特許第6564233号(P6564233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564233
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】手すり用接続具
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20190808BHJP
   F16B 7/18 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   E04F11/18
   F16B7/18 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-93920(P2015-93920)
(22)【出願日】2015年5月1日
(65)【公開番号】特開2016-211182(P2016-211182A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2018年4月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】591145461
【氏名又は名称】榎本金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103654
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100165755
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 典彦
(72)【発明者】
【氏名】石川 修三
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 明峰
(72)【発明者】
【氏名】浦野 宣昭
【審査官】 前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−186405(JP,A)
【文献】 特開平08−302632(JP,A)
【文献】 実開昭58−030307(JP,U)
【文献】 特開2005−068761(JP,A)
【文献】 特開平11−006267(JP,A)
【文献】 米国特許第04150907(US,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2004−0027574(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する手すり部材の対向端部を嵌入固定し得る第一手すり接続部と第二手すり接続部からなり、前記第一手すり接続部が略半球面状の凸部材と、前記第二手すり接続部が前記凸部材を嵌合する凹部材と、前記凸部材から延設した突出部と、前記凹部材が前記突出部を嵌入し得る溝と、を有し、前記突出部を前記溝に嵌入保持した状態で摺動自在に連結し
前記第一手すり接続部と前記第二手すり接続部を嵌合して接続した前記凸部材と前記凹部材間の嵌合空間に弾性部材が位置し、前記弾性部材が前記凹部材の外周面に沿って形成され、前記弾性部材と前記凸部材または凹部材の間に空隙を備え、
前記凹部材は、前記弾性部材を前記凹部材の外周面に沿って固定するための小孔を有し、
前記弾性部材は、前記凸部材及び前記凹部材の外周面に沿う殻状体であり、周縁部のみが前記凸部材の外周面に接し、前記凹部材の前記小孔に嵌入する突起と、前記凸部材の前記突出部を前記凹部材の前記溝への嵌入するための長孔と、を有すること、を特徴とする手すり用接続具。
【請求項2】
突出部に固定具支持部を設け、固定具で押え部材を前記固具支持部で固定し、前記押え部材で凹部材の内周面を押さえることで、突出部を溝に嵌入保持せしめることを特徴とする請求項1記載の手すり用接続具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段や廊下などに設置する手すりを任意の角度で接続して取り付けることのできる手すり用接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接する手すり部材を接続する手すり用接続具として、隣接する手すり部材の対向端部を嵌入固定し得る2つの手すり接続部からなり、その手すり接続部同士を嵌合した状態で摺動可能にする連結具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11―6267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この手すり用接続具の接続部同士は連結具の両端に備えられた押え部材によって連結されているものであり、この押え部材は樹脂材等を主体として形成され、摺動することを可能としている。
【0005】
しかしながら、このような押え部材により接続部同士を摺動可能で適度な摩擦力を有しながら固定するには、押え部材を接続部の内周面へ圧入して調整する必要があった。そのため、第一に、接続部の形状(製造時に発生する形状の誤差などを含む)ごとに押え部材の圧入を調整すること、第二に、その圧入を連結具両端に備える押え部材に対して行うこと、が必要であり摩擦力の調整が難しいのみならず、組み立て作業に手間が掛かるという欠点があった。
