、摺動方向と交差する方向から調節可能に設けられる場合について説明する。
図21および
図22は本実施形態に係る動作過程における樹脂成形金型10の拡大模式的断面図であり、
図21に貫通孔28の内周面にシール材32が非接触の状態(シール材32が加圧される前の状態)、
図22に貫通孔32の内周面にシール材32が接触した状態(シール材32が加圧された状態)を示す。
【0050】
樹脂成形金型10は、周溝34の一部を構成し、シール材32と接する端面54aを有し、キャビティ駒24の外周面に全周に渡って設けられる貫通筒状のブロック材54を備える。本実施形態では、端面54aが内側から外側へ向かって拡がるテーパ面となる一方、端面54aと接するシール材32の端面が外側から内側へ向かって狭まるテーパ面である。このブロック材54の端面54aは、シール材32を貫通孔28の内周面側へ押し出すようにシール材32を押圧するシール材押圧面である。また、樹脂成形金型10は、シール材32の加圧力を調節するため、調節部62と方向変換機構部64とを有するブロック材可動部60を備える。ブロック材可動部60は、調節部62(例えば、ボルト)がキャビティ駒24とクランパ26の摺動方向と交差する方向の金型側方から調節可能に設けられ、方向変換機構部64(例えば、ウエッジ)を介してブロック材54に作用するよう設けられる。
【0051】
このようなブロック材可動部60によれば、樹脂成形金型10をプラテンに組み付けた後でも、金型側方からの調節部62の締め込みを行うことで、シール材32の加圧力を調節することができる。このため、金型を組み付けた後であっても金型の乗せ降ろしをすることなく調節することができる。また、シール材32が消耗してクランパ26の押し付けが十分でなくなったとしても、増し締めすることにより、クランパ26へのシール材32の押し付け状態を維持することができる。
【0052】
このように、ブロック材可動部60によってブロック材54の端面54aでシール材32を押圧することで、シール材32が押し付けられ、周溝34からシール材32がクランパ26(貫通孔28の内周面)側へ押し出され、シール材32をクランパ26に押し付けることができる。したがって、可動部材となるキャビティ駒24とクランパ26の摺動箇所において、シール材32によって樹脂漏れを防止することができ、摺動性を確保することができる。
【0053】
(実施形態7)
前記実施形態5では、ブロック材可動部60として調節部62を備える場合について説明した。本発明の実施形態7では、
図23および
図24に示すように、ブロック材可動部60が、調節部62と、弾性部材66と、保圧用ピン68とを備え、シール材32をクランパ26へ加圧する加圧力を維持する構造の場合について説明する。
図23および
図24は本実施形態に係る動作過程における樹脂成形金型10の拡大模式的断面図であり、
図23に貫通孔28の内周面にシール材32が非接触の状態(シール材32が加圧される前の状態)、
図24に貫通孔32の内周面にシール材32が接触した状態(シール材32が加圧された状態)を示す。
【0054】
樹脂成形金型10は、周溝34の一部を構成し、シール材32と接する端面54aを有し、キャビティ駒24の外周面に全周に渡って設けられる貫通筒状のブロック材54を備える。また、樹脂成形金型10は、シール材32の加圧力を調節し、シール材32をクランパ26へ加圧する加圧力を維持するため、調節部62(例えば、ボルト)と、保圧用ピン68と、調節部62と保圧用ピン68との間に挟まれる弾性部材66(例えば、バネ)とを備える。ブロック材可動部60は、調節部62がキャビティ駒24とクランパ26の摺動方向から調節可能に設けられ、弾性部材66および保圧用ピン68を介してブロック材54に作用するよう設けられる。
【0055】
このようなブロック材可動部60によれば、調節部62の締め込みを行うことで、弾性部材66を介して保圧用ピン68を押し上げ、シール材32の加圧力を調節することができる。また、弾性部材66により、シール材32を押し出す力を保持することができるため、シール材32が摩耗しても押し出す力を継続的に加えることができる。したがって、シール材32のクランパ26への加圧力を保って樹脂漏れを防止することができ、摺動性を確保することができる。
【0056】
(実施形態8)
前記実施形態6では、ブロック材可動部60が調節部62と方向変換機構部64とを備え、樹脂成形金型10の組み付け後の樹脂成形前にシール材32をクランパ26に押し付ける場合について説明した。本発明の実施形態8では、
図25および
