(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主局は、車両の車上に設置され、前記各従局から受信した前記台車の情報を記録し、前記各従局にデータ送信周期を指示する周期情報を送信するように構成され、蓄積された前記台車の情報の量が多い従局のデータ送信周期を長くし、蓄積された前記台車の情報の量が少ない従局のデータ送信周期を短くする、請求項1に記載の車両監視システム。
前記センサは、車輪にかかった輪重及び横圧を車両側で測定して軌道の状態を監視するための輪重センサ及び横圧センサと、車軸の温度を監視するための温度センサと、台車の振動を監視するための加速度センサとを含む、請求項1または2に記載の車両監視システム。
前記複数の従局は、前記輪重センサ及び横圧センサと、この輪重センサ及び横圧センサで検知した情報を処理する軌道用処理装置と、該軌道用処理装置による処理結果を送信し、前記主局からの周期情報を受信する軌道用無線機とを備える軌道監視装置と、
前記温度センサと、前記加速度センサと、これら温度センサと加速度センサで検知した情報を処理する車両用処理装置と、該車両用処理装置による処理結果を送信し、前記主局からの周期情報を受信する車両用無線機とを備える複数の車両監視装置とを含む、請求項3に記載の車両監視システム。
前記軌道監視装置は、他の従局を経由せずに主局へ伝送できる距離以内の台車に設置され、前記輪重センサ及び横圧センサで検知した輪重及び横圧から算出した脱線係数データを前記軌道用無線機で前記主局に送信し、
前記複数の車両監視装置は、複数の台車に設置され、前記温度センサと前記加速度センサから得た温度データと加速度データを前記車両用無線機で送信する、請求項4に記載の車両監視システム。
前記脱線係数データ、前記温度データ及び前記加速度データの各々の閾値を予め設定可能に構成され、前記閾値を超えた場合に前記各従局の軌道用無線機または車両用無線機から異常情報を発報する、請求項5に記載の車両監視システム。
前記車両用無線機は、前記従局間の距離の少なくとも2倍の距離に対してデータの送受信が可能であり、前記主局は同一のデータを受け取った場合に重複しているデータを破棄する、請求項4乃至6いずれか1項に記載の車両監視システム。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
本実施形態に係る
車両監視システムは、
連結車両、例えば列車に適用されるもので、図1に示す如く、主局MSと複数の従局SS1,SS2,SS3,SS4,…とが無線マルチホップネットワークで結合されて構成される。主局MSは、例えば先頭車両T1の運転台に設置され、従局SS1,SS2,SS3,SS4,…は、車両T1,T2,…の台車B1,B2,B3,B4,…にそれぞれ設置される。
【0010】
各従局SS1,SS2,SS3,SS4,…は、センサで検知した台車B1,B2,B3,B4,…の情報を無線送信すると共に、これら台車の情報を処理し、車両T1,T2,…または軌道RLの異常を判定して異常情報を無線送信する。主局MSは、各従局SS1,SS2,SS3,SS4,…における台車B1,B2,B3,B4,…の情報と異常情報を、無線マルチホップネットワークにより複数の従局を経由して受信し、集約して記録するようになっている。
【0011】
なお、各従局SS1,SS2,SS3,SS4,…から主局MSに直接無線で通信することも考えられるが、このような強い電波の使用は電波法で規制を受けるため、本実施形態では規制を受けない弱い電波を使用し、複数の従局を経由して通信を行うようにしている。
【0012】
主局MSは、
図2に示すように、制御・処理装置1、無線モデム(無線機)2及び電源部3等が無線筐体4に収められて車上に設置される。無線筐体4の外部の車両下部には速度計6、車上にはGPS7、携帯電話モデム8及び電源9等が設けられる。無線モデム2、GPS7及び携帯電話モデム8にはそれぞれ、アンテナ2a,7a,8a,8bが接続されている。そして、電源9から電源部3を介して各機器や各装置に電力を供給するようになっている。
【0013】
