特許第6564289号(P6564289)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6564289オレフィン系樹脂とその製造方法および組成物並びに成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6564289
(24)【登録日】2019年8月2日
(45)【発行日】2019年8月21日
(54)【発明の名称】オレフィン系樹脂とその製造方法および組成物並びに成形体
(51)【国際特許分類】
   C08F 255/02 20060101AFI20190808BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20190808BHJP
   C08L 51/06 20060101ALI20190808BHJP
   C08F 4/6592 20060101ALI20190808BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20190808BHJP
【FI】
   C08F255/02
   C08F2/44 C
   C08L51/06
   C08F4/6592
   C08J5/00CES
【請求項の数】14
【全頁数】71
(21)【出願番号】特願2015-190188(P2015-190188)
(22)【出願日】2015年9月28日
(65)【公開番号】特開2017-66200(P2017-66200A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】松木 智昭
(72)【発明者】
【氏名】柳本 泰
(72)【発明者】
【氏名】中村 達也
(72)【発明者】
【氏名】板倉 啓太
(72)【発明者】
【氏名】高島 健夫
【審査官】 水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−359861(JP,A)
【文献】 特開2013−112795(JP,A)
【文献】 特開2007−039540(JP,A)
【文献】 特開2004−346304(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00−2/60
C08F 4/60−4/70
C08F 6/00−246/00
C08F 255/00
C08F 290/00−290/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α−オレフィン共重合体から構成される主鎖(MC)、エチレン系重合体から構成される側鎖(SE)およびプロピレン系重合体から構成される側鎖(SP)を有するグラフト型重合体[R1]を含み、下記要件(I)を満たすオレフィン系樹脂(β)。
(I)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5dl/gの範囲にある。
【請求項2】
下記要件(II)を満たす、請求項1に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(II)示差走査熱量測定において、80〜170℃の範囲に融点(Tm)が観測される。
【請求項3】
下記要件(III)を満たす、請求項1または2に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(III)示差走査熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲に存在する。
【請求項4】
下記要件(IV)を満たす、請求項1〜3のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(IV)エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜80mol%の範囲にあり、プロピレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し2〜80mol%の範囲にある。
【請求項5】
前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(i)を満たす、請求項1〜4のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(i)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が93%以上である。
【請求項6】
前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(ii)または(iii)のうち少なくとも1つを満たす、請求項1〜5のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(ii)主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を有し、かつ炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を主鎖(MC)中5〜50mol%の範囲で有する。
(iii)主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が10,000〜500,000である。
【請求項7】
前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(iv)〜(vii)を満たす、請求項1〜6のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(iv)側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中95〜100mol%の範囲で有し、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中0〜5mol%の範囲で有する。
(v)側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体の重量平均分子量が、1,000〜30,000の範囲である。
(vi)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、プロピレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中95〜100mol%の範囲で有し、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中0〜5mol%の範囲で有する。
(vii)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、重量平均分子量が、5,000〜100,000である。
【請求項8】
2種以上の遷移金属化合物を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
【請求項9】
下記(A)、(B)および(C)の工程を含む、請求項8に記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
(A)ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合し、末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程
(B)有機配位子を有する周期表第4族または第5族の遷移金属化合物[B]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でエチレンを重合し、末端不飽和ポリエチレンを製造する工程
(C)周期表第4族の遷移金属化合物[C]を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程
【請求項10】
プロピレン系樹脂(α−1)2〜98質量部、および請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)2〜98質量部(プロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
【請求項11】
前記プロピレン系樹脂(α−1)50〜98質量部、および前記オレフィン系樹脂(β)2〜50質量部(プロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有することを特徴とする請求項10に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【請求項12】
エチレン系樹脂(α−2)2〜98質量部、および請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)2〜98質量部(エチレン系樹脂(α−2)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有することを特徴とするエチレン系樹脂組成物。
【請求項13】
プロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α―2)、および請求項1〜7のいずれか一項に記載のオレフィン系樹脂(β)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか一項に記載の樹脂組成物から得られる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側鎖にエチレン系重合体とプロピレン系重合体とを有し、主鎖がエチレン共重合体から構成されるグラフト型重合体を含む樹脂、該樹脂の製造方法、該樹脂を含む樹脂組成物、および該組成物から得られる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンに代表されるポリオレフィン樹脂は、生産に係るエネルギーが小さく、軽量かつリサイクル性にも優れることから、各産業界における、循環型社会を形成するための3R(Reduce、Reuse、Recycle)への取り組みのなかで、注目が高まっている。ポリオレフィン樹脂は、日用雑貨、台所用品、包装用フィルム、家電製品、機械部品、電気部品、自動車部品など、種々の分野で利用されており、1種類の重合体が単独で用いられることもあるが、要求される性能に応じて、複数の樹脂が配合された樹脂組成物として使用されている。
【0003】
例えば、自動車用部材においては、成形品を軽量化・薄肉化しても充分な剛性と耐衝撃性が得られるようにプロピレン系樹脂にエラストマーを含んだ組成物として用いられる。
このようなオレフィン樹脂物性を向上させる方法論の一つとして、異種構造のポリオレフィン樹脂が化学的に結合したブロックポリマーまたはグラフトポリマーの技術が開発の対象となっている。このようなポリマーに関する技術として、異種ポリマー同士を化学反応させる方法と重合工程で生成させる方法があるが、本願技術は、後者に関する。
【0004】
異種ポリマー鎖から構成されるポリマー鎖の中でも、結晶鎖と非晶鎖が結合したポリマー鎖は特に注目される。これは、結晶鎖が持つ剛性、機械強度、耐熱性などの機械特性と、非晶鎖が有す柔軟性、樹脂改質性、粘着性など相反するポリマー物性を同時に発現させることが期待されるためであり、後述する様々な技術が開示されている。
【0005】
まず、結晶性ポリエチレン鎖と非晶性ポリマー鎖から構成されるオレフィン系ブロックコポリマーを作る技術として、リビング重合法が代表例として挙げられる。特許文献1および特許文献2には、リビング重合性を持つ第4族金属錯体触媒を用い、ポリエチレン結晶鎖とエチレン系エラストマーの非晶鎖が連結した直鎖ブロックポリマーを製造する技術が開示される。また、特許文献3および特許文献4には、2種の遷移金属触媒間で作用する可逆連鎖移動反応を利用したマルチブロックポリマーに関する技術が開示される。一方、結晶性ポリプロピレン鎖と非晶性ポリマー鎖から構成されるブロックコポリマーを作る技術として、特許文献5〜11が開示されている。
【0006】
特許文献5は、前述の可逆連鎖移動反応を、直列多段重合槽に適用することで、結晶性ポリプロピレン鎖と非晶性オレフィンポリマー鎖の直鎖ブロックポリマーを形成する技術に関する。
【0007】
一方、特許文献6〜11は、主鎖に非晶性ポリマー鎖、側鎖に結晶性ポリプロピレン鎖を有するグラフト型オレフィン系ポリマーを製造する技術に関する。これらは、特定のメタロセン触媒を用い末端にビニル基をもつ結晶性ポリプロピレンを生成させ、次いでこれらを各種オレフィンモノマーと共重合させる多段重合を伴う技術である。
【0008】
これらの結晶鎖と非晶鎖を有するグラフト型ポリマーに関する文献には、いずれも、結晶性ポリマー鎖として、ポリエチレン鎖またはポリプロピレン鎖が適用されているものの、両者を同時に有するポリマーに関しての具体策は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2001/055231号公報
【特許文献2】特開2004−204057号公報
【特許文献3】国際公開第2005/090426号公報
【特許文献4】国際公開第2005/090427号公報
【特許文献5】特開2013−529705号公報
【特許文献6】特開2001−525460号公報
【特許文献7】特開2001−527589号公報
【特許文献8】特開2001−525463号公報
【特許文献9】特開2008−144152号公報
【特許文献10】特開2009−114404号公報
【特許文献11】国際公開第2013/061974号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
耐熱性と柔軟性とを有し、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のいずれに対しても相容性に優れ、各種ポリオレフィンに効果的に作用する改質剤としても好適に使用することができる熱可塑性樹脂を提供すること。
【0011】
また、本発明者らの検討によれば、従来のエチレン・α−オレフィン共重合体や、側鎖にプロピレン系重合体をもつグラフト型重合体においてはその組成によっては得られるペレットや成形体がべたつく問題点が認められ、べたつきの低減もまた課題として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結果、側鎖にエチレン系重合体とプロピレン系重合体をもつエチレン共重合体からなるグラフト型重合体を含む樹脂を開発した。当該グラフト型重合体からなる樹脂は、熱可塑性を示すことから一般的なポリオレフィンの成型方法に適用可能であり、更に、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂との相容性に優れることから樹脂改質材として、広範囲なコンパウンド樹脂原料として好適であることを見出した。さらには、上記樹脂によりべたつきの問題もまた解決されることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明は、例えば以下の[1]〜[14]に関する。
[1] エチレン・α−オレフィン共重合体から構成される主鎖(MC)、エチレン系重合体から構成される側鎖(SE)およびプロピレン系重合体から構成される側鎖(SP)を有するグラフト型重合体[R1]を含み、下記要件(I)を満たすオレフィン系樹脂(β)。
(I)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5dl/gの範囲にある。
【0014】
[2] 下記要件(II)を満たす、[1]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(II)示差走査熱量測定において、80〜170℃の範囲に融点(Tm)が観測される。
【0015】
[3] 下記要件(III)を満たす、[1]または[2]に記載のオレフィン系樹脂(β)。
(III)示差走査熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲に存在する。
【0016】
[4] 下記要件(IV)を満たす、[1]〜[3]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
(IV)エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜80mol%の範囲にあり、プロピレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し2〜80mol%の範囲にある。
【0017】
[5] 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(i)を満たす、[1]〜[4]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
(i)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が93%以上である。
【0018】
[6] 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(ii)または(iii)のうち少なくとも1つを満たす、[1]〜[5]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
(ii)主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を有し、かつ炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を主鎖(MC)中5〜50mol%の範囲で有する。
(iii)主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が10,000〜500,000である。
【0019】
[7] 前記グラフト型重合体[R1]が、下記要件(iv)〜(vii)を満たす、[1]〜[6]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)。
(iv)側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中95〜100mol%の範囲で有し、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中0〜5mol%の範囲で有する。
(v)側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体の重量平均分子量が、1,000〜30,000の範囲である。
(vi)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、プロピレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中95〜100mol%の範囲で有し、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中0〜5mol%の範囲で有する。
(vii)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、重量平均分子量が、5,000〜100,000である。
【0020】
[8] 2種以上の遷移金属化合物を用いることを特徴とする[1]〜[7]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
【0021】
[9] 下記(A)、(B)および(C)の工程を含む、[8]に記載のオレフィン系樹脂(β)の製造方法。
(A)ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合し、末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程
(B)有機配位子を有する周期表第4族または第5族の遷移金属化合物[B]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でエチレンを重合し、末端不飽和ポリエチレンを製造する工程
(C)周期表第4族の遷移金属化合物[C]を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程
【0022】
[10] プロピレン系樹脂(α−1)2〜98質量部、および[1]〜[7]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)2〜98質量部(プロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有することを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
【0023】
[11] 前記プロピレン系樹脂(α−1)50〜98質量部、および前記オレフィン系樹脂(β)2〜50質量部(プロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有することを特徴とする[10]に記載のプロピレン系樹脂組成物。
【0024】
[12] エチレン系樹脂(α−2)2〜98質量部、および[1]〜[7]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)2〜98質量部(エチレン系樹脂(α−2)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする)を含有することを特徴とするエチレン系樹脂組成物。
【0025】
[13] プロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α―2)、および[1]〜[7]のいずれかに記載のオレフィン系樹脂(β)を含有することを特徴とする樹脂組成物。
【0026】
[14] [10]〜[13]のいずれかに記載の樹脂組成物から得られる成形体。
【発明の効果】
【0027】
本発明のオレフィン系樹脂は、耐熱性と柔軟性とを有し、ポリエチレン樹脂とポリプロピレン樹脂のいずれに対しても相容性に優れ、各種ポリオレフィンに効果的に作用する改質剤としても好適に使用することができ、熱可塑性を有し、べたつきも低減されている。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のオレフィン系樹脂(β)、オレフィン系樹脂(β)の製造方法、樹脂組成物および成形体について詳説する。
<オレフィン系樹脂(β)>
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体から構成される主鎖(MC)、エチレン系重合体から構成される側鎖(SE)およびプロピレン系重合体から構成される側鎖(SP)を有するグラフト型重合体[R1]を含み、下記要件(I)を満たす。
【0029】
オレフィン系樹脂(β)は下記要件(II)を満たすことが好ましく、下記要件(III)を満たすことも好ましく、下記要件(IV)を満たすことも好ましい。すなわち、オレフィン系樹脂(β)は、下記要件(II)〜(IV)のうち1つ以上を満たすことが好ましく、2つ以上を満たすことがより好ましく、3つ満たすことが最も好ましい。
【0030】
オレフィン系樹脂(β)は、グラフト型重合体[R1]のみで構成されていてもよいし、グラフト型重合体[R1]と、一種または二種以上の他のオレフィン系重合体から構成されていてもよい。オレフィン系樹脂(β)を構成するグラフト型重合体[R1]としては、一種の重合体でもよく、二種以上の重合体であってもよい。
【0031】
なお、オレフィン系樹脂(β)は、グラフト型重合体[R1]以外の成分を含みうる。後述する製造方法によれば、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレン、および工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンのうち一部は工程(C)で共重合されてグラフト型重合体[R1]の側鎖を構成するものの、一部は工程(C)での共重合に寄与せず、すなわちグラフト型重合体[R1]の側鎖とならずにオレフィン系樹脂(β)に含まれうる。オレフィン系樹脂(β)全体において、グラフト型重合体[R1]の含まれる割合は5〜95質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましい。