【0006】
これらの欠点を解消するべく、本発明では、摺動可能な摩擦力を発生するための部材と、接続部から延設された突出部による連結部材と、をそれぞれ独立に備えることで、組立作業と、摺動可能な摩擦力の調整と、を容易に実施することができる手すり用接続具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題に鑑み、隣接する手すり部材の対向端部を嵌入固定し得る第一手すり接続部と第二手すり接続部からなり、前記第一手すり接続部が略半球面状の凸部材と、前記第二手すり接続部が前記凸部材を嵌合する凹部材と、前記凸部材から延設した突出部と、前記凹部材が前記突出部を嵌入し得る溝と、を有し、前記突出部を前記溝に嵌入保持した状態で摺動自在に連結し
前記第一手すり接続部と前記第二手すり接続部を嵌合して接続した前記凸部材と前記凹部材間の嵌合空間に弾性部材が位置し、前記弾性部材が前記凹部材の外周面に沿って形成され、前記弾性部材と前記凸部材または凹部材の間に空隙を備え、
前記凹部材は、前記弾性部材を前記凹部材の外周面に沿って固定するための小孔を有し、
前記弾性部材は、前記凸部材及び前記凹部材の外周面に沿う殻状体であり、周縁部のみが前記凸部材の外周面に接し、前記凹部材の前記小孔に嵌入する突起と、前記凸部材の前記突出部を前記凹部材の前記溝への嵌入するための長孔と、を有すること、
を特徴とする手すり用接続具である。
【0008】
また、上述した構成に加え、突出部に固定具支持部を設け、固定具で押え部材を前記固具支持部で固定し、前記押え部材で凹部材の内周面を押さえることで、突出部を溝に嵌入保持せしめることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の発明によれば、凸部材から延設された突出部が凹部材の溝に嵌入保持された状態で第一手すり接続部と第二手すり接続部とが嵌合しているため、第一手すり接続部に対して押え部材を必要とせず構造が簡単になり、容易に組み立てることが可能である。
【0010】
また、請求項1記載の発明によれば、突出部の高さに応じて、第一手すり接続部の凸部材と第二手すり接続部の凹部材間に一定の嵌合空間を設けることが可能である。この嵌合空間は、摩擦力を調整する一定の形状で形成された部材を挟み込むためのものであるとともに、弾性体を嵌合空間に挟み込むことができ、弾性体と凸部材または凹部材との接する面に空隙を設けることで摺動可能な摩擦力に調整することができる
【0011】
請求項2記載の発明によれば、第一手すり接続部の凸部材から延設された突出部と第二手すり接続部の凹部材の内周面を押える押え部材は固定具により固定されているため、押え部材を圧入して調整することなく、凸凹両部材間の一定の嵌合空間を設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態における手すり用接続具Aを手すり部材とともに示す分解斜視図である。
図2】本発明の実施形態における手すり用接続具Aを示す(a)正面図、(b)殻状体の弾性部材が嵌合空間に挟まれた状態の中央横断面図、(c)波状の断面形状を有する弾性部材が嵌合空間に挟まれた状態の中央横断面図、である。
図3】本発明の実施形態における手すり用接続具Aを鈍角に固定した状態を手すり部材とともに示す(a)正面図、(b)中央縦断面図である。
図4】本発明の実施形態における手すり用接続具Aを直角に固定した状態を手すり部材とともに示す(a)正面図、(b)中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図1ないし図4に基づいて詳細に説明する。ここに例示する手すり接続具Aは、図1に示すように、隣接する手すり部材の対向端部を嵌入固定し得る第一手すり接続部1と第二手すり接続部2からなり、その第一手すり接続部1が略半球面状の凸部材1aと、第二手すり接続部2が前記凸部材1aを嵌合する凹部材2aと、前記凸部材1aから延設した突出部1bと、前記凹部材2aが前記突出部1bを嵌入し得る前記溝2bと、を有し、突出部1bを溝2bに嵌入保持して連結した状態であり、嵌合空間に弾性部材を挟み込むことで摺動自在にしたものである。
【0014】
第一手すり接続部1は、略半球状の凸部材1aの反対側の端部に円筒状筒体1cが設けられており、隣接する手すり部材9の対向端部を挿入し、固定ねじ6で固定する。
【0015】
このとき、円筒状筒体1cは、欠損円筒状筒体1cと手すり固定部1cとに分割して、固定ねじ7を欠損円筒状筒体1cの雌ねじ部1eに螺着することで両者を固定して一体とする。
【0016】
そして、この円筒状筒体1cの軸方向の凸部材1aには、固定具支持部1bである雌ねじ部を有する円筒状筒体からなる突出部1bを延設されている。
【0017】
