(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1ではコンクリート内部の温度毎に水の割合を元にして膨張材量の添加量を決定する技術であり、試験体を使って関係式を算出し、単位膨張材量を決定している。一方、コンクリート構造物は温度や水以外にも、鉄筋などの鋼材の影響を考慮する必要があり、特に合成床版のように鋼とコンクリートが複合化したコンクリート構造物では歪みの分布や変化が複雑となり、合成床版に導入されるケミカルプレストレス量を容易に推定することは困難だと考えられる。この為、合成床版のケミカルプレストレス量を推測することができる技術が求められていた。
【0007】
そこで本発明は、合成床版内に発生するケミカルプレストレス量を推定して必要な膨張材の量を決定することができる合成床版の製造方法、合成床版の管理方法、コンクリート構造物の製造方法、及びコンクリート構造物の管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による合成床版の製造方法は、以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)膨張材を添加したコンクリートを打設して形成する合成床版の製造方法において、膨張性試験を行い、前記膨張性試験の結果に対して仕事量一定の法則を適用して得られた解析値より、前記合成床版内の膨張率を推定し、前記膨張率が前記合成床版に適用する収縮補償の範囲内にあることを確認し、前記膨張性試験の結果に対して前記膨張率より前記合成床版内のケミカルプレストレス量を推定し、前記ケミカルプレストレス量から、前記膨張材の添加量を、前記合成床版内に生じる引張応力を相殺または減殺可能な量に決定すること、を特徴とする。
【0010】
上記(1)に記載の態様によれば、JIS A 6202Bまたは軽量型枠法等に基づく膨張性試験によってケミカルプレストレス量の推定ができる為、合成床版を形成する為のコンクリートに最適な量の膨張材を添加することが可能となる。この結果、合成床版に適切なケミカルプレストレスを与えることが可能となる。なお、ここで「合成床版内に生じる引張応力を相殺または減殺可能な量」としているのは、膨張材の添加量が、膨張材をコンクリートに添加することによって生じる膨張率が収縮補償の範囲内で相殺可能であればその量に、相殺できなければ収縮補償の範囲内で減殺する量とするといった事を意図している。
【0011】
事前に膨張性試験と、ケミカルプレストレス量との関係式が求められており、この関係式を用いることで、JIS A 6202Bの膨張性試験の結果より膨張材の添加量を決定することが可能となるためである。つまり、簡易な手段で合成床版に適切なケミカルプレストレスを与えることができ、合成床版のひび割れ耐性を適切に高めることが可能となる。
【0012】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による合成床版の製造方法は、以下のような特徴を有する。
【0013】
(2)膨張材を添加したコンクリートを打設して形成する合成床版の製造方法において、膨張性試験を行い、前記膨張性試験の結果に対して仕事量一定の法則を適用して得られた解析値より、前記合成床版内の膨張率を推定し、前記合成床版内の圧縮強度を求め、前記圧縮強度が前記コンクリートの基準配合より著しく低下していないことを確認し、前記膨張率が、必要量を満足するかを確認し、前記膨張性試験の結果に対して前記膨張率より、前記合成床版内のケミカルプレストレス量を推定し、前記ケミカルプレストレス量から、前記膨張材の添加量を、前記合成床版内に生じる引張応力を相殺可能な量に決定すること、を特徴とする。
【0014】
上記(2)に記載の態様によれば、合成床版に用いるコンクリートに収縮補償の範囲が設定されていないような場合でも、膨張性試験の結果に基づいて合成床版内に生じる膨張率を求め、管理用供試体内の圧縮強度がコンクリートの基準配合よりも著しく低下していないか、膨張率が必要量を満足するか、等を判断した上で、ケミカルプレストレス量を推定し、膨張材の添加量を決定することができる。この為、(1)同様に、簡易な手段で合成床版に適切なケミカルプレストレスを与えることができ、合成床版のひび割れ耐性を適切に高めることが可能となる。