【0032】
(I)135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5dl/gの範囲にある。
(II)示差走査熱量測定において、80〜170℃の範囲に融点(Tm)が観測される。
(III)示差走査熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)が−80〜−30℃の範囲に存在する。
(IV)エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜80mol%の範囲にあり、プロピレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し2〜80mol%の範囲にある。
【0033】
以下、グラフト型重合体[R1]および、上記要件(I)〜(IV)について具体的に説明する。
〔グラフト型重合体[R1]〕
オレフィン系樹脂(β)は、前記グラフト型重合体[R1]を必須の構成成分として含む。該グラフト型重合体[R1]は、エチレン・α−オレフィン共重合体から構成される主鎖(MC)、エチレン系重合体から構成される側鎖(SE)およびプロピレン系重合体から構成される側鎖(SP)を有するグラフト型重合体である。
【0034】
なお、本発明において「グラフト型重合体」という語は、主鎖に対し側鎖が1本以上結合したポリマーである。また、グラフト型重合体[R1]は、主鎖(MC)に対し、側鎖(SE)が1本以上結合し、側鎖(SP)が1本以上結合したポリマーである。
【0035】
グラフト型重合体[R1]は、エチレン・α−オレフィン共重合体からなる主鎖(MC)に、エチレン系重合体から構成される側鎖(SE)およびプロピレン系重合体から構成される側鎖(SE)が化学的に結合した構造であるので、グラフト型重合体[R1]を含むオレフィン系樹脂(β)は、直鎖構造のエチレン系重合体を含有するプロピレン系樹脂あるいはエチレン系樹脂に比べて高い相溶性を示す。このため、オレフィン系樹脂(β)と、後述するプロピレン系樹脂(α−1)やエチレン系樹脂(α−2)とを含む樹脂組成物は極めて優れた物性バランスを発現することができる。
【0036】
また、オレフィン系樹脂(β)は上記構造のグラフト型重合体[R1]を含むことから、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂との相容性に優れ、さらにはべたつきが抑制されるという特徴を持つ。
【0037】
グラフト型重合体[R1]は、上述のとおり、主鎖(MC)および側鎖(SPおよびSE)を有するグラフト共重合体である。
グラフト型重合体[R1]は、下記要件(i)を満たすことが好ましい。グラフト型重合体[R1]は、下記要件(ii)または(iii)のうち少なくとも1つを満たすことが好ましく、要件(ii)および(iii)を満たすことが好ましい。グラフト型重合体[R1]は、下記要件(iv)〜(vii)のうち少なくとも1つを満たすことが好ましく、少なくとも2つを満たすことがより好ましく、少なくとも3つを満たすことがさらに好ましく、4つを満たす、すなわち、要件(iv)〜(vii)を満たすことが特に好ましい。
【0038】
(i)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が93%以上である。
【0039】
(ii)主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を有し、かつ炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を主鎖(MC)中5〜50mol%の範囲で有する。
【0040】
(iii)主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が10,000〜500,000である。
【0041】
(iv)側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中95〜100mol%の範囲で有し、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中0〜5mol%の範囲で有する。
【0042】
(v)側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体の重量平均分子量が、1,000〜30,000の範囲である。
【0043】
(vi)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、プロピレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中95〜100mol%の範囲で有し、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中0〜5mol%の範囲で有する。
【0044】
(vii)側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、重量平均分子量が、5,000〜100,000である。
以下、これらの要件(i)〜(vii)について具体的に説明する。
【0045】
〔要件(i)〕
グラフト型重合体[R1]は、側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が93%以上である。
【0046】
グラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)が上記特徴を有することにより、側鎖は結晶性を示し、融点を持つ。グラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)が高融点のアイソタクチックポリプリプロピレン系重合体であることが、オレフィン系樹脂(β)の耐熱性を高めることになる。さらにグラフト型重合体[R1]の側鎖がアイソタクチックポリプリプロピレン系重合体であることは、オレフィン系樹脂(β)のプロピレン樹脂への相溶性を高めることになる。このため、得られるプロピレン系樹脂組成物は、良好に耐衝撃性を発現しながら、剛性および硬度を良好に保持することができるため好ましい。
【0047】
グラフト型重合体[R1]は、後述するオレフィン系樹脂(β)の製造工程(C)において、工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で生成する末端不飽和ポリエチレンと、エチレンおよびα−オレフィンを共重合することにより得ることができる。すなわち、末端不飽和ポリプロピレンの組成および立体規則性が、グラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)の組成および立体規則性に相当する。従って工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンの組成および立体規則性を公知の方法を用いて算出し、その組成および立体規則性をグラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)の組成および立体規則性と定義できる。
【0048】
〔要件(ii)〕
主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を有し、かつ炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を主鎖(MC)中5〜50mol%の範囲で有する。
【0049】
グラフト型重合体[R1]の主鎖(MC)はエチレン・α−オレフィン共重合体から構成され、グラフト型重合体[R1]において、柔軟性や、改質材として要求される低温特性などの特性を担う部位となる。そのような特性を担保するために、グラフト型重合体[R1]の主鎖は、エチレンから導かれる繰り返し単位と、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位とからなる。
【0050】
ここで炭素原子数3〜20のα−オレフィンの具体例としてはプロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。
【0051】
炭素原子数3〜20のα−オレフィンとしては、好ましくは、炭素原子数3〜10のα−オレフィンであり、さらより好ましくは炭素原子数3〜8のα−オレフィンである。具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖状オレフィン、および4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン等の分岐状オレフィンを挙げることができ、中でもプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンが更に好ましい。エチレンと共重合する炭素原子数3〜20のα−オレフィンとして1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、または1−オクテンを用いることで、最も剛性と耐衝撃性との物性バランスが良好なプロピレン系樹脂組成物あるいはエチレン系樹脂組成物が得られる。
【0052】
グラフト型重合体[R1]の主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体における、エチレンから導かれる繰り返し単位の割合は、主鎖中、好ましくは50〜95mol%、より好ましくは60〜90mol%、さらに好ましくは65〜85mol%の範囲である。また、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合は、主鎖中、好ましくは5〜50mol%、より好ましくは10〜40mol%、さらに好ましくは15〜35mol%の範囲である。なお「主鎖中」とは、主鎖に含まれる全繰り返し単位を100モル%とした際の割合を意味する。
【0053】
主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位の割合が上記範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)は柔軟性に富み低温特性に優れた性質となるので、オレフィン系樹脂(β)を含む樹脂組成物は低温耐衝撃性に優れる。一方、α−オレフィンから導かれる繰り返し単位が5mol%より少ないと、得られるオレフィン系樹脂が柔軟性や低温特性に劣る樹脂となるため、該樹脂を含む樹脂組成物は低温耐衝撃性に劣る場合がある。
【0054】
主鎖中のエチレンおよびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位のモル比は、主鎖を製造する工程で重合反応系中に存在させるエチレンの濃度とα−オレフィンの濃度との割合を制御することにより調整できる。
【0055】
なお、主鎖に含まれるエチレンから導かれる繰り返し単位およびα−オレフィンから導かれる繰り返し単位のモル比(mol%)は、例えば、後述する末端不飽和ポリプロピレンを含まない条件下で得られるエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィン組成を常法により求めることや、オレフィン系樹脂(β)のα−オレフィン組成から末端不飽和ポリプロピレンや側鎖に由来する影響を差し引くことから求められる。
【0056】
〔要件(iii)〕
グラフト型重合体[R1]の主鎖(MC)を構成する前記エチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が10,000〜500,000である。本発明の樹脂組成物において、機械強度を保持しながら樹脂の成型性(流動性)を向上させるためには、10,000〜500,000の範囲であることが好ましく、50,000〜200,000の範囲であることがより好ましい。前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求められるポリエチレン換算の重量平均分子量である。
【0057】
グラフト型重合体[R1]の主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量が上記範囲にあると、オレフィン系樹脂(β)を含むプロピレン系樹脂組成物あるいはエチレン系樹脂組成物は、耐衝撃性、剛性および靭性のバランスがより良好になる傾向がある。一方、前記重量平均分子量が10,000より小さいと、耐衝撃性や靭性が低下し、500,000より大きいと、プロピレン系樹脂あるいはポリエチレン系樹脂への分散不良がおこり所望の物性バランスを得ることが困難になる場合がある。
【0058】
グラフト型重合体[R1]の主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量は、後述する製造工程(C)において、重合系中のエチレン濃度を制御することで調整できる。エチレン濃度の制御方法としては、エチレン分圧調整や重合温度の調整が挙げられる。主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量の調整は重合系中に水素を供給することでも可能である。
【0059】
主鎖を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の重量平均分子量は、例えば、後述する末端不飽和ポリプロピレンおよび末端不飽和ポリエチレンを含まない条件下で製造した場合のエチレン・α−オレフィン共重合体を分析することや、オレフィン系樹脂(β)を分析し末端不飽和ポリプロピレンや末端不飽和ポリエチレン、側鎖(SP)および側鎖(SE)に由来する影響を差し引くことから求められる。
【0060】
〔要件(iv)〕
側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体が、エチレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中95〜100mol%の範囲で有し、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SE)中0〜5mol%の範囲で有する。
【0061】
エチレンから導かれる繰り返し単位はさらに好ましくは98〜100mol%、より好ましくは99.5〜100mol%の範囲、α−オレフィンから導かれる繰り返し単位をはさらに好ましくは0〜2mol%、より好ましくは0〜0.5mol%である。上記範囲にあることによって結晶性のエチレン系重合体鎖となり、ポリエチレン樹脂との相容性に優れ、べたつきが抑制される。なお「側鎖(SE)中」とは、側鎖(SE)(エチレン系重合体)に含まれる全繰り返し単位を100モル%とした際の割合を意味する。
【0062】
〔要件(v)〕
側鎖(SE)を構成するエチレン系重合体の重量平均分子量が、1,000〜30,000の範囲である。より好ましくは2,000〜10,000の範囲である。
【0063】
側鎖(SE)の重量平均分子量が前記範囲を下回ると、オレフィン系重合体[R1]中のエチレン系重合体部位からなる結晶成分の融点が低下し、耐熱性が低下するとともに、該結晶成分が形成する物理架橋点の脆弱化により、機械物性に劣る重合体となるおそれがある。
【0064】
一方、側鎖(SE)の重量平均分子量が前記範囲を上回ると、主鎖(MC)にあたるエチレン・α−オレフィン共重合体部位からなる非晶もしくは低結晶成分の相対量が低下するため、重合体全体として柔軟性が確保できないおそれがある。
【0065】
なお、側鎖(SE)の重量平均分子量は、予め合成された、側鎖(SE)に相当するエチレン系重合体部位(マクロモノマー)のGPC分析を行うこと、すなわち工程(B)で生成する末端不飽和ポリエチレンの重量平均分子量をGPC測定することで求められるポリエチレン換算の重量平均分子量である。
【0066】
側鎖(SE)の重量平均分子量の調整は、後述するビニル末端マクロモノマー生成用触媒に用いる遷移金属化合物の種類を変更する方法や、重合条件を調整する方法が挙げられる。
【0067】
〔要件(vi)〕
グラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、プロピレンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中95〜100mol%の範囲で有し、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を側鎖(SP)中0〜5mol%の範囲で有する。
【0068】
プロピレンから導かれる繰り返し単位は、さらに好ましくは99.5〜100mol%の範囲で有し、エチレンおよび炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンから導かれる繰り返し単位を0〜0.5mol%の範囲で有する。なお「側鎖(SP)中」とは、側鎖(SP)(プロピレン系重合体)に含まれる全繰り返し単位を100モル%とした際の割合を意味する。
【0069】
〔要件(vii)〕
側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体が、重量平均分子量が5,000〜100,000である。前記重量平均分子量は、好ましくは5,000〜60,000、さらに好ましくは5,000〜25,000の範囲である。
【0070】
グラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体の重量平均分子量が上記範囲にあることで、プロピレン系重合体とオレフィン系樹脂(β)との相溶性が高まり、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)とを含むプロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性や破断伸びが良好に発現され、さらに射出成形時の流動性も良好になる。
【0071】
グラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体の重量平均分子量が5,000より小さいと、プロピレン系樹脂との界面強度が弱くなり、プロピレン系樹脂組成物の伸びや耐衝撃性が低下する場合がある。
【0072】
グラフト型重合体[R1]の側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体の重量平均分子量が100,000より大きいと、オレフィン系樹脂(β)を含む樹脂組成物の成形時における流動性が悪くなり、加工性の悪化の原因となる場合がある。また、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)との相溶性が低下して、プロピレン系樹脂とオレフィン系樹脂(β)とを含むプロピレン系樹脂組成物の引張伸びや耐衝撃性が低下したり、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形体の表面硬度が低下する場合がある。
【0073】
なお、側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体の重量平均分子量は、工程(A)で生成する末端不飽和ポリプロピレンの重量平均分子量を常法にて測定することで求めることができる。例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる前記末端不飽和ポリプロピレンのポリプロピレン換算の重量平均分子量を、側鎖を構成するプロピレン系重合体の重量平均分子量として用いことが出来る。
側鎖(SP)を構成するプロピレン系重合体の重量平均分子量の調整方法としては、後述する製造工程(A)において、重合温度や重合圧力を調整する方法が挙げられる。
【0074】
〔要件(I)〕
オレフィン系樹脂(β)は、135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.5〜5.0dl/gの範囲にある。前記極限粘度[η]は、好ましくは1.0〜4.0dl/g、さらに好ましくは1.0〜3.0dl/gである。前記極限粘度[η]が前記範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだ樹脂組成物は、耐衝撃性に加え、良好な剛性や機械強度を有し、さらに良好な成形加工性も有する。
【0075】
〔要件(II)〕
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)において、80〜170℃の範囲に融点(Tm)が観測される。
すなわち、オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)により測定される融解ピークを80〜170℃の範囲に有する。
【0076】
なお80〜170℃の範囲に観測される融解ピークは複数の場合があり、その場合、オレフィン系樹脂(β)を構成するグラフト型重合体[R1]の側鎖(SE)に起因する融点と、側鎖(SP)に起因する融点、さらに場合によっては主鎖(MC)に起因する融点が観測されていると考えられる。
【0077】
上記融解ピークが現れる温度、すなわち融点(Tm)は、試料をDSCにより一度昇温工程により融解させた後、30℃までの冷却工程により結晶化させ、2度目の昇温工程(昇温速度10℃/分)で現れる吸熱ピークを解析したものである。
【0078】
側鎖(SE)に起因する融点は、通常80〜130℃の範囲に観測される。当該範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)はポリエチレン系樹脂に良好に相溶することができ、その結果、オレフィン系樹脂(β)およびエチレン系樹脂組成物は、剛性、耐熱性および靭性のバランスが良好となる。また、オレフィン系樹脂(β)において、グラフト型重合体[R1]の側鎖(SE)由来の上記性質を持つことによって、樹脂のベタつきを抑える効果が得られると考えられる。側鎖(SE)に起因する融点を上記範囲に調整する方法として、後述する製造工程(B)において、重合温度や重合圧力を調整する方法が挙げられる。
【0079】
側鎖(SP)に起因する融点は、通常100〜170℃の範囲に観測される。当該範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)はプロピレン系樹脂に良好に相溶することができ、その結果、オレフィン系樹脂(β)およびプロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物は、剛性、耐熱性および靭性のバランスが良好となる。側鎖(SP)に起因する融点を上記範囲に調整する方法として、後述する製造工程(A)において、重合温度や重合圧力を調整する方法が挙げられる。
【0080】
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)において、80〜130℃の範囲に融点(Tm1)が観察され、かつ100〜170℃の範囲に融点(Tm2)が観測されることが好ましい。なお、Tm1<Tm2である。
【0081】
主鎖(MC)に起因する融点は、示差走査熱量分析(DSC)において観測されないかあるいは100℃以下の範囲に観測されることが通常である。主鎖(MC)に起因する融点は、主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体のα−オレフィンから導かれる構成単位の量などによって調整される。
【0082】
〔要件(III)〕
オレフィン系樹脂(β)は、示差走査熱量分析(DSC)によって測定されたガラス転移温度(Tg)は、−80〜−30℃の範囲に存在する。Tgは、好ましくは−80〜−40℃、より好ましくは−70〜−50℃の範囲に存在する。
【0083】
ガラス転移温度(Tg)は、主にグラフト型重合体[R1]の主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体の性質に起因する。ガラス転移温度(Tg)が、−80〜−30℃の範囲にあることにより、オレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、耐衝撃性を良好に発現する。
【0084】
前記範囲のガラス転移温度(Tg)は、主鎖(MC)を構成するエチレン・α−オレフィン共重合体に含まれるα−オレフィン構成単位の種類や組成を制御することで得ることができる。