制御・処理装置1には、半導体メモリ等の記憶装置を備えた記録部5が内蔵されている。この記録部5には、各台車B1,B2,B3,B4,…の情報と異常を検知したときの異常情報に加え、速度計6からの速度情報及びGPS7からの位置情報も対応づけて記録される。記録部5に記録された情報は、携帯電話モデム8から携帯電話網を通じて地上装置に伝送される。本例では、記録部5として制御・処理装置1内の記憶装置を用いているが、他の様々な記録装置を用いることができる。
【0014】
図3に示す従局SS1は、温度、加速度及び脱線係数データを主局MSに伝送するものである。この従局SS1は、他の従局を経由せずに直接的に主局MSへ伝送できる距離以内の台車に設置され、列車の1編成に対して1つの台車のみに設けられる。ここでは、主局MSに最も近い台車B1に設けられた例を示している。
【0015】
従局SS1は、制御・処理装置11、無線モデム(車両用無線機)12、無線モデム(軌道用無線機)13、A/Dコンバータ(ADC)14、電源部15及びバッテリ16等が無線筐体17に収められて台車B1に設置されている。台車枠BaのコイルばねBb近傍には加速度センサ18が設けられ、軸箱Bcには温度センサ19が設けられ、輪軸にはP/Qセンサ(横圧センサ及び輪重センサ)20が設けられている。
【0016】
各センサ18〜20の出力(アナログ信号)は、無線筐体17に設けられたコネクタ21を介してA/Dコンバータ14に入力される。各センサ18〜20のデータは、A/Dコンバータ14でアナログ/デジタル変換され、制御・処理装置11でデータ処理される。制御・処理装置11は、P/Qセンサ20で検知した情報を処理する軌道用処理装置と、温度センサと加速度センサで検知した情報を処理する車両用処理装置の両方の機能を持っている。ここでは、制御・処理装置11を軌道用と車両用に用いているが、それぞれに専用の制御・処理装置11を設けても良い。
【0017】
制御・処理装置11の処理結果は、当該制御・処理装置11に内蔵された半導体メモリ等の記憶装置を備えた一時記録部22に記録される。無線モデム12,13は、主局MSからデータ送信を行う周期を指示する周期情報を受信し、制御・処理装置11による処理結果を送信する。すなわち、主局MSで従局SS1のデータ送信タイミングをスケジューリングしており、従局SS1は主局MSでスケジューリングされた周期情報に基づいてデータの伝送を行う。
【0018】
一時記録部22に記録された温度及び加速度データは、周期情報で指示されたデータ送信周期で、無線モデム12からアンテナ12aを介して送信される。また、P/Qセンサ20の出力から制御・処理装置11で算出された脱線係数データは、主局MSからの周期情報で指示されたデータ送信周期で、無線モデム13からアンテナ13aを介して送信される。
【0019】
本例では、従局SS1の動作に必要な電力は、車軸発電機23で賄うようになっており、車軸発電機23で発電した電力を電源部15を介して各機器や各装置に供給する。車両T1,T2,…の停止時や低速走行時等に、車軸発電機23による発電量が不足する場合には、バッテリ16から電力を供給して補う。一方、車軸発電機23の発電量に余裕がある場合には、電源部15を介してバッテリ16を充電しておく。
【0020】
加速度センサ18は台車B1の振動を監視するためのもので、温度センサ19は車軸温度の監視を行うためのものである。P/Qセンサ20は、車輪にかかった輪重及び横圧を車両側で測定して軌道RLの状態を監視するためのもので、制御・処理装置11で輪重と横圧から脱線係数を算出する。そして、従局SS1から主局MSには、温度及び加速度データと脱線係数データの2種類のデータを送信する。
【0021】
温度及び加速度データと脱線係数データは、サンプリング周期や1サンプリング当たりのデータ量が異なる。また、脱線係数データは、ほぼリアルタイムに主局MSに記録させる必要がある。このため、脱線係数データの伝送と温度及び加速度データの伝送を一台の無線機で行うと割り込み等が頻繁に発生する虞がある。そこで、2台の無線モデム12,13を使い、温度及び加速度データを無線モデム12からアンテナ12aを介して送信し、脱線係数データを無線モデム13からアンテナ13aを介して送信するようにしている。
【0022】
図4に示す従局SS2は、温度データと加速度データを、従局SS1を経由して主局MSに伝送するもので台車B2に設置される。ここでは、従局SS2を代表的に示すが、1編成の各台車B3,B4,…に設けられる従局SS3,SS4,…も同様に構成されており、無線マルチホップネットワークにより、順次前段の従局へ温度及び加速度データを伝送し、主局MSに集約するようになっている。