図26に示すように、ブロック材可動部60がクランパ押さえピン70と、押しピン72と、方向変換機構部64と、弾性部材付きのブロック材押さえピン74とを備え、樹脂成形の際にシール材32をクランパ26に押し付ける場合について説明する。
図25および
図26は本実施形態に係る動作過程における樹脂成形金型10の拡大模式的断面図であり、
図25に貫通孔28の内周面にシール材32が非接触の状態(シール材32が加圧される前の状態)、
図26に貫通孔32の内周面にシール材32が接触した状態(シール材32が加圧された状態)を示す。
【0057】
樹脂成形金型10は、周溝34の一部を構成し、シール材32と接する端面54aを有し、キャビティ駒24の外周面に全周に渡って設けられる貫通筒状のブロック材54を備える。また、樹脂成形金型10は、シール材32の加圧力を調節するため、クランパ押さえピン70と、押しピン72と、方向変換機構部64(例えば、ロッカー)と弾性部材付きのブロック材押さえピン74とを有するブロック材可動部60を備える。ブロック材可動部60は、クランプ動作によってクランパ26が押し込まれると、これにクランパ押さえピン70が押しピン72に当接し、方向変換機構部64(例えば、ロッカー)を介してブロック材押さえピン74によってブロック材54に作用するよう設けられる。
【0058】
このようなブロック材可動部60によれば、キャビティ駒24とクランパ26との隙間(摺動箇所)の摺動性およびシール性の両立を確保することができる。すなわち、型閉じによりクランパ26が押し下げられることで、キャビティ駒24とクランパ26との隙間へ樹脂Rが流れ込む前にシール材32が押し潰されてクランパ26と密着し、締まりバメ状態となってシール機能を確保することができる。また、クランパ26がワークWをクランプする前の状態(未加圧状態)では、シール材32も押し潰しが解放された状態(未加圧状態)であるため、クランパ26にシール材32が押し付けられることによる摺動抵抗が発生せず、動作が円滑となる。このように、摺動性が確保されると共に、シール材32の加圧力を調節する組み立ても容易となる。
【0059】
(実施形態9)
前記実施形態1では、キャビティ凹部18の底面をキャビティ駒24の押圧面24a(端面)のみで構成する場合について説明した。本発明の実施形態9では、
図27および
図28に示すように、クランパ26に形成された凹部18Aの底面28bと、底面28bの中央部に形成された貫通孔28に挿入されたキャビティ駒24の押圧面24aとでキャビティ凹部18の底面が構成される場合について説明する。
図27および
図28は本実施形態に係る動作過程における樹脂成形金型10の模式的断面図であり、
図27に型開きしてワークWおよび樹脂Rがセットされた状態、
図28に型閉じしてキャビティ凹部18内で充填された樹脂Rを熱硬化させた状態を示す。
【0060】
樹脂成形金型10は、下型14にクランプ面14aから窪む四角錐台状のキャビティ凹部18を備える。下型14では、キャビティ駒24とクランパ26とによってキャビティ凹部18が構成され、可動部材としてキャビティ駒24とクランパ26とが相対的に摺動可能に構成される。クランパ26は、クランプ面14aから窪む平面視矩形状の凹部18Aと、凹部18Aの底面28bの中央部に形成され、キャビティ駒24が挿入される平面視円形状の貫通孔28を有する。本実施形態では、キャビティ凹部18の側面が凹部18Aの内周面(クランパ26の開口側内周面28a)で構成され、キャビティ凹部18の底面が凹部18Aの底面28bとキャビティ駒24の押圧面24a(端面)とで構成される。すなわち、平面視円形状の貫通孔28に挿入された平面視円形状のキャビティ駒24の平坦状の押圧面24aがキャビティ凹部18の底面の一部となる。そして、平面視円形状のキャビティ駒24と貫通孔28とは同心円状に構成され、これらの隙間Gがキャビティ駒24の押圧面24aにおける外周位置によって変わらず均一である。このように、本実施形態では、キャビティ凹部18の底面がキャビティ駒24およびクランパ26で構成され、キャビティ凹部18の側面がクランパ26で構成される。
【0061】
本実施形態においても、樹脂成形金型10は、摺動箇所となる貫通孔28内においてキャビティ駒24とクランパ26との隙間Gに設けられるシール材32を備える。シール材32としては、樹脂成形の過程(樹脂成形金型10の動作過程)によって成形される樹脂リングを用いる。このため、樹脂リングを成形するために、樹脂成形金型10は、貫通孔28の内周面と対向するキャビティ駒24の外周面に全周に渡って形成される周溝34と、周溝34と連通するようキャビティ駒24の押圧面24aから外周面にかけて摺動方向と平行に延在する溝状に形成される連通溝36(連通路)とを備える。本実施形態では、連通溝36は、一定の幅(ストレート)の溝状で型開閉方向に延在しており、平面視円形状の押圧面24aの外周に沿って複数設けられている。