【0085】
〔要件(IV)〕
オレフィン系樹脂(β)は、エチレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し10〜80mol%の範囲にあり、プロピレンから導かれる繰り返し単位の割合が全繰り返し単位に対し2〜80mol%の範囲にある。
【0086】
エチレンから導かれる繰り返し単位の割合は、20〜80mol%であることが好ましく、より好ましくは30〜80mol%、さらに好ましくは40〜80mol%、特に好ましくは40〜75mol%である。
【0087】
さらに、プロピレンから導かれる繰り返し単位の割合は、3〜60mol%であることが好ましく、より好ましくは5〜50mol%、さらに好ましくは5〜40mol%である。
【0088】
エチレンから導かれる繰り返し単位およびプロピレンから導かれる繰り返し単位が上記範囲にあると、エチレン・α−オレフィン共重合体およびエチレン系重合体およびプロピレン系重合体をバランスよく含んだ態様であることとなり、オレフィン系樹脂(β)を含んだ樹脂組成物は、耐衝撃性や破断伸びが良好になる。
オレフィン系樹脂(β)は、下記要件(V)〜(VII)のうち1つ以上を満たすことが好ましい。
【0089】
〔要件(V)〕
オレフィン系樹脂(β)に含まれるエチレン系重合体の割合が好ましくは2〜60質量%、より好ましくは3〜40質量%、さらにより好ましくは5〜30質量%である。エチレン系重合体の割合が前記の範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)は、樹脂のベタつきを抑える効果が得られると考えられる。
【0090】
ここで、オレフィン系樹脂(β)に含まれるエチレン系重合体とは、後述する製造方法によれば工程(B)において製造される末端不飽和ポリエチレンに由来する重合体あるいは側鎖に相当し、すなわち、工程(C)において共重合された側鎖(SE)と、主鎖に取り込まれなかったポリエチレン直鎖状ポリマーとの総和を示す。
【0091】
オレフィン系樹脂(β)に含まれるエチレン系重合体割合は、たとえば、後述する重合工程(B)に用いる末端不飽和ポリエチレンの重量と、得られたオレフィン系樹脂(β)の重量の比率から求められる。
【0092】
〔要件(VI)〕
オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン系重合体の割合が好ましくは2〜60質量%、さらに好ましくは5〜40質量%、さらにより好ましくは5〜30質量%である。プロピレン系重合体の割合が前記の範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)はプロピレン系樹脂に良好に相溶することができ、その結果、オレフィン系樹脂(β)およびプロピレン系重合体を含むプロピレン系樹脂組成物は、剛性、耐熱性および靭性のバランスが良好となる。
【0093】
ここで、オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン系重合体とは、後述する製造方法によれば工程(A)において製造される末端不飽和ポリプロピレンに由来する重合体あるいは側鎖に相当し、すなわち、工程(C)において共重合された側鎖(SP)と、主鎖に取り込まれなかったポリプロピレン直鎖状ポリマーとの総和を示す。
【0094】
オレフィン系樹脂(β)に含まれるプロピレン系重合体割合は、たとえば、後述する重合工程(A)に用いる末端不飽和ポリプロピレンの重量と、得られたオレフィン系樹脂(β)の重量の比率から求められる。
【0095】
〔要件(VII)〕
オレフィン系樹脂(β)のASTM D638に準拠した引張弾性率が好ましくは2〜400MPa、さらに好ましくは2〜200MPaの範囲にある。引張弾性率が前記範囲にあることで、オレフィン系樹脂(β)は柔軟性に優れ、その結果、オレフィン系樹脂(β)を含む樹脂組成物は、耐衝撃性および靭性が良好となる。
【0096】
オレフィン系樹脂(β)は、熱キシレン不溶解量が3.0wt%未満、好ましくは2.5wt%未満、より好ましくは2.0wt%未満である。
熱キシレン不溶解量は、次の方法で算出される値である。
【0097】
試料を熱プレス(180℃、加熱5分間、冷却1分間)により厚み0.4mmのシート状にし、細かく裁断する。それを約100mg秤量し、325メッシュのスクリーンに包んで、密閉容器中にて30mlのp−キシレンに140℃で3時間浸漬する。次に、そのスクリーンを取り出し、80℃にて2時間以上、恒量になるまで乾燥する。熱キシレン不溶解量(wt%)は、次式で表わされる。
熱キシレン不溶解量(wt%)=100×(W3−W2)/(W1−W2)
W1:試験前のスクリーンおよびサンプルの合計の質量、W2:スクリーン質量、W3:試験後のスクリーンおよびサンプルの合計の質量
【0098】
オレフィン系樹脂(β)は、上記の通り、熱キシレン不溶解量を全く含まないか、含んでも少量であるので、プロピレン系樹脂およびエチレン系樹脂に良好に分散することができ、その結果、得られる樹脂組成物は所望の効果を発現する。一方、熱キシレン不溶部量が3wt%以上であると、得られる樹脂組成物の成形体においてブツと呼ばれる外観不良が生じる場合がある。
【0099】
後述する製造方法に示した通り、重合工程から直接グラフト型重合体[R]1を得る方法を採用することで、熱キシレン不溶解成分が上記範囲のオレフィン系樹脂(β)を得ることができる。
【0100】
オレフィン系樹脂(β)は、着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質を含まないことが好ましい。
前記着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質としては、具体的には、ヘテロ原子含有化合物が挙げられ、前記ヘテロ原子含有化合物としては、塩素原子、臭素原子などハロゲン原子を含有する化合物、酸原子、硫黄原子などのカルコゲン原子を含有する化合物、窒素原子やリン原子などのプニクトゲン原子を含有する化合物などが挙げられる。前記酸素原子を含有する化合物としては、具体的には、無水マレイン酸や無水マレイン酸反応物が挙げられる。
【0101】
また、前記着色、異臭および最終製品の汚染などの原因になる物質としては、金属原子含有化合物も挙げられ、具体的にはナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属含有化合物、マグネシウムやカルシウムのようなアルカリ土類金属含有化合物が挙げられる。
【0102】
オレフィン系樹脂(β)は、前記ヘテロ原子含有化合物の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、さらにより好ましくは10ppm以下である。また、オレフィン系樹脂(β)は、前記金属原子含有化合物の含有量が1000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。
【0103】
<オレフィン系樹脂(β)の製造方法>
オレフィン系樹脂(β)は、たとえば下記(A)、(B)、および(C)の工程を含む製造方法により製造される。
【0104】
(A)ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でプロピレンを重合し、末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程
(B)有機配位子を有する周期表第4族または第5族の遷移金属化合物[B]を含むオレフィン重合用触媒の存在下でエチレンを重合し、末端不飽和ポリエチレンを製造する工程
(C)周期表第4族の遷移金属化合物[C]を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程
以下、(A)、(B)、(C)の工程について順に説明する。
【0105】
〔工程(A)〕
工程(A)は、グラフト型重合体[R1]のプロピレン系重合体から構成される側鎖(SP)の原料となる末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
【0106】
本工程は、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、プロピレンを重合し末端不飽和ポリプロピレンを製造する工程である。
【0107】
本発明において末端不飽和ポリプロピレンとは、下記末端構造(I)〜(IV)で表される末端不飽和をもつポリプロピレンを意味する。末端構造(I)〜(IV)における「Poly」は、末端構造と、該末端構造以外のプロピレン系重合体分子鎖との結合位置を示す。
【0108】
【化1】
前記末端不飽和ポリプロピレンにおける末端不飽和の割合は1000炭素原子あたり通常0.1〜6であるが、より好ましくは0.4〜3.0である。さらに、一般的に末端ビニルと呼ばれる末端構造(I)で表される末端不飽和割合は炭素原子1000個あたり、通常0.1〜2.0個であるが、好ましくは、0.2〜2.0個の範囲にある。
【0109】
前記末端不飽和の定量は、末端不飽和ポリプロピレンの末端構造を1H−NMRで決定することにより求められる。1H−NMRは常法に従って測定すればよい。末端構造の帰属は、Macromolecular Rapid Communications 2000, 1103等に記載の方法に従って行うことができる。
【0110】
例えば、末端構造(I)の場合、δ4.9〜5.1(2H)の積分値A、プロピレン系重合体に由来する全積分値をBとすると、1000炭素原子あたりの末端構造(I)の割合は1000×(A/2)/(B/2)の式で求められる。他の末端構造の割合を求める場合も、水素の比に注意しながら各構造に帰属されるピークの積分値に置き換えればよい。
【0111】
前記末端不飽和のうち末端構造(I)の占める割合は通常、30%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましく60%以上である。なお、前述の末端不飽和のうち末端構造(I)の占める割合は、末端不飽和ポリプロピレンに含まれる1000炭素原子あたりに存在する前述の末端構造(I)〜(IV)のそれぞれの個数の和に対する、1000炭素原子あたりに存在する末端構造(I)の個数の比を百分率で表したものである。
【0112】
遷移金属化合物[A]は後述する化合物[D]と組み合わせて末端不飽和ポリプロピレンを製造する重合触媒として機能する。
末端不飽和ポリプロピレンを製造するオレフィン重合用触媒としては、Resconi, L. JACS 1992, 114, 1025−1032などで古くから知られているが、オレフィン系共重合体[R1]の側鎖としては、アイソタクチック又はシンジオタクチックな末端不飽和ポリプロピレン、より好ましくはアイソタクチックな末端不飽和ポリプロピレンが好適である。
【0113】
このような高立体規則性かつ、末端構造(I)を持つ末端不飽和ポリプロピレン含量の高いポリプロピレンを製造するのに用いられるオレフィン重合用触媒に含まれる遷移金属化合物[A]としては、特開平6−100579、特表2001−525461、特開2005−336091、特開2009−299046、特開平11−130807、特開2008−285443等により開示されている化合物を好適に用いることができる。
【0114】
上記遷移金属化合物[A]としてより具体的には、架橋ビス(インデニル)ジルコノセン類又はハフノセン類からなる群から選択される化合物を好適な例として挙げることができる。より好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセン又はハフノセンである。さらに好ましくは、ジメチルシリル架橋ビス(インデニル)ジルコノセンであり、ジルコノセンを選択することで、末端不飽和ポリプロピレンの挿入反応により生じる長鎖分岐ポリマーの生成が抑制され、オレフィン系樹脂(β)およびオレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、所望の物性を発現する。一方、工程(A)において前記長鎖分岐ポリマーが多く生成される場合、オレフィン系樹脂(β)およびオレフィン系樹脂(β)を含んだプロピレン系樹脂組成物は、剛性等の物性を損なう恐れがある。
【0115】
より具体的には、ジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド又はジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジメチルを好適な化合物として用いることができる。
【0116】
工程(A)は、気相重合、スラリー重合、バルク重合、溶液(溶解)重合のいずれの方法においても実施可能であり、特に重合形態は限定されない。
工程(A)が、溶液重合で実施される場合、重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。なお、これらのうち、後処理工程の負荷低減の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0117】
また、工程(A)の重合温度は、通常50〜200℃の範囲、好ましくは80〜150℃の範囲、より好ましくは80〜130℃の範囲であり、重合温度を適切にコントロールすることで、所望の分子量及び立体規則性の末端不飽和ポリプロピレンを得ることが可能となる。
【0118】
工程(A)の重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0119】
反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間である。
【0120】
工程(A)における、ポリマー濃度は、定常運転時は、5〜50wt%であり、好ましくは、10〜40wt%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)の負荷及び生産性の観点から、15〜50wt%であることが好ましい。
【0121】
工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンの重量平均分子量は、好ましくは5,000〜100,000の範囲であり、より好ましくは5,000〜60,000の範囲であり、さらに好ましくは5,000〜25,000の範囲である。前記範囲の重量平均分子量を有する末端不飽和ポリプロピレンであることにより、後述する工程(C)において、末端不飽和ポリプロピレンのモル濃度をエチレンあるいはα−オレフィンに対して相対的に高めることができ、主鎖への導入効率が高くなる。一方、上記範囲を上回る場合、末端不飽和ポリプロピレンのモル濃度が相対的に低くなり、主鎖への導入効率が低くなる。また、上記範囲を下回る場合、融点が低下など実用上の問題がある場合がある。
【0122】
工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンの分子量分布(Mw/Mn)は、1.5〜3.0、典型的には1.7〜2.5程度である。場合によっては、異なる分子量を有する末端不飽和ポリプロピレンの混合物を用いてもよい。
【0123】
工程(A)において製造される末端不飽和ポリプロピレンの1H−NMRにて測定する末端不飽和の割合は、1000炭素原子あたり通常0.1〜6個であるが、より好ましくは0.4〜3.0個である。さらに末端構造(I)を持つ末端不飽和の割合、いわゆる末端ビニル量は、炭素原子1000個あたり、通常0.1〜2.0個であるが、好ましくは、0.2〜2.0個の範囲にある。末端ビニル量が少ない場合、後工程(C)における当該末端不飽和ポリプロピレンの主鎖への導入量が低くなり、グラフト型重合体[R1]の生成量が少なくなるため所望の効果が得られない場合がある。
【0124】
1H−NMR測定による末端不飽和の量および各末端構造の割合の算出は、前述したとおり、例えばMacromolecular Rapid Communications 2000, 1103に記載の方法に従って行うことができる。
【0125】
〔工程(B)〕
工程(B)は、グラフト型重合体[R1]のエチレン系重合体から構成される側鎖(SE)の原料となる末端不飽和ポリエチレンを製造する工程である。
【0126】
本工程は、有機配位子を有する周期表第4族または第5族の遷移金属化合物[B](以下、錯体[B]ともいう)を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、エチレンを重合し、末端不飽和ポリエチレンを製造する工程である。
【0127】
前記有機配位子は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子であってもよく、シクロペンタジエニル骨格を有さない配位子であってもよいが、末端不飽和ポリエチレンを効率よく生成させる観点から、フェノキシイミン配位子であることが好ましい。
【0128】
ここで、末端不飽和ポリエチレンとは、ポリマー鎖の片末端にビニル基をもつポリエチレンを含むものであり、前記末端不飽和ポリエチレンは、片末端にビニル基をもつポリエチレンを、通常は60質量%以上、好ましくは70質量%、さらに好ましくは、80質量%以上、さらにより好ましくは、90質量%以上含む。片末端にビニル基をもつポリエチレン以外として、ビニレン基やビニリデン基等の不飽和炭素−炭素結合を有するポリエチレンや両末端飽和ポリエチレンを含む場合がある。
【0129】
末端不飽和ポリエチレンの末端ビニル率(全不飽和炭素-炭素結合に対するビニル基数の割合)は、通常は60%以上、好ましくは70%、さらに好ましくは、80%以上、さらにより好ましくは、90%以上である。
【0130】
末端不飽和ポリエチレンにおける末端ビニル基の割合は1000炭素原子あたり、通常0.1〜30個であるが、好ましくは、0.5〜20個の範囲、さらに好ましくは、1.0〜10個の範囲にある。前記片末端にビニル基をもつポリエチレンの含量、および末端不飽和ポリエチレンにおける末端ビニル基の割合は、GPC測定による分子量解析および1H−NMR測定によるポリマー構造解析により常法にて算出することが出来る。
【0131】
前述の通り、有機配位子を有する周期表第4族または第5族の遷移金属化合物として、フェノキシイミン配位子を有する周期表第4族または第5族の遷移金属化合物が好ましく、具体的には特開2003−073412および特開2004−076016に開示されている化合物が挙げられる。
【0132】
錯体[B]としてより具体的には、下記一般式[B0]、[B1]、[B2]から選ばれる少なくとも1つの遷移金属化合物が挙げられる。
錯体[B]は後述する化合物[D]と組み合わせて末端不飽和ポリエチレンを製造する重合触媒として機能する。
【0133】
【化2】
(一般式[B0]中、Mは周期表第4〜5族の遷移金属原子を示し、mは1〜4の整数を示し、R1は、炭素原子数1〜20の非環式炭化水素基(Cn'2n'+1、n’=1〜20)または水素原子を示し、R2〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2以上の場合にはR2〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0134】
【化3】
(一般式[B1]中、Mは周期表第4〜5族の遷移金属原子を示し、mは1〜4の整数を示し、R1は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい3〜10員環の脂環式炭化水素基を示し、R2〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2以上の場合にはR2〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0135】
【化4】
(一般式[B2]中、Mは周期表第4〜5族の遷移金属原子を示し、mは1〜4の整数を示し、R1は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素原子数4〜20の少なくとも1つ以上の炭素を共有する2環性脂肪族炭化水素基であり、R2〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2以上の場合にはR2〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
【0136】
以下、本発明で用いられる遷移金属化合物(B)の化学構造上の特徴について説明する。なお、遷移金属化合物(B)は、好ましくは前記一般式[B0]、[B1]、[B2]から選ばれる少なくとも1つの遷移金属化合物である。
【0137】
一般式[B0]において、R1は、炭素原子数1〜20の非環式炭化水素基(Cn'2n'+1、n’=1〜20)または水素原子を示す。好ましくは、炭素原子数1〜10の直鎖炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましい。一般式[B0]において、R1として、より好ましくは、メチル基、エチル基、及び水素原子である。
【0138】
一般式[B1]において、R1は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい3〜10員環の脂環式炭化水素基を示す。脂環式炭化水素基として具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0139】
一般式[B1]において、R1が有していてもよい置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子、炭化水素基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基から選ばれる基であるか、それらの基を含有する炭化水素基または炭化水素置換シリル基が挙げられる。
【0140】
一般式[B1]において、R1が有していてもよい置換基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、エトキシエチル基、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ニトロメチル基、ニトロエチル基、シアノメチル基、シアノエチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、などが挙げられる。
【0141】
一般式[B1]において、R1が置換基を2つ以上有する3〜5員環の脂環式炭化水素基である場合には、2つ以上の置換基の位置に特に制限はない。
一般式[B2]において、R1は、1つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素原子数4〜20の少なくとも1つ以上の炭素を共有する2環性脂肪族炭化水素基である。2環性脂肪族炭化水素基として具体的には、スピロ[2.2]ペンタン、スピロ[2.3]ヘキサン、スピロ[2.4]ヘプタン、スピロ[2.5]オクタン、スピロ[3.3]ヘプタン、スピロ[3.4]オクタン、スピロ[3.5]ノナン、スピロ[4.4]ノナン、スピロ[4.5]デカン、スピロ[5.5]ウンデカン、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[3.2.0]ヘプタン、ビシクロ[3.3.0]オクタン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、ビシクロ[4.4.0]デカン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2.]オクタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、ビシクロ[3.3.2]デカン、ビシクロ[3.3.3]ウンデカン、などが挙げられる。
【0142】
一般式[B2]において、R1は好ましくは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素原子数4〜20の2つの炭素を共有する2環性脂肪族炭化水素基であり、2環性脂肪族炭化水素基として具体的には、ビシクロ[1.1.0]ブタン、ビシクロ[2.1.0]ペンタン、ビシクロ[2.2.0]ヘキサン、ビシクロ[3.1.0]ヘキサン、ビシクロ[3.2.0]ヘプタン、ビシクロ[3.3.0]オクタン、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、ビシクロ[4.3.0]ノナン、ビシクロ[4.4.0]デカン、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2.]オクタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、ビシクロ[3.3.2]デカン、ビシクロ[3.3.3]ウンデカン、などが挙げられる。