上述した構成から、凸部材1aから延設された突出部1bが一体として形成されていることから、凹部材2aの溝2bへの嵌入保持する状態において、その突出部1bの高さに応じて、凸部材1aと凹部材2aとの間に一定の嵌合空間を設けることができる(例えば、図2(b)、図2(c)参照)。つまり、突出部1bが一定の嵌合空間を有するように、その突出高さを設けているのであり、突出部1bに固定具3であるねじを強固に締め込んだ場合であっても、一定の嵌合空間が確保できる。従来の接続具では使用者、施工者による押圧部材の圧入する加減で当該空間の大きさが決まっていたため、摺動が円滑になされない場合があったが、本実施形態では、このような不都合がない。
【0018】
また、突出部1bは凸部材1aと一体的に形成されていることから、凸部材1a側の内周面を押える押え部材を必要せず、また、固定具3、押え部材4や固定具支持部1bは固定ねじ、座金や雌ねじ部などの汎用性の高い部品を用いることができるため、安価で容易に組み立てることができる。
【0019】
また、あらかじめ壁に取り付けた手すり支持部との固定する方向に合わせて第一手すり接続部1を軸方向に摺動回転させ、第一手すり接続部1の固定ねじ7を外して手すり部材9と手すり固定部1cとが欠損円筒状筒体1cを分離させることで、手すり支持部と手すり部材9の取り付けや取り外しが簡単に施行でき、かつ、手すり固定部1cと手すり部材9の固定ねじ6を繰り返し取り付けることによる手すり部材9の劣化を防ぐことができる。
【0020】
第二手すり接続部2には、凸部材1aを嵌合する凹部材2aの反対側の端部に円筒状筒体2cが設けられており、この円筒状筒体2cに隣接する手すり部材10の対向端部を嵌入し、固定ねじ8で固定する。
【0021】
そして、凹部材2aには、円筒状筒体2cの軸方向と交差するように凹部材2a上に溝2bと、弾性部材5を凹部材2aの外周面に沿って固定するための小孔2dと、が形成されている。
【0022】
上述した構成から、凸部材1aを嵌合するように形成した凹部材2aと、その凹部材2aの溝2bへ突出部1bを嵌入保持した状態で、溝2bに沿って摺動させることで、第一手すり接続部1と第二手すり接続部2とを任意の角度に変更することが可能である。例えば、図3では鈍角に固定し、図4では直角に固定している状態を示す。
【0023】
また、凹部材2aの小孔2dで嵌合空間に挟み込む弾性部材5を固定して、摺動時に凹部材2aの外周面に弾性部材5が追従することで、嵌合空間から露出しないようにすることができる。つまり、図3図4に示すように、摺動にあたり、凸部材1aは露出する部分が移動するためである。
【0024】
弾性部材5は、凸部材1a及び凹部材2aの外周面に沿う殻状体であり、この弾性部材5には凹部材2aと接する面に突起5bと、突出部1bを溝2bへの嵌入することを妨げないような大きさの長孔5aと、が設けられている。この突起5bを凹部材2aの小孔2dへと嵌入して、弾性部材5と凹部材2aとを摺動させずに、追従するように固定することができる。
【0025】
このとき、弾性部材5の殻状体は、嵌合空間に挟み込まれている状態において、凸部材1aまたは凹部材2aの外周面の一部と接し、それ以外の部分とは空隙を有する形状であることが好ましい。例えば、図2(b)の拡大断面図Bに示すように、略半球面状でその周縁部5cのみが凸部材1aの外周面に接しているものや、図2(c)の拡大断面図Cに示すように、断面形状が波状で、波の頂点が凸部材1a又は凹部材2aの外周面上に接しているものであってもよい。
【0026】
上述した構成から、突出部1bを溝2bへ嵌入保持することを妨げないで、設けられた一定の嵌合空間に、一定の大きさを有する殻状体の弾性部材5を挟み込むことができる。
【0027】
また、この弾性部材5の反発力に応じて摩擦力が凸部材1aと凹部材2aに生じる。この弾性部材5の殻状体と凸部材1aと凹部材2aとの接する面の形状によって、生じる摩擦力を調整することが可能である。例えば、殻状体の周縁部5cのみ接した状態で摺動可能な摩擦力を生じるように形成した弾性部材5を用いることで、容易に組み立てることが可能である。
【0028】
したがって、第1手すり接続部1から延設された連結部材である突出部1bと、摺動可能な摩擦力を発生するための部材である弾性部材5をそれぞれ独立に備えることで、従来の連結具及び押え部材の圧入による摺動可能な摩擦力の調整を必要とせず、組立作業と、摺動可能な摩擦力の調整と、を容易に実施することができる手すり用接続具を提供することが可能である。
【0029】
上記の実施形態では本発明の好ましい実施形態を例示したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で改善や変更が可能である。例えば、第一手すり接続部1に設けた手すり固定部1cを第二手すり接続部2に設けること、凹部材2aに突出部1bを延設し凸部材1aに溝2b備えること、も可能であり、また弾性部材5を内部に空隙を有するようなスポンジ状のものとすることも可能である。
【符号の説明】
【0030】
A…手すり用接続具、1…第一手すり接続部、1a…凸部材、1b…突出部、1c…円筒状筒体、1c…欠損円筒状筒体、1c…手すり固定部、1b…固定具支持部、1e…雌ねじ部、2…第二手すり接続部、2a…凹部材、2b…溝、2c…円筒状筒体、2d…小孔、3…固定具、4…押え部材、5…弾性部材、5a…長孔、5b…突起、5c…周縁部、6、7、8…固定ねじ、9、10…手すり部材、B、C…拡大断面図
図1
図2
図3
図4