【0023】
従局SS2は、従局SS1における無線モデム13、アンテナ13a及びP/Qセンサ20を除去した構成である。この従局SS2のデータ送信タイミングは、主局MSでスケジューリングされ、スケジューリングされた周期情報に基づいて温度及び加速度データの送信を行う。
他の基本的な構成は従局SS1と同様であるので、同一部分に同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0024】
次に、上記のような構成の
車両監視システムにおけるデータ伝送について説明する。説明を簡単にするために従局が6局であると仮定すると、
図5に模式的に示すように、各従局SS1〜SS6から主局MSへのデータ伝送には、2つの無線チャネルが用いられる。第1の無線チャネルは、従局SS1から主局MSへ脱線係数データを送信するものであり、主局MSに隣接した台車B1のみを対象とする。第2の無線チャネルは、各従局SS6,SS5,…から温度及び加速度データを順次前段の従局へ送信するもので、全ての台車を対象とし、これらのデータを最終的に主局MSへ伝送する。
【0025】
なお、主局MSから従局SS1へデータ送信周期を指示する周期情報の送信は、脱線係数データ用の第1の無線チャネルを用いて行われる。また、主局MSから各従局SS1〜SS6へデータ送信周期を指示する周期情報の送信は、温度及び加速度データ用の第2の無線チャネルを用いて順次後段の従局へ送信することで、最終段の従局SS6まで伝送される。
【0026】
図6(a)は、主局MSから各従局SS1〜SS6へ伝送されるパケットのデータ構造を示しており、本例では1パケットがネットワークID(1byte)、送信アドレス(1byte)、受信アドレス(1byte)及び周期情報(3byte)を含む構成になっている。
【0027】
図6(b)は、従局SS1から第1の無線チャネルで主局MSに伝送されるパケットのデータ構造を示しており、本例では1パケットにネットワークID(1byte)、送信アドレス(1byte)、受信アドレス(1byte)、脱線係数(2byte)、タイムスタンプ(4byte)及び異常判断フラグ(1bit)を含む構成になっている。
【0028】
図6(c)は、従局SS6〜SS1から第2の無線チャネルで主局MSに伝送されるパケットのデータ構造を示しており、本例では1パケットにネットワークID(1byte)、送信アドレス(1byte)、受信アドレス(1byte)、温度(2byte)、加速度(2byte)、タイムスタンプ(4byte)及び異常判断フラグ(1bit)を含む構成になっている。
ここで、脱線係数、温度及び加速度はセンサで検知した実データであり、異常判断フラグは異常を検知したときの異常情報に対応する。
【0029】
図7に示すように、従局SS1から主局MSへ脱線係数データを送信する際には第1の無線チャネルが用いられる。主局MSへ伝送された脱線係数データは、速度計6からの速度情報及びGPS7からの位置情報とともに記録部5に記録される。
【0030】
図8は、
図7に示した脱線係数データの送信動作を示すフローチャートである。まず、台車B1に設置したP/Qセンサ20で横圧と輪重をサンプリングし(ステップS1)、これら横圧データと輪重データをA/Dコンバータ14でアナログ/デジタル変換する(ステップS2)。続いて、制御・処理装置11によりデータ処理を行い、同時刻の横圧Qと輪重Pの値から脱線係数(Q/P)を算出する(ステップS3)。次のステップS4では、時刻と算出した脱線係数データ(計算値)を一時記録部22に記録(記憶装置に蓄積)する。
【0031】
次に、一時記録部22に記録したデータが所定量蓄積したか、換言すれば蓄積したデータ量が1パケットで送信可能な量を超えたか否か判定する(ステップS5)。所定量蓄積した場合(1パケットで送信可能な量を超えた場合)には、算出した脱線係数データを従局SS1の無線モデム13から主局MSへ送信する(ステップS6)。そして、主局MSからの肯定応答(ACK)を受け取ったか否か判定し(ステップS7)、受け取っていれば終了し、受け取っていなければステップS6に戻ってデータを再送信させる。
【0032】