【0062】
そして、キャビティ駒24とクランパ26とを相対的に摺動させて、キャビティ凹部18内の樹脂Rをキャビティ駒24で押圧することで、連通溝36を介して周溝34を充填するよう樹脂Rを流し込み、その後熱硬化させることでシール材32としての樹脂リングを成形することができる。これによれば、クランパ26(貫通孔28の内周面の全周)に対して均一にシールするよう樹脂Rが周溝34に充填されたシール材32を形成することができる。したがって、可動部材となるキャビティ駒24とクランパ26の摺動箇所において、シール材32によって樹脂漏れを防止することができ、摺動性を確保することができる。
【0063】
次に、樹脂成形金型10を用いた樹脂成形方法(樹脂成形金型10の動作方法)について説明する。まず、
図27に示すように、型開きした状態(シール材32のない状態)において、ワークWおよび樹脂Rを金型内部にセットする。具体的には、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部にワークWが搬送され、上型12のクランプ面12aにワークWがセット(供給)される。また、図示しない搬送部によって金型外部から金型内部に樹脂Rが搬送され、下型14のキャビティ凹部18内に樹脂Rがセット(供給)される。樹脂成形金型10は、上型12および下型14に設けられたヒータを備え、このヒータによって金型内部が加熱されているため、樹脂Rはキャビティ凹部18にセットされると溶融し始める。また、型閉じしてすぐに金型内部(密閉空間)を減圧するよう圧調節部40はエア回路48を介して吸引を開始する。
【0064】
続いて、型閉じ動作によって上型12と下型14とを近接させていき、
図2を参照して説明した工程のように、チャンバブロック42の下端面と、チャンバブロック44の上端面に設けられているシール材46とを当接(シーリングタッチ)させる。これにより、キャビティ凹部18を含む金型内部が密閉空間となる。この密閉空間はエア回路48を介して吸引されるため、減圧チャンバ(減圧空間)となる。
【0065】
続いて、更に上型12と下型14とを近接させていき、
図3を参照して説明した工程のように、上型12のクランプ面12aにセットされているワークWと、クランパ26の上端面(下型14のクランプ面14a)とを当接させる。すなわち、上型12と下型14とでワークWをクランプする(型閉じする)。これにより、キャビティ凹部18は、ワークWによって閉塞されて実装部品Pを収容するキャビティとなる。なお、クランパ26の上端面に図示しないエア溝を設けておくことで、圧調節部40は、エア溝を介して閉塞されたキャビティ凹部18内のエアを吸引することができる。
【0066】
続いて、更に上型12と下型14(ベース22)とを近接させていき、
図28に示すように、キャビティ凹部18内を樹脂Rで充填する。具体的には、型閉じ動作によって、上型12にセットされたワークWに対してキャビティ駒24の距離が縮められる一方、ワークWに対してクランパ26が当接したまま(距離が変わらず)、クランパ26を支持する弾性部材30が縮められる。これにより、キャビティ駒24とクランパ26とが相対的に摺動し、キャビティ凹部18内の樹脂Rをキャビティ駒24の押圧面24aで押圧することになる。また、押圧面24aから周溝34へ連通する連通溝36を介して周溝34を充填するよう樹脂Rを流し込むことになる。その後、樹脂Rに一定の圧力を加えた状態(圧縮させた状態)でキャビティ凹部18内の樹脂Rを熱硬化させてワークWに樹脂成形部(成形品)を成形する。また、周溝34内の樹脂Rも熱硬化させてシール材32としての樹脂リングを成形する。このとき、連通溝36内の樹脂Rも熱硬化され、キャビティ凹部18、連通溝36および周溝34内の樹脂Rが一体に成形されることとなる。
【0067】
続いて、
図5を参照して説明した工程のように、型開き動作によって上型12と下型14とを離隔させる。このとき、上型12ではセット部16でワークW(樹脂成形部)が保持され、下型14ではシール材32(樹脂リング)が周溝34で保持されている(埋め込まれている)ため、樹脂成形部と樹脂リングとが分断される。より具体的には、キャビティ凹部18と連通溝36との境界で成形された樹脂部分での応力集中により分離される。そして、連通溝36が摺動方向と平行に延在する溝状であるため、成形品(樹脂成形部)の周縁部において樹脂突出部が形成されるのを防止することができる。また、周溝34においては、連通溝36を介して流れ込んだ樹脂Rが熱硬化されたシール材32としての樹脂リングを成形することができる。このように、シール材32として専用部材(例えば、Oリング)を用いなくとも成形品の樹脂成形部を構成する樹脂Rを用いることで、シール材32を容易に設けることができる。