【0143】
一般式[B2]において、R1はより好ましくは、1つまたは複数の置換基を有していてもよい炭素原子数5〜20の2つの炭素を共有する橋かけ2環性脂肪族炭化水素基であり、2環性脂肪族炭化水素基として具体的には、ビシクロ[1.1.1]ペンタン、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2.]オクタン、ビシクロ[3.1.1]ヘプタン、ビシクロ[3.2.1]オクタン、ビシクロ[3.2.2]ノナン、ビシクロ[3.3.1]ノナン、ビシクロ[3.3.2]デカン、ビシクロ[3.3.3]ウンデカン、などが挙げられる。
【0144】
一般式[B2]において、R1は特に好ましくは、1つまたは複数の置換基を有していてもよいビシクロ[2.2.1]ヘプタンである。一般式[B2]において、R1が有していてもよい置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子、炭化水素基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基から選ばれる基であるか、それらの基を含有する炭化水素基または炭化水素置換シリル基が挙げられる。
【0145】
一般式[B2]において、上記R1が有していてもよい置換基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、エトキシエチル基、ジメチルアミノメチル基、ジメチルアミノエチル基、ニトロメチル基、ニトロエチル基、シアノメチル基、シアノエチル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、などが挙げられる。
【0146】
一般式[B2]において、上記R1の置換基を2つ以上有する2環性炭化水素基においては、2つ以上の置換基の位置に特に制限はない。
一般式[B0]、[B1]、[B2]中それぞれ独立に、N……Mは、一般的には配位していることを示すが、本発明においては配位していてもしていなくてもよい。
【0147】
一般式[B0]、[B1]、[B2]においてそれぞれ独立に、Mは周期表第4〜5族の遷移金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタルなどであり、好ましくは周期表第4族の遷移金属原子であり、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウムであり、より好ましくはジルコニウムである。
【0148】
一般式[B0]、[B1]、[B2]においてそれぞれ独立に、mは1〜4の整数を示し、好ましくは1〜2であり、特に好ましくは2である。
一般式[B0]、[B1]、[B2]においてそれぞれ独立に、R2〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、また、mが2以上の場合にはR2〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよく、ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0149】
炭化水素基として具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基などの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基;エチニル基、プロパルギル基など炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;シクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数5〜30の環状不飽和炭化水素基;フェニル基、ベンジル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ジ−t−ブチルフェニル基などのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0150】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0151】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコキシ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0152】
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0153】
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記例示したものと同様のものが挙げられる。ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0154】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0155】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
次に上記で説明したR2〜R6の例について、より具体的に説明する。アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基などが挙げられる。
【0156】
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6−ジメチルフェノキシ基、2,4,6−トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0157】
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p−クロロベンゾイル基、p−メトキシベンゾイル基などが挙げられる。エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p−クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0158】
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。アミド基として具体的には、アセトアミド基、N−メチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基などが挙げられる。イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。
【0159】
アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。
【0160】
スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N−メチルスルホンアミド基、N−メチル−p−トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
一般式[B0]、[B1]においてそれぞれ独立に、R6としては特に、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ネオペンチルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の分岐状アルキル基、より好ましくはこれらの基の水素原子を炭素原子数が6〜20のアリール基で置換した基であるフェニルエチル基、ジフェニルメチル基、クミル基、ジフェニルエチル基、トリフェニルメチル基、更にアダマンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基から選ばれる基であることが好ましく、あるいはフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラニル、フェナントリルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、または炭化水素置換シリル基であることも好ましい。
【0161】
2〜R6は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは互いに隣接する2個以上の基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0162】
また、mが2以上の場合には、R2〜R6で示される基のうち2個の基が連結されていてもよい。さらに、mが2以上の場合にはR1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0163】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
一般式[B0]、[B1]、[B2]においてそれぞれ独立に、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0164】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
炭化水素基としては、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。
【0165】
これらのうち、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。
ヘテロ環式化合物残基としては、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0166】
酸素含有基としては、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0167】
イオウ含有基としては、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p−トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p−クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p−トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0168】
窒素含有基として具体的には、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0169】
ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0170】
ケイ素含有基として具体的には、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0171】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。スズ含有基として具体的には、前記R2〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0172】
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0173】
なお、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
上記一般式[B0]、[B1]、[B2]で表される遷移金属化合物の好ましい化合物構造の例示としては、特開2003−73412公報に開示されている遷移金属化合物を挙げることができる。
以上のような、前記一般式[B0]、[B1]、[B2]から選ばれる少なくとも1つの遷移金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0174】
[遷移金属化合物(B)の好ましい態様]
遷移金属化合物(B)としては、一般式[B0]、[B1]、[B2]から選ばれる少なくとも1つの遷移金属化合物が好ましく、一般式[B0]で表される遷移金属化合物がより好ましい。上記一般式[B0]で表される遷移金属化合物の好ましい態様については上記した通りであるが、特に好ましい態様は、次の通りである。
【0175】
一般式[B0]中、Mは周期表第4族の遷移金属原子を示し、
mは1〜4の整数を示し、
1は、炭素数1〜10の直鎖炭化水素基であり、
2〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよく、
6は炭素原子数が3〜20の分岐状アルキル基であって、少なくとも一つの水素原子を、炭素原子数が6〜20のアリール基で置換した基であり、
nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の整数である場合には、複数のXは互いに同一であっても、異なっていてもよく、また、Xで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0176】
〔工程(C)〕
工程(C)は、周期表第4族の遷移金属化合物[C]を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程である。
【0177】
なお、工程(C)で用いるオレフィン重合用触媒は、工程(A)で用いるオレフィン重合用触媒と同一であってもよいし、異なっていてもよい。工程(A)で用いるオレフィン重合用触媒と同一である場合、工程(A)で用いた触媒を工程(C)においても用いることができる点において好ましい。
【0178】
なお、周期表第4族の遷移金属化合物[C]は、ジメチルシリルビスインデニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物[A]の上位概念である。
周期表第4族の遷移金属化合物[C]は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物であることが好ましい。なお、シクロペンタジエニル骨格はインデニル骨格やフルオレニル骨格の上位概念として認識される。
【0179】
工程(A)で用いるオレフィン重合用触媒と異なる触媒を用いる場合、工程(C)は、好ましくは、下記一般式[C]で表される架橋メタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒の存在下で、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合する工程である。
【0180】
なお、下記一般式[C]で表される架橋メタロセン化合物を、架橋メタロセン化合物[C]とも記す。
【0181】
【化5】
(式[C]中、R1、R2、R3、R4、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、R1〜R4のうち相互に隣り合う二つの基同士は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0182】
6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、R6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよく;ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示す。
1は炭素原子またはケイ素原子を示す。
1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示す。
Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。)
【0183】
工程(C)においては、高温にて十分な活性を発現し、高共重合性かつ高分子量化可能な触媒の選定が重要となる。末端ビニルポリプロピレン(前記末端構造(I))は、4位にメチル分岐を有し、立体的に嵩高い構造を有するので、直鎖状のビニルモノマーに比べ重合が難しい。また、末端ビニルポリプロピレンは、ポリマーが析出してくる低温条件では、共重合されにくい。このため、触媒には、好ましくは、90℃以上の重合温度にて十分な活性を発現し、主鎖を所望の分子量にする性能が求められる。
【0184】
このような観点から、グラフト型重合体[R1]を多く含むオレフィン系樹脂(β)を得るには、工程(C)において、架橋メタロセン化合物[C]が好適に用いられる。
架橋メタロセン化合物[C]は、後述する化合物[D]と組み合わせて、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンと、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとを共重合するオレフィン重合用触媒として機能する。
【0185】
以下、本発明で用いられる架橋メタロセン化合物[C]の化学構造上の特徴について説明する。
架橋メタロセン化合物[C]は、構造上、次の特徴[m1]および[m2]を備える。
【0186】
[m1]二つの配位子のうち、一つは置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基であり、他の一つは置換基を有するフルオレニル基(以下「置換フルオレニル基」ともいう。)である。
【0187】
[m2]二つの配位子が、アリール(aryl)基を有する炭素原子またはケイ素原子からなるアリール基含有共有結合架橋部(以下「架橋部」ともいう。)によって結合されている。
以下、架橋メタロセン化合物[C]が有する、置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基、置換フルオレニル基、架橋部およびその他特徴について、順次説明する。
【0188】
(置換基を有していてもよいシクロペンタジエニル基)
式[C]中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示すものであり、末端ビニルポリプピレンを良好に取り込む構造として、R1、R2、R3およびR4は全て水素原子であるか、またはR1、R2、R3およびR4のいずれか一つ以上がメチル基であり、残りが水素原子である構造が特に好ましい。
【0189】
(置換フルオレニル基)
式[C]中、R5、R8、R9およびR12はそれぞれ独立に水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基またはケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基を示し、水素原子、炭化水素基またはケイ素含有基が好ましい。
【0190】
6およびR11は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましい。
【0191】
7およびR10は水素原子、炭化水素基、ケイ素含有基およびケイ素含有基以外のヘテロ原子含有基から選ばれる同一の原子または同一の基であり、水素原子、炭化水素基およびケイ素含有基が好ましい。
【0192】
6およびR7は互いに結合して環を形成していてもよく、R10およびR11は互いに結合して環を形成していてもよい。
ただし、R6、R7、R10およびR11が全て水素原子であることはない。
【0193】
重合活性の視点からは、R6およびR11がいずれも水素原子でないことが好ましく、R6、R7、R10およびR11がいずれも水素原子ではないことがさらに好ましく、R6およびR11が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であり、且つR7とR10が炭化水素基およびケイ素含有基から選ばれる同一の基であることが特に好ましい。
【0194】
また、R6およびR7が互いに結合して脂環または芳香環を形成し、R10およびR11が互いに結合して脂環または芳香環を形成していることも好ましい。
5〜R12の例示および好ましい基としては、例えば、炭化水素基(以下「炭化水素基(f1)」と記載することがある。)(好ましくは炭素原子数1〜20の炭化水素基)またはケイ素含有基(以下「ケイ素含有基(f2)」と記載することがある。)(好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基)が挙げられる。
【0195】
その他、置換シクロペンタジエニル基における置換基としては、ハロゲン化炭化水素基、酸素含有基、窒素含有基などのヘテロ原子含有基(ケイ素含有基(f2)を除く)を挙げることもできる。
【0196】
炭化水素基(f1)としては、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基、アリル(allyl)基などの直鎖状炭化水素基;イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アミル基、3−メチルペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジエチルプロピル基、1,1−ジメチルブチル基、1−メチル−1−プロピルブチル基、1,1−プロピルブチル基、1,1−ジメチル−2−メチルプロピル基、1−メチル−1−イソプロピル−2−メチルプロピル基などの分岐状炭化水素基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの環状飽和炭化水素基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの環状不飽和炭化水素基およびこれらの核アルキル置換体;ベンジル基、クミル基などの、飽和炭化水素基が有する少なくとも1つの水素原子がアリール基で置換された基が挙げられる。
【0197】
ケイ素含有基(f2)としては、好ましくは炭素原子数1〜20のケイ素含有基であり、例えば、シクロペンタジエニル基の環炭素にケイ素原子が直接共有結合している基が挙げられ、具体的には、アルキルシリル基(例:トリメチルシリル基)、アリールシリル基(例:トリフェニルシリル基)が挙げられる。
【0198】
ヘテロ原子含有基(ケイ素含有基を除く)としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、N−メチルアミノ基、トリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基が挙げられる。
【0199】
炭化水素基(f1)の中でも、炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基などが好適な例として挙げられる。
【0200】
6およびR7(R10およびR11)が互いに結合して脂環または芳香環を形成した場合の置換フルオレニル基としては、後述する一般式[II]〜[VI]で表される化合物に由来する基が好適な例として挙げられる。
【0201】
(架橋部)
式[C]中、R13およびR14はそれぞれ独立にアリール基を示し、Y1は炭素原子またはケイ素原子を示す。オレフィン重合体の製造方法において重要な点は、架橋部の架橋原子Y1に、互いに同一でも異なっていてもよいアリール(aryl)基であるR13およびR14を有することである。製造上の容易性から、R13およびR14は互いに同一であることが好ましい。
【0202】
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基およびこれらが有する芳香族水素(sp2型水素)の一つ以上が置換基で置換された基が挙げられる。置換基としては、上記炭化水素基(f1)およびケイ素含有基(f2)や、ハロゲン原子およびハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0203】