一方、ステップS5で所定量蓄積していない場合には、ステップS1に戻って横圧と輪重のサンプリングを行い、データ処理を行って脱線係数データの蓄積を続ける。
【0033】
第2の無線チャネルは、従局SS6〜SS1から主局MSへ温度及び加速度データを伝送するものである。例えば従局SS6の温度及び加速度データは、
図9(a)〜(c)に示すように、無線マルチホップネットワークにより隣接する従局に順次伝送される。そして、従局SS1から主局MSへ伝送されて速度計6からの速度情報及びGPS7からの位置情報とともに記録部5に記録される。
図9(a)では従局SS6のデータが従局SS5に伝送される様子を示し、
図9(b)では従局SS5に伝送された従局SS6のデータが従局SS4に伝送される様子を示し、
図9(c)では従局SS4に伝送された従局SS6のデータが従局SS3に伝送される様子を示している。従局SS6のデータは、以下、同様にして主局MSまで伝送される。
【0034】
図10は、
図9に示した温度及び加速度データの送信動作を示すフローチャートである。まず、台車B6に設置した温度センサ19と加速度センサ18で温度と加速度をサンプリングし(ステップS11)、検知した温度及び加速度データをA/Dコンバータ14でアナログ/デジタル変換する(ステップS12)。次のステップS13では、時刻と温度及び加速度データを一時記録部22に記録、すなわち記憶装置(ストレージ)に蓄積する。
【0035】
続いて、一時記録部22に記録した温度及び加速度のデータ値が予め設定された閾値より大きいか否か判定する(ステップS14)。温度及び加速度データの各々の閾値は、ユーザが、主局MSから各従局SS1〜SS6の制御・処理装置11に予め設定できるようになっている。そして、温度及び加速度のデータ値がこの閾値よりも大きいか等しい場合には、異常情報送信サブルーチンを実行し(ステップS15)、閾値よりも小さい場合には、通常データ(台車の情報)送信サブルーチンを実行する(ステップS16)。
【0036】
異常情報送信サブルーチンは、
図11に示すように、短時間のキャリアセンスを行い、所定時間内に同一チャネルの電波放射がないか判定する(ステップS21)。ここで、キャリアセンス時間は適用する無線通信規格によって決まっており、「短時間」とは規定される最低限の時間を意味する。
【0037】
同一チャネルの電波放射を検知しない場合には異常情報を生成し、無線モデム12から主局MSに向かってこの異常情報を発報する(ステップS22)。電波放射を検知した場合には、検知しなくなるまでキャリアセンスを繰り返す。次のステップS23では、主局MSからの肯定応答(ACK)を受け取ったか否か判定し、受け取っていればステップS15に戻って終了し、受け取っていなければステップS22に戻ってデータを再送信させる。
【0038】
通常データ送信サブルーチンは、
図12に示すように、まず主局MSより与えられた周期情報の時間に達したか否か判定する(ステップS31)。時間に達した場合には、一時記録部22内のデータを1パケットで送信できる量に分割し(ステップS32)、続いて時刻を含む当該データをフォーマットに当てはめる(ステップS33)。一方、時間に達しない場合には、周期情報の時間に達するまで待機する。次のステップS34では、キャリアセンス(長時間)を行い、所定時間内に同一無線チャネルの電波放射がないか判定する。
【0039】
ここで、「長時間」とは「短時間」よりも十分に長い時間、具体的には10倍程度長い時間を意味する。無線通信規格によって規定される最低限のキャリアセンス時間が128μsと仮定すると、長時間は1.28msである。同一無線チャネルの電波放射がない場合には、無線モデム12からデータ(台車の情報)を主局MSに送信し(ステップS35)、電波放射がある場合には検知しなくなるまでキャリアセンスを繰り返す。
【0040】
次のステップS36では、主局MSからの肯定応答(ACK)を受け取ったか否か判定し、受け取っていればステップS16に戻って終了し、受け取っていなければステップS34に戻って同一無線チャネルの電波放射がない場合にデータを再送信させる。
【0041】
図13は、従局SS4において温度及び加速度データの少なくとも一方の異常が検出された場合における異常情報の送信動作を示している。ここで、E1は従局SS4から従局SS3に異常情報を伝送する動作とタイミングを時間の経過と共に示し、E2は従局SS3から従局SS2に異常情報を伝送する動作とタイミングを時間の経過と共に示している。