【0015】
(3)(1)または(2)に記載の合成床版の製造方法において、前記膨張性試験は、JIS A 6202B法を用いた試験であること、が好ましい。
【0016】
(4)(1)または(2)に記載の合成床版の製造方法において、前記膨張性試験は、軽量型枠法を用いた試験であること、が好ましい。
【0017】
上記(3)または(4)に記載の態様により、従来から知られたJIS A 6202B法や軽量型枠を用いた拘束膨張試験による歪み値の計測結果を用いて、膨張性試験を行い、膨張性試験に用いる管理用供試体の膨張率などを求めることができるので、合成床版に適切なケミカルプレストレスを与えることができ、合成床版のひび割れ耐性を適切に高めることが可能となる。
【0018】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による合成床版の管理方法は、以下のような特徴を有する。
【0019】
(5)膨張材を添加したコンクリートを打設して形成する合成床版の管理方法において、前記コンクリートの品質管理として、軽量型枠法から得られる歪み値より、その材齢の残存ケミカルプレストレス量を算出し、歪み値の将来予測からひび割れを予測すること、を特徴とする。この態様により、打設した合成床版のひび割れ耐性を高め、将来の歪み値を予測することが可能になるので、この予測に基づいて将来的な歪みの発生に対する予防措置を講じ、合成床版の寿命を延ばすように管理することが可能となる。
【0020】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様によるコンクリート構造物の製造方法は、以下のような特徴を有する。
【0021】
(6)鋼板を構造材に用い、膨張材を添加したコンクリートを打設して形成するコンクリート構造物の製造方法において、膨張性試験を行い、前記膨張性試験の結果に対して仕事量一定の法則を適用して得られた解析値より、前記コンクリート構造物内の膨張率を推定し、前記膨張率が前記コンクリート構造物に適用する収縮補償の範囲内にあることを確認し、前記膨張性試験の結果に対して前記膨張率より、前記コンクリート構造物内のケミカルプレストレス量を推定し、前記ケミカルプレストレス量から、前記膨張材の添加量を、前記コンクリート構造物内に生じる引張応力を相殺または減殺可能な量に決定すること、を特徴とする。
【0022】
上記(6)に記載の態様によれば、(1)に記載の合成床版の製造方法と同様に、JIS A 6202Bまたは軽量型枠法等に基づく膨張性試験によってコンクリート構造物内のケミカルプレストレス量の推定ができる為、コンクリート構造物を形成する為のコンクリートに最適な量の膨張材を添加することが可能となる。この結果、合成床版などのコンクリート構造物に適切なケミカルプレストレスを与えることが可能となる。
【0023】
(7)鋼板を構造材に用い、膨張材を添加したコンクリートを打設して形成するコンクリート構造物の製造方法において、膨張性試験を行い、前記膨張性試験の結果に対して仕事量一定の法則を適用して得られた解析値より、前記コンクリート構造物内の膨張率を推定し、前記コンクリート構造物内の圧縮強度を求め、前記圧縮強度が前記コンクリートの基準配合より著しく低下していないことを確認し、前記膨張率が、必要量を満足するかを確認し、前記膨張性試験の結果に対して前記膨張率より、前記コンクリート構造物内のケミカルプレストレス量を推定し、前記ケミカルプレストレス量から、前記膨張材の添加量を、前記コンクリート構造物に生じる引張応力を相殺可能な量に決定すること、を特徴とする。
【0024】
上記(7)に記載の態様によれば、コンクリート構造物に用いるコンクリートに収縮補償の範囲が設定されていないような場合でも、膨張性試験の結果に基づいてコンクリート構造物内に生じる膨張率を求め、管理用供試体内の圧縮強度がコンクリートの基準配合よりも著しく低下していないか、膨張率が必要量を満足するか、等を判断した上で、ケミカルプレストレス量を推定し、膨張材の添加量を決定することができる。この為、(2)同様に、簡易な手段でコンクリート構造物に適切なケミカルプレストレスを与えることができ、コンクリート構造物のひび割れ耐性を適切に高めることが可能となる。
【0025】