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基などの炭素原子数6〜14、好ましくは6〜10の非置換アリール基;トリル基、イソプロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、t−ブチルフェニル基、ジメチルフェニル基などのアルキル基置換アリール基;シクロヘキシルフェニル基などのシクロアルキル基置換アリール基;クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ジクロロフェニル基、ジブロモフェニル基などのハロゲン化アリール基;(トリフルオロメチル)フェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのハロゲン化アルキル基置換アリール基が挙げられる。置換基の位置は、メタ位および/またはパラ位が好ましい。これらの中でも、置換基がメタ位および/またはパラ位に位置する置換フェニル基がさらに好ましい。
【0204】
(架橋型メタロセン化合物のその他の特徴)
式[C]中、Qはハロゲン原子、炭化水素基、ハロゲン化炭化水素基、炭素原子数4〜10の中性の共役もしくは非共役ジエン、アニオン配位子または孤立電子対で配位可能な中性配位子を示し、jは1〜4の整数を示し、jが2以上の整数の場合は複数あるQはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0205】
Qにおける炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の直鎖状または分岐状の脂肪族炭化水素基、炭素原子数3〜10の脂環族炭化水素基が挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、2−メチルプロピル基、1,1−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、1,1−ジエチルプロピル基、1−エチル−1−メチルプロピル基、1,1,2,2−テトラメチルプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,1,3−トリメチルブチル基、ネオペンチル基が挙げられる。脂環族炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、1−メチル−1−シクロヘキシル基が挙げられる。
【0206】
Qにおけるハロゲン化炭化水素基としては、Qにおける上記炭化水素基が有する少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子で置換された基が挙げられる。
式[C]中、M1はジルコニウム原子またはハフニウム原子を示し、ハフニウム原子が末端不飽和ポリプロピレンを高効率で共重合し、また高分子量に制御出来る点でも好ましい。末端不飽和ポリプロピレンを高効率で共重合し、また高分子量に制御出来る性能を備えた触媒を用いることは、高い生産性を確保するために重要である。なぜなら、高い生産性を確保するために高温条件下で反応を行うことが望ましいが、高温条件下では生成分子量の低下が起こる傾向となるためである。
【0207】
(好ましい架橋型メタロセン化合物[C]の例示)
以下に架橋型メタロセン化合物[C]の具体例を示す。なお、例示化合物中、オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニルとは式[II]で示される構造の化合物に由来する基を指し、オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[III]で示される構造の化合物に由来する基を指し、ジベンゾフルオレニルとは式[IV]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[V]で示される構造の化合物に由来する基を指し、1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニルとは式[VI]で示される構造の化合物に由来する基を指す。
【0208】
【化6】
【0209】
【化7】
【0210】
【化8】
【0211】
【化9】
【0212】
【化10】
【0213】
架橋メタロセン化合物[C]としては、例えば、
ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラメチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
【0214】
ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−クロロフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ブロモフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−トリフルオロメチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
【0215】
ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−tert−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−n−ブチル−フェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−ビフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(1−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
【0216】
ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(2−ナフチル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(m−トリル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジ(p−イソプロピルフェニル)メチレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、
ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルオクタヒドロジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(オクタメチルテトラヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(ジベンゾフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,1’,3,6,8,8’−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(1,3,3’,6,6’,8−ヘキサメチル−2,7−ジヒドロジシクロペンタフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジフェニル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−ジメチル−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(トリメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,7−(ジメチルフェニル)−3,6−ジtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(シクロペンタジエニル)(2,3,6,7−テトラtert−ブチルフルオレニル)ハフニウムジクロリドが挙げられる。
【0217】
架橋メタロセン化合物[C]としては、上記例示の化合物の「ジクロリド」を「ジフロライド」、「ジブロミド」、「ジアイオダイド」、「ジメチル」または「メチルエチル」などに代えた化合物、「シクロペンタジエニル」を「3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル」、「3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル」、「3−tert−ブチル−シクロペンタジエニル」または「3−メチル−シクロペンタジエニル」などに替えた化合物を挙げることもできる。
【0218】
以上の架橋メタロセン化合物は公知の方法によって製造可能であり、特に製造方法が限定されるわけではない。公知の方法としては、例えば、本出願人による国際公開第01/27124号パンフレット、国際公開第04/029062号パンフレットに記載の方法が挙げられる。
【0219】
以上のような架橋メタロセン化合物[C]は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
工程(C)は、溶液(溶解)重合において実施可能であり、重合条件については、オレフィン系ポリマーを製造する溶液重合ポロセスを用いれば、特に限定されないが、下記重合反応液を得る工程を有することが好ましい。
【0220】
重合反応液を得る工程とは、脂肪族炭化水素を重合溶媒として用いて、好ましくは架橋メタロセン化合物[C]、より好ましくは前記一般式[C]におけるY1に結合しているR13、R14がフェニル基、あるいは、アルキル基またはハロゲン基により置換されたフェニル基であり、R7、R10がアルキル置換基を有する架橋メタロセン化合物[C]を含むオレフィン触媒の存在下に、エチレンと、炭素原子数3〜20のα−オレフィンと、工程(A)で製造される末端不飽和ポリプロピレンと、工程(B)で製造される末端不飽和ポリエチレンとの共重合体の重合反応液を得る工程である。
【0221】
工程(C)では、工程(A)にて製造される末端不飽和ポリプロピレンおよび工程(B)にて製造される末端不飽和ポリエチレンが溶液状またはスラリー状にて工程(C)における反応器にフィードされる。フィード方法は、特段限定されるものではなく、工程(A)にて得られた重合液を連続的に工程(C)の反応器にフィードしても、工程(A)および工程(B)の重合液を一旦バッファータンクに溜めたのちに、工程(C)にフィードしてもよい。
【0222】
工程(C)の重合溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素などが挙げられる。具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられ、1種単独で、あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。また、工程(C)の重合溶媒は、工程(A)の重合溶媒と同一でも異なっていてもよい。なお、これらのうち、工業的観点からはヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素が好ましく、さらにオレフィン系樹脂(β)との分離、精製の観点から、ヘキサンが好ましい。
【0223】
また、工程(C)の重合温度は、90℃以上であることが好ましく、90〜200℃の範囲がより好ましく、100〜200℃の範囲であることが特に好ましい。このような温度が好ましいのは、上述の重合溶媒として工業的に好ましく用いられるヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素中で、末端不飽和ポリプロピレンが良好に溶解する温度が90℃以上であるためである。より高温であることがポリプロピレン側鎖の導入量を向上させる上で好ましい。さらに生産性向上の観点からもより高温であることが好ましい。
【0224】
工程(C)の重合圧力は、通常常圧〜10MPaゲージ圧、好ましくは常圧〜5MPaゲージ圧の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。本発明ではこのうち、モノマーを連続して反応器に供給して共重合を行う方法を採用することが好ましい。
【0225】
工程(C)の反応時間(共重合が連続法で実施される場合には平均滞留時間)は、触媒濃度、重合温度などの条件によっても異なるが、通常0.5分間〜5時間、好ましくは5分間〜3時間である。
【0226】
工程(C)における、ポリマー濃度は、定常運転時は、5〜50wt%であり、好ましくは、10〜40wt%である。重合能力における粘度制限、後処理工程(脱溶媒)負荷及び生産性の観点から、15〜35wt%であることが好ましい。
【0227】
得られる共重合体の分子量は、重合系内に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、後述の化合物[D]の使用量により調節することもできる。分子量の調節に用いる化合物[D]としては具体的には、トリイソブチルアルミニウム、メチルアルミノキサン、ジエチル亜鉛等が挙げられる。水素を添加する場合、その量はオレフィン1kgあたり0.001〜100NL程度が適当である。
【0228】
[化合物[D]]
本発明にかかるオレフィン系樹脂(β)の製造方法では、上述した工程(A)、(B)および(C)においてオレフィン重合用触媒として用いられる遷移金属化合物[A]、錯体[B]および架橋メタロセン化合物[C]と共に、後述する化合物[D]を用いることが好ましい。
【0229】
化合物[D]は、遷移金属化合物[A]、錯体[B]および架橋メタロセン化合物[C]と反応して、オレフィン重合用触媒として機能するものであり、具体的には、[D1]有機金属化合物、[D2]有機アルミニウムオキシ化合物、および、[D3]遷移金属化合物[A]、錯体[B]または架橋メタロセン化合物[C]と反応してイオン対を形成する化合物、から選ばれるものである。以下、[D1]〜[D3]の化合物について順次説明する。
【0230】
([D1]有機金属化合物)
本発明で用いられる[D1]有機金属化合物として、具体的には下記の一般式(D1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物、一般式(D1−b)で表わされる周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物、および一般式(D1−c)で表わされる周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物が挙げられる。なお、[D1]有機金属化合物には、後述する[D2]有機アルミニウムオキシ化合物は含まないものとする。
【0231】
【化11】
上記一般式(D1−a)中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、rは0≦r<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+r+s=3である。)
【0232】
【化12】
上記一般式(D1−b)中、M3はLi、NaまたはKを示し、Rcは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)
【0233】
【化13】
上記一般式(D1−c)中、RdおよびReは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M4はMg、ZnまたはCdである。
【0234】
前記一般式(D1−a)で表わされる有機アルミニウム化合物としては、次のような一般式(D−1a−1)〜(D−1a−4)で表わされる化合物を例示できる。
【0235】
【化14】
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは0<p≦3、好ましくは1.5≦p≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0236】
【化15】
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、好ましくは0<p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0237】
【化16】
(式中、Raは炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、pは0<p≦3、好ましくは2≦p<3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
【0238】
【化17】
(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Yはハロゲン原子を示し、pは0<p≦3、qは0≦q<3、sは0≦s<3の数であり、かつp+q+s=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0239】
一般式(D1−a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn−アルキルアルミニウム;
トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec−ブチルアルミニウム、トリtert−ブチルアルミニウム、トリ2−メチルブチルアルミニウム、トリ3−メチルブチルアルミニウム、トリ2−メチルペンチルアルミニウム、トリ3−メチルペンチルアルミニウム、トリ4−メチルペンチルアルミニウム、トリ2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ3−メチルヘキシルアルミニウム、トリ2−エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;
トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;
トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;
ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;
(i−C49xAly(C510z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;
イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;
ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;
エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;
a2.5Al(ORb0.5で表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム(式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す);
ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;
ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;
エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;
エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;
ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;
エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;
エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0240】
また(D1−a)に類似する化合物も本発明に使用することができ、そのような化合物として例えば、窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C252AlN(C25)Al(C252などを挙げることができる。
【0241】
前記一般式(D1−b)に属する化合物としては、LiAl(C254、LiAl(C7154などを挙げることができる。
前記一般式(D1−c)に属する化合物としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、ジ−n−プロピル亜鉛、ジイソプロピル亜鉛、ジ−n−ブチル亜鉛、ジイソブチル亜鉛、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ジメチルカドミウム、ジエチルカドミウムなどを挙げることができる。
【0242】
またその他にも、[D1]有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリドなどを使用することもできる。
【0243】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、例えばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせなどを、前記[D1]有機金属化合物として使用することもできる。
上記のような[D1]有機金属化合物は、1種類単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0244】
([D2]有機アルミニウムオキシ化合物)
本発明で用いられる[D2]有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2−78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。[D2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、具体的には、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン等が挙げられる。
従来公知のアルミノキサンは、例えば下記のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
【0245】
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、例えば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
【0246】
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
【0247】
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0248】
なお前記アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、得られたアルミノキサンを溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0249】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(D1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0250】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウムが特に好ましい。
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0251】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0252】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であることが好ましい。
【0253】
本発明で用いられる[D2]有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0254】
【化18】
(一般式(III)中、R17は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示し、4つのR18は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
【0255】
前記一般式(III)で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸と、有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0256】
【化19】
(一般式(IV)中、R19は前記一般式(III)におけるR17と同じ基を示す。)
【0257】