【0042】
従局SS4からの異常情報の送信は、当該異常を検知した従局SS4のキャリアセンス時間を短縮することで、隣接する従局SS3のキャリアセンス時間(長時間)が経過して通常データ(台車の情報)を送信する前に、従局SS4から従局SS3に異常情報を伝送するようになっている。すなわち、短時間のキャリアセンスを行い(ステップS41)、異常情報を従局SS4から従局SS3に送信し(ステップS42)、従局SS3から肯定応答(ACK)が帰ってくるまで待機する(ステップS43)。
【0043】
従局SS3では、キャリアセンス中に従局SS4からの電波放射を確認するため、通常データの送信を中断し(ステップS44)、通常データを従局SS2に伝送する前に、この異常情報を受信する(ステップS45)。次のステップS46では、従局SS4に肯定応答(ACK)を送信し、従局SS2に従局SS4から受信した異常情報の送信を開始する(ステップS47)。従局SS4では、肯定応答(ACK)を受信すると(ステップS48)、通常データの送信を再開する(ステップS49)。
【0044】
従局SS3から従局SS2への異常情報の送信は、まず短時間のキャリアセンスを行い(ステップS50)、異常情報を従局SS3から従局SS2に送信し(ステップS51)、従局SS2から肯定応答(ACK)が帰ってくるまで待機する(ステップS52)。そして、従局SS2からの肯定応答(ACK)が帰ってくると、通常データの送信を再開する(ステップS53)。
【0045】
従局SS2では、キャリアセンス中に従局SS3からの電波放射を確認するため、通常データの送信を中断し、通常データを従局SS1に伝送する前に、この異常情報を受信し(ステップS54)、上述したような前段の従局への伝送動作を主局MSまで順次繰り返す。
【0046】
図14は、
図13における異常情報と台車の情報の伝送動作について説明するための模式図である。
図14(a)に示すように、従局SS4で異常を検知した場合には、この従局SS4のキャリアセンス時間を、通常(異常を検知しない場合)の時間t1より短い時間t2にする。キャリアセンス時間が短いことで、従局SS3がキャリアセンス時間を経過する前に、異常情報ERを従局SS3に送信することができ、実線の矢印で示すように、異常情報ERは従局SS2、従局SS1と順次伝送され、主局MSまで伝送される。
【0047】
一方、従局SS3の通常データNDは、
図14(b)に示すように、従局SS4の異常情報ERが先に送信されたことで、次のタイミング(1周期後)に、破線の矢印で示すように従局SS2、従局SS1と順次伝送され、主局MSまで伝送される。
【0048】
図15は、主局MSによるデータ受信動作を示すフローチャートであり、データの重複判定を行っている。各従局SS6〜SS1の無線モデム12から送信されたデータは、隣接する従局だけでなく、更に次の従局まで到達することがある。これは、従局SS6〜SS1間の通信を安定且つ確実にするために、余裕を見込んでいるためである。例えば、従局SS1〜SS6間の距離の少なくとも2倍程度の距離に対して通信が可能な電波を送信する。このような場合には、主局MSは異なる経路で伝送されてきた同一のデータを受け取る可能性がある。そこで、主局MSは同一のデータを受け取った場合に、重複しているデータを破棄することで誤判定を抑制している。
【0049】
主局MSは、各従局SS1〜SS6へ周期情報の送信を開始し(ステップS61)、各従局SS1〜SS6からの肯定応答(ACK)を受信すると(ステップS62)、周期情報の送信を終了する(ステップS63)。そして、各従局SS1〜SS6からの温度及び加速度データの受信を開始する(ステップS64)。次のステップS65に温度及び加速度データを受信すると、データ重複判定サブルーチンを実施する(ステップS66)。
【0050】
データ重複判定サブルーチンでは、
図16に示すように、受信したデータと記録部5に蓄積したデータが一致しているか否か判定する(ステップS71)。この受信データと蓄積データとの照合には、データ本体が一致している場合に、ネットワークID、送信アドレス、受信アドレス及びタイムスタンプの合致を判定することで、同一の従局から送信されたデータであることを確認する。そして、一致している場合にはデータが重複しているので受信データを破棄し(ステップS72)、一致していない場合には受信データを蓄積し(ステップS73)、ステップS66に戻る。