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様によるコンクリート構造物の管理方法は、以下のような特徴を有する。
【0026】
(8)鋼板を構造材に用い、膨張材を添加したコンクリートを打設して形成するコンクリート構造物の管理方法において、前記コンクリートの品質管理として、軽量型枠法から得られる歪み値より、その材齢の残存ケミカルプレストレス量を算出し、歪み値の将来予測からひび割れを予測すること、を特徴とする。
【0027】
上記(8)に記載の態様により、合成床版を始めとしたコンクリート構造物の管理において、現場でコンクリートを打設したコンクリート構造物内の将来の歪み値を予測することが可能となり、この予測に基づいて将来的な歪みの発生に対する予防措置を講じることが可能となる。例えば、外部からの応力を受けて歪みが増大しているようなケースであれば、応力を緩和する措置を検討できる。この結果、合成床版を始めとしたコンクリート構造物の管理を適切に行い、寿命を長くすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
まず、本発明の第1の実施形態について図面を用いて説明を行う。
図1に、第1実施形態の、橋梁の斜視図を示す。橋梁100は、主桁110の上に配置される合成床版150と、合成床版150に固定される壁高欄160を備える。このうち合成床版150は、橋の上を通る車両等の重みを橋梁100の主桁110や橋脚に伝えるための床板部分であり、鋼板(横リブ115、底鋼板120)や鉄筋130を設置した後にコンクリートの打設を行い、鋼板とコンクリートを一体化させることにより外力に抵抗する構造体である。つまり、合成床版150はコンクリート構造物の一態様と言うことができる。なお、合成床版と呼ばれる構造体には色々な種類があるが、第1実施形態はそのうちロビンソンタイプと呼ばれる形状を採用している。出願人はこのタイプが実物との整合性が高い事を確認しているためである。ただし、他の形状に本発明を適用することを妨げない。
【0030】
合成床版150は、
図1に示すように主桁110の上に渡された横リブ115と、横リブ115に固定された底鋼板120と、底鋼板120に配置されたスタッドジベル125とを備え、鉄筋130が配設されて、コンクリート135が打設されることで形成される。コンクリート135の上には防水層136が設けられ舗装137が施される。コンクリート135は混和材として所定量の膨張材Dが添加されたものが用いられる。
【0031】
この膨張材Dの添加量の決定に関するプロセスを次に説明する。
図2は、床版上縁のケミカルプレストレス量と管理用供試体による長さ変化率の関係図である。縦軸は「床版上縁のケミカルプレストレス」を示しており、合成床版150の上縁に生じるケミカルプレストレス量(以下、CP量とする)を示している。横軸には「長さの変化率」を示す。この長さの変化率はJIS A 6202B法を用いた管理用供試体の膨張性試験(以下、単にJIS法膨張性試験とする)により得られる長さの変化率を示している。なお、この関係図は、合成床版150の剛性を考慮した仕事一定則から求められている。
【0032】
なお、
図2では合成床版150の上縁部分についてのCP量についてグラフとしている。これは、合成床版150のひび割れは合成床版150の上面、即ち上縁部分において発生し、合成床版150のケミカルプレストレスも上縁部分が最も弱くなる為である。そして、合成床版150の上縁部分のCP量は、JIS法膨張性試験から得られる長さの変化率と相関する関係にある。
図2に示されるような関係を利用して、合成床版150のコンクリートに添加する膨張材Dの最適な量を決定することができる。
【0033】
これは、コンクリート135に膨張材Dを添加して凝結させた場合、添加する膨張材Dの添加量に応じた歪みが発生することが分かっているので、例えば
図2に示した膨張材Dを「20kg/m
3」添加した場合と、膨張材Dを「30kg/m
3」添加した場合とを比べ、「仕様範囲」に収まっていることを確認の上で、最適な膨張材Dの量を決定する。こうして合成床版150に用いるコンクリート135に添加する膨張材Dの量を決定し、施工を行う。
【0034】
次に、具体的な作業手順について説明する。
図3に、フローチャートを示す。まず、