前記一般式(IV)で表されるアルキルボロン酸の具体的な例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0258】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記一般式(D1−a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0259】
前記有機アルミニウム化合物としては、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
上記のような[D2]有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0260】
([D3]遷移金属化合物[A]、錯体[B]または架橋メタロセン化合物[C]と反応してイオン対を形成する化合物) 本発明で用いられる、遷移金属化合物[A]、錯体[B]または架橋メタロセン化合物[C]と反応してイオン対を形成する化合物[D3](以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報、特開平3−207704号公報、USP−5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0261】
具体的には、前記ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、例えばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンなどである。
【0262】
前記イオン性化合物としては、例えば下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0263】
【化20】
(一般式(V)中、R20はH+、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオンまたは遷移金属を有するフェロセニウムカチオンであり、R21〜R24は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。)。
【0264】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0265】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n−ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン、N,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N−ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0266】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0267】
20としては、カルボニウムカチオンおよびアンモニウムカチオンが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0268】
またイオン性化合物として、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0269】
前記トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、例えばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0270】
前記N,N−ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、例えばN,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N,2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0271】
前記ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、例えばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0272】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(VI)または(VII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0273】
【化21】
(式(VI)中、Etはエチル基を示す。)
【0274】
【化22】
(式(VII)中、Etはエチル基を示す。)
【0275】
イオン化イオン性化合物(化合物[D3])の例であるボラン化合物として具体的には、例えば、デカボラン;
ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0276】
イオン化イオン性化合物の例であるカルボラン化合物として具体的には、例えば4−カルバノナボラン、1,3−ジカルバノナボラン、6,9−ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン、2,7−ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム6−カルウンバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム2,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカハイドライド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;
トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−1,3−ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド−7,8−ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n−ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド−7−カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0277】
イオン化イオン性化合物の例であるヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子とを含む化合物である。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0278】
イオン化イオン性化合物の例であるイソポリ化合物は、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種の原子の金属イオンから構成される化合物であり、金属酸化物の分子状イオン種であるとみなすことができる。具体的には、バナジン酸、ニオブ酸、モリブデン酸、タングステン酸、およびこれらの酸の塩が挙げられるが、この限りではない。また、前記塩としては、前記酸の例えば周期表第1族または第2族の金属、具体的にはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等の有機塩が挙げられる。
【0279】
上記のようなイオン化イオン性化合物([D3]遷移金属化合物[A]、錯体[B]または架橋メタロセン化合物[C]と反応してイオン対を形成する化合物)は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0280】
遷移金属化合物[A]、錯体[B]、架橋メタロセン化合物[C]に加えて、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの[D2]有機アルミニウムオキシ化合物を併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
【0281】
上記のような[D3]イオン化イオン性化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
有機金属化合物[D1]は、有機金属化合物[D1]と、工程(A)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D1/M)が、工程(B)においては錯体[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D1/M)が、工程(C)においては架橋メタロセン化合物[C]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D1/M)が、通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。
【0282】
有機アルミニウムオキシ化合物[D2]は、有機アルミニウムオキシ化合物[D2]中のアルミニウム原子と、工程(A)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D2/M)が、工程(B)においては錯体[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D2/M)が、工程(C)においては架橋メタロセン化合物[C]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D2/M)が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。。
【0283】
イオン化イオン性化合物[D3]は、イオン化イオン性化合物[D3]と、工程(A)においては遷移金属化合物[A]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D3/M)が、工程(B)においては錯体[B]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D3/M)が、工程(C)においては遷移金属化合物[C]中の遷移金属原子(M)とのモル比(D3/M)が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。。
【0284】
〔工程(D)〕
オレフィン系樹脂(β)の製造方法は、工程(A)、(B)および(C)に加え、必要に応じて、各工程で生成する重合体を回収する工程(D)を含んでも良い。本工程は、工程(A)、(B)および(C)において用いられる有機溶剤を分離してポリマーを取り出し製品形態に変換する工程であり、溶媒濃縮、押し出し脱気、ペレタイズ等の既存のポリオレフィン樹脂を製造する過程であれば特段制限はない。
【0285】
[組成物]
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、オレフィン系樹脂(β)のみで、各種用途に用いてもよいが、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、ゴム、無機充填剤、添加剤などが配合された組成物として使用することができる。
【0286】
添加剤としては、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などが挙げられる。
【0287】
なお、本発明において、オレフィン系樹脂(β)およびオレフィン系樹脂(β)以外の樹脂を少なくとも含む組成物を、樹脂組成物と表す。
本発明の組成物としては、オレフィン系樹脂(β)を、組成物100質量%中に、1質量%以上、100質量%未満含む態様を例示することができる。
【0288】
<樹脂組成物>
本発明のオレフィン系樹脂(β)は、エチレン・α−オレフィン共重合体から構成される主鎖(MC)に、エチレン系重合体から構成される側鎖(SE)およびプロピレン系重合体から構成される側鎖(SP)を有することから、一般的なプロピレン系樹脂やエチレン系樹脂のいずれに対しても相容性に優れ、優れた特性の樹脂組成物が得られる。
【0289】
以下に、代表的な樹脂組成物であるプロピレン系樹脂(α−1)、およびオレフィン系樹脂(β)を含有するプロピレン系樹脂組成物、エチレン系樹脂(α−2)、およびオレフィン系樹脂(β)を含有するエチレン系樹脂組成物、プロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α―2)、およびオレフィン系樹脂(β)を含有する樹脂組成物について説明する。
【0290】
<プロピレン系樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂(α−1)と前記オレフィン系樹脂(β)を含有することを特徴とする。
【0291】
前述のオレフィン系樹脂(β)は、任意の配合割合にて、プロピレン系樹脂(α−1)と良好に相容することから、本発明のプロピレン系樹脂組成物におけるプロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)との含有割合に特段の制限はないが、プロピレン系樹脂本来の剛性や硬度などの物性を良好に保持しながら、耐衝撃性や靱性を改良する含有割合として、プロピレン系樹脂(α−1)は、通常2〜98質量部であり、50〜98質量部であることが好ましく、60〜95質量部であることがより好ましく、65〜95質量部であることがさらに好ましい。また、オレフィン系樹脂(β)は、通常2〜98質量部であり、2〜50質量部であることが好ましく、5〜40質量部であることがより好ましく、5〜35質量部であることがさらに好ましい。ただし、プロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする。
【0292】
プロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)の含有割合が上記範囲にあることにより、本発明のプロピレン系樹脂組成物はプロピレン系樹脂本来の剛性や硬度などの物性を良好に保持しながら、耐衝撃性や靱性が改良され、さらに各種成形品の製造に好適に使用することができる。
【0293】
次に、プロピレン系樹脂(α−1)について以下に説明する。
プロピレン系樹脂(α−1)は、オレフィン系樹脂(β)とは異なるものであって、プロピレンの単独重合体であるか、または、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体から構成される。共重合体としては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても構わない。前述の炭素数4〜20のα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。この中でも1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンのα−オレフィンを好ましく用いることができる。
【0294】
プロピレン系樹脂(α−1)は前記重合体のうち単独の重合体から構成されてもよいし、複数の重合体から構成されていてもよい。上記プロピレン系樹脂(α−1)はチーグラーナッタ触媒等で重合される。
【0295】
プロピレン系樹脂(α−1)としては、市販のプロピレン系樹脂の中から、特に制限なく用いることができる。市販のプロピレン系樹脂の例として、いわゆるホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂、が挙げられる。
【0296】
ホモポリプロピレン樹脂は実質プロピレンの単独重合体からなる樹脂であり、安価で製造が容易であり、剛性や表面硬度に優れる半面、耐衝撃性や靱性に劣る。本発明のプロピレン系樹脂組成物に、ホモポリプロピレン樹脂をプロピレン系樹脂(α−1)として用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、ホモポリプロピレン樹脂の剛性等優れた特徴を保持しながら、耐衝撃性や靱性を著しく改良することができる。
【0297】
ランダムポリプロピレン樹脂は主にコモノマーを少量含むプロピレン系重合体からなる樹脂であり、ホモポリプロピレン樹脂と比較して耐衝撃性や透明性が高い。本発明のプロピレン系樹脂組成物に、ランダムポリプロピレン樹脂をプロピレン系樹脂(α−1)として用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、ランダムポリプロピレン樹脂の剛性を保持しながら、耐衝撃性や靱性や表面硬度を改良でき、特に低温衝撃性を大幅に改良できる。
【0298】
ブロックポリプロピレン樹脂は背景技術において述べたとおり、プロピレン系重合体とエチレンプロピレン共重合体の二段重合組成物であり、ブロックポリプロピレン樹脂の「ブロック」の語は、「ブロックコポリマー」を意味しない。ただしエチレンプロピレン共重合体を含むことにより、ブロックポリプロピレン樹脂はホモポリプロピレン樹脂と比し剛性と耐衝撃性のバランスが改良されている。発明のプロピレン系樹脂組成物に、ブロックポリプロピレン樹脂を用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、通常のブロックポリプロピレン樹脂では達成できないレベルに、剛性と耐衝撃性等との相反物性を高度にバランスよく高めることができる。
【0299】
以下、プロピレン系樹脂(α−1)の好ましい態様について説明する。プロピレン系樹脂(α−1)は、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238、230℃、荷重2.16kg)は、通常0.1〜500g/10分である。MFRの下限値は好ましくは0.2g/10分、より好ましくは0.3g/10分、上限値は好ましくは300g/10分、より好ましくは100g/10分、特に好ましくは50g/10分である。プロピレン系樹脂(α−1)のMFRが0.1g/10分以上であることで、プロピレン系樹脂組成物中のプロピレン系樹脂(α−1)とオレフィン系樹脂(β)との分散性が良好で、樹脂組成物の機械強度において好ましい。また、プロピレン系樹脂(α−1)のMFRが500g/10分以下であることで、プロピレン系樹脂(α−1)自体の強度と、樹脂組成物の機械的強度において好ましい。
【0300】
MFRはプロピレン系樹脂(α−1)の分子量の指標となるが、プロピレン系樹脂(α−1)はさらに、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められるポリプロピレン換算の重量平均分子量が、好ましくは8万〜90万、より好ましくは10万〜70万、特に好ましくは15万〜70万の範囲にある。
【0301】
さらにプロピレン系樹脂(α−1)は、引張弾性率が500〜3000MPaであることが好ましく、より好ましくは600〜2500MPa、さらにより好ましくは650〜2200MPaである。引張弾性率は、JIS K7113−2に準拠し、2mm厚みのプレスシートを23℃で測定した値である。プロピレン系重合体(α−1)が上記範囲の引張弾性率であることで、プロピレン系重合体(α−1)を含むプロピレン系樹脂組成物は、高い剛性および高い硬度を有する。
【0302】
<エチレン系樹脂組成物>
本発明のエチレン系樹脂組成物は、エチレン系樹脂(α−2)と前記オレフィン系樹脂(β)を含有することを特徴とする。
【0303】
前述のオレフィン系樹脂(β)は、任意の配合割合にて、エチレン系樹脂(α−2)と良好に相容することから、本発明のエチレン系樹脂組成物におけるエチレン系樹脂(α−2)とオレフィン系樹脂(β)との含有割合に特段の制限はないが、エチレン系樹脂(α−2)は、通常は2〜98質量部であり、50〜98質量部であることが好ましく、60〜95質量部であることがより好ましく、65〜95質量部であることがさらに好ましい。また、オレフィン系樹脂(β)は、通常は2〜98質量部であり、2〜50質量部であることが好ましく、5〜40質量部であることがより好ましく、5〜35質量部であることがさらに好ましくい。ただし、エチレン系樹脂(α−2)とオレフィン系樹脂(β)との合計を100質量部とする。
【0304】
次に、エチレン系樹脂(α−2)について以下に説明する。
エチレン系樹脂(α−2)は、オレフィン系樹脂(β)とは異なるものであって、エチレンの単独重合体であるか、または、エチレンと、炭素数3〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンとの共重合体から構成される。共重合体としては、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であっても構わない。前述の炭素数3〜20のα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、2−メチル−1−プロペン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、メチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ペンテン、エチル−1−ペンテン、トリメチル−1−ブテン、メチルエチル−1−ブテン、1−オクテン、メチル−1−ペンテン、エチル−1−ヘキセン、ジメチル−1−ヘキセン、プロピル−1−ヘプテン、メチルエチル−1−ヘプテン、トリメチル−1−ペンテン、プロピル−1−ペンテン、ジエチル−1−ブテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等を挙げることができる。この中でも1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンのα−オレフィンを好ましく用いることができる。
【0305】
エチレン系樹脂(α−2)は前記重合体のうち単独の重合体から構成されてもよいし、複数の重合体から構成されていてもよい。上記エチレン系樹脂(α−2)はチーグラーナッタ触媒等で重合される。
【0306】
エチレン系樹脂(α−2)としては、市販のエチレン系樹脂の中から、特に制限なく用いることができる。市販のエチレン系樹脂の例として、いわゆる高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂が挙げられる。
【0307】
高密度ポリエチレン樹脂はエチレンの単独重合体もしくはエチレンと少量のα−オレフィンの共重合体からなる樹脂であり、安価で製造が容易であり、剛性等に優れる半面、耐衝撃性や靱性に劣る。本発明のエチレン系樹脂組成物に、高密度ポリエチレン樹脂をエチレン系樹脂(α−2)として用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、高密度ポリエチレン樹脂の剛性等優れた特徴を保持しながら、耐衝撃性や靱性を改良することができる。
【0308】
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂は、エチレンを主成分とし、コモノマーとしてα−オレフィンを含む共重合体からなる樹脂であり、高密度ポリエチレン樹脂と比較して耐衝撃性や透明性が高い。本発明のエチレン系樹脂組成物に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂をポリエチレン系樹脂(α−2)として用いた場合、前記オレフィン系樹脂(β)により、靱性や表面硬度を改良できる。
【0309】
以下、エチレン系樹脂(α−2)の好ましい態様について説明する。エチレン系樹脂(α−2)は、メルトフローレート(MFR:ASTM D1238、190℃、荷重2.16kg)は、通常0.1〜500g/10分である。MFRの下限値は好ましくは0.2g/10分、より好ましくは0.3g/10分、上限値は好ましくは300g/10分、より好ましくは100g/10分、特に好ましくは50g/10分である。エチレン系樹脂(α−2)のMFRが0.1g/10分以上であると、エチレン系樹脂組成物中のエチレン系樹脂(α−2)とオレフィン系樹脂(β)との分散性が良好で、樹脂組成物の機械強度が好ましい。また、エチレン系樹脂(α−2)のMFRが500g/10分以下であることが、エチレン系樹脂(α−2)自体の強度と樹脂組成物の機械的強度の点で好ましい。
【0310】
<プロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α―2)、およびオレフィン系樹脂(β)を含有する樹脂組成物>