【0068】
次いで、シール材32としての樹脂リングを残したまま、成形後のワークWを金型内部から取り出した後、
図6を参照して説明した工程のように、型開きした状態(シール材32がある状態)において、
図27を参照して説明したように、成形前のワークWおよび樹脂Rを金型内部へセットする。その後、
図2、
図3を参照して説明した工程を経て、
図7を参照して説明した工程のように、キャビティ凹部18内を樹脂Rで充填する。すなわち、キャビティ駒24とクランパ26とが相対的に摺動し、キャビティ凹部18内の樹脂Rをキャビティ駒24の押圧面24aで押圧する。このとき、同心円状のキャビティ駒24と貫通孔28の均一な隙間Gに対応したシール材32としての樹脂リングが成形されているため、隙間Gにおいての樹脂漏れを防止することができる。したがって、可動部材であるキャビティ駒24とクランパ26の摺動性を確保することができる。
【0069】
その後、樹脂Rに一定の圧力を加えた状態(圧縮させた状態)でキャビティ凹部18内の樹脂Rを熱硬化させてワークWに樹脂成形部(成形品)を成形し、シール材32としての樹脂リングを残したまま、成形後のワークWを金型内部から取り出す。連続成形する場合には、同様の工程が繰り返される。
【0070】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、次のとおり、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0071】
前記実施形態1〜9では、ベースに対してキャビティ駒を固定し、また弾性部材を介してクランパを組み付けることで、型開閉動作に伴わせてキャビティ駒とクランパとを相対的に摺動可能に構成した場合について説明した。これに限らず、ベースに対してクランパを固定し、また弾性部材を介してキャビティ駒を組み付けたり、ベースに対してキャビティ駒およびクランパのそれぞれに弾性部材を介して組み付けたりする場合であってもよい。また、弾性部材の代わりに型開閉動作から独立した駆動機構を備え、キャビティ駒またはクランパの少なくともいずれか一方を駆動機構による可動部材とし、キャビティ駒とクランパとを相対的に摺動可能に構成する場合であってもよい。
【0072】
また、前記実施形態5〜8では、シール材をクランパに押し付けるブロック材がキャビティ駒に設けられる場合について説明した。これに限らず、シール材をキャビティ駒に押し付けるブロック材がクランパに設けられる場合であってもよい。この場合、ベースに対してクランパを固定し、また弾性部材を介してキャビティ駒を組み付けて、キャビティ駒とクランパとが相対的に摺動可能に構成され、クランパ26の貫通孔28の内周面に周溝34が設けられ、この周溝34にシール材32が設けられる。
【0073】
また、前記実施形態1〜8では、キャビティ凹部の底面をキャビティ駒の平坦状押圧面のみで構成し、またキャビティ凹部の側面をクランパ貫通孔のテーパ状内周面のみで構成する場合について説明した。これに限らず、キャビティ駒の押圧面の外周縁部から突起する周突部を設け、キャビティ凹部の側面をこの周突部の内周面およびクランパ貫通孔のテーパ状の開口側内周面で構成する場合であってもよい。このような場合、クランパはキャビティ凹部の側面の少なくとも一部を構成するものとなる。
【0074】
また、前記実施形態1〜8では、キャビティ駒の樹脂押圧面における外周位置によりキャビティ駒とクランパとの隙間が相違する場合として、キャビティ駒の押圧面およびクランパ貫通孔の平面視形状が矩形状のものを説明したが、六角形状、八角形状などの多角形状のものであってもよい。
【0075】
また、前記実施形態1〜9では、下型にキャビティ凹部を設ける場合について説明したが、金型構成を上下逆にして上型にキャビティ凹部を設ける場合であってもよい。また、前記実施形態1〜9では、圧縮成形用の樹脂成形金型に適用した場合について説明したが、トランスファ成形用の樹脂成形金型においてキャビティ駒の高さを可変(摺動可能)とした樹脂成形金型(例えば、キャビティ内へ樹脂をトランスファさせた後にキャビティ駒を摺動させてキャビティ内の樹脂を圧縮させるTCM(Transfer Compression Mold)金型)にも適用することができる。