S10にて、コンクリート135に配合する膨張材Dの量を決定する。第1実施形態では、仕様書などに定められている仕様範囲内である「20kg/m
3」、「25kg/m
3」、「30kg/m
3」の3配合で実施している。そしてS11に移行する。S11にて、コンクリートの試験練りを行う。そしてS12に移行する。S12にて、コンクリートのフレッシュ性状を確認する。コンクリートの練り上がり温度や、空気量、スランプの測定などを行い、予定した性能が出ているかを確認する。そしてS13に移行する。S13にて、JIS法膨張性試験の管理用供試体を作成する。そしてS14に移行する。
【0035】
S14にて、管理用供試体の材齢7日のコンクリートの圧縮強度であるσ7の計測を行う。そしてS15に移行する。S15にて、材齢7日の膨張率が所定範囲内か否かを判断する。材齢7日の膨張率が収縮補償範囲内、150×10
−6〜250×10
−6の範囲内である場合にはS16に移行する。材齢7日の膨張率が収縮補償の範囲から外れる場合には、その使用量の配合は適用不可と判断してS10に移行する。
【0036】
S16にて、材齢28日のコンクリートの圧縮強度であるσ28の計測を行う。そしてS17に移行する。S17にて、σ28が呼び強度以上かを判断する。呼び強度は設計基準強度以上に設定されている。σ28が呼び強度以上を保っている場合には、S18に移行する。σ28が低下して呼び強度未満である場合には、その使用量の配合は適用不可と判断してS10に移行する。S18にて、使用量の配合は適用可能であると判断し、S19に移行する。なお、この場合に予備的に材齢91日のコンクリートの圧縮強度であるσ91の計測を行い、σ91に関しても呼び強度以上かを判断するのが望ましい。S19にて、CP算出グラフにてCP量を推定する。そして処理を終了する。
【0037】
本発明の合成床版150の製造方法は上記構成である為、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0038】
まず、第1実施形態の合成床版150の製造方法を用いることで、合成床版150内に発生するCP量を推定して必要な膨張材Dの添加量を決定することが可能となる、つまり、合成床版150内のCP量を定量評価することができる点が効果として挙げられる。これは、膨張材Dを添加したコンクリートを打設して形成する合成床版150の製造方法において、JIS法膨張性試験の結果と、床版上縁のCP量との関係式を求め、関係式より、合成床版150を形成するコンクリート135に添加する膨張材Dの量を決定するためである。
【0039】
図9に、膨張材Dの量を推定する際に関連する事項の関係図を示す。出願人が確認したところによれば、実構造物である合成床版150の歪み分布は、後述するミニモデル200の歪み分布と近似する関係にある。これは、合成床版150を模したミニモデル200において仕事量一定則から得られた解析による歪み分布と実測の歪み分布が近似しているためで、合成床版150の部分モデルで更に確認したことによる。そして、このミニモデル200と、JIS法膨張性試験との関連性に関しては、後述する
図8で示される通りである。
【0040】
そして、膨張コンクリート固有の化学エネルギー量が一定であることを示す「仕事量一定則の概念」を用いることで、ミニモデル200の上縁のCP量を想定することができることになる。そして、
図2に示すようなCP量と長さの変化率との関係図が求められる。この結果、ミニモデル200を形成する際に用いたコンクリートに添加した膨張材Dの添加量にて得られるCP量が判明する。これは
図2に示す通りである。つまり、
図2に示される相関関係(関係式)を用いることでJIS法膨張性試験の結果を用いて、合成床版150に用いるコンクリート135内に生じるCP量が想定でき、そこから膨張材Dの適切な添加量を導くことが可能となる。
【0041】
続いて、
図2に示す相関関係が成り立つ理由についてもう少し詳しく説明していく。まず、ミニモデル200とJIS法膨張性試験との相関についてである。
図4に、合成床版150のミニモデル200の正面断面図を示す。
図5に、
図4のAA断面図を示す。
図6に、
図4のBB断面図を示す。
図7に、
図4のCC断面図を示す。