本発明のプロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α―2)、およびオレフィン系樹脂(β)を含有する樹脂組成物について、以下説明する。
【0311】
前記樹脂組成物中に含まれるプロピレン系樹脂(α−1)としては、<プロピレン系樹脂組成物>の項で例示したものを用いることができる。また、前記樹脂組成物中に含まれるエチレン系樹脂(α―2)としては、<エチレン系樹脂組成物>の項で例示したものを用いることができる。
【0312】
前記組成物中に含まれる、オレフィン系樹脂(β)、プロピレン系樹脂(α−1)、およびエチレン系樹脂(α―2)の配合割合は任意であるが、オレフィン系樹脂(β)を通常は2〜98質量部、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜40質量部、さらに好ましくは5〜35質量部含み、プロピレン系樹脂(α−1)とエチレン系樹脂(α−2)とを合計で、通常は2〜98質量部、好ましくは50〜98質量部、より好ましくは60〜95質量部、さらに好ましくは65〜95質量部で含み、かつ、プロピレン系樹脂(α−1)とエチレン系樹脂(α−2)の含有量の比が通常は1:99〜99:1、好ましくは10:90〜90:10である。ただし、オレフィン系樹脂(β)、プロピレン系樹脂(α−1)、およびエチレン系樹脂(α―2)の合計を100質量部とする。
【0313】
<その他の成分>
本発明の樹脂組成物(例えば、プロピレン系樹脂組成物、エチレン系樹脂組成物、プロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α―2)、およびオレフィン系樹脂(β)を含有する樹脂組成物)は、本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂、ゴム、無機充填剤、有機充填剤などを配合することができ、また耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、スリップ防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、顔料、染料、可塑剤、老化防止剤、塩酸吸収剤、酸化防止剤等、結晶核剤などの添加剤を配合することができる。前記他の樹脂、他のゴム、無機充填剤、添加剤等の添加量は本発明の目的を損なわない範囲であれば、特に限定されるものではない。
【0314】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明における樹脂組成物の調製方法は、溶融法、溶液法等、特に限定されないが、実用的には溶融混練方法が好ましい。溶融混練方法としては、熱可塑性樹脂について一般に実用されている溶融混練方法が適用できる。例えば、粉状または粒状の各成分を、必要であれば付加的成分の項に記載の添加物等と共に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型ブレンダー等により均一に混合した後、一軸または多軸混練押出機、混練ロール、バッチ混練機、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練することにより調製することができる。
【0315】
各成分の溶融混練温度(例えば、押出機ならシリンダー温度)は、用いる樹脂の種類によるが、通常170〜250℃、好ましくは180〜230℃である。さらに各成分の混練順序および方法は、特に限定されるものではない。
【0316】
<成形体>
前記樹脂組成物は、剛性を保持したまま耐衝撃性の向上を図れることができ、剛性と耐衝撃性のバランスに優れることから、射出成形、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、押出ブロー成形、射出ブロー成形、プレス成形、真空成形、カレンダー成形、発泡成形などの公知の成形方法により、各種成形体に成形することができ、自動車部品、食品用途や医療用途などの容器、食品用途や電子材料用途等の包材、フィルム・シート・テープなど公知の多様な用途に適用することができる。
【0317】
前記樹脂組成物からなる成形体は、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、かつ表面硬度が高く、耐薬品性にも優れることから、各種自動車部品に使用できる。例えば、バンパー、サイドモール、空力アンダーカバーなどの自動車外装部品、インストルメントパネル、内装トリムなどの自動車内装部品、フェンダー、ドアパネル、ステップなどの外板部品、エンジンカバー、ファン、ファンシェラウドなどのエンジン周囲部品などに使用することができる。
【0318】
食品用途や医療用途などの容器としては、例えば、食器、レトルト容器、冷凍保存容器、レトルトパウチ、電子レンジ耐熱容器、冷凍食品容器、冷菓カップ、カップ、飲料ボトルなどの食品容器、レトルト容器、ボトル容器などや、輸血セット、医療用ボトル、医療用容器、医療用中空瓶、医療バッグ、輸液バッグ、血液保存バック、輸液ボトル薬品容器、洗剤容器、化粧品容器、香水容器、トナー容器などが挙げられる。
【0319】
包材としては、例えば、食品包材、食肉包材、加工魚包材、野菜包材、果物包材、発酵食品包材、菓子包装材、酸素吸収剤包材、レトルト食品用包材、鮮度保持フィルム、医薬包材、細胞培養バック、細胞検査フィルム、球根包材、種子包材、野菜・キノコ栽培用フィルム、耐熱真空成形容器、惣菜容器、惣菜用蓋材、業務用ラップフィルム、家庭用ラップフィルム、ベーキングカートン、などが挙げられる。
【0320】
フィルム・シート・テープとしては、例えば、偏光板用保護フィルム、液晶パネル用保護フィルム、光学部品用保護フィルム、レンズ用保護フィルム、電気部品・電化製品用保護フィルム、携帯電話用保護フィルム、パソコン用保護フィルム、マスキングフィルム、コンデンサー用フィルム、反射フィルム、積層体(ガラス含む)、耐放射線フィルム、耐γ線フィルム、多孔フィルムなどの保護フィルム、
その他の用途としては、例えば、家電製品の筐体、ホース、チューブ、電線被覆材、高圧電線用碍子、化粧品・香水スプレー用チューブ、医療用チューブ、輸液チューブ、パイプ、ワイヤーハーネス、自動二輪・鉄道車両・航空機・船舶等の内装材、インストルメントパネル表皮、ドアトリム表皮、リアーパッケージトリム表皮、天井表皮、リアピラー表皮、シートバックガーニッシュ、コンソールボックス、アームレスト、エアバックケースリッド、シフトノブ、アシストグリップ、サイドステップマット、リクライニングカバー、トランク内シート、シートベルトバックル、インナー・アウターモール、ルーフモール、ベルトモールなどのモール材、ドアシール、ボディシールなどの自動車用シール材、グラスランチャンネル、泥よけ、キッキングプレート、ステップマット、ナンバープレートハウジング、自動車用ホース部材、エアダクトホース、エアダクトカバー、エアインテークパイプ、エアダムスカート、タイミングベルトカバーシール、ボンネットクッション、ドアクッションなどの自動車内外装材、制振タイヤ、静動タイヤ、カーレースタイヤ、ラジコンタイヤなどの特殊タイヤ、パッキン、自動車ダストカバー、ランプシール、自動車用ブーツ材、ラックアンドピニオンブーツ、タイミングベルト、ワイヤーハーネス、グロメット、エンブレム、エアフィルタパッキン、家具・履物・衣料・袋物・建材等の表皮材、建築用シール材、防水シート、建材シート、建材ガスケット、建材用ウインドウフィルム、鉄芯保護部材、ガスケット、ドア、ドア枠、窓枠、廻縁、巾木、開口枠等、床材、天井材、壁紙、健康用品(例:滑り止めマット・シート、転倒防止フィルム・マット・シート、)、健康器具部材、衝撃吸収パッド、プロテクター・保護具(例:ヘルメット、ガード)、スポーツ用品(例:スポーツ用グリップ、プロテクター)、スポーツ用防具、ラケット、マウスガード、ボール、ゴルフボール、運搬用具(例:運搬用衝撃吸収グリップ、衝撃吸収シート)、制振パレット、衝撃吸収ダンパー、インシュレーター、履物用衝撃吸収材、衝撃吸収発泡体、衝撃吸収フィルムなどの衝撃吸収材、グリップ材、雑貨、玩具、靴底、靴底ソール、靴のミッドソール・インナーソール、ソール、サンダル、吸盤、歯ブラシ、床材、体操用マット、電動工具部材、農機具部材、放熱材、透明基板、防音材、クッション材、電線ケーブル、形状記憶材料、医療用ガスケット、医療用キャップ、薬栓、ガスケット、ベビーフード・酪農製品・医薬品・滅菌水等を瓶に充填後、煮沸処理、高圧蒸気滅菌等高温処理される用途のパッキング材、工業用シール材、工業用ミシンテーブル、ナンバープレートハウジング、ペットボトルキャップライナーなどのキャップライナー、文房具、オフィス用品、OAプリンタ脚、FAX脚、ミシン脚、モータ支持マット、オーディオ防振材などの精密機器・OA機器支持部材、OA用耐熱パッキン、アニマルケージ、ビーカー、メスシリンダー等の理化学実験機器、光学測定用セル、衣装ケース、クリアーケース、クリアーファイル、クリアーシート、デスクマット、繊維としての用途として、例えば、不織布、伸縮性不織布、繊維、防水布、通気性の織物や布、紙おむつ、生理用品、衛生用品、フィルター、バグフィルター、集塵用フィルター、エアクリーナー、中空糸フィルター、浄水フィルター、ガス分離膜、などが挙げられる。
【0321】
この中でも、前記樹脂組成物から得られる成形体は、剛性を保持したまま耐衝撃性の向上が図れることができ、剛性と耐衝撃性のバランスに優れることから、特にバンパー、インストルメントパネルなどの自動車内外装材、外板材、食品容器、飲料容器に好適に利用することができる。
【実施例】
【0322】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。
以下の実施例において、オレフィン系樹脂(β)、(β’)、(β’’)、プロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α−2)、樹脂組成物等の物性は、下記の方法によって測定した。
【0323】
(オレフィン系樹脂(β)、(β’)、(β’’)、末端不飽和ポリプロピレンおよび末端不飽和ポリエチレンの物性測定方法)
(1)融点(Tm)の測定
融点(Tm)の測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
示差走査熱量計〔SII社 RDC220〕を用いて、約10mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度50℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で30℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。この2度目の昇温の際に観測される吸熱ピークを融解ピークとし、その融解ピークが現れる温度を融点(Tm)として求めた。
【0324】
(2)ガラス転移温度(Tg)の測定
ガラス転移温度(Tg)の測定は、以下の条件でDSC測定を行い求めた。
示差走査熱量計〔SII社 DSC220〕を用いて、約5.0mgの試料を窒素雰囲気下で30℃から昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度で10分間保持した。さらに降温速度10℃/分で−100℃まで冷却し、その温度で5分間保持した後、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温した。ガラス転移温度(Tg)は、2度目の昇温の際に、比熱の変化によりDSC曲線が屈曲し、ベースラインが平行移動する形で感知される。この屈曲より低温のベースラインの接線と、屈曲した部分で傾きが最大となる点の接線との交点の温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0325】
(3)オレフィン系樹脂(β)、(β’’)に含まれるプロピレン系重合体のオレフィン系樹脂(β)、(β’’)に対する割合の測定
前述したとおり、工程(C)に用いる末端不飽和ポリプロピレンの重量と、得られたオレフィン系樹脂(β)、(β’’)の重量の比率から算出した。
【0326】
(4)オレフィン系樹脂(β)に含まれるエチレン系重合体のオレフィン系樹脂(β)、に対する割合の測定
前述したとおり、工程(C)に用いる末端不飽和ポリエチレンの重量と、得られたオレフィン系樹脂(β)の重量の比率から算出した。
【0327】
(5)粘着性試験
オレフィン系樹脂(β)のべたつきの評価として、該樹脂シートの粘着性試験を下記の通り行った。剥離強度が大きいと、べたつきが大きく、剥離強度が小さいとべたつきの少ない樹脂と言える。まず、厚み0.1mmのプレスシートサンプルを作成し、2枚のプレスシートサンプルを重ね合わせ40℃で24時間、500Kgf/m2の荷重をかけ処理した。測定温度:23.0℃、試験速度:200.0mm/min、試験片幅:80.0mmでT型剥離試験を実施し、粘着力を測定した。なお、粘着力が著しく強く、剥離せず試料が伸びたり、チャッキング部で試料が破断したりした場合は「剥離せず」と評価した。
【0328】
(6)引張試験
ASTM D638に準拠し、引張弾性率を測定した。
【0329】
(7)極限粘度測定
極限粘度測定[η]は135℃のデカリン中で測定した。
具体的には、約20mgの樹脂をデカリン25mlに溶解させた後、ウベローデ粘度計を用い、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリンを5ml加えて希釈した後、前記と同様にして比粘度ηspを測定した。
この希釈操作を更に2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η](単位:dl/g)として求めた(下記の式1参照)。
【0330】
【数1】
【0331】
(8)13C−NMR測定
樹脂のエチレンおよびα−オレフィンの組成比分析、および末端不飽和ポリプロピレンの立体規則性の確認(アイソタクチックペンタド分率(mmmm:〔%〕))の確認を目的に、次の条件で13C−NMR測定を実施した。
【0332】
装置:ブルカーバイオスピン社製AVANCEIII500CryoProbe Prodigy型核磁気共鳴装置、測定核:13C(125MHz)、測定モード:シングルパルスプロトンブロードバンドデカップリング、パルス幅:45°(5.00μ秒)、ポイント数:64k、測定範囲:250ppm(−55〜195ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:512回、測定溶媒:オルトジクロロベンゼン/ベンゼン−d6(4/1 v/v)、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:1.0Hz)、ケミカルシフト基準:ベンゼン−d6(128.0ppm)。
【0333】
(9)1H−NMR測定
末端不飽和ポリプロピレンおよび末端不飽和ポリエチレンの末端構造の分析のため、次の条件で1H−NMR測定を実施した。
【0334】
装置:日本電子製ECX400P型核磁気共鳴装置、測定核:1H(400MHz)、測定モード:シングルパルス、パルス幅:45°(5.25μ秒)、ポイント数:32k、測定範囲:20ppm(−4〜16ppm)、繰り返し時間:5.5秒、積算回数:512回、測定溶媒:1,1,2,2,−テトラクロロエタン−d2、試料濃度:ca.60mg/0.6mL、測定温度:120℃、ウインドウ関数:exponential(BF:0.12Hz)、ケミカルシフト基準:1,1,2,2,−テトラクロロエタン(5.91ppm)。
【0335】
(10)GPC測定
ポリマーの分子量分析のために、次の条件でGPC分析を実施した。
装置:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:TSKgel GMH6−HTx2 TSKgel GMH6−HTLx2(いずれも東ソー社製、内径7.5mmx長さ30cm)、カラム温度:140℃、移動相:オルトジクロロベンゼン(0.025%ジブチルヒドロキシトルエン含有)、検出器:示差屈折計、流量:1.0mL/分、試料濃度:0.15%(w/v)、注入量:0.5mL、サンプリング時間間隔:1秒、カラム校正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)。
【0336】
上記測定により得られたポリスチレン換算の平均分子量を、下記、オレフィン系樹脂β'−1〜β'−4、および末端不飽和ポリエチレンE−1、E−2はポリエチレンに換算し、末端不飽和ポリプロピレンP−1、P−2はポリプロピレンに換算した。
【0337】
(プロピレン系樹脂(α−1)、エチレン系樹脂(α−2)および樹脂組成物の物性測定方法)
(11)メルトフローレート(MFR:〔g/10分〕)
メルトフローレートは、ASTM D1238Eに準拠して、2.16kg荷重で測定した。測定温度はプロピレン系樹脂は230℃、エチレン系樹脂は190℃とした。
【0338】
(12)融点
融点は、上記(1)と同様の方法によって測定した。
【0339】
(13)アイソタクチックペンタド分率(mmmm:〔%〕)
重合体の立体規則性の指標の1つであり、そのミクロタクティシティーを調べたペンタド分率(mmmm,%)は、プロピレン系樹脂(α−1)においてMacromolecules 8,687(1975)に基づいて帰属した13C−NMRスペクトルのピーク強度比より算出した。13C−NMRスペクトルは、日本電子製EX−400の装置を用い、TMSを基準とし、温度130℃、o−ジクロロベンゼン溶媒を用いて測定した。
【0340】
(14)曲げ弾性率
曲げ弾性率(FM:〔MPa〕)は、JIS K7171に従って、下記の条件で測定した。
<測定条件>
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/分
曲げスパン:64mm
【0341】
(15)シャルピー衝撃試験
シャルピー衝撃試験(〔kJ/m2〕)は、JIS K7111に従って、下記の条件で行った。
<試験条件>
温度:−30℃、0℃、23℃
試験片:10mm(幅)×80mm(長さ)×4mm(厚さ)
ノッチは機械加工である
【0342】
(16)引張破断伸び
引張試験はJIS K7202に従って、下記の条件で行った。
<測定条件>
試験片 : JIS K7162−BA ダンベル
5mm(幅)×2mm(厚さ)×75mm(長さ)
引張速度 : 20mm/分
スパン間距離 : 58mm
【0343】
(17)ロックウェル硬度
ロックウェル硬度(Rスケール)は、JIS K7202に従って、下記の条件で測定した。
<測定条件>
試験片:幅30mm、長さ30mm、厚さ2mm
試験片を2枚重ねして測定した
【0344】
(18)高速面衝撃試験
高速面衝撃試験は、下記条件で行った。
<測定条件>
試験片: 角板
30mm(幅)×30mm(長さ)×2mm(厚さ)
ストライカ径 : 1/2インチ
支持台径 : 1インチ
試験温度 : 0℃
以下、オレフィン系樹脂(β)の実施例および比較例について記載する。なお、分析量確保のため複数回の製造を実施していることがある。
【0345】
[実施例1]
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(P−1)の製造
触媒(遷移金属化合物[A])として使用したジメチルシリルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリドは特許第3737134号に開示されている方法に従って合成した。
【0346】
充分に窒素置換した内容積1Lのステンレス製オートクレーブに、窒素流通下でトルエン500mLおよびメチルアルミノキサン(PMAOとも記す)のトルエン溶液(1.5mol/L)0.67mL(1.0mmol)を入れた。その後オートクレープを閉鎖し、85℃に昇温した。次に600rpmで重合器内部を撹拌しながらプロピレン分圧を0.3MPaに昇圧し、引き続き85℃を維持した。そこにジメチルシリルビス(2−メチル−4−フィニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0010mol/L)を1.0mL(0.001mmol)圧入し重合を開始した。プロピレンガスを連続的に供給しながら圧力を保ち、85℃で20分間重合を行った後、5mLのメタノールを圧入することにより重合を停止した。
【0347】
得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノールに加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、末端不飽和ポリプロピレン(P−1)14.9gを得た。得られた重合体の分析結果を表1に示す。
【0348】
工程(B):末端不飽和ポリエチレン(E−1)の製造
触媒として使用した化合物(1)は国際特許公報WO2006/057229号の[合成例3]にしたがって合成し、マクロモノマー(末端不飽和ポリエチレン(E−1))は同公報[実施例1]にしたがって合成した。
【0349】
生成物(末端不飽和ポリエチレン(E−1))はポリエチレン換算でMw=1550、Mw/Mn=2.32、1H−NMRで測定した片末端不飽和率=99.0mol%であった。分析結果を表2にも示す。
【0350】
【化23】
【0351】
工程(C):オレフィン系樹脂(β−1)の製造
触媒として使用した下記式で示される化合物(2)は公知の方法によって合成した。
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(P−1)10.0gと末端不飽和ポリエチレン(E−1)5.0gとキシレン500mlを装入したのち、97℃に昇温しマクロモノマー(P−1およびE−1)を溶解させた。
【0352】
そこにエチレン120リットル/hrおよび1−ブテンを15リットル/hrを連続的に供給し液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよび1−ブテンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を1.0mL(1.0mmol)、前記化合物(2)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を5.0mL(0.010mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を6.3mL(0.025mmol)加え、常圧下、97℃で40分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。
【0353】
得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂(β−1)41.9gを得た。オレフィン系樹脂(β−1)の分析結果を表3に示す。
【0354】
後述の比較例1において末端不飽和ポリプロピレン(P−1)および末端不飽和ポリエチレン(E−1)を添加しない以外は実施例1と同様に重合して得られた樹脂(β’−1)を既述の方法で分析して分析した結果を表4に示す。この樹脂(β’−1)を、オレフィン系樹脂(β−1)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
【0355】
【化24】
【0356】
[実施例2]
工程(A):末端不飽和ポリプロピレン(P−2)の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、トルエン1.5Lを入れたのち、85℃に昇温した。そこに600rpmで重合器内部を撹拌しながらプロピレンを240リットル/hrで連続的に供給し、液相および気相を飽和させた。引き続きプロピレンを連続的に供給した状態で、メチルアルミノキサン(DMAOとも記す)のトルエン溶液(1.5mol/L)を5.0mL(7.5mmol)、ついでジメチルシリルビス(2−メチル−4−フィニルインデニル)ジルコニウムジクロリドのトルエン溶液(0.0020mol/L)を6.0mL(0.012mmol)加え、常圧下、85℃で30分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。
【0357】
得られた重合反応液を、少量の塩酸を含む5Lのメタノール中に加え、重合体を析出させた。析出物をメタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、プロピレン系重合体(末端不飽和ポリプロピレン(P−2))63.4gを得た。得られた重合体の分析結果を表1に示す。