【0051】
ステップS67では、記録部5に所定量のデータが蓄積されたか否か判定し、蓄積されたと判定されるとセンサからのデータの受信を終了し(ステップS68)、蓄積されていない場合には、所定量に達するまでデータの蓄積を続行する。そして、各従局SS1〜SS6からのデータ量に応じて周期情報の更新を行う(ステップS69)。
【0052】
ステップS69の周期情報の更新では、データ送信周期の制御による従局間のデータ量の均一化を行う。すなわち、各従局SS1〜SS6の周期情報は異なるため、例えば
図17に示すように、時間の経過と共に従局毎に蓄積されるデータ量が違ってくる。また、最後尾の従局SS6からデータを伝送すると、従局SS5〜SS1を順次伝送されるため伝送に時間がかかる。この遅延時間の間にもデータは各従局SS5〜SS1に蓄積されるため、伝送データ量が大きく異なることになる。
【0053】
そこで、データ量に応じて各従局SS1〜SS6のデータ送信周期を変更し、データ量の少ない従局のデータ送信周期を短く、データ量の多い従局のデータ送信周期を長くすることで、各従局SS1〜SS6のデータ量ができるだけ等しくなるように制御する。
【0054】
上記のような構成の
車両監視システムによれば、主局MSと従局SS1,SS2,SS3,SS4,…とをマルチホップ無線ネットワークで結合したので、保守点検において車両T1,T2,…と台車B1,B2,B3,B4,…を自由に切り離すことができ、組み合わせる際にはケーブルの取り回しが不要であるので保守性を向上できる。
【0055】
また、台車B1,B2,B3,B4,…に設置したセンサ18,19,20のデータを従局SS1,SS2,SS3,SS4,…でそれぞれ収集し、各従局を順次経由して主局MSに伝送して記録することで、列車の1編成全体に対して連続的にデータの集約を行うことができる。しかも、データの記録部5は列車の1編成に対して主局MSの1箇所のみに設ければ良く、各従局SS1,SS2,SS3,SS4,…の一時記録部22は記憶容量が小さなもので済む。
【0056】
従局SS1,SS2,SS3,SS4,…で異常が検知された場合に、当該従局のキャリアセンス時間を短くし、隣接する従局の台車の情報より前に異常情報を伝送することで、異常が発生した従局の情報を優先して主局MSに報知できる。
更に、同一データが複数到達した場合には、重複しているデータを破棄することで、複数の異なる経路で電波を受信しても、車両と軌道の状況を確実に監視できる。
【0057】
加えて、データ送信周期の制御による従局間のデータ量の均一化により、列車の1編成全体に対してほぼ同じ条件で車両の状況を監視できる。
また、各従局SS1,SS2,SS3,SS4,…は、車軸発電機23で発生した電力で作動させるので、車上から電源を与えるための電源線も不要である。これによって、各台車B1,B2,B3,B4,…において、発電、センシング及び無線通信が完結する。
【0058】
なお、車体と台車が切り離され、その組み合わせが変わった場合には、ネットワークを再構築する必要がある。この場合には、次のようにすることで、新たなネットワークを構築する。
【0059】
まず、主局MSに、予め各従局のネットワークIDと編成の両数を記憶させておく。そして、主局MSからパケットを送出し、受信できる従局を探索する。主局MSからパケットを受け取った従局は、その主局MSのネットワークに組み入れられる。ネットワークに組み入れられた従局からもパケットを送出し、それを受信できる従局を探索する。受信できる従局が見つかるとネットワークに組み入れ、同様な操作を繰り返して従局を増やしていく。このような探索を従局が車両の両数の2倍と等しくなるまで繰り返す。
このようにすることで、車体と台車の組み合わせが変更されても、容易に1編成のネットワークを再構築できる。
【0060】
以上の実施形態で説明された構成や動作手順等については、本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものに過ぎない。従って本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。