図8に、ミニモデル200の歪みと膨張性試験の結果との相関についてのグラフを示す。ミニモデル200は、合成床版150の一部構造を簡略化したモデルであり、底鋼板120に相当する床板220の両端に仕切壁201をそれぞれ溶接して配置し、仕切壁201には鉄筋130に相当するネジ部を備えた鋼棒131が2本固定される。一方の仕切壁201には備えた鋼棒131をネジ止めするため、ナット202が溶接されて固定されている。他方の仕切壁201には、鋼棒131が貫通されて両端をナット202でロックされている。
【0042】
床板220には、4カ所にスタッドジベル125に相当するM6の寸切りボルト225が溶接され、2カ所に横リブ115に相当する横リブ215が溶接されている。また、
図5乃至
図7に示される様に、横板204が設けられている。つまり、ミニモデル200はちょうど上面が開放された箱状に形成され、鉄筋130に相当する鋼棒131が配置されている。仕切壁201にはそれぞれ中央部にゲージプラグ205が設けられている。ミニモデル200に用いられる材料は、合成床版150に用いられる材料に準拠する。この様な構造のミニモデル200に、コンクリートを打設する。そして、それぞれの仕切壁201に設けられたゲージプラグ205を用いてミニモデル200の中央に生じる歪みを計測する。
【0043】
図8は、縦軸に「ミニモデルの歪み」を示し、横軸に「JIS A 6202Bによる長さ変化率」を示している。
図8中の破線又は一点鎖線で示される直線はそれぞれULがミニモデル200の上縁の解析上の理論値を示し、CLがミニモデル200の中央部の理論値を示し、DLがミニモデル200の下縁の理論値を示している。前述したミニモデル200に用いるコンクリートは、膨張材Dの添加量を変えて歪みを調査している。膨張材Dを添加しないミニモデルの結果を「0kg/m
3」とし、その他に膨張材Dを「20kg/m
3」添加、「25kg/m
3」添加、及び「30kg/m
3」添加した結果を示している。ここで、単位量(kg/m
3)は、1m
3に含まれる膨張材の重量を示している。
【0044】
ミニモデル200には、この膨張材Dの添加量を変えた4種類のコンクリート135をそれぞれ打設して、ゲージプラグ205を用いて歪みを計測した。この結果、
図8に示すような結果が得られ、「0kg/m
3」、「20kg/m
3」、「25kg/m
3」及び「30kg/m
3」の時間経過と共に示される歪みは、何れも中央の計算値で示されるCLに良く近似していることが分かった。また、「0kg/m
3」、「20kg/m
3」、「25kg/m
3」及び「30kg/m
3」のそれぞれコンクリート135に添加する膨張材Dの量の違いで、長さ変化率が異なることも
図8より確認ができる。したがって、
図9に示したミニモデル200とJIS法膨張性試験の結果との相関関係が確認できることとなる。
【0045】
なお、ミニモデル200から得られる歪みは、前述の
図4等に示される様にミニモデル200の中央部分にてゲージプラグ205によって検出されるため、CLと近似するのであれば、相関関係があると言える。つまり、この膨張材Dの添加量を変えて実験したデータの何れも計算値との整合がとれており、ミニモデル200とJIS法膨張性試験との相関が確認出来る。この結果、ミニモデル200の中央の歪みデータと膨張性試験における計算値との相関関係が確認でき、上縁はULと、下縁はDLと同様の相関関係が生じると想定される。
【0046】
こうして、
図2に示される様な合成床版150の上縁のCP量と、JIS法膨張性試験の結果として得られる長さの変化率の相関関係を用い、コンクリート135に添加する膨張材Dの添加量を決定することができる。具体的には、
図8に示した「20kg/m
3」の膨張材Dをコンクリート135に添加したケースに比べ、「30kg/m
3」の膨張材Dをコンクリート135に添加したケースの方がコンクリート135に導入されるCP量が多くなっていることが分かり、又、収縮補償の範囲内に収まっていることが分かる。この様に、最適な膨張材Dの添加量を決定でき、合成床版150のひび割れ耐性の向上に寄与することができる。なお、収縮補償の範囲を超える膨張材Dの添加量については、圧縮強度低下が発生しない範囲であれば用いることが可能である。
【0047】
従来は、コンクリート135に「20kg/m
3」の膨張材Dを添加することが一般的であり、収縮補償の範囲として
図2に示される「仕様範囲」の範囲内でケミカルプレストレスが生じるものと想定して膨張材Dが添加されていた。しかし、膨張材Dの添加量を「20kg/m
3」としていたため、実際のコンクリート135の膨張率は工事ごとに仕様範囲の幅で変化する問題があった。また、膨張材Dによって導入されるケミカルプレストレスの測定や推定は困難であった。ケミカルプレストレスは、コンクリート打設時に予め添加した膨張材Dの働きによって、コンクリートの長期の乾燥収縮に対して抵抗力を持たせる手法であり、合成床版150の耐ひび割れ性能を向上させることができる。
【0048】
しかし、コンクリート135への膨張材Dの添加量は「20kg/m
3」とされているため、現場によっては膨張材Dを添加したにも関わらずひび割れ耐性の低い状態となるケースがあるものと考えられる。これは、コンクリート135の材料に現地の素材を使ったり、現地の環境の変化に影響されたりするところが大きい。JIS法膨張性試験は鉄筋130などを用いない場合のコンクリートの長さの変化率を求める手法である。しかしミニモデル200が示すように合成床版150は横リブ115やスタッドジベル125、及び鉄筋130などが複雑に配置される構成となっている。よって、単純に膨張性試験を用いた計算結果から実際の構造物中に生ずるケミカルプレストレスを想定することは難しいと考えられていた。
【0049】
だが、
図8に示すミニモデル200を用いた試験でも確かめられた通り、コンクリート135と相関関係のあるミニモデル200の歪み測定結果と、JIS法膨張性試験の結果にも相関関係が確認されている。よって、合成床版150を施工するにあたり、JIS法膨張性試験の結果を用いて
図2の相関関係を利用することで、コンクリート135のCP量が想定でき、この結果から、膨張材Dの添加量を決定することが可能となる。
【0050】
また、合成床版150の構成がほぼ同じであり同様の剛性を有する構造物であればミニモデル200を作り直さずともJIS法膨張性試験を行うことで、コンクリートに添加する最適な膨張材Dの添加量を決定することができる。この為、JIS法膨張性試験だけで合成床版150のコンクリート135を打設するにあたって最適な添加量を決定することが可能となり、ひび割れ耐久性の高い合成床版150の形成を可能とする。なお、第1実施形態の手法は合成床版150だけでなく、合成床版150を含むコンクリート構造物にも幅広く対応可能である。
【0051】
次に、本発明の第2の実施形態について図面を用いて説明を行う。なお、第2実施形態は第1実施形態とほぼ同じ構成であるが、その作業手順などが異なる。以下に説明する。
【0052】
図10に、第2実施形態の作業手順に関するフローチャートを示す。なお、説明の都合上手順を簡略化して説明している。
図3に示す第1実施形態のフローチャートとの最大の違いは、試験練りを開始するにあたって収縮補償の範囲内で行うか否かである。第1実施形態では、上述した3配合で試験練りを行うが、第2実施形態では、基準配合(20kg/m
3)にて試験練りを行う。これは、予め収縮補償の範囲が設定されていないケースも想定されるためである。そして、基準配合のσ7などの値を見て、試験練りに用いるコンクリート135に加える膨張材Dの配合量を決定する。
【0053】
S20では、試験練りを行う。コンクリートに膨張材Dを20kg/m
3使用した配合の試験練りを行う。ここで、後に圧縮強度を測定するための管理用供試体も作成する。そしてS21に移行する。S21では、ひび割れ指数の設定を行う。構造物に対して目標とするひび割れ指数の設定を行う。例えば、ひび割れを防止したい場合には、ひび割れ指数を1.85以上に、ひび割れを出来る限り抑制したい場合には、ひび割れ指数を1.40以上などと設定する。そしてS22に移行する。S22では、引張応力度の低減量検討を行う。S21で設定されたひび割れ指数を満足する引張応力度の低減量を算出する。これは必要なCP量を算出することで実現され、構造形式による要因や、打設順序による要因などを検討する。そしてS23に移行する。
【0054】
S23では、必要膨張材量の算定を行う。そしてS24に移行する。S24では、試験練りを行う。S23で算定した膨張材Dの量をコンクリートに配合して試験練りを行う。そして、材齢7日の管理用供試体を用いて圧縮強度を調査し、JIS膨張性試験を行う。そしてS25に移行する。S25では、基準配合のσ7に対して著しい強度低下がないかを判断する。S24で行った試験練りの結果、σ7の値により著しい強度低下を認める場合にはS21で再度ひび割れ指数から見直す。σ7の値に問題が無ければS26に移行する。
【0055】
S26では、材齢7日における膨張率は、必要量を満足するかを判断する。必要量を満足しない場合にはS21で再度ひび割れ指数から見直す。必要量を満足すれば、S27に移行する。S27では、σ28は、呼び強度以上かを判断する。ここで材齢28日の管理用供試体を用いて圧縮強度の試験を行い、σ28の数値を得る。その上で、σ28の圧縮強度が呼び強度より低下する場合にはS21で再度ひび割れ指数から見直す。σ28の圧縮強度が呼び強度より高ければ、S28に移行する。S28では、使用量の配合を決定する。そして処理を終了する。
【0056】
第2実施形態は上記構成であるので、第1実施形態と同様の作用及び効果を奏する。また、第2実施形態では第1実施形態と異なり、収縮補償の範囲が設定されていない、あるいは収縮補償の範囲を超える膨張材Dの添加を行うようなケースを想定している。よって、それまでに実績のないコンクリート構造物を作る際には、この手法を用いることで、効果的に耐ひび割れ性能を向上させることが可能となる。ここでいうコンクリート構造物とは、鋼とコンクリートを組み合わせた構造物全般を指す。例えば、橋梁100を含む鉄筋コンクリート構造物などが該当する。
【0057】
次に、本発明の第3の実施形態について図面を用いて説明を行う。なお、第3実施形態は第1実施形態とほぼ同じ構成であるが、JIS法膨張性試験の結果ではなく、軽量鋼製型枠を用いた簡易な拘束試験方法(以下、軽量型枠法とする)により求められる長さの変化率を使用する点で異なる。以下に説明する。
【0058】
軽量型枠法は、ブリキ製の軽量鋼製型枠(サミット缶)の中央部に歪みゲージを貼り付け、型枠の歪みを測定する方法である。なお、SGモールド缶でもサミット缶でも同様に管理用供試体とすることができる。
図11は、第3実施形態の、軽量型枠法から得られた膨張率を使用した断面解析結果と大型試験体(合成床版150の部分モデル)のひずみ値との相関を示すグラフである。
図11で示す通り、「解析値」として示す断面解析結果と、「実測値」として示す大型試験体のひずみは高い相関を示していることが分かる。この事から合成床版150内に直接ひずみ計を設置しなくとも、軽量型枠法から得られる膨張率を基に断面解析を行うことで構造物内の歪み分布を推定できる事が分かる。また、歪み分布より構造物の表面に対するCP量及び収縮補償ひずみの数値化が可能となる。
【0059】
図12に、軽量型枠法による歪みとJIS法膨張性試験の結果との関係をグラフに示す。
図13に、合成床版150の上縁のCP量と軽量型枠法における管理用供試体の長さの変化率との関係をグラフに示す。
図12に示されるように、材齢7日の試験結果はJIS法膨張性試験の歪みの値と軽量型枠法による歪みの値に近似する関係にあることが確認される。そして、第1実施形態の
図2と同様に、
図13に示される様にCP量と軽量型枠法による歪みの値とに相関関係が確認される。
【0060】
つまり、第1実施形態のJIS法膨張性試験の代わりに軽量型枠法を用いて、コンクリート135に添加する膨張材Dの添加量を決定することができる。実験の結果、軽量型枠法はJIS法膨張性試験に比べて若干小さな値を示す傾向にはあったが、概ね同じ傾向を示した。そして、軽量型枠法の方が、より実物の合成床版150の挙動に近くなるので、より正確な結果が期待出来る。これは、JIS法膨張性試験が水中養生であるのに対し、軽量型枠を用いた拘束膨張試験が封緘状態での養生を採用するため、実際の合成床版150の挙動と近くなった為だと考えられる。なお、橋梁100の構造など条件が変わるとJIS法膨張性試験の結果の方が実物との挙動に近くなることも分かり、軽量型枠法とJIS法膨張性試験のいずれでも第1実施形態または第2実施形態への適用が可能である。
【0061】
また、軽量型枠法はJIS法膨張性試験に比べて簡易な方法で行うことができる。これは、軽量型枠法が直径100mm程度の金属缶の中に膨張材Dを添加したコンクリートを封入するといった手法で行われる為であり、実験にかかるコストもJIS法膨張性試験に比べて安価で済む。よって、現場で容易に実施可能である点も含めて大きなアドバンテージが得られる。つまり、現場毎に軽量型枠法を用いて膨張材Dを決定することができる為、より適切なCP量をコンクリート135に与えることができ、合成床版150の耐ひびわれ特性を向上させることが可能となる。
【0062】
次に、本発明の第4の実施形態について図面を用いて説明を行う。第4実施形態は、第1実施形態乃至第3実施形態の合成床版150の製造方法、或いはそれを他のコンクリート構造物に適用する製造方法を、合成床版150の現場打設においても適用した事例である。
【0063】
図14に、第4実施形態の作業手順に関するフローチャートを示す。S30では、現場での打設を行う。この際に、SGモールドまたはサミット缶を必要な数だけ用意する。また、簡易型歪計測器を用意する。そして、SGモールド又はサミット缶にコンクリートを詰め、軽量鋼製型枠を用いた簡易な拘束試験方法(以下、軽量型枠法とする)に用いる管理用供試体を作成する。そして、S31に移行する。S31では、各材齢の歪・圧縮強度の計測を行う。材齢3日、材齢7日、材齢14日、材齢28日など、各材齢の歪みを計測する。そして、S32に移行する。
【0064】
S32では、各材齢の計測歪みを入力値として解析をおこなう。そして、S33に移行する。S33では、歪み分布を出力する。S32で行われた解析によって得られた結果を歪分布として出力する。そして、この歪分布によりCP量を算出し、残存CP量を確認する。そして、S34へ移行する。S34では、ひび割れの予測を行う。将来の歪み値の予想をした上で、将来の歪み値に対する残存CP量を算出し、ひび割れが発生するかを予想する。ひび割れが予想される場合には対策を実施する。そして、処理を終了する。
【0065】
このように、第4実施形態の構成を有することで、以下に説明するような作用及び効果を奏する。第4実施形態の合成床版150に関する管理方法を用いることで、合成床版150のコンクリート135表面に生じるひび割れを将来的に予測し、適切な対策を採ることが可能となるので、合成床版150の寿命を延ばすことに貢献することが可能となる。具体的な合成床版150の寿命を延ばす対策については、例えば、ひび割れが予測された段階で、湿潤養生期間の延長や、コンクリート表面に塗布皮膜養生剤や収縮低減剤を塗布することで、更なる乾燥収縮の増加を防止することが考えられる。また、合成床版150の内部に生じる歪みの増大が外部の応力によって引き起こされているものだと推定されれば、その外部応力に抗するような構造部材の追加などを行うことが想定される。
【0066】
従来は、現場でコンクリートの膨張率を管理する場合には、JIS A 6202Bに準拠した管理用供試体を現場で採取し、材齢1日まで現場で養生し、その後、膨張率、圧縮強度などが測定できる試験機関に持ち込んで、20℃環境下で水中養生し、各材齢での膨張率や圧縮強度の測定を行っていた。この手法の場合は、JIS規格に準じて養生温度が一定となることが特徴だが、現場での養生環境とは異なる為、その結果をそのまま使用して合成床版150の寿命を延ばす対策を講じることは困難であった。その点、第4実施形態の合成床版150の管理方法では、軽量鋼製型枠を用いた簡易な拘束試験方法を使用し、現場での養生環境に近い結果を実現できるため、より精度の高い対策を講じることが可能となっている。
【0067】
以上、本発明に係る合成床版150の製造方法の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、合成床版150の構造及びミニモデル200の構造に関しては、適宜変更することを妨げない。また、合成床版150の構成は、
図1に示す通りであるが、この他の構成を採る合成床版にも本発明を適用可能である。また、第2実施形態で言及する通り、合成床版150以外のコンクリート構造物に対しても本発明を適用可能である。また、第3実施形態で説明しているが、第1実施形態または第2実施形態にJIS法膨張性試験ではなく、軽量型枠法を用いても良い。また、JIS A 6202B法での試験結果を示しているが、JIS A 6202A法を試験方法に用いても良い。