【0358】
工程(C):オレフィン系樹脂(β−2)の製造
末端不飽和ポリプロピレン(P−1)に替えて末端不飽和ポリプロピレン(P−2)を使用して工程(C)を実施したこと以外は実施例1と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−2)を40.2g得た。オレフィン系樹脂(β−2)の分析結果を表3に示す。
【0359】
[実施例3]
工程(C):オレフィン系樹脂(β−3)の製造
末端不飽和ポリエチレン(E−1)の仕込み量を1.0gにして工程(C)を実施したこと以外は実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−3)を37.0g得た。オレフィン系樹脂(β−3)の分析結果を表3に示す。
【0360】
[実施例4]
工程(C):オレフィン系樹脂(β−4)の製造
末端不飽和ポリプロピレン(P−2)の仕込み量を5.0gにして工程(C)を実施したこと以外は実施例3と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−4)を33.2g得た。オレフィン系樹脂(β−4)の分析結果を表3に示す。
【0361】
[実施例5]
工程(C):オレフィン系樹脂(β−5)の製造
末端不飽和ポリプロピレン(P−2)の仕込み量を2.5gにして工程(C)を実施したこと以外は実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−5)を33.8g得た。オレフィン系樹脂(β−5)の分析結果を表3に示す。
【0362】
[実施例6]
工程(C):オレフィン系樹脂(β−6)の製造
末端不飽和ポリプロピレン(P−2)の仕込み量を5.0gにして工程(C)を実施したこと以外は実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−6)を36.8g得た。オレフィン系樹脂(β−6)の分析結果を表3に示す。
【0363】
[実施例7]
工程(B):末端不飽和ポリエチレン(E−2)の製造
触媒として使用した化合物(3)およびマクロモノマー(末端不飽和ポリエチレン(E−2))は特開2013−220992号の[合成例2]にしたがって合成した。生成物はポリエチレン換算でMw=4770、Mw/Mn=2.25、1H−NMRで測定した片末端不飽和率=97.0mol%であった。下記化合物(3)においてEtはエチル基を示す。分析結果を表2にも示す。
【0364】
【化25】
【0365】
工程(C):オレフィン系樹脂(β−7)の製造
末端不飽和ポリエチレン(E−1)に替えて末端不飽和ポリエチレン(E−2)を使用して工程(C)を実施したこと以外は実施例6と同様にオレフィン系樹脂を製造した。オレフィン系樹脂(β−7)を32.6g得た。オレフィン系樹脂(β−7)の分析結果を表3に示す。
【0366】
[実施例8]
工程(C):オレフィン系樹脂(β−8)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(P−2)5.0gと末端不飽和ポリエチレン(E−1)5.0gとキシレン500mlを装入したのち、95℃に昇温しマクロモノマー(P−2およびE−1)を溶解させた。そこにエチレン120リットル/hrおよびプロピレン 16.8リットル/hrを連続的に供給し液相および気相を飽和させた。引き続きエチレンおよびプロピレンを連続的に供給した状態で、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を6.0mL(6.0mmol)、前記化合物(2)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を10.0mL(0.020mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を12.5mL(0.050mmol)加え、常圧下、95℃で30分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。
【0367】
得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂34.3gを得た。オレフィン系樹脂(β−8)の分析結果を表3に示す。
【0368】
末端不飽和ポリプロピレン(P−2)および末端不飽和ポリエチレン(E−1)を添加しないこと以外は実施例8と同様に重合を行って得られた樹脂(β’−2)を既述の方法で分析して分析した結果を表4に示す。この樹脂(β’−2)を、オレフィン系樹脂(β−8)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
【0369】
[実施例9]
工程(C):オレフィン系樹脂(β−9)の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、末端不飽和ポリプロピレン(P−2)5.0gと末端不飽和ポリエチレン(E−1)5.0gとキシレン500mlを装入したのち、95℃に昇温しマクロモノマー(P−2およびE−1)を溶解させた。そこにエチレン 120リットル/hrを連続的に供給し液相および気相を飽和させた。引き続きエチレン連続的に供給した状態で、1−オクテン10.0mL、トリイソブチルアルミニウム(iBu3Alとも記す)のデカン溶液(1.0mol/L)を1.0mL(1.0mmol)、前記化合物(2)のトルエン溶液(0.0020mol/L)を5.0mL(0.010mmol)、ついでトリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(Ph3CB(C654とも記す)のトルエン溶液(4.0mmol/L)を0.63mL(0.050mmol)加え、常圧下、97℃で40分間重合を行った。重合の停止は少量のイソブタノールを添加することにより行った。
【0370】
得られた重合反応液を少量の塩酸を含む1.5リットルのメタノール中に加え重合体を析出させた。メタノールで洗浄後、80℃にて10時間減圧乾燥し、オレフィン系樹脂34.0gを得た。オレフィン系樹脂(β−9)の分析結果を表3に示す。
【0371】
末端不飽和ポリプロピレン(P−2)および末端不飽和ポリエチレン(E−1)を添加しないこと以外は実施例9と同様に重合を行って得られた樹脂(β’−3)を既述の方法で分析して分析した結果を表4に示す。この樹脂(β’−3)を、オレフィン系樹脂(β−9)の主鎖を構成する共重合体であるとした。
【0372】
[比較例1]
オレフィン系樹脂(β’−1)の製造
末端不飽和ポリプロピレン(P−1)および末端不飽和ポリエチレン(E−1)を加えずに重合して工程(C)を実施したこと以外は実施例1と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(β’−1)は24.2gであった。得られたオレフィン系樹脂(β’−1)の分析結果を表3に示す。
【0373】
[比較例2]
オレフィン系樹脂(β’−4)の製造
1−ブテンの供給量を16リットル/hrに、重合温度を102℃に変更して工程(C)を実施したこと以外は比較例1と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(β’−4)は21.4gであった。得られたオレフィン系樹脂(β’−4)の分析結果を表3および4に示す。
【0374】
[比較例3]
オレフィン系樹脂(β”−1)の製造
末端不飽和ポリエチレン(E−1 )を加えずに重合して工程(C)を実施したこと以外は実施例2と同様にオレフィン系樹脂を製造した。得られたオレフィン系樹脂(β”−1)は32.9gであった。得られたオレフィン系樹脂(β”−1)の分析結果を表3に示す。
【0375】
【表1】
【0376】
【表2】
【0377】
【表3】
【0378】
【表4】
【0379】
粘着力試験によると、実施例1〜9で得られたオレフィン樹脂βは前記条件で圧着した二層のシートを10N/80mm以下の弱い力で剥離することが出来、べたつきが少ないことが分かる。一方、比較例1および2で得られた側鎖を持たないエチレン・αオレフィン共重合体は二層のシートが融着し剥離することが出来なかった。また、比較例3で得られた、ポリプロピレン側鎖とポリエチレン側鎖の両方を有す重合体を含まずにポリプロピレン側鎖のみを有す重合体を含む樹脂の場合は、粘着力抑制効果が十分でなく12N/80mmの剥離強度を要した。このことからエチレン系重合体から構成される側鎖を有する重合体を含むことがべたつきを抑制するうえで重要であることが分かる。
【0380】
[製造例1]
プロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)の製造
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液を得た。該溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0381】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、該均一溶液75mlを1時間にわたって滴下した。滴化終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、2時間同温度にて攪拌し、反応させた。
【0382】
その後、熱濾過にて固体部を採取し、該固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。これにより、固体状チタン触媒成分を得た。
【0383】
ここで、該遊離チタン化合物の検出は次の方法で行った。固体状チタン触媒成分の洗浄液10mlを注射器で採取して、予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに入れた。次に、窒素気流下にてヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを入れ、30分間攪拌した。この水溶液をろ紙に通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃H3PO4を1mlとチタンの発色試薬として3%H22を5mlを加え、イオン交換水で体積を100mlにした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後に、UV測定器を用い、420nmの吸光度を観測した。この吸光が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
【0384】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。固体状チタン触媒成分の組成は、チタン2.3質量%、塩素61質量%、マグネシウム19質量%、DIBP12.5質量%であった。
【0385】
(2)前重合触媒の製造
前記固体状チタン触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに入れた。内温15〜20℃に保ち、プロピレンを600g入れ、60分間攪拌しながら反応させることで、前重合触媒を含む触媒スラリーを得た。
【0386】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器に、プロピレンを40kg/時間、水素を223NL/時間、前記(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.54g/時間、トリエチルアルミニウムを2.4ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.84ml/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.57MPa/Gであった。
【0387】
得られたスラリーを内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へ、プロピレンを16kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が6.3mol%になるように供給した。重合温度68℃、圧力3.30MPa/Gで重合を行った。
【0388】
得られたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)は、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)の物性は、メルトフローレート(MFR)が55g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が97.8%であった。
【0389】
[製造例2]
プロピレン系単独重合体樹脂(α―h−2)の製造
(1)固体状チタン触媒成分の調製
無水塩化マグネシウム95.2g、デカン442mlおよび2−エチルヘキシルアルコール390.6gを130℃で2時間加熱反応を行って均一溶液とした後、この溶液中に無水フタル酸21.3gを添加し、さらに130℃にて1時間攪拌混合を行い、無水フタル酸を溶解させた。
【0390】
このようにして得られた均一溶液を室温に冷却した後、−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に、この均一溶液の75mlを1時間にわたって滴下した。滴化終了後、この混合液の温度を4時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでフタル酸ジイソブチル(DIBP)5.22gを添加し、2時間同温度にて攪拌した。
【0391】
2時間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を275mlの四塩化チタンに再懸濁させた後、再び110℃で2時間加熱した。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、110℃のデカンおよびヘキサンにて遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
【0392】
ここで、この遊離チタン化合物の検出は次の方法で確認した。上記固体触媒成分の洗浄液10mlを注射器で採取して、予め窒素置換した100mlの枝付きシュレンクに入れた。次に、窒素気流にてヘキサンを乾燥し、さらに30分間真空乾燥した。これに、イオン交換水40ml、(1+1)硫酸10mlを入れ、30分間攪拌した。この水溶液をろ紙に通して100mlメスフラスコに移し、続いて鉄(II)イオンのマスキング剤として濃H3PO4を1mlとチタンの発色試薬として3%H22を5mlを加え、イオン交換水で100mlにメスアップした。このメスフラスコを振り混ぜ、20分後に、UV測定器を用い、420nmの吸光度を観測した。この吸光が観測されなくなるまで遊離チタンの洗浄除去を行った。
【0393】
上記のように調製された固体状チタン触媒成分(A)は、デカンスラリーとして保存したが、この内の一部を、触媒組成を調べる目的で乾燥した。このようにして得られた固体状チタン触媒成分(A)の組成は、チタン2.3重量%、塩素61重量%、マグネシウム19重量%、DIBP12.5重量%であった。
【0394】
(2)前重合触媒の製造
固体触媒成分100g、トリエチルアルミニウム39.3mL、ヘプタン100Lを内容量200Lの攪拌機付きオートクレーブに入れ、内温15〜20℃に保ち、プロピレンを600g入れ、60分間攪拌しながら反応させ、触媒スラリーを得た。
【0395】
(3)本重合
内容量58Lのジャケット付循環式管状重合器にプロピレンを43kg/時間、水素を177NL/時間、(2)で製造した触媒スラリーを固体触媒成分として0.58g/時間、トリエチルアルミニウムを3.1ml/時間、ジシクロペンチルジメトキシシランを3.3ml/時間で連続的に供給し、気相の存在しない満液の状態にて重合した。管状重合器の温度は70℃であり、圧力は3.53MPa/Gであった。
【0396】
得られたスラリーは内容量100Lの攪拌機付きベッセル重合器へ送り、更に重合を行った。重合器へ、プロピレンを45kg/時間で供給し、水素を気相部の水素濃度が3.2mol%になるように供給した。重合温度70℃、圧力3.28MPa/Gで重合を行った。
【0397】
得られたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−2)は、80℃で真空乾燥を行った。プロピレン系単独重合体樹脂(α―h−2)の物性は、メルトフローレート(MFR)が30g/10分、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が97.8%であった。
【0398】
[実施例10]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β−2)23質量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)57質量部、タルク(商品名:JM−209、浅田製粉(株)製)20質量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製した。該ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を用いて、射出成形機にて下記の条件で射出成形し、試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表5に示す。
【0399】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:KZW−15(商品名、(株)テクノベル 社製)
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:EC40(商品名、東芝機械(株)製)
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:15秒。
【0400】
[実施例11]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β−2)23質量部に代えて、実施例4で製造されたオレフィン系樹脂(β−4)23質量部を使用した以外は、実施例10と同様にプロピレン系樹脂組成物を調整した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表5に示す。
【0401】
[実施例12]
実施例2で製造されたオレフィン系樹脂(β−2)23質量部に代えて、実施例6で製造されたオレフィン系樹脂(β−6)23質量部を使用した以外は、実施例10と同様にプロピレン系樹脂組成物を調整した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表5に示す。
【0402】
[比較例4]
比較例2で製造されたオレフィン系樹脂(β’−4)20質量部、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)60質量部、タルク(商品名:JM−209、浅田製粉(株)製)20質量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製した。該ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を用いて、射出成形機にて下記の条件で射出成形し、試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表5に示す。
【0403】
[比較例5]
比較例2で製造されたオレフィン系樹脂(β‘−4)20質量部を23質量部に、製造例1で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−1)60質量部を57質量部に変更した以外は、比較例4と同様にプロピレン系樹脂組成物を調整した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表5に示す。
【0404】
【表5】
【0405】
実施例10〜12で得られたオレフィン樹脂(β)を含むプロピレン系樹脂組成物は、比較例4〜5で得られた側鎖を持たないエチレン・αオレフィン共重合体樹脂を含むプロピレン系樹脂組成物と比べて、伸び物性に優れ、高い硬度であり、さらに剛性と耐衝撃性のバランスにおいても、優れることが分かる。オレフィン系樹脂(β)がプロピレン系重合体からなる側鎖を有していることにより、プロピレン系重合体樹脂(α)との相溶性が良好であり、上記物性バランスが向上したものと推察される。
【0406】
[実施例13]
実施例6で製造されたオレフィン系樹脂(β−6)5質量部、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(エボリューSP0510(商品名、(株)プライムポリマー商標))20質量部、製造例2で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−2)75質量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部、結晶化核剤ミラードNX8000(商品名、ミリケン・ジャパン(株))0.2質量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製した。該ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を用いて、射出成形機にて下記の条件で射出成形し、試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表6に示す。
【0407】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:KZW−15(商品名、(株)テクノベル 社製)
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:EC40(商品名、東芝機械(株)製)
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:15秒
【0408】
[比較例6]
実施例6で製造されたオレフィン系樹脂(β−6)5質量部の代わりに、比較例2で製造されたオレフィン系樹脂(β‘−4)5質量部を使用した以外は、実施例13と同様にプロピレン系樹脂組成物を調整した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表6に示す。
【0409】
[比較例7]
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(エボリューSP0510(商品名、(株)プライムポリマー商標))25質量部、製造例2で製造されたプロピレン系単独重合体樹脂(α−h−2)75質量部、耐熱安定剤IRGANOX1010(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、耐熱安定剤IRGAFOS168(商品名、BASFジャパン(株)製)0.1質量部、ステアリン酸カルシウム0.1質量部、結晶化核剤ミラードNX8000(商品名、ミリケン・ジャパン(株))0.2質量部をタンブラーにて混合後、二軸押出機にて下記の条件で溶融混練してペレット状のプロピレン系樹脂組成物を調製した。該ペレット状のプロピレン系樹脂組成物を用いて、射出成形機にて下記の条件で射出成形し、試験片を作製した。得られたプロピレン系樹脂組成物の物性を表6に示す。
【0410】
<溶融混練条件>
同方向二軸混練機:KZW−15(商品名、(株)テクノベル 社製)
混練温度:190℃
スクリュー回転数:500rpm
フィーダー回転数:40rpm
<JIS小型試験片/射出成形条件>
射出成形機:EC40(商品名、東芝機械(株)製)
シリンダー温度:190℃
金型温度:40℃
射出時間−保圧時間:13秒(一次充填時間:1秒)
冷却時間:15秒
【0411】
【表6】
【0412】
実施例13で得られたオレフィン樹脂(β)を含む樹脂組成物は、比較例6および比較例7で得られた樹脂組成物と比べて、耐衝撃性に優れる。これはオレフィン系樹脂(β)がプロピレン系重合体からなる側鎖とエチレン系重合体からなる側鎖の両方を有している重合体を含むため、エチレン系樹脂とプロピレン系重合体樹脂の双方に良好に相溶し、上記良好な物性が発現したものと